説明

硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】高い透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備え、さらに耐リフロー性にも優れた硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、ポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)と、硬化剤(D)又は硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


[式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性エポキシ樹脂組成物、該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、該硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物、ならびに該光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止した光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子(LED素子)を光源とする光半導体装置は、現在、各種の屋内又は屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等の様々な用途に使用されている。このような光半導体装置は、一般に、光半導体素子が樹脂(封止樹脂)により封止された構造を有しており、上記封止樹脂は光半導体素子を水分や衝撃等から保護するための役割を担っている。
【0003】
近年、このような光半導体装置の高出力化や短波長化が進んでおり、例えば、青色・白色光半導体装置においては、光半導体素子から発せられる光及び熱による封止樹脂の黄変が問題となっている。このように黄変した封止樹脂は、光半導体素子から発せられた光を吸収するため、光半導体装置から出力される光の光度が経時で低下してしまう。
【0004】
従来、耐熱性に優れた光半導体用の封止樹脂として、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、上記硬化物を高出力の青色・白色光半導体装置の封止樹脂として用いた場合であってもやはり、光半導体素子から発せられる光及び熱によって着色が進行してしまい、本来出力されるべき光が吸収され、その結果、光半導体装置から出力される光の光度が経時で低下するという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高い耐熱性及び耐光性を有し、着色(黄変)しにくい封止樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートとε−カプロラクトンの付加物、1,2,8,9−ジエポキシリモネンなどの脂環骨格を有する液状の脂環式エポキシ樹脂の硬化物が知られている。しかし、これらの脂環式エポキシ樹脂の硬化物は各種応力に弱く、冷熱サイクル(加熱と冷却を繰り返すこと)のような熱衝撃が加えられた場合に、クラック(ひび割れ)が生じてしまう等の問題を有していた。
【0007】
また、上記光半導体装置は、通常、はんだ付けにより該光半導体装置の電極を配線基板に接合するためのリフロー工程を経る。近年、接合材としてのはんだとして、融点の高い無鉛はんだが使用されるようになってきており、リフロー工程での加熱処理がより高温(例えば、ピーク温度が240〜260℃)になってきている。このような状況下、従来の光半導体装置においては、リフロー工程での加熱処理により封止樹脂が光半導体装置のリードフレームから剥離したり、クラックを生じたりする等の劣化の問題が発生することが判明した。
【0008】
このため、光半導体装置における封止樹脂としては、高い耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備え、さらに耐リフロー性にも優れた透明な材料が求められているのが現状である。なお、本明細書において「耐クラック性」とは、熱衝撃が加えられた場合であっても、封止樹脂にクラックが生じにくい特性をいう。また、「耐リフロー性」とは、光半導体装置を基板に実装する際に行うリフロー工程で加熱処理した場合であっても、リードフレームから封止樹脂が剥離したり、封止樹脂にクラックが生じるなどの劣化が生じにくい特性をいう。
【0009】
従って、本発明の目的は、高い透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備え、さらに耐リフロー性にも優れた硬化物を与える硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる、高い透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を兼ね備え、さらに耐リフロー性にも優れた硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、リフロー工程の加熱処理による劣化や経時での光度低下が抑制された光半導体装置を製造することができる、上記硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止することにより得られる、リフロー工程の加熱処理による劣化や経時での光度低下が抑制された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物、及びポリカーボネートポリオールを除くポリオールを必須成分として含み、さらに硬化剤又は硬化触媒を含む硬化性エポキシ樹脂組成物が、高い透明性、耐熱性、耐光性、耐クラック性、及び耐リフロー性を兼ね備えた硬化物を与え、該硬化物にて光半導体素子を封止した光半導体装置は、リフロー工程の加熱処理による劣化や経時での光度低下が生じにくいことを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)
【化1】

[式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、ポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)と、硬化剤(D)又は硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0012】
さらに、前記脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0013】
さらに、前記脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化2】

で表される化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、硬化促進剤(F)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、アクリルブロック共重合体を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の光半導体封止用樹脂組成物で光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は上記構成を有するため、該樹脂組成物を硬化させることにより、高い耐熱性、耐光性、透明性、及び耐クラック性を兼ね備え、さらに、耐リフロー性にも優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)を用いて光半導体素子を封止した光半導体装置は、リフロー工程での高温処理によっても劣化しにくく、かつ光度が経時で低下しにくいため、優れた品質及び耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物で素子(光半導体素子)を封止した光半導体装置の一実施形態を示す概略図である。左側の図(a)は斜視図であり、右側の図(b)は断面図である。
【図2】図2は、実施例のはんだ耐熱性試験における光半導体装置の表面温度プロファイル(リフロー炉内での二度の加熱のうち一方の加熱における温度プロファイル)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)
【化3】

[式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、ポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)と、硬化剤(D)又は硬化触媒(E)とを含む樹脂組成物である。
【0022】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(1分子内)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを少なくとも有する化合物である。より具体的には、脂環式エポキシ化合物(A)には、例えば、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する場合がある)を有する化合物、及び(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物等が含まれる。
【0023】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記化合物は、シクロヘキサン環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。
【0024】
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、特に、透明性、耐熱性の点で、下記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)が好ましい。
【化4】

式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0025】
式(I)中のXが単結合である脂環式エポキシ化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。このような脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド8000」(ダイセル化学工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【化5】

【0026】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0027】
上記連結基Xとしては、中でも、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
【0028】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−8)で表される化合物などが挙げられる。例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(ダイセル化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。なお、下記式(I−1)〜(I−8)中、l、mは、1〜30の整数を表す。Rは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらのなかでも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化7】

式(II)中、R’はp価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nは自然数を表す。p価のアルコール[R’−(OH)p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(丸括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE 3150」(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0031】
脂環式エポキシ化合物(A)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」が特に好ましい。
【0032】
脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(D)を必須成分として含む場合には、硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは18〜70重量%である。一方、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化触媒(E)を必須成分として含む場合には、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、25〜95重量%が好ましく、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは35〜85重量%である。
【0033】
また、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)との総量(100重量%)に対する、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、50〜90重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは70〜90重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が50重量%未満では、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の溶解性が十分でなく、室温に置くと析出しやすくなる場合がある。一方、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が90重量%を超えると、硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。
【0034】
[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、下記の一般式(1)で表される。
【化8】

上記式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
【0035】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。特に、上記式(1)中のR1及びR2は、水素原子であることが特に好ましい。
【0036】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。なお、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、上記脂環式エポキシ化合物(A)に溶解する範囲で任意に混合でき、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の割合は特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A):モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)が50:50〜90:10(重量比)であることが好ましい。この範囲外では、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の溶解性が得られにくくなったり、耐クラック性が低下する場合がある。
【0038】
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、アルコールや酸無水物など、エポキシ基と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いても良い。
【0039】
[ポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)(以下、単に「ポリオール(C)」と称する場合がある)は、分子内(一分子中)に2個以上の水酸基を有する、数平均分子量が200以上の重合体(オリゴマー又はポリマー)である。なお、ポリオール(C)には、ポリカーボネートポリオール(分子内に2個以上の水酸基を有するポリカーボネート)は含まれない(即ち、ポリオール(C)は、カーボネート骨格を有しない)。ポリオール(C)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ポリオール(C)が有する水酸基(2個以上の水酸基)は、アルコール性水酸基であってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。また、ポリオール(C)が有する水酸基の数(一分子中の水酸基の数)は、2個以上であればよく、特に限定されない。
【0041】
ポリオール(C)が有する水酸基(2個以上の水酸基)の位置は、特に限定されないが、硬化剤との反応の観点で、少なくともポリオールの末端(重合体主鎖の末端)に存在することが好ましく、少なくともポリオールの両末端に存在することが特に好ましい。
【0042】
ポリオール(C)は、成分(A)及び成分(B)に配合された後に液状の硬化性エポキシ樹脂組成物を形成できればよく、固体であってもよいし、液体であってもよい。
【0043】
ポリオール(C)の数平均分子量は、200以上であればよく、特に限定されないが、200〜100000が好ましく、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは400〜40000である。数平均分子量が200未満では、はんだリフロー工程を経た場合に剥離やクラックが発生する場合がある。一方、数平均分子量が100000を超えると、液状の硬化性エポキシ樹脂組成物から析出したり、溶解させることができない場合がある。なお、ポリオール(C)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0044】
ポリオール(C)の水酸基価は、特に限定されないが、30〜600mgKOH/gが好ましく、より好ましくは50〜500mgKOH/gである。水酸基価が30mgKOH/g未満であると、硬化物のガラス転移温度(Tg)が低下し過ぎる場合がある。一方、水酸基価が600mgKOH/gを超えると、耐クラック性が低下する場合がある。なお、ポリオール(C)の水酸基価は、例えば、JIS K1557−1に記載の方法により測定できる。
【0045】
より具体的には、ポリオール(C)としては、例えば、分子内にエステル骨格(ポリエステル骨格)を有するポリエステルポリオール(ポリエステルポリオールオリゴマーを含む)、分子内にエーテル骨格(ポリエーテル骨格)を有するポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールオリゴマーを含む)などが挙げられる。上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール以外のポリオール(C)としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂、分子内に2個以上の水酸基を有するポリブタジエン類、アクリルポリオールなどが挙げられる。
【0046】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸(多塩基酸)、ヒドロキシカルボン酸の縮合重合(例えば、エステル交換反応)により得られるポリエステルポリオールや、ラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0047】
上記ポリエステルポリオールを構成するモノマー成分としてのポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。上記ポリエステルポリオールを構成するモノマー成分としてのポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトラコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。上記ラクトン類としては、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0048】
上記ポリエステルポリオールは、公知乃至慣用の製造方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、上記ポリオールとポリカルボン酸の縮合重合、上記ヒドロキシカルボン酸の縮合重合、上記ラクトン類の開環重合などにより製造できる。重合の際の条件も特に限定されず、公知乃至慣用の反応条件より適宜選択できる。なお、上記ポリオール、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸としては、公知乃至慣用の誘導体(例えば、ヒドロキシル基がアシル基、アルコキシカルボニル基、有機シリル基、アルコキシアルキル基、オキサシクロアルキル基等で保護された誘導体や、カルボキシル基がアルキルエステル、酸無水物、酸化ハロゲン化物等に誘導された誘導体など)を用いることもできる。
【0049】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205U」、「プラクセルL205AL」、「プラクセルL208AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL230AL」、「プラクセル220ED」、「プラクセル220EC」、「プラクセル220EB」、「プラクセル303」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL312AL」、「プラクセル320」、「プラクセルL320AL」、「プラクセル410」、「プラクセル410D」、「プラクセルP3403」、「プラクセルE227」、「プラクセルDC2009」、「プラクセルDC2016」、「プラクセルDC2209」(以上、ダイセル化学工業(株)製)などの市販品も使用できる。
【0050】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオール類への環状エーテル化合物の付加反応により得られるポリエーテルポリオール、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0051】
上記ポリエーテルポリオールとしては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどのポリオール類の多量体;上記ポリオール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン等のアルキレンオキサイドとの付加物;テトラヒドロフラン類などの環状エーテルの開環重合体(例えば、ポリテトラメチレングリコール)等が挙げられる。
【0052】
上記ポリエーテルポリオールは、公知乃至慣用の製造方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、ポリオール類への環状エーテル化合物の付加反応(開環付加重合)、アルキレンオキシドの開環重合(単独重合又は共重合)などにより製造できる。重合の際の条件も特に限定されず、公知乃至慣用の反応条件より適宜選択できる。
【0053】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、商品名「PEP−101」(フロイント産業(株)製)、商品名「アデカプルロニックL」、「アデカプルロニックP」、「アデカプルロニックF」、「アデカプルロニックR」、「アデカプルロニックTR」、「アデカPEG」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#11000」(以上、日油(株)製)、商品名「ニューポールPE−34」、「ニューポールPE−61」、「ニューポールPE−78」、「ニューポールPE−108」、「PEG−200」、「PEG−600」、「PEG−2000」、「PEG−6000」、「PEG−10000」、「PEG−20000」(以上、三洋化成工業(株)製)、商品名「PTMG1000」、「PTMG1800」、「PTMG2000」(以上、三菱化学(株)製)、商品名「PTMGプレポリマー」(三菱樹脂(株)製)などの市販品も使用できる。
【0054】
上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール以外のポリオール(C)としては、例えば、商品名「YP−50」、「YP−50S」、「YP−55U」、「YP−70」、「ZX−1356−2」、「YPB−43C」、「YPB−43M」、「FX−316」、「FX−310T40」、「FX−280S」、「FX−293」、「YPS−007A30」、「TX−1016」(以上、新日鐵化学(株)製)、商品名「jER1256」、「jER4250」、「jER4275」(以上、三菱化学(株)製)などのフェノキシ樹脂;商品名「エポトートYD−014」、「エポトートYD−017」、「エポトートYD−019」、「エポトートYD−020G」、「エポトートYD−904」、「エポトートYD−907」、「エポトートYD−6020」(以上、新日鐵化学(株)製)、商品名「jER1007」、「jER1009」、「jER1010」、「jER1005F」、「jER1009F」、「jER1006FS」、「jER1007FS」(三菱化学(株)製)などのエポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂;商品名「Poly bd R−45HT」、「Poly bd R−15HT」、「Poly ip」、「エポール」、「KRASOL」(以上、出光興産(株)製)、商品名「α−ωポリブタジエングリコール G−1000」、「α−ωポリブタジエングリコール G−2000」、「α−ωポリブタジエングリコール G−3000」(以上、日本曹達(株)製)などの分子内に2個以上の水酸基を有するポリブタジエン類;商品名「ヒタロイド3903」、「ヒタロイド3904」、「ヒタロイド3905」、「ヒタロイド6500」、「ヒタロイド6500B」、「ヒタロイド3018X」(日立化成工業(株)製)、商品名「アクリディックDL−1537」、「アクリディックBL−616」、「アクリディックAL−1157」、「アクリディックA−322」、「アクリディックA−817」、「アクリディック」、「アクリディックA−870」、「アクリディックA−859−B」、「アクリディックA−829」、「アクリディックA−49−394−IM」(DIC(株)製)、商品名「ダイヤナールSR−1346」、「ダイヤナールSR−1237」、「ダイヤナールAS−1139」(三菱レイヨン(株)製)などのアクリルポリオール(分子内に2個以上の水酸基を有するアクリル樹脂)などが挙げられる。
【0055】
ポリオール(C)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜35重量部、さらに好ましくは10〜30重量部、特に好ましくは15〜25重量部である。ポリオール(C)の使用量が1重量部を下回ると、耐リフロー性が低下し、リフロー工程での加熱処理により、光半導体装置においてリードフレームからの封止樹脂の剥離やクラックが発生する場合がある。一方、ポリオール(C)の使用量が50重量部を上回ると、硬化物のTgが低下し過ぎて、加熱による体積変化が大きくなり、光半導体装置の不点灯等の不具合が起こる場合がある。また、曲げ強度は向上するが透明性が低下する場合がある。
【0056】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、ポリオール(C)(ポリカーボネートポリオール以外のポリオール)を含むことにより、ポリカーボネートポリオールを用いた場合と比較して、硬化物の耐リフロー性、特に、ハンダリフロー工程において硬化物にクラック(例えば、光半導体素子の周囲におけるクラック)が生じることが抑制される。また、熱衝撃(冷温サイクルなど)に対する硬化物の耐クラック性も向上する。さらに、高温高湿条件下で通電した場合の光度低下が低減し、光半導体装置の信頼性が向上する。
【0057】
[硬化剤(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する硬化剤(D)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる働きを有する。硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。中でも、硬化剤(D)としては、25℃で液状の酸無水物が好ましく、より具体的には、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの常温(約25℃)で固体状の酸無水物についても、常温(約25℃)で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、硬化剤(D)として使用することができる。硬化剤(D)としては、耐熱性、耐光性、耐クラック性の観点で、特に、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。なお、硬化剤(D)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、本発明においては、硬化剤(D)として、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0059】
硬化剤(D)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは100〜145重量部である。より具体的には、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物中に含有する全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(D)の使用量が50重量部を下回ると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(D)の使用量が200重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0060】
[硬化触媒(E)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の硬化剤(D)の代わりに、硬化触媒(E)を含んでいてもよい。硬化触媒(E)を用いることにより、硬化剤(D)を用いた場合と同様にエポキシ基を有する化合物の硬化反応を進行させ、硬化物を得ることができる。上記硬化触媒(E)としては、特に限定されないが、例えば、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させることが可能なカチオン触媒(カチオン重合開始剤)を用いることができる。なお、硬化触媒(E)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などが挙げられる。また、上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー製)、商品名「イルガキュア264」(チバ・ジャパン(株)製)、商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。
【0062】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などが挙げられる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「FC−509」(スリーエム製)、商品名「UVE1014」(G.E.製)、商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」(以上、三新化学工業(株)製)、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。上記カチオン触媒としては、さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物などを用いることもできる。
【0063】
硬化触媒(E)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。硬化触媒(E)を上記範囲内で使用することにより、耐熱性、耐光性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。
【0064】
[硬化促進剤(F)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(F)を含んでいてもよい。硬化促進剤(F)は、エポキシ基を有する化合物が硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。特に、硬化剤(D)と併用することが多い。硬化促進剤(F)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。なお、硬化促進剤(F)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
また、本発明においては、硬化促進剤(F)として、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 410」、「U−CAT 18X」、「12XD(開発品)」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製)、商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0066】
硬化促進剤(F)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.25〜2.5重量部である。硬化促進剤(F)の使用量が0.05重量部を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(F)の使用量が5重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0067】
[アクリルブロック共重合体]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体装置の経時での光度低下を抑制する観点から、さらに、アクリルブロック共重合体を含むことが好ましい。より詳しくは、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物がアクリルブロック共重合体を含む場合、当該硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて製造された光半導体装置は、特に高輝度・高出力の場合であっても光度が低下しにくい傾向がある。即ち、アクリルブロック共重合体を用いることにより、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、より高いレベルの耐熱性、耐光性、及び耐クラック性を発揮できる傾向がある。
【0068】
上記アクリルブロック共重合体は、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分とするブロック共重合体である。上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸2−トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸の(フルオロ)アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の分子中にカルボキシル基を有するカルボキシル基含有アクリル単量体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセリンのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の分子中に水酸基を有する水酸基含有アクリル単量体;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の分子中にエポキシ基を有するアクリル単量体;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の分子中にアリル基を有するアリル基含有アクリル単量体;γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の分子中に加水分解性シリル基を有するシラン基含有アクリル単量体;2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性アクリル単量体などが挙げられる。
【0069】
なお、上記アクリルブロック共重合体には、上記アクリル系モノマーに加え、さらに上記アクリル系モノマー以外のモノマーがモノマー成分として用いられていてもよい。上記アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどのオレフィンなどが挙げられる。
【0070】
上記アクリルブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えば、2つの重合体ブロックからなるジブロック共重合体や、3つの重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、4つ以上の重合体ブロックより構成されるマルチブロック共重合体などが挙げられる。
【0071】
中でも、上記アクリルブロック共重合体としては、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性向上の観点で、ガラス転移温度(Tg)が低い重合体ブロック(S)(ソフトブロック)と、重合体ブロック(S)よりも高いTgを有する重合体ブロック(H)(ハードブロック)が交互に並んだブロック共重合体が好ましく、より好ましくは重合体ブロック(S)を中間に有し、その両端に重合体ブロック(H)を有するH−S−H構造のトリブロック共重合体が好ましい。なお、上記アクリルブロック共重合体の重合体ブロック(S)を構成するポリマーのTgは、特に限定されないが、30℃未満が好ましい。また、重合体ブロック(H)を構成するポリマーのTgは、特に限定されないが、30℃以上が好ましい。上記アクリルブロック共重合体が複数の重合体ブロック(H)を有する場合には、それぞれの重合体ブロック(H)が同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。同様に、上記アクリルブロック共重合体が複数の重合体ブロック(S)を有する場合も、それぞれの重合体ブロック(S)が同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。
【0072】
上記アクリルブロック共重合体(上記H−S−H構造のトリブロック共重合体等)における、重合体ブロック(H)を構成するモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、ホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーが挙げられ、より詳しくは、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。一方、上記アクリルブロック共重合体における、重合体ブロック(S)を構成するモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、ホモポリマーのTgが30℃未満であるモノマーが挙げられ、より詳しくは、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸C2-10アルキルエステル、ブタジエン(1,4−ブタジエン)などが挙げられる。
【0073】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるアクリルブロック共重合体の好ましい具体例としては、例えば、上記重合体ブロック(S)がブチルアクリレート(BA)を主たるモノマーとして構成された重合体であり、上記重合体ブロック(H)がメチルメタクリレート(MMA)を主たるモノマーとして構成された重合体である、ポリメチルメタクリレート−block−ポリブチルアクリレート−block−ポリメチルメタクリレートターポリマー(PMMA−b−PBA−b−PMMA)等が挙げられる。上記PMMA−b−PBA−b−PMMAは、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性向上の点で好ましい。なお、上記PMMA−b−PBA−b−PMMAは、必要に応じて、成分(A)及び成分(B)等に対する相溶性向上を目的として、親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸等を、PMMAブロック及び/又はPBAブロックに共重合させたものであってもよい。なお、アクリルブロック共重合体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
上記アクリルブロック共重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、3000〜500000が好ましく、より好ましくは30000〜400000である。数平均分子量が3000未満であると、硬化物の強靭性が十分でなく、耐クラック性が低下する場合がある。一方、数平均分子量が500000を超えると、脂環式エポキシ化合物(A)との相溶性が低下し、硬化物の透明性が低下する場合がある。
【0075】
上記アクリルブロック共重合体は、公知乃至慣用のブロック共重合体の製造方法により製造することができる。上記アクリルブロック共重合体の製造方法としては、中でも、アクリルブロック共重合体の分子量、分子量分布及び末端構造などを制御のしやすさの観点で、リビング重合(リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合など)が好ましい。上記リビング重合は公知乃至慣用の方法により実施可能である。
【0076】
また、上記アクリルブロック共重合体としては、例えば、商品名「ナノストレングス M52N」、「ナノストレングス M22N」、「ナノストレングス M51」、「ナノストレングス M52」、「ナノストレングス M53」(以上、アルケマ製、PMMA−b−PBA−b−PMMA)、商品名「ナノストレングス E21」、「ナノストレングス E41」(以上、アルケマ製、PSt(ポリスチレン)−b−PBA−b−PMMA)などの市販品を使用することもできる。
【0077】
上記アクリルブロック共重合体の使用量(含有量)としては、特に限定されないが、成分(A)及び成分(B)の合計量(100重量部)に対して、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは3〜15重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。アクリルブロック共重合体の使用量が1重量部未満であると、硬化物の強靭性が十分でなく、耐熱性、耐光性が低下する場合がある。一方、アクリルブロック共重合体の使用量が30重量部を超えると、脂環式エポキシ化合物(A)との相溶性が低下し、硬化物の透明性が低下する場合がある。
【0078】
[ゴム粒子]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、ゴム粒子を含んでいてもよい。上記ゴム粒子としては、例えば、粒子状NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、反応性末端カルボキシル基NBR(CTBN)、メタルフリーNBR、粒子状SBR(スチレン−ブタジエンゴム)等が挙げられる。また、上記ゴム粒子は、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とから成る多層構造(コアシェル構造)を有し、表面に脂環式エポキシ樹脂と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有し、平均粒子径が10nm〜500nm、最大粒子径が50nm〜1000nmであるゴム粒子であって、該ゴム粒子の屈折率と当該硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の屈折率との差が±0.02以内であるゴム粒子であってもよい。上記ゴム粒子の配合量は、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは3〜40重量部である。ゴム粒子の使用量が1重量部を下回ると、耐クラック性が低下する傾向がある。一方、ゴム粒子の使用量が50重量部を上回ると、耐熱性及び透明性が低下する傾向がある。
【0079】
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を使用することができる。添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水酸基を有する化合物(ポリオール(C)を除く)を使用すると、反応(硬化反応)を緩やかに進行させることができる。その他にも、粘度や透明性を損なわない範囲内で、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、シリカ、アルミナなどの無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0080】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性などの諸物性に優れ、さらに、耐リフロー性にも優れた硬化物を得ることができる。硬化の際の加熱温度(硬化温度)としては、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは100〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)としては、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度が低すぎる場合、及び/又は、硬化時間が短すぎる場合は、硬化が不十分となる場合がある。一方、硬化温度が高すぎる場合、及び/又は、硬化時間が長すぎる場合は、樹脂成分の分解が起こる場合がある。硬化条件は種々の条件に依存するが、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。
【0081】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる。本発明の光半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、透明性、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性などの諸物性に優れ、さらに、耐リフロー性にも優れた硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を製造することができる。
【0082】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)で光半導体素子を封止することにより得られる。光半導体素子の封止は、上述の方法で調製された硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行う。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物によって光半導体素子が封止されてなる光半導体装置が得られる。封止の際の硬化温度と硬化時間としては、例えば、上記硬化物を形成する際と同様の条件を採用することができる。本発明の光半導体装置は、リフロー工程での加熱処理により劣化しにくく、光度が経時で低下しにくい。特に、本発明の光半導体装置は、高出力、高輝度の光半導体素子を備える場合であっても、光度が経時で低下しにくいという利点を有する。
【0083】
図1は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物で素子(光半導体素子)を封止した光半導体装置の一実施形態を示す概略図である。図1に示すように、一般的に、光半導体装置においては、光半導体素子102がダイボンド材105によりリードフレームに固定されている。本発明者らは、光半導体装置におけるダイボンド材を最適化することによっても、耐リフロー性を向上させることができることを見出した。より詳しくは、光半導体装置をリフロー工程にて加熱処理した場合に、封止樹脂の体積変化により生じる応力によって、光半導体素子がリードフレームから剥離しないようなダイボンド材(接着性・耐久性の高いダイボンド材)を選択することが、耐リフロー性向上の観点で重要であることを見出した。光半導体素子がリードフレームから剥離した場合には、該半導体素子周辺の封止樹脂の剥離やクラックが発生しやすく、リフロー工程での加熱処理による光半導体装置の劣化が顕著となるためである。従って、耐リフロー性を向上させ、リフロー工程での加熱処理による光半導体装置の劣化を防止するためには、封止樹脂として本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)の硬化物を用い、かつ、ダイボンド材として上述の接着性・耐久性の高いものを用いることが有効である。上記ダイボンド材としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等のベースポリマーに、導電性粒子等(例えば、銀粒子など)を含有させたダイボンド材などが挙げられる。このようなダイボンド材としては、例えば、商品名「KER−3000 M2」、「KER−3100 O2」、「KER−3100」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「EH1600−G2」(稲畑産業(株)製)、商品名「CT200」、「CT284」、「CT265」(以上、京セラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0084】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記の光半導体素子の封止用途(光半導体封止用)に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの用途にも好ましく使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0086】
製造例1
(硬化剤組成物の製造)
酸無水物[新日本理化(株)製、商品名「リカシッド MH−700」]100重量部、硬化促進剤[サンアプロ(株)製、商品名「U−CAT 18X」]0.5重量部、及び添加剤[和光純薬工業(株)製、商品名「エチレングリコール」]1重量部を、自公転式攪拌装置[(株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」]を使用して均一に混合し、脱泡して硬化剤組成物を得た。
【0087】
実施例1〜4
(エポキシ樹脂の製造)
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート[四国化成工業(株)、商品名「MA−DGIC」]、脂環式エポキシ化合物[ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」]、ポリカーボネートポリオールを除くポリオール[ポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名「PTMG2000」、三菱化学(株)製)、ポリカプロラクトンポリオール(商品名「PCL308」、ダイセル化学工業(株)製)、フェノキシ樹脂(商品名「YP−70」、新日鐵化学(株)製)、水酸基含有長鎖エポキシ樹脂(商品名「YD−6020」、新日鐵化学(株)製)]を、表1に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って混合し、80℃で1時間攪拌することでモノアリルジグリシジルイソシアヌレートを溶解させ、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂組成物)を得た。
【0088】
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造及び光半導体装置の製造)
上記で調製したエポキシ樹脂と製造例1で得られた硬化剤組成物とを、表1に示す配合処方(単位:重量部)となるように、自公転式攪拌装置[(株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」]を使用して均一に混合し、脱泡して硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。この硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体のリードフレーム(AlInGaP素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、樹脂硬化オーブンを用いて表1に示す硬化条件(条件−1:120℃で5時間)にて加熱することによって、硬化した樹脂(硬化物)で光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。
【0089】
実施例5
(エポキシ樹脂の製造)
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート[四国化成工業(株)、商品名「MA−DGIC」]、脂環式エポキシ化合物[ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」]、ポリテトラメチレンポリオール[三菱化学(株)製、商品名「PTMG2000」]、アクリルブロック共重合体[アルケマ製、商品名「ナノストレングス M52N」]を、表1に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って混合し、80℃で4時間攪拌することでモノアリルジグリシジルイソシアヌレート及びアクリルブロック共重合体を溶解させ、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂組成物)を得た。
【0090】
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造及び光半導体装置の製造)
上記で調製したエポキシ樹脂と製造例1で得られた硬化剤組成物とを、表1に示す配合処方(単位:重量部)となるように、自公転式攪拌装置[(株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」]を使用して均一に混合し、脱泡して硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。この硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体のリードフレーム(AlInGaP素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、樹脂硬化オーブンを用いて表1に示す硬化条件(条件−1)にて加熱することによって、硬化した樹脂(硬化物)で光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。
【0091】
実施例6
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造)
モノアリルジグリシジルイソシアヌレート[四国化成工業(株)、商品名「MA−DGIC」]、脂環式エポキシ化合物[ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」]、及びポリテトラメチレンエーテルグリコール[三菱化学(株)製、商品名「PTMG2000」]を、表1に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って混合し、80℃で1時間攪拌することでモノアリルジグリシジルイソシアヌレートを溶解させ、さらに、硬化触媒[三新化学工業(株)製、商品名「サンエイドSI−100L」]を表1に示す配合処方(配合割合)(単位:重量部)に従って加え、自公転式攪拌装置[(株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」]を使用して均一に混合し、脱泡して硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
(光半導体装置の製造)
上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体のリードフレーム(AlInGaP素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、樹脂硬化オーブンを用いて表1に示す硬化条件(条件−2:110℃で3時間、続いて140℃で4時間)にて加熱することによって、硬化した樹脂(硬化物)で光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。
【0092】
比較例1
(硬化性エポキシ樹脂組成物の製造及び光半導体装置の製造)
脂環式エポキシ化合物[ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」]と製造例1で得られた硬化剤組成物とを、表1に示す配合処方(単位:重量部)となるように、自公転式攪拌装置[(株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」]を使用して均一に混合し、脱泡して硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。この硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体のリードフレーム(AlInGaP素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、樹脂硬化オーブンを用いて表1に示す硬化条件(条件−1)にて加熱することによって、硬化した樹脂(硬化物)で光半導体素子を封止した光半導体装置を得た。
【0093】
<評価>
実施例及び比較例で得られた光半導体装置について、以下の方法で評価試験を行った。
【0094】
[はんだ耐熱性試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個用いた)を、30℃、70%RHの条件下で168時間静置して吸湿させた。次いで、上記光半導体装置をリフロー炉に入れ、下記加熱条件にて加熱した。その後、上記光半導体装置を室温環境下に取り出して放冷した後、再度リフロー炉に入れて同条件で加熱した。即ち、当該はんだ耐熱性試験においては、光半導体装置に対して下記加熱条件による熱履歴を二度与えた。
〔加熱条件(光半導体装置の表面温度基準)〕
(1)予備加熱:150〜190℃で60〜120秒
(2)予備加熱後の本加熱:217℃以上で60〜150秒、最高温度260℃
但し、予備加熱から本加熱に移行する際の昇温速度は最大で3℃/秒に制御した。
図2には、リフロー炉による加熱の際の光半導体装置の表面温度プロファイル(二度の加熱のうち一方の加熱における温度プロファイル)の一例を示す。
その後、デジタルマイクロスコープ(VHX−900、(株)キーエンス製)を使用して光半導体装置を観察した。その結果、光半導体装置2個のうち、いずれか一方又は両方において電極表面上に樹脂の剥離が観察された場合をはんだ耐熱性不良(剥離あり)と判定し、いずれにも前述の樹脂の剥離が観察されなかった場合をはんだ耐熱性良好(剥離なし)と判定して、結果を表1の「はんだ耐熱性試験/剥離」の欄に記載した。また、光半導体装置2個のうち、いずれか一方又は両方において光半導体素子の周りにクラックが観察された場合をはんだ耐熱性不良(クラックあり)と判定し、いずれにも前記のクラックが観察されなかった場合をはんだ耐熱性良好(クラックなし)と判定して、結果を表1の「はんだ耐熱性試験/クラック」の欄に記載した。
【0095】
[通電試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置の全光束を、全光束測定機を用いて測定した(「0時間の全光束」とする)。
さらに、60℃、90%RHの恒温槽内で1000時間、光半導体装置に50mAの電流を継続的に流した後の全光束を測定した(「1000時間後の全光束」とする)。そして、次式より光度保持率を算出した。結果を表1の「光度保持率」の欄に示す。
{光度保持率(%)}
=({1000時間後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)})×100
【0096】
[熱衝撃試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個用いた)に対し、−40℃の雰囲気下に15分曝露し、続いて、120℃の雰囲気下に15分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて1000サイクル分与えた。その後、光半導体装置に20mAの電流を通電して点灯確認を行い、点灯しなかった光半導体装置の個数(不点灯発生数)を計測した。結果を表1の「熱衝撃試験」の欄に示す。
【0097】
[総合判定]
はんだ耐熱性試験で剥離とクラックのどちらも発生せず、光度保持率が85%以上であり、熱衝撃試験での不点灯発生数が0個であった場合を、総合判定○(優れている)とした。それ以外の場合(はんだ耐熱性試験で剥離及び/又はクラックが発生した場合、光度保持率が85%未満であった場合、熱衝撃試験での不点灯発生数が1個以上であった場合)を、総合判定×(劣っている)とした。結果を表1の「総合判定」の欄に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
なお、実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
[エポキシ樹脂]
CEL2021P(セロキサイド 2021P):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業(株)製
MA−DGIC:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、四国化成工業(株)製
[ポリオール]
PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製
PCL308:ポリカプロラクトンポリオール、ダイセル化学工業(株)製
YP−70:フェノキシ樹脂、新日鐵化学(株)製
YD−6020:水酸基含有長鎖エポキシ樹脂、新日鐵化学(株)製
[アクリルブロック共重合体]
M52N(ナノストレングス M52N):アクリルブロック共重合体、アルケマ製
[硬化剤組成物]
リカシッド MH−700:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化(株)製
U−CAT 18X:硬化促進剤、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
[硬化触媒]
SI−100L(サンエイド SI−100L):アリールスルホニウム塩、三新化学工業(株)製
【0100】
試験機器
・樹脂硬化オーブン
エスペック(株)製、「GPHH−201」
・リフロー炉
日本アントム(株)製、「UNI−5016F」
・恒温槽
エスペック(株)製、「小型高温チャンバー ST−120B1」
・全光束測定機
米国オプトロニックラボラトリーズ製、「マルチ分光放射測定システム OL771」
・熱衝撃試験機
エスペック(株)製、「小型冷熱衝撃装置 TSE−11−A」
【符号の説明】
【0101】
100:リフレクター(光反射用樹脂組成物)
101:金属配線
102:光半導体素子(LED素子)
103:ボンディングワイヤ
104:透明封止樹脂
105:ダイボンド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)
【化1】

[式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、ポリカーボネートポリオールを除くポリオール(C)と、硬化剤(D)又は硬化触媒(E)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物である請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化2】

で表される化合物である請求項1又は2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、硬化促進剤(F)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、アクリルブロック共重合体を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の光半導体封止用樹脂組成物で光半導体素子を封止した光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−23545(P2013−23545A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158441(P2011−158441)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】