説明

硬化型溶剤系塗料

【課題】優れた耐擦傷性、チッピング性を有するとともに、クラック等が発生しにくい塗膜を形成しうる硬化型溶剤系塗料、これを用いた塗膜及び積層塗膜を提供すること。
【解決手段】硬化型溶剤系塗料は、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、該直鎖状分子及び/又は該環状分子がカプロラクトンによる修飾基である(−CO(CHOH)基を有する親油性ポリロタキサンを含む。
塗膜は、硬化型溶剤系塗料を固化して成る。積層塗膜は、硬化型溶剤系塗料を用いた積層塗膜である。被塗物に、ベースコート塗膜、上記硬化型溶剤系塗料を用いた塗膜を順次形成して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型溶剤系塗料及び塗膜に係り、更に詳細には、特に耐擦傷性が要求される分野で用いられる製品、主として、自動車のボディ;屋内・屋外における樹脂成型品;階段、床、家具等の木工製品;メッキ、蒸着、スパッタリング等の処理が施されたアルミホイール、ドアミラー等に適用できる硬化型溶剤系塗料、これを用いた塗膜及び積層塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリカーボネート、アクリル板等の樹脂成型品は、硬度、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性等の諸物性に欠けるため、これらの物性を補うために通常は表面処理が施される。
かかる表面処理としては、例えば、常乾型塗料や2液ウレタン塗料等の硬化型塗料が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、該塗料を用いた処理膜には傷が付きやすく、付いた傷は目立ちやすい。
【0003】
また、意匠性のために、メッキ、蒸着、スパッタリングのごとき金属鏡面処理が採用されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、該金属鏡面処理を行った場合、該処理膜には傷が付きやすく、付いた傷は目立ちやすい。また、通常、蒸着、スパッタリングのような鏡面処理後には、上述したような表面処理が行われているが、得られる処理膜には傷が付きやすく、付いた傷は目立ちやすい。
【0004】
更に、自動車用トップコートについては、近年では新車時の塗装外観を長期間保持するよう高耐久化指向が強まってきている。このため、洗車機や砂塵や石はね等によっても傷の付かない耐擦傷性が求められている。
耐擦傷性を有する塗料としては、従来より、紫外線(UV)硬化型塗料、電子線エネルギー(EB)硬化型塗料、シリカ系ハードコート剤や、2液型アクリルウレタン系軟質塗料等が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−131601号公報
【特許文献2】特開2003−293146号公報
【特許文献3】特公平6−29382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記UV硬化型塗料、EB硬化型塗料、シリカ系ハードコート剤では、高硬度にするための硬質モノマーの使用や、架橋密度を高めることによる硬化収縮時の歪みの増大により、素材への密着性が低下したり、クラックが発生するという問題が生じやすい。
【0007】
一方、上記2液型アクリルウレタン系軟質塗料は、チッピング、クラックの問題はないが、タック感が残る場合が多く、耐候性、耐汚染性に劣るという欠点を有する。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有するとともに、クラック等が発生しにくい塗膜を形成しうる硬化型溶剤系塗料、これを用いた塗膜及び積層塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、直鎖状分子や環状分子がが疎水性の修飾基を備える親油性ポリロタキサンを用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の硬化型溶剤系塗料は、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、該直鎖状分子及び/又は該環状分子がカプロラクトンによる修飾基である(−CO(CHOH)基を有する親油性ポリロタキサンを含む、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の硬化型溶剤系塗料の好適形態は、上記親油性ポリロタキサンの環状分子の包接量は、上記直鎖状分子が環状分子を包接する最大量である最大包接量を1とすると、0.06〜0.61であることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の硬化型溶剤系塗料の他の好適形態は、上記親油性ポリロタキサンは、塗膜形成成分に対して質量換算で1〜30%含まれることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の硬化型溶剤系塗料の更に他の好適形態は、添加剤、顔料及び光輝剤から成る群より選ばれた少なくとも1種のものと、溶媒と、樹脂成分と、硬化剤を混合して成ることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の塗膜は、上記硬化型溶剤系塗料を固化して成ることを特徴とする。
【0015】
更にまた、本発明の積層塗膜は、上述の如き硬化型溶剤系塗料を用いた積層塗膜であって、
被塗物に、ベースコート塗膜、上記硬化型溶剤系塗料を用いた塗膜を順次形成して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、直鎖状分子や環状分子が疎水性の修飾基を備える親油性ポリロタキサンを用いることとしたため、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有するとともに、クラック等が発生しにくい塗膜を形成しうる硬化型溶剤系クリア塗料、これを用いた塗膜及び積層塗膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】疎水性修飾ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
【図2】架橋ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
【図3】本発明の積層塗膜の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の硬化型溶剤系塗料につき詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0019】
上述の如く、本発明の硬化型溶剤系塗料料は、親油性ポリロタキサンを含む。
この親油性ポリロタキサンは、環状分子と、両末端に封鎖基を持つ直鎖状分子を有する。また、直鎖状分子は、環状分子の開口部を串刺し状に貫通することによって当該環状分子を包接しており、更に、その両末端に配置された封鎖基が包接した環状分子の脱離を防止している。
また、このポリロタキサンを構成する直鎖状分子、環状分子のいずれか一方又は双方は、疎水性の修飾基を有している。
【0020】
図1は、疎水性修飾ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
同図において、この疎水性修飾ポリロタキサン5は、直鎖状分子6と、環状分子であるシクロデキストリン7と、直鎖状分子6の両末端に配置された封鎖基8を有し、直鎖状分子6は環状分子7の開口部を貫通して環状分子7を包接している。
そして、シクロデキストリン7は、疎水性修飾基7aを有している。
【0021】
このような親油性ポリロタキサンを用いることにより、疎水性溶剤に混和しうる塗料用材料が得られる。また、塗料に適用するときは製品の耐久性が向上する。言い換えれば、耐傷付き性、耐チッピング性が向上し、他の要求性能にも悪影響が生じないので有効である。更に、耐候性、耐汚染性、密着性等にも優れる。
【0022】
ここで、上記直鎖状分子は、実質的に直鎖であればよく、回転子である環状分子が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接できる限り、分岐鎖を有していてもよい。
また、環状分子の大きさにも影響を受けるが、その長さも環状分子が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
【0023】
そして、このような親油性ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子、環状分子のいずれか一方又は双方は疎水性の修飾基を有するが、これにより有機溶剤に可溶となる。
かかる親油性の発現は、従来は水系溶剤や有機系溶剤に難溶性ないしは不溶性であったポリロタキサンに対し、有機溶剤という反応場、典型的には架橋場を提供するものである。即ち、上記の親油性ポリロタキサンは、有機溶剤の存在下で他のポリマーとの架橋や修飾基による修飾が容易に行える反応性が向上したものである。
【0024】
上記修飾基は、疎水基又は疎水基と親水基を有し、全体として疎水性であればよい。
かかる疎水基としては、例えば、アルキル基、ベンジル基(ベンゼン環)及びベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、硝酸エステル基、トシル基などがある。
かかる親水基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、アミノ基(一級〜三級)、四級アンモニウム塩基、ヒドロキシアルキル基などがある。
【0025】
上記直鎖状分子としては、特に限定されるものではなく、ポリアルキル類、ポリカプロラクトンなどのポリエステル類、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリアクリル類及びベンゼン環を有する直鎖状分子を挙げることができる。
具体的には、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。かかる直鎖状分子としては、特にポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンが良好である。
【0026】
また、上記直鎖状分子の分子量は、1,000〜35,000とすることが望ましく、10,000〜35,000が好ましく、20,000〜35,000が更に好ましい。
分子量が1,000未満では、滑車効果が低下することで塗膜の伸び率が低下し、耐傷付き性や耐チッピング性が低下することがある。35,000を超えると、溶解性が低下し、また表面の膜形成のためにクリアとしての平滑性や艶のような外観が低下することがある。
【0027】
なお、上記直鎖状分子としては、その両末端に反応基を有するものが好ましく、これにより、上記封鎖基と容易に反応させることができるようになる。
かかる反応基としては、採用する封鎖基の種類などに応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及びチオール基などを例示できる。
【0028】
上記環状分子としては、上述の如き直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものである限り特に限定されるものではなく、種々の環状物質を挙げることができる。なお、環状分子としては、水酸基を有するものが多い。
また、環状分子は実質的に環状であれば十分であり、「C」字状のように完全な閉環ではないものも含まれる。
【0029】
また、上記環状分子は、反応基を有するものが好ましく、これにより、他のポリマーとの架橋及び修飾基との結合が行い易くなる。
かかる反応基は、適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基及びアルデヒド基などを例示できる。
また、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。
【0030】
更に、上記環状分子の具体例としては、種々のシクロデキストリン類、例えばα−シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β−シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ−シクロデキストリン(グルコース数:8個)、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体、並びにクラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類及びこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0031】
上述のシクロデキストリン等の環状分子は、その1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが良好であり、被包接性の観点からはα−シクロデキストリンが好ましい。
【0032】
また、シクロデキストリンの水酸基に疎水性の修飾基を導入すれば、親油性ポリロタキサンの溶剤可溶性を更に向上させることができる。
このとき、上記疎水性修飾基による修飾度は、シクロデキストリンの水酸基が修飾され得る最大数を1とすると、0.02以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましく、0.06以上であることが更に好ましい。
0.02未満であると、有機溶剤への溶解性が十分なものとならず、不溶性ブツ(異物付着などに由来する突出部)が生成することがある。
ここで、シクロデキストリンの水酸基が修飾され得る最大数とは、換言すれば、修飾する前にシクロデキストリンが有していた全水酸基数のことである。修飾度とは、換言すれば、修飾された水酸基数の全水酸基数に対する比のことである。
なお、疎水基は少なくとも1つでよいが、シクロデキストリン環1つに対して1つの疎水基を有するのが望ましい。
また、官能基を有している疎水基を導入することにより、他のポリマーとの反応性を向上させることが可能になる。
【0033】
上記疎水性修飾基の導入方法としては、以下の方法を採用できる。
第1の方法としては、例えば、ポリロタキサンの環状分子としてシクロデキストリンを用い、当該シクロデキストリンの水酸基をプロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロピル化し、その後、ε‐カプロラクトンを添加し、2‐エチルへキサン酸スズを添加する。このときのε‐カプロラクトンの添加量を変更することで修飾率を任意に制御できる。
【0034】
上記の親油性ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子に包接される環状分子の個数(包接量)は、その最大包接量を1とすると、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.48が更に好ましく、0.24〜0.41がいっそう好ましい。
0.06未満では滑車効果が低下することで塗膜の伸び率が低下することがある。0.61を超えると、環状分子が密に配置され過ぎて環状分子の可動性が低下することがあり、塗膜の伸び率が低下し、耐傷付き性や耐チッピング性が低下することがある。
【0035】
また、環状分子の包接量は、以下のようにして制御することができる。
第1の方法としては、DMF(ジメチルホルムアミド)に、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)、HOBt、アダマンタンアミン、ジイソプロピルエチルアミンを、この順番で添加し溶液とする。一方、DMF/DMSO(ジメチルスルホキシド)混合溶媒に、直鎖状分子に環状分子が串刺された包接錯体を分散させた溶液を得る。これら両者を混合し、このときのDMF/DMSOの混合比率を変更することで、環状分子の包接量を任意に制御できる。なお、DMF/DMSO比が高いほど環状分子の包接量は大きくなる。
【0036】
上記封鎖基は、上述の如き直鎖状分子の両末端に配置されて、環状分子が直鎖状分子によって串刺し状に貫通された状態を保持できる基であれば、如何なる基であってもよい。
かかる基としては、「嵩高さ」を有する基又は「イオン性」を有する基などを挙げることができる。また、ここで「基」とは、分子基及び高分子基を含む種々の基を意味する。
【0037】
「嵩高さ」を有する基としては、球形の基や側壁状の基を例示できる。
また、「イオン性」を有する基のイオン性と、環状分子の有するイオン性とが相互に影響を及ぼし合い、例えば反発し合うことにより、環状分子が直鎖状分子に串刺しにされた状態を保持することができる。
【0038】
このような封鎖基の具体例としては、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン基類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン基類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0039】
上述の如き、親油性ポリロタキサンは、疎水性の修飾基を有するポリロタキサンから構成されるが、該親油性ポリロタキサンは、代表的には以下のように製造できる。
(1)環状分子と直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を直鎖状分子で串刺し状に貫通して直鎖状分子に環状分子を包接させる工程と、(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調製する工程と、(3)得られたポリロタキサンの環状分子が有する水酸基を疎水性修飾基で修飾する工程、で処理することにより得られる。
なお、上記(1)工程において、環状分子として、予め環状分子が有する水酸基を疎水性修飾基で修飾したものを用いることによっても、疎水性修飾ポリロタキサンを得ることができ、その場合には、上記(3)工程を省略することができる。
【0040】
かかる製造方法によって、上述の如く有機溶剤に対する溶解性に優れた親油性ポリロタキサンが得られる。
かかる有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、イソプロピルアルコールやブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのエーテル類、トルエンやキシレンなどの炭化水素溶剤などを挙げることができ、該親油性ポリロタキサンは、これらの2種以上を混合した溶媒についても良好な溶解性を示す。
【0041】
なお、本発明においては、有機系溶剤に可溶である限りにおいて親油性ポリロタキサンが架橋しているものであってもよく、かかる親油性架橋ポリロタキサンを、非架橋の親油性ポリロタキサンの代わりに又はこれに混合して用いることができる。
このような親油性架橋ポリロタキサンとしては、比較的低分子量のポリマー、代表的には分子量が数千程度のポリマーと架橋した親油性ポリロタキサンを挙げることができる。
【0042】
また、本発明において、疎水性修飾基の全部又は一部が、官能基を有することが他のポリマーとの反応性を向上させるという観点から望ましい。
かかる官能基は、そのシクロデキストリンの外側にあることが立体構造的に好ましく、ポリマーと結合又は架橋する際、この官能基を用いて容易に反応を行うことができる。
【0043】
かかる官能基は、架橋剤を用いない場合には、例えば用いる溶媒の種類に応じて適宜変更することができる。一方、架橋剤を用いる場合には、その用いる架橋剤の種類に応じて適宜変更することができる。
更に、本発明においては、官能基の具体例として、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基及びアルデヒド基などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
そして、疎水性修飾ポリロタキサンにおいては、上述の官能基を、その1種を単独で又は2種以上を組合わせて有していてもよい。
かかる官能基としては、特にシクロデキストリンの水酸基と結合した化合物の残基であり、当該残基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有するものが良好であり、反応の多様性の観点からは水酸基が好ましい。
このような官能基を形成する化合物としては、例えばプロピレンオキシドなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
例えば、当該疎水性修飾ポリロタキサンの有機溶剤への溶解性向上効果をあまり低下させなければ、官能基を形成する化合物がポリマーであってもよく、溶解性の観点からは、例えば、分子量が数千程度であることが望ましい。
なお、上述の官能基としては、後述する封鎖基が脱離しない反応条件において反応する基であることが好ましい。
【0045】
次に、本発明の硬化型溶剤系塗料及び塗膜について詳細に説明する。
本発明の硬化型溶剤系塗料は、上述の親油性ポリロタキサンを用いて成る。また、本発明の塗膜は、当該硬化型溶剤系塗料を固化して成る。
【0046】
これにより、塗膜形成時は、親油性ポリロタキサンが有する疎水性の修飾基や他の官能基が、塗膜形成成分と反応し、架橋ポリロタキサンを形成することにより、耐擦傷性、耐チッピング性に優れるようになる。また、クラックなども発生しにくい。更に、耐候性、耐汚染性、密着性等にも優れる。
【0047】
なお、一般に、架橋ポリロタキサンは、ポリロタキサン単体と他のポリマーとが架橋したものを言うが、塗膜形成時には、上述した親油性ポリロタキサンが、塗膜形成成分(ポリマーなど)と架橋して成るものである。この塗膜形成成分は、ポリロタキサンの環状分子を介してポリロタキサンと結合している。
【0048】
以下、架橋ポリロタキサンについて説明する。
図2に、架橋ポリロタキサンを概念的に示す。
同図において、この架橋ポリロタキサン1は、ポリマー3と上記親油性ポリロタキサン5を有する。そして、このポリロタキサン5は、環状分子7を介して架橋点9によってポリマー3及びポリマー3’と結合している。
【0049】
このような構成を有する架橋ポリロタキサン1に対し、図2(A)の矢印X−X’方向の変形応力が負荷されると、架橋ポリロタキサン1は、図2(B)に示すように変形してこの応力を吸収することができる。
即ち、図2(B)に示すように、環状分子7は滑車効果によって直鎖状分子6に沿って移動可能であるため、上記応力をその内部で吸収可能である。
【0050】
このように、架橋ポリロタキサンは、図示したような滑車効果を有するものであり、従来のゲル状物などに比し優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を有するものである。
また、この架橋ポリロタキサンの前駆体である親油性ポリロタキサンは、上述の如く有機溶剤への溶解性が改善されており、有機溶剤中での架橋などが容易である。
【0051】
よって、架橋ポリロタキサンは、有機溶剤が存在する条件下で容易に得ることができ、特に、親油性ポリロタキサンと有機溶剤可溶性の塗膜形成成分とを架橋させることにより、容易に製造することができる。
従って、親油性ポリロタキサンは、その適用範囲が拡大されており、例えば、有機溶剤に可溶な塗膜ポリマーを用いる塗料や接着剤、特に耐洗車性、耐引っ掻き性、耐チッピング性、耐衝撃性及び耐候性の要求される自動車用の塗料、樹脂基材及び接着剤、並びに家電用の塗料や樹脂基材等についても適用可能であり、これらの用途においても優れた滑車効果を発現できるものである。
【0052】
また別の観点からは、架橋ポリロタキサンは、親油性ポリロタキサンの架橋対象である塗膜形成成分の物性を損なうことなく、当該塗膜形成成分と当該ポリロタキサンとを複合体化したものである。
従って、以下に説明する架橋ポリロタキサンの形成方法によれば、上記塗膜形成成分の物性と親油性ポリロタキサン自体の物性を併有する材料が得られるのみならず、ポリマー種などを選択することにより、所望の機械的強度などを有する塗膜を得ることができる。
なお、架橋ポリロタキサンは、架橋対象が疎水性であり、その分子量が余り大きくない場合、例えば分子量が数千程度までなら有機溶剤に溶解する。
【0053】
ここで、架橋ポリロタキサンの形成方法について説明する。
架橋ポリロタキサンは、代表的には、(a)親油性ポリロタキサンを他の塗膜形成成分と混合し、(b)当該塗膜形成成分の少なくとも一部を物理的及び/又は化学的に架橋させ、(c)当該塗膜形成成分の少なくとも一部と親油性ポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる(硬化反応)、ことにより形成できる。
なお、親油性ポリロタキサンは、有機溶剤に可溶であるため、(a)工程〜(c)工程を有機溶剤中で円滑に行うことができる。また、これらの工程は硬化剤を用いることでより円滑に行うことができる。
【0054】
(b)、(c)工程においては、化学架橋することが好ましく、例えば、これは上述の如き親油性ポリロタキサンの環状分子が有する水酸基と、塗料形成成分の一例であるポリイソシアネート化合物とが、ウレタン結合を繰返し形成することによって、架橋ポリロタキサンが得られる。また、(b)工程と(c)工程はほぼ同時に実施してもよい。
【0055】
(a)工程の混合工程は、用いる塗膜形成成分に依存するが、溶媒無しで又は溶媒中で行うことができる。また、溶媒は塗膜形成時に加熱処理などで除去できる。
【0056】
また、上記塗料は、塗膜形成成分(樹脂固形分など)に対して質量換算で1〜30%含まれることが好ましい。より好ましくは10〜30%であり、特に好ましくは20〜30%であることがよい。
1%より少ないと、滑車効果が低下することで塗膜の伸び率が低下することがある。30%を超えると、表面の膜形成のために平滑性や艶のような外観が低下することがある。
【0057】
更に、上記塗料は、親油性ポリロタキサンに、添加剤、顔料及び光輝剤から成る群より選ばれた少なくとも1種のものと、溶媒と、樹脂成分と、硬化剤を混合して成ることが好ましい。
【0058】
上記樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、主鎖又は側鎖に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基、及びこれらの任意の組合せに係る基を有するものが好ましい。
なお、光架橋基としては、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩及びスチリルキノリン塩などを例示できる。
【0059】
また、2種以上の樹脂成分を混合使用してもよいが、この場合、少なくとも1種の樹脂成分が環状分子を介してポリロタキサンと結合していることがよい。
更に、かかる樹脂成分は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合、2種以上のモノマーから構成されるものでもよく、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれであってもよい。
【0060】
具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び他のオレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン(登録商標)などのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
誘導体としては、上述した水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基及びこれらの組合せに係る基を有するものが好ましい。
【0061】
上記硬化剤の具体例としては、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はアルコキシシラン類を挙げることができ、本発明では、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記硬化剤は、分子量が2000未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは600未満、いっそう好ましくは400未満のものを用いることができる。
【0062】
上記添加剤の具体例としては、分散剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、表面調整剤、ワキ防止剤などを用いることができる。
【0063】
上記顔料の具体例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等の有機系着色顔料や、カーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等の無機系着色顔料を用いることができる。
【0064】
上記光輝剤の具体例としては、アルミ顔料、マイカ顔料などを用いることができる。
【0065】
上記溶媒の具体例としては、酢酸エチルや酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのようなエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのようなケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのようなエーテル類、トルエンやキシレン、ソルベッソなどのような炭化水素溶剤、または疎水性の高い長鎖アルコール類などを用いることができる。 これらは2種以上を適宜混合しても良い。また、水やブチルセロソルブアセテートなどの水系溶剤が若干含まれていても、全体として有機溶剤とみなすことができればよい。
【0066】
更に、上記塗料は、透明塗料として、一般的な塗膜を形成できる他、濁り塗料や艶消し塗料として、半透明感を付与したいわゆる濁り塗膜や艶消し塗膜を形成できる。
これら塗料が形成する塗膜の膜厚としては、特に限定されるものではないが、20〜40μm程度が好ましい。
【0067】
更にまた、上記塗料は、濁り塗料又は艶消し塗料とすることができる。
上記濁り塗料又は艶消し塗料とするには、上記成分の他にシリカや樹脂ビーズ等の艶消し剤を加えればよい。
【0068】
また、上記塗料の性状は、一般的なエナメル塗料などの溶剤型、アクリルメラミン塗料、酸−エポキシ塗料などの硬化型の溶剤型、ウレタン樹脂塗料などの二液型、エポキシ塗料などが挙げられる。
【0069】
次に、本発明の積層塗膜について詳細に説明する。
本発明の積層塗膜は、被塗物に、ベースコート塗膜、上述の硬化型溶剤系塗料を用いた塗膜を順次形成して成る。
【0070】
これにより、積層塗膜の耐傷付き性、耐チッピング性が向上する。
【0071】
また、上記親油性液体は、一液型であっても良いし、二液型(例えばウレタン樹脂塗料)などを用いても良いし、更にはラッカー系、光硬化型樹脂を用いても良い。
【0072】
上記被塗物としては、代表的には鉄、アルミ、銅などの各種金属材、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの各種有機材、石英、セラミックス(炭化カルシウム他)などの各種無機材が挙げられる。
また、これらに溶剤系塗料を被覆する方法としては、公知慣用の方法が採用できる。例えば、はけ塗り法、吹付け法、静電塗装法、電着塗装法、粉体塗装、更にはスパッタ法などが挙げられる。
更に、上記溶剤系塗料は、代表的には、加熱硬化(焼付け)処理により塗膜とすることができる。
なお、上記溶剤系塗料は、被塗物の全体又は一部に被覆できる。
【0073】
また、本発明の積層塗膜においては、被塗物と上記の塗膜との間に、下塗り塗膜、ベースコート塗膜を更に形成することが好ましい。このときは、ベースコート塗膜との界面にも、親油性ポリロタキサンによる架橋構造を形成させうるので、有効である。
【0074】
上述した本発明の積層塗膜の一例(概略断面)を図3に示す。
この積層塗膜は、下塗り塗膜10とベースコート11と塗膜12が順次設けられている。
なお、硬化型溶剤系塗料は、単独層を形成することに限定されず、複数層の形成に使用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
1.修飾したポリロタキサンの合成
水酸基をヒドロキシプロピル基で修飾したヒドロキシプロピル化ポリロタキサン500mgに、モレキュラーシーブで乾燥させたε−カプロラクトン10mLを加え、室温で30分撹拌して浸透させた。その後、2−エチルヘキサン酸スズ0.2mLを加え、100℃で1〜8時間反応させた。
反応終了後、試料を50mLのトルエンに溶解させ、撹拌した450mLのヘキサン中に滴下して析出させ回収した。
【0077】
2.クリア塗料の調製
得られたポリロタキサンをトルエンで10%に成るように溶解した。
次いで、日本油脂株式会社製のベルコートNo.6200GN1 アクリル・メラミン硬化型クリア塗料に、溶解したポリロタキサンを撹拌しながら添加した。
【0078】
3.積層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。
その後、日本油脂株式会社製のグレーの下塗り(商品名:ハイエピコNo.500)を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
【0079】
次いで、日本油脂株式会社製のベルコートNo6010メタリック塗色を10μm塗装し、ウエットオンウエットでポリロタキサンを含有するクリア塗料を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
【0080】
(実施例2〜11、比較例1〜3)
表1に示す仕様とした以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、積層塗膜を形成した。
【0081】
得られた積層塗膜について、以下の(1)〜(5)の評価を行った。
【0082】
(1)溶解性
工程2で得たクリア塗料を混合し、ガラス板に塗布したときの白濁度を目視評価した。
〇:変化なし
△:若干の白濁
×:白濁および分離
【0083】
(2)平滑性
工程3で得た積層塗膜中のクリア塗膜の平滑度合いを目視評価した。
〇:かなり平滑
△:若干、凹凸
×:凹凸
【0084】
(3)耐擦傷性
磨耗試験機の摺動子にダストネル(摩擦布)を両面テープで貼り付け、0.22g/cmの荷重下、工程3で得た積層塗膜中のクリア塗膜上を50回往復させ、傷の有無を評価した。
○:殆ど傷がない。
△:少し傷がある。
×:目立つほど多くの傷がある。
【0085】
(4)反応性
工程1で得たものとヘキサメチレンジイソシアネートを当量比で混合し、140℃で30分間焼付け乾燥した。その塗膜の赤外線吸収スペクトルによりウレタン結合の有無により判定した。
〇:ウレタン結合有り
×:ウレタン結合が無い
【0086】
(5)耐候性
工程3で得た積層塗膜中のクリア塗膜について、キセノンウエザーメーター(XWM)で、1440時間試験を行い、色差(△E)を測定した。
〇:△E≦3
△:3<△E≦5
×:△E>5
【0087】
【表1】

【0088】
表1の結果から明らかなように、本発明の好適形態である実施例1〜8の積層塗膜中のエナメル塗膜は、架橋ポリロタキサンが有する滑車効果による耐擦傷性の向上が認められる他、溶解性、平滑性、顔料沈降性、反応性、耐候性も良好であることがわかる。
また、実施例9のように、直鎖状分子の分子量が1000未満では、耐擦傷性が低下することがわかる。更に、実施例10のように、35000超では、平滑性、耐候性が低下することがわかる。
更に、実施例11のように、親油性ポリロタキサンの塗料への添加量が30%超では、溶解性、平滑性、耐候性が低下することがわかる。
【0089】
一方、比較例1〜3のように、親油性ポリロタキサンを用いないときは、耐擦傷性の効果が得られないことがわかる。
【0090】
以上のように、本発明に従えば、特に規定された狭い塗装条件に限定されることなく、通常の塗装と同様の作業性で目的の外観が得られ、クリア塗膜の耐傷付き性の向上が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 架橋ポリロタキサン
3、3’ポリマー
5 疎水性修飾ポリロタキサン
6 直鎖状分子
7 環状分子(シクロデキストリン)
7a 疎水性修飾基
8 封鎖基
9 架橋点
10 下塗り塗膜
11 ベースコート塗膜
12 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、該直鎖状分子及び/又は該環状分子がカプロラクトンによる修飾基である(−CO(CHOH)基を有する親油性ポリロタキサンを含む、
ことを特徴とする硬化型溶剤系塗料。
【請求項2】
上記親油性ポリロタキサンの環状分子の包接量は、上記直鎖状分子が環状分子を包接する最大量である最大包接量を1とすると、0.06〜0.61であることを特徴とする請求項1に記載の硬化型溶剤系塗料。
【請求項3】
上記親油性ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコール及び/又ポリカプロラクトンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化型溶剤系塗料。
【請求項4】
上記親油性ポリロタキサンの環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンから成る群より選ばれた少なくとも1種のシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の硬化型溶剤系塗料。
【請求項5】
上記親油性ポリロタキサンは、塗膜形成成分に対して質量換算で1〜30%含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の硬化型溶剤系塗料。
【請求項6】
添加剤、顔料及び光輝剤から成る群より選ばれた少なくとも1種のものと、溶媒と、樹脂成分と、硬化剤を混合して成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の硬化型溶剤系塗料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の硬化型溶剤系塗料を固化して成ることを特徴とする塗膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の硬化型溶剤系塗料を用いた積層塗膜であって、
被塗物に、ベースコート塗膜、上記硬化型溶剤系塗料を用いた塗膜を順次形成して成ることを特徴とする積層塗膜。
【請求項9】
上記被塗物と上記ベースコート塗膜との間に、下塗り塗膜を更に形成したことを特徴とする請求項8に記載の積層塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−287031(P2009−287031A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187913(P2009−187913)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2005−293831(P2005−293831)の分割
【原出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】