説明

硬化性シリコーン系樹脂組成物

【課題】 硬化性シリコーン系樹脂を含有する硬化性樹脂組成物において、硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)を100質量部、トリアルキルシリルボラート化合物(B)を0.01〜30質量部、含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
−SiR(R3−a ・・・式(1)
(但し、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基を、Rは加水分解性基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、架橋性シリル基を含有する硬化性シリコーン系樹脂組成物に関し、より詳しくは、硬化物に柔軟性が付与された硬化性シリコーン系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂は、シーラント、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして広く用いられている。この硬化性シリコーン系樹脂は架橋性シリル基が大気中の水分で加水分解し架橋することによって硬化するため、湿気硬化型ポリマーとも呼ばれている。特に架橋性シリル基がアルコキシシリル基(ジアルコキシシリル基やトリアルコキシシリル基等)である硬化性シリコーン系樹脂が、安全性や臭気が少ないことなどから幅広く用いられている(特許文献1や特許文献2)。
【0003】
これらの硬化性シリコーン系樹脂の中でも、アルコキシシラン原料の利用のしやすさから、架橋性シリル基がトリアルコキシシリル基である硬化性シリコーン系樹脂がよく利用される(例えば特許文献3)。このような硬化性シリコーン系樹脂を用いると、速硬化性や接着強さ、高モジュラスを与える硬化物が得られるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−112642号公報
【特許文献3】特開2008−260932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、上記のようなトリアルコキシシリル基を架橋性シリル基とする硬化性シリコーン系樹脂を用いた場合には、硬化物に柔軟性を付与することが難しかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、汎用的な架橋性シリル基がトリアルコキシシリル基である硬化性シリコーン系樹脂を用いても、その硬化物に柔軟性が付与された硬化性シリコーン系樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、該硬化性シリコーン系樹脂に、トリアルキルシリルボラート化合物を配合することにより、硬化物に柔軟性が付与された硬化性シリコーン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、そのような効果は、従来柔らかくすることが難しかったトリアルコキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂のみならず、比較的柔らかく調整できるジアルコキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂においても、さらなる柔軟性を付与することができ、用途や処方の幅を広げるものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、第1の発明は、分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)を100質量部、トリアルキルシリルボラート化合物(B)を0.01〜30質量部、含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
−SiR(OR3−a ・・・式(1)
(但し、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基を、Rは加水分解性基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
【0009】
また、第2の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基が、トリアルコキシシリル基(a=0かつRがアルコキシル基)であることを特徴とする、第1の発明に記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
また、第3の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖が、ポリオキシアルキレンであることを特徴とする、第1又は第2の発明に記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0011】
また、第4の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖と架橋性シリル基との結合官能基が、ウレタン結合及び/又は尿素結合を含むことを特徴とする、第1〜第3の発明のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
また、第5の発明は、トリアルキルシリルボラート化合物(B)が、トリス(トリメチルシリル)ボラートであることを特徴とする、第1〜第4の発明のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0013】
また、第6の発明は、さらに、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(C)を0.1〜30質量部含有することを特徴とする、第1〜第5の発明のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0014】
また、第7の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化を促進させる硬化促進剤(D)を0.001〜10質量部含有することを特徴とする、第1〜第6の発明のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0015】
また、第8の発明は、硬化促進剤(D)が、ハロゲン化ホウ素化合物であることを特徴とする、第1〜第7の発明のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、トリアルキルシリルボラート化合物が配合されていることにより、硬化物に柔軟性が付与された硬化物を与える硬化性シリコーン系樹脂組成物となる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0018】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に上記一般式(1)で表される架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂である。本発明で使用される硬化性シリコーン系樹脂(A)は、作業性などの面から、室温で液状であることが好ましい。また、硬化性シリコーン系樹脂(A)は、所望の性能に合わせて、1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0019】
該架橋性シリル基は、上記一般式(1)で表されるように、炭化水素基(R1)が2〜0個結合すると共に、珪素原子に加水分解性基(R)が1〜3個結合しているものである。そして、この珪素原子には、後述する結合官能基を介して主鎖が結合している。該炭化水素基としては、炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。該加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ等のアルコキシル基、フェノキシ基、2−(ブトキシ)エチル基等に代表されるような炭素数1〜20の有機基、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基を用いることができる。これらの中でも、取り扱いの容易さ、入手の容易さ等の観点から、アルコキシル基であることが好ましい。該アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましい。該加水分解性基の数としては、硬化速度を高めたい場合は3個(a=0)が好ましく、密着性を高めたい場合は2個(a=1)又は1個(a=0)が好ましい。これらは各々の硬化性組成物に求められる性能によって、適宜比率を調整すればよい。
【0020】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用される。特に、本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリレートであることが、入手の容易さや硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性シリコーン系樹脂(A)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0021】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、1,000〜80,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が80,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や希釈剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0022】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基と主鎖骨格とは、結合官能基を介して結合されている。結合官能基は主鎖骨格に対して架橋性シリル基を導入する際の化学反応によって生じるものであり、主鎖骨格と架橋性シリル基以外の化学構造部分を指す。結合官能基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基、ウレタン結合、尿素結合、置換尿素結合、カーボネート基等、これらの複数及びこれら以外の化学構造を含む2価の基が挙げられる。
【0023】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(A)として、分子内に架橋性シリル基を有し、かつ、分子内(特に好ましくは結合官能基内)に特定の極性基を含有する硬化性樹脂を好適に用いることができる。ここで、特定の極性基とは、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、スルフィド結合基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含有する結合基又は官能基等を指す。このような極性基を加水分解性珪素基の近傍に導入すると、硬化性樹脂自体の硬化能が高まるため好ましい。
【0024】
特に、これらの特定極性基の中では、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の含窒素極性基を有するものが好ましく、ウレタン結合基(−NHCOO−)、尿素結合基(−NHCONH−)、置換尿素結合基(−NHCONR−;R=有機基)を有するものであることが最も好ましい。硬化性樹脂自体の硬化能が高まる理由としては、硬化性樹脂の分子内に存在する特定極性基同士がドメインを形成し、その結果、硬化性樹脂の加水分解性珪素基同士のカップリング反応がさらに促進されるためであると考えられる。
【0025】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスターシリーズ、Wacker Chemie AG製のGENIOSIL STP−E10、GENIOSIL STP−E30、デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亞合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
また、分子内に架橋性シリル基を有し、かつ、分子内にこれらの特定極性基を含有する硬化性樹脂は、従来公知の方法で合成することができる。例えば、特許第3030020号公報記載の方法や、特開2005−54174号公報、特開2005−139452号公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報、特表2005−501146号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0027】
[トリアルキルシリルボラート化合物(B)について]
本発明におけるトリアルキルシリルボラート化合物(B)は、分子内に「ホウ素−酸素−珪素」結合を有するうえに、該珪素に3つのアルキル基が結合した化合物である。該アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。また、該アルキル基が、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アリール基等に代表されるようなヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよい炭化水素基である本発明にかからないボラート化合物を用いても、本発明と同様の効果が得られると考えられる。しかし、これらの化合物が汎用的ではなく合成も困難であるため検証ができない。
【0028】
トリアルキルシリルボラート化合物(B)の具体例としては、トリス(トリメチルシリル)ボラート、トリス(トリエチルシリル)ボラート、トリス(トリプロピルシリル)ボラート、トリス(トリブチルシリル)ボラート、トリス(トリヘキシルシリル)ボラート等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、硬化物に柔軟性を付与する効果が高いことから、トリス(トリメチルシリル)ボラート、トリス(トリエチルシリル)ボラート、トリス(トリプロピルシリル)ボラート、トリス(トリブチルシリル)ボラートが好ましく、入手の容易さから、トリス(トリメチルシリル)ボラートが最も好ましい。
【0029】
トリアルキルシリルボラート化合物(B)を上記硬化性シリコーン系樹脂(A)に配合することで硬化物に柔軟性が付与される理由は定かではないが、トリアルキルシリルボラート化合物(B)にも、硬化性シリコーン系樹脂(A)にも、「酸素−珪素」結合が存在することから、それらの相互作用によって、硬化物の架橋状態が変わっているものと推察される。
【0030】
トリアルキルシリルボラート化合物(B)の配合割合としては、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化物が所望の柔らかさになるように適宜調整すればよいが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜5.0質量部が特に好ましい。0.01質量部を下回ると、硬化物に柔軟性が付与される効果が十分でない場合があり、30質量部を上回ると、硬化物が柔らかくなりすぎる場合がある。また、トリアルキルシリルボラート化合物(B)は、所望の性能に合わせて、1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0031】
[アミノシラン化合物(C)について]
本発明におけるアミノシラン化合物(C)は、分子内に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる一種以上のアミノ基及び架橋可能な架橋性シリル基を有するシラン化合物であって、接着性付与効果を有する化合物である。アミノシラン化合物(C)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等の第2級アミノ基含有アミノシラン化合物、分子内にイミダゾール基及び架橋性シリル基を有するイミダゾールシラン化合物等の第3級アミノ基を有するアミノシラン、水と反応して第1級アミノ基を生成する官能基を有するケチミンシラン化合物あるいはアルジミンシラン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
アミノシラン化合物(C)の配合割合としては、所望の接着性となるように適宜調整すればよいが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部を下回ると、接着性付与効果が十分でない場合があり、30質量部を上回ると、配合量を増やしてもそれ以上接着性付与効果が上がらなくなる場合がある。また、アミノシラン化合物(C)は、所望の性能に合わせて、1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0033】
[硬化促進剤(D)について]
本発明における硬化促進剤(D)は、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化を促進させる化合物である。硬化促進剤(D)としては、従来公知のカルボン酸、リン酸、各種ルイス酸等の酸性化合物、アミンやホスファゼン等の塩基性化合物、有機金属化合物、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260933号公報で提案されている多価フルオロ化合物のアルカリ金属塩、フルオロシラン化合物等を使用することができるが、これらに限定されるわけではない。上記ルイス酸としては、金属ハロゲン化物、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体からなる化合物が好適に用いられる。
【0034】
上記有機金属化合物としては、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトン錯体等が挙げられる。該有機金属化合物の金属種としては、スズが一般的に用いられる。有機スズ化合物の具体例としては、モノアルキルスズ化合物、ジアルキルスズ化合物が挙げられ、さらに具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレエート、ジブチルスズフタレート、オクチル酸第一スズ、ジブチルスズジメトキシド、ジオクチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセチルアセテート、ジブチルスズジバーサテート、ジオクチルスズジバーサテート、ジブチルスズオキサイドあるいはジオクチルスズオキサイドとフタル酸ジエステルとの反応生成物、ジオクチルスズオキサイドとエチルシリケートとの反応生成物、日東化成株式会社製ネオスタンシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0035】
また、上記有機金属化合物の金属種としては、非スズ金属も好適に用いられる。硬化促進効果のある非スズ金属系化合物としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等が、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム等が、遷移金属系金属元素を主体とする化合物として、オクチル酸イットリウム、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトン錯体、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトン錯体、マンガンアセチルアセトン錯体、オクチル酸鉄、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ニッケルアセチルアセトン錯体、ナフテン酸銅、銅アセチルアセトン錯体等が、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物として、亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物として、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体、インジウムアセチルアセトン錯体等が、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられる。また、市販品の具体例としては、ナーセムアルミニウム、ナーセムクロム、ナーセム第一コバルト、ナーセム第二コバルト、ナーセム銅、ナーセム第二鉄、ナーセムニッケル、ナーセムバナジル、ナーセム亜鉛、ナーセムインジウム、ナーセムマグネシウム、ナーセムマンガン、ナーセムイットリウム、ナーセムセリウム、ナーセムストロンチウム、ナーセムパラジウム、ナーセムバリウム、ナーセムモリブデニル、ナーセムランタン、ナーセムジルコニウム、ナーセムチタン、ナフテックスCoシリーズ、ニッカオクチックスCoシリーズ、ナフテックスMnシリーズ、ニッカオクチックスMnシリーズ、ナフテックスZnシリーズ、ニッカオクチックスZnシリーズ、ナフテックスCaシリーズ、ニッカオクチックスCaシリーズ、ナフテックスKシリーズ、ニッカオクチックスKシリーズ、ニッカオクチックスBiシリーズ、ネオデカン酸Biシリーズ、プキャットシリーズ、PAシリーズ、ナフテックスZrシリーズ、ニッカオクチックスZrシリーズ、ナフテックスFeシリーズ、ニッカオクチックスFeシリーズ、ナフテックスMgシリーズ、ナフテックスLiシリーズ、ナフテックスCuシリーズ、ナフテックスBaシリーズ、ニッカオクチックス・レアースシリーズ、ニッカオクチックスNiシリーズ等(以上、日本化学産業社製商品名)、オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320、オルガチックスTA−10、オルガチックスTA−25、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−30、オルガチックスTC−100、オルガチックスTC−401、オルガチックスTC−200、オルガチックスTC−750、オルガチックスTPHS等(以上、マツモトファインケミカル社製商品名)、SNAPCURE3020、SNAPCURE3030、VERTEC NPZ等(以上、ジョンソン・マッセイ社製商品名)、ネオスタンU−600、ネオスタンU−660等(以上、日東化成社製商品名)、ケンリアクトNZ01、ケンリアクトNZ33、ケンリアクトNZ39等(以上、ケンリッチ社製商品名)、アルミニウムエトキサイド、AIPD、PADM、AMD、ASBD、ALCH、ALCH−TR、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF、プレンアクトALM等(以上、川研ファインケミカル社製商品名)、A−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181等(以上、日本曹達社製商品名)、オクトープシリーズ、ケロープシリーズ、オリープシリーズ、アセトープシリーズ、ケミホープシリーズ等(ホープ製薬社製商品名)等が挙げられる。なかでも、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物からなる群から選ばれる一種以上であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保でき、さらに実使用に耐えうる硬化速度が得られやすいという点で好ましい。
【0036】
上記三フッ化ホウ素及び/又はその錯体は、三フッ化ホウ素、及び、三フッ化ホウ素とルイス塩基との錯体からなる化合物である。三フッ化ホウ素とルイス塩基との錯体からなる化合物の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が例示される。上記三フッ化ホウ素の錯体の中では、入手の容易さ及び配合のしやすさから、アルコール錯体又はアミン錯体が好ましく、特に、安定性と触媒活性を兼ね備えたアミン錯体が最も好ましい。
【0037】
上記三フッ化ホウ素のアミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ハンツマン社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式 HN(CNH)H(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物等の他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
三フッ化ホウ素アミン錯体は、市販されており本発明ではそれらを用いることもできる。市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が挙げられる。
【0039】
上記硬化促進剤(D)の添加量は、所望の硬化速度に応じて便宜調整すればよいが、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜7.5質量部がより好ましく、0.05〜5.0質量部が特に好ましい。例示した硬化促進剤(D)は、それぞれ活性が異なるため、一般的に触媒活性の低い有機金属化合物は比較的多くの添加量が必要であり、触媒活性の高い化合物(例えば、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体)は比較的少量の添加で硬化を促進させることができる。また、上記硬化促進剤(D)は、所望の性能に合わせて、1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0040】
[その他の成分について]
本発明に係る湿気硬化性樹脂組成物中には、本発明に係る効果に影響を与えない範囲で、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、親水性または疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填剤、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、上記アミノシラン化合物(C)以外のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
【0041】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、1液性としても2液以上の多液性としても使用することができるが、どの場合においても、水分の存在下で、架橋性シリル基同士が縮重合することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性シリコーン系樹脂が硬化するのである。
【0042】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。特に、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物を主体とすることで、硬化物の柔軟性に富んだ組成物を提供することができるため、被着材への動的追従性が求められるようなシーラントまたは接着組成物などの用途に好適に用いることができる。なお、「主体」とは、該組成物が硬化する際の架橋ネットワーク構造において、該硬化性シリコーン系樹脂組成物の架橋性シリル基の縮合による架橋ネットワーク構造が主たる構成成分となることを意味する。
【0043】
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性樹脂組成物に対して、さらに粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。また、弱粘着性が求められる用途には、粘着付与樹脂を用いず粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)の準備]
(硬化性シリコーン系樹脂A−1)
硬化性シリコーン系樹脂A−1として、エクセスターG3440ST(旭硝子社製商品名、分子内にトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン化合物)を準備した。
【0046】
(硬化性シリコーン系樹脂A−2)
硬化性シリコーン系樹脂A−2として、SAT200(カネカ社製商品名、分子内にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン化合物)を準備した。
【0047】
(硬化性シリコーン系樹脂A−3)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、平均分子量10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(PMLS4012に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。
さらに上記シラン化合物SE−1(8.90質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−1中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−1中の第二級アミノ基とを反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体であり、トリメトキシシリル基が、ウレタン結合、活性水素が1個置換されたウレア結合を含む結合官能基を介して結合されている硬化性シリコーン系樹脂A−3を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0048】
(硬化性シリコーン系樹脂A−4)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−2を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、平均分子量10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及び17%オクトープZr(ホープ製薬社製商品名、PMLS4012に対してZr金属換算で20ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−2を得た。
さらに上記シラン化合物SE−2(8.39質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−2中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−2中の第二級アミノ基とを反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体であり、メチルジメトキシシリル基が、ウレタン結合、活性水素が1個置換されたウレア結合を含む結合官能基を介して結合されている硬化性シリコーン系樹脂A−4を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0049】
[トリアルキルシリルボラート化合物(B)の準備]
(トリアルキルシリルボラート化合物B−1)
トリアルキルシリルボラート化合物B−1として、トリス(トリメチルシリル)ボラートを準備した。
【0050】
[アミノシラン化合物(C)の準備]
(アミノシラン化合物C−1)
アミノシラン化合物C−1として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0051】
[硬化促進剤(D)の準備]
(硬化促進剤D−1)
硬化促進剤D−1として、ネオスタンU−220H(日東化成社製商品名、ジブチルスズ系化合物)を準備した。
【0052】
(硬化促進剤D−2)
硬化促進剤D−2として、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体を準備した。
【0053】
(実施例)
表1及び表2に示す配合割合(質量部)で、硬化性シリコーン系樹脂(A)、トリアルキルシリルボラート化合物(B)、アミノシラン化合物(C)、硬化促進剤(D)を反応容器に投入し、減圧下で10分混練することで、各硬化性シリコーン系樹脂組成物を得た。得られた硬化性シリコーン系樹脂組成物をそれぞれ密閉容器に充填し、50℃で3日間静置した。50℃3日間静置後でも容器内でのゲル化は起こっていなかった。各硬化性シリコーン系樹脂組成物を、23±2℃相対湿度50±5%の条件下で1ヶ月以上硬化させた後、各硬化物のショアA硬度を測定した。それぞれのショアA硬度を表1及び表2に示す。

【0054】
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A−1 100 − − −
A−2 − 100 − −
A−3 − − 100 −
A−4 − − − 100
B−1 3.0 3.0 3.0 3.0
C−1 3.0 3.0 3.0 3.0
D−1 1.0 1.0 − −
D−2 − − 0.010 0.010
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ショアA硬度 21 9 18 29
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
但し、実施例3、4において、D−2は、予め表に記載の質量割合でC−1に溶解させたものを添加した。

【0055】
表2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1 比較例2 比較例3 比較例4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A−1 100 − − −
A−2 − 100 − −
A−3 − − 100 −
A−4 − − − 100
C−1 3.0 3.0 3.0 3.0
D−1 1.0 1.0 − −
D−2 − − 0.010 0.010
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ショアA硬度 36 21 32 50
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
但し、比較例3、4において、D−2は、予め表に記載の質量割合でC−1に溶解させたものを添加した。

【0056】
表1及び表2の結果から、本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、トリス(トリメチルシリル)ボラートが配合されていることから、硬化物に柔軟性が付与されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る硬化性シリコーン系樹脂組成物は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記一般式(1)で表される架橋性シリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)を100質量部、トリアルキルシリルボラート化合物(B)を0.01〜30質量部、含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
−SiR(R3−a ・・・式(1)
(但し、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基を、Rは加水分解性基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
【請求項2】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の架橋性シリル基が、トリアルコキシシリル基(a=0かつRがアルコキシル基)であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖が、ポリオキシアルキレンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖と架橋性シリル基との結合官能基が、ウレタン結合及び/又は尿素結合を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
トリアルキルシリルボラート化合物(B)が、トリス(トリメチルシリル)ボラートであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(C)を0.1〜30質量部含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化を促進させる硬化促進剤(D)を0.001〜10質量部含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化促進剤(D)が、ハロゲン化ホウ素化合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。


【公開番号】特開2011−46755(P2011−46755A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193733(P2009−193733)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】