説明

硬化性シリコーンゴム組成物

【課題】 表面離型性を有する柔軟なシリコーン硬化物を提供する。
【解決手段】
(A)(A−1)一分子中にアルケニル基を平均で少なくとも2個有するジアルキルポリシロキサン、および、(A−2)SiO4/2単位、R122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2はアルケニル基である)からなり、2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンからなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン、および、(C)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒からなり、硬さが75以下であり、伸びが35%以上であることを特徴とする硬化性シリコーンゴム組成物、および硬化性シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーン硬化物が基材と一体化した複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有するシリコーン硬化物を与える硬化性シリコーンゴム組成物に関し、詳しくは、レジン状オルガノポリシロキサンを含有し、表面離型性に優れ、柔軟性を有するシリコーン硬化物層を基材上に形成し得る硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レジン状オルガノポリシロキサンを含有し、シリコーン硬化物を与える硬化性シリコーンゴム組成物は知られており、例えば、特開2005−042099号公報には、一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン;SiO2単位(以下Q単位)、ビニル基を2〜3個有するR3SiO0.5単位(以下M単位)およびビニル基を0〜1個有するR3SiO0.5単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(但し、上記式において、ビニル基以外のRはメチル基等の脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基);一分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;および、白金族金属系触媒を含有してなるシリコーンゴム組成物が記載されている。
【0003】
特開2006−335857号公報には、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、23℃における粘度が10〜10,000mm/sである直鎖状ポリオルガノシロキサン;Q単位、ビニル基を1個有するM単位、および脂肪族不飽和結合を含まないM単位からなる分岐状ポリオルガノシロキサン;Q単位、ケイ素原子結合水素原子を1個有するM単位、およびケイ素原子結合水素原子を含まないM単位からなるポリアルキルハイドロジェンシロキサン;および、白金族金属化合物を含む透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物が記載されている。
【0004】
特開2007−131694号公報には、一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン;Q単位、ビニル基を1個有するM単位、および脂肪族不飽和結合を含まないM単位からなり、質量平均分子量が異なる少なくとも2種のレジン状オルガノポリシロキサン;一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン;および、ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性シリコーンゴム組成物が記載されている。
【0005】
しかし、このような組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物は、硬く柔軟性に劣り、金型成形時や、部品組立ての工程で破損しやすいという不具合があり、折り曲げて使用したりする屈曲性を要する用途にも使用できなかった。また、柔軟な基材と組み合わせて複合体としたときには、基材の柔軟さを損なうという不具合もあった。
【0006】
特開平7-41679号公報には、特定の粘度を有する2種のアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン混合物、特定のオルガノシロキサンレジン、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンおよび白金系触媒からなり、無機質充填剤を含まない定着ロール用シリコーンゴム組成物が記載されている。この組成物は、従来ロールに用いられているフッ素樹脂被覆と比較して硬さの低い柔軟な表面離型層を形成し得るが、その硬化物の表面離型性は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−042099号公報
【特許文献2】特開2006−335857号公報
【特許文献3】特開2007−131694号公報
【特許文献4】特開平7-41679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、表面離型性に優れ、柔軟なシリコーン硬化物を形成するための硬化性シリコーンゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、(A)(A−1)一分子中にアルケニル基を平均で少なくとも2個有し、25℃における粘度が300〜100,000mPa・sであるジアルキルポリシロキサン (A)成分の65〜90質量%;(A−2)SiO4/2単位、R122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2はアルケニル基である)からなり、2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン (A)成分の10〜35質量%;からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子結合水素原子を一分子中に少なくとも平均2個有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基が、炭素原子数1〜10のアルキル基であるオルガノポリシロキサン{本成分中のケイ素原子結合水素原子が、(A)成分のアルケニル基の合計1モルに対して、0.5〜5モルとなる量}、および
(C)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒
からなり、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメータを用いて測定された硬さが75以下であり、JIS K6251に規定された伸びが35%以上であるシリコーン硬化物を与えることを特徴とする。
【0010】
上記(A−2)成分は、SiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比が0.5〜1.4の範囲であることが好ましい。上記(B)成分としては、(B−1)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.7質量%含有する、SiO4/2単位およびHR32SiO1/2単位(式中、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基である。)からなるオルガノポリシロキサン (B)成分の50〜100質量%;(B−2)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.3質量%含有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基が、炭素原子数1〜10のアルキル基である直鎖状オルガノポリシロキサン (B)成分の0〜50質量%;からなることが好ましい。
【0011】
上記硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化皮膜形成性コーティング剤として有用である。
【0012】
本発明のシリコーン硬化物複合体は、上記硬化性シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーン硬化物層と基材とが一体化していることを特徴とする。また、上記のシリコーン硬化物複合体は、基材に、上記硬化性シリコーンゴム組成物を塗布し、次いで加熱硬化して基材表面上にシリコーン硬化物層を形成することで得ることができる。上記基材としては、シリコーン弾性体が好適に使用できる。
【0013】
上記シリコーン硬化物複合体としては、硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化してなるシリコーン硬化物層が、芯金またはベルト基材外周に形成されたシリコーン弾性体層の外周表面上に形成されていることを特徴とするローラまたはベルトが例示される。上記のローラまたはベルトは、上記硬化性シリコーンゴム組成物を、芯金またはベルト基材外周に形成されたシリコーン弾性体層外周表面上に塗布し、次いで加熱硬化してシリコーン弾性体層外周表面にシリコーン硬化物層を形成することで得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、特定のアルケニル基含有ジアルキルポリシロキサンと特定のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでなるので、表面離型性に優れた、柔軟なシリコーン硬化物を与えるという特徴がある。本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物は、柔軟であるので、金型成形時や、部品組立ての工程で破損しにくく、成形性や取扱い作業性に優れるという特徴があり、また、折り曲げて使用するなど屈曲性を要する用途にも使用できる。また、本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化皮膜形成性コーティング剤として有用であり、シリコーン弾性体等の基材と強固に一体化した複合体を形成することができるという特徴を有する。このようなシリコーン硬化物複合体は基材表面に柔軟な表面離型層を有するという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは本組成物の主成分であり、(A−1)一分子中にアルケニル基を平均で少なくとも2個有し、25℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるジアルキルポリシロキサン (A)成分の65〜90質量%;および(A−2)SiO4/2単位、R122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2はアルケニル基である)からなり、2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有するアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサン (A)成分の10〜35質量%;からなる。
【0016】
(A−1)成分は、一分子中に平均で少なくとも2個のアルケニル基を有する。(A−1)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。(A−1)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。このアルケニル基の結合位置は限定されず、分子鎖の末端、側鎖、または末端と側鎖のいずれであってもよい。また、(A−1)成分中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。
【0017】
また、(A−1)成分の25℃における粘度は、300〜100,000mPa・sの範囲内であり、1,000〜60,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。(A−1)成分が2種類以上のアルケニル基含有ジアルキルポリシロキサンの混合物である場合は、その混合物の25℃における粘度が1,000〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましいが、表面離型性をより向上させる点から、300〜100,000mPa・sの粘度範囲内のアルケニル基含有ジアルキルポリシロキサンからなる混合物であることが好ましい。これは、(A−1)成分の25℃における粘度が上記下限未満であると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の柔軟性が十分でなくなる傾向があるからであり、一方、(A−1)成分の25℃における粘度が上記上限を超えると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の粘度が高くなりすぎて取扱い作業性が低下したり、表面離型性が悪化したりする傾向があるからである。
【0018】
このような(A−1)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
本組成物において、(A−1)成分の含有量は、(A)成分の65〜90質量%となる量であり、好ましくは、(A)成分の75〜85質量%となる量である。これは、(A−1)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の柔軟性が低下する傾向があるからであり、一方、(A−1)成分の含有量が上記範囲の上限を超えると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の物理特性が低下したり、表面離型性が悪化したりする傾向があるからである。
【0020】
(A−2)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物に十分な強度と柔軟性、表面離型性および基材への接着性を付与するための成分であり、SiO4/2単位、R122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位からなる。式中、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、式中、R2は、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。
【0021】
(A−2)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有し、3.5〜5.0質量%のアルケニル基を含有することが好ましい。これは、(A−2)成分のアルケニル基含有量が上記下限未満であると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の表面離型性が十分でなくなる傾向があるからであり、一方、(A−2)成分のアルケニル基含有量が上記上限を超えると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の柔軟性が低下する傾向があるからである。(A−2)成分は2種類以上のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよいが、混合物として2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有する必要がある。
【0022】
(A−2)成分のSiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比は、0.5〜1.4の範囲であることが好ましく、0.5〜1.2の範囲であることがより好ましく、0.6〜1.0の範囲であることが特に好ましい。これは、(A−2)成分のSiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比が上記下限未満であると、本組成物の粘度が高くなりすぎて取扱い作業性が低下したり、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の表面離型性が低下したりする場合があるからであり、一方、(A−2)成分のSiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比が上記上限を超えると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の柔軟性が十分でなくなる場合があるからである。(A−2)成分は2種類以上のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよいが、SiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比が0.5〜1.4の範囲内のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンからなる混合物であることが好ましい。
【0023】
(A−2)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量は、3,000〜7,000の範囲内であることが好ましく、4,000〜6,000の範囲内であることがより好ましい。(A−2)成分は2種類以上のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよいが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が3,000〜7,000の範囲内のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンからなる混合物であることが好ましい。
【0024】
本組成物において、(A−2)成分の含有量は、(A)成分の10〜35質量%となる量であり、好ましくは、(A)成分の15〜30質量%となる量である。これは、(A−2)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の表面離型性が低下する傾向があるからであり、一方、(A−1)成分の含有量が上記範囲の上限を超えると、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の柔軟性が低下したり、本組成物の粘度が過度に上昇して取扱い作業性が低下したりする傾向があるからである。
【0025】
(B)成分のオルガノポリシロキサンは本組成物の架橋剤である。(B)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹枝状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹枝状である。(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の結合位置は限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または側鎖が挙げられる。また、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基は、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基であり、好ましくは、メチル基である。(A)成分との相溶性がよく、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の表面離型性も良好となるからである。(B)成分の粘度は限定されないが、25℃における粘度が1〜10,000mm2/sの範囲内であることが好ましく、特に、1〜1,000mm2/sの範囲内であることが好ましい。また、本組成物の表面離型性を向上する点から、(B)成分はケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.7質量%含有することが好ましい。
【0026】
特に好ましい(B)成分としては、(B−1)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.7質量%含有する、SiO4/2単位およびHR32SiO1/2単位(式中、R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、メチル基であることが好ましい。)からなるオルガノポリシロキサン (B)成分の50〜100質量%;(B−2)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.3質量%含有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基が、炭素原子数1〜10のアルキル基である直鎖状オルガノポリシロキサン (B)成分の0〜50質量%;からなるオルガノポリシロキサンが例示される。(B−2)成分は、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.7質量%含有することが好ましい。
【0027】
(B−1)成分は、SiO4/2単位およびHR32SiO1/2単位の他に、R33SiO1/2単位を含んでもよい。(B−1)成分のSiO4/2単位1モルに対する、HR32SiO1/2単位およびR33SiO1/2単位の合計のモル数の比は、1.5〜2.5の範囲であることが好ましく、1.8〜2.2の範囲であることがより好ましい。好ましい(B−1)成分として具体的には、式:(SiO4/2)4(H(CH3)2SiO1/2)8で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0028】
(B−2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.3質量%含有し、好ましくは、少なくとも0.7質量%含有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基は、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、メチル基であることが好ましい。(B−2)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。好ましい(B−2)成分として、具体的には、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0029】
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜5モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.7〜2.5モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、本組成物を硬化して得られるシリコーン硬化物の柔軟性や表面離型性が低下したりする場合があるからである。
【0030】
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は本組成物の硬化を促進するための触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、特に、白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示される。
【0031】
本組成物において、(C)成分の含有量は触媒量であり、具体的には、本組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の硬化が十分に進行しなくなるおそれがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えても硬化が著しく促進されるものではなく、むしろシリコーン硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0032】
本組成物には、その他任意の成分として、例えば、本組成物の硬化速度を調節するために、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。上記組成物において、この反応抑制剤の含有量は限定されず、成形方法や硬化条件によって適宜選択可能であるが、一般的に、本組成物に対して質量単位で10〜5,000ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0033】
本組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、接着性付与剤、難燃剤、無機質充填剤、着色剤、カーボンブラックなどの帯電防止剤、導電性付与剤などを配合してもよい。しかし、一般的に、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の表面離型性の点から、接着性付与剤、無機質充填剤を配合しないことが好ましい。
【0034】
本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物が、電気・電子用途に使用される場合は、本組成物中に含まれる、シロキサン単位として4量体〜10量体の低分子量オルガノポリシロキサンの含有量が350ppm以下であることが好ましい。
【0035】
本組成物の25℃における粘度は特に限定されないが、成形性や注入、脱泡の容易さなどの取扱い作業性の点から2〜100Pa・sであることが好ましく、5〜50Pa・sであることが特に好ましい。本組成物は、下記する基材表面にシリコーン硬化物層を形成するための硬化被覆形成性コーティング剤として好適に使用できる。
【0036】
本組成物は、100〜250℃で加熱することで、硬化してシリコーン硬化物を形成する。本発明のシリコーン硬化物は、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメータを用いて測定された硬さが75以下の範囲であり、30〜70の範囲であることが好ましく、40〜65の範囲であることがより好ましい。これは、上記範囲上限を超えると、本シリコーン硬化物の柔軟性が十分でなくなる傾向があるからである。
【0037】
また、本組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物は、柔軟性の点から、JIS K6251に規定された伸びが35%以上であることが必要である。
【0038】
本組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物は、各種基材と一体化した複合体であってもよい。このようなシリコーン硬化物複合体は、基材に本組成物を塗布し、次いで加熱硬化して、基材表面上にシリコーン硬化物層を形成することで製造することができる。基材としては、鉄、アルミ、銅、ニッケルメッキ等の金属;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性プラスチック;スチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系の熱可塑性エラストマー;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性プラスチック;ポリイソブチルゴム、アクリルゴム、EPDM、シリコーンゴム等のゴム;ナイロンやポリエステル製の基布;電子部品;発光素子;が例示される。中でも、基材がシリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーンシーラントなどのような硬さの低い柔軟な弾性体であることが好ましい。このようなシリコーン弾性体は、特に限定されず、縮合反応硬化型、過酸化物硬化型、ヒドロシリル化反応による付加硬化型の何れのシリコーン弾性体組成物の硬化物であってもよく、ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であっても液状シリコーン弾性体組成物の硬化物であってもよい。本組成物は、シリコーン弾性体との接着性に優れ、従来接着が難しかったヒドロシリル化反応による付加硬化型のシリコーン弾性体にも良好に接着するという特徴を有する。
【0039】
上記シリコーン硬化物複合体としては、具体的には、芯金またはベルト基材外周に形成されたシリコーン弾性体の外周表面に、本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物層を表面離型層として一体化したローラまたはベルトが例示される。このようなローラまたはベルトとしては、芯金またはベルト基材外周にシリコーン弾性体層を形成し、該シリコーン弾性体層外周表面に、本組成物を塗布、次いで加熱硬化してシリコーン硬化物層を表面離型層として形成することで製造できる。本組成物をシリコーン弾性体層上に塗布する方法は公知の方法を用いることができ、金型を用いた注型によって本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物層を表面離型層として形成することもできる。また、必要に応じて、本組成物の粘度や流動性を変更するために各種の溶剤で本組成物を希釈することもできる。
【0040】
本組成物を硬化してなるシリコーン硬化物の硬さが比較的低く、柔軟性を有することから、下層の弾性体層の柔軟性が損なわれず、低い表面硬度を有するローラまたはベルトを提供できるという特徴がある。このようなローラまたはベルトは、加圧ローラ、ヒートローラなどの定着部に使用されるローラまたはベルトとして好適に使用できる。
【実施例】
【0041】
[実施例1〜5]
表1に示す材料を表1に示した量比で均一に混合して硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。得られた組成物を、120℃で10分間プレス硬化し、さらに200℃のオーブン中に4時間放置して厚さ2mmの硬化シートを作製した。得られた硬化シートを用いて下記の方法で硬さ、引張強さ、伸び、剥離抵抗を測定した。それらの結果を表1に示した。
【0042】
[試験、測定、評価方法]
シリコーン硬化物の物性(硬さ、引張強さ、伸び、剥離抵抗)の測定方法は下記の通りである。
(1)硬さ
JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定した。
(2)引張強さ、伸び
JIS K 6251に規定の方法により測定した。
(3)剥離抵抗
厚さ2mmの試験片に積水化学製ビニルテープ(商品名:エスロンR No.360、電気絶縁用ポリ塩化ビニル粘着テープ、テープ幅19mm、長さ150mm)を気泡の入らないように貼り、該ビニルテープを島津製作所製「島津オートグラフAGS−50D」で剥離速度50mm/minで90mm剥がしたときの剥離抵抗の平均値、および、テスター産業株式会社製高速軽量剥離試験機で剥離速度6000mm/minで90mm剥がしたときの剥離抵抗の平均値を測定した。
【0043】
表1および表2で、(A)〜(C)成分およびその他の成分として使用した材料の内容と略号は次のとおりである。なお、Viはビニル基を、Meはメチル基を表す。また、粘度は25℃における値であり、部とは質量部である。
A−1成分
a-1:粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン。ビニル基含有量 0.09質量%。
a-2:粘度11,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン。ビニル基含有量 0.14質量%。低分子量成分低減処理品(シロキサン単位として4量体〜10量体の低分子量オルガノポリシロキサンの含有量が200ppm以下)
a-3:粘度2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン。ビニル基含有量 0.23質量%。
a-4:粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン。ビニル基含有量 0.48質量%。
a-5:粘度15,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。ビニル基含有量 7.7質量%。
a-6:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン生ゴム(粘度1,000,000mPa・s以上)。ビニル基含有量 0.017質量%。
a-7:粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。ビニル基含有量 0.50質量%。
a-8:粘度8,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。ビニル基含有量 0.30質量%。低分子量成分低減処理品(シロキサン単位として4量体〜10量体の低分子量オルガノポリシロキサンの含有量が200ppm以下)
【0044】
A−2成分
a-9:平均単位式(ViMe2SiO1/2)0.11(Me3SiO1/2)0.33(SiO4/2)0.57で表され、質量平均分子量およそ4,600のオルガノポリシロキサン。ビニル基含有量4.0質量%。
a-10:平均単位式(ViMe2SiO1/2)0.04(Me3SiO1/2)0.40(SiO4/2)0.56で表され、質量平均分子量およそ4,600のオルガノポリシロキサン。ビニル基含有量1.5質量%。
a-11:平均単位式(ViMe2SiO1/2)0.14(Me3SiO1/2)0.48(SiO4/2)0.39で表され、質量平均分子量およそ2,500のオルガノポリシロキサン。ビニル基含有量5.0質量%。
【0045】
B成分
b-1:平均単位式(HMe2SiO1/2)8(SiO4/2)4で表され、動粘度18mm2/sのオルガノポリシロキサン。ケイ素原子結合水素原子含有量約0.97質量%
b-2:動粘度15mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体。ケイ素原子結合水素原子含有量約0.83質量%
C成分
白金系触媒:白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液。白金金属含有量約6500ppm。
硬化遅延剤
1−エチニル−1−シクロヘキサノール
酸化鉄微粉末ペースト
粘度11,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量 0.14質量%) 50部、酸化鉄系無機微粉末(商品名バイフェロクス、バイエル社製) 50部からなる酸化鉄微粉末分散ペースト。
シリカマスターバッチ
粘度11,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.14質量%) 100質量部、BET比表面積200m/gのフュームドシリカ 45質量部、ヘキサメチルジシラザン 5質量部、水 1.2質量部をプラネタリーミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下200℃で2時間加熱処理して流動性のあるシリカマスターバッチを調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
[比較例1〜3]
表2に示す材料を表2に示した量比で均一に混合して硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。得られた組成物を、120℃で10分間プレス硬化し、さらに200℃のオーブン中に4時間放置して厚さ2mmの硬化シートを作製した。得られた硬化シートを用いて引張強さ、伸び、剥離抵抗を測定した。それらの結果を表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
[実施例6]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約0.12質量%) 100部、BET比表面積110m2/gの表面疎水化フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製) 3部、平均粒子径5μmの石英粉末(龍盛株式会社製) 30部をプラネタリーミキサーに投入し、2時間混合した。これに分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量 約0.4質量%) 1.2部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール 0.05重量部、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金濃度0.7%) 0.25部を添加し、30分攪拌した。得られた組成物を6mm厚の金型に流し込み、120℃にて10分間プレス硬化し、200℃のオーブン中に4時間放置してシリコーンゴム硬化物試験片を得た。得られたシリコーンゴム硬化物試験片のアスカーC硬さ(JIS K7312に規定されたタイプC硬さ試験機を用いた試験方法に準ずる。以下同様である。)は22であった。
得られたシリコーンゴム硬化物試験片表面に表1に記載された実施例3の硬化性シリコーンゴム組成物を厚み500μmになるようコーティングし、150℃にて15分間オーブン内で硬化した。得られたシリコーン硬化物/シリコーンゴム複合体のアスカーC硬さは29であった。また、シリコーンゴム組成物の厚みを300μmに変えた以外は同様にして作製したシリコーン硬化物/シリコーンゴム複合体のアスカーC硬さは25であった。
得られたシリコーン硬化物/シリコーンゴム複合体は強固に一体化しており、金属ヘラを用いてシリコーン硬化物層表面をこすっても剥離は認められず、シリコーン硬化物をテンシロンを用いて剥したところ剥離面は凝集破壊であった。得られたシリコーン硬化物/シリコーンゴム複合体は、180度折り曲げてもシリコーン硬化物層に剥離、破壊、白化などの異常は認められなかった。また、得られたシリコーン硬化物/シリコーンゴム複合体のシリコーン硬化物被覆表面には指触で全く粘着感が認められなかった。
【0050】
[比較例4]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約0.12質量%) 100部、BET比表面積110m2/gの表面疎水化フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製) 3部、平均粒子径5μmの石英粉末(龍盛株式会社製) 30部をプラネタリーミキサーに投入し、2時間混合した。これに分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量 約0.4質量%) 1.2部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール 0.05重量部、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金濃度0.7%) 0.25部を添加し、30分攪拌して、硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。
次に、厚さ50μmのPFAチューブ(グンゼ株式会社製、商品名:NSE)から幅6cm長さ10cmのシートを切り取り、該シートの濡れ性向上処理面にプライマー(商品名:DY39−067、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、室温で乾燥させた。次いで上記のPFAシートのプライマー処理面上に厚さ6mmとなるように上記の硬化性シリコーンゴム組成物を注型し、120℃にて10分間プレス硬化し、200℃のオーブン中に4時間放置してPFA被覆シリコーンゴム硬化物試験片を得た。得られた試験片のアスカーC硬さは39であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化すると、表面離型性に優れた、柔軟性を有するシリコーン硬化物を形成することから、各種基材表面に塗布し、次いで加熱硬化して基材と一体化することで、表面離型性に優れ粘着性の無い、柔軟なシリコーン硬化物層を基材表面に形成することができる。このことから本発明の硬化性シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーンシーラント等のシリコーン弾性体;ポリウレタン樹脂;ナイロンやポリエステル製基布等の低硬度の基材や柔軟性に富む基材用のコーティング材や表層材として有用である。例えば、トナー離型性が要求される定着ローラなどのシリコーンゴムローラの表層材、形状保持や粘着防止が求められるシリコーンゲルの表層材、低硬度パッキンやブッシュの汚れ付着防止のためのコーティング材、シリコーンゴムキーパッド用の表層材やインクなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A−1)一分子中にアルケニル基を平均で少なくとも2個有し、25℃における粘度が300〜100,000mPa・sであるジアルキルポリシロキサン (A)成分の65〜90質量%;(A−2)SiO4/2単位、R122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2はアルケニル基である)からなり、2.5質量%を超え5.0質量%以下の範囲でアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン (A)成分の10〜35質量%;からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子結合水素原子を一分子中に少なくとも平均2個有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基が、炭素原子数1〜10のアルキル基であるオルガノポリシロキサン{本成分中のケイ素原子結合水素原子が、(A)成分のアルケニル基の合計1モルに対して、0.5〜5モルとなる量}、および
(C)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒
からなり、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメータを用いて測定された硬さが75以下であり、JIS K6251に規定された伸びが35%以上であることを特徴とする硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分が、(B−1)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.7質量%含有する、SiO4/2単位およびHR32SiO1/2単位(式中、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基である。)からなるオルガノポリシロキサン (B)成分の50〜100質量%;(B−2)ケイ素原子結合水素原子を少なくとも0.3質量%含有し、ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基が、炭素原子数1〜10のアルキル基である直鎖状オルガノポリシロキサン (B)成分の0〜50質量%;からなるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A−2)成分のSiO4/2単位1モルに対するR122SiO1/2単位およびR13SiO1/2単位のモル数の合計の比が0.5〜1.4の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物からなる硬化皮膜形成性コーティング剤。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化してなるシリコーン硬化物層が基材表面と一体化していることを特徴とするシリコーン硬化物複合体。
【請求項6】
基材がシリコーン弾性体であることを特徴とする請求項5に記載のシリコーン硬化物複合体。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化してなるシリコーン硬化物層が、芯金またはベルト基材外周に形成されたシリコーン弾性体層の外周表面に形成されていることを特徴とするローラまたはベルト。
【請求項8】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を、基材に塗布し、次いで加熱硬化してシリコーン硬化物層を基材表面上に形成することを特徴とするシリコーン硬化物複合体の製造方法。
【請求項9】
基材がシリコーン弾性体であることを特徴とする請求項8に記載のシリコーン硬化物複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を、芯金またはベルト基材外周に形成されたシリコーン弾性体層外周表面上に塗布し、次いで加熱硬化してシリコーン硬化物層をシリコーン弾性体層外周表面に形成することを特徴とするローラまたはベルトの製造方法。

【公開番号】特開2010−174233(P2010−174233A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22013(P2009−22013)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】