説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び半導体装置

【課題】 屈折率、光透過率、硬度及び基材に対する密着性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び信頼性が優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】 (A)一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、(B)分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、(C)一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び(D)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び半導体素子が上記組成物の硬化物により被覆されている半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及びそれを用いてなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光学用半導体装置における半導体素子の保護剤あるいはコーティング剤として使用されている。このような半導体素子の保護剤あるいはコーティング剤は、前記素子が発光したり、あるいは受光したりするため、光を吸収したり、散乱しないことが要求されている。
【0003】
ヒドロシリル化反応により硬化して、屈折率と光透過性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、例えば、フェニル基とアルケニル基を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサン、一分子中、少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献1参照)、一分子中、少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、ビニル基を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサン、一分子中、少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献2参照)、一分子中、少なくとも1個のアルケニル基を有し、ジフェニルシロキサン単位を有するジオルガノポリシロキサン、ビニル基およびフェニル基を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有するオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献3参照)が挙げられる。
【0004】
しかし、これらの硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化して得られる硬化物の光透過率が低かったり、また、硬化物の基材に対する密着性が乏しいため、基材から剥離しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開平11−1619号公報
【特許文献2】特開2000−198930号公報
【特許文献3】特開2005−76003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屈折率、光透過率、硬度及び基材に対する密着性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び半導体素子が上記組成物の硬化物により被覆されてなる、信頼性が優れる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜2モルとなる量}、
(C)一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン{前記(B)成分と本成分に含まれるジオルガノハイドロジェンシロキシ基の合計量に対して、本成分中のジオルガノハイドロジェンシロキシ基が1〜20モル%となる量}、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなる。
【0007】
前記(A)成分は、平均単位式:
(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
{式中、各Rは独立に、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、Rの少なくとも3個はアルケニル基であり、全Rの少なくとも30モル%はアリール基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、aは正数であり、bは0又は正数であり、cは0又は正数であり、dは0又は正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の数である。}
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0008】
前記(B)成分は、一般式:
HRSiO(RSiO)SiR
(式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、全Rの少なくとも15モル%はアリール基であり、mは1〜1,000の整数である。)
で表される直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0009】
前記(C)成分は、平均単位式:
(HRSiO1/2)(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
{式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、全Rの少なくとも15モル%はアリール基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、fは正数であり、gは正数であり、hは0又は正数であり、iは0又は正数であり、jは0又は正数であり、kは0又は正数であり、かつf/gは0.1〜4の数であり、h/gは0〜10の数であり、i/gは0〜5の数であり、j/(f+g+h+i+j)は0〜0.3の数であり、k/(f+g+h+i+j)は0〜0.4の数である。}
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0010】
本組成物は、さらに、(E)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である直鎖状オルガノポリシロキサンを、(A)成分100質量部に対して100質量部以下となる量含有することが好ましい。
【0011】
このような本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であるものが好ましく、また、硬化して、タイプDデュロメータ硬度が20以上の硬化物を形成するもの、あるいは、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成するものが好ましい。
【0012】
本発明の半導体装置は、半導体素子が、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により被覆されている。この半導体素子は発光素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の屈折率、光透過率、硬度及び基材に対する密着性が高いという特徴がある。また、本発明の半導体装置は、半導体素子が上記組成物の硬化物により被覆されているので、信頼性が優れるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
はじめに、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、本組成物の主剤であり、一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。このアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、(A)成分中のケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも40モル%はアリール基である。このアリール基として、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基が例示され、好ましくは、フェニル基である。(A)成分中のその他のケイ素原子に結合する基として、アルケニル基とアリール基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、その他少量の基として、ケイ素原子結合水酸基やケイ素原子結合アルコキシ基を有してもよい。このアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が例示される。
【0015】
このような(A)成分は、平均単位式:
(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。式中、各Rは独立に、置換又は非置換の一価炭化水素基である。この一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。ただし、一分子中、Rの少なくとも3個はアルケニル基である。また、一分子中、全Rの少なくとも30モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも40モル%はアリール基である。また、式中、Xは水素原子又はアルキル基である。このアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、式中、aは正数であり、bは0又は正数であり、cは0又は正数であり、dは0又は正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の範囲内の数であり、c/aは0〜5の範囲内の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の範囲内の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の範囲内の数である。
【0016】
(B)成分は、本組成物の架橋剤の一つであり、分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。(B)成分中のケイ素原子に結合する基としては、脂肪族不飽和基を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%、さらには、少なくとも30モル%、特には、少なくとも40モル%がアリール基であることが好ましい。このアリール基はフェニルが好ましい。
【0017】
(B)成分は直鎖状の分子構造を有し、その分子鎖末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖されている。このような(B)成分は、一般式:
HRSiO(RSiO)SiR
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基である。Rの一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。なお、一分子中、少なくとも1個のRはアリール基である。得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、Rの少なくとも15モル%、さらには、少なくとも30モル%、特には、少なくとも40モル%はアリール基であることが好ましい。また、式中、mは1〜1,000の範囲内の整数であり、好ましくは、1〜100の範囲内の整数であり、さらに好ましくは、1〜50の範囲内の整数であり、特に好ましくは、1〜20の範囲内の整数である。これは、mが上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の充填性、あるいは硬化物の密着性が悪化する傾向があるからである。
【0018】
(B)成分の含有量は、上記(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜2モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.7〜1.5モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の基材に対する密着性が低くなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の硬度が低くなる傾向があるからである。
【0019】
(C)成分は、本組成物の架橋剤の一つであり、一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。(C)成分中のケイ素原子に結合する基としては、脂肪族不飽和基を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも25モル%はアリール基である。このアリール基はフェニルが好ましい。
【0020】
このような(C)成分は、平均単位式:
[H(CH)SiO1/2)(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基である。このRの一価炭化水素基としては、前記と同様の基が例示される。なお、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも25モル%はアリール基である。また、式中、Xは水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、式中、fは正数であり、gは正数であり、hは0又は正数であり、iは0又は正数であり、jは0又は正数であり、kは0又は正数であり、かつf/gは0.1〜4の範囲内の数であり、h/gは0〜10の範囲内の数であり、i/gは0〜5の範囲内の数であり、j/(f+g+h+i+j)は0〜0.3の範囲内の数であり、k/(f+g+h+i+j)は0〜0.4の範囲内の数である。
【0021】
(C)成分の含有量は、上記(B)成分と本成分に含まれるジオルガノハイドロジェンシロキシ基の合計量に対して、本成分中のジオルガノハイドロジェンシロキシ基が1〜20モル%の範囲内となる量であり、好ましくは、2〜20モル%の範囲内となる量であり、特に好ましくは、2〜10モル%の範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の上限を超えたり、また、下限未満であると、得られる硬化物の基材に対する密着性が低くなるからである。
【0022】
(D)成分は、本組成物の架橋を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。このような(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示され、特に、白金−アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンであることが好ましい。また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0023】
(D)成分の含有量は本組成物の硬化を促進する量であり、具体的には、本組成物に対して、本成分中の金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0024】
本発明の組成物において、硬化物の硬度を調整するために、(E)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30%はアリール基である直鎖状オルガノポリシロキサンを添加してもよい。(E)成分中のアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、(E)成分中のケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも40モル%はアリール基である。このアリール基はフェニル基が好ましい。(E)成分中のその他のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基とフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;トリル基、キシリル基等のフェニル基以外のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。
【0025】
このような(E)成分は、一般式:
SiO(RSiO)SiR
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。式中、各Rは独立に、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、全Rの少なくとも30モル%はアリール基であり、好ましくは、少なくとも40モル%はアリール基である。このアリール基はフェニル基が好ましい。また、式中、nは5〜1,000の範囲内の整数である。
【0026】
このような(E)成分の25℃における粘度は限定されないが、10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、100〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の機械的強度が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0027】
(E)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、特に、70質量部以下であることが好ましい。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の硬度が低くなる傾向があるからである。
【0028】
本組成物には、その他任意の成分として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、上記(A)成分〜(D)成分、あるいは上記(A)成分〜(E)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0029】
また、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基又はケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合アルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、上記組成物において、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0031】
本組成物は、可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であるものが好ましい。また、本組成物を硬化して得られる硬化物の光透過率(25℃)が80%以上であることが好ましい。これは、組成物の屈折率が1.5未満であったり、硬化物の光透過率が80%未満であるような組成物は、その硬化物により被覆された半導体素子を有する半導体装置に十分な信頼性を付与することができなくなるおそれがあるからである。なお、この屈折率は、例えば、アッベ式屈折率計により測定することができる。この際、アッベ式屈折率計における光源の波長を変えることにより任意の波長における屈折率を測定することができる。また、この光透過率は、例えば、光路長1.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0032】
本組成物は室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。このようにして本組成物を硬化して得られる硬化物はタイプDデュロメーター硬度が20以上の硬さを有していることが好ましい。このような本組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。
【0033】
次に、本発明の半導体装置について詳細に説明する。
本装置は、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により半導体素子が被覆されている。この半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、固体撮像素子、モノリシックIC、さらにはハイブリッドIC中の半導体素子が例示される。また、このような半導体装置としては、ダイオード、発光ダイオード(LED)、トランジスタ、サイリスタ、フォトカプラー、CCD、モノリシックIC、ハイブリッドIC、LSI、VLSIが例示される。特に、光透過率が高いことから、好ましくは、発光ダイオード(LED)である。
【0034】
本装置の一例である単体の表面実装型LEDの断面図を図1に示した。図1で示されるLEDは、半導体素子1がリードフレーム2上にダイボンドされ、この半導体素子1とリードフレーム3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。この半導体素子1は本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物5により被覆されている。
【0035】
図1で示される表面実装型LEDを製造する方法としては、半導体素子1をリードフレーム2にダイボンドし、この半導体素子1とリードフレーム3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドし、次いで、半導体素子1に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布した後、50〜200℃で加熱することにより硬化させる方法が例示される。
【実施例】
【0036】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び半導体装置を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、粘度は25℃における値である。また、式中、Me、Ph、Vi、およびEpは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基、3−グリシドキシプロピル基を表している。
【0037】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の諸特性を次のようにして測定した。
【0038】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の屈折率]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物の屈折率を、アッベ式屈折率計を用いて25℃で測定した。なお、光源として、可視光(589nm)を用いた。
【0039】
[硬化物の光透過率]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を2枚のガラス板間に入れ150℃で1時間保持して硬化させ(光路長0.2mm)、光透過率を、可視光(波長400nm〜700nm)の範囲において任意の波長で測定できる自記分光光度計を用いて25℃で測定した。ガラス板込みの光透過率とガラス板のみの光透過率を測定して、その差を硬化物の光透過率とした。なお、表1中には波長450nmにおける光透過率を記載した。
【0040】
[硬化物の硬さ]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃で1時間プレス成形することによりシート状硬化物を作製した。このシート状硬化物の硬さをJIS K 6253に規定されるタイプDデュロメータにより測定した。
【0041】
[ポリフタルアミド(PPA)樹脂板への接着力]
2枚のポリフタルアミド(PPA)樹脂板(幅25mm、長さ50mm、厚さ1mm)間にポリテトラフルオロエチレン樹脂製スペーサ(幅10mm、長さ20mm、厚さ1mm)を挟み込み、その隙間に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を充填し、クリップで留め、150℃の熱風循環式オーブン中に1時間保持して硬化させた。室温に冷却後、クリップとスペーサを外して引張試験機により該ポリフタルアミド(PPA)樹脂板を水平反対方向に引張って破壊時の応力を測定した。
【0042】
[アルミニウム板への接着力]
2枚のアルミニウム板(幅25mm、長さ75mm、厚さ1mm)間にポリテトラフルオロエチレン樹脂製スペーサ(幅10mm、長さ20mm、厚さ1mm)を挟み込み、その隙間に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を充填し、クリップで留め、150℃の熱風循環式オーブン中に1時間保持して硬化させた。室温に冷却後、クリップとスペーサを外して引張試験機により該アルミニウム板を水平反対方向に引張って破壊時の応力を測定した。
【0043】
また、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を使用して表面実装型の発光ダイオード(LED)を次のようにして作製した。
【0044】
[表面実装型の発光ダイオード(LED)の作製]
底部が塞がった円筒状のポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース(内径2.0mm、深さ1.0mm)の内底部の中心部に向かってインナーリードが側壁から延出しており、インナーリードの中央部上にLEDチップが載置されており、LEDチップとインナーリードはボンディングワイヤにより電気的に接続している前駆体の、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース内に、各実施例または各比較例の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を脱泡してディスペンサーを用いて注入し、加熱オーブン中、100℃で30分、続いて150℃で1時間加熱して、硬化させることにより、各々16個の図1に示す表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製した。
【0045】
[硬化物の初期剥離率]
上記表面実装型の発光ダイオード(LED)16個について、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース内壁と該組成物の加熱硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0046】
[恒温恒湿保持後の剥離率]
上記表面実装型の発光ダイオード(LED)16個を30℃/70RH%の空気中に72時間保持した後、室温(25℃)下に戻して、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース1内壁と該組成物の加熱硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0047】
[280℃/30秒間保持後の剥離率]
上記恒温恒湿保持後の表面実装型の発光ダイオード(LED)16個を280℃のオーブン内に30秒間置いた後、室温(25℃)下に戻して、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース1内壁と該組成物の加熱硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0048】
[熱衝撃サイクル後の剥離率]
上記280℃/30秒間保持後の表面実装型の発光ダイオード(LED)16個を、−40℃に30分間保持した後、100℃に30分間保持し、この温度サイクル(−40℃⇔100℃)を合計5回繰り返した後、室温(25℃)下に戻して、ポリフタルアミド(PPA)樹脂ケース内壁と該組成物の加熱硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0049】
[実施例1]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.25
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=50モル%)70質量部、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される直鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.60質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=33モル%)26質量部、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.6(HMeSiO1/2)0.4
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=25モル%、数平均分子量=2,260)2質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度3,500mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0050】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0051】
[実施例2]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.10(MeSiO1/2)0.15
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.3質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=60モル%)65質量部、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.20質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=34モル%)33質量部、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.5(HMeSiO1/2)0.5
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.51質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=43モル%、数平均分子量=3,220)2質量部、平均単位式:
(EpSiO3/2)0.3(ViMeSiO1/2)0.3(MeSiO1/2)0.3(MeO1/2)0.2
で表されるオルガノポリシロキサン2質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度8,000mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0052】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0053】
[実施例3]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.25
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=50モル%)60質量部、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.5質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=49モル%)15質量部、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される直鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.60質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=33モル%)23質量部、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.60(HMeSiO1/2)0.40
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=25モル%、数平均分子量=2,260)2質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度2,900mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0054】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0055】
[比較例1]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.25
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=50モル%)70質量部、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される直鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.60質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=33モル%)30質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度3,300mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0056】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0057】
[比較例2]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.10(MeSiO1/2)0.15
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.3質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=60モル%)68質量部、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.20質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=34モル%)32質量部、平均単位式:
(EpSiO3/2)0.3(ViMeSiO1/2)0.3(MeSiO1/2)0.3(MeO1/2)0.2
で表されるオルガノポリシロキサン2質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度9,500mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0058】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0059】
[比較例3]
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMeSiO1/2)0.25
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=50モル%)60質量部、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.5質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=49モル%)15質量部、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される直鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.60質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=33モル%)13質量部、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.60(HMeSiO1/2)0.40
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%、ケイ素原子結合全有機基中のフェニル基の含有率=25モル%)12質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、及び2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05質量部を均一に混合して、粘度3,500mPa・sの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0060】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型の発光ダイオード(LED)を作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。また、本発明の半導体装置は、ダイオード、発光ダイオード(LED)、トランジスタ、サイリスタ、フォトカプラー、CCD、モノリシックIC、ハイブリッドIC、LSI、VLSIとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の半導体装置の一例であるLEDの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ポリフタルアミド(PPA)樹脂製ケース
2 LEDチップ
3 インナーリード
4 ボンディングワイヤ
5 硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜2モルとなる量}、
(C)一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン{前記(B)成分と本成分に含まれるジオルガノハイドロジェンシロキシ基の合計量に対して、本成分中のジオルガノハイドロジェンシロキシ基が1〜20モル%となる量}、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、平均単位式:
(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
{式中、各Rは独立に、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、Rの少なくとも3個はアルケニル基であり、全Rの少なくとも30モル%はアリール基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、aは正数であり、bは0又は正数であり、cは0又は正数であり、dは0又は正数であり、eは0または正数であり、かつb/aは0〜10の数であり、c/aは0〜5の数であり、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の数であり、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の数である。}
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンである、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、一般式:
HRSiO(RSiO)SiR
(式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、全Rの少なくとも15モル%はアリール基であり、mは1〜1,000の整数である。)
で表される直鎖状オルガノポリシロキサンである、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(C)成分が、平均単位式:
(HRSiO1/2)(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)(XO1/2)
{式中、各Rは独立に、脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、全Rの少なくとも15モル%はアリール基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、fは正数であり、gは正数であり、hは0又は正数であり、iは0又は正数であり、jは0又は正数であり、kは0又は正数であり、かつf/gは0.1〜4の数であり、h/gは0〜10の数であり、i/gは0〜5の数であり、j/(f+g+h+i+j)は0〜0.3の数であり、k/(f+g+h+i+j)は0〜0.4の数である。}
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンである、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
さらに、(E)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である直鎖状オルガノポリシロキサンを、(A)成分100質量部に対して100質量部以下となる量含有する、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上である、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
硬化して、タイプDデュロメータ硬度が20以上の硬化物を形成する、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
硬化して、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成する、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
半導体素子が、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により被覆されている半導体装置。
【請求項10】
半導体素子が発光素子である、請求項9記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1336(P2010−1336A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159723(P2008−159723)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】