説明

硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】高い光反射性を有し、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭であり、光反射性が経時で低下しにくい硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式エポキシ化合物(A)と、アルミナ(B)と、25℃における粘度が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)と、白色顔料(D)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。上記硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)、又は硬化触媒(G)を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性エポキシ樹脂組成物、該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、該硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光反射用硬化性樹脂組成物、及び、光半導体素子と上記硬化物からなるリフレクターとを少なくとも備える光半導体装置に関する。
【0002】
近年、各種の屋内又は屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニットなどにおいては、光半導体素子(LED素子)を光源とする発光装置の採用が進んでいる。このような発光装置としては、一般的に、光半導体素子と、該光半導体素子の周辺を保護する透明樹脂とを有し、さらに、光半導体素子から発せられる光の取り出し効率を高めるため、光を反射するためのリフレクター(反射材)を有する発光装置が広く利用されている。
【0003】
上記リフレクターには、高い光反射性を有すること、さらには、このような高い光反射性を継続的に発揮し続けることが求められている。従来、上記リフレクターの構成材としては、テレフタル酸単位を必須の構成単位とするポリアミド樹脂(ポリフタルアミド樹脂)中に、無機フィラー等を分散させた樹脂組成物などが知られている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
また、上記リフレクターの構成材としては、そのほか、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂と、屈折率1.6〜3.0の無機酸化物とを特定割合で含有する光反射用熱硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献4参照)。さらに、熱硬化性樹脂成分と1以上の充填剤成分とを含有し、熱硬化性樹脂成分全体の屈折率と各充填剤成分の屈折率との差、及び、各充填剤成分の体積割合より算出されるパラメータを特定範囲に制御した光反射用熱硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−204244号公報
【特許文献2】特開2004−75994号公報
【特許文献3】特開2006−257314号公報
【特許文献4】特開2010−235753号公報
【特許文献5】特開2010−235756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の上記ポリアミド樹脂からなるリフレクターは、特に、高出力の青色光半導体や白色光半導体を光源とする発光装置において、光半導体素子から発せられる光や熱によって経時で黄変するなどして劣化し、十分な光反射性を維持できないという問題を有していた。さらに、鉛フリーハンダの採用に伴い、発光装置の製造の際のリフロー工程(ハンダリフロー工程)における加熱温度がより高くなる傾向にある中、このような製造工程において加わる熱によっても上記リフレクターが経時で劣化し、光反射性が低下するという問題も発生していた。
【0007】
また、特許文献4、5に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターにおいては、上記熱硬化性樹脂の主成分としてトリスグリシジルイソシアヌレートが使用されており、耐熱性が十分でなく、光半導体素子から発せられる熱やリフロー工程における熱によって、光反射性が経時で低下するという問題が発生していた。
【0008】
さらに、上記リフレクターには、光半導体素子から発せられる熱や光、各種応力(例えば、切削加工や温度変化により加えられる応力など)に対して、クラック(ひび割れ)を生じにくい(このような特性を「耐クラック性」と称する場合がある)等、強靭であることが求められている。リフレクターにクラックが生じてしまうと、光反射性が低下して(即ち、光の取り出し効率が低下して)、発光装置の信頼性を担保することが困難となるためである。
【0009】
このため、より高出力、短波長の光や高温によっても劣化やクラック発生等の不具合を生じず、光反射性が経時で低下しにくいリフレクターを形成可能な、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭な材料が求められているのが現状である。
【0010】
従って、本発明の目的は、高い光反射性を有し、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭であり、光反射性が経時で低下しにくい硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる、高い光反射性を有し、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭であり、光反射性が経時で低下しにくい硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、経時での光の輝度低下が抑制された光半導体装置を得ることができる光反射用硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、経時で光の輝度が低下しにくく、信頼性の高い光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物と、アルミナと、特定の脂肪族ポリグリシジルエーテルと、白色顔料とを必須成分として含む硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物が、高い光反射性を有し、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭であり、光反射性が経時で低下しにくいことを見出し、本発明を完成させた。本発明はこれらの知見に基づき、さらに研究を重ねて完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、アルミナ(B)と、25℃における粘度が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)と、白色顔料(D)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0013】
さらに、硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)、又は硬化触媒(G)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、硬化剤(E)が、25℃で液状の酸無水物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、硬化触媒(G)が、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0016】
さらに、芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物(但し、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)及び/又は25℃で液状を呈するポリオール化合物(但し、ポリエーテルポリオール及び脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0017】
さらに、ゴム粒子を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0018】
さらに、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)が、ソルビトールポリグリシジルエーテルである前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0019】
さらに、前記芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物が、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光反射用硬化性樹脂組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、光半導体素子と、前記の光反射用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターとを備えることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は上記構成を有するため、該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、高い光反射性を有し、さらに、耐熱性及び耐光性に優れ、なおかつ強靭であるため、光反射性が経時で低下しにくい。このため、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体装置関連の様々な用途、特に、LEDパッケージ用の光反射用硬化性樹脂組成物として好ましく使用できる。さらに、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)の硬化物からなるリフレクター(反射材)は、高い光反射性を長期間発揮し続けることができるため、光半導体素子と上記リフレクターとを少なくとも備える光半導体装置(発光装置)は、長寿命の光半導体装置として高い信頼性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)の硬化物からなるリフレクターを有する光半導体装置の一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、アルミナ(B)と、25℃における粘度が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)と、白色顔料(D)とを必須成分として含む樹脂組成物である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)、又は、硬化触媒(G)を含むことが好ましい。
【0026】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(1分子内)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを少なくとも有する化合物であり、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する場合がある)を有する化合物、又は、(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物である。
【0027】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記化合物は、シクロヘキサン環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物(脂環エポキシ化合物)であることが好ましい。
【0028】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、特に、耐熱性、耐光性の点で、下記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)が好ましい。
【化1】

式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0029】
式(I)中のXが単結合である脂環式エポキシ化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。このような脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド8000」((株)ダイセル製)などの市販品を用いることもできる。
【化2】

【0030】
上記2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0031】
上記連結基Xとしては、中でも、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、例えば、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
【0032】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物などが挙げられる。これらの化合物として、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」((株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。なお、下記式(I−5)中のl、(I−7)中のmは、それぞれ1〜30の整数を表す。Rは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましい。また、下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

式(II)中、R’はp価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nは、それぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R’−(OH)p]としては、例えば、炭素数1〜15のアルコール等が挙げられ、より具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなどが挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(丸括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)などが挙げられる。
【0036】
脂環式エポキシ化合物(A)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」が特に好ましい。
【0037】
本発明の脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(E)を必須成分として含む場合には、白色顔料(D)を除く硬化性エポキシ樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは30〜85重量%である。一方、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化触媒(G)を必須成分として含む場合には、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、白色顔料(D)を除く硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)の全量に対して、20〜95重量%が好ましく、より好ましくは30〜95重量%、さらに好ましくは40〜92重量%である。
【0038】
[アルミナ(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるアルミナ(B)は、特に、硬化物の耐クラック性を向上させる役割を担う。アルミナ(B)としては、特に限定されず、公知慣用のアルミナ(酸化アルミニウム)粒子を用いることができる。アルミナ(B)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
アルミナ(B)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、破砕状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などが挙げられる。中でもアルミナ粒子の分散性の観点で、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0040】
アルミナ(B)の平均粒子径(平均粒径)は、特に限定されないが、耐クラック性の観点で、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmである。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で測定した粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0041】
アルミナ(B)は、公知慣用の製造方法により製造されたものを使用することができる。アルミナ(B)の製造方法としては、例えば、気相酸化法などの乾式法、水熱合成法などの湿式法などが挙げられる。中でも、アルミナ粒子の分散性の観点で、VMC法(Vaporized Metal Combustion法、例えば、特開2008−174624号参照)が好ましい。即ち、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるアルミナ(B)としては、VMC法により製造されたアルミナが好ましい。
【0042】
アルミナ(B)としては、例えば、商品名「AO−802」((株)アドマテックス製、平均粒径:0.7μm、形状:真球状、製造方法:VMC法)、商品名「AO−502」((株)アドマテックス製、平均粒径:0.7μm、形状:真球状、製造方法:VMC法)などの市販品を用いることもできる。
【0043】
アルミナ(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物(100重量部)に対して、0.1〜3重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量部である。アルミナ(B)の含有量が0.1重量部未満では、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。但し、後述の白色顔料(D)としてアルミナ(B)を使用した場合には、硬化性エポキシ樹脂組成物中のアルミナ(B)の含有量(全量)は後述の範囲にあることが好ましい。
【0044】
[脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は、特に、硬化物の耐クラック性を向上させる役割を担う。本発明における脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は、脂肪族ポリオールの水酸基の一部又は全部がグリシジルエーテル化された化合物である。なお、上記「脂肪族ポリオール」とは、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)の炭化水素の2以上の水素原子を、水酸基(アルコール性水酸基)に置換した化合物をいう。上記脂肪族ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどが挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は、25℃における粘度が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテルである。脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)の25℃における粘度は、例えば、8000〜20000mPa・sが好ましい。脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)の代わりに、25℃における粘度が8000mPa・s未満の脂肪族ポリグリシジルエーテルを用いた場合には、硬化物の耐クラック性が低下する。なお、脂肪族グリシジルエーテル(C)の25℃における粘度は、例えば、デジタル粘度計(商品名「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を用いて、ローター:標準1°34´×R24、温度:25℃、回転数:0.5〜10rpmの条件で測定することができる。
【0046】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)としては、粘度(25℃)が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテルであればよく、特に限定されないが、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、キシリトールポリグリシジルエーテル、マンニトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。中でも、硬化物の耐クラック性向上の観点で、ソルビトールポリグリシジルエーテルが好ましい。
【0047】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)(特に、ソルビトールポリグリシジルエーテル)の、1分子が有する平均のエポキシ基の数(平均エポキシ基数)は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性向上の観点で、3〜4が好ましい。
【0048】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)(特に、ソルビトールポリグリシジルエーテル)の、1分子が有する平均のヒドロキシル基の数(平均ヒドロキシル基数)は、特に限定されないが、耐クラック性向上の観点で、1〜2が好ましい。
【0049】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は、公知慣用の製造方法により製造される。例えば、上述の脂肪族ポリオール(例えば、ソルビトール)にエピクロロヒドリンを反応させることによって、製造することができる。
【0050】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)としては、例えば、商品名「ERISYS GE60」(CVC Thermoset Specialties製、粘度(25℃):13000mPa・s、平均エポキシ基数:約4)などの市販品を用いることもできる。
【0051】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物(100重量%)に対して、10〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)の含有量が10重量%未満では、耐クラック性が低下する場合がある。
【0052】
[白色顔料(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における白色顔料(D)は、特に、上記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に対し、高い光反射性を発揮させる役割を担う。白色顔料(D)としては、公知乃至慣用の白色顔料を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ガラス、クレー、雲母、タルク、カオリナイト(カオリン)、ハロイサイト、ゼオライト、酸性白土、活性白土、ベーマイト、擬ベーマイト、無機酸化物、アルカリ土類金属塩等の金属塩などの無機白色顔料;スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アミド系樹脂等の樹脂顔料などの有機白色顔料(プラスチックピグメントなど);中空構造(バルーン構造)を有する中空粒子などが挙げられる。これらの白色顔料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、白色顔料(D)として、上述のアルミナ(B)を使用することもできる(例えば、白色顔料(D)とアルミナ(B)とが同じものであってもよい)。
【0053】
上記無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)などが挙げられる。また、上記アルカリ土類金属塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属塩以外の金属塩としては、例えば、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0054】
上記中空粒子としては、特に限定されないが、例えば、無機ガラス(例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、石英など)、シリカ、アルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、珪酸カルシウム等の金属塩などの無機物により構成された無機中空粒子(シラスバルーンなどの天然物も含む);スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン−共役ジエン系樹脂、アクリル−共役ジエン系樹脂、オレフィン系樹脂等のポリマー(これらポリマーの架橋体も含む)などの有機物により構成された有機中空粒子;無機物と有機物のハイブリッド材料により構成された無機−有機中空粒子などが挙げられる。なお、上記中空粒子は、単一の材料より構成されたものであってもよいし、2種以上の材料より構成されたものであってもよい。また、上記中空粒子の中空部(中空粒子の内部の空間)は、真空状態であってもよいし、媒質で満たされていてもよいが、特に、反射率向上の観点では、屈折率が低い媒質(例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスや空気等)で満たされた中空粒子が好ましい。
【0055】
なお、白色顔料(D)は、公知乃至慣用の表面処理(例えば、金属酸化物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール、シリコーン等の表面処理剤による表面処理など)が施されたものであってもよい。このような表面処理を施すことにより、硬化性エポキシ樹脂組成物における他の成分との相溶性や分散性を向上させることができる場合がある。
【0056】
中でも、白色顔料(D)としては、入手性、耐熱性、耐光性の観点で、無機酸化物、無機中空粒子が好ましく、より好ましくは酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、及び無機中空粒子からなる群より選ばれた1種以上の白色顔料である。特に、白色顔料(D)としては、より高い屈折率を有する点で、酸化チタンが好ましい。
【0057】
白色顔料(D)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、破砕状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などが挙げられる。中でも、白色顔料(D)の分散性の観点で、球状の白色顔料が好ましく、特に真球状の白色顔料(例えば、アスペクト比が1.2以下の球状の白色顔料)が好ましい。
【0058】
白色顔料(D)の中心粒径は、特に限定されないが、硬化物の光反射性向上の観点で、0.1〜50μmが好ましい。特に、白色顔料(D)として無機酸化物を用いる場合、該無機酸化物の中心粒径は、特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、より好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.1〜20μm、特に好ましくは0.1〜10μm、最も好ましくは0.1〜5μmである。一方、白色顔料(D)として中空粒子(特に、無機中空粒子)を用いる場合、該中空粒子の中心粒径は、特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、より好ましくは0.1〜30μmである。なお、上記中心粒径は、レーザー回折・散乱法で測定した粒度分布における積算値50%での粒径(メディアン径)を意味する。
【0059】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における白色顔料(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物100重量部に対し、80〜500重量部が好ましく、より好ましくは90〜400重量部、さらに好ましくは100〜380重量部である。白色顔料(D)の含有量が80重量部を下回ると、硬化物の光反射性が低下する傾向がある。一方、白色顔料(D)の含有量が500重量部を上回ると、硬化物の靭性が低下する傾向がある。なお、白色顔料(D)としてアルミナ(B)を使用した場合、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物におけるアルミナ(B)の全量が上記範囲(好ましくは80〜500重量部、より好ましくは90〜400重量部、さらに好ましくは100〜380重量部)にあることが好ましい。一方、白色顔料(D)としてアルミナ(B)以外の白色顔料を使用した場合、硬化性樹脂組成物における白色顔料(D)の含有量は、特に限定されないが、80〜500重量部が好ましく、より好ましくは90〜400重量部、さらに好ましくは100〜380重量部である。
【0060】
なお、白色顔料(D)は、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。また、白色顔料(D)としては、市販品を用いることもでき、例えば、商品名「SR−1」、「R−42」、「R−45M」、「R−650」、「R−32」、「R−5N」、「GTR−100」、「R−62N」、「R−7E」、「R−44」、「R−3L」、「R−11P」、「R−21」、「R−25」、「TCR−52」、「R−310」、「D−918」、「FTR−700」(以上、堺化学工業(株)製)、商品名「タイペークCR−50」、「CR−50−2」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−63」、「CR−80」、「CR−90」、「CR−90−2」、「CR−93」、「CR−95」、「CR−97」(以上、石原産業(株)製)、商品名「JR−301」、「JR−403」、「JR−405」、「JR−600A」、「JR−605」、「JR−600E」、「JR−603」、「JR−805」、「JR−806」、「JR−701」、「JRNC」、「JR−800」、「JR」(以上、テイカ(株)製)、商品名「TR−600」、「TR−700」、「TR−750」、「TR−840」、「TR−900」(以上、富士チタン工業(株)製)、商品名「KR−310」、「KR−380」、「KR−380N」、「ST−410WB」、「ST−455」、「ST−455WB」、「ST−457SA」、「ST−457EC」、「ST−485SA15」、「ST−486SA」、「ST−495M」(以上、チタン工業(株)製)などのルチル型酸化チタン;商品名「A−110」、「TCA−123E」、「A−190」、「A−197」、「SA−1」、「SA−1L」、「SSPシリーズ」、「CSBシリーズ」(以上、堺化学工業(株)製)、商品名「JA−1」、「JA−C」、「JA−3」(以上、テイカ(株)製)、商品名「KA−10」、「KA−15」、「KA−20」、「STT−65C−S」、「STT−30EHJ」(以上、チタン工業(株)製)などのアナターゼ型酸化チタンなどが使用できる。
【0061】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも上記の脂環式エポキシ化合物(A)、アルミナ(B)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)、及び白色顔料(D)を含む。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の好ましい態様としては、脂環式エポキシ化合物(A)、アルミナ(B)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)、白色顔料(D)、硬化剤(E)、及び硬化促進剤(F)の6成分を必須成分とする態様、又は、脂環式エポキシ化合物(A)、アルミナ(B)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)、白色顔料(D)、及び硬化触媒(G)の5成分を必須成分とする態様等が挙げられる。
【0062】
[硬化剤(E)]
硬化剤(E)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化剤(E)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として周知慣用の硬化剤を使用することができる。硬化剤(E)としては、中でも、25℃で液状の酸無水物が好ましく、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、常温(25℃)で固体状の酸無水物(例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物など)は、常温(25℃)で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、硬化剤(E)として使用することもできる。硬化剤(E)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明においては、硬化剤(E)として、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0064】
硬化剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物(100重量部)に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは50〜145重量部、さらに好ましくは100〜145重量部である。より具体的には、上記硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(E)の含有量が50重量部を下回ると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(E)の含有量が200重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0065】
[硬化促進剤(F)]
硬化促進剤(F)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤(E)により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤(F)としては、周知慣用の硬化促進剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。硬化促進剤(F)は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
本発明においては、硬化促進剤(F)として、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「12XD(開発品)」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製)、商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0067】
硬化促進剤(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物(100重量部)に対して、0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.25〜2.5重量部である。硬化促進剤(F)の含有量が0.05重量部を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(F)の含有量が5重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0068】
[硬化触媒(G)]
本発明における硬化触媒(G)は、硬化性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基を有する化合物の重合を開始させる働きを有する。硬化触媒(G)としては、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、脂環式エポキシ化合物(A)の重合を開始させるカチオン重合開始剤が好ましい。硬化触媒(G)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などが挙げられる。これらのカチオン重合開始剤(カチオン触媒)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー社製)、商品名「イルガキュア264」(チバ・ジャパン(株)製)、商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用できる。
【0070】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などが挙げられる。このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上、ADEKA(株)製)、商品名「FC−509」(スリーエム(株)製)、商品名「UVE1014」(G.E.(株)製)、商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、「サンエイド SI−150L」(以上、三新化学工業(株)製)、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を好ましく使用できる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物も、上記カチオン重合開始剤として使用できる。
【0071】
硬化触媒(G)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基含有化合物(100重量部)に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。硬化触媒(G)を上記範囲内で使用することにより、耐熱性、耐光性に優れた硬化物を得やすい。
【0072】
[ゴム粒子]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、ゴム粒子を含んでいてもよい。上記ゴム粒子としては、例えば、粒子状NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、反応性末端カルボキシル基NBR(CTBN)、メタルフリーNBR、粒子状SBR(スチレン−ブタジエンゴム)などのゴム粒子が挙げられる。上記ゴム粒子としては、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とからなる多層構造(コアシェル構造)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子は、特に、(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするポリマー(重合体)で構成されており、表面に脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基(ヒドロキシル基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子の表面にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が存在しない場合、硬化物にクラックが生じやすくなる場合がある。
【0073】
上記ゴム粒子におけるゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分とすることが好ましい。上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、その他、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどをモノマー成分として含んでいてもよい。
【0074】
中でも、上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、芳香族ビニル、ニトリル、及び共役ジエンからなる群より選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記コア部分を構成するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル/共役ジエン等の二元共重合体;(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/共役ジエン等の三元共重合体などが挙げられる。なお、上記コア部分を構成するポリマーには、ポリジメチルシロキサンやポリフェニルメチルシロキサンなどのシリコーンやポリウレタン等が含まれていてもよい。
【0075】
上記コア部分を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどに対応する1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0076】
上記ゴム粒子のコア部分は、中でも、耐熱性の観点で、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニルの二元共重合体(特に、アクリル酸ブチル/スチレン)より構成されたコア部分であることが好ましい。
【0077】
上記ゴム粒子のコア部分は、通常用いられる方法で製造することができ、例えば、上記モノマーを乳化重合法により重合する方法などにより製造することができる。乳化重合法においては、上記モノマーの全量を一括して仕込んで重合してもよく、上記モノマーの一部を重合した後、残りを連続的に又は断続的に添加して重合してもよく、さらに、シード粒子を使用する重合方法を使用してもよい。
【0078】
上記ゴム粒子のシェル層を構成するポリマーは、上記コア部分を構成するポリマーとは異種のポリマーであることが好ましい。また、上述のように、上記シェル層は、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましい。これにより、特に、脂環式エポキシ化合物(A)との界面で接着性を向上させることができ、該シェル層を有するゴム粒子を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物に対して、優れた耐クラック性を発揮させることができる。また、硬化物のガラス転移温度の低下を防止することもできる。
【0079】
上記シェル層を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として含むことが好ましい。例えば、上記コア部分における(メタ)アクリル酸エステルとしてアクリル酸ブチルを用いた場合、シェル層を構成するポリマーのモノマー成分として、アクリル酸ブチル以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル以外に含んでいてもよいモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。上記ゴム粒子においては、シェル層を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーを単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましく、特に、耐熱性の観点で、少なくとも芳香族ビニルを含むことが好ましい。
【0080】
さらに、上記シェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を形成するために、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸などのα,β−不飽和酸、マレイン酸無水物などのα,β−不飽和酸無水物などに対応するモノマーを含有することが好ましい。
【0081】
上記ゴム粒子におけるシェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーから選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記シェル層は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/α,β−不飽和酸等の三元共重合体などから構成されたシェル層であることが好ましい。
【0082】
また、上記シェル層を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、コア部分と同様に、上記モノマーの他にジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどに対応する1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0083】
上記ゴム粒子(コアシェル構造を有するゴム粒子)は、上記コア部分をシェル層により被覆することで得られる。上記コア部分をシェル層で被覆する方法としては、例えば、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分の表面に、シェル層を構成する共重合体を塗布することにより被覆する方法、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分を幹成分とし、シェル層を構成する各成分を枝成分としてグラフト重合する方法などを挙げることができる。
【0084】
上記ゴム粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜500nmが好ましく、より好ましくは20〜400nmである。また、上記ゴム粒子の最大粒子径は、特に限定されないが、50〜1000nmが好ましく、より好ましくは100〜800nmである。平均粒子径が500nmを上回ると、又は、最大粒子径が1000nmを上回ると、硬化物におけるゴム粒子の分散性が低下し、耐クラック性が低下する場合がある。一方、平均粒子径が10nmを下回ると、又は、最大粒子径が50nmを下回ると、硬化物の耐クラック性向上の効果が得られにくくなる場合がある。
【0085】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における上記ゴム粒子の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。ゴム粒子の含有量が0.5重量部を下回ると、硬化物の耐クラック性が低下する傾向がある。一方、ゴム粒子の含有量が30重量部を上回ると、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
【0086】
さらに、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物などの芳香環を有するグリシジルエーテル系エポキシ化合物;水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、脂肪族グリシジル型エポキシ化合物などの芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物(但し、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く);グリシジルエステル系エポキシ化合物;グリシジルアミン系エポキシ化合物;ポリオール化合物;オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物等を含有していてもよい。
【0087】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であるエポキシ化合物であっても、配合した後に液状を呈するものであれば、含有していてもよい。常温(25℃)で固体であるエポキシ化合物としては、例えば、固形のビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルエステルなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
中でも、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記の硬化剤(E)、硬化促進剤(F)、硬化触媒(G)以外に、芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物(但し、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)及び/又は25℃で液状を呈するポリオール化合物(但し、ポリエーテルポリオール及び脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)を含むことが、高い耐熱性を損なうことなく耐クラック性を向上させることができる点で好ましく、特に、芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物を含むことが、高い耐熱性及び耐光性を損なうことなく耐クラック性を向上させることができる点で好ましい。
【0089】
[芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物]
本発明における芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物には、脂肪族グリシジルエーテル系エポキシ化合物、及び、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物を核水添した化合物が含まれる。但し、上記芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物には、上記の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は含まれないものとする。上記芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物としては、例えば、商品名「EPICLON703」、「EPICLON707」、「EPICLON720」、「EPICLON725」(以上、DIC(株)製)、商品名「YH−300」、「YH−315」、「YH−324」、「PG−202」、「PG−207」、「サントートST−3000」(以上、新日鐵化学(株)製)、商品名「リカレジンDME−100」、「リカレジンHBE−100」(以上、新日本理化(株)製)、商品名「デナコールEX−212」、「デナコールEX−321」(以上、ナガセケムテックス(株)製)、商品名「YX8000」、「YX8034」(以上、三菱化学(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。なお、芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
上記の芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。
【0091】
[25℃で液状を呈するポリオール化合物]
本発明における25℃で液状を呈するポリオール化合物には、ポリエーテルポリオール以外のポリオール化合物が含まれ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが含まれる。但し、上記25℃で液状を呈するポリオール化合物には、上記の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)は含まれないものとする。なお、25℃で液状を呈するポリオール化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205」、「プラクセル205H」、「プラクセル205U」、「プラクセル205BA」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210CP」、「プラクセル210BA」、「プラクセル212」、「プラクセル212CP」、「プラクセル220」、「プラクセル220CPB」、「プラクセル220NP1」、「プラクセル220BA」、「プラクセル220ED」、「プラクセル220EB」、「プラクセル220EC」、「プラクセル230」、「プラクセル230CP」、「プラクセル240」、「プラクセル240CP」、「プラクセル210N」、「プラクセル220N」、「プラクセルL205AL」、「プラクセルL208AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL230AL」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL312AL」、「プラクセル320」、「プラクセルL320AL」、「プラクセルL330AL」、「プラクセル410」、「プラクセル410D」、「プラクセル610」、「プラクセルP3403」、「プラクセルCDE9P」(以上、(株)ダイセル製)等の市販品を使用することができる。
【0093】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセルCD205PL」、「プラクセルCD205HL」、「プラクセルCD210PL」、「プラクセルCD210HL」、「プラクセルCD220PL」、「プラクセルCD220HL」(以上、(株)ダイセル製)、商品名「UH−CARB50」、「UH−CARB100」、「UH−CARB300」、「UH−CARB90(1/3)」、「UH−CARB90(1/1)」、「UC−CARB100」(以上、宇部興産(株)製)、商品名「PCDL T4671」、「PCDL T4672」、「PCDL T5650J」、「PCDL T5651」、「PCDL T5652」(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0094】
上記の25℃で液状を呈するポリオール化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
【0095】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を使用することができる。
【0096】
添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水酸基を有する化合物を使用すると、反応を緩やかに進行させることができる。その他にも、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、離型剤などの慣用の添加剤を使用することができる。これらの添加剤の含有量(配合量)は、硬化性エポキシ樹脂組成物全量(100重量%)に対して、5重量%以下とするのが好ましい。
【0097】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、公知慣用の方法を使用することができる。具体的には、例えば、所定量の脂環式エポキシ化合物(A)、アルミナ(B)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)、白色顔料(D)、硬化剤(E)、硬化促進剤(F)、又は、所定量の脂環式エポキシ化合物(A)、アルミナ(B)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)、白色顔料(D)、硬化触媒(G)、及び任意の添加剤を配合して、ディゾルバー、ホモジナイザーなどの各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置などで撹拌・混合する方法等が挙げられる。また、撹拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0098】
特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が上記ゴム粒子を含む場合、上記ゴム粒子は、あらかじめ脂環式エポキシ化合物(A)中に分散させた組成物(「ゴム粒子分散エポキシ化合物」と称する場合がある)の状態で配合することが好ましい。即ち、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が上記ゴム粒子を含む場合は、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物と、アルミナ(B)と、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)と、白色顔料(D)と、必要に応じてその他の成分を混合することによって調製することが好ましい。このような方法で本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を調製することにより、特に、硬化性樹脂組成物における上記ゴム粒子の分散性を向上させることができる。但し、上記ゴム粒子の配合方法は、上記に限定されず、単独で配合するものであってもよい。
【0099】
(ゴム粒子分散エポキシ化合物)
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物は、上記ゴム粒子を脂環式エポキシ化合物(A)に分散させることによって得られる。なお、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物における脂環式エポキシ化合物(A)は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。同様に、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物におけるゴム粒子は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するゴム粒子の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。
【0100】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度は、特に限定されないが、25℃における粘度(粘度(25℃))として400〜50000mPa・sが好ましく、中でも、500〜10000mPa・sがより好ましい。上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度(25℃)が50000mPa・sを上回ると、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造、硬化性エポキシ樹脂組成物の製造共に生産性が低下する傾向がある。
【0101】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度は、反応性希釈剤を併用することにより調整することができる。上記反応性希釈剤としては、例えば、常温(25℃)における粘度が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルを好ましく使用することができる。粘度(25℃)が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0102】
上記反応性希釈剤の使用量は、適宜調整することができ、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)とゴム粒子の合計量100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、より好ましくは25重量部以下(例えば、5〜25重量部)である。使用量が30重量部を上回ると、耐クラック性等の所望の性能を得ることが困難となる傾向がある。
【0103】
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造方法としては、特に限定されず、周知慣用の方法を使用することができる。例えば、ゴム粒子を脱水乾燥して粉体とした後に、脂環式エポキシ化合物(A)に混合し、分散させる方法や、ゴム粒子のエマルジョンと脂環式エポキシ化合物(A)とを直接混合し、続いて脱水する方法などを使用することができる。
【0104】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、加熱により、及び/又は、紫外線などの光を照射して硬化させることにより、硬化物とすることができる。硬化の際の加熱温度(硬化温度)や加熱時間(硬化時間)は、特に限定されないが、例えば、後述のリフレクター形成の際の条件を採用することができる。
【0105】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の反射率は、特に限定されないが、例えば、波長450nmの光の反射率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは90.5%以上である。特に、450〜800nmの光の反射率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは90.5%以上である。なお、上記反射率は、例えば、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物(厚み:3mm)を試験片とし、分光光度計(商品名「分光光度計 UV−2450」、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0106】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることによって得られる硬化物は、高い光反射性を有し、耐熱性及び耐光性に優れ、さらには強靭である。このため、上記硬化物は劣化しにくく、なおかつクラックが生じにくいため、経時で反射率が低下しにくい。従って、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、LEDパッケージ用途(LEDパッケージの構成材、例えば、光半導体装置におけるリフレクター材、ハウジング材等)、電子部品の接着用途、液晶ディスプレイ用途(例えば、反射板など)、白色基板用インク、シーラー等として好ましく使用することができる。中でも、LEDパッケージ用の硬化性樹脂組成物(特に、光半導体装置におけるリフレクター(反射材)用の硬化性樹脂組成物)として特に好ましく使用することができる。
【0107】
<光反射用硬化性樹脂組成物>
本発明の光反射用硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる。なお、本明細書において「光反射用硬化性樹脂組成物」とは、硬化させることにより、高い光反射性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物を意味し、具体的には、例えば、波長450nmの光に対する反射率が80%以上である硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物を意味する。本発明の光反射用硬化性樹脂組成物を用いることにより、例えば、光反射性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性などの諸物性に優れた硬化物により形成されたリフレクターを備えた光半導体装置を得ることができる。上記リフレクターは、経時で反射率が低下しにくいため、該リフレクターを備えた光半導体装置は、特に、高出力、高輝度の光半導体素子を備える場合であっても光度が経時で低下しにくく、高い信頼性を発揮できる。
【0108】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、光源としての光半導体素子と、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)の硬化物からなるリフレクターとを少なくとも備える光半導体装置である。なお、上記リフレクターとは、光半導体装置において光半導体素子から発せられた光を反射させて、光の指向性及び輝度を高め、光の取り出し効率を向上させるための部材である。図1は、本発明の光反射用硬化性樹脂組成物の硬化物より形成されたリフレクターを有する光半導体装置(本発明の光半導体装置)の一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図を表す。図1における1はリフレクター、2は金属配線、3は光半導体素子(LED素子)、4はボンディングワイヤ、5は封止樹脂、6はパッケージ樹脂を示す。上記リフレクター1は、封止樹脂5の周囲を環状に取り囲み、上方に向かってその環の径が拡大するように傾斜した形状を有している。図1に示す光半導体装置においては、光半導体素子3から発せられた光をリフレクター1の表面(反射面)で反射することによって、高い効率で光半導体素子3からの光を取り出すことができる。
【0109】
上記リフレクターを形成する方法としては、公知乃至慣用の成形方法を利用することができ、特に限定されないが、例えば、トランスファー成形、コンプレッション成形、インジェクション成形、LIM成形(インジェクション成形)、ディスペンスによるダム成形等の方法が挙げられる。
【0110】
具体的には、例えば、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)を所定の成形型内に注入し、加熱硬化することにより、リフレクターを形成することができる。この際の加熱硬化条件としては、例えば、加熱温度を80〜200℃(より好ましくは80〜190℃、さらに好ましくは80〜180℃)、加熱時間を30〜600分(より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分)の範囲内で適宜調整することが好ましく、例えば、加熱温度を高くする場合は加熱時間を短くし、加熱温度を低くする場合は加熱時間を長くすることが好ましい。加熱温度及び加熱時間のいずれか一方又は両方が上記範囲を下回ると、硬化が不十分となる傾向がある。一方、加熱温度及び加熱時間のいずれか一方又は両方が上記範囲を上回ると、樹脂成分が分解する場合がある。また、加熱硬化処理は1段階で行ってもよいし、多段階に分けて加熱処理を施して段階的に硬化させてもよい。
【0111】
本発明においては、中でも、急激な硬化反応による発泡を防ぎ、硬化による応力ひずみを緩和して靭性(耐クラック性)を向上させることができる点で、多段階に分けて加熱処理を施し、段階的に硬化させることが好ましい。具体的には、例えば、硬化剤(E)を使用する場合は、第一段階として温度80〜150℃(好ましくは、100〜140℃)で30〜300分(好ましくは45〜270分)加熱し、第二段階として温度100〜200℃(好ましくは110〜180℃)で30〜600分(好ましくは45〜540分)加熱して、硬化させることが好ましい。また、例えば、硬化触媒(G)を使用する場合は、第一段階として温度30〜150℃(好ましくは40〜140℃)で30〜300分(好ましくは45〜270分)加熱し、第二段階として温度60〜200℃(好ましくは80〜180℃)で30〜600分加熱して、硬化させることが好ましい。
【0112】
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)の硬化物からなるリフレクターを少なくとも有するため、高輝度の光を出力する場合であっても、長期間、安定的に光を発することができる。さらに、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光反射用硬化性樹脂組成物)の硬化物からなるリフレクターは、光半導体素子の封止樹脂(特に、エポキシ樹脂)に対する密着性に優れるため、いっそう経時での光度低下などの問題が生じにくい。このため、本発明の光半導体装置は、長寿命の光半導体装置として高い信頼性を発揮できる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1、表2における「−」は、該当成分の配合を行わなかったことを示す。
【0114】
製造例1
(ゴム粒子の製造)
還流冷却器付きの1L重合容器に、イオン交換水500g、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.68gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら、80℃に昇温した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の約5重量%分に該当するアクリル酸ブチル9.5g、スチレン2.57g、及びジビニルベンゼン0.39gからなる単量体混合物を、一括添加し、20分間撹拌して乳化させた後、ペルオキソ二硫酸カリウム9.5mgを添加し、1時間撹拌して最初のシード重合を行い、続いて、ペルオキソ二硫酸カリウム180.5mgを添加し、5分間撹拌した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の残り(約95重量%分)のアクリル酸ブチル180.5g、スチレン48.89g、ジビニルベンゼン7.33gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.95gを溶解させてなる単量体混合物を2時間かけて連続的に添加し、2度目のシード重合を行い、その後、1時間熟成してコア部分を得た。
次いで、ペルオキソ二硫酸カリウム60mgを添加して5分間撹拌し、これに、メタクリル酸メチル60g、アクリル酸1.5g、及びアリルメタクリレート0.3gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3gを溶解させてなる単量体混合物を30分かけて連続的に添加し、シード重合を行った。その後、1時間熟成し、コア部分を被覆するシェル層を形成した。
次いで、室温(25℃)まで冷却し、目開き120μmのプラスチック製網で濾過することにより、コアシェル構造を有するゴム粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスをマイナス30℃で凍結し、吸引濾過器で脱水洗浄した後、60℃で一昼夜送風乾燥してゴム粒子を得た。得られたゴム粒子の平均粒子径は254nm、最大粒子径は486nmであった。
【0115】
なお、ゴム粒子の平均粒子径、最大粒子径は、動的光散乱法を測定原理とした「NanotracTM」形式のナノトラック粒度分布測定装置(商品名「UPA−EX150」、日機装(株)製)を使用して下記試料を測定し、得られた粒度分布曲線において、累積カーブが50%となる時点の粒子径である累積平均径を平均粒子径、粒度分布測定結果の頻度(%)が0.00%を超えた時点の最大の粒子径を最大粒子径とした。なお、ゴム粒子分散エポキシ化合物1重量部をテトラヒドロフラン20重量部に分散させたものを試料として用いた。
【0116】
製造例2
(ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造)
製造例1で得られたゴム粒子10重量部を、窒素気流下、60℃に加温した状態でディゾルバー(1000rpm、60分間)を使用して、セロキサイド2021P(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製)80重量部に分散させ、真空脱泡して、ゴム粒子分散エポキシ化合物(25℃での粘度:512mPa・s)を得た。
なお、製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物(ゴム粒子10重量部をセロキサイド2021P((株)ダイセル製)80重量部に分散させたもの)の粘度(25℃における粘度)は、デジタル粘度計(商品名「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を使用して測定した。
【0117】
製造例3
(硬化剤を少なくとも含む硬化剤組成物(以下、「K剤」と称する)の製造)
硬化剤(酸無水物)(新日本理化(株)製、商品名「リカシッド MH−700」)、硬化促進剤(サンアプロ(株)製、商品名「U−CAT 18X」)、添加剤(和光純薬工業(株)製、エチレングリコール)を、表1、表2に示す配合処方(配合割合)に従って、自公転式攪拌装置((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」)を使用して均一に混合し、脱泡してK剤を得た。
【0118】
実施例1〜18、比較例1〜14
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造)
アルミナ((株)アドマテックス製、商品名「AO−802」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(CVC Thermoset Specialties製、商品名「ERISYS GE60」)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「YX8034」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(新日鐵化学(株)製、商品名「YH300」)、ポリカーボネートジオール((株)ダイセル製、商品名「CD220PL(プラクセル CD220PL)」)、ポリカプロラクトンジオール((株)ダイセル製、商品名「L220AL(プラクセル L220AL)」)、脂環式エポキシ化合物((株)ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「EHPE3150」)、製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物、トリスグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業(株)製、商品名「TEPIC−PAS B26」)を、表1、表2に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、シンキー(株)製)を使用して均一に混合し(2000rpm、5分間)、脱泡して、エポキシ樹脂(混合物)を得た。
次いで、上記エポキシ樹脂と白色顔料(酸化チタン;堺化学工業(株)製、商品名「TCR−52」)とを、表1、表2に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って、ディゾルバーを使用して均一に混合し、ロールミルによって所定条件下(ロールピッチ:0.2mm、回転数:25ヘルツ、3パス)で混練した。続いて、混練後の組成物と、製造例3で得られたK剤、硬化触媒(三新化学工業(株)製、商品名「サンエイド SI−100L」)とを、表1、表2に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って、自公転式攪拌装置((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」)を使用して均一に混合し(2000rpm、5分間)、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0119】
(硬化物の製造)
上記硬化性エポキシ樹脂組成物を金型に注型し、オーブン(商品名「GPHH−201」、エスペック(株)製)に入れて、120℃で5時間加熱することによって、硬化物を得た。
【0120】
<評価>
実施例及び比較例で得られた硬化物について、下記の評価を実施した。
【0121】
[反射率評価]
実施例及び比較例で得られた硬化物を切削加工して、厚み3mmの試験片を作製した。次いで、分光光度計(商品名「分光光度計 UV−2450」、(株)島津製作所製)を用いて、波長450nmの光に対する各試験片の反射率を測定した(「初期反射率」とする)。結果を表1、表2の「初期反射率」の欄に示した。
【0122】
[耐熱性試験]
初期反射率を測定した試験片(厚み3mm)を、120℃で250時間加熱した後、波長450nmの光に対する反射率を測定した(「加熱エージング後の反射率」とする)。そして、下記式により、反射率保持率(加熱エージング前後)を算出した。結果を表1、表2の「反射率保持率 加熱エージング前後」の欄に示した。
[反射率保持率(加熱エージング前後)(%)]=([加熱エージング後の反射率]/[初期反射率])×100
【0123】
[耐光性試験]
初期反射率を測定した試験片(厚み3mm)に対し、強度10mW/cm2の紫外線を250時間照射した後、波長450nmの光に対する反射率を測定した(「紫外線エージング後の反射率」とする)。そして、下記式により、反射率保持率(紫外線エージング前後)を算出した。結果を表1、表2の「反射率保持率 紫外線エージング前後」の欄に示した。
[反射率保持率(紫外線エージング前後)(%)]=([紫外線エージング後の反射率]/[初期反射率])×100
【0124】
[切削加工時のクラック発生有無の評価(強靭性評価)]
実施例及び比較例で得られた硬化物を切削加工することによって、幅5mm×長さ5mm×厚さ3mmの試験片を作製した。上記硬化物の切削加工には、マイクロ・カッティング・マシン(商品名「BS−300CL」、メイワフォーシス(株)製)を使用し、切削加工の際に硬化物にクラックが生じたか否かを、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を用いて観察し、確認した。表1、表2の「切削加工時のクラック数」の欄には、1サンプルにつき10個の試験片を作製し、そのうちクラックの発生が確認された試験片の個数[個](「クラック数」と称する)を評価結果として示した。なお、表1、表2においては、クラックの発生が確認された試験片の個数(クラック数)がn個である場合を、「n/10」のように示した。
【0125】
[リフロー時のクラック発生有無の評価(強靭性評価)]
上記切削加工により得られた試験片(幅5mm×長さ5mm×厚さ3mm)に対し、リフロー炉(商品名「UNI−5016F」、日本アントム(株)製)を用いて、260℃を最高温度として5秒間、全リフロー時間を90秒としてリフロー処理を施した。その後、当該リフロー処理により試験片にクラックが生じたか否かを、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を用いて観察し、確認した。表1、表2の「リフロー時のクラック数」の欄には、1サンプルにつき10個の試験片のリフロー処理を行い、そのうちクラックの発生が確認された試験片の個数[個](クラック数)を評価結果として示す。なお、表1、表2においては、クラックの発生が確認された試験片の個数(クラック数)がn個である場合を、「n/10」のように示した。
【0126】
[総合評価]
初期反射率が90%以上のもので、耐熱性試験において反射率保持率が90%以上、耐光性試験において反射率保持率が90%以上、切削加工時のクラック有無評価(強靭性評価)、及びリフロー時のクラック有無評価(強靭性評価)においてクラック数が0個となったものを、総合判定○(良好)とした。一方、これ以外のものを総合判定×(不良)とした。結果を表1、表2の「総合判定」の欄に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
表1、表2中の略語は以下のものを示す。
CEL2021P(セロキサイド2021P):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製
AO−802:アルミナ(平均粒径:0.7μm、形状:真球状、製造方法:VMC法)、(株)アドマテックス製
ERISYS GE60:ソルビトールポリグリシジルエーテル(粘度(25℃):13000mPa・s)、CVC Thermoset Specialties製
YX8034:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製
YH−300:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(粘度(25℃):140mPa・s)、新日鐵化学(株)製
CD220PL(プラクセル CD220PL):ポリカーボネートジオール、(株)ダイセル製
L220AL(プラクセル L220AL):ポリカプロラクトンジオール、(株)ダイセル製
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、(株)ダイセル製
TEPIC−PAS B26:トリスグリシジルイソシアヌレート、日産化学工業(株)製
白色顔料:酸化チタン(商品名「TCR−52」)、堺化学工業(株)製
MH−700(リカシッド MH−700):4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化(株)製
18X(U−CAT 18X):硬化促進剤、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
サンエイド SI−100L:アリールスルホニウム塩、三新化学工業(株)製
【0130】
表1、表2に示すように、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物(実施例)は、優れた光反射性を有し、また、切削加工時及びリフロー時にクラックが生じることなく、強靭であった。さらに、加熱エージング及び紫外線エージング後にも、高い光反射性を維持し、耐熱性及び耐光性に優れていた。
一方、本発明の規定を満たさない硬化性エポキシ樹脂組成物より形成した硬化物(比較例)は、加熱エージング後に光反射性が低下し、耐熱性に劣っていた。また、切削加工時にクラックが生じ、靭性に劣っていた。
【符号の説明】
【0131】
1:リフレクター(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター)
2:金属配線
3:光半導体素子
4:ボンディングワイヤ
5:封止樹脂
6:パッケージ樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ化合物(A)と、アルミナ(B)と、25℃における粘度が8000mPa・s以上の脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)と、白色顔料(D)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)、又は硬化触媒(G)を含む請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤(E)が、25℃で液状の酸無水物である請求項2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
硬化触媒(G)が、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤である請求項2又は3に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物(但し、脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)及び/又は25℃で液状を呈するポリオール化合物(但し、ポリエーテルポリオール及び脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)を除く)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、ゴム粒子を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
脂肪族ポリグリシジルエーテル(C)が、ソルビトールポリグリシジルエーテルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香環を有しないグリシジルエーテル系エポキシ化合物が、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物である請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光反射用硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
光半導体素子と、請求項10に記載の光反射用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターとを備えることを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100410(P2013−100410A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245125(P2011−245125)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】