硬化性の無機系充填材、漏油止め工法、漏油止めキット
【課題】狭隘箇所にて発生する漏油を確実に止めることが可能であり、かつ早期補修を可能にする。
【解決手段】漏油止め工法であって、油路を形成する配管21、22の継手30を囲む筒型の型枠50を形成する型枠形成ステップと、型枠50に形成された開口57から無機系充填材Uを流し込む充填する充填ステップと、型枠50内にて無機系充填材Uを硬化させる硬化ステップと、を含み、型枠形成ステップでは、継手30より大径な円盤型の端板51、52を配管21、22上に取り付けた後、一枚のシート材55を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板51、52の外周面に各々貼り合わせることによって、円筒型の型枠50を形成することを特徴とする。
【解決手段】漏油止め工法であって、油路を形成する配管21、22の継手30を囲む筒型の型枠50を形成する型枠形成ステップと、型枠50に形成された開口57から無機系充填材Uを流し込む充填する充填ステップと、型枠50内にて無機系充填材Uを硬化させる硬化ステップと、を含み、型枠形成ステップでは、継手30より大径な円盤型の端板51、52を配管21、22上に取り付けた後、一枚のシート材55を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板51、52の外周面に各々貼り合わせることによって、円筒型の型枠50を形成することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油路を形成する配管の漏油を止める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油入電気機器の継手には、気密性を確保するためにパッキンが挿入されている。しかし、パッキンの不具合によって、気密が不十分になって漏油に至るケースがある。下記特許文献1には、液状エポキシ樹脂に硬化剤を混和させたシーリング剤200を継手230に塗布して封止することで油止めを行う工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−111318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏油箇所にシーリング剤200を塗布して油止めする工法は、一箇所でも塗布ミスがあると、そこから油が漏れてしまう。そのため、作業スペースが確保し難い狭隘部分では、油止めを確実に行うことが難しかった。
【0005】
また、シーリング剤200は粘度が高いので、へらで塗り込んでも、継手表面の微小なキズ210や凹凸の内側に行き渡らず、隙間が出来易い(図20参照)。そのため、隙間が出来ないように、補修個所の塗装を剥がして表面を平らな面に研磨するケレン作業(下地作業)を行う必要がある。しかし、ケレン作業(下地作業)は熟練な技術が必要であることから、専門業者に作業を依頼する必要がある。そのため、作業を発注してから、それが実施されるまでに数ケ月の期間を要することがあり、漏油箇所の補修を早期に行うことが出来ない、という問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、狭隘箇所にて発生する漏油を確実に止めることが可能であり、かつ早期補修を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、漏油止め工法であって、油路を形成する配管の継手又は配管に設けられたバルブを囲む筒型の型枠を形成する型枠形成ステップと、前記型枠に形成された注入口から硬化性の無機系充填材を前記型枠内に流し込む充填する充填ステップと、前記型枠内にて前記硬化性の無機系充填材を硬化させる硬化ステップと、を含み、前記型枠形成ステップでは、前記継手又はバルブの外形より大きな端板を、前記継手又はバルブの両側に一定距離離して前記配管上に取り付けた後、一枚のシート材を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板の外周面に各々貼り合わせることによって、前記一枚のシート材を外周壁とし前記端板を端面とする筒型の型枠を形成するところに特徴を有する。
【0008】
本発明では、型枠に無機系充填材を流し込むと、無機系充填材が型枠内に行き渡り、継手や弁の周りを囲む。その後、無機系充填材は水和反応により硬化する。これにより、硬化した無機系充填材が継手や弁の全体を覆うことにより、油止めする。このように本発明では、無機系充填材自体の流動性を利用して、継手や弁の周囲に無機系充填材を行き渡らせるようにしている。そのため、作業スペースの狭い狭隘部分であっても、型枠に流し込みさえすれば、継手や弁の周囲に無機系充填材を行き渡らせることが可能であり、漏油を確実に止められる。
【0009】
また、本発明では、型枠を最小の作業回数、すなわち、端板を配管上に取り付ける作業と、シート材を筒型に曲げながら端板の外周面に貼り合わせる作業の2回の作業で作製できる。従って、型枠製作作業について作業効率がよい。また、外周壁を一枚のシート材で形成しているので継ぎ目が少なく、型枠に対する無機系充填材の液漏れを最小限に抑えることが可能となる。従って、型枠に対する無機系充填材の投入量を最小にできる。
【0010】
また、型枠に流し込む無機系充填材は、低粘度で流動性が高いため、継手表面の微小なキズや凹凸の内側に入り込み隙間を埋める。そのため、表面のキズや凹凸をわざわざ研磨しなくても、油の通り道が出来ない。以上のことから、ケレン作業を廃止することが可能となり、経験の浅い作業者でも簡単に補修作業を行うことが可能となった。
【0011】
本発明の漏油止め工法の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・型枠形成ステップにて、前記配管の外周面に粘着テープを重ね巻きすることにより、前記端板を形成する。このようにしておけば、粘着テープの巻き数を調整することで、端板の大きさを自由に変えることが出来る。そのため、継手やバルブの大きさごとに専用の端板を設ける必要がなく、コストメリットが高い。
【0012】
・前記継手の外周面に自己融着テープを巻き付けて前記継手の合わせ面を仮封止する。このようにすれば、型枠内で硬化性の無機系充填材が硬化する間、油が型枠側に漏れるのを防止できる。
【0013】
本発明は、漏油止めに使用する硬化性の無機系充填材であって、石膏とセメントとを含む無機系結合材に合成樹脂エマルションを混和させたものであり、粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)であり、23℃での凝結時間が20分〜120分であるところに特徴を有する。粘度が上記範囲にあれば、型枠に対する充填性が良好であり、材料の分離がない。また、凝結期間が上記範囲にあれば、充填性が良好であり、油の浮きを抑えることが可能となる。また、本明細書を通じて、粘度が20000mPa・s以下である場合を低粘度と言う。また、ここで言うセメントには、水硬性セメント、気硬性セメントの双方が含まれる。
【0014】
本発明の無機系充填材の実施態様として、合成樹脂エマルションの樹脂固形分と無機系結合材の重量比P/Cが0.15〜0.6であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、狭隘箇所にて発生する漏油を確実に止めることが可能であり、かつ早期補修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1における漏油止めキットのパーツ構成を示す図
【図2】油入変圧器の正面図
【図3】継手の構造を示す斜視図
【図4】継手の洗浄作業を示す斜視図
【図5】配管に養生テープを巻いた状態を示す斜視図
【図6】配管にバックアップテープを巻き付ける作業を示す斜視図
【図7】継手の両側に端板を取り付けた状態を示す斜視図
【図8】図7の平面図
【図9】継手の外周面に自己融着テープを貼り付けた状態を示す斜視図
【図10】シート材の組み付け作業を示す斜視図
【図11】型枠が完成した状態を示す斜視図
【図12】図11の平面図
【図13】型枠に無機系充填材を流し込む作業を示す斜視図
【図14】型枠内にて無機系充填材が硬化した状態を示す斜視図
【図15】型枠を取り外した状態を示す斜視図
【図16】油入電気機器の正面図
【図17】実施形態2において型枠が完成した状態を示す斜視図
【図18】型枠の注入口に漏斗を差し込んだ状態を示す斜視図
【図19】端板を2枚の半円板から形成する例を示す図
【図20】継手の表面を拡大した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図16を参照して説明する。
1.硬化性の無機系充填材Uの組成と条件
無機系充填材Uは、粉末状の主材(無機系結合材にフィラーや添加剤等を加えたもの)U1に、混和液(合成樹脂エマルションに添加剤等加えたもの)U2、必要に応じて水を混ぜて混練したものである。無機系結合材は、石膏(半水石膏)に水硬性セメントや気硬性セメントを配合したものであり、無機系充填材Uは混練後、水和反応により硬化する。尚、係る無機系充填材Uは、ポリマーセメントの一種である。
【0018】
無機系充填材Uの用途は、油路を形成する配管の継手等で発生する漏油止めであり、型枠50に充填後硬化した時に、漏油箇所の全体を覆って封止しなければいけない。そのため、型枠50に対する充填不良がないように、無機系充填材Uは粘性が低く流動性が高い必要があり、その一方で、材料の分離の問題や作業時間の問題があるので、硬化が速すぎても、遅すぎても使用条件を満たさない。
【0019】
無機系充填材Uの粘度は、石膏とセメントの配合比や、粘性調整剤の量によって調整することが可能であり、無機系充填材Uの凝結時間は、P/Cの値や硬化遅延剤の量によって調整することが可能である。尚、P/Cとは、合成樹脂エマルションの樹脂固形分Pと無機系結合材Cの重量比である。
【0020】
そこで、出願人は、無機系充填材Uについて粘度、凝結時間の異なるサンプルを準備して、型枠50に対する充填性や材料の分離の有無について検証・評価したところ、次の条件を満たすと、漏油止めに使用可能であるという知見を得た。
【0021】
(1)混練後の粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)
(2)23℃での凝結時間が20分〜120分
尚、ここで言う凝結時間とは、凝結の終了時間を意味する。
【0022】
(1)の条件としたのは、粘度が上限(20000mPa・s)を超えると、型枠50に対する充填性が悪くなり、粘度が下限(1000mPa・s)を下回ると、材料が分離し石膏が沈降するからである。そして、より好ましい粘度の条件としては、1200〜15000mPa・sであり、粘度がその範囲にあれば、充填性が極めて良好であり、材料の分離が全くない。
【0023】
また、(2)の条件としたのは、凝結時間が上限(120分)を超えると、硬化する過程で、補修個所から漏れ出る油が、無機系充填材U中に浮き出して油の通路を作ってしまうからである。また、凝結時間が下限(20分)を超えると、主材U1に混和液U2、水を混ぜて混練した直後に粘度が高くなり、型枠50への充填性が低下するからである。そして、より好ましい凝結時間の条件は30分〜90分であり、凝結時間がその範囲にあれば、充填性が極めて良好であり、油の浮きをほぼ抑えることが可能となる。
【0024】
表1には(1)、(2)の条件の検証・評価に使用したサンプルについて配合比(重量比)、P/C、粘度、凝結時間を示した。表1に示すように、配合1〜配合5は粘度と凝結時間の条件を満足しており、漏油止めに使用可能である。また、配合6は粘度の条件は満たすものの、凝結時間が120分以上となり使用できない。
【0025】
【表1】
【0026】
尚、配合1〜配合6において、石膏(半水石膏)は目開き90μmの篩(ふるい)の残分が1w%以下のものを使用した。セメントにはホワイトセメント(白色ポルトランドセメント)を使用した。合成樹脂エマルションはアクリル系樹脂エマルションであり、樹脂固形分50w%、平均粒子径0.2〜0.3μmとした。また、添加剤には、減水剤、粘性調整剤、硬化遅延剤などが含まれている。
【0027】
また、粘度はB型粘度計で測定(測定条件:23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)した。また、凝結時間は、JIS−R5201の「凝結試験」に準拠して測定した凝結の終結時間(測定条件:23℃、但し、測定は5分毎に実施した)である。
【0028】
次に、透油性能試験について説明する。透油性能試験は、配合1〜配合6の材料を使用して作製した試験体に対して、作製から2日後にガラス管を表面に取り付けて油を注ぎ、一定期間後(1ヶ月後)における浸透度合いを評価するものである。尚、試験体は10cm×10cmの板であり、厚さを2mm、5mm、10mmの3パターンで行った。また、油は低粘度(ISO粘度規格VG22)の機械用潤滑油を使用した。
【0029】
透油性能試験は、次の結果となった(表2参照)。試験体1〜3は試験体の裏面から油が浸み出ており、NGとなった。また、試験体5は試験体の裏面に薄っすらと変色がみられた。それ以外の試験体は油の浸透がなくOKとなった。
【0030】
【表2】
【0031】
以上の事から、無機系充填材Uの厚みが厚い程、油が浸透し難い事が分かった。また、合成樹脂エマルションU2の量を多くする(P/Cが大きい)と、油が浸透し難くなることが分かった。
【0032】
次に、耐油性能試験について説明する。耐油性能試験は、配合1〜配合6の材料を使用して作製した試験体を、作製から3日後に油に浸漬し、一定期間後(1ヶ月後)における試験体の状態を評価するものである。尚、試験体は10cm×10cm×5mmの板状とした。
【0033】
耐油性能試験は次の結果となった(表3参照)。試験体a〜eはいずれも変質しておらず、十分な耐油性を持つことが分かった。また、試験体fは軟化していた。そのため、合成樹脂エマルションの量を多くする(P/Cが大きい)と、耐油性が低下することが分かった。
【0034】
【表3】
【0035】
従って、非浸透性と耐油性の双方を満足するには、無機系充填材Uの厚みを5mm以上とし、P/Cを0.15〜0.60(配合2〜配合5)にすればよい事が分かった。また、P/Cの範囲は、0.15〜0.45がより好ましく、その範囲を使用することで、耐油性が一層高まる。
【0036】
2.漏油止めキットZ
漏油止めキットZは、以下(a)〜(g)の材料から構成されている(図1参照)。
(a)石膏とセメントとを含む無機系結合材にフィラー(炭酸カルシウム)や添加剤を添加した粉末状の主材U1
(b)混和剤(合成樹脂エマルション、水、添加剤)U2
(c)シート材55
(d)バックアップテープ(本発明の「粘着テープ」に相当)45
(e)養生テープ42
(f)自己融着テープ47
(g)その他(洗浄用のスプレー41、プライマー44)
【0037】
3.漏油止め工法
次に油入変圧器を例示して、上記漏油止めキットZを使用した漏油止め工法の説明を行う。図2に示すように、油入変圧器10は、トランスを収容した機器本体11と、コンサベータ12と、ブッシング13と、ラジエータ15とを備えている。そして、機器本体11とラジエータ15との間には上下一対の配管(油路を形成する配管)21、22が通されていて、機器本体11内の絶縁油をラジエータ15側に循環させて冷却させる構成となっている。
【0038】
各配管21、22は、2つのフランジF1、F2をボルトBTにより締結した継手30を介して相手配管に対して結合されている(図3参照)。係る継手30は、フランジF1、F2間に介挿したパッキンによってフランジF1、F2の合わせ面Gをシールして油の漏れを防いでいる。しかし、パッキンは外気温の変化に伴って熱収縮するため、気密が不十分になって漏油に至るケースがある。以下、配管21上に設けられた継手30で漏油が発生した場合を例にとって、漏油を如何様に止めるか説明を行う。
【0039】
漏油が発生したら、まず、図4に示すように継手30や配管21、25の表面に、スプレー41で洗浄剤を吹きつけた後、ウエスでそれを拭き取って、継手30や配管21、25の表面の油分、汚れを落とす作業を行う。
【0040】
そして、汚れが落とせたら、次に継手30を囲む円筒型の型枠50の作成する。それには、まず、継手両側の各配管21、25に対して、継手30から一定距離離して養生テープ42を巻いて貼り付ける作業を行う(図5参照)。尚、養生テープ42は、型枠50を外し易くする(次に説明するバックアップテープ45を剥がし易くする)ものであるので、粘着性が弱いものが好ましく、幅はバックアップテープ45の2倍程度が好ましい。
【0041】
養生テープ42が貼れたら、刷毛を使用して、継手30や配管21、25の表面にプライマー(下塗り剤)44を塗る作業を行う。プライマー44を塗るのは、継手30や配管21、25に対する無機系充填材Uの付着性を向上させるためである。
【0042】
次に、継手30の両側に、継手30から一定距離離して円形の端板51、52を作る作業を行う。この実施形態では、基材の裏面に粘着層を設けたバックアップテープ45を、養生テープ42上に重ね巻きすることで、円形の端板51、52を作るようにしている(図6、図7参照)。
【0043】
端板51、52は、型枠50の端面を形成するものであり、継手30の外周より大きくする必要がある。この例では、型枠50内で硬化する無機系充填材Uの厚みが10mmm程度は確保されるように、左右の端板51、52の大きさを継手30の外形より10mm程度大きくした(図8参照)。
【0044】
また、バックアップテープ45の基材46には、作業性を考慮して柔軟性を有する素材(一例として発泡ポリエチレン)を使用し、厚みは約1mmで、幅が約15mmのものを使用した。また、バックアップテープ45は、重ね巻きする際に、途中で形が崩れたり、剥がれないように粘着力の強いものを使用するとよい。
【0045】
そして、端板51、52を作製する作業が完了したら、次に自己融着テープ47を引っ張って伸ばしながら、継手30の外周面に巻き付ける作業を行う。これにより、継手30の外周面は自己融着テープ47により被覆され、フランジF1、F2の合わせ面Gが仮封止された状態になる(図9参照)。
【0046】
次に、型枠50の外周壁となるシート材55を、端板51、52の大きさに合わせて加工する作業を行う。具体的には、横幅L1を端板51、52間のピッチP1と同じ寸法になるように加工し、全長L2を端板51、52の周長より5〜10cm程度短く加工する(図10参照)。シート材55の全長L2を、端板51、52の周長より短くするのは、無機系充填材Uを流し込むための開口57を作る必要があるからである。
【0047】
そして、加工できたら、シート材55の両縁部(幅方向の両縁)に両面粘着テープを貼り付けて粘着層56を形成する作業を行う。尚、シート材55は柔軟性を有する材料が好ましく、この例では厚みが約0.5mmのPPシート(ポリプロピレンシート)を使用した。
【0048】
次に2枚の端板51、52に、加工したシート材55を貼り合わせる作業を行う。それには、まず、加工したシート材55を粘着層56を上に向けて、継手30の下側に潜り込ませると共に、図10に示すように幅方向両側の粘着層56が、各端板51、52の真下になるように位置を合わせる。その後、シート材55をゆっくり持ち上げてゆき、2枚の端板51、52の下端に下方から接触させる。
【0049】
あとは、シート材55の前後両側を上方向に丸めてゆく。これにより、シート材55の両縁部が、粘着層56を介して、端板51、52の外周面に貼り合わされる。これにて、図11、図12に示すように、外周壁の上端部に開口(本発明の「注入口」に相当)57を有する筒型の型枠(一枚のシート材55を外周壁とし、端板51、52を端面とする円筒型の型枠)50が完成する(型枠形成ステップ)。
【0050】
型枠50が完成したら、次に、図13に示すように型枠上部の開口57から無機系充填材Uを流し込んで、型枠50内に充填させる(充填ステップ)。無機系充填材Uの配合は表1の配合2であり、23℃での混練後の粘度は1550mPa・sである。従って、流動性が高く、無機系充填材Uは充填後、型枠50内の隅々に行き渡り、継手30の周囲を隙間無く囲む。
【0051】
そして、型枠50内に無機系充填材Uを充填する作業が完了したら、あとは、充填した無機系充填材Uが水和反応によって硬化するのを待てばよい。この例では、表1に示す配合2の無機系充填材Uを使用しており、凝結時間(終結時間)は約45分である。そのため、主材U1に混和剤U2と水を混ぜて混練してから約45分過ぎると、無機系充填材Uは凝結し、その後、硬化反応が進んで硬化体となり、継手30の全体を覆う封止層Zを形成する(硬化ステップ)。
【0052】
以上のことから、継手30は封止層Zにより密閉された状態になるので、油止めされる。尚、型枠50を取り外すには、シート材55を剥がした後、バックアップテープ45を養生テープ42と共に剥がしてやればよく、これにより、図15に示すように、継手30の全体を覆う封止層Zから型枠50だけを簡単に除去できる。
【0053】
4.効果説明
本実施形態の漏油止め工法では、型枠50に無機系充填材Uを充填し、それを型枠50内にて硬化させることで、継手30の全体を覆う封止層Zを形成する。そして、無機系充填材Uは低粘度であり流動性が高いから、継手表面の微小なキズや凹凸の内側に入り込み隙間を埋める。以上のことから、表面のキズや凹凸をわざわざ研磨しなくても、油の通り道が出来ない。そのため、ケレン作業を廃止することが可能となり、経験の浅い作業者でも簡単に補修作業を行うことが可能となった。以上のことから、漏油発生後の早期段階で補修が可能となった。
【0054】
継手30の外周面にシーリング剤を塗布する従来の工法は一箇所でも塗布ミスがあると、そこから油が漏れてしまう。一方、油入電気機器の構造は様々であり、図16に示すように機器本体70にラジエータ80が隣合うように配置されていることがある。このように機器の壁同士が隣接する狭隘箇所は、作業スペースがなく、従来の工法では油止めを確実に行うことが難しかった。
【0055】
この点、本実施形態の漏油止め工法では、無機系充填材Uの流動性を利用して継手30の全体を覆う封止層Zを形成している。そのため、作業スペースを確保することが難しい狭隘箇所であっても、型枠50さえ正確に作れば、あとは、無機系充填材Uを流し込むだけで、型枠形状通りの封止層Zが形成でき、継手30の全体を覆う。従って、漏油を確実に止めることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の漏油止め工法では、型枠50を最小の作業回数、すなわち、配管21、25上に円盤型の端板51、52を取り付ける作業と、シート材55を端板51、52の外周面に貼り合わせる作業の2回の作業で製作できる。従って、型枠作製作業について作業効率がよい。また、型枠50の外周壁を1枚のシート材55で作っており、継ぎ目が少ない。そのため、型枠50に対する無機系充填材Uの液漏れを最小限に抑えることが可能となる。従って、型枠50に対する硬化性の無機系充填材Uの投入量を最小にできる。
【0057】
また、本実施形態の漏油止め工法では、バックアップテープ45を重ね巻きして端板51、52を形成している。そのため、継手30の大きさに応じて、バックアップテープ45の巻き数を変えることで、端板51、52の大きさを継手30の大きさに合わせて変更出来る。従って、継手30や配管21の種類、大きさごとに専用の端板51、52を設ける必要がなく、コストメリットが高い。
【0058】
また、型枠50内に充填した硬化性の無機系充填材Uが硬化する間に、継手30から多量の油が漏れると、封止層Zに油の通り道が出来て、そこから油が漏れてしまう。この点、本実施形態の漏油止め工法では、継手30の外周面に自己融着テープ47を貼り付けて継手30の合わせ面を仮封止し、無機系充填材Uが硬化する間、油が型枠50側に漏れ出るのを防止するようにした。従って、封止層Zに油の通り道を作らせない。そのため、漏油を確実に止めることが可能となる。
【0059】
また、使用状況に応じて漏油の原因となったパッキンを交換する場合には、封止層Zを取り除く必要がある。この点、本実施形態では、無機系充填材Uの主成分は石膏であり、衝撃を加えれば、比較的簡単に破壊できる。従って、封止層Zを簡単に除去できる。
【0060】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図17、図18によって説明する。実施形態2では、補修対象の配管121、125の向きが上下方向である場合について説明する。この場合も、漏油が発生したら、継手130や配管121、125の表面の油分、汚れを落とす作業を最初に行う。
【0061】
その後、継手両側の各配管121、125に対して養生テープ42を貼り付ける作業を行うと共に、養生テープ42上にバックアップテープ45を重ね巻きして、継手130の両側に一定距離離して円形の端板151、152を作る作業を行う。
【0062】
そして、端板151、152が出来たら、次にシート材155を所定の大きさに加工し、それを丸めながら端板151、152に貼り合わせる。このとき、型枠150の外周面に隙間が出来ないように、シート材155の前端155Fと後端155Rを突き合わせてビニルテープ160などで閉じる。
【0063】
次に、図17に示す上側の端板151に、カッターなどで注入口157を開ける。その後、注入口157に差し込んだ漏斗170に無機系充填材Uを流し込んで、型枠150内に無機系充填材Uを充填させる。その後、充填された無機系充填材Uは、水和反応によって型枠150内にて硬化して、継手130の全体を覆うことにより、封止層Zを形成する。以上のことから、配管121の向きが上下方向を向いている場合も、実施形態1と同様に漏油止めできる。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
(1)上記実施形態1では、油入電気機器の一例に変圧器を例示したが、絶縁油を使用して機器の冷却、絶縁を行うものであれば適用可能であり、例えば、油入遮断器、油入開閉器等に使用できる。また、それ以外にも油を使用する機器であれば、使用できる。
【0066】
(2)上記実施形態1では、本発明の漏油止め工法を説明するにあたり、配管を結合する継手で漏油が発生した場合を例にとって説明したが、本発明の漏油止め工法は、配管に設けられたバルブで漏油が発生した場合にも適用できる。すなわち、バルブを囲むように筒型の型枠を作って、そこに硬化性の無機系充填材Uを流し込んで硬化させればよい。
【0067】
(3)上記実施形態1では、バックアップテープ45を重ね巻きすることによって、端板51、52を形成した例を示した。端板51、52の形成方法は、バックアップテープ45を重ね巻きする方法以外にも、例えば、図19に示すように、2枚の半円形板81、82を突き合わせて形成することが可能である。また、端板の形状は、角が無い滑らかな外形(曲線形状)であれば、必ずしも円形である必要はない。
【0068】
(4)上記実施形態1では、バックアップテープ45の一例として、基材の材質を発泡ポリエチレン製としたが、例えば、圧縮ウレタン等も使用可能である。
【0069】
(5)上記実施形態1では、シート材55の一例にPPシートを例示したが、例えば、PETシートや薄い金属シート等も使用可能である。
【0070】
(6)上記実施形態1では、合成樹脂エマルションの一例にアクリル系樹脂エマルションを例示したが、通常、セメントなどの無機系結合材と混合して用いられる樹脂であれば使用可能である。例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等のカルボン酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のエマルションも使用可能である。
【0071】
(7)上記実施形態1では、無機系結合材の一例として、半水石膏にホワイトセメント(白色ポルトランドセメント)を配合したものを例示した。半水石膏に配合するセメントは、ホワイトセメントに限定されるものではなく、以下に例示する水硬性セメントや気硬性セメントが使用可能である。水硬性セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等の各種セメントが使用可能である。また、気硬性セメントとしては、石膏、消石灰、ドロマイトプラスター等が使用可能である。
【符号の説明】
【0072】
21…配管
30…継手
42…養生テープ
45…バックアップテープ(本発明の「粘着テープ」に相当)
47…自己融着テープ
50…型枠
51、52…端板
55…シート材
57…開口(本発明の「注入口」に相当)
F1、F2…フランジ
Bt…ボルト
U…無機系充填材
【技術分野】
【0001】
本発明は、油路を形成する配管の漏油を止める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油入電気機器の継手には、気密性を確保するためにパッキンが挿入されている。しかし、パッキンの不具合によって、気密が不十分になって漏油に至るケースがある。下記特許文献1には、液状エポキシ樹脂に硬化剤を混和させたシーリング剤200を継手230に塗布して封止することで油止めを行う工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−111318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏油箇所にシーリング剤200を塗布して油止めする工法は、一箇所でも塗布ミスがあると、そこから油が漏れてしまう。そのため、作業スペースが確保し難い狭隘部分では、油止めを確実に行うことが難しかった。
【0005】
また、シーリング剤200は粘度が高いので、へらで塗り込んでも、継手表面の微小なキズ210や凹凸の内側に行き渡らず、隙間が出来易い(図20参照)。そのため、隙間が出来ないように、補修個所の塗装を剥がして表面を平らな面に研磨するケレン作業(下地作業)を行う必要がある。しかし、ケレン作業(下地作業)は熟練な技術が必要であることから、専門業者に作業を依頼する必要がある。そのため、作業を発注してから、それが実施されるまでに数ケ月の期間を要することがあり、漏油箇所の補修を早期に行うことが出来ない、という問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、狭隘箇所にて発生する漏油を確実に止めることが可能であり、かつ早期補修を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、漏油止め工法であって、油路を形成する配管の継手又は配管に設けられたバルブを囲む筒型の型枠を形成する型枠形成ステップと、前記型枠に形成された注入口から硬化性の無機系充填材を前記型枠内に流し込む充填する充填ステップと、前記型枠内にて前記硬化性の無機系充填材を硬化させる硬化ステップと、を含み、前記型枠形成ステップでは、前記継手又はバルブの外形より大きな端板を、前記継手又はバルブの両側に一定距離離して前記配管上に取り付けた後、一枚のシート材を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板の外周面に各々貼り合わせることによって、前記一枚のシート材を外周壁とし前記端板を端面とする筒型の型枠を形成するところに特徴を有する。
【0008】
本発明では、型枠に無機系充填材を流し込むと、無機系充填材が型枠内に行き渡り、継手や弁の周りを囲む。その後、無機系充填材は水和反応により硬化する。これにより、硬化した無機系充填材が継手や弁の全体を覆うことにより、油止めする。このように本発明では、無機系充填材自体の流動性を利用して、継手や弁の周囲に無機系充填材を行き渡らせるようにしている。そのため、作業スペースの狭い狭隘部分であっても、型枠に流し込みさえすれば、継手や弁の周囲に無機系充填材を行き渡らせることが可能であり、漏油を確実に止められる。
【0009】
また、本発明では、型枠を最小の作業回数、すなわち、端板を配管上に取り付ける作業と、シート材を筒型に曲げながら端板の外周面に貼り合わせる作業の2回の作業で作製できる。従って、型枠製作作業について作業効率がよい。また、外周壁を一枚のシート材で形成しているので継ぎ目が少なく、型枠に対する無機系充填材の液漏れを最小限に抑えることが可能となる。従って、型枠に対する無機系充填材の投入量を最小にできる。
【0010】
また、型枠に流し込む無機系充填材は、低粘度で流動性が高いため、継手表面の微小なキズや凹凸の内側に入り込み隙間を埋める。そのため、表面のキズや凹凸をわざわざ研磨しなくても、油の通り道が出来ない。以上のことから、ケレン作業を廃止することが可能となり、経験の浅い作業者でも簡単に補修作業を行うことが可能となった。
【0011】
本発明の漏油止め工法の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・型枠形成ステップにて、前記配管の外周面に粘着テープを重ね巻きすることにより、前記端板を形成する。このようにしておけば、粘着テープの巻き数を調整することで、端板の大きさを自由に変えることが出来る。そのため、継手やバルブの大きさごとに専用の端板を設ける必要がなく、コストメリットが高い。
【0012】
・前記継手の外周面に自己融着テープを巻き付けて前記継手の合わせ面を仮封止する。このようにすれば、型枠内で硬化性の無機系充填材が硬化する間、油が型枠側に漏れるのを防止できる。
【0013】
本発明は、漏油止めに使用する硬化性の無機系充填材であって、石膏とセメントとを含む無機系結合材に合成樹脂エマルションを混和させたものであり、粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)であり、23℃での凝結時間が20分〜120分であるところに特徴を有する。粘度が上記範囲にあれば、型枠に対する充填性が良好であり、材料の分離がない。また、凝結期間が上記範囲にあれば、充填性が良好であり、油の浮きを抑えることが可能となる。また、本明細書を通じて、粘度が20000mPa・s以下である場合を低粘度と言う。また、ここで言うセメントには、水硬性セメント、気硬性セメントの双方が含まれる。
【0014】
本発明の無機系充填材の実施態様として、合成樹脂エマルションの樹脂固形分と無機系結合材の重量比P/Cが0.15〜0.6であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、狭隘箇所にて発生する漏油を確実に止めることが可能であり、かつ早期補修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1における漏油止めキットのパーツ構成を示す図
【図2】油入変圧器の正面図
【図3】継手の構造を示す斜視図
【図4】継手の洗浄作業を示す斜視図
【図5】配管に養生テープを巻いた状態を示す斜視図
【図6】配管にバックアップテープを巻き付ける作業を示す斜視図
【図7】継手の両側に端板を取り付けた状態を示す斜視図
【図8】図7の平面図
【図9】継手の外周面に自己融着テープを貼り付けた状態を示す斜視図
【図10】シート材の組み付け作業を示す斜視図
【図11】型枠が完成した状態を示す斜視図
【図12】図11の平面図
【図13】型枠に無機系充填材を流し込む作業を示す斜視図
【図14】型枠内にて無機系充填材が硬化した状態を示す斜視図
【図15】型枠を取り外した状態を示す斜視図
【図16】油入電気機器の正面図
【図17】実施形態2において型枠が完成した状態を示す斜視図
【図18】型枠の注入口に漏斗を差し込んだ状態を示す斜視図
【図19】端板を2枚の半円板から形成する例を示す図
【図20】継手の表面を拡大した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図16を参照して説明する。
1.硬化性の無機系充填材Uの組成と条件
無機系充填材Uは、粉末状の主材(無機系結合材にフィラーや添加剤等を加えたもの)U1に、混和液(合成樹脂エマルションに添加剤等加えたもの)U2、必要に応じて水を混ぜて混練したものである。無機系結合材は、石膏(半水石膏)に水硬性セメントや気硬性セメントを配合したものであり、無機系充填材Uは混練後、水和反応により硬化する。尚、係る無機系充填材Uは、ポリマーセメントの一種である。
【0018】
無機系充填材Uの用途は、油路を形成する配管の継手等で発生する漏油止めであり、型枠50に充填後硬化した時に、漏油箇所の全体を覆って封止しなければいけない。そのため、型枠50に対する充填不良がないように、無機系充填材Uは粘性が低く流動性が高い必要があり、その一方で、材料の分離の問題や作業時間の問題があるので、硬化が速すぎても、遅すぎても使用条件を満たさない。
【0019】
無機系充填材Uの粘度は、石膏とセメントの配合比や、粘性調整剤の量によって調整することが可能であり、無機系充填材Uの凝結時間は、P/Cの値や硬化遅延剤の量によって調整することが可能である。尚、P/Cとは、合成樹脂エマルションの樹脂固形分Pと無機系結合材Cの重量比である。
【0020】
そこで、出願人は、無機系充填材Uについて粘度、凝結時間の異なるサンプルを準備して、型枠50に対する充填性や材料の分離の有無について検証・評価したところ、次の条件を満たすと、漏油止めに使用可能であるという知見を得た。
【0021】
(1)混練後の粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)
(2)23℃での凝結時間が20分〜120分
尚、ここで言う凝結時間とは、凝結の終了時間を意味する。
【0022】
(1)の条件としたのは、粘度が上限(20000mPa・s)を超えると、型枠50に対する充填性が悪くなり、粘度が下限(1000mPa・s)を下回ると、材料が分離し石膏が沈降するからである。そして、より好ましい粘度の条件としては、1200〜15000mPa・sであり、粘度がその範囲にあれば、充填性が極めて良好であり、材料の分離が全くない。
【0023】
また、(2)の条件としたのは、凝結時間が上限(120分)を超えると、硬化する過程で、補修個所から漏れ出る油が、無機系充填材U中に浮き出して油の通路を作ってしまうからである。また、凝結時間が下限(20分)を超えると、主材U1に混和液U2、水を混ぜて混練した直後に粘度が高くなり、型枠50への充填性が低下するからである。そして、より好ましい凝結時間の条件は30分〜90分であり、凝結時間がその範囲にあれば、充填性が極めて良好であり、油の浮きをほぼ抑えることが可能となる。
【0024】
表1には(1)、(2)の条件の検証・評価に使用したサンプルについて配合比(重量比)、P/C、粘度、凝結時間を示した。表1に示すように、配合1〜配合5は粘度と凝結時間の条件を満足しており、漏油止めに使用可能である。また、配合6は粘度の条件は満たすものの、凝結時間が120分以上となり使用できない。
【0025】
【表1】
【0026】
尚、配合1〜配合6において、石膏(半水石膏)は目開き90μmの篩(ふるい)の残分が1w%以下のものを使用した。セメントにはホワイトセメント(白色ポルトランドセメント)を使用した。合成樹脂エマルションはアクリル系樹脂エマルションであり、樹脂固形分50w%、平均粒子径0.2〜0.3μmとした。また、添加剤には、減水剤、粘性調整剤、硬化遅延剤などが含まれている。
【0027】
また、粘度はB型粘度計で測定(測定条件:23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)した。また、凝結時間は、JIS−R5201の「凝結試験」に準拠して測定した凝結の終結時間(測定条件:23℃、但し、測定は5分毎に実施した)である。
【0028】
次に、透油性能試験について説明する。透油性能試験は、配合1〜配合6の材料を使用して作製した試験体に対して、作製から2日後にガラス管を表面に取り付けて油を注ぎ、一定期間後(1ヶ月後)における浸透度合いを評価するものである。尚、試験体は10cm×10cmの板であり、厚さを2mm、5mm、10mmの3パターンで行った。また、油は低粘度(ISO粘度規格VG22)の機械用潤滑油を使用した。
【0029】
透油性能試験は、次の結果となった(表2参照)。試験体1〜3は試験体の裏面から油が浸み出ており、NGとなった。また、試験体5は試験体の裏面に薄っすらと変色がみられた。それ以外の試験体は油の浸透がなくOKとなった。
【0030】
【表2】
【0031】
以上の事から、無機系充填材Uの厚みが厚い程、油が浸透し難い事が分かった。また、合成樹脂エマルションU2の量を多くする(P/Cが大きい)と、油が浸透し難くなることが分かった。
【0032】
次に、耐油性能試験について説明する。耐油性能試験は、配合1〜配合6の材料を使用して作製した試験体を、作製から3日後に油に浸漬し、一定期間後(1ヶ月後)における試験体の状態を評価するものである。尚、試験体は10cm×10cm×5mmの板状とした。
【0033】
耐油性能試験は次の結果となった(表3参照)。試験体a〜eはいずれも変質しておらず、十分な耐油性を持つことが分かった。また、試験体fは軟化していた。そのため、合成樹脂エマルションの量を多くする(P/Cが大きい)と、耐油性が低下することが分かった。
【0034】
【表3】
【0035】
従って、非浸透性と耐油性の双方を満足するには、無機系充填材Uの厚みを5mm以上とし、P/Cを0.15〜0.60(配合2〜配合5)にすればよい事が分かった。また、P/Cの範囲は、0.15〜0.45がより好ましく、その範囲を使用することで、耐油性が一層高まる。
【0036】
2.漏油止めキットZ
漏油止めキットZは、以下(a)〜(g)の材料から構成されている(図1参照)。
(a)石膏とセメントとを含む無機系結合材にフィラー(炭酸カルシウム)や添加剤を添加した粉末状の主材U1
(b)混和剤(合成樹脂エマルション、水、添加剤)U2
(c)シート材55
(d)バックアップテープ(本発明の「粘着テープ」に相当)45
(e)養生テープ42
(f)自己融着テープ47
(g)その他(洗浄用のスプレー41、プライマー44)
【0037】
3.漏油止め工法
次に油入変圧器を例示して、上記漏油止めキットZを使用した漏油止め工法の説明を行う。図2に示すように、油入変圧器10は、トランスを収容した機器本体11と、コンサベータ12と、ブッシング13と、ラジエータ15とを備えている。そして、機器本体11とラジエータ15との間には上下一対の配管(油路を形成する配管)21、22が通されていて、機器本体11内の絶縁油をラジエータ15側に循環させて冷却させる構成となっている。
【0038】
各配管21、22は、2つのフランジF1、F2をボルトBTにより締結した継手30を介して相手配管に対して結合されている(図3参照)。係る継手30は、フランジF1、F2間に介挿したパッキンによってフランジF1、F2の合わせ面Gをシールして油の漏れを防いでいる。しかし、パッキンは外気温の変化に伴って熱収縮するため、気密が不十分になって漏油に至るケースがある。以下、配管21上に設けられた継手30で漏油が発生した場合を例にとって、漏油を如何様に止めるか説明を行う。
【0039】
漏油が発生したら、まず、図4に示すように継手30や配管21、25の表面に、スプレー41で洗浄剤を吹きつけた後、ウエスでそれを拭き取って、継手30や配管21、25の表面の油分、汚れを落とす作業を行う。
【0040】
そして、汚れが落とせたら、次に継手30を囲む円筒型の型枠50の作成する。それには、まず、継手両側の各配管21、25に対して、継手30から一定距離離して養生テープ42を巻いて貼り付ける作業を行う(図5参照)。尚、養生テープ42は、型枠50を外し易くする(次に説明するバックアップテープ45を剥がし易くする)ものであるので、粘着性が弱いものが好ましく、幅はバックアップテープ45の2倍程度が好ましい。
【0041】
養生テープ42が貼れたら、刷毛を使用して、継手30や配管21、25の表面にプライマー(下塗り剤)44を塗る作業を行う。プライマー44を塗るのは、継手30や配管21、25に対する無機系充填材Uの付着性を向上させるためである。
【0042】
次に、継手30の両側に、継手30から一定距離離して円形の端板51、52を作る作業を行う。この実施形態では、基材の裏面に粘着層を設けたバックアップテープ45を、養生テープ42上に重ね巻きすることで、円形の端板51、52を作るようにしている(図6、図7参照)。
【0043】
端板51、52は、型枠50の端面を形成するものであり、継手30の外周より大きくする必要がある。この例では、型枠50内で硬化する無機系充填材Uの厚みが10mmm程度は確保されるように、左右の端板51、52の大きさを継手30の外形より10mm程度大きくした(図8参照)。
【0044】
また、バックアップテープ45の基材46には、作業性を考慮して柔軟性を有する素材(一例として発泡ポリエチレン)を使用し、厚みは約1mmで、幅が約15mmのものを使用した。また、バックアップテープ45は、重ね巻きする際に、途中で形が崩れたり、剥がれないように粘着力の強いものを使用するとよい。
【0045】
そして、端板51、52を作製する作業が完了したら、次に自己融着テープ47を引っ張って伸ばしながら、継手30の外周面に巻き付ける作業を行う。これにより、継手30の外周面は自己融着テープ47により被覆され、フランジF1、F2の合わせ面Gが仮封止された状態になる(図9参照)。
【0046】
次に、型枠50の外周壁となるシート材55を、端板51、52の大きさに合わせて加工する作業を行う。具体的には、横幅L1を端板51、52間のピッチP1と同じ寸法になるように加工し、全長L2を端板51、52の周長より5〜10cm程度短く加工する(図10参照)。シート材55の全長L2を、端板51、52の周長より短くするのは、無機系充填材Uを流し込むための開口57を作る必要があるからである。
【0047】
そして、加工できたら、シート材55の両縁部(幅方向の両縁)に両面粘着テープを貼り付けて粘着層56を形成する作業を行う。尚、シート材55は柔軟性を有する材料が好ましく、この例では厚みが約0.5mmのPPシート(ポリプロピレンシート)を使用した。
【0048】
次に2枚の端板51、52に、加工したシート材55を貼り合わせる作業を行う。それには、まず、加工したシート材55を粘着層56を上に向けて、継手30の下側に潜り込ませると共に、図10に示すように幅方向両側の粘着層56が、各端板51、52の真下になるように位置を合わせる。その後、シート材55をゆっくり持ち上げてゆき、2枚の端板51、52の下端に下方から接触させる。
【0049】
あとは、シート材55の前後両側を上方向に丸めてゆく。これにより、シート材55の両縁部が、粘着層56を介して、端板51、52の外周面に貼り合わされる。これにて、図11、図12に示すように、外周壁の上端部に開口(本発明の「注入口」に相当)57を有する筒型の型枠(一枚のシート材55を外周壁とし、端板51、52を端面とする円筒型の型枠)50が完成する(型枠形成ステップ)。
【0050】
型枠50が完成したら、次に、図13に示すように型枠上部の開口57から無機系充填材Uを流し込んで、型枠50内に充填させる(充填ステップ)。無機系充填材Uの配合は表1の配合2であり、23℃での混練後の粘度は1550mPa・sである。従って、流動性が高く、無機系充填材Uは充填後、型枠50内の隅々に行き渡り、継手30の周囲を隙間無く囲む。
【0051】
そして、型枠50内に無機系充填材Uを充填する作業が完了したら、あとは、充填した無機系充填材Uが水和反応によって硬化するのを待てばよい。この例では、表1に示す配合2の無機系充填材Uを使用しており、凝結時間(終結時間)は約45分である。そのため、主材U1に混和剤U2と水を混ぜて混練してから約45分過ぎると、無機系充填材Uは凝結し、その後、硬化反応が進んで硬化体となり、継手30の全体を覆う封止層Zを形成する(硬化ステップ)。
【0052】
以上のことから、継手30は封止層Zにより密閉された状態になるので、油止めされる。尚、型枠50を取り外すには、シート材55を剥がした後、バックアップテープ45を養生テープ42と共に剥がしてやればよく、これにより、図15に示すように、継手30の全体を覆う封止層Zから型枠50だけを簡単に除去できる。
【0053】
4.効果説明
本実施形態の漏油止め工法では、型枠50に無機系充填材Uを充填し、それを型枠50内にて硬化させることで、継手30の全体を覆う封止層Zを形成する。そして、無機系充填材Uは低粘度であり流動性が高いから、継手表面の微小なキズや凹凸の内側に入り込み隙間を埋める。以上のことから、表面のキズや凹凸をわざわざ研磨しなくても、油の通り道が出来ない。そのため、ケレン作業を廃止することが可能となり、経験の浅い作業者でも簡単に補修作業を行うことが可能となった。以上のことから、漏油発生後の早期段階で補修が可能となった。
【0054】
継手30の外周面にシーリング剤を塗布する従来の工法は一箇所でも塗布ミスがあると、そこから油が漏れてしまう。一方、油入電気機器の構造は様々であり、図16に示すように機器本体70にラジエータ80が隣合うように配置されていることがある。このように機器の壁同士が隣接する狭隘箇所は、作業スペースがなく、従来の工法では油止めを確実に行うことが難しかった。
【0055】
この点、本実施形態の漏油止め工法では、無機系充填材Uの流動性を利用して継手30の全体を覆う封止層Zを形成している。そのため、作業スペースを確保することが難しい狭隘箇所であっても、型枠50さえ正確に作れば、あとは、無機系充填材Uを流し込むだけで、型枠形状通りの封止層Zが形成でき、継手30の全体を覆う。従って、漏油を確実に止めることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の漏油止め工法では、型枠50を最小の作業回数、すなわち、配管21、25上に円盤型の端板51、52を取り付ける作業と、シート材55を端板51、52の外周面に貼り合わせる作業の2回の作業で製作できる。従って、型枠作製作業について作業効率がよい。また、型枠50の外周壁を1枚のシート材55で作っており、継ぎ目が少ない。そのため、型枠50に対する無機系充填材Uの液漏れを最小限に抑えることが可能となる。従って、型枠50に対する硬化性の無機系充填材Uの投入量を最小にできる。
【0057】
また、本実施形態の漏油止め工法では、バックアップテープ45を重ね巻きして端板51、52を形成している。そのため、継手30の大きさに応じて、バックアップテープ45の巻き数を変えることで、端板51、52の大きさを継手30の大きさに合わせて変更出来る。従って、継手30や配管21の種類、大きさごとに専用の端板51、52を設ける必要がなく、コストメリットが高い。
【0058】
また、型枠50内に充填した硬化性の無機系充填材Uが硬化する間に、継手30から多量の油が漏れると、封止層Zに油の通り道が出来て、そこから油が漏れてしまう。この点、本実施形態の漏油止め工法では、継手30の外周面に自己融着テープ47を貼り付けて継手30の合わせ面を仮封止し、無機系充填材Uが硬化する間、油が型枠50側に漏れ出るのを防止するようにした。従って、封止層Zに油の通り道を作らせない。そのため、漏油を確実に止めることが可能となる。
【0059】
また、使用状況に応じて漏油の原因となったパッキンを交換する場合には、封止層Zを取り除く必要がある。この点、本実施形態では、無機系充填材Uの主成分は石膏であり、衝撃を加えれば、比較的簡単に破壊できる。従って、封止層Zを簡単に除去できる。
【0060】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図17、図18によって説明する。実施形態2では、補修対象の配管121、125の向きが上下方向である場合について説明する。この場合も、漏油が発生したら、継手130や配管121、125の表面の油分、汚れを落とす作業を最初に行う。
【0061】
その後、継手両側の各配管121、125に対して養生テープ42を貼り付ける作業を行うと共に、養生テープ42上にバックアップテープ45を重ね巻きして、継手130の両側に一定距離離して円形の端板151、152を作る作業を行う。
【0062】
そして、端板151、152が出来たら、次にシート材155を所定の大きさに加工し、それを丸めながら端板151、152に貼り合わせる。このとき、型枠150の外周面に隙間が出来ないように、シート材155の前端155Fと後端155Rを突き合わせてビニルテープ160などで閉じる。
【0063】
次に、図17に示す上側の端板151に、カッターなどで注入口157を開ける。その後、注入口157に差し込んだ漏斗170に無機系充填材Uを流し込んで、型枠150内に無機系充填材Uを充填させる。その後、充填された無機系充填材Uは、水和反応によって型枠150内にて硬化して、継手130の全体を覆うことにより、封止層Zを形成する。以上のことから、配管121の向きが上下方向を向いている場合も、実施形態1と同様に漏油止めできる。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
(1)上記実施形態1では、油入電気機器の一例に変圧器を例示したが、絶縁油を使用して機器の冷却、絶縁を行うものであれば適用可能であり、例えば、油入遮断器、油入開閉器等に使用できる。また、それ以外にも油を使用する機器であれば、使用できる。
【0066】
(2)上記実施形態1では、本発明の漏油止め工法を説明するにあたり、配管を結合する継手で漏油が発生した場合を例にとって説明したが、本発明の漏油止め工法は、配管に設けられたバルブで漏油が発生した場合にも適用できる。すなわち、バルブを囲むように筒型の型枠を作って、そこに硬化性の無機系充填材Uを流し込んで硬化させればよい。
【0067】
(3)上記実施形態1では、バックアップテープ45を重ね巻きすることによって、端板51、52を形成した例を示した。端板51、52の形成方法は、バックアップテープ45を重ね巻きする方法以外にも、例えば、図19に示すように、2枚の半円形板81、82を突き合わせて形成することが可能である。また、端板の形状は、角が無い滑らかな外形(曲線形状)であれば、必ずしも円形である必要はない。
【0068】
(4)上記実施形態1では、バックアップテープ45の一例として、基材の材質を発泡ポリエチレン製としたが、例えば、圧縮ウレタン等も使用可能である。
【0069】
(5)上記実施形態1では、シート材55の一例にPPシートを例示したが、例えば、PETシートや薄い金属シート等も使用可能である。
【0070】
(6)上記実施形態1では、合成樹脂エマルションの一例にアクリル系樹脂エマルションを例示したが、通常、セメントなどの無機系結合材と混合して用いられる樹脂であれば使用可能である。例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等のカルボン酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のエマルションも使用可能である。
【0071】
(7)上記実施形態1では、無機系結合材の一例として、半水石膏にホワイトセメント(白色ポルトランドセメント)を配合したものを例示した。半水石膏に配合するセメントは、ホワイトセメントに限定されるものではなく、以下に例示する水硬性セメントや気硬性セメントが使用可能である。水硬性セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等の各種セメントが使用可能である。また、気硬性セメントとしては、石膏、消石灰、ドロマイトプラスター等が使用可能である。
【符号の説明】
【0072】
21…配管
30…継手
42…養生テープ
45…バックアップテープ(本発明の「粘着テープ」に相当)
47…自己融着テープ
50…型枠
51、52…端板
55…シート材
57…開口(本発明の「注入口」に相当)
F1、F2…フランジ
Bt…ボルト
U…無機系充填材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏油止め工法であって、
油路を形成する配管の継手又は配管に設けられたバルブを囲む筒型の型枠を形成する型枠形成ステップと、
前記型枠に形成された注入口から硬化性の無機系充填材を前記型枠内に流し込む充填する充填ステップと、
前記型枠内にて前記硬化性の無機系充填材を硬化させる硬化ステップと、を含み、
前記型枠形成ステップでは、前記継手又はバルブの外形より大きな端板を、前記継手又はバルブの両側に一定距離離して前記配管上に取り付けた後、一枚のシート材を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板の外周面に各々貼り合わせることによって、前記一枚のシート材を外周壁とし前記端板を端面とする筒型の型枠を形成することを特徴とする漏油止め工法。
【請求項2】
前記型枠形成ステップにて、前記配管の外周面に粘着テープを重ね巻きすることにより、前記端板を形成することを特徴とする請求項1に記載の漏油止め工法。
【請求項3】
前記継手の外周面に自己融着テープを巻き付けて前記継手の合わせ面を仮封止することを特徴とする請求項2に記載の漏油止め工法。
【請求項4】
漏油止めに使用する硬化性の無機系充填材であって、
石膏とセメントとを含む無機系結合材に合成樹脂エマルションを混和させたものであり、
粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)であり、
23℃での凝結時間が20分〜120分である、ことを特徴とする硬化性の無機系充填材。
【請求項5】
前記合成樹脂エマルションの樹脂固形分と無機系結合材の重量比P/Cが0.15〜0.6であることを特徴とする請求項4に記載の無機系充填材。
【請求項6】
漏油止めキットであって、
石膏とセメントを含む無機系結合材と、
合成樹脂エマルションと、
前記無機系結合材に前記合成樹脂エマルションを混和してなる硬化性の無機系充填材を充填する型枠の外周壁を形成するシート材と、
前記硬化性の無機系充填材を充填する前記型枠の端板を形成する粘着テープと、を含むことを特徴とする漏油止めキット。
【請求項1】
漏油止め工法であって、
油路を形成する配管の継手又は配管に設けられたバルブを囲む筒型の型枠を形成する型枠形成ステップと、
前記型枠に形成された注入口から硬化性の無機系充填材を前記型枠内に流し込む充填する充填ステップと、
前記型枠内にて前記硬化性の無機系充填材を硬化させる硬化ステップと、を含み、
前記型枠形成ステップでは、前記継手又はバルブの外形より大きな端板を、前記継手又はバルブの両側に一定距離離して前記配管上に取り付けた後、一枚のシート材を筒状に曲げながら幅方向の両端部を前記各端板の外周面に各々貼り合わせることによって、前記一枚のシート材を外周壁とし前記端板を端面とする筒型の型枠を形成することを特徴とする漏油止め工法。
【請求項2】
前記型枠形成ステップにて、前記配管の外周面に粘着テープを重ね巻きすることにより、前記端板を形成することを特徴とする請求項1に記載の漏油止め工法。
【請求項3】
前記継手の外周面に自己融着テープを巻き付けて前記継手の合わせ面を仮封止することを特徴とする請求項2に記載の漏油止め工法。
【請求項4】
漏油止めに使用する硬化性の無機系充填材であって、
石膏とセメントとを含む無機系結合材に合成樹脂エマルションを混和させたものであり、
粘度が1000〜20000mPa・s(B型粘度計、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒)であり、
23℃での凝結時間が20分〜120分である、ことを特徴とする硬化性の無機系充填材。
【請求項5】
前記合成樹脂エマルションの樹脂固形分と無機系結合材の重量比P/Cが0.15〜0.6であることを特徴とする請求項4に記載の無機系充填材。
【請求項6】
漏油止めキットであって、
石膏とセメントを含む無機系結合材と、
合成樹脂エマルションと、
前記無機系結合材に前記合成樹脂エマルションを混和してなる硬化性の無機系充填材を充填する型枠の外周壁を形成するシート材と、
前記硬化性の無機系充填材を充填する前記型枠の端板を形成する粘着テープと、を含むことを特徴とする漏油止めキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−62943(P2012−62943A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206694(P2010−206694)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(509257905)中部システム工業株式会社 (3)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(509257905)中部システム工業株式会社 (3)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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