説明

硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材

【課題】 硬化速度が速く接着性が良好で、接着面は耐候性に優れる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材を提供する。
【解決手段】 (a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して
(b)酸化剤0.5〜50重量部と
(c)シランカップリング剤0.1〜20重量部と
(d)粘着付与剤0.5〜50重量部からなる
硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化速度が速く接着性が良好で、硬化物の接着面を促進暴露しても引張強度が低下せず耐候性が良好であるため、シーリング材、接着剤及び塗料として好適に用いられる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1分子中に2個以上のチオール基含有ポリマーと酸化剤によって得られる硬化型組成物は、混合することによって室温で硬化する。中でもチオール基含有ポリマーにポリサルファイドポリマーを使用した場合、得られる硬化物は良好な接着性、耐油性及び耐候性を有するためシーリング材として広く用いられている。
【0003】
1分子中に2個以上のチオール基含有ポリマー100重量部に対して、二酸化マンガン0.5〜50重量部と、老化防止剤0.01〜50重量部及び/又は酸化剤0.01〜50重量部とを含む硬化型組成物が知られていた。(特許文献1参照)。得られた硬化物は、温水浸せきしても引張強度の低下率が低く、良好な耐水性を有していた。しかしながら、被着体にガラスを使用し、ガラス越しに長期間促進暴露を行ったのち引張試験を行うと、接着面が劣化し接着破壊する面積が増えたり、引張強度が低下したりするという課題があった。特に複層ガラス用途においては、複層ガラスの長寿命化を達成するために、複層ガラス用シーリング材とガラスとの接着面の耐久性を改善する技術が求められていた。
【特許文献1】特開平9―217008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化速度が速く接着性が良好で、硬化物の接着面を促進暴露しても引張強度が低下せず、耐候性が良好であるため、シーリング材、接着剤及び塗料として好適に用いられる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材提供することである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して酸化剤0.5〜50重量部とシランカップリング剤0.1〜20重量部と粘着付与剤0.5〜50重量部とからなる硬化型組成物は、硬化速度が速く優れた接着性を有し金属、ガラス、ゴム、熱可塑性樹脂等様々な物質と接着する。特にガラスに接着した場合、接着面は促進暴露に対する安定性に優れる。
【0006】
本発明の硬化型組成物は、シーリング材、接着剤、コーティング剤等の用途に好適に用いることができる。特に複層ガラス用シーリング材として用いた場合、長期間接着力を保持することができるため好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、本発明によれば、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して酸化剤0.5〜50重量部とシランカップリング剤0.1〜20重量部と粘着付与剤0.5〜50重量部とからなる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、硬化速度が速く接着性が良好で、金属、ガラス、ゴム、熱可塑性樹脂等様々な物質と接着する。特にガラスに接着した場合、接着面は促進暴露に対する安定性に優れることを見いだした
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1](a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部と
(b)酸化剤0.5〜50重量部と
(c)シランカップリング剤0.1〜20重量部と
(d)粘着付与剤0.5〜50重量部
とからなる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いられる硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材における1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーについて説明する。
【0010】
(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー
本発明の1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーは、主鎖中にエーテル結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合及びエステル結合を含むものであってもよい。
【0011】
このような1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーの好ましい例として、特公昭47−48279号公報に記載されているポリオキシアルキレンポリオールや、米国特許第4,092,293号明細書及び特公昭46−3389号公報に記載されているポリメルカプタンが挙げられる。また、この他の既知化合物としては、米国特許第3,923,748号明細書に記載のチオール基末端液状ポリマー、米国特許第4,366,307号明細書に記載の液状チオエーテルでチオール基末端のもの等が挙げられる。さらに、特に好ましいポリマーは、下記記載のポリサルファイドポリマー、ポリサルファイドポリエーテルポリマー及びチオール基含有ポリエーテルポリマーである。
【0012】
このような一分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーの数平均分子量は、好ましくは100〜200,000であり、より好ましくは400〜100,000である。
【0013】
・ポリサルファイドポリマー
ポリサルファイドポリマーは、主鎖中に、
(ア)−(COCHOC−S)−(但し、xは1〜5の整数である。)で表される構造単位を含有し、かつ末端に、
(イ)−COCHOC−SHで表されるチオール基を有するものである。このポリサルファイドポリマーは、室温で流動性を有し、数平均分子量が好ましくは100〜200,000であり、より好ましくは400〜50,000である。このようなポリサルファイドポリマーの好ましい例は、米国特許2,466,963号明細書に記載されている。
・ポリサルファイドポリエ−テルポリマ−
好ましいポリサルファイドポリエーテルポリマーは、主鎖中に、
(ウ)−(RO) −(但し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜200の整数を示す。)で表されるポリエーテル部分と、
(エ)−(COCHOC−S)− 及び −(CHCH(OH)CH−S)−(但し、xは1〜5の整数である。)で示される構造単位とを含有し、かつ末端に、
(オ)−COCHOC−SH 及び/又は −CHCH(OH)CH−SHで示されるチオール基を有するものである。
【0014】
このポリサルファイドポリエーテルポリマー中において、(ウ)のポリエーテル部分と(エ)で示される構造単位は、任意の配列で結合していてよい。またその割合は、(ウ)の−(RO)−成分が2〜95重量%、(エ)の−(COCHOC−S)−成分が3〜70重量%、及び−(CHCH(OH)CH−S)−成分が1〜50重量%となることが好ましい。
【0015】
このポリサルファイドポリエーテルポリマーの数平均分子量は、通常600〜200,000であり、好ましくは800〜50,000である。このようなポリサルファイドポリエーテルポリマーは、例えば特開平4−7331号公報に記載されているように、ポリオキシアルキレングリコールにエピハロヒドリンを付加して得られるハロゲン末端プレポリマーとポリサルファイドポリマーを、95/5〜5/95のような重量比で水硫化アルカリおよび/または多硫化アルカリとともに反応させる方法により製造することができる。
【0016】
・チオール基含有ポリエーテルポリマー
チオール基含有ポリエーテルポリマーは、主鎖中に、
(ウ)−(RO) −(但し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜300の整数を示す。)で表される構造単位を含有し、かつ末端に、
(カ)−CHCH(OH)CH−SHで示されるチオール基を有するものである。このチオール基含有ポリエーテルポリマーは、数平均分子量が好ましくは100〜200,000であり、より好ましくは400〜50,000でる。このようなチオール基含有ポリエーテルポリマーの好ましい例は、特開平1−278557号公報に記載されている。
【0017】
さらに(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーは、特開昭63−145321号公報に記載されているようなシリル化試薬によりチオール基をトリアルキルシリルチオ基として保護したものであってもよい。
【0018】
このような1分子中に2個以上のトリアルキルシリルチオ基を含有するポリマーと酸化剤及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物は、一液硬化型組成物とすることが可能である。
【0019】
(b)酸化剤
本発明で用いられる酸化剤について説明する。本発明の酸化剤は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーのチオール基を酸化する物質であり、パラキノンジオキシム、過ホウ酸ナトリウム、ジニトロベンゼン、無機酸化物、無機過酸化物、有機過酸化物などが好ましく用いられる。無機酸化物として、具体的には、酸化鉛、酸化鉛(IV)鉛(II)、酸化アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、酸化バリウム、酸化銅、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、クロム酸ナトリウムなどが使用可能である。無機過酸化物としては、具体的に二酸化バリウム、二酸化鉛、二酸化マンガン、二酸化亜鉛、二酸化カルシウム、二酸化マグネシウムなどが使用可能である。有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド等が使用可能であり、具体的には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル4,4―ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレラート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1―ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)―3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジメチルオキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジベンゾイルパーオキサイド、ジサクシニル酸パーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジイソブチルロイルパーオキサイド等が使用できる。上記酸化剤は2種類以上用いても良い。特に二酸化マンガンを使用すると、硬化が速く好ましい。
【0020】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材中の酸化剤の含有量は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1.0〜30重量部である。酸化剤の含有量が、0.5重量部未満では十分に硬化しないことがあり、50重量部を超えると、コストが高くなる場合がある。
【0021】
(c)シランカップリング剤
本発明で用いられるシランカップリング剤について説明する。本発明のシランカップリング剤は、加水分解性シリル基と反応性有機官能基とを含有する化合物である。
【0022】
本発明に好ましく用いられるシランカップリング剤は、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。また、特開平6−271833号公報に記載のポリサルファイドポリマー“チオコールLP−3”と3―グリドキシプロピルトリメトキシシランを反応させて合成した末端トリメトキシシラン変性ポリサルファイドポリマーもシランカップリング剤として用いることができる。これらシランカップリング剤は2種以上を用いてもよい。
【0023】
本発明では、シランカップリング剤が、ビニル基、スチリル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、およびチオール基から選ばれる少なくとも一種の反応性有機官能基を含むシランカップリング剤であると、接着強度が強く好ましい。
【0024】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材中のシランカップリング剤の含有量は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜10重量部である。シランカップリング剤の含有量が、0.1重量部未満では接着強度が十分に得られないことがあり、20重量部を超えると、コストが高くなる場合がある。
【0025】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、シランカップリング剤を0.1〜20重量部加えた場合、プライマーの塗布といった前処理をしなくとも、特に、金属、ガラス、熱可塑性樹脂およびモルタル等の様々な素材に対して極めて強い接着強度を生じる。接着面は耐久性に優れ、長期間の加熱、温水浸せき、紫外線の照射を受けても接着強度が低下しない。
【0026】
(d)粘着付与剤
本発明で用いられる粘着付与剤について説明する。本発明で用いられる粘着付与剤は、プラスチックやゴムなどの高分子物質に添加して、粘着性を増加させる機能を有するものである。具体的には、クマロン・インデン樹脂、クマロン樹脂、ナフテン系油、フェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン誘導体、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、水添テルペン樹脂、α−ピネン樹脂、アルキルフェノール・アセチレン系樹脂、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド系樹脂、スチレン樹脂、C系石油樹脂、C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、C/C9共重合系石油樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド系樹脂等が挙げられる。なかでも、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、水添テルペン樹脂、スチレン樹脂、C系石油樹脂、C9系石油樹脂、C/C9共重合系石油樹脂は、耐候性が良く好ましい。これら粘着付与剤は2種以上を用いてもよい。
【0027】
クマロン・インデン樹脂とは、コールタール中のクマロン、インデン、スチレンなどの混合物をカチオン重合させたものである。
【0028】
テルペン樹脂とは、松属の木から得られるテルペン油あるいは重合可能成分を、フリーデルクラフト触媒を用いて重合してしたものである。分子構造的にはα−ピネンが主体で、β−ピネンカンフェル、ジペンテンなどの環状テルペンを含む。テルペン樹脂は、耐候性が良く好ましい。
【0029】
変性テルペン樹脂とは、松属の木から得られるテルペン油あるいは重合可能成分と油脂または、芳香族化合物とを共重合して得られるものである。油脂には亜麻仁油等が用いられる。変性テルペン樹脂は耐候性が良く好ましい。
【0030】
テルペン・フェノール樹脂とは、松属の木から得られるテルペン油あるいは重合可能成分と種々のフェノール樹脂をフリーデルクラフト触媒により共重合して得られる。軟化点が高く、凝集力、タック、粘着力に優れる。テルペン樹脂・フェノール樹脂は耐候性が良く好ましい。
【0031】
水添テルペン樹脂は、テルペン樹脂の不飽和炭素結合に水素を付加し飽和させて得られるものである。水添テルペン樹脂は極めて耐候性が良く好ましい。
【0032】
スチレン樹脂は、ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンをつくり、脱水素して得られるスチレンモノマーを、塊状重合、溶液重合、乳化重合または懸濁重合など適当な重合方法で重合することによって得られるものである。無色透明で、耐水性、耐薬品性が高い。
【0033】
系石油樹脂とは、C留分をフリーデルクラト触媒によりカチオン重合して得られたものである。主成分はイソプレン、ピペリレン、2−メチルブテン−1等の共重合体で、環化構造を有することが多い。C系石油樹脂は耐候性が良く好ましい。
【0034】
9系石油樹脂とは、C〜C11留分をフリーデルクラフト触媒により共重合して得られる。主成分はスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデンなどの共重合体で、環化構造を有することが多い。C9系石油樹脂は耐候性が極めて良く好ましい。
【0035】
/C9共重合系石油樹脂とは、C留分とC留分を共重合して得られたものである。C/C9共重合系石油樹脂は耐候性が良く好ましい。
【0036】
ロジンとは、生松やに、トール油などに含有されている樹脂であり、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの3種類がある。主に、アビエチン酸の様な樹脂酸と中性成分から成る。
【0037】
ロジンエステルとは、ロジンをペンタエリスリトール、グリセリン等を用いてエステル化したものである。
【0038】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーラント中の粘着付与剤の含有量は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1.0〜30重量部である。粘着付与剤の含有量が0.5重量部未満では、接着性の改善効果が十分に得られないことがあり、50重量部を超えると取り扱いが困難になる程度に配合物の粘度が高くなる場合がある。
【0039】
粘着付与剤の溶解度パラメーターが、8.0〜10.0であると1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーや可塑剤との相溶性が良く好ましい。より好ましくは8.5〜9.5である。溶解度パラメーターが8.0未満および10.0を超える場合、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーや可塑剤との相溶性が悪くなる場合がある。特に1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーや可塑剤との相溶性が良い接着付与剤は、テルペン・フェノール樹脂、ロジンエステル、C系石油樹脂、C/C9共重合系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、変性テルペン樹脂、スチレン樹脂である。
【0040】
粘着付与剤の軟化点が、60℃〜200℃であると接着性の改善効果が高く好ましい。より好ましくは80℃〜180℃であり、さらに好ましくは100℃〜160℃である。軟化点が60℃未満であると接着性の改善効果が得られないことがある。また、200℃を超えると1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーや可塑剤との相溶性が悪くなることがある。
【0041】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、経済性、組成物を施工する際の作業性及び硬化後の物性を改良する目的で、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、パーライト、セラミックバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、プラスチックバルーン等の中空微小球等の充填材を含有することができる。
【0042】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、経済性、組成物を施工する際の作業性及び硬化後の物性を改良する目的で、フタル酸エステル、ブチルベンジルフタレート、塩素化パラフィン、水添ターフェニル、特開2004―51918号公報記載の炭化水素系可塑剤等の可塑剤を含有することができる。
【0043】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる炭化水素系可塑剤としては、特公昭56−14705号公報、特公昭56−15440号公報、特公昭57―56511号公報等に例示されているようなジアリールアルカン型の化合物、トリアリールジアルカン型の化合物、スチレンの2〜3重合体とアルキルベンゼンとの反応生成物からなる高沸点芳香族炭化水素が使用できる。炭化水素系可塑剤は、吸湿性が小さく、また炭化水素系可塑剤を含む硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材はガスの遮断性が高くなり好ましい。
【0044】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、経済性、組成物を施工する際の作業性及び硬化後の物性を改良する目的で、特開2000−344853号記載の脂肪酸エステル、特開2001−64504号記載の紫外線吸収剤、酸化防止剤、石鹸、特開2001−220423号記載の1分子中に、−S−(但し、xは2以上の整数)を1つのみ持つ有機ポリサルファイド化合物を含有することができる。
【0045】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる脂肪酸エステルとしては、脂肪酸と1価又は2価のアルコールからなるワックスや、脂肪酸とグリセリンからなる脂肪酸グリセリンエステル(以下脂肪酸グリセライド)の使用が可能であり、酸基は飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸であってもよい。飽和脂肪酸としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグリノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸が挙げられ、不飽和脂肪酸としてはトウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、マッコウ酸、ミリストオレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、鯨油酸、エルシン酸、サメ油酸、リノール酸、ヒラゴ酸、エレオステアリン酸、ブニカ酸、トリコサン酸、リノレン酸、モロクチ酸、パリナリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ヒラガシラ酸、ニシン酸が挙げられる。
【0046】
上記脂肪酸エステルの内、特に脂肪酸グリセライドが好ましく、酸基が飽和脂肪酸であるステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノジグリセライド、酸基が不飽和脂肪酸であるオレイン酸モノグリセライド、オレイン酸モノジグリセライド、さらにこれら酸基が混在するオレイン酸ステアリン酸モノジグリセライドが挙げられる。
【0047】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、ニッケル塩及びニッケル錯塩系が挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、ニッケル塩、ニッケル錯塩系の紫外線吸収剤であり、とりわけベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0048】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる紫外線吸収剤は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンソトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケルなどが挙げられる。
【0049】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が上げられる。フェノール系酸化防止剤は、ポリサルファイドポリマーとの相溶性が良く好ましい。
【0050】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる酸化防止剤は、1,3,5‐トリス[[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシフェニル]メチル]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、1,1,3‐トリス(5‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐2‐メチルフェニル)ブタン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタン、2,2‐ビス[[[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン‐1,3‐ジオール1,3‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン),
4,4′,4′′‐[(2,4,6‐トリメチルベンゼン‐1,3,5‐トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0051】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材に含有することができる1分子中に−Sx−(但し、xは2以上の整数)を1つのみ持つ有機ポリサルファイド化合物としては、脂肪族及び/又は芳香族基を持つ直鎖状もしくは環状化合物が挙げられる。1分子中に−Sx−(但し、xは2以上の整数)を1つのみ持つ有機ポリサルファイド化合物としては、ジメチルジサルファイド、ジ−t−ブチルジサルファイド、ジチオジグリコール酸、ジチオプロピオン酸、ジチオプロピオン酸エステル、ジチオ安息香酸、ジチオサリチル酸、ジ−t−ノニルポリサルファイド、ジ−t−ドデシルポリサルファイド、ジフェニルジサルファイド、ジベンジルジサルファイド、レンチオニン、スポリデスミン等が挙げられる。特に好ましい1分子中に−Sx−(但し、xは2以上の整数)を1つのみ持つ有機ポリサルファイド化合物は、臭気の少ないジ−t−ドデシルポリサルファイドである。
【0052】
本発明の硬化型組成物および複層ガラス用シーリング材は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、酸化剤0.5〜50重量部と、シランカップリング剤0.1〜20重量部と、粘着付与剤0.5〜50重量部とを含有する。本発明の硬化型組成物は、常温で素早く硬化しゴム状弾性体となる。
【0053】
本発明の硬化型組成物は、特に1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーにポリサルファイドポリマーを使用した場合、硬化物は水、種々の溶剤、燃料油、酸、アルカリに対する抵抗性が高く浸漬しても膨潤が少ない。また、ポリマーにポリブタジエンポリオールや、ポリシロキサンを用いた硬化物に比べ、気体、水蒸気の遮断性に優れている。
【0054】
本発明の硬化型組成物を複層ガラスのシーリング材として用いた場合、金属やガラスに対する自着力が強いため、プライマーの塗布といった前処理を必要とせず良好である。また、耐候性に優れるため、サンシャインウェザオーメーターによる促進曝露を長期間行っても剥離等による結露の問題が生じず良好である。
【実施例】
【0055】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【0056】
実施例1〜3
ポリサルファイドポリマー(東レ・ファインケミカル(株)製、「チオコールLP−23」)に、可塑剤、添加剤及び充填剤を表1の割合で配合し、さらに表2に示す粘着付与剤を添加しミキサーで混合することによって主剤を得た。一方で、二酸化マンガンに、可塑剤、加硫促進剤及び充填剤を表1の割合で添加し、小形三本ロールにて混合することによって硬化剤を得た。主剤と硬化剤を10:1(重量比)で量り取り、ヘラにて混合することでシーラント混合物を得た。得られたシーラント混合物は以下の方法で評価した。
【0057】
硬度の測定は、JIS K 6253−1997の「5.デュロメータ硬さ試験」に従って行った。測定には、タイプAデュロメータを使用した。試験体には、硬化型組成物を、80mm × 30mm、 厚さ10mmのシート状に成型し、23℃55%R.H.(相対湿度)にて24時間硬化したものを用いた。
【0058】
引張試験は、JIS A 1439−2004の「5.20 引張接着性試験」に従って行った。試験体は、5.17.2に従って作成した。硬化条件は23℃55%R.H.(相対湿度)にて7日間とした。また、被着体にはガラス板を用いた。
【0059】
促進暴露後の引張試験は、JIS A 1439−2004の「5.20.4 e)促進暴露後の引張試験」に従っておこなった。試験期間は、最大2000時間とし、1000時間おきに引張試験を行うことで、初期に対する最大引張応力の保持率を求めた。試験体は、「5.17.2」に従って作製した。硬化条件は23℃55%R.H.(相対湿度)にて7日間とした。また、被着体には、ガラス板を用いた。促進暴露試験装置には、サンシャインウェザーメーター WEL−SUN−HC(スガ試験機(株)製)を使用した。結果を表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
比較例1〜2
実施例で用いた主剤から、シランカップリング剤および粘着付与剤を加えずに作製したシーラント混合物と比較例1、さらに、実施例で用いた主剤から、粘着付与剤のみを加えずに作製したシーラント混合物を比較例2として実施例と同様の試験を実施した。比較例1は、硬度は実施例と同等であり硬化速度が速いが、引張試験ができる程度に接着せず接着性が悪かった。また、比較例2は、硬度、引張試験の結果はいずれも実施例と同等であるが、2000時間という極めて長い時間促進暴露を行うとの引張強度の保持率が64%と低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して(b)酸化剤0.5〜50重量部と(c)シランカップリング剤0.1〜20重量部と(d)粘着付与剤0.5〜50重量部からなる硬化型組成物
【請求項2】
1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーが、ポリサルファイドポリマーである請求項1に記載の硬化型組成物。
【請求項3】
酸化剤が二酸化マンガンである請求項1または2に記載の硬化型組成物。
【請求項4】
粘着付与剤の溶解度パラメーターが、8.0〜10.0である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項5】
粘着付与剤の軟化点が、60℃〜200℃である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項6】
粘着付与剤が、C系石油樹脂、C/C9共重合系石油樹脂、変性テルペン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、スチレン樹脂、クマロン・インデン樹脂、ロジンエステルである請求項1〜5のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの硬化型組成物であることを特徴とする複層ガラス用シーリング材。

【公開番号】特開2008−127555(P2008−127555A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317978(P2006−317978)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】