説明

硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】優れた透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備えた硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性エポキシ樹脂組成物、該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、該硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物、及び該光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止した光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体素子を光源とする光半導体装置は、現在、各種の屋内又は屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等、様々な用途に使用されている。このような光半導体装置は、一般に、光半導体素子が樹脂(封止樹脂)により封止された構造を有している。上記封止樹脂は、光半導体素子を水分や衝撃等から保護するための役割を担っている。
【0003】
近年、このような光半導体装置の高出力化や短波長化が進んでおり、例えば、青色・白色光半導体装置においては、光半導体素子から発せられる光及び熱による封止樹脂の黄変が問題となっている。このように黄変した封止樹脂は、光半導体素子から発せられた光を吸収するため、光半導体装置から出力される光の光度が経時で低下してしまう。
【0004】
従来、耐熱性に優れた光半導体用の封止樹脂として、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、上記硬化物を高出力の青色・白色光半導体装置の封止樹脂として用いた場合には、光半導体素子から発せられる光及び熱によって着色が進行してしまい、本来出力されるべき光が吸収され、その結果、光半導体装置から出力される光の光度が経時で低下するという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高い耐熱性及び耐光性を有し、着色(黄変)しにくい封止樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートとε−カプロラクトンの付加物、1,2,8,9−ジエポキシリモネンなどの脂環骨格を有する液状の脂環式エポキシ樹脂の硬化物が知られている。しかし、これらの脂環式エポキシ樹脂の硬化物は各種応力に弱く、冷熱サイクル(加熱と冷却を繰り返すこと)のような熱衝撃が加えられた場合に、クラック(ひび割れ)が生じる等の問題を有していた。
【0007】
このため、光半導体装置(特に、高出力、高輝度の光半導体素子を備えた光半導体装置)から出力される光の光度を経時で低下させない、優れた耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備えた透明な封止樹脂が求められているのが現状である。
【0008】
従って、本発明の目的は、優れた透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備えた硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる、優れた透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備えた硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、経時での光度低下が抑制された光半導体装置を得ることができる、上記硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止することにより得られる、経時での光度低下が抑制された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物、及び、特定のレベリング剤を必須成分とし、さらに硬化剤及び硬化促進剤、又は、硬化触媒を含む硬化性エポキシ樹脂組成物が、優れた耐熱性、耐光性、透明性、耐クラック性を兼ね備えた硬化物を与え、さらに、該硬化物にて光半導体素子を封止して得られる光半導体装置は、発せられる光の光度が経時で低下しにくいことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【化1】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【0011】
また、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【化2】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【0012】
また、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、下記式(2)で表される構造単位を有するシリコーン系重合体(C1)、下記式(3)で表される構造単位を有する含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び下記式(4)で表される構造単位を有する含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の重合体と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【化3】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【化4】

[式(2)中、R3は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。R4は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ポリエーテル鎖を含む有機基、又はポリエステル鎖を含む有機基を示す。]
【化5】

[式(3)中、R5は、水素原子、フッ素原子、又は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。R6は、フッ素化アルキル基を示す。]
【化6】

[式(4)中、R19は、3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。R20は、フッ素化アルキル基を示す。zは、1〜30の整数を示す。]
【0013】
また、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、下記式(2)で表される構造単位を有するシリコーン系重合体(C1)、下記式(3)で表される構造単位を有する含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び下記式(4)で表される構造単位を有する含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の重合体と、硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【化7】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【化8】

[式(2)中、R3は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。R4は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ポリエーテル鎖を含む有機基、又はポリエステル鎖を含む有機基を示す。]
【化9】

[式(3)中、R5は、水素原子、フッ素原子、又は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。R6は、フッ素化アルキル基を示す。]
【化10】

[式(4)中、R19は、3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。R20は、フッ素化アルキル基を示す。zは、1〜30の整数を示す。]
【0014】
さらに、前記脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、前記脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化11】

で表される化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の光半導体封止用樹脂組成物で光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は上記構成を有するため、該樹脂組成物を硬化させることにより、優れた透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備えた硬化物を得ることができる。また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止して得られる光半導体装置は、経時で光度が低下しにくく、優れた品質及び耐久性を発揮する。特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、高出力、高輝度の光半導体素子を備えた光半導体装置の封止用樹脂(封止樹脂を形成するための樹脂)として用いた場合であっても、上記光半導体装置より発せられる光の光度を経時で低下させにくい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物で素子(光半導体素子)を封止した光半導体装置の一実施形態を示す概略図である。左側の図(a)は斜視図であり、右側の図(b)は断面図である。
【図2】図2は、実施例のはんだ耐熱性試験における光半導体装置の表面温度プロファイル(二度の加熱のうち一方の加熱における温度プロファイル)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)
【化12】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを少なくとも含む樹脂組成物、又は、脂環式エポキシ化合物(A)と、上記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化触媒(E)とを少なくとも含む樹脂組成物である。
【0022】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(1分子内)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを少なくとも有する化合物である。より具体的には、脂環式エポキシ化合物(A)には、例えば、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する場合がある)を有する化合物、及び(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物が含まれる。
【0023】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記化合物は、シクロヘキサン環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。
【0024】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、特に、透明性、耐熱性、耐光性の点で、下記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)が好ましい。
【化13】

式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0025】
式(I)中のXが単結合である脂環式エポキシ化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。このような脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド8000」(ダイセル化学工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【化14】

【0026】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0027】
上記連結基Xとしては、中でも、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
【0028】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物などが挙げられる。例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(ダイセル化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。なお、下記式(I−1)〜(I−8)中、l、mは、1〜30の整数を表す。Rは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状アルキレン基が好ましい。また、下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、1〜30の整数を示す。
【0029】
【化15】

【0030】
【化16】

【0031】
(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化17】

式(II)中、R’はp価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nは自然数を表す。p価のアルコール[R’−(OH)p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(丸括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE 3150」(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0032】
これらの脂環式エポキシ化合物(A)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」が特に好ましい。
【0033】
脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(D)を必須成分として含む場合には、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。一方、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化触媒(E)を必須成分として含む場合には、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、35〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜92重量%、さらに好ましくは45〜90重量%である。
【0034】
また、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)との総量(100重量%)に対する、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、50〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは70〜90重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が50重量%未満では、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の溶解性が十分でなく、室温に置くと析出しやすくなる場合がある。一方、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が95重量%を超えると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。
【0035】
[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、下記の一般式(1)で表される。
【化18】

上記式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
【0036】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(1)中のR1及びR2は、水素原子であることが特に好ましい。
【0037】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0038】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、上記脂環式エポキシ化合物(A)に溶解する範囲で任意に混合でき、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の割合は特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A):モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)が50:50〜95:5(重量比)であることが好ましく、より好ましくは50:50〜90:10(重量比)である。この範囲外では、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の溶解性が得られにくくなったり、耐クラック性が低下する場合がある。
【0039】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、アルコールや酸無水物など、エポキシ基と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いても良い。
【0040】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)の総量(100重量%)に対する、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)との総量は、特に限定されないが、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性向上の観点で、70重量%以上が好ましく、80重量%以上が特に好ましい。
【0041】
[レベリング剤(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するレベリング剤(C)は、シリコーン系レベリング剤(ポリシロキサン系レベリング剤)及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、レベリング剤(C)を含むことにより、優れた耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を示す硬化物を形成することができ、該硬化物を用いて作製した光半導体装置は、経時での光度低下が生じにくい。
【0042】
(シリコーン系レベリング剤)
上記シリコーン系レベリング剤とは、ポリシロキサン骨格を有する化合物を含むレベリング剤である。上記シリコーン系レベリング剤としては、公知乃至慣用のシリコーン系レベリング剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、商品名「BYK−300」、「BYK−301/302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−313」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345/346」、「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−349」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−3550」、「BYK−SILCLEAN3700」、「BYK−SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製)、商品名「ポリフローKL−400X」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」(以上、共栄社化学(株)製)、商品名「KP−323」、「KP−326」、「KP−341」、「KP−104」、「KP−110」、「KP−112」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「LP−7001」、「LP−7002」、「8032 ADDITIVE」、「57 ADDITIVE」、「L−7604」、「FZ−2110」、「FZ−2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)などの市販品を使用することができる。
【0043】
上記ポリシロキサン骨格を有する化合物としては、特に、下記式(2)で表される構造単位(繰り返し構造単位)を少なくとも有するシリコーン系重合体(以下、「シリコーン系重合体(C1)」と称する場合がある)が好ましい。即ち、上記シリコーン系レベリング剤は、シリコーン系重合体(C1)を少なくとも含むレベリング剤であることが好ましい。
【化19】

【0044】
上記式(2)中のR3は、置換基を有していてもよい直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n−ブチル基)、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0045】
上記R3において、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基[例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基)等]、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基[例えば、−COORa基等:Raは、水素原子又はアルキル基を示し、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる]、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、エポキシ基、グリシジル基などが挙げられる。
【0046】
上記式(2)中のR4は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ポリエーテル鎖を含む有機基、又はポリエスエル鎖を含む有機基を示す。上記R4における直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n−ブチル基)、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、上記アラルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0047】
上記R4において、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基、アラルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、上述のR3において例示した置換基などが挙げられる。
【0048】
上記R4におけるポリエーテル鎖を含む有機基とは、ポリエーテル構造を少なくとも含む一価の有機基である。上記ポリエーテル鎖を含む有機基におけるポリエーテル構造としては、エーテル結合を複数有する構造であればよく、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール構造(ポリエチレンオキサイド構造)、ポリプロピレングリコール構造(ポリプロピレンオキサイド構造)、ポリブチレングリコール(ポリテトラメチレングリコール)構造、複数種のアルキレングリコール(又はアルキレンオキサイド)に由来するポリエーテル構造(例えば、ポリ(プロピレングリコール/エチレングリコール)構造など)等のポリオキシアルキレン構造が挙げられる。なお、複数種のアルキレングリコールに由来するポリエーテル構造における、それぞれのアルキレングリコールの付加形態は、ブロック型(ブロック共重合型)であってもよいし、ランダム型(ランダム共重合型)であってもよい。
【0049】
上記ポリエーテル鎖を含む有機基は、上記ポリエーテル構造のみからなる有機基であってもよいし、上記ポリエーテル構造の1又は2以上と、1又は2以上の連結基(1以上の原子を有する二価の基)とが連結した構造を有する有機基であってもよい。上記ポリエーテル鎖を含む有機基における連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(特に、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基)、チオエーテル基(−S−)、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0050】
なお、上記ポリエーテル鎖を含む有機基は、上述のR3において例示した置換基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基など)を有していてもよく、例えば、このようなポリエーテル構造を含む有機基として、末端(式(2)におけるケイ素原子に対する反対側の端部)に上記置換基を有する有機基などが挙げられる。
【0051】
上記R4におけるポリエステル鎖を含む有機基とは、ポリエステル構造を少なくとも含む一価の有機基である。上記ポリエステル鎖を含む有機基におけるポリエステル構造としては、エステル結合を複数有する構造であればよく、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリエステル構造、脂環族ポリエステル構造、芳香族ポリエステル構造などが挙げられる。
【0052】
上記ポリエステル構造としては、より具体的には、例えば、ポリカルボン酸(特に、ジカルボン酸)とポリオール(特に、ジオール)の重合により形成されるポリエステル構造が挙げられる。上記ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(酸無水物やエステル等の誘導体も含む);アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸(酸無水物やエステル等の誘導体も含む);1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ハイミック酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸などの脂環構造を有するジカルボン酸(酸無水物やエステル等の誘導体も含む)等が挙げられる。上記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール(2−メチルペンタン−2,4−ジオール)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,12−ドデカンジオール、キシリレングリコール、1,3−ジヒドロキシアセトン、ポリブタジエンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などのジオール(これらの誘導体も含む);1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチロールシクロヘキサン)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−ジメチロールシクロヘキサン)、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の6員環ジオール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環構造を有するジオール(これらの誘導体も含む)、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の3以上の水酸基を有するポリオール(これらの誘導体も含む)等が挙げられる。上記ポリエステル構造は、それぞれ単独のポリオール、ポリカルボン酸より形成されたものであってもよいし、それぞれ2種以上のポリオール、ポリカルボン酸より形成されたものであってもよい。
【0053】
また、上記ポリエステル構造としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸の重合により形成されるポリエステル構造、該ヒドロキシカルボン酸の環状エステルであるラクトンの重合(開環重合)により形成されるポリエステル構造なども挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸(バニリン酸)、4−メトキシ−3−ヒドロキシ安息香酸(イソバニリン酸)、3、5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸(シリンガ酸)、2,6−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、4−メチル−3−ヒドロキシ安息香酸、3−フェニル−4−ヒドロキシ安息香酸、4−フェニル−3−ヒドロキシ安息香酸、2−フェニル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,4−ジヒドロキシケイ皮酸(コーヒー酸)、(E)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)プロパン−2−エノール酸(フェルラ酸)、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノン酸(クマル酸)などのヒドロキシ芳香族カルボン酸;グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ脂肪族カルボン酸等が挙げられる。上記ラクトンとしては、特に限定されないが、例えば、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ξ−エナントラクトン、η−カプリロラクトン等が挙げられる。上記ポリエステル構造は、それぞれ単独のヒドロキシカルボン酸、ラクトンより形成されたものであってもよいし、それぞれ2種以上のヒドロキシカルボン酸、ラクトンより形成されたものであってもよい。
【0054】
なお、上記ポリエステル構造は、上記例示の構造に限定されず、例えば、上述のポリカルボン酸とポリオールの重合により形成されるポリエステル構造、ヒドロキシカルボン酸の重合により形成されるポリエステル構造、ラクトンの重合により形成されるポリエステル構造の2種以上が組み合わされた構造であってもよい。
【0055】
上記ポリエステル鎖を含む有機基は、上記ポリエステル構造のみからなる有機基であってもよいし、上記ポリエステル構造の1又は2以上と、1又は2以上の連結基とが連結した構造を有する有機基であってもよい。上記ポリエステル鎖を含む有機基における連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(特に、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基)、チオエーテル基(−S−)、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、カーボネート基(−OCOO−)、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0056】
なお、上記ポリエステル鎖を含む有機基は、上述のR3において例示した置換基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基など)を有していてもよく、例えば、このようなポリエステル構造を含む有機基として、末端(式(2)におけるケイ素原子に対する反対側の端部)に上記置換基を有する有機基などが挙げられる。
【0057】
上記シリコーン系重合体(C1)は、繰り返し構造単位として、式(2)で表される構造単位のみを有する重合体であってもよいし、式(2)で表される構造単位以外の構造単位を有する重合体であってもよい。上記シリコーン系重合体における、式(2)で表される構造単位以外の構造単位は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル基(Si−H)を有する構造単位などが挙げられる。また、上記シリコーン系重合体(C1)は、式(2)で表される構造単位を1種のみ有する重合体であってもよいし、式(2)で表される構造単位を2種以上有する重合体であってもよい。また、式(2)で表される構造単位以外の構造単位を2種以上有する重合体であってもよい。
【0058】
上記シリコーン系重合体(C1)の具体例としては、例えば、下記式(2a)〜(2e)で表される重合体(ポリジメチルシロキサン又は変性ポリジメチルシロキサン)などが挙げられる。
【化20】

【0059】
上記式(2a)で表されるシリコーン系重合体(C1)は、ポリジメチルシロキサンである。式(2a)におけるx1(ジメチルシリルオキシ構造単位[−Si(CH32−O−]の繰り返し数)は、特に限定されないが、2〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。
【0060】
上記式(2b)で表されるシリコーン系重合体(C1)は、ポリジメチルシロキサンの側鎖にポリエーテル構造を導入した、ポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性体である。式(2b)におけるR7は、水素原子又はメチル基を示す。また、R8は、水素原子、又は置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。なお、R8における置換基としては、上述のR3において例示した置換基が挙げられる。式(2b)におけるm1(メチレン構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、例えば、1〜30の範囲から適宜選択することができる。また、n1(オキシエチレン構造単位又はオキシプロピレン構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、例えば、2〜3000の範囲から適宜選択することができる。また、式(2b)におけるy1(ポリエーテル構造(ポリエーテル側鎖)を含む構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、1〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。さらに、x2(ジメチルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、2〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。なお、式(2b)で表されるシリコーン系重合体(C1)における、ポリエーテル構造を有する構造単位とジメチルシリルオキシ構造単位の付加形態は、ブロック型であってもよいし、ランダム型であってもよい。また、y1が2以上の整数である場合、y1が付された括弧で囲まれたポリエーテル構造を有する構造単位は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
上記式(2c)で表されるシリコーン系重合体(C1)は、ポリジメチルシロキサンの側鎖にメチル基よりも長鎖のアルキル基を導入した、ポリジメチルシロキサンの長鎖アルキル変性体(ポリメチルアルキルシロキサン)である。式(2c)におけるR9は、炭素数2以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。式(2c)におけるy2(メチルアルキルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、2〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。また、x3(ジメチルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、0〜3000が好ましく、より好ましくは2〜1500である。なお、式(2c)で表されるシリコーン系重合体(C1)における、メチルアルキルシリルオキシ構造単位とジメチルシリルオキシ構造単位の付加形態は、ブロック型であってもよいし、ランダム型であってもよい。また、y2が付された括弧で囲まれたメチルアルキルシリルオキシ構造単位は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
上記式(2d)で表されるシリコーン系重合体(C1)は、ポリジメチルシロキサンの側鎖にアラルキル基を導入した、ポリジメチルシロキサンのアラルキル変性体である。式(2d)におけるm2(メチレン構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、例えば、1〜30の範囲から適宜選択することができる。また、y3(メチルアラルキルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、2〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。また、x4(ジメチルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、0〜3000が好ましく、より好ましくは2〜1500である。なお、式(2d)で表されるシリコーン系重合体(C1)における、メチルアラルキルシリルオキシ構造単位とジメチルシリルオキシ構造単位の付加形態は、ブロック型であってもよいし、ランダム型であってもよい。また、y3が付された括弧で囲まれたメチルアラルキルシリルオキシ構造単位は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
上記式(2e)で表されるシリコーン系重合体(C1)は、ポリジメチルシロキサンの側鎖にポリエステル構造を導入した、ポリジメチルシロキサンのポリエステル変性体である。式(2e)におけるR10及びR11は、同一又は異なって、2価の有機基(例えば、2価の炭化水素基など)を示す。また、R12は、水素原子、又は置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。なお、R11における置換基としては、上述のR3において例示した置換基が挙げられる。式(2e)におけるm3(メチレン構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、例えば、1〜30の範囲から適宜選択することができる。また、n2(ポリオールとポリカルボン酸の縮合構造の繰り返し数)は、特に限定されないが、例えば、2〜3000の範囲から適宜選択することができる。また、式(2e)におけるy4(ポリエステル構造(ポリエステル側鎖)を含む構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、1〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。さらに、x5(ジメチルシリルオキシ構造単位の繰り返し数)は、特に限定されないが、2〜3000が好ましく、より好ましくは3〜1500である。なお、式(2e)で表されるシリコーン系重合体(C1)における、ポリエステル構造を有する構造単位とジメチルシリルオキシ構造単位の付加形態は、ブロック型であってもよいし、ランダム型であってもよい。また、y4が2以上の整数の場合、y4が付された括弧で囲まれたポリエステル構造を含む構造単位は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
上記シリコーン系重合体(C1)は、公知乃至慣用の製造方法により得ることができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、式(2)で表される構造単位に対応する構造を有するモノマーを重合させる方法や、側鎖に反応性基を有するシリコーン系重合体(側鎖に反応性基を有するポリジメチルシロキサン等)の該反応性基に対して、所定の構造を有する化合物(例えば、ポリエーテル構造やポリエステル構造を有する化合物)を反応させて結合させる方法などによって、製造することができる。また、上記シリコーン系重合体(C1)としては、市販品を使用することもできる。
【0065】
(フッ素系レベリング剤)
上記フッ素系レベリング剤とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基を有する化合物を含むレベリング剤である。上記フッ素系レベリング剤としては、公知乃至慣用のフッ素系レベリング剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、商品名「BYK−340」(ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC 110a」、「AC 100a」(以上、Algin Chemie製)、商品名「メガファックF−114」、「メガファックF−410」、「メガファックF−444」、「メガファックEXP TP−2066」、「メガファックF−430」、「メガファックF−472SF」、「メガファックF−477」、「メガファックF−552」、「メガファックF−553」、「メガファックF−554」、「メガファックF−555」、「メガファックR−94」、「メガファックRS−72−K」、「メガファックRS−75」、「メガファックF−556」、「メガファックEXP TF−1367」、「メガファックEXP TF−1437」、「メガファックF−558」、「メガファックEXP TF−1537」(以上、DIC(株)製)、商品名「FC−4430」、「FC−4432」(以上、住友スリーエム(株)製)、商品名「フタージェント 100」、「フタージェント 100C」、「フタージェント 110」、「フタージェント 150」、「フタージェント 150CH」、「フタージェント A−K」、「フタージェント 501」、「フタージェント 250」、「フタージェント 251」、「フタージェント 222F」、「フタージェント 208G」、「フタージェント 300」、「フタージェント 310」、「フタージェント 400SW」(以上、(株)ネオス製)、商品名「PF−136A」、「PF−156A」、「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−651」、「PF−652」(以上、北村化学産業(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0066】
上記フッ素化アルキル基を有する化合物としては、特に、下記式(3)で表される構造単位(繰り返し構造単位)を少なくとも有する含フッ素アクリル系重合体(以下、「含フッ素アクリル系重合体(C2)」と称する場合がある)、下記式(4)で表される構造単位(繰り返し構造単位)を少なくとも有する含フッ素ポリエーテル系重合体(以下、「含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)」と称する場合がある)が好ましい。即ち、上記フッ素系レベリング剤は、含フッ素アクリル系重合体(C2)を少なくとも含むレベリング剤、又は、含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)を少なくとも含むレベリング剤であることが好ましい。
【化21】

【化22】

【0067】
上記式(3)中のR5は、水素原子、フッ素原子、又は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。上記炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0068】
上記式(3)中のR6は、フッ素化アルキル基(水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基)を示す。上記フッ素化アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ジフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、パーフルオロエチルメチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロプロピル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル基、パーフルオロペンチルメチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、2−(パーフルオロペンチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、パーフルオロヘキシルメチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロオクチル基、パーフルオロヘプチルメチル基、2−(パーフルオロヘプチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニル基、パーフルオロオクチルメチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロデシル基、パーフルオロノニルメチル基、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリドデカフルオロオクチル基などの水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ノナフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−s−ブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基などの炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。中でも、上記R6としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0069】
なお、上記含フッ素アクリル系重合体(C2)は、繰り返し構造単位として、式(3)で表される構造単位のみを有する重合体であってもよいし、式(3)で表される構造単位以外の構造単位を有する重合体であってもよい。また、上記含フッ素アクリル系重合体(C2)は、式(3)で表される構造単位を1種のみ有する重合体であってもよいし、式(3)で表される構造単位を2種以上を有する重合体であってもよい。また、式(3)で表される構造単位以外の構造単位を2種以上有する重合体であってもよい。
【0070】
上記含フッ素アクリル系重合体(C2)が有していてもよい、式(3)で表される構造単位以外の構造単位としては、特に限定されず、アクリル系重合体のモノマー成分(単量体成分)として公知乃至慣用のモノマーに由来する構造単位などが挙げられる。上記モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル等のアクリル酸エステル類(水酸基やカルボキシル基等の官能基を有するものも含む);メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類(水酸基やカルボキシル基等の官能基を有するものも含む);アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリルアミド等のメタクリルアミド類;アリル化合物;芳香族ビニル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類などのビニル化合物などが挙げられる。また、ポリアルキレングリコールエーテルとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルなども上記モノマーとして使用できる。
【0071】
上記含フッ素アクリル系重合体(C2)の具体例としては、例えば、下記式(3a)で表される含フッ素アクリル系重合体などが挙げられる。
【化23】

【0072】
式(3a)におけるR13は、水素原子又はメチル基を示す。また、R14は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n−ブチル基)、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0073】
式(3a)におけるR15は、水素原子又はメチル基を示す。また、R16は、パーフルオロアルキル基を示す。上記パーフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、上記式(3)におけるR6として例示したパーフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0074】
式(3a)におけるR17は、水素原子又はメチル基を示す。また、R18は、ポリエーテル鎖を含む有機基を示す。上記ポリエーテル鎖を有する有機基としては、特に限定されないが、例えば、上記式(2)におけるR4として例示したもの等が挙げられる。
【0075】
式(3a)におけるr、s、及びtは、それぞれ、1〜3000の整数を示す。
【0076】
上記含フッ素アクリル系重合体(C2)は、公知乃至慣用の製造方法により得ることができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、重合することにより式(3)で表される構造単位を与えるモノマー(例えば、パーフルオロアルキルアクリレートやパーフルオロアルキルメタクリレートなど)を重合させる方法などによって製造することができる。また、上記含フッ素アクリル系重合体(C2)としては、市販品を使用することもできる。
【0077】
上記式(4)におけるR19は、3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。上記3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、ヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖又は分岐鎖状のアルカンから3個の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でも、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルカンから3個の水素原子を除いた基が好ましい。
【0078】
上記式(4)におけるR20は、フッ素化アルキル基を示す。上記フッ素化アルキル基としては、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基であればよく、特に限定されないが、例えば、上記式(3)におけるR6として例示したもの等が挙げられる。中でも、上記R20としては、水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0079】
上記式(4)におけるz(メチレン構造単位の繰り返し数)は、1〜30の整数を示す。中でも、1〜10の整数が好ましい。
【0080】
なお、上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)は、繰り返し構造単位として、式(4)で表される構造単位のみを有する重合体であってもよいし、式(4)で表される構造単位以外の構造単位を有する重合体であってもよい。また、上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)は、式(4)で表される構造単位を1種のみ有する重合体であってもよいし、式(4)で表される構造単位を2種以上を有する重合体であってもよい。また、式(4)で表される構造単位以外の構造単位を2種以上有する重合体であってもよい。
【0081】
上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)が有していてもよい、式(4)で表される構造単位以外の構造単位としては、特に限定されず、例えば、オキシエチレン単位[−OCH2CH2−]、オキシプロピレン単位[−OCH(CH3)CH2−]などのオキシアルキレン構造単位などが挙げられる。
【0082】
上記式(4)で表される構造単位の具体例としては、例えば、下記式で表される構造単位などが挙げられる。下記式におけるR21は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基など)を示す。下記式におけるR20、zは、前記に同じである。
【化24】

【0083】
上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)の具体例としては、例えば、下記式(4a)で表される含フッ素ポリエーテル系重合体などが挙げられる。
【化25】

【0084】
式(4a)におけるu、v、及びwは、それぞれ、1〜50の整数を示す。中でも、uとwの合計は、2〜80の整数であることが好ましく、より好ましくは4〜30の整数、さらに好ましくは6〜14の整数である。また、vは、2〜50の整数であることが好ましく、より好ましくは5〜20の整数である。
【0085】
上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)は、公知乃至慣用の製造方法により得ることができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、重合することにより式(4)で表される構造単位を与えるモノマー(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物等の環状エーテル化合物など)を重合(例えば、開環重合)させる方法などによって製造することができる。また、上記含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)としては、市販品を使用することもできる。
【0086】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるレベリング剤(C)の不揮発分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部である。レベリング剤(C)の含有量(不揮発分換算)が0.1重量部未満であると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。一方、レベリング剤(C)の含有量(不揮発分換算)が10重量部を超えると、硬化物の透明性や耐熱性が低下する場合がある。
【0087】
特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における、シリコーン系重合体(C1)、含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部である。シリコーン系重合体(C1)、含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)の含有量が0.1重量部未満であると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。一方、含有量が10重量部を超えると、硬化物の透明性や耐熱性が低下する場合がある。なお、「シリコーン系重合体(C1)、含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)の含有量(配合量)」とは、シリコーン系重合体(C1)、含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)のうち2種以上を含む場合には、これらの含有量の合計(合計含有量)を意味する。
【0088】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の特定のレベリング剤(C)を含有するため、上記樹脂組成物の硬化物で光半導体素子を封止して得られる光半導体装置は、優れた耐熱性、耐クラック性を発揮し、経時での光度低下(特に、高輝度の光を発する光半導体装置の光度低下)が抑制される。このような効果は、レベリング剤(C)を含むことにより本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(又はその硬化物)の光半導体素子やパッケージ材(例えば、リフレクター材など)に対する密着性が向上したことによるものと推測される。
【0089】
[硬化剤(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する硬化剤(D)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる役割を担う。硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。中でも、硬化剤(D)としては、25℃で液状の酸無水物が好ましく、より具体的には、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの常温(約25℃)で固体状の酸無水物についても、常温(約25℃)で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、硬化剤(D)として使用することができる。硬化剤(D)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。硬化剤(D)としては、耐熱性、耐光性、耐クラック性の観点で、特に、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
【0090】
また、本発明においては、硬化剤(D)として、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0091】
硬化剤(D)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは100〜145重量部である。より具体的には、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中に含有する全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(D)の使用量が50重量部を下回ると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(D)の使用量が200重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0092】
[硬化促進剤(F)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化促進剤(F)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤(D)により硬化する際に、硬化を促進する機能(硬化速度を速める機能)を有する化合物である。硬化促進剤(F)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。硬化促進剤(F)は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
また、本発明においては、硬化促進剤(F)として、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「12XD(開発品)」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製)、商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0094】
硬化促進剤(F)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.25〜2.5重量部である。硬化促進剤(F)の使用量が0.05重量部を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(F)の使用量が5重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0095】
[硬化触媒(E)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の硬化剤(D)の代わりに、硬化触媒(E)を含んでいてもよい。硬化剤(D)を用いた場合と同様に、硬化触媒(E)を用いることにより、エポキシ基を有する化合物の硬化反応を進行させ、硬化物を得ることができる。上記硬化触媒(E)としては、特に限定されないが、例えば、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン触媒(カチオン重合開始剤)を用いることができる。
【0096】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などを挙げることができる。これらのカチオン触媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー製)、商品名「イルガキュア264」(チバ・ジャパン(株)製)、商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。
【0097】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などを挙げることができる。これらのカチオン触媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「FC−509」(スリーエム製)、商品名「UVE1014」(G.E.製)、商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、「サンエイド SI−150L」(以上、三新化学工業(株)製)、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン製)等の市販品を好ましく使用することができる。上記カチオン触媒としては、さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物などを用いることもできる。
【0098】
硬化触媒(E)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。硬化触媒(E)を上記範囲内で使用することにより、耐熱性、耐光性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。
【0099】
[ゴム粒子]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、ゴム粒子を含んでいてもよい。上記ゴム粒子としては、例えば、粒子状NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、反応性末端カルボキシル基NBR(CTBN)、メタルフリーNBR、粒子状SBR(スチレン−ブタジエンゴム)等が挙げられる。また、上記ゴム粒子は、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とから成る多層構造(コアシェル構造)を有し、表面に脂環式エポキシ樹脂と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有し、平均粒子径が10nm〜500nm、最大粒子径が50nm〜1000nmであるゴム粒子であって、該ゴム粒子の屈折率と当該硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の屈折率との差が±0.02以内であるゴム粒子であってもよい。上記ゴム粒子の配合量は、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。ゴム粒子の使用量が0.5重量部を下回ると、耐クラック性が低下する傾向がある。一方、ゴム粒子の使用量が30重量部を上回ると、耐熱性及び透明性が低下する傾向がある。
【0100】
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を使用することができる。添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水酸基を有する化合物を使用すると、反応(硬化反応)を緩やかに進行させることができる。その他にも、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、シリカ、アルミナなどの無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0101】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性などの諸物性に優れた硬化物を得ることができる。硬化の際の加熱温度(硬化温度)としては、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは100〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)としては、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度が低すぎる場合、及び/又は、硬化時間が短すぎる場合は、硬化が不十分となる場合がある。一方、硬化温度が高すぎる場合、及び/又は、硬化時間が長すぎる場合は、樹脂成分の分解が起こる場合がある。硬化条件は種々の条件に依存するが、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。
【0102】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる。本発明の光半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性などの諸物性に優れた硬化物により光半導体素子が封止された、光度が経時で低下しにくい光半導体装置を得ることができる。上記光半導体装置は、高出力、高輝度の光半導体素子を備える場合であっても、光度が経時で低下しにくい。
【0103】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)で光半導体素子を封止することにより得られる。光半導体素子の封止は、硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行う。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物によって光半導体素子が封止されてなる光半導体装置が得られる。封止の際の硬化温度と硬化時間としては、例えば、上記硬化物を形成する際と同様の条件を採用することができる。
【0104】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記の光半導体素子の封止用途(光半導体封止用)に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの用途にも好ましく使用することができる。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1におけるシリコーン系レベリング剤(「BYK−300」、「AC FS 180」)、フッ素系レベリング剤(「BYK−340」、「AC 110a」)の配合量は、商品としての量(商品そのものの量)を示す。
【0106】
製造例1[エポキシ樹脂の製造]
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(商品名「MA−DGIC」、四国化成工業(株))と脂環式エポキシ化合物(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業(株)製;商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業(株)製)を、表1に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って混合し(実施例1〜14の場合は、混合後、80℃で1時間攪拌することでモノアリルジグリシジルイソシアヌレートを溶解させた)、エポキシ樹脂を得た。
【0107】
製造例2[硬化剤、硬化促進剤、及び添加剤の混合物(以下K剤と称する)の製造]
硬化剤(酸無水物)(商品名「リカシッド MH−700」、日立化成工業(株)製)130重量部、硬化促進剤(商品名「U−CAT 18X」、サンアプロ(株)製)0.5重量部、添加剤(商品名「エチレングリコール」、和光純薬工業(株)製)1重量部を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡してK剤を得た。
【0108】
実施例1〜14、比較例1〜6
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造)
表1に示す配合処方(単位:重量部)となるように、製造例1で得られたエポキシ樹脂、製造例2で得られたK剤、硬化触媒(商品名「サンエイド SI−100L」、三新化学工業(株)製)、シリコーン系レベリング剤(商品名「BYK−300」、ビックケミー・ジャパン(株)製;商品名「AC FS 180」、Algin Chemie製)、フッ素系レベリング剤(商品名「BYK−340」、ビックケミー・ジャパン(株)製;商品名「AC 110a」、Algin Chemie製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し(2000rpm、5分間)、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。なお、表1における「−」は、当該成分の配合を行っていないことを示す。
【0109】
(光半導体装置の製造)
上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を、図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、120℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で5時間加熱し、硬化した樹脂(硬化物)で光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。なお、図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は透明封止樹脂(硬化物)を示す。
【0110】
<評価>
実施例及び比較例で得られた光半導体装置について、以下の方法で評価試験を行った。
【0111】
[通電試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置の全光束を全光束測定機を用いて測定し、これを「初期(0時間)の全光束(lm)」とした。さらに、85℃の恒温槽内で100時間、上記光半導体装置に60mAの電流を継続的に流した後の全光束を測定し、これを「100時間後の全光束(lm)」とした。そして、次式より光度保持率を算出した。結果を表1の「光度保持率」の欄に示す。
{光度保持率(%)}
={100時間後の全光束(lm)}/{初期(0時間)の全光束(lm)}×100
【0112】
[はんだ耐熱性試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個用いた)を、30℃、70%RHの条件下で168時間静置して吸湿させた。次いで、上記光半導体装置をリフロー炉(UNI−5016F、日本アントム(株)製)に入れ、下記加熱条件にて加熱した。その後、上記光半導体装置を室温環境下に取り出して放冷した後、再度リフロー炉に入れて同条件で加熱した。即ち、当該はんだ耐熱性試験においては、光半導体装置に対して下記加熱条件による熱履歴を二度与えた。
〔加熱条件(光半導体装置の表面温度基準)〕
(1)予備加熱:150〜190℃で60〜120秒
(2)予備加熱後の本加熱:217℃以上で60〜150秒、最高温度260℃
但し、予備加熱から本加熱に移行する際の昇温速度は最大で3℃/秒に制御した。
図2には、リフロー炉による加熱の際の光半導体装置の表面温度プロファイル(二度の加熱のうち一方の加熱における温度プロファイル)の一例を示す。
その後、光半導体装置の封止樹脂(硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物)に生じたクラックの長さを、デジタルマイクロスコープ(VHX−900、(株)キーエンス製)を使用して観察し、光半導体装置2個のうち長さが90μm以上のクラックを有する光半導体装置の個数を計測した。結果を表1の「はんだ耐熱性試験」の欄に示す。
【0113】
[熱衝撃試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個用いた)に対し、−40℃の雰囲気下に30分曝露し、続いて、100℃の雰囲気下に30分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて200サイクル分与えた。その後、光半導体装置の封止樹脂(硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物)に生じたクラックの長さを、デジタルマイクロスコープ(VHX−900、(株)キーエンス製)を使用して観察し、光半導体装置2個のうち長さが90μm以上のクラックを有する光半導体装置の個数を計測した。結果を表1の「熱衝撃試験」の欄に示す。
【0114】
[総合判定]
通電試験において光度保持率が80%以上であり、なおかつ、はんだ耐熱性試験と熱衝撃試験において共に、長さ90μm以上のクラックが生じた光半導体装置の個数が0個となったものを、総合判定○(良好)とした。これ以外のものを総合判定×(不良)とした。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
なお、実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
[エポキシ樹脂]
CEL2021P(セロキサイド2021P):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業(株)製
MA−DGIC:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、四国化成工業(株)製
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ダイセル化学工業(株)製
[K剤]
MH−700(リカシッド MH−700):4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化(株)製
18X(U−CAT 18X):硬化促進剤、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
[レベリング剤]
BYK−300:シリコーン系レベリング剤(シリコーン系重合体(C1)を含む)、ビックケミー・ジャパン(株)製
AC FS 180:シリコーン系レベリング剤(シリコーン系重合体(C1)を含む)、Algin Chemie製
BYK−340:フッ素系レベリング剤(含フッ素アクリル系重合体(C2)を含む)、ビックケミー・ジャパン(株)製
AC 110a:フッ素系レベリング剤(含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)を含む)、Algin Chemie製
[硬化触媒]
サンエイド SI−100L:アリールスルホニウム塩、三新化学工業(株)製
【0117】
試験機器
・樹脂硬化オーブン
エスペック(株)製、「GPHH−201」
・恒温槽
エスペック(株)製、「小型高温チャンバー ST−120B1」
・全光束測定機
米国オプトロニックラボラトリーズ製、「マルチ分光放射測定システム OL771」
・熱衝撃試験機
エスペック(株)製、「小型冷熱衝撃装置 TSE−11−A」
【符号の説明】
【0118】
100:リフレクター(光反射用樹脂組成物)
101:金属配線
102:光半導体素子
103:ボンディングワイヤ
104:透明封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【請求項2】
脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のレベリング剤(C)と、硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化2】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【請求項3】
脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、下記式(2)で表される構造単位を有するシリコーン系重合体(C1)、下記式(3)で表される構造単位を有する含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び下記式(4)で表される構造単位を有する含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の重合体と、硬化剤(D)と、硬化促進剤(F)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化3】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【化4】

[式(2)中、R3は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。R4は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ポリエーテル鎖を含む有機基、又はポリエステル鎖を含む有機基を示す。]
【化5】

[式(3)中、R5は、水素原子、フッ素原子、又は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。R6は、フッ素化アルキル基を示す。]
【化6】

[式(4)中、R19は、3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。R20は、フッ素化アルキル基を示す。zは、1〜30の整数を示す。]
【請求項4】
脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、下記式(2)で表される構造単位を有するシリコーン系重合体(C1)、下記式(3)で表される構造単位を有する含フッ素アクリル系重合体(C2)、及び下記式(4)で表される構造単位を有する含フッ素ポリエーテル系重合体(C3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の重合体と、硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化7】

[式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
【化8】

[式(2)中、R3は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。R4は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ポリエーテル鎖を含む有機基、又はポリエステル鎖を含む有機基を示す。]
【化9】

[式(3)中、R5は、水素原子、フッ素原子、又は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。R6は、フッ素化アルキル基を示す。]
【化10】

[式(4)中、R19は、3価の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。R20は、フッ素化アルキル基を示す。zは、1〜30の整数を示す。]
【請求項5】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化11】

で表される化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の光半導体封止用樹脂組成物で光半導体素子を封止した光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−18921(P2013−18921A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155254(P2011−155254)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】