説明

硬化性シリコーン系樹脂組成物

【課題】 速硬化性を有し、かつ、その硬化物の表面のくすみが少ない硬化性シリコーン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、三フッ化ホウ素系触媒(B)0.001〜10質量部を含有することを特徴とする、硬化性シリコーン系樹脂組成物。
−A−CH−SiR(OR3−a ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rは、フェニル基、及び、炭素数1〜6のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、架橋性シリル基を含有する硬化性シリコーン系樹脂組成物に関し、より詳しくは、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ必要十分な硬化速度を有する硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂は、シーラント、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして広く用いられている。この硬化性シリコーン系樹脂は架橋性シリル基が大気中の水分で加水分解し架橋することによって硬化するため、湿気硬化型ポリマーとも呼ばれている。特に架橋性シリル基がアルコキシシリル基である硬化性シリコーン系樹脂は、安全性や臭気が少ないことなどから幅広く用いられている。(特許文献1や特許文献2)
【0003】
しかし、アルコキシシリル基だけでは室温で十分な硬化速度を得られないため、これらの硬化性シリコーン系樹脂は十分な硬化速度を得る目的で、通常は硬化触媒を配合して使用される。硬化性シリコーン系樹脂の硬化触媒としては有機スズ化合物が広く使用されている。
【0004】
一方で、アミン化合物やカルボン酸化合物、又はビスマス系化合物やチタン系化合物を硬化触媒として使用することが提案されている(特許文献3や特許文献4)。しかし、これらの触媒系では硬化速度が実用的に満足できるものではなかった。
【0005】
また、アミン触媒でも十分な硬化性を有するアルコキシシリル基として、架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合したα位炭素に非共有電子対を有する酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を結合した(以下「α−シラン構造」と表記することがある)化合物が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−112642号公報
【特許文献3】特許第3793074号公報
【特許文献4】特許第3768072号公報
【特許文献5】特表2005−514504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機スズ化合物については、近年その毒性が問題となっているものがあり、使用に際してはその取り扱いや使用量に十分な注意が必要であるのは言うまでもない。そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、上記の特許文献5に記載されるような特定の架橋性シリル基近傍の化学構造(α−シラン構造)を持つ硬化性樹脂が、α−シラン構造ではない従来公知のアミノシラン化合物を添加するだけで十分な硬化性が発現されることを見出した。さらに、α−シラン構造ではない従来公知の架橋性シリル基を有する硬化性樹脂とα−シラン構造を持つ硬化性樹脂とを併用した場合でも、該アミノシラン化合物で十分硬化性が発現されることを見出し、この併用系を先に出願した(特願2008−187669)。
【0008】
しかしながら、このようなα−シラン構造ではない従来公知のアミノシラン化合物を、上記の特許文献5に記載されるような特定の架橋性シリル基近傍の化学構造(α−シラン構造)を持つ硬化性樹脂に添加して硬化させた場合、硬化物表面がヒビ割れのようなつや消し状態となり、美観性に劣るという問題があることがわかった。このような現象は従来型の硬化性シリコーン系樹脂や有機錫系触媒を用いた系では見られなかったものである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、有機スズ化合物を使用せず十分な硬化速度を有する上に、その硬化物の表面のくすみが少ない硬化性シリコーン系樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、分子内にα−シラン構造である架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性シリコーン系樹脂に対して、三フッ化ホウ素系触媒を含有させることで、十分な硬化速度を有し、なおかつ、その硬化物の表面のくすみが少ない硬化性シリコーン系樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、第1の発明は、分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、三フッ化ホウ素系触媒(B)0.001〜10質量部を含有することを特徴とする、硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
−A−CH−SiR(OR3−a ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
硬化性シリコーン系樹脂(A)のみでは硬化は非常に遅いが、三フッ化ホウ素系触媒(B)を添加することで硬化性が極めて高くなるという効果が得られる。
【0012】
また、第2の発明は、さらに、塩基性化合物(C)0.001〜30質量部を含有することを特徴とする、第1の発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。塩基性化合物(C)を添加することで、硬化性がより高まる。
【0013】
また、第3の発明は、塩基性化合物(C)が、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(CS)であることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
塩基性化合物(C)がアミノシラン化合物(CS)であっても、三フッ化ホウ素系触媒(B)を併用することにより、硬化性が高い上に硬化物の表面のくすみが少ないという効果が得られる。
【0014】
また、第4の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基がアルキルジアルコキシシリル基であることを特徴とする、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基がアルキルジアルコキシシリル基であることで、硬化物物性と硬化速度とのバランスが取りやすいという効果が得られる。
【0015】
また、第5の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の結合官能基が、ウレタン結合及び/又は尿素結合であることを特徴とする、第1〜第4のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
該結合官能基がウレタン結合及び/又は尿素結合である硬化性シリコーン系樹脂(A)は合成が容易であり、産業上有用性が高い。なお、本発明においては、硬化性シリコーン系樹脂(A)の結合官能基であるウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、本発明においては、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。
【0016】
また、第6の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖が、本質的にポリオキシアルキレンであることを特徴とする、第1〜第5のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖が本質的にポリオキシアルキレンであると、比較的低粘度に調製できるという効果が得られる。
【0017】
また、第7の発明は、有機スズ系触媒の含有量が0〜1000ppm未満であることを特徴とする、第1〜第6のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。有機スズ系触媒が1000ppm未満であれば、毒性の問題も比較的小さい。
【0018】
第8の発明は、第1〜第7のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーラント組成物に関するものである。
第9の発明は、第1〜第7のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とする接着剤組成物に関するものである。
第10の発明は、第1〜第7のいずれかの発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とする粘着剤前駆体組成物に関するものである。
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とすることにより、十分な硬化速度を有する上に、その硬化物の表面のくすみが少ない、シーラント組成物、接着剤組成物、粘着剤前駆体組成物を調製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、有機スズ化合物を使用せずに十分な硬化速度を有する上に、その硬化物の表面のくすみが少ない硬化性シリコーン系樹脂組成物が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0021】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に上記一般式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性シリコーン系樹脂である。本発明では、上記一般式(1)で表されるような化学構造を「α−シラン構造」と表記する。α−シラン構造を選択することにより通常の架橋性シリル基よりも極めて高い湿分反応性を示すため、有機スズ触媒を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量でも充分な硬化速度を得ることができるのである。
【0022】
上記架橋性シリル基には、該架橋性シリル基に含まれる珪素原子にメチレン基を介して非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基が結合している。結合官能基とは架橋性シリル基と主鎖をつなぐ構造であり、架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合していれば特に制限されないが、具体的には(チオ)ウレタン結合、(チオ)尿素結合、(チオ)置換尿素結合、(チオ)エステル結合、(チオ)エーテル結合、などが例示される。さらに当該架橋性シリル基は、この結合官能基を介して主鎖骨格に結合している。
【0023】
また、当該珪素原子については、メチレン基との結合手以外に加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合しているものである。
ここで、アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0024】
また、硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基は、アルキルジアルコシキシリル基(a=1)又はトリアルコキシシリル基(a=0)であることが、入手の容易さ、硬化物のモジュラス等の点から好ましく、アルキルジアルコシキシリル基(a=1)あることが、硬化物物性と硬化速度のバランスが取りやすいため特に好ましい。
【0025】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、1,000〜80,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が80,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0026】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用される。特に、本質的にポリオキシアルキレンであることが、入手の容易さや硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性シリコーン系樹脂(A)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0027】
硬化性シリコーン系樹脂(A)を得るためには、従来公知の方法で合成を行えばよい。例えばポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させウレタンプレポリマーを合成した後、ウレタンプレポリマーにメルカプトメチルアルコキシシラン化合物あるいはアミノメチルアルコキシシラン化合物等のアルコキシシリル基の珪素原子のα位炭素に活性水素基を有するヘテロ原子が結合している化合物を反応させる方法等が知られている。なお、ここではトリアルコキシシラン、アルキルジアルコシキシシラン、ジアルキルアルコシキシシランを総称して「アルコキシシラン」と表記している。該アミノメチルアルコキシシラン化合物のアミノ基は、第1級アミノ基であっても第2級アミノ基であってもよいが、第2級アミノ基であるほうが、硬化性シリコーン系樹脂(A)の粘度が比較的低粘度に調製できるため好ましい。なお、第2級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物は、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物から誘導することができる。具体的には、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物と、α,β−不飽和カルボニル化合物あるいはアクリロニトリル化合物等のアミノ基と共役付加反応を起こす官能基を有する化合物とを反応させる方法などが上げられる。さらに、特表2004−518801、特表2004−536957、特表2005−501146等に記載の方法で容易に合成できる。
【0028】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、Wacker Chemie AG製のGENIOSIL STP−E10、GENIOSIL STP−E30等が挙げられる。
【0029】
[三フッ化ホウ素系触媒(B)について]
本発明における三フッ化ホウ素系触媒(B)は、三フッ化ホウ素、及び、三フッ化ホウ素とルイス塩基との錯体からなる化合物であり、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化を促進させる化合物である。さらに、その機構は定かではないが、本発明において、三フッ化ホウ素系触媒(B)は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化物表面に微細なひび割れによるくすみを発生させないという効果を発現させるものである。三フッ化ホウ素とルイス塩基との錯体からなる化合物の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が例示される。上記三フッ化ホウ素の錯体の中では、安定性と触媒活性を兼ね備えたアミン錯体が特に好ましい。
【0030】
上記三フッ化ホウ素アミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ハンツマン社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式 HN(CNH)H(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物等の他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
上記三フッ化ホウ素アミン錯体は、市販されており本発明ではそれらを用いることもできる。市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が挙げられる。
【0032】
上記三フッ化ホウ素系触媒(B)は、所望の硬化速度等を得るために適宜選択すればよい。また、上記三フッ化ホウ素系触媒(B)は1種単独又は2種以上併用してもよい。上記三フッ化ホウ素系触媒(B)の配合量としては、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5.0質量部がより好ましく、0.1〜2.0質量部が特に好ましい。0.001質量部を下回ると硬化促進効果が十分ではない場合があり、10質量部を上回ると貯蔵安定性が悪くなるなどの問題が起こる場合がある。
【0033】
[塩基性化合物(C)について]
本発明における塩基性化合物(C)は、三フッ化ホウ素系触媒(B)と併用することで硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化を促進させる化合物である。塩基性化合物(C)は、塩基性を示す化合物であれば特に限定されず、カルボン酸やフェノールに代表されるような酸性化合物との塩であっても塩基性である限り使用可能である。例えば、第1〜第3級アミン化合物及びその塩、4級アンモニウム塩、有機金属塩等が好適に使用できる。また、アミン化合物とエポキシ化合物との反応物であっても良い。
【0034】
塩基性化合物(C)の具体例としては、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等の第一級アミン化合物、ジn−ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ピペリジン等の第二級アミン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の第三級アミン化合物、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、N,N′−ジフェニルグアニジン、1−フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン化合物、ピリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等の環状アミン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンとカルボン酸との塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンとフェノールとの塩、HN(CNH)nH(n≧1)で表わされる化合物、ハンツマン社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシアルキレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(CS)等が挙げられる。また、上記のアミン化合物における第一級アミノ基含有化合物とケトン類との反応生成物であるケチミン化合物、第一級アミノ基含有化合物とアルデヒド類との反応生成物であるアルジミン化合物、β−アミノアルコール化合物とケトン類との反応生成物であるオキサゾリジン化合物も使用することができる。
【0035】
これらの化合物の中では、助触媒的な効果が高いアミノシラン化合物(CS)、グアニジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の環状アミン化合物及びその塩が好ましく、さらに液状であることからアミノシラン化合物(CS)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンがより好ましい。
【0036】
上記塩基性化合物(C)の配合量は、求められる硬化速度に応じて便宜選択すれば良いが、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜20質量部がより好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。0.001質量部を下回ると、硬化触媒的機能が十分発現されない場合があり、30質量部を上回ると助触媒としての機能は大きく向上しなくなる場合がある。
【0037】
[アミノシラン化合物(CS)について]
本発明におけるアミノシラン化合物(CS)は、分子内にアミノ基と架橋性シリル基を有する化合物である。アミノシラン化合物(CS)としては、α−シラン構造を有する低分子アミノシラン化合物は毒性が高いため、α−シラン構造を有さないアミノシラン化合物、つまり、アミノ基の窒素原子と架橋性シリル基の珪素原子との間に炭素原子が2つ以上結合しているアミノシラン化合物が好ましい。
【0038】
上記アミノシラン化合物(CS)としては、下記一般式(2)で示されるアミノシラン化合物(c1)、アミノシラン化合物(c1)単独の縮合反応生成物、又は、アミノシラン化合物(c1)と下記一般式(3)で示されるシラン化合物(c2)に例示されるような他のシラン化合物との縮合反応生成物が挙げられる。これらの中では、該アミノシラン化合物(CS)中のアミノ基の効果をより発現させやすいことから、アミノシラン化合物(c1)、または、アミノシラン化合物(c1)単独の縮合反応生成物がより好ましい。
【0039】
N−R−SiR(OR3−b ・・・式(2)
(但し、R、Rは有機基又は水素原子を、Rは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合する炭素原子にヘテロ原子が結合していない有機基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、bは0、1又は2を、それぞれ示す)
【0040】
Si(R)(R)(R10)(OR11) ・・・式(3)
(但し、式中、R、R、R10はフェニル基、分子量500以下のアルキル基、メルカプトプロピル基、ウレイドプロピル基、フェノキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び、2−(ブトキシ)エトキシ基に代表される分子量500以下の有機基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表し、R11はフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表す)
【0041】
上記一般式(2)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(4)で示されるアミノシラン化合物である。
1213N−R14−SiR15(OR163−c ・・・式(4)
(但し、R12、R13は分子量500以下の有機基又は水素原子を、R14は架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合する炭素原子にヘテロ原子が結合しておらず、さらに第2級アミノ基を含んでいてもよい分子量500以下の二価の有機基を、R15は炭素数1〜10個の炭化水素基を、R16はフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、cは0、1又は2を、それぞれ示す。)
【0042】
上記アミノシラン化合物(CS)に含まれるアミノ基としては、第1級、第2級、第3級のいずれのアミノ基でもよいが、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を接着剤、シーリング材、粘着剤等の密着性が求められる用途に用いる場合においては、その密着性付与効果がより発現しやすい第1級又は第2級アミノ基が好ましく、第1級アミノ基が特に好ましい。また、上記アミノシラン化合物(CS)中に含まれるアミノ基は、1個であってもよく2個以上であってもよい。また、上記アミノシラン化合物(CS)に含まれる架橋性シリル基としては、アミノシラン化合物(c1)で例示すると、アルキルジアルコキシシリル基(b=1)又はトリアルコキシシリル基(b=0)であることが入手が容易である点、及び、硬化物のモジュラス調整が容易である点から好ましい。上記アミノシラン化合物(CS)に含まれる架橋性シリル基は、1個であってもよく2個以上であってもよい。
【0043】
[アミノシラン化合物(c1)について]
上記アミノシラン化合物(c1)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシプロピル)アミン、ビス(3−メチルジメトキシプロピル)アミン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−プロペニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のケチミンシラン化合物も、湿気により第1級アミノ基が生成するため、上記アミノシラン化合物(c1)のなかに実質的に含まれる。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという点、及び、硬化促進効果が高いという点から好ましい。また、アミノシラン化合物が配合された硬化物は一般的に熱や光によって黄色く変色しやすいことが知られている。このような黄変が好まれない用途に用いる時は、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン等の窒素原子のβ位の炭素に結合する水素原子の数が少ないアミノシラン化合物を用いると黄変が低減されるため好ましい。
【0044】
[シラン化合物(c2)について]
上記シラン化合物(c2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が例示される。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを用いることが、アミノシラン化合物(c1)との縮合反応の容易性の観点から好ましい。
【0045】
アミノシラン化合物(c1)単独、あるいは、アミノシラン化合物(c1)とシラン化合物(c2)との縮合反応生成物は、従来公知の定法により合成すればよい。具体的には、アミノシラン化合物(c1)を水と反応させる方法、あるいは、アミノシラン化合物(c1)及びシラン化合物(c2)を水と反応させる方法が挙げられる。アミノシラン化合物(c1)単独、あるいは、アミノシラン化合物(c1)とシラン化合物(c2)との縮合反応生成物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0046】
上記アミノシラン化合物(CS)は、所望の硬化皮膜物性及び/又は硬化速度を得るために適宜選択すればよく、1種単独又は2種以上併用してもよい。上記アミノシラン化合物(CS)のなかでは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン及び、それらから誘導される縮合反応生成物が、入手が容易であるため好ましく、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが、硬化促進効果が高いという点からより好ましく、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を接着剤、シーリング材、粘着剤等の密着性が求められる用途に用いる場合において接着性付与効果が高いことから特に好ましい。
【0047】
本発明においては、三フッ化ホウ素系触媒(B)及び塩基性化合物(C)は、主に硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化触媒及び助触媒として作用する。これによって、従来は必須成分とされてきた、有機スズ系触媒を用いることなく、十分な硬化速度と硬化皮膜物性を得ることができる。このことにより、有機スズ系触媒を実質的に用いない、或いは用いたとしても1000ppm未満のごく少量の配合で済ませることができるのである。
【0048】
[その他の成分]
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物中には、その他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、本発明で用いる硬化性シリコーン系樹脂(A)以外の各種の硬化性樹脂(例えば、硬化性シリコーン系樹脂(A)以外の硬化性シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オキセタン系樹脂、環状カーボネート系樹脂)及び非硬化性の樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)、非スズ系金属系触媒、酸性触媒、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、炭酸カルシウム、クレイ、親水性又は疎水性シリカ系粉体等の充填剤、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、各種液状オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
【0049】
上記非スズ系金属系触媒としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等が、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム等が、遷移金属系金属元素を主体とする化合物として、オクチル酸イットリウム、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトン錯体、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトン錯体、マンガンアセチルアセトン錯体、オクチル酸鉄、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ニッケルアセチルアセトン錯体、ナフテン酸銅、銅アセチルアセトン錯体等が、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物として、亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物として、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体、インジウムアセチルアセトン錯体等が、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられる。また、市販品の具体例としては、ナーセムアルミニウム、ナーセムクロム、ナーセム第一コバルト、ナーセム第二コバルト、ナーセム銅、ナーセム第二鉄、ナーセムニッケル、ナーセムバナジル、ナーセム亜鉛、ナーセムインジウム、ナーセムマグネシウム、ナーセムマンガン、ナーセムイットリウム、ナーセムセリウム、ナーセムストロンチウム、ナーセムパラジウム、ナーセムバリウム、ナーセムモリブデニル、ナーセムランタン、ナーセムジルコニウム、ナーセムチタン、ナフテックスCoシリーズ、ニッカオクチックスCoシリーズ、ナフテックスMnシリーズ、ニッカオクチックスMnシリーズ、ナフテックスZnシリーズ、ニッカオクチックスZnシリーズ、ナフテックスCaシリーズ、ニッカオクチックスCaシリーズ、ナフテックスKシリーズ、ニッカオクチックスKシリーズ、ニッカオクチックスBiシリーズ、ネオデカン酸Biシリーズ、プキャットシリーズ、PAシリーズ、ナフテックスZrシリーズ、ニッカオクチックスZrシリーズ、ナフテックスFeシリーズ、ニッカオクチックスFeシリーズ、ナフテックスMgシリーズ、ナフテックスLiシリーズ、ナフテックスCuシリーズ、ナフテックスBaシリーズ、ニッカオクチックス・レアースシリーズ、ニッカオクチックスNiシリーズ等(以上、日本化学産業社製商品名)、オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320、オルガチックスTA−10、オルガチックスTA−25、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−30、オルガチックスTC−100、オルガチックスTC−401、オルガチックスTC−200、オルガチックスTC−750、オルガチックスTPHS等(以上、マツモトファインケミカル社製商品名)、SNAPCURE3020、SNAPCURE3030、VERTEC NPZ等(以上、ジョンソン・マッセイ社製商品名)、ネオスタンU−600、ネオスタンU−660等(以上、日東化成社製商品名)、ケンリアクトNZ01、ケンリアクトNZ33、ケンリアクトNZ39等(以上、ケンリッチ社製商品名)、アルミニウムエトキサイド、AIPD、PADM、AMD、ASBD、ALCH、ALCH−TR、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF、プレンアクトALM等(以上、川研ファインケミカル社製商品名)、A−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181等(以上、日本曹達社製商品名)、オクトープシリーズ、ケロープシリーズ、オリープシリーズ、アセトープシリーズ、ケミホープシリーズ等(ホープ製薬社製商品名)等が挙げられる。なかでも、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物からなる群から選ばれる一種以上であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保でき、さらに実使用に耐えうる硬化速度が得られやすいという点で好ましい。
【0050】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、水分の存在下で、架橋性シリル基同士が縮重合することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性シリコーン系樹脂が硬化するのである。2液性の硬化性シリコーン系樹脂組成物として使用する場合は、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)と、上記三フッ化ホウ素系触媒(B)及び/又は塩基性化合物(C)とを混ぜ合わせた際に本発明に係る効果が発現する。
【0051】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。特に、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を主体とすることで、環境負荷が少なく、高い安全性で、且つ、高い硬化速度を有する組成物を提供することができるため、作業時間の短縮が求められているようなシーラントまたは接着組成物などの用途に好適に用いることができる。なお、「主体」とは、該組成物が硬化する際の架橋ネットワーク構造において、該硬化性シリコーン系樹脂組成物の架橋性シリル基の縮合による架橋ネットワーク構造が主たる構成成分となることを意味する。
【0052】
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性樹脂組成物に対して、さらに粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。また、弱粘着性が求められる用途には、粘着付与樹脂を用いず粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0054】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)の準備]
(硬化性シリコーン系樹脂A−1)
硬化性シリコーン系樹脂A−1として、主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端にメチルジメトキシシリル基型のα−シリル構造を有する「GENIOSIL STP−E10」(Wacker Chemie AG.製、メトキシ基等量から換算した分子量約10,000、粘度約10,000mPa・s/25℃)を準備した。
【0055】
[三フッ化ホウ素系触媒(B)の準備]
(三フッ化ホウ素系触媒B−1)
三フッ化ホウ素系触媒B−1として、三フッ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液(BF成分として14〜15質量%)を準備した。
【0056】
(三フッ化ホウ素系触媒B−2)
三フッ化ホウ素系触媒B−2として、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体を準備した。
【0057】
[塩基性化合物(C)の準備]
(塩基性化合物C−1)
塩基性化合物C−1として、トリn−オクチルアミンを準備した。
【0058】
(塩基性化合物C−2)
塩基性化合物C−2として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを準備した。
【0059】
(塩基性化合物C−3)
塩基性化合物C−3として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0060】
[その他成分の準備]
(シランカップリング剤S−1)
シランカップリング剤S−1として、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを準備した。
【0061】
(シランカップリング剤S−2)
シランカップリング剤S−2として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0062】
(実施例1〜6/比較例1〜5)
表1〜3に示す処方で、硬化性シリコーン系樹脂(A)、三フッ化ホウ素系触媒(B)、塩基性化合物(C)、シランカップリング剤を反応容器に投入し、減圧下で10分混練することで、硬化性シリコーン系樹脂組成物を得た。得られた硬化性シリコーン系樹脂組成物を密閉容器に充填し、50℃で4週間静置した。50℃4週間静置後でも容器内でのゲル化は起こっていないことから、貯蔵安定性が高いことが分かった。その後、23℃で1日以上静置し、23±2℃相対湿度50±5%の条件下で、各硬化性シリコーン系樹脂組成物の硬化速度及び硬化物の表面状態の確認を行った。硬化速度の確認は皮張り時間を用いて行った。皮張り時間は、各硬化性シリコーン系樹脂組成物を23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気に暴露した直後を開始時間とし、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、金属製のスパーチュラで暴露された各硬化性シリコーン系樹脂組成物の表面を触ってスパーチュラに各硬化性シリコーン系樹脂組成物がつかなくなる時間とした。硬化物表面状態の確認は目視で行った。なお、硬化速度の確認は、最長2週間まで行った。
【0063】
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 実施例2 比較例1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A−1 100 100 100
B−1 0.5 − −
B−2 − 0.07 −
C−1 0.18 − −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
皮張り時間 1時間40分 7分30秒 2週間後も硬化せず
表面状態 ツヤあり ツヤあり 測定できず
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
但し、実施例2においては、B−2(0.07質量部)を脱水テトラヒドロフラン(0.7質量部)に溶解させ添加した。
【0064】
表2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例3 実施例4 実施例5 実施例6
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A−1 100 100 100 100
B−2 0.010 0.010 0.010 0.010
C−2 3.0 3.0 − −
C−3 − − 3.0 3.0
S−1 − 0.67 − −
S−2 − − − 0.67
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
皮張り時間 30秒 30秒 20秒 40秒
表面状態 ツヤあり ツヤあり ツヤあり ツヤあり
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
但し、実施例3〜6において、B−2は予め表に記載の質量割合でC−2又はC−3に溶解させたものを添加した。
【0065】
表3
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例2 比較例3 比較例4 比較例5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A−1 100 100 100 100
B−2 − − − −
C−2 3.0 3.0 − −
C−3 − − 3.0 3.0
S−1 − 0.67 − −
S−2 − − − 0.67
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
皮張り時間 43分 46分 15分 15分
表面状態 ツヤなし ツヤなし ツヤなし ツヤなし
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0066】
表1〜3の結果から、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、硬化が速い上に、硬化物表面にツヤがあることから美観性が非常に高いことが分かる。具体的には、表1の結果において、硬化性シリコーン系樹脂(A)単独では速硬化性を示さず(比較例1)、三フッ化ホウ素系触媒(B)を配合することで(実施例1及び2)硬化が速くなる上に、硬化物表面にツヤがあることから美観性が非常に高いことが分かる。また、表2及び表3の結果において、三フッ化ホウ素系触媒(B)を配合していない比較例2〜5は、有機スズ系触媒を使用せずとも十分硬化するものの、硬化表面にざらつきがあることからツヤがなく、美観性が十分でない。一方、三フッ化ホウ素系触媒(B)を配合している実施例3〜6は、硬化が極めて速い上に、硬化物表面にツヤがあることから美観性が非常に高いことが分かる
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、三フッ化ホウ素系触媒(B)0.001〜10質量部を含有することを特徴とする、硬化性シリコーン系樹脂組成物。
−A−CH−SiR(OR3−a ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
【請求項2】
さらに、塩基性化合物(C)0.001〜30質量部を含有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項3】
塩基性化合物(C)が、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(CS)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基がアルキルジアルコキシシリル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項5】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の結合官能基が、ウレタン結合及び/又は尿素結合であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項6】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖が、本質的にポリオキシアルキレンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項7】
有機スズ系触媒の含有量が0〜1000ppm未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーラント組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とする接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン系樹脂組成物を硬化性成分の主体とする粘着剤前駆体組成物。


【公開番号】特開2011−37955(P2011−37955A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184972(P2009−184972)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】