説明

硬化性プリプレグ,その製造方法及び硬化方法

【課題】 短時間に安定して増粘でき、且つプリプレグシート保存中に樹脂が繊維質基材から流れ出すことがなく、更に被着体の形状が複雑な場合でも貼り付けてから硬化までの間に剥がれることがなく、プライマーの使用なしで高い接着強度を発現しうる硬化性プリプレグ,その製造方法及び硬化方法を提供すること。
【解決手段】 片面または両面に粘着剤層を有することを特徴とする硬化性プリプレグ並びに粘着剤をフィルム上に塗布し、粘着剤層を形成した後、その上に硬化性プリプレグ組成物を積層し、可視光及び/または近赤外光の照射により、硬化性プリプレグ組成物のみをBステージまで予備重合させて一体化することを特徴とする硬化性プリプレグの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、FRP成形,建築・土木分野等における構造物の補修,補強,防水等に使用する樹脂と繊維強化材及び/または充填材からなる成形用のシート状,ロール状,管状,筒状等、各種形状の硬化性プリプレグ,その製造方法及び硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】強度を必要とする成形品、建造物の構造材などに使用する繊維強化プラスチック(以下、FRPという。)は、ガラス繊維,カーボン繊維等の無機質または有機質の補強材とエポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂ともいう)などの、いわゆる熱硬化性樹脂を組み合わせたものが使用されている。例えば、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を用いて成形品、建造物等の補修を行なう場合、通常、過酸化物触媒による常温硬化が行われるが、完全に硬化するまで長時間を要する。硬化に時間がかかりすぎると作業性が低下するばかりか、揮発性を有する反応性モノマー(スチレンモノマーなど)が揮発するため、作業現場の大気汚染を招き、樹脂組成物の配合比率の変化による性能の低下,樹脂量の損失や引火等の危険性を招く。また、直接過酸化物触媒を取り扱うための危険、現場で過酸化物触媒をスポイトで量り、樹脂に混合するといった煩雑な操作を伴い、また温度によりゲル化時間が大きく異なるため、触媒量の加減が難しく、可使時間の調整に失敗するトラブルが多い。
【0003】これらの欠点を解決する手段として、樹脂中の揮発性モノマーを他の高沸点化合物に置き換えるなどして、現場の大気汚染や硬化性の改良がなされているが、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂系の過酸化物触媒による常温硬化系が完全に硬化するまでに長時間を要するという問題点や直接過酸化物触媒を取り扱うことによる危険性、過酸化物触媒添加操作の煩雑さ、可使時間の調整が難しいといった問題点は解決されていない。このような問題を解決するため特開平10−71661号公報に見られるように、不飽和ポリエステル樹脂をガラス繊維等に含浸させたものを金属増粘した光硬化型のプリプレグシートが提案されているが、従来の熱硬化性樹脂の増粘方法、例えば公知の技術である不飽和ポリエステル樹脂の酸化マグネシウム等による金属増粘やビニルエステル樹脂のイソシナネート増粘では、増粘に長時間を要し、しかも増粘状態の安定化が難しく、樹脂中のスチレンモノマーなどの反応性希釈剤がビニルエステル樹脂または不飽和ポリエステル樹脂の増粘反応に関与していないため、プリプレグシート保存中に樹脂が繊維質の基材から流れ出すなどの問題点があり、更にプリプレグシートを貼り付ける被着体の形状が複雑な場合、プリプレグシートを貼り付けて光硬化させるまでの間に剥がれてしまったり、プライマーを使用しないと接着強度が不十分となる問題点があった。また、熱硬化性プリプレグについても同様の問題点があり、プリプレグシートを貼り付けて熱硬化させるまでの間に剥がれてしまったり、プライマーを使用しないと接着強度が不十分となる問題を解決したものはなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした現状に鑑み、短時間で安定化された増粘反応ができ、且つプリプレグシート保存中に樹脂が繊維質の基材から流れ出すことがなく、更に被着体の形状が複雑な場合でもプリプレグシートを貼り付けて硬化させるまでの間に剥がれてしまうことがなく、プライマーを使用しなくても接着強度が十分に発現できる硬化性プリプレグ,その製造方法及び硬化方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、硬化性プリプレグ層の片面または両面に粘着剤層を有することを特徴とする硬化性プリプレグを提供するものである。本発明はまた、硬化性プリプレグ層の片面または両面に粘着剤層を有し、その硬化性プリプレグ層が(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)2種以上の紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜20重量部,(J)紫外線吸収剤0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、少なくとも1種の光重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなるものであることを特徴とする硬化性プリプレグを提供するとともに、硬化性プリプレグ層の片面または両面に粘着剤層または硬化性粘着剤層を有し、その硬化性プリプレグ層が(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜10重量部,(I2)熱重合開始剤0.01〜10重量部,(J)紫外線吸収剤:0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材:1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、熱重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなるものであることを特徴とする硬化性プリプレグを提供するものである。
【0006】さらに、本発明は、粘着剤をフィルム上に塗布することにより形成した粘着剤の層の上に、上記の硬化性プリプレグ組成物をその予備重合前の状態で積層した後、可視光及び/または近赤外光の照射により、硬化性プリプレグ組成物を予備重合させて一体化することを特徴とする硬化性プリプレグの製造方法並びに2種以上の光重合開始剤または光重合開始剤と熱重合開始剤とを含む硬化性粘着剤組成物を塗布することにより形成した硬化性粘着剤の層の上に上記の硬化性プリプレグ組成物をその予備重合前の状態で積層した後、可視光及び/または近赤外光の照射により、硬化性粘着剤及び硬化性プリプレグを予備重合させて一体化することを特徴とする硬化性プリプレグの製造方法を提供するとともに、前記の硬化性プリプレグに可視光及び/または近赤外光の照射により硬化させるか、または加熱することを特徴とする硬化性プリプレグの硬化方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】次に、本発明を詳細に説明する。本発明の硬化性プリプレグは、硬化性プリプレグ層の片面または両面に粘着剤層を有するものである。粘着剤層を形成する粘着剤としては、非硬化性粘着剤と硬化性粘着剤の何れもが使用できる。
【0008】本発明で使用される非硬化性粘着剤は、1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体であり、ラジカル重合性不飽和化合物としては、公知のものが使用でき、特に制限されるものではない。その具体例としては、スチレン、スチレンのα−,o−,m−,p−アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、ブタジエン,2,3−ジメチルブタジエン,イソプレン,クロロプレンなどのジエン類、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸n−プロピル,(メタ)アクリル酸i−プロピル,(メタ)アクリル酸n−ブチル,(メタ)アクリル酸sec−ブチル,(メタ)アクリル酸tert−ブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ネオペンチル,(メタ)アクリル酸イソアミル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸シクロペンチル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル,(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル,(メタ)アクリル酸イソボロニル,(メタ)アクリル酸アダマンチル,(メタ)アクリル酸アリル,(メタ)アクリル酸プロパギル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸ナフチル,(メタ)アクリル酸アントラセニル,(メタ)アクリル酸アントラニノニル,(メタ)アクリル酸ピペロニル,(メタ)アクリル酸サリチル,(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル,(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル,(メタ)アクリル酸ピラニル,(メタ)アクリル酸ベンジル,(メタ)アクリル酸フェネチル,(メタ)アクリル酸クレジル,(メタ)アクリル酸1,1,1−トリフルオロエチル,(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル,(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル,(メタ)アクリル酸パーフルオロ−i−プロピル,(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル,(メタ)アクリル酸クミル,(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル,(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル,(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−プロピルアミド,(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸アニリド,(メタ)アクリロイルニトリル,アクロレイン,塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,N−ビニルピロリドン,ビニルピリジン,酢酸ビニルなどのビニル化合物、シトラコン酸ジエチル,マレイン酸ジエチル,フマル酸ジエチル,イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,N−ラウリルマレイミド,N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物、N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0009】また、上記の1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体に、さらにビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などの公知のラジカル重合性樹脂を混合したものも、非硬化性粘着剤として挙げることができる。その混合量は、1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。混合量が5重量部未満では、硬化性が不十分であり、200重量部を超えると粘着性が不十分となる。
【0010】本発明で使用される硬化性粘着剤としては、(A)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物(以下「硬化性粘着剤組成物−1」と記す。),(D)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上のエポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のエポキシ基に反応可能な不飽和一塩基酸及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該エポキシ基の5〜100モル%に付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物(以下「硬化性粘着剤組成物−2」と記す。),(E)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上の不飽和一塩基酸及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のカルボキシル基及び/またはアミノ基に反応可能なエポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該カルボキシル基及び/またはアミノ基の反応可能な部分に対し5〜100モル%付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物(以下「硬化性粘着剤組成物−3」と記す。),(F)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上の水酸基を有するラジカル重合性不飽和化合物及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中の水酸基及び/またはアミノ基に反応可能なイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該水酸基及び/またはアミノ基の反応可能な部分に対し5〜100モル%付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物(以下「硬化性粘着剤組成物−4」と記す。)並びに(G)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上のイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のイソシアネート基に反応可能な水酸基及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該イソシアネート基の5〜100モル%に付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物(以下「硬化性粘着剤組成物−5」と記す。)を使用することができる。
【0011】上記(A)、(D)、(E)、(F)及び(G)成分の重合体に使用するラジカル重合性不飽和化合物としては、公知のものが使用でき特に制限されるものではない。その具体例としては、スチレン、スチレンのα−,o−,m−p−アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、ブタジエン,2,3−ジメチルブタジエン,イソプレン,クロロプレンなどのジエン類、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸−n−プロピル,(メタ)アクリル酸−i−プロピル,(メタ)アクリル酸−n−ブチル,(メタ)アクリル酸−sec−ブチル,(メタ)アクリル酸−ter−ブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ネオペンチル,(メタ)アクリル酸イソアミル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸シクロペンチル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル,(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル,(メタ)アクリル酸イソボロニル,(メタ)アクリル酸アダマンチル,(メタ)アクリル酸アリル,(メタ)アクリル酸プロパギル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸ナフチル,(メタ)アクリル酸アントラセニル,(メタ)アクリル酸アントラニノニル,(メタ)アクリル酸ピペロニル,(メタ)アクリル酸サリチル,(メタ)アクリル酸フリル,(メタ)アクリル酸フルフリル,(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル,(メタ)アクリル酸ピラニル,(メタ)アクリル酸ベンジル,(メタ)アクリル酸フェネチル,(メタ)アクリル酸クレジル,(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル,(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル,(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル,(メタ)アクリル酸パーフルオロ−i−プロピル,(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル,(メタ)アクリル酸クミル,(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル,(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル,(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド,(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−プロピルアミド,(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸アニリド,(メタ)アクリロイルニトリル,アクロレイン,塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,N−ビニルピロリドン,ビニルピリジン,酢酸ビニルなどのビニル化合物、シトラコン酸ジエチル,マレイン酸ジエチル,フマル酸ジエチル,イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,N−ラウリルマレイミド,N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物、N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0012】上記(D)、(E)、(F)及び(G)成分の重合体では、官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物、即ち、エポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物,不飽和一塩基酸,水酸基を有するラジカル重合性不飽和化合物,アミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物またはイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を使用する。エポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が挙げられ、不飽和一塩基酸としては、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、o,m,p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル,アルコキシル,ハロゲン,ニトロ,シアノ置換体などのモノカルボン酸などが挙げられる。
【0013】水酸基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、公知のものを使用することができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類が挙げられ、アミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。イソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、メタクリロイルイソシアネート(日本ペイント(株)製)、イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工(株)製)等が挙げられる(詳細は特開平11−228688号公報、特開平11−228689号公報に記載がある。)。これらの官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、ラジカル重合性不飽和基が1個のものが望ましい。
【0014】また、共重合体中の官能基と、当該官能基と反応可能な官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物中の官能基、との付加反応により、ラジカル重合性不飽和基を導入するに際には、上記の官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物に加えてラジカル重合性不飽和結合を2個以上有する化合物を含めることができる。前記(D)、(E)、(F)及び(G)成分中の共重合体中の官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物の使用量は、共重合体を構成するモノマーの内の5以上であるのが望ましく、5モル%に満たないと硬化性が十分に発現できない。前記(D)、(E)、(F)及び(G)成分中の共重合体中の官能基に付加反応させる、当該官能基と反応可能な官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物の使用量は、共重合体中の当該官能基に対し5〜100モル%であるのが望ましい。5モル%に満たないと硬化性が十分に発現できない。
【0015】前記(A)、(D)、(E)、(F)及び(G)成分の重合体を得る為の(共)重合反応としては、公知の溶液重合法が適用され、モノマーと開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して重合反応を行なってもよいし、重合開始剤を添加したモノマーを昇温、攪拌した溶剤中に滴下してもよい。また、溶剤中に重合開始剤を添加し昇温した中にモノマーを滴下してもよい。反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0016】使用する溶剤は、ラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。その具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート,ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート,カルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルカルビトール,エチルカルビトール,ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、1,4−ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン,トルエン,キシレン,オクタン,デカン等の炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、乳酸メチル,乳酸エチル,乳酸ブチル等の乳酸エステル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独または2種以上を併用してもよい。そして溶剤の使用量は樹脂分100重量部に対し、30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。この範囲外では分子量の制御が困難となる。
【0017】また、(共)重合に使用するラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば、特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物を使用することができる。その具体例としては、公知のケトンパーオキサイド,パーオキシケタール,ハイドロパーオキサイド,ジアリルパーオキサイド,ジアシルパーオキサイド,パーオキシエステル,パーオキシジカーボネートに分類されるものであり、またアゾ化合物も有効である。さらに具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5ージメチルー2,5ービス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドなどが挙げられる。重合温度に応じて適当な半減期のラジカル開始剤を選択する。重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性不飽和化合物の合計100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0018】共重合体中の官能基と反応可能な官能基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加させてラジカル重合性不飽和基を導入するための反応は、公知の方法で行なうことができ、共重合反応終了後、夫々の反応触媒存在下、加温して付加反応を行なう。例えば、共重合体中のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加する反応、共重合体のカルボキシル基にエポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応は、触媒の存在下、80〜130℃程度の温度で攪拌して行う。共重合体中のエポキシ基にアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応、共重合体中のアミノ基にエポキシを有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応、共重合体中のイソシアネート基にアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応、共重合体中のアミノ基にイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応は、60〜130℃程度の温度で攪拌して行う。共重合体中のイソシアネート基に水酸基を有するラジカル重合性不飽和化合物を付加する反応、共重合体中の水酸基にイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物付加する反応は、触媒の存在下、60〜130℃程度の温度で攪拌して行う。
【0019】本発明で(B)成分として使用する、ラジカル重合性不飽和化合物としては、(A)、(D)、(E)、(F)及び(G)成分の重合体の製造に使用するラジカル重合性不飽和化合物として前記した化合物が挙げられ、更にビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAジプロポキシジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクルレート,エチレングチコールジ(メタ)アクリレート,プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,ノナンジオールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類など多官能のモノマー類や更にビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などの公知のラジカル重合性樹脂も挙げることができる。
【0020】(B)成分の1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の使用量は、(A)成分に混合する場合(前記硬化性粘着剤組成物−1)は、(A)成分100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部である。この量が5重量部未満では、硬化性が不十分であり、300重量部を超えると粘着性が不十分となる。一方、ラジカル重合性不飽和基を導入した重合体、即ち(D)、(E)、(F)及び(G)成分に対しても、(B)成分の1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物を混合することができる(前記硬化性粘着剤組成物−2〜5)が、その使用量は(D)、(E)、(F)又は(G)成分100重量部に対して300重量部までであり、この量が300重量部を越えると粘着性が不十分となる。
【0021】本発明に使用する硬化性粘着剤における(C)成分の重合開始剤は、紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤の1種類あるいは2種類以上,熱重合開始剤,あるいは紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と熱重合開始剤を組み合わせたものであるのが好ましい。したがって、本発明の硬化性プリプレグにおける硬化性粘着剤は、■重合開始剤が紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する1種類の光重合開始剤である光硬化性粘着剤,■重合開始剤が紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する少なくとも2種の光重合開始剤であって、かつ粘着剤組成物中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、少なくとも1種の光重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる光硬化性粘着剤、■重合開始剤が熱重合開始剤である熱硬化性粘着剤,あるいは■重合開始剤が紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と熱重合開始剤であって、かつ粘着剤組成物中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、熱重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる熱硬化性粘着剤、の何れかである。
【0022】硬化性粘着剤に2種類以上の光重合開始剤を用いる場合には、500nm以上の波長の可視光あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と、500nm未満の可視光及び/または紫外光領域に感光性を有する光重合開始剤とを組み合わせて使用するのが好ましい。また、硬化性粘着剤に光重合開始剤と熱重合開始剤とを組み合わせて使用する場合の光重合開始剤としては、500nm以上の波長の可視光あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤を使用するのが好ましい。光重合開始剤及び熱重合開始剤は、後記の硬化性プリプレグ層に含まれる重合開始剤と同様であるので、詳細についてはここでは省き、後記の硬化性プリプレグ層組成物中の重合開始剤の説明の部分に詳述する。
【0023】光硬化性粘着剤組成物の場合、紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤の使用量は、樹脂等100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部である。光重合開始剤の使用量が0.01重量部未満では増粘反応や増粘後の重合が不十分になり易く、また20重量部を越える量では硬化物の強度が不足する。熱硬化性粘着剤組成物の場合、熱重合開始剤の使用量(但し、紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と熱重合開始剤とを組み合わせて使用する場合はその合計使用量)は、樹脂等100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部である。重合開始剤の使用量が0.01重量部未満では増粘反応や増粘後の重合が不十分になり易く、また20重量部を越える量では硬化物の強度が不足する。
【0024】Bステージ化(予備重合)反応用の光重合開始剤とBステージ化物を本硬化させる光重合開始剤とを組み合わせて使用する場合、その組成比は、重量比で0.1/5〜5/0.1、好ましくは0.5/5〜5/0.5である。Bステージ化用光重合開始剤と本硬化用光重合開始剤の比が0.1/5未満では、光硬化性粘着剤組成物にBステージ化用光重合開始剤の感光波長の光照射をしても増粘反応が進まない場合があり、一方前記比が5/0.1を越える量では増粘反応が進みすぎてしまう場合がある。Bステージ化反応用の光重合開始剤とBステージ化物を本硬化させる熱重合開始剤とを組み合わせて使用する場合、その組成比は、重量比で0.1/5〜5/0.1、好ましくは0.5/5〜5/0.5である。Bステージ化用光重合開始剤と本硬化用熱重合開始剤の比が0.1/5未満では、熱硬化性粘着剤組成物にBステージ化用光重合開始剤の感光波長の光照射をしても増粘反応が進まない場合があり、一方前記比が5/0.1を越える量では増粘反応が進みすぎてしまう場合がある。
【0025】本発明の硬化性プリプレグは、硬化性プリプレグ層の片面又は両面に上記のような粘着剤層を有するものである。また、使用する粘着剤としては、上記のもの以外に、従来の共重合組成物中に水酸基、カルボキシル基、エポキシ基を導入し、イソシアネート、エポキシ化合物等を架橋剤として用いるものや、ゴム系粘着剤などの公知の粘着剤も挙げることができる。硬化性プリプレグ層は、(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)2種以上の紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜20重量部,(J)紫外線吸収剤0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、少なくとも1種の光重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなるものであるか、あるいは(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜10重量部,(I2)熱重合開始剤0.01〜10重量部,(J)紫外線吸収剤0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、熱重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなるものである。また、上記のプリプレグ以外に、従来の酸化マグネシウム等の金属増粘やイソシアネート増粘によるプリプレグを使用することも可能である。
【0026】(H)成分の不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂(以下、両樹脂を併せて樹脂等と呼ぶこともある)のうち、その原料として用いられる不飽和ポリエステルとしては、公知の方法により製造されるものでよく、具体的には無水フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,テトラヒドロフタル酸,アジピン酸,セバチン酸等の重合性不飽和結合を有していない飽和多塩基酸またはその無水物とフマル酸,無水マレイン酸,マレイン酸,イタコン酸等の活性不飽和結合を有している不飽和多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノ−ル、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等の多価アルコ−ルをアルコ−ル成分として反応させて製造されるものである。
【0027】またビニルエステル樹脂としては、公知方法により製造されるものであってよく、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる樹脂、あるいは飽和ジカルボン酸及び/または不飽和ジカルボン酸と多価アルコ−ルから得られる末端カルボキシル基の飽和ポリエステルまたは不飽和ポリエステルとα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0028】末端カルボキシルポリエステルに用いる飽和ジカルボン酸としては、活性不飽和基を有していないジカルボン酸、例えばフタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,テトラヒドロフタル酸,アジピン酸,セバチン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、活性不飽和基を有しているジカルボン酸,例えばフマル酸,マレイン酸,無水マレイン酸,イタコン酸等が挙げられる。多価アルコ−ル成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の多価アルコールが挙げられる。
【0029】ビニルエステルの製造に用いるα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレートが代表例として挙げられる。
【0030】樹脂等に用いられる不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタンアクリレートは、不飽和度の比較的高いものが好ましく、不飽和基当量(不飽和基1個当たりの分子量)が100〜800程度のものを用いる。不飽和基当量が100未満のものは合成できない。しかし不飽和基当量が800を超えると高硬度の硬化物が得られない。
【0031】本発明において使用される不飽和ポリエステル樹脂,ビニルエステル樹脂は、前記の不飽和ポリエステル,ビニルエステルにスチレンモノマ−に代表される不飽和基を有するモノマーを配合したものであり、本発明の樹脂等に配合される不飽和基を有するモノマーは、複合材料を製造する際に繊維強化材及びフィラーとの混練性,含浸性を高め、かつ成形製品の硬度,強度,耐薬品性,耐水性等を向上させるために重要であり、不飽和ポリエステルあるいはビニルエステル100重量部に対して10〜250重量部、好ましくは20〜100重量部使用される。使用量が10重量部未満では、高粘度のため成形が困難となり、250重量部を超える量では、高硬度の製品が得られず、耐熱性が不足し、FRP材料として好ましくない。スチレンモノマー以外の不飽和基を有するモノマーとしては、クロルスチレン,ビニルトルエン,ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマーや、メチル(メタ)アクリレ−ト,エチル(メタ)アクリレート,n―ブチル(メタ)アクリレート,エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーなどがあり、本発明の主旨を損なわない範囲で代替し、使用することも可能である。
【0032】次に、本発明の硬化性粘着剤及び硬化性プリプレグ組成物で使用される重合開始剤である光重合開始剤及び熱重合開始剤について説明する。500nm以上の波長の可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤としては、一般式(1)
+ ・ A- ・・・(1)
〔式中、D+ は可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有するメチン,ポリメチン,シアニン,キサンテン,オキサジン,チアジン,アリールメタン及びピリリウム系色素陽イオンのうちの少なくとも1種であり、A- は各種陰イオンを示す。〕で表される陽イオン染料と、一般式(2)
【0033】
【化2】


【0034】〔式中、Z+ は任意の陽イオンを示し、R1 ,R2 ,R3 及びR4 はそれぞれ独立してアルキル基,アリール基,アシル基,アラルキル基,アルケニル基,アルキニル基,シリル基,複素環基,ハロゲン原子,置換アルキル基,置換アリール基,置換アシル基,置換アラルキル基,置換アルケニル基,置換アルキニル基,置換シリル基または置換複素環基を示す。)で表される有機ホウ素系化合物を組み合わせた光重合開始剤が好ましい。
【0035】また一般式(2)における陽イオン「Z+ 」の例としては、可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有しない4級アンモニウム陽イオン、4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イオン、ジアゾニウム陽イオン、テトラゾリウム陽イオン、スルホニウム陽イオン、オキソスルホニウム陽イオン、ナトリウム,カリウム,リチウム,マグネシウム,カルシウム等の金属陽イオン、フラビリウム,ピラニウム塩等の酸素原子上に陽イオン電荷を持つ(有機)化合物、トロピリウム,シクロプロピリウム等の炭素陽イオン、ヨードニウム等のハロゲニウム陽イオン、砒素,コバルト,パラジウム,クロム,チタン,スズ,アンチモン等の金属化合物の陽イオン等が挙げられる。この有機ホウ素化合物と可視光領域あるいは近赤外光領域に感光波長を有するカチオン色素とを組み合わせることによって、感光領域の波長の光照射を受けた色素が励起され、有機ホウ素化合物と電子授受を行うことで色素が消色すると共にラジカルが発生し、共存する重合性不飽和化合物の重合反応が起こる。この重合反応では、従来の紫外線重合反応などと異なり、発生ラジカルをコントロールしやすく、樹脂中の不飽和基の一部をラジカル重合したところで容易に止めることが出来る。また、可視光領域あるいは近赤外光領域の長波長を使用するため、充填材や顔料などが添加された系でも容易に反応を進めることができるという特徴を持っている。
【0036】上記陽イオン染料とホウ素系化合物との組み合わせの例については、特開平3−111402号公報、特開平3−179003号公報、特開平4−146905号公報、特開平4−261405号公報、特開平4−261406号公報、特開平5−194619号公報などに詳細な記載がある。陽イオン染料の「D+ 」の具体例を第1表及び第2表に示す。これらの陽イオン染料の中でも好ましくはシアニン系,スチリル系陽イオン染料及びトリアリールメタン系染料が使用される。シアニン系,スチリル系陽イオン染料は、一般に有機ホウ素系化合物との電子授受が起こりやすいので本発明の反応を容易に起こしやすいなどの点で好ましい。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】
【表3】


【0040】
【表4】


【0041】一般式(1)で表される陽イオン染料のカウンターアニオンであるA- は、p−トルエンスルホネートイオン,有機カルボキシレートイオン,パークロレートイオン,ハライドイオン等の任意の陰イオンであるが、一般式(3)
【0042】
【化3】


【0043】〔式中、R5 ,R6 ,R7 及びR8 は、それぞれ独立してアルキル基,アリール基,アシル基,アラルキル基,アルケニル基,アルキニル基,シリル基,複素環基,ハロゲン原子,置換アルキル基,置換アリール基,置換アシル基,置換アラルキル基,置換アルケニル基,置換アルキニル基,置換シリル基または置換複素環基を示す。〕で表される4配位ホウ素陰イオンが特に好ましい。本発明の有機ホウ素化合物と近赤外光あるいは可視光吸収性陽イオン染料化合物との組成比は、重量で1/5〜1/0.0 5、好ましくは1/1〜1/0.1である。色素の消色反応及びラジカル発生効率の観点から、一般には有機ホウ素化合物を陽イオン染料よりも多く用いることが好ましい。
【0044】可視光領域に感光性を有する可視光重合開始剤としては、例えば山岡等、 表面 、27(7)、548(1989)、佐藤等、「第3回ポリマー材料フォーラム要旨集」、IBP18(1994)に記載の、カンファーキノン,ベンジルトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド,メチルチオキサントン,ジシクロペンタジエニルチタニウム−ジ(ペンタフルオロフェニル)等の単独の可視光重合開始剤の他、有機過酸化物/色素系,ジフェニルヨードニウム塩/色素,イミダゾール/ケト化合物,ヘキサアリールビイミダゾール化合物/水素供与性化合物,メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩,金属アレーン/シアニン色素など特公昭45―37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤等の公知の複合開始剤系などを挙げることができる。
【0045】また、紫外光領域から可視光領域まで感光性を有する開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物が有効である。その具体例としては、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−ビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,2−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−ドデシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−ビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−メトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジフェニルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−フェニル−6−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジブロムベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,8−ジメチルナフタリン−1−カルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1,3−ジメトキシナフタリン−2−カルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステルなどを挙げることができる。
【0046】具体的には、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名イルガキュア−1700(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュアー184、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名イルガキュアー1800(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、50%/50%の割合で混合された商品名イルガキュアー1850(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名:イルガキュアー819、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO、BASF(株)製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)と2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO、BASF(株)製)を50%/50%の割合で混合された商品名:Darocur4265などがある。可視光開始剤としては380nm〜780nmの波長域に感光性を有する光重合開始剤であればよく、それらを組み合わせて使用してもよい。また、紫外線重合開始剤としては、前記の(ビス)アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤の他,アセトフェノン系,ベンジルケタール系をはじめとする公知の重合開始剤を使用することができるが、短波長の紫外線ではFRP構成での光透過性が低いことから、比較的長波長、好ましくは300nm以上の波長域に感光性を有する(ビス)アシルホスフィンオキサイド系等の紫外線重合開始剤を使用することが好ましい。
【0047】本発明で使用される熱重合開始剤は、加熱によりラジカルを発生する有機過酸化物触媒、アゾ化合物などであり、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ービス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドなどが使用できる。保存安定性が良好でジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどは特に有効である。
【0048】光硬化性プリプレグ組成物の場合、紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する少なくとも2種の光重合開始剤の使用量は、樹脂等100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部である。光重合開始剤の使用量が0.01重量部未満では増粘反応や増粘後の重合が不十分になり易く、また20重量部を越える量では硬化物の強度が不足する。Bステージ化(予備重合)反応用の光重合開始剤とBステージ化物を本硬化させる光重合開始剤とを併用する場合、その組成比は、重量比で0.1/5〜5/0.1、好ましくは0.5/5〜5/0.5である。Bステージ化用光重合開始剤と本硬化用光重合開始剤の比が0.1/5未満では、光硬化性プリプレグ組成物にBステージ化用光重合開始剤の感光波長の光照射をしても増粘反応が進まない場合があり、一方前記比が5/0.1を越える量では増粘反応が進みすぎてしまう場合がある。
【0049】熱硬化性プリプレグ組成物の場合、紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と熱重合開始剤の使用量は、何れも、樹脂等100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜7重量部である。それらの使用量が0.01重量部未満では増粘反応や増粘後の重合が不十分になり易く、また10重量部を越える量では硬化物の強度が不足する。Bステージ化反応用の光重合開始剤とBステージ化物を本硬化させる熱重合開始剤とを併用する場合、その組成比は、重量比で0.1/5〜5/0.1、好ましくは0.5/5〜5/0.5である。Bステージ化用光重合開始剤と本硬化用熱重合開始剤の比が0.1/5未満では、熱硬化性プリプレグ組成物にBステージ化用光重合開始剤の感光波長の光照射をしても増粘反応が進まない場合があり、一方前記比が5/0.1を越える量では増粘反応が進みすぎてしまう場合がある。
【0050】本発明の硬化性プリプレグ組成物に(K)成分として使用される繊維強化材は、有機及び/または無機繊維であり、例えばガラス繊維,炭素繊維,アラミド繊維,ポリエチレンテレフタレート繊維,ビニロン繊維,ポリエステル繊維,アミド繊維,金属繊維,セラミック繊維などの公知のものが使用され、マット,クロス,不織布などの形状のものであってよい。もちろん、これらの繊維を二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの強化材の中で、本発明においては特にガラス繊維や有機繊維が望ましく、施工性などを考慮するとマット状のものが好適である。繊維強化材の使用量は、(H)成分の樹脂100重量部に対して、1〜400重量部、好ましくは10〜200重量部である。この使用量が400重量部を超えると、樹脂含浸が不充分になる。
【0051】同じく(K)成分として使用される充填材は、無機質充填剤,有機質充填剤またはポリマーであり、無機質充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム,炭酸カルシウム,タルク,クレー,ガラス粉,シリカ,硫酸バリウム,酸化チタン,セメントなどの公知のものが使用されるが、硬化性プリプレグ組成物に難燃性を付与する場合は、水酸化アルミニウムが有効である。むろん、これらの無機質フィラーを組み合わせて使用することもできる。無機質充填剤の使用量は、樹脂100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは100〜200重量部である。無機充填材が300重量部より多い場合、粘度が高すぎて作業性が低下し、泡が残りやすく強度が低下する。 繊維強化材及び又は充填材の使用量は、(H)成分の樹脂100重量部に対して、1〜400重量部、好ましくは10〜200重量部である。この使用量が400重量部を超えると、樹脂含浸が不充分になる。さらに本発明では、公知の方法で揺変性を付与してもよく、揺変剤としては、例えばシリカパウダー(エアロジルタイプ),マイカパウダー,炭酸カウシウムパウダーなどを重合性不飽和化合物100重量部に対して0.1〜50重量部添加する方法などがある。
【0052】有機充填材またはポリマーとしては、低収縮剤としても効果のある、例えば公知のポリスチレン,ポリ酢酸ビニル,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレン,ポリ塩化ビニリデンマイクロバルーン,ポリアクリロニトリルマイクロバルーン等が使用できる。低収縮剤として使用する場合のその使用量は樹脂100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは0〜30重量部である。低収縮剤の使用量が40重量部を越える量には、粘度が高くなりすぎて成形性が低下すると共に、硬化物表面の平滑性、耐熱性が低下する。本発明において顔料を使用することができる。その種類の制限は特になく、有機顔料及び無機顔料が使用可能である。その時の配合量は、樹脂100重量部に対し、多くとも20重量部、好ましくは10重量部までの量である。
【0053】本発明の硬化性プリプレグ組成物には、(J)成分として紫外線吸収剤を使用することができ、かかる紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系,サリチル酸エステル系,ベンゾトリアゾール系,ベンゾエート系,シアノアクリレート系などの公知のものを使用することが出来る。具体的には、ベンゾフェノン系として2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−o−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−i−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5,5’−ジスルホベンゾフェノン−ジ−ソジウム、2−ヒドロキシ−4(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、サリチル酸エステル系としてフェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾトリアゾール系として2(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾエート系として2’,4’−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、シアノアクリレート系としてエチル−2−シアノ−3,5−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。紫外線吸収剤の使用量は樹脂等100重量部に対して5重量部以内である。紫外線吸収剤の使用量が5重量部を越える量では、物性低下を招く。また、これらの紫外線吸収剤に、ラジカル例えばアルキルラジカルや過酸化物ラジカルを捕獲し安定化する公知のヒンダードアミン系の安定剤を併用することもできる。公知のものとしてはヒンダードされたピペリジン環を持った構造のものが一般的である。
【0054】また、本発明においては水酸化アルミニウム以外に、ハロゲン系、リン系などの公知の難燃剤を使用することができる。
【0055】本発明の粘着剤層付き硬化性プリプレグは、その上下をフィルムで被覆してシート状の硬化性プリプレグとすることもできる。このようなシート状の硬化性プリプレグの製造に使用するフィルムとしては、ビニロンフィルム,PETフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルム,アルミ箔,剥離紙など、公知のものが使用できる。これらのフィルムには透明なタイプまたは着色したタイプが使用できる。また、フィルムのずれを防止するためにはエンボス加工を施したものも有効である。粘着剤層に使用するフィルムとしては剥離紙が有効である。また光硬化性プリプレグの場合、透明なフィルムを使用した上に、さらに遮光のためのフィルムを併用することが望ましい。光を完全に遮断するフィルムでもよいが、作業上肉眼で下地が見えるセロハンや着色フィルムなどのプリプレグ中に存在する光重合開始剤の感光波長域の光をできるだけ通さないフィルムが望ましい。
【0056】本発明の硬化性プリプレグを製造する場合、粘着剤層を形成後、その上に硬化性プリプレグ層を形成させて一体化させてもよいし、硬化性プリプレグ層を形成後、その上に粘着剤層を形成させて一体化してもよい。具体的には、例えば粘着剤組成物が溶剤に希釈されている場合、フィルム上に塗布して溶剤を揮発させて粘着剤層を形成後、その上に硬化性プリプレグ組成物を積層して可視光及び/または近赤外光を照射して硬化性プリプレグ組成物をBステージ化させる。粘着剤層の形成方法としては、溶剤を揮発させるか、可視光及び/または近赤外光を照射してBステージ化させる方法があるが、粘着剤層のBステージ化と硬化性プリプレグ層のBステージ化とは、別個に行っても同時に行っても良い。また、粘着剤層は、プリプレグ全面に形成させてもよいし、部分的に形成させてもよい。粘着剤に部分的に付いたプリプレグとすることもできる。
【0057】本発明において、紫外光とは280〜380nm、可視光とは380〜780nm、近赤外光とは、780〜1200nmの波長領域の光線を指す。本発明において、樹脂等のBステージ化反応のプリプレグ製造に使用される光源としては、光重合開始剤の感光波長域に分光分布を有する光源であれば良く、例えば近赤外ランプ,ナトリウムランプ,ハロゲンランプ,蛍光灯,メタルハライドランプなどを使用することができる。またこれらのランプあるいは広い波長域の光を光源に波長カットフィルターを組み合わせてBステージ化に必要な波長を選択して照射することもできる。Bステージ化反応に使用する波長は、エネルギーレベルの低い長波長側の光が望ましく、特に近赤外光を使用するとBステージ化反応を制御しやすい。
【0058】光硬化性プリプレグ組成物をBステージ化するためのランプの照射時間としては、光源の有効波長域,出力,照射距離,組成物の厚さ等が異なるため一概に規定できないが、0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上照射すればよい。このようにして製造された硬化性プリプレグは、被着体に十分に粘着し、光硬化性プリプレグでは残存する光重合開始剤により光照射により速やかに本硬化でき、熱硬化性プリプレグでは残存する熱重合開始剤により加熱することにより速やかに硬化できる。また、被着体に粘着後放置して、自然光による硬化や過酸化物の硬化などを進ませ、接着させることも可能である。また、硬化することにより被着体に完全に接着させることもできるし、逆に接着性を低下させ剥離し易くすることもできる。光硬化性プリプレグ組成物の本硬化に使用できる光源としては、残存する光重合開始剤の感光波長域に分光分布を有する光源であればよく、例えば太陽光,自然光,メタルハライドランプ,ハロゲンランプ,紫外線ランプなどがある。
【0059】
【実施例】次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではなく、各例中の「部」は重量基準を示す。
【0060】合成例1攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチル146gを取り、窒素置換しながら攪拌し還流させた。次に、2−エチルヘキシルアクリレート0.5モル(92g)、メチルメタクリレート0.1モル(10g)、n−ブチルアクリレート0.4モル(51.3g)からなるモノマー混合物にアゾビスイソブチロニトリルをモノマー混合物100部に対し1.5部(2.3g)を添加したものを滴下ロートから、還流を続けた状態のフラスコ内に2時間かけて滴下し、更に4時間攪拌し続けてエージングを行ない、粘着剤用重合体−1を得た。また、粘着剤用重合体−1:100部、ビニルエステル樹脂〔昭和高分子( 株) 製、商品名:VR−60〕15部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、以下パーブチルZと略す)0.2部を混合し、熱硬化性粘着剤組成物−1を得た。
【0061】合成例2攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチル149gを取り、窒素置換しながら攪拌し還流させた。次に、2−エチルヘキシルアクリレート0.3モル(55.3g)、グリシジルメタクリレート0.3モル(42.6g)、n−ブチルアクリレート0.4モル(51.3g)からなるモノマー混合物にアゾビスイソブチロニトリルをモノマー混合物100部に対し2部(3.0g)を添加したものを滴下ロートから、還流を続けた状態のフラスコ内に2時間かけて滴下し、更に4時間攪拌し続けてエージングを行なった。次に、フラスコ内を空気置換に替え、アクリル酸0.21モル(15.1g)にトリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)0.6g、ハイドロキノン0.03gを添加したものを、上記エージングした中に投入し、還流しながら10時間反応を続け、固形分酸価=0.8となったところで反応を終了し、冷却後、固形分100部に対し、紫外光領域から可視光領域まで感光性を有するビスアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤〔チバスペシャルティーケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア1800:以下、I−1800と略すことがある。〕:0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤〔シプロ化成(株)製、商品名:シーソーブ705〕:0.15部を添加し、光硬化性粘着剤組成物−1を得た。
【0062】合成例3攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチル110gを取り、窒素置換しながら攪拌し還流させた。次に、2−エチルヘキシルアクリレート0.3モル(55.3g)、メタクリルアミド0.2モル(17g)、n−ブチルアクリレート0.5モル(64g)からなるモノマー混合物にアゾビスイソブチロニトリルをモノマー混合物100部に対し2部(2.9g)を添加したものを滴下ロートから還流を続けた状態のフラスコ内に2時間かけて滴下し、更に4時間攪拌し続けてエージングを行なった。次に、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート0.16モル(22.7g)にハイドロキノン0.03gを添加したものを、上記エージングした中に投入し、還流しながら5時間反応を続けグリシジルメタクリレートがGPC測定で検出されなくなったところで反応を終了し、冷却後、固形分100部に対し、アミノエチルメタクリレート5部、ビニルエステル樹脂〔昭和高分子(株) 製、商品名:VR−77〕10部、第1表の3番に示す1,1,5,5−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−2,4−ペンタジエニル・トリフェニル−n−ブチルボレート〔昭和電工(株)製:以下、IRBと略す。近赤外光吸収性陽イオン染料〕0.03部とテトラ−n−ブチルアンモニウム・トリフェニル−n−ブチルボレート(昭和電工(株)製、以下、P3Bと略す。ホウ素化合物)0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、I−1800:1.2部、シーソーブ705:0.2部を添加し、光硬化性粘着剤組成物−2を得た。
【0063】合成例4攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチル110gを取り、窒素置換しながら攪拌し還流させた。次に、2−エチルヘキシルアクリレート0.2モル(36.8g)、2−ヒドロキシメチルアクリレート0.5モル(58g)、メチルメタクリレート0.1モル(10g)、n−ブチルアクリレート0.2モル(25.6g)からなるモノマー混合物にアゾビスイソブチロニトリルをモノマー混合物100部重量に対し2部(2.6g)添加したものを滴下ロートから還流を続けた状態のフラスコ内に2時間かけて滴下し、更に4時間攪拌し続けてエージングを行なった。次に、フラスコ内を空気置換に替え、イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工(株)製、商品名カレンズMOI)0.4モル(62g)にジブチル錫ジラウレート0.62g、ハイドロキノン0.062gを添加したものを、上記エージングした中に投入し、還流しながら1.5時間反応を続け、イソシアネートエチルメタクリレートがGPC測定で検出されなくなったところで反応を終了し、冷却後、固形分100部に対しアミノエチルメタクリレート5部、ビニルエステル樹脂〔昭和高分子( 株) 製、商品名:VR−77〕5部、IRB0.02部、P3B0.01部及びパーブチルZ0.5部を混合し、熱硬化性粘着剤組成物−2を得た。
【0064】実施例1(1)プリプレグ層用光硬化性樹脂組成物の調整ビニルエステル樹脂〔昭和高分子( 株) 製、商品名:リポキシR−802〕:100部にIRB0.03部とP3B0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、Bステージ化物を本硬化する紫外光から可視光領域まで感光性を有するビスアシルホスフィンオキサイド系重合開始剤I−1800:1.0部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるシーソーブ705:0.2部を添加し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0065】(2)光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの作製次に、剥離紙の上に光硬化性粘着剤組成物−1を50μmの厚さに塗布し、80℃乾燥器中に3分放置し、溶剤を揮発させ、冷却したものの上に、30cm×30cmの#450チョップドストランドガラスマット(旭ファイバーグラス(株) 製)3プライに上記光硬化性樹脂組成物をガラス含有率が25重量%となるように含浸させて積層し、透明PETフィルムで被覆して380〜1200nmの波長域を含む光源であるAL−スポットライト(ALF−10)1KW(アールディエス(株)製)に500nm以下カットフィルターであるSC−50(富士フィルム(株) 製)を併用して、20cmの距離で照射したところ2分でBステージ化し、その後1分光照射を続けてもBステージ状態は変わらなかった。そこで3分間光照射後のBステージ状態のものの透明PETフィルムの上に黄色セロハンを貼りつけたのものを光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグとし、30℃、暗所における保存安定性を調べたところ6ヶ月以上プリプレグの硬さは変化なかった。
【0066】(3)光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの硬化直射日光下に置いた鉄板に、光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの剥離紙を取って貼り付け、黄色セロハン上からロールで扱きながら気泡を追い出した。この状態で30分以上直射日光下に置いても光硬化性プリプレグは硬化しなかった。次に、黄色セロハンのみを剥ぎ取って放置したところ、10分で光硬化性プリプレグは硬化した。硬化後、上側のPETフィルムを剥ぎ取り、半年間屋外暴露したが、色、外観の変化は見られなかった。また建研式による引張強度試験を行なったところ、21Kgf/cm2 の接着強度が得られ、破壊モードもFRP凝集破壊で良好な結果となった。
【0067】比較例1光硬化性粘着剤層を設けない以外は実施例1と全く同様の操作を行なったが、鉄板との接着性は不十分で、建研式による引張強度試験を行なったところ、6Kgf/cm2 の接着強度で、破壊モードも界面破壊であった。
【0068】実施例2(1)光硬化性樹脂組成物の調製不飽和ポリエステル樹脂〔昭和高分子(株) 製、商品名:リゴラックFK−2000〕100部に、トリエチルアミン2.0部、シーソーブ705:0.2部を添加したものに、IRB0.03部とP3B0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、Bステージ化物を本硬化するI−1800:3.0部を混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0069】(2)光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの作製次に、剥離紙の上に光硬化性粘着剤組成物−2を50μmの厚さに塗布し、80℃の乾燥器中に3分放置し溶剤を揮発させ、冷却したものの上に、30cm×30cmの#450チョップドストランドガラスマット(旭ファイバーグラス(株) 製)3プライに上記光硬化性樹脂組成物をガラス含有率が25重量%となるように含浸させて積層し、透明PETフィルムで被覆して380〜1200nmの波長域を含む光源であるAL−スポットライト(ALF−10)1KW(アールディエス(株)製)に500nm以下カットフィルターであるSC−50(富士フィルム株) 製)を併用して、20cmの距離で照射したところ3分で光硬化性粘着剤層及び光硬化性プリプレグ層がBステージ化し、その後1分間光照射を続けてもBステージ状態は変わらなかった。そこで4分間光照射後のBステージ状態のものの透明PETフィルムの上に黄色セロハンを貼りつけたのものを光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグとし、30℃、暗所における保存安定性を調べたところ6ヶ月以上プリプレグの硬さは変化なかった。
【0070】(3)光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの硬化直射日光下に置いたコンリート歩道板に、光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの剥離紙を取って貼り付け、黄色セロハン上からロールで扱きながら気泡を追い出した。この状態で30分以上直射日光下に置いても光硬化性プリプレグは硬化しなかった。次に、黄色セロハンのみを剥ぎ取って放置したところ、10分で光硬化性プリプレグは硬化した。硬化後上側のPETフィルムを剥ぎ取り、半年間屋外暴露したが、色、外観の変化は見られなかった。また、建研式による引張強度試験を行なったところ、30Kgf/cm2 の接着強度が得られ、破壊モードもコンクリート母材破壊で良好な結果となった。
【0071】比較例2光硬化性粘着剤層を設けない以外は実施例2と全く同様の操作を行なったが、コンクリートとの接着性は不十分で、建研式による引張強度試験を行なったところ、14Kgf/cm2 の接着強度で、破壊モードもコンクリート母材破壊30%、界面破壊70%であった。
【0072】実施例3(1)プリプレグ層用熱硬化性樹脂組成物の調整ビニルエステル樹脂(昭和高分子(株) 製、商品名:リポキシH−630〕100部にIRB0.03部とP3B0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、パーブチルZ1.0部を混合し熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0073】(2)熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグの作製次に、剥離紙の上に熱硬化性粘着剤組成物−1を50μmの厚さに塗布し、80℃の乾燥器中に3分放置し、溶剤を揮発させ、冷却したものの上に、30cm×30cmの#450チョップドストランドガラスマット(旭ファイバーグラス(株) 製)3プライに上記光硬化性樹脂組成物をガラス含有率が25重量%となるように含浸させて積層し、透明PETフィルムで被覆して380〜1200nmの波長域を含む光源であるAL−スポットライト(ALF−10)1KW(アールディエス(株)製)に500nm以下カットフィルターであるSC−50(富士フィルム(株) 製)を併用して、20cmの距離で照射したところ2分でBステージ化し、その後1分光照射を続けてもBステージ状態は変わらなかった。そこで3分間光照射後のBステージ状態のものを熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグとした。
【0074】(3)熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグの硬化ステンレスに、熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグの剥離紙を取って貼り付け、ロールでしごきながら気泡を追い出した。この状態で100℃の乾燥器中に1時間放置したところ熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグが硬化した。また、建研式による引張強度試験を行なったところ23Kgf/cm2 の接着強度が得られ、破壊モードもFRP凝集破壊で良好な結果となった。
【0075】比較例3熱硬化性粘着剤層を設けない以外は実施例3と全く同様の操作を行なったが、ステンレス板との接着性は不十分で、建研式による引張強度試験を行なったところ4Kgf/cm2 の接着強度で、破壊モードも界面破壊であった。
【0076】実施例4(1)プリプレグ層用熱硬化性樹脂組成物の調整ビニルエステル樹脂〔昭和高分子(株) 製、商品名:リポキシH−630〕100部にIRB0.03部とP3B0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、パーブチルZ1.0部を混合し、さらに水酸化アルミニウム粉末〔昭和電工(株)製、商品名:ハイジラントHBT−320〕40部を混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0077】(2)熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグの作製次に、剥離紙の上に熱硬化性粘着剤組成物−2を50μmの厚さに塗布し、80℃の乾燥器中に3分放置し、溶剤を揮発させ、冷却したものの上に、30cm×30cmの#450チョップドストランドガラスマット(旭ファイバーグラス(株) 製)3プライに上記光硬化性樹脂組成物をガラス含有率が25重量%となるように含浸させて積層し、透明PETフィルムで被覆して380〜1200nmの波長域を含む光源であるAL−スポットライト(ALF−10)1KW(アールディエス(株)製)に500nm以下カットフィルターであるSC−50(富士フィルム(株)製)を併用して、20cmの距離で照射したところ2分でBステージ化し、その後1分光照射を続けてもBステージ状態は変わらなかった。そこで3分間光照射後のBステージ状態のものを熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグとした。
【0078】(3)熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグの硬化蒸気用の配管の亀裂部に、熱硬化性プリプレグの剥離紙、PETフィルムを取って巻き付けた。この状態でドライヤーで10分間加熱したところ熱硬化性粘着剤付き熱硬化性プリプレグが硬化し、蒸気を流しても蒸気漏れは見られなかった。
【0079】実施例5(1)プリプレグ層用光硬化性樹脂組成物の調整ビルエステル樹脂〔昭和高分子(株) 製、商品名:リポキシR−804〕100部にIRB0.03部とP3B0.15部とを組み合わせたBステージ化用近赤外光重合開始剤、I−1800:1.0部を添加し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0080】(2)光硬化性粘着剤付き光硬化性プリプレグの作製次に、剥離紙の上に粘着剤用重合体−1を50μmの厚さに塗布し、80℃の乾燥器中に3分間放置し、溶剤を揮発させ、冷却したものの上に、30cm×30cmの#450チョップドストランドガラスマット(旭ファイバーグラス(株) 製)3プライに上記光硬化性樹脂組成物をガラス含有率が25重量%となるように含浸させて積層し、透明PETフィルムで被覆して380〜1200nmの波長域を含む光源であるAL−スポットライト(ALF−10)1KW(アールディエス(株)製)に500nm以下カットフィルターであるSC−50(富士フィルム(株) 製)を併用して、20cmの距離で照射したところ2分でBステージ化し、その後1分光照射を続けてもBステージ状態は変わらなかった。そこで3分間光照射後のBステージ状態のものの透明PETフィルムの上に黄色セロハンを貼りつけたのものを粘着剤付き光硬化性プリプレグとし、30℃、暗所における保存安定性を調べたところ6ヶ月以上プリプレグの硬さは変化なかった。
【0081】(3)粘着剤付き光硬化性プリプレグの硬化室内のコンクリート製の柱に粘着剤付き光硬化性プリプレグの剥離紙を取って貼り付け、黄色セロハン上からロールで扱きながら気泡を追い出し、次に黄色セロハンのみを剥ぎ取って1週間放置したところ硬化した。また、建研式による引張強度試験を行なったところ25Kgf/cm2 の接着強度が得られ、破壊モードもコンクリート母材破壊で良好な結果となった。上記の各実施例及び比較例で得られた接着強度及び破壊モードの試験結果を第3表にまとめて示す。
【0082】
【表5】


【0083】
【発明の効果】本発明によれば、短時間で安定化された増粘反応ができ、且つプリプレグシート保存中に樹脂が繊維質の基材から流れ出すことがなく、更に被着体の形状が複雑な場合でもプリプレグシートを貼り付けて硬化させるまでの間に剥がれてしまうことがなく、プライマーを使用しなくても接着強度が十分に発現できる硬化性プリプレグを効率よく提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 硬化性プリプレグ層の片面または両面に粘着剤層を有することを特徴とする硬化性プリプレグ。
【請求項2】 粘着剤が1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体からなる非硬化性粘着剤である請求項1記載の硬化性プリプレグ。
【請求項3】 粘着剤が硬化性粘着剤である請求項1記載の硬化性プリプレグ。
【請求項4】 硬化性粘着剤が(A)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物の重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物5〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項5】 硬化性粘着剤が(D)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上のエポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のエポキシ基に反応可能な不飽和一塩基酸及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該エポキシ基の5〜100モル%に付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物0〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項6】 硬化性粘着剤が(E)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上の不飽和一塩基酸及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のカルボキシル基及び/またはアミノ基に反応可能なエポキシ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該カルボキシル基及び/またはアミノ基の反応可能な部分に対し5〜100モル%付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物0〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項7】 硬化性粘着剤が(F)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上の水酸基を有するラジカル重合性不飽和化合物及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中の水酸基及び/またはアミノ基に反応可能なイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該水酸基及び/またはアミノ基の反応可能な部分に対し5〜100モル%付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物0〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項8】 硬化性粘着剤が(G)1種類以上のラジカル重合性不飽和化合物及び1種類以上のイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和化合物を共重合させ、得られた共重合物中のイソシアネート基に反応可能な水酸基及び/またはアミノ基を有するラジカル重合性不飽和化合物を該イソシアネート基の5〜100モル%に付加した重合体100重量部,(B)ラジカル重合性不飽和化合物0〜300重量部及び(C)重合開始剤0.1〜10重量部からなる組成物である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項9】 硬化性粘着剤が、(C)成分を紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する少なくとも1種の光重合開始剤とした請求項4〜8のいずれか1項に記載の組成物からなる光硬化性粘着剤である、請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項10】 硬化性粘着剤が、請求項4〜8のいずれか1項に記載の組成物であって且つ(C)成分を紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する少なくとも2種の光重合開始剤を組み合わせた重合開始剤とした組成物中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に少なくとも1種の光重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる組成物からなる光硬化性粘着剤である、請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項11】 硬化性粘着剤が、(C)成分を熱重合開始剤とした請求項4〜8のいずれか1項に記載の組成物からなる熱硬化性粘着剤である、請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項12】 硬化性粘着剤が、請求項4〜8のいずれか1項に記載の組成物であって且つ(C)成分を紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と熱重合開始剤と組み合わせた重合開始剤とした組成物中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に熱重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる組成物からなる熱硬化性粘着剤である請求項3記載の硬化性プリプレグ。
【請求項13】 硬化性プリプレグ層が(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)2種以上の紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜20重量部,(J)紫外線吸収剤0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、少なくとも1種の光重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる光硬化性プリプレグ組成物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項14】 硬化性プリプレグ層が(H)不飽和ポリエステル樹脂及び/またはビニルエステル樹脂100重量部,(I1)紫外光領域から近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤0.01〜10重量部,(I2)熱重合開始剤0.01〜10重量部,(J)紫外線吸収剤0〜5重量部並びに(K)無機質または有機質の繊維強化材及び/または充填材1〜400重量部を含有する組成物から成り、かつ該組成物が、前記樹脂中のラジカル重合性不飽和基の一部を予備重合せしめると共に、熱重合開始剤及びラジカル重合性不飽和基の一部が残存するような特定の波長の光で処理してなる熱硬化性プリプレグ組成物である請求項1〜8,11,12のいずれか1項に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項15】 光重合開始剤が、500nm以上の波長の可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤と、500nm未満の可視光領域及び/または紫外光領域に感光性を有する光重合開始剤との組み合わせである請求項10または13に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項16】 光重合開始剤が、500nm以上の波長の可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤である請求項12または14に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項17】 500nm以上の波長の可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤が、一般式(1)
+ ・ A- ・・・(1)
〔式中、D+ は可視光領域あるいは近赤外光領域に感光性を有するメチン,ポリメチン,シアン,キサンテン,オキサジン,チアジン,アリールメタン及びピリリウム系色素陽イオンのうちの少なくとも1種であり、A- は各種陰イオンを示す。〕で表される近赤外光領域に吸収をもつ陽イオン染料及び一般式(2)
【化1】


〔式中、Z+ は任意の陽イオンを示し、R1 ,R2 ,R3 及びR4 はそれぞれ独立してアルキル基,アリール基,アシル基,アラルキル基,アルケニル基,アルキニル基,シリル基,複素環基,ハロゲン原子,置換アルキル基,置換アリール基,置換アシル基,置換アラルキル基,置換アルケニル基,置換アルキニル基または置換シリル基または置換複素環基を示す。〕で表される増感剤の組み合わせである請求項15または16に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項18】 光重合開始剤の1種が、アシルホスフィンオキサイド系化合物である請求項10,12〜14のいずれか1項に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項19】 硬化性プリプレグに使用される無機質または有機質の繊維強化材が、ガラス繊維,炭素繊維,アラミド繊維,有機繊維から選択される1種以上であり、その形状がマット,クロス,不織布から選択される1種以上である請求項13または14に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項20】 請求項1〜19のいずれか1項に記載の硬化性プリプレグの上下をフィルムで被覆したことを特徴とする硬化性プリプレグ。
【請求項21】 請求項13に記載の光硬化性プリプレグの上下をフィルムで被覆し、且つ硬化性プリプレグ層側のフィルムを更に遮光フィルムで被覆したこと特徴とする硬化性プリプレグ。
【請求項22】 硬化性プリプレグを被覆するためのフィルムがポリエチレンテレフタレート,ビニロン,離型紙から選択される1種以上である請求項20または21に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項23】 遮光フィルムが、着色しているセロハンまたはポリエチレンである請求項21に記載の硬化性プリプレグ。
【請求項24】 非硬化性粘着剤または硬化性粘着剤をフィルム上に塗布することにより形成した非硬化性粘着剤または硬化性粘着剤の層の上に、請求項13または14に記載の硬化性プリプレグ組成物をその予備重合前の状態で積層した後、可視光及び/または近赤外光の照射により、硬化性プリプレグ組成物を予備重合させて一体化することを特徴とする硬化性プリプレグの製造方法。
【請求項25】 請求項10または12に記載の硬化性粘着剤組成物をその予備重合前の状態でフィルム上に塗布することにより形成した硬化性粘着剤の層の上に請求項13または14に記載の硬化性プリプレグ組成物をその予備重合前の状態で積層した後、可視光及び/または近赤外光の照射により、硬化性粘着剤及び硬化性プリプレグを予備重合させて一体化することを特徴とする硬化性プリプレグの製造方法。
【請求項26】 非硬化性粘着剤層または硬化性粘着剤層の形成を、溶剤の揮発及び/または可視光及び/または近赤外光の照射により予備重合させることによって行う請求項24または25に記載の硬化性プリプレグの製造方法。
【請求項27】 請求項13に記載の硬化性プリプレグに可視光及び/または近赤外光を照射することを特徴とする硬化性プリプレグの硬化方法。
【請求項28】 請求項21に記載の硬化性プリプレグの下側フィルムを剥がして、上側のフィルム及び遮光フィルムが被覆したまま被着体に貼り付け、遮光フィルムのみを剥がし光照射して硬化して接着させることを特徴とする硬化性プリプレグの硬化方法。
【請求項29】 請求項14に記載の硬化性プリプレグを加熱することを特徴とする硬化性プリプレグの硬化方法。

【公開番号】特開2002−18991(P2002−18991A)
【公開日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−202273(P2000−202273)
【出願日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】