説明

硬化性フルオロポリエーテル系コーティング剤組成物

【課題】シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与える硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物を提供する。
【解決手段】下記成分
(A)1分子中に少なくとも2個のイソプロペノキシシリル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、
(B)アミノ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(C)エポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(D)硬化触媒
を含有する硬化性フルオロポリエーテル系コーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与える硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、含フッ素有機化合物は各種分野で使用されており、例えば、特許第3121245号公報には、パーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロポリエーテル基を有し、末端に加水分解性基を有する含フッ素有機ケイ素化合物の製造方法及びそれを含有する室温硬化性組成物について示されており、該組成物は耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、撥水性、撥油性、耐候性等に優れている上、気体透過性が低く、防湿コーティング剤として優れたものであることが示されている。しかし、該組成物は、シリコーンゴム等に接着しないという問題があった。
【0003】
また、特開2004−331704号公報には、(a)1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物、(b)有機チタン酸エステル化合物、(c)有機スズ化合物、及び(d)シラン化合物を必須成分とするプライマー組成物について示されており、該組成物は各種熱硬化型エラストマー組成物などに対するプライマーとして使用され、特に、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマーを主成分とする熱硬化型エラストマー組成物用のプライマー組成物として、金属、ガラス、セラミックス、セメント、モルタル等の無機材料や、カーボン、プラスチック等の有機材料からなる各種基材との接着に好適に使用されることが示されている。しかし、該組成物は、シリコーンゴムに良好に接着しないという問題があった。
【0004】
このような背景下、シリコーンゴム表面に、コーティングして、該表面の改質や薬品、溶剤に対するバリア性を付与することができる含フッ素有機化合物含有室温硬化性組成物の開発が強く望まれている。
【0005】
【特許文献1】特許第3121245号公報
【特許文献2】特開2004−331704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与える硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)1分子中に少なくとも2個のイソプロペノキシシリル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物に、接着助剤としての、(B)アミノ基を含有するカーボンファンクショナルシランと、(C)エポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシランの他、(D)硬化触媒を必須成分として添加した硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物が、シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与えることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物を提供する。
請求項1:
下記成分
(A)1分子中に少なくとも2個のイソプロペノキシシリル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、
(B)アミノ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(C)エポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(D)硬化触媒
を含有する硬化性フルオロポリエーテル系コーティング剤組成物。
請求項2:
(A)成分が下記一般式(1)
【化1】

[式中、Xは−CH2−,−CH2O−,−CH2OCH2−又は−Y−NR−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化2】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基、R1は水素原子、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、X’は−CH2−,−OCH2−,−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化3】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基であり、R1及びRは上記と同じである。Rfは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1、nは2又は3である。]
で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である請求項1記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。
請求項3:
(D)成分が有機スズ化合物、チタネート、グアニジル基含有化合物、DBU誘導体から選ばれる硬化触媒である請求項1又は2記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。
請求項4:
シール又はコーティング用途に使用される請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与える硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物のベースポリマーであり、1分子中に少なくとも2個のイソプロペノキシシリル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物である。
【0011】
ここで、パーフルオロポリエーテル構造としては、−Cg2gO−(式中、gは独立に1〜6の整数である。)の多数の繰り返し単位を含むもので、例えば、下記一般式で示されるもの等が挙げられる。
(Cg2gO)f
(式中、fは20〜600、好ましくは30〜400、より好ましくは30〜200の整数である。)
【0012】
上記式で示される繰り返し単位−Cg2gO−としては、例えば、下記の単位等が挙げられる。なお、上記パーフルオロポリエーテル構造は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0013】
−CF2O−,
−CF2CF2O−,
−CF2CF2CF2O−,
−CF(CF3)CF2O−,
−CF2CF2CF2CF2O−,
−CF2CF2CF2CF2CF2CF2O−,
−C(CF32O−。
これらの中では、特に、下記単位が好適である。
−CF2O−,
−CF2CF2O−,
−CF2CF2CF2O−,
−CF(CF3)CF2O−。
【0014】
また、イソプロペノキシシリル基は、水分と反応してシロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成することが可能な基であり、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するフルオロポリエーテル化合物の主鎖の末端部に直接結合していてもよいし、2価の連結基、例えば、−CH2−,−CH2O−又は−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH2−又は
【化4】

(o,m又はp位)
であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)等を介して結合していてもよい。
【0015】
この場合、イソプロペノキシシリル基は、直鎖状フルオロポリエーテル化合物1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜6個、更に好ましくは2〜4個有することが必須である。2個よりも少ないと硬化が不十分となる場合があり、また6個よりも多いとシリコーンゴムとの接着が不十分となる場合があるため好ましくない。
【0016】
このような(A)成分としては、下記一般式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物を挙げることができる。
【化5】

[式中、Xは−CH2−,−CH2O−,−CH2OCH2−又は−Y−NR−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化6】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基、R1は水素原子、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、X’は−CH2−,−OCH2−,−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化7】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基であり、R1及びRは上記と同じである。Rfは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1、nは2又は3である。]
【0017】
ここで、上記一般式(1)のRfとしては、下記一般式(i),(ii)で表される構造を有するものが好ましい。
【化8】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化9】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0018】
このような(A)成分としては、特に、下記一般式(2)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物が好適である。
【化10】

[式中、Xは−CH2−,−CH2O−,−CH2OCH2−又は−Y−NR−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化11】

(o,m又はp位)で示される基)
で表される基、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基、X’は−CH2−,−OCH2−,−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化12】

(o,m又はp位)で示される基)
で表される基であり、R1及びRは上記と同じである。aは独立に0又は1、Lは2〜6の整数、b及びcはそれぞれ0〜200の整数、nは2又は3である。]
【0019】
更に、一般式(2)の具体例として、例えば、下記式で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物が挙げられる。
【化13】

【化14】

【化15】

【0020】
このような(A)成分は、25℃における回転粘度計による粘度が500〜100,000mPa・sで、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレン換算重量平均分子量が5,000〜100,000であることが望ましい。粘度が500mPa・s未満の場合は、硬化後の皮膜の伸びが小さくなり、シリコーンゴムの弾性に追従できなくなるため好ましくなく、また、粘度が100,000mPa・sを超える場合は、高粘度となるため好ましくない。同様に、重量平均分子量が5,000未満の場合は、シリコーンゴムの弾性に追従できなくなるため好ましくなく、また、分子量が100,000を超える場合は、高粘度となるため好ましくない。
【0021】
[(B)成分]
(B)成分のアミノ基を含有するカーボンファンクショナルシランは、当該組成物の接着性を向上させる働きがある。具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−エチレンジアミノプロピルトリエトキシシラン、エチレンジアミノベンジルエチルトリメトキシシランなどが例示されるが、特にγ−エチレンジアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0022】
(B)成分の配合量は、通常(A)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜3.0質量部の割合で配合することが好ましい。0.1質量部よりも少ないと接着が不十分となる場合があり、また、5.0質量部よりも多いと硬化性が悪くなる場合があるため好ましくない。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分のエポキシ基を含有するエポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシランは、(B)成分と共に働き、当該組成物の接着性を向上させる働きがある。具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヒキシル)エチルトリメトキシシランなどが例示されるが、特にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0024】
(C)成分の配合量は、通常(A)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜3.0質量部の割合で配合することが好ましい。0.1質量部よりも少ないと接着が不十分となる場合があり、また、5.0質量部よりも多いと硬化性が悪くなる場合があるため好ましくない。
【0025】
本発明においては、(B)成分のアミノ基を含有するカーボンファンクショナルシランと(C)成分のエポキシ基を含有するエポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシランを併用することにより、シリコーンゴムに対する接着性が向上するため、この2種のカーボンファンクショナルシランの添加は必須である。
【0026】
ここで(B)成分と(C)成分との配合割合は、特に限定はされないが(B)成分/(C)成分が0.1/1.0〜1.0/0.1、好ましくは0.3/1.0〜1.0/0.3であり、(B)と(C)の合計配合量は、通常(A)成分の合計量100質量部に対して、0.3〜3.0質量部の割合で配合することが好ましい。
(B)成分/(C)成分が0.1/1.0よりも小さいと接着が不十分となる場合があり、また1.0/0.1よりも多いと接着が不十分となる場合があるため好ましくない。
(B)と(C)の合計配合量が(A)成分の合計量100質量部に対して、0.3質量部よりも少ないと接着が不十分となる場合があり、また3.0質量部よりも多いと硬化性が悪くなる場合があるため好ましくない。
なお、(B),(C)以外のカーボンファンクショナルシランを、本発明の目的を損なわない範囲において更に添加しても構わない。
【0027】
[(D)成分]
(D)成分の硬化触媒は、(A)成分中のイソプロペノキシシリル基と、イソプロペノキシシリル基と水分との反応により生成したシラノールとの縮合反応を促進する触媒である。具体例としては、有機スズ化合物、ジルコニウム化合物、チタネート、グアニジル基含有化合物、DBU誘導体などが例示されるが、特に、有機スズ化合物、チタネート、グアニジル基含有化合物、DBU誘導体が好ましい。
【0028】
有機スズ化合物としては、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート等のジブチルスズ誘導体、ジオクチルスズジラウレート等のジオクチルスズ誘導体等が例示される。
【0029】
また、チタネートとしては、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等が例示される。
【0030】
グアニジル基含有化合物としては、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0031】
そして、DBU誘導体としては、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−5−エン、又は1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)等が例示される。
【0032】
(D)成分の配合量は、触媒量とすることができるが、通常(A)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部の割合で配合することが好ましい。0.01質量部よりも少ないと硬化性が不十分となる場合があり、また、1.0質量部よりも多いと硬化スピードが速くなる場合があるため好ましくない。
【0033】
[その他の成分]
本発明の組成物においては、上記(A)〜(D)成分以外にも、必要に応じて各種フィラーを添加してもよい。
【0034】
フィラーは、機械的強度、熱安定性、耐候性、耐薬品性或いは難燃性を向上させたり、硬化時における熱収縮の減少、硬化して得られる弾性体の熱膨張率を低下させたり、ガス透過率を低下させる目的で添加されるが、主な目的は、機械的強度の向上である。
【0035】
このようなフィラーとしては、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、粉砕シリカ、炭酸カルシウム、珪藻土、カーボンブラック、各種金属酸化物粉末等を挙げることができ、また、これらを各種表面処理剤で処理したものであってもよい。中でも、機械的強度の向上の点からヒュームドシリカが好ましく、特に、分散性の向上の点からヒュームドシリカをシラン系表面処理剤で処理したものが好ましい。
【0036】
フィラーの添加量としては、(A)成分100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、特に、10〜60質量部が好ましい。1質量部よりも少ないと機械的強度等の十分な効果が得られない場合があり、また、200質量部より多いと機械的強度等の効果に影響を与えなくなる場合があるため添加する意味がなく好ましくない。
【0037】
更に、本発明の硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、必要に応じて適当な顔料、染料等を配合することもできる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、各種配合剤を添加することができる。
【0038】
本発明の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物の製造方法は、特に制限されず、上記各成分を公知のミキサーで混合することにより製造することができる。
【0039】
この組成物は、必要に応じて非水性有機溶媒で希釈した溶液として保存し、使用に供することができる。このような有機溶媒溶液の使用は、薄い硬化皮膜を形成する場合に好適であり、当該有機溶媒としては、フッ素系の有機溶剤が好適に使用でき、例えば、トリフロロベンゼン、メタキシレンヘキサフロライド等のフッ素系溶媒が好適である。これらは1種単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
この組成物のコーティング方法は、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等公知の方法が使用できる。
【0041】
また、この組成物の膜厚は、1〜1,000μm、特に10〜500μmの厚さでコーティングすることが好ましい。
【0042】
コーティングする基材であるシリコーンゴムとしては、付加架橋型シリコーンゴム、パーオキサイド架橋型シリコーンゴム等の何れも使用することができ、具体的にはKEシリーズとして信越化学工業(株)で市販されているもの等が使用されるが、これに限定されるものではない。
【0043】
この組成物を硬化させるには、該組成物を上記基材上にコーティングした後、通常10〜30℃程度で15〜60分程度空気中に放置し、空気中の水分と反応させることによって、容易に硬化させることができる。
【0044】
このようにして得られる本発明の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物は、シリコーンゴムに対する接着性に優れ、かつ耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、撥水性、撥油性、耐熱性、低透湿性にも優れた硬化物を与えるので、シリコーンゴム等の各種ゴム材の保護材、改質用コーティング材、電気、電子回路の防湿コーティング剤、コンフォーマルコーティング剤、LCD回りのシール剤、有機EL電極保護用コーティング剤、LED用コーティング材、光学用接着剤、燃料電池用コーティング剤、シール材、低沸点溶剤封入部品のシール剤、給水、排水管回りの防湿コーティング剤等、各種の用途に使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示す。
【0046】
[実施例1]
下記式で表されるポリマー(粘度24,500mPa・s、平均分子量16,000)100部にγ−エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン2.0部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.0部、テトラメチルグアニジノプロピルトリメトキシシラン0.5部、ヘキサフルオロメタキシレン160部およびエチルノナフルオロイソブチルエーテル40部を乾燥窒素下で混合し、粘稠液体の組成物Iを得た。
【化16】

【0047】
得られた粘稠液体の組成物Iを刷毛により、シリコーンゴム(信越化学工業(株)製 KE−1950)に塗布し、23℃/55%RH条件下で硬化させた。3日放置後にコーティング層を擦り、剥がれ具合を調べたところ、良好に接着していた。
【0048】
また、各種被着材に対しても同様に接着試験を行ったところ、良好に接着していた。結果を表1に示す。
【表1】

*)シリコーンゴム:信越化学工業(株)製 KE−1950
【0049】
[実施例2〜4、比較例1,2]
γ−エチレンジアミノプロピルトリメトキシシランの添加量とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの添加量のみ表2のように変化させる以外は、実施例1と同様にして粘稠液体の組成物II〜VIを得た。
得られた粘稠液体の組成物II〜VIのシリコーンゴムに対する接着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【表2】

*)シリコーンゴム:信越化学工業(株)製 KE−1950
【0050】
[実施例5]
実施例1のγ−エチレンジアミノプロピルトリエトキシシランの2.0部の代わりにγ−アミノプロピルトリメトキシシラン2.0部を添加する以外は、実施例1と同様にして粘稠液体の組成物VIIを得た。
得られた粘稠液体の組成物VIIの各種被着材に対する接着性を実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
【0051】
[実施例6]
実施例1のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.0部の代わりにβ−(3,4−エポキシシクロヒキシル)エチルトリメトキシシラン2.0部を添加する以外は、実施例1と同様にして粘稠液体の組成物VIIIを得た。
得られた粘稠液体の組成物VIIIの各種被着材に対する接着性を実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
【0052】
[実施例7]
実施例1のテトラメチルグアニジノプロピルトリメトキシシラン0.5部の代わりにジラウリルスズオクトエート0.3部を添加する以外は、実施例1と同様にして粘稠液体の組成物IXを得た。
得られた粘稠液体の組成物IXの各種被着材に対する接着性を実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
【表3】

*)シリコーンゴム:信越化学工業(株)製 KE−1950
**)JIS Z0208 カップ法により測定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分
(A)1分子中に少なくとも2個のイソプロペノキシシリル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、
(B)アミノ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(C)エポキシ基を含有するカーボンファンクショナルシラン、
(D)硬化触媒
を含有する硬化性フルオロポリエーテル系コーティング剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が下記一般式(1)
【化1】

[式中、Xは−CH2−,−CH2O−,−CH2OCH2−又は−Y−NR−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化2】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基、R1は水素原子、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、X’は−CH2−,−OCH2−,−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化3】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基)で表される基であり、R1及びRは上記と同じである。Rfは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1、nは2又は3である。]
で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である請求項1記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。
【請求項3】
(D)成分が有機スズ化合物、チタネート、グアニジル基含有化合物、DBU誘導体から選ばれる硬化触媒である請求項1又は2記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。
【請求項4】
シール又はコーティング用途に使用される請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性フルオロポリエーテル系コーティング組成物。

【公開番号】特開2009−286985(P2009−286985A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144320(P2008−144320)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】