説明

硬化性分散剤、及びそれを用いた顔料組成物並びに顔料分散体

【課題】
塗料及び着色樹脂組成物などの分野に適する、非集合性、流動性、保存安定性に優れた分散体を製造でき、同時に展色物の耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性に優れた分散体を製造すること。
【解決手段】
テトラカルボン酸無水物(a)及びトリカルボン酸無水物(b)から選ばれる一種以上の酸無水物中の酸無水物基と水酸基含有化合物(c)中の水酸基とを反応させてなる、カルボキシル基を有するポリエステル部分Aと、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)から選ばれる一種以上のエチレン性不飽和単量体ラジカル重合してなるビニル重合体部分Bからなる分散剤であって、ビニル重合体部分Bに(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤に関し、更に詳しくは、塗料及び着色樹脂組成物などの分野に適する、非集合性、流動性、保存安定性に優れた分散体を製造でき、同時に展色物の耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性に優れた分散体を製造することのできる硬化性分散剤、それを用いた顔料組成物及び顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インキ等を製造する場合、顔料を安定に高濃度で分散することが難しく、製造工程や製品そのものに対して種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、悪い場合は保存中にゲル化を起こし、使用困難となることさえある。更に展色物の表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じる。又、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0003】
そこで一般的には、分散状態を良好に保つために分散剤が利用されている。分散剤は、顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせ種々のものが使用されているが、塩基性に偏った表面を有する顔料には酸性の分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、酸性官能基が顔料の吸着部位となる。
【0004】
酸性の官能基としてリン酸基やスルホン酸基を有する分散剤が知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2)。これらは高い分散能力を持ち合わせ、ある程度少ない使用量で低粘度の顔料分散体をつくることができる。しかしながら、保存安定性が悪い場合や、リン酸基やスルホン酸基由来の欠点、例えば相溶性の悪さ(製造時にも問題)、耐熱性の低さ、又は耐薬品性の低さなどで利用上問題を生じる場合があり、このようなリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤は、応用するインキや塗料などへの展開性に乏しかった。
【0005】
酸性の官能基としてカルボン酸基を有する分散剤は、リン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤が抱える問題はないが、分散能力において劣る傾向があり、使用量を多くしてもリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤を用いたときのような低粘度化は難しかった。
【0006】
近年、カルボン酸基を用い、分散剤としての能力を向上させた分散剤が提案されている。カルボン酸基を有するアクリル樹脂をブロック共重合させた例や、カルボン酸基を有するアクリル樹脂にポリエステル、ポリエーテル、若しくはポリウレタンなどをグラフトさせた例である(例えば、特許文献3又は特許文献4)。
【0007】
これらは、従来のカルボン酸基を有する分散剤に比べれば高い分散能力を有してはいるものの、リン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤に比べると分散能力としては低く、低粘度で安定な分散体をつくるためには、ある程度の量で使用することが必要であった。
【0008】
一方で、顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有するシナジストを顔料組成物に混合する方法が、特許文献5、特許文献6及び特許文献7等に提案されている。しかし、これだけでは必ずしも満足な効果が得られず、上記のような酸性基や塩基性基を置換基として有するシナジストに対して、更にその対イオンを有する分散剤を使用することが提案されている(例えば、特許文献8又は特許文献9)。ここで、シナジストとは、顔料を形成する色素の化学構造に似た構造を有し、顔料に対してπ−π相互作用で強固に吸着し、シナジストが含有するイオン性官能基によって顔料の表面を酸性若しくは塩基性にして、対イオンを有する分散剤若しくは顔料担体の効果を大きくするものである。
【0009】
特許文献8には、塩基性基を置換基として有するシナジストと、リン酸基を有する分散剤とを含む顔料組成物の例示がある。リン酸基を有する分散剤は、塩基性基を置換基として有するシナジストとの併用である程度の顔料分散能力を有するが、保存安定性が悪い場合や、リン酸由来の欠点、例えば耐熱性の低さ、耐薬品性の低さ、相溶性の悪さなどで問題を生じる場合があった。これは、スルホン酸を有する分散剤も同様である。このようなリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤を用いた顔料組成物は、応用するインキや塗料などへの展開性に乏しく、一方、従来のカルボン酸を用いた分散剤と塩基性基を置換基として有するシナジストとを組合せた顔料組成物は、耐熱性、耐薬品性、相溶性の点についてリン酸基やスルホン酸基を有する分散剤と比較すると改善できているが、粘度が高い、安定性が悪い、顔料微分散化不良などの問題があり、分散剤の添加量を多くする必要があった。その結果、耐熱性や耐薬品性の低さが露呈し、耐熱性、耐薬品性と顔料分散能力との両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2633075号公報
【特許文献2】特許第2747769号公報
【特許文献3】特開2005−194487号公報
【特許文献4】特許第3049407号公報
【特許文献5】特開昭63−305173号公報
【特許文献6】特開平1−247468号公報
【特許文献7】特開平3−26767号公報
【特許文献8】特開昭63−248864号公報
【特許文献9】特開平9−176511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、分散性に優れ、同時に展色物を硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現させる硬化性分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、高い分散能力を有するカルボン酸基含有分散剤の開発を鋭意研究していたところ、特定の構造を有するカルボキシル基含有部位と硬化性官能基を有する重合体部位からなることによって、分散性に優れ、同時に展色物を硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現させる硬化性分散剤を得ることができることを見出した。
即ち、第1の発明は、テトラカルボン酸無水物(a)及びトリカルボン酸無水物(b)から選ばれる一種以上の酸無水物中の酸無水物基と水酸基含有化合物(c)中の水酸基とを反応させてなる、カルボキシル基を有するポリエステル部分Aと、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)から選ばれる一種以上のエチレン性不飽和単量体ラジカル重合してなるビニル重合体部分Bからなる分散剤であって、ビニル重合体部分Bに(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤に関する。
【0013】
又、第2の発明は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)中の水酸基と、テトラカルボン酸無水物(a)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h1)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k1)中の水酸基と、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤に関する。
【0014】
又、第3の発明は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)及びチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)中の水酸基と、テトラカルボン酸無水物(a)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h2)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k2)中の水酸基と、
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤に関する。
【0015】
又、第4の発明は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)中の水酸基と、トリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h3)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k3)中の水酸基と、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤に関する。
又、第5の発明は、不飽和二重結合当量が300〜3500である、第1〜4いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
又、第6の発明は、重量平均分子量が2,000〜100,000であり、かつ、酸価が5〜200mgKOH/gである第1〜5いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
【0016】
又、第7の発明は、テトラカルボン酸無水物(a)が、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されることを特徴とする第1〜6いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
一般式(1)
【0017】
【化1】


[一般式(1)中、kは1又は2である。]
一般式(2)
【0018】
【化2】


[一般式(2)中、R1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、式:
【0019】
【化3】


で表される基、又は式:
【0020】
【化4】


で表される基である。]

又、第8の発明は、トリカルボン酸無水物(b)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする第1〜6いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
一般式(3)
【0021】
【化5】


[一般式(3)中、kは1又は2である。]
【0022】
又、第9の発明は、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなるビニル重合体部分Bの重量平均分子量が、1,000〜50,000である第1〜8いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
【0023】
又、第10の発明は、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)が、下記一般式(4)で表わされる単量体を含むことを特徴とする第1〜9いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
一般式(4)
【0024】
【化6】


[一般式(4)において、R2は、炭素原子数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜15の脂環式のアルキル基である。]
【0025】
又、第11の発明は、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)が、1つのイソシアネート基と1つまたは2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする第1〜10いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
【0026】
又、第12の発明は、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)が、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートのいずれかであることを特徴とする第1〜11いずれかの発明の硬化性分散剤に関する。
【0027】
又、第13の発明は、第1〜12いずれかの発明の硬化性分散剤と、顔料とを含有する顔料組成物に関する。
【0028】
又、第14の発明は、更に、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる塩基性誘導体の少なくとも一種を含有する第13の発明の顔料組成物に関する。
又、第15の発明は、第13又は14の発明の顔料組成物をワニスに分散させてなる顔料分散体に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の硬化性分散剤を使用することにより、低使用量で分散性、流動性、及び保存安定性を有する顔料組成物を得ることができ、さらに、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色樹脂組成物などに適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性をもち、同時に展色物を硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を有する顔料分散体を得ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
一般に、顔料分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの部位のバランスで分散剤の性能が決まる。つまり、分散性を発現させるためには、分散剤の顔料に吸着する性能と分散媒である溶剤への親和性がともに非常に重要である。
【0031】
本発明に使用するテトラカルボン酸無水物(a)は、水酸基と反応してエステル結合を形成し、かつ、生成するポリエステル主鎖上にペンダントカルボキシル基を残すことができ、続いて実施する工程で、残存しているチオール基を連鎖移動剤としてエチレン性不飽和単量体をラジカル重合することでビニル共重合体部分を導入することができる。2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g):
【0032】
【化7】


と、コア部分X1を有するテトラカルボン酸無水物を水酸基過剰の条件下で反応を行い、続いてエチレン性不飽和単量体を導入する場合の反応式を下記反応工程式(5)に示す。下記反応工程式(5)において、nは繰り返し単位数であり、Bはビニル共重合体部分である。
【0033】
反応工程式(5)
【0034】
【化8】

【0035】
同様に、トリカルボン酸無水物(b)を使用した場合は、水酸基と反応してエステル結合を形成しカルボキシル基を残すことができる。このときの反応式を下記反応工程式(6)に示す。下記反応工程式(6)において、Bはビニル共重合体部分である。
【0036】
反応工程式(6)
【0037】
【化9】

【0038】
しかしながら、本発明の分散剤において、コア部分X1、X2に結合しているカルボキシル基が1個のみである場合(本発明の範囲外)では、高い分散性、流動性、及び保存安定性を発現せず好ましくない。
【0039】
本発明の分散剤において、コア部分X1は、テトラカルボン酸無水物(a)が水酸基と反応した後の反応残基であり、コア部分X2は、トリカルボン酸無水物(b)が水酸基と反応した後の反応残基であり、Aは、3価の残基であり、例えば、炭素原子数1〜10(好ましくは炭素原子数1〜8)の直鎖状若しくは分枝状の3価脂肪族炭化水素基であり、Aに結合している2つの水酸基は、同一の炭素原子に結合していても、別異の炭素原子に結合していてもよい。Bはビニル共重合体部分である。好ましいコア部分X1の形態は、下記一般式(1)又は一般式(2)で示されるテトラカルボン酸無水物(a)が、ポリオール化合物と反応した後の反応残基である。
【0040】
一般式(1)
【0041】
【化10】


[一般式(1)中、kは1、又は2である。]
一般式(2)
【0042】
【化11】


[一般式(2)中、R1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、式:
【0043】
【化12】


で表される基、又は式:
【0044】
【化13】


で表される基である。]
好ましいコア部分X2の形態は、下記一般式(3)で示されるトリカルボン酸無水物(b)が、ポリオール化合物と反応した後の反応残基である。
一般式(3)
【0045】
【化14】

[一般式(3)中、kは1又は2である。]
【0046】
本発明の分散剤は、2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(g)とテトラカルボン酸無水物(a)またはトリカルボン酸無水物(b)、及び任意に添加するチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)とを反応させて、ペンダントカルボキシル基を有する化合物(h1)〜(h3)を最初に製造する第一の工程、続いて、前記化合物(h1)〜(h3)の残存しているチオール基を連鎖移動剤として水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合することで水酸基を有するビニル重合体部分Bを導入した水酸基含有化合物(k1)〜(k3)を製造する第二の工程、さらに1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)との反応である第三の工程を経ることにより得られる。本発明の分散剤中の複数のカルボキシル基部分が顔料吸着部として機能し、ビニル重合体部分が溶媒親和部として機能する。
【0047】
本明細書において「水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなるビニル重合体部分B」とは、2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(g)とテトラカルボン酸無水物(a)またはトリカルボン酸無水物(b)、及び任意に添加するチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)とを反応させたペンダントカルボキシル基を有するポリエステル部分Aを含まない連続した部分であり、通常、本発明の分散剤を構成する1分子中には、1つまたは複数のビニル重合体部分Bが含まれる。
【0048】
水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなるビニル重合体部分Bの重量平均分子量は、1,000〜50,000が好ましく、より好ましくは2,000〜30,000、更に好ましくは2,000〜20,000、特に好ましくは2,500〜10,000である。この部分Bが分散媒である溶剤への親和性部分となる。ビニル重合体部分Bの重量平均分子量が1,000未満では、溶媒親和部による立体反発の効果が少なくなるとともに、顔料の凝集を防ぐことが困難となり、分散安定性が不十分となる場合がある。又、50,000を超えると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。更に、分散体の粘度が高くなる場合がある。ビニル重合体部分Bは、分子量を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、溶剤への親和性も良好である。
まず、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(g)とテトラカルボン酸無水物(a)またはトリカルボン酸無水物(b)、及び任意に添加するチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)とを反応させて、ペンダントカルボキシル基を有する化合物(h1)〜(h3)を製造する第一の工程について説明する。
【0049】
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(別名:1−チオグリセロール)、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等が挙げられる。
【0050】
本発明で使用されるテトラカルボン酸無水物(a)としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物などの脂肪族テトラカルボン酸無水物;
ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物、などの芳香族テトラカルボン酸無水物が挙げられる。
【0051】
本発明で使用されるテトラカルボン酸無水物(a)は上記に例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物基を2つ持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。本発明に好ましく使用されるものは、顔料分散体又は各種インクの低粘度化の観点から芳香族テトラカルボン酸二無水物である。更には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
トリカルボン酸無水物(b)を使用するのも本発明の分散剤の好ましい形態である。トリカルボン酸無水物(b)としては、脂肪族トリカルボン酸無水物、及び芳香族トリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0052】
脂肪族トリカルボン酸無水物としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸−1,2−無水物、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0053】
芳香族トリカルボン酸としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物[1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物]など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物などが挙げられる。トリカルボン酸無水物を使用する場合、上記のうち芳香族トリカルボン酸無水物が特に好ましく、更に好ましくはトリメリット酸無水物である。
【0054】
又、本発明では、任意の割合で、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)と、チオール基を有さない水酸基含有化合物(j)を併用することが可能である。チオール基を有さない水酸基含有化合物(j)を用いることで、顔料吸着部や溶剤溶解部の割合の調整が容易になる。
【0055】
チオール基を有さない水酸基含有化合物(j)としては、公知のものを使用することができ、例えば、1分子中にチオール基を有さず、水酸基を2〜4個有する化合物を使用することができる。それらのうちでも、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のグループ(1)〜(7)に属するものがある。
【0056】
(1)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオールの如き多価アルコール類;
【0057】
(2)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルグリコール類;
【0058】
(3)上記した各種の多価アルコール類もしくはポリエーテルグリコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類;
【0059】
(4)上記した各種の多価アルコール類もしくはポリエーテルグリコール類の1種以上と、多価カルボン酸類との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類であって、多価カルボン酸類が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸などで特に代表されるものを用いて得られるポリエステルポリオール類;
【0060】
(5)上記した各種の多価アルコール類もしくはポリエーテルグリコール類の1種以上と、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンもしくは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類、あるいは、上記した各種の多価アルコール類もしくはポリエーテルグリコール類と、多価カルボン酸類と、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;
【0061】
(6)ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、一価及び/又は多価アルコール類のグリシジルエーテル、あるいは、一塩基酸及び/又は多塩基酸類のグリシジルエステルの如き各種のエポキシ化合物を、ポリエステルポリオールの合成時に、1種以上併用して得られるエポキシ変性ポリエステルポリオール類;
【0062】
(7)ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油、ひまし油誘導体、水添ひまし油、水添ひまし油誘導体、水酸基含有アクリル系共重合体、水酸基含有含フッ素化合物又は水酸基含有シリコン樹脂などが挙げられる。
【0063】
これら(1)〜(7)に示された任意に添加する、チオール基を有さない水酸基含有化合物(j)は、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは勿論であるが、その重量平均分子量としては、100〜10,000が好ましく、より好ましくは、100〜2,000であり、更に好ましくは、100〜1,000である。
【0064】
又、水酸基を1つだけ有する化合物を併用してもよい。水酸基を1つだけ有していれば、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの脂肪芳香族アルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの光硬化性部位を有するアルコールなどが挙げられる。
【0065】
ここに、本発明における「光硬化性部位」とは、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射により重合する官能基のことを示し、それらの具体例としては、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などが挙げられる。
【0066】
本発明の酸無水物基と水酸基を反応させる際に用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン、モノブチルスズオキシド等が挙げられる。
【0067】
第一の工程で得られるペンダントカルボキシル基を有する化合物(h1)〜(h3)は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)、テトラカルボン酸無水物(a)及び任意に添加するトリカルボン酸無水物(b)、チオール基を有さない水酸基含有化合物(j)を反応させることで得られる。テトラカルボン酸無水物(a)、トリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基と、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)及びチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)中の水酸基とのモル比は、0.3<[(a)+(b)]/[(g)+(j)]<1.0が、好ましく、更に好ましくは、0.5<[(a)+(b)]/[(g)+(j)]<1.0、最も好ましくは0.6<[(a)+(b)]/[(g)+(j)]<0.8である。0.3以下であると、顔料吸着部である酸無水物残基が少なくなる場合があり、又樹脂の酸価も低くなる場合もあり、1.0以上だと未反応の酸無水物基が残存してしまい、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0068】
反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃未満では反応速度が遅く、180℃以上を超えると、カルボキシル基がエステル化反応してしまい、酸価の減少や、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、酸価が5〜200mgKOH/gの範囲に入ったとき、又は、水酸基価が20〜200mgKOH/gの範囲に入った時に反応を止めてもよい。
【0069】
次に、前記化合物(h1)〜(h3)の残存しているチオール基を連鎖移動剤として水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合することで水酸基を有するビニル重合体部分Bを導入した水酸基含有化合物(k1)〜(k3)を製造する第二の工程について説明する。第二の工程で水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)を共重合することにより、分散剤のビニル重合体部分Bに水酸基を導入することができ、第三の工程で1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)と反応させることができる。
【0070】
水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(N置換型)(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類があげられる。
【0071】
なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」又は「アクリレート」を示し、「(メタ)アクリルアミド」とは、「メタクリルアミド」又は「アクリルアミド」を示す。
【0072】
又、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、インデン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類があげられる。
【0073】
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などから1種又は2種以上を選択することができる。
【0074】
本発明においては、上記に例示した水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)の中でも、下記一般式(4)で示される単量体を使用するのが、分散性の点で好ましい。
一般式(4)
【0075】
【化15】


[一般式(4)において、R2は、炭素原子数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜15の脂環式のアルキル基である。]
【0076】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)としては、水酸基を有し、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体であればどのようなものでも構わないが、具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレートなどのアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテルが挙げられる。
【0077】
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルあるいはヒドロキシアルキルアリルエーテルにアルキレンオキサイド及び/又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0078】
本発明の第二の工程では、前記化合物(h1)〜(h3)を、目的とするビニル重合体部分Bの分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することで水酸基を有するビニル重合体部分Bを導入した水酸基含有化合物(k1)〜(k3)を製造することができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)100重量部に対して、10〜300重量部の前記化合物(h1)〜(h3)を用い、塊状重合又は溶液重合を行う。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
【0079】
重合の際、エチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等があげられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メトキシプロピルアセテート等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。
【0081】
次に、第三の工程での水酸基含有化合物(k1)〜(k3)と、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)との反応について説明する。本発明の分散剤は、この水酸基含有化合物(k1)〜(k3)中の水酸基と、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基とを反応させることにより得られる。これにより、分散剤中の主にビニル重合体部分Bに(メタ)アクリロイル基を任意に導入することができ、溶媒親和性部位に硬化性を有する硬化性分散剤を得ることができる。
【0082】
第三の工程で使用される1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)としては、1つのイソシアネート基と1つまたは2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、具体的には2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。
本発明で使用される1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)は上記に例示した化合物に限らず、イソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
【0083】
水酸基含有化合物(k1)〜(k3)中の水酸基と、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基とのモル比は、水酸基含有化合物(k1)〜(k3)中の水酸基1モルに対して、1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基が0.2〜1.0モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.0モル、最も好ましくは0.5〜1.0モルである。0.2モル未満であると、(メタ)アクリロイル基の量が少なくなってしまうために硬化性が不十分な場合があり、1.0モルを超えると、樹脂中に未反応のイソシアネート基が残存してしまい、保存安定性が悪くなってしまう場合がある。
反応温度は50℃〜150℃、好ましくは70℃〜120℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、150℃を超えると反応により生成したウレタン基が分解してしまう。
【0084】
本発明の分散剤は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題を回避すべく、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
得られた分散剤の重量平均分子量は、好ましくは、2,000〜100,000である。重量平均分子量が2,000未満であれば顔料組成物の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料組成物の増粘が起きる場合がある。又、得られた分散剤の酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは、5〜150mgKOH/gであり、特に好ましくは、5〜100mgKOH/gである。酸価が5mgKOH/g未満では、顔料吸着能が低下し顔料分散性に問題がでる場合があり、200mgKOH/gを超えると、樹脂間の相互作用が強くなり顔料分散組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0085】
本発明の分散剤で分散できる顔料は、インキ等に使用される種々の顔料が挙げられる。このような顔料としては溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー6,15,15:1,15:6,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、58、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,ピグメントオレンジ13,36,37、38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。ただし、例示には限定されない。
【0086】
又、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。本発明の顔料組成物は、上記顔料に限らず、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、及び/又はこれらの合金などの金属微粒子を含む固体微粒子を使用することができる。
【0087】
又、本発明の分散剤を用いた顔料組成物には、更に塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体および塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の塩基性誘導体を含むことが好ましい。ここで、顔料誘導体とは、前記のカラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、特定の置換基を導入したものであり、本発明では塩基性基を有するものを使用する。塩基性誘導体を含むことにより、塩基性誘導体なしでは分散の難しい顔料(特に、有機顔料の場合)も、分散性、流動性、保存安定性に優れた顔料組成物とすることができ好ましい。
【0088】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性誘導体は、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体および塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれるものである。
【0089】
本発明に含まれる塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体又は塩基性基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(5)、(6)、(7)及び(8)で示される群から選ばれる少なくとも1つの置換基を有するものである。
一般式(5)
【0090】
【化16】

【0091】
一般式(6)
【0092】
【化17】

【0093】
一般式(7)
【0094】
【化18】

【0095】
一般式(8)
【0096】
【化19】

【0097】
前記一般式(5)〜(8)において、
3は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−又は直接結合を表す。
mは、1〜10の整数を表す。
6 、R7 は、それぞれ独立に、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、又はR6とR7とが一体となって形成した複素環を表す。ただし、前記複素環は、更なる窒素、酸素又は硫黄原子を含んでいてもよい。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
8 は、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
9 、R10 、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
13は、−NR16−R18−NR17−又は直接結合を表す。
16、R17は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
18は、置換されていてもよい、アルキレン基、アルケニレン基、又はフェニレン基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜8が好ましい。
14は、一般式(9)で示される置換基、又は一般式(10)で示される置換基を表す。
15は、水酸基、アルコキシル基、一般式(9)で示される置換基、又は一般式(10)で示される置換基を表す。
【0098】
一般式(9)
【0099】
【化20】

【0100】
一般式(10)
【0101】
【化21】

【0102】
前記一般式(9)、(10)において、
4、R5は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−又は直接結合を表す。
【0103】
上記一般式中のR6〜R12、R16、R17におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。又、アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基などが挙げられる。
上記一般式中のR18におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。又、アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基などが挙げられる。
【0104】
上記一般式中のR15におけるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
又、置換されてもよい官能基とは、ハロゲン基、シアノ基、アルコキシル基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、エポキシ基などが挙げられる。
【0105】
一般式(5)〜(8)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチル−ラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチル−ヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0106】
塩基性基を有する顔料誘導体に含まれる有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。又、塩基性基を有するアントラキノン誘導体及び塩基性基を有するアクリドン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基又は塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0107】
又、塩基性基を有するトリアジン誘導体を構成するトリアジンは、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、及びフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0108】
本発明に含まれる塩基性基を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体及びアクリドン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノンもしくはアクリドンに式(11)〜(14)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して一般式(5)〜(8)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
式(11) −SO2Cl
式(12)−COCl
式(13)−CH2NHCOCH2Cl
式(14)−CH2Cl
又、有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(5)〜(8)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分又はカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0109】
本発明に含まれる塩基性基を有するトリアジン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に一般式(5)〜(8)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン又はN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミン又はアルコール等を反応させることによって得られる。
特定の塩基性基を有する誘導体の具体例を以下に示すが、これらに限定されるわけではない。これらの誘導体は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0110】
【化22】

【0111】
【化23】

【0112】
【化24】

【0113】
【化25】

【0114】
【化26】

【0115】
【化27】

【0116】
【化28】

【0117】
【化29】

【0118】
【化30】

【0119】
本発明の顔料組成物において、塩基性誘導体の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部である。又、分散剤の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜200重量部、更に好ましくは2〜175重量部、最も好ましくは5〜150重量部である。
【0120】
本発明の分散剤を用いた顔料組成物は、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体を調製することができる。顔料、塩基性誘導体、分散剤、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と塩基性誘導体とのみ、あるいは、塩基性誘導体と分散剤とのみ、あるいは、顔料と塩基性誘導体と分散剤とのみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0121】
又、横型サンドミル、 縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、又は顔料への塩基性誘導体、及び/又は分散剤の処理を行ってもよい。又、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が顔料分散体を製造するために利用できる。前記の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーを溶剤代わりの媒体として用いてもよい。
【0122】
本発明の顔料組成物は、種々の印刷インキやインクジェットインキとして使用し、展色する際の定着性を付与させるためにワニスを添加し、顔料分散体として使用することができる。ワニスとして使用できる樹脂としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル酸性基含有ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0123】
本発明の顔料分散体は、非水系、水系、又は無溶剤系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インキジェットインキ、カラーフィルター用インキ、デジタルペーパー用インキ、プラスチック着色等に利用できる。
【0124】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。
(実施例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1−チオグリセロール108部、ピロメリット酸無水物174部、PGMAc(メトキシプロピルアセテート)650部、触媒としてモノブチルスズオキシド0.2部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で5時間反応させた(第一工程)。酸価の測定で95%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。次に、第一工程で得られた化合物を固形分換算で160部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート200部、エチルアクリレート200部、t−ブチルアクリレート150部、2−メトキシエチルアクリレート200部、メチルアクリレート200部、メタクリル酸50部、PGMAc663部を仕込み、反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を添加し、12時間反応した(第二工程)。固形分測定により95%が反応したことを確認した。最後に、第二工程で得られた化合物の50%PGMAc溶液を500部、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)27.0部、ヒドロキノン0.1部を仕込み、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm−1のピークの消失を確認するまで反応を行った(第三工程)。ピーク消失の確認後、反応溶液を冷却して、PGMAcで固形分調整することにより固形分50%の分散剤溶液(1)を得た。得られた分散剤の酸価は68、不飽和二重結合当量は1593、重量平均分子量は13000であった。
【0125】
(実施例2)
第三工程で2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)54.0部を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、固形分50%の分散剤溶液(2)を得た。
(実施例3〜10)
表1及び表2に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、固形分50%の分散剤溶液(3)〜(10)を得た。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
PMA:ピロメリット酸二無水物
BTA:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3′,4,4′−ビフェニルトリカルボン酸無水物
TMEG:エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル(新日本理化株式会社製:リカシッドTMEG−100)
BTDA:3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DSDA:3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BPAF :9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物
TMA:トリメリット酸無水物
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
2HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
2HBMA:2−ヒドロキシブチルメタクリレート
FM−3:末端ヒドロキシル基ポリカプロラクトン変性メタクリレート(ダイセル化学製:プラクセルFM−3)
EA:エチルアクリレート
tBA:t−ブチルアクリレート
2MTA:2−メトキシエチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
St:スチレン
MAA:メタクリル酸
MOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製:カレンズMOI)
AOI:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製:カレンズAOI)
BEI:1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工製:カレンズBEI)
MOI−EG:2−メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(昭和電工製:カレンズMOI−EG)
【0129】
(比較例1)
第一工程でフタル酸無水物267部を用いた以外は実施例4と同様にして合成を行い、固形分50%の分散剤溶液(11)を得た。得られた分散剤の酸価は20、不飽和二重結合当量は898、重量平均分子量は9000であった。
(比較例2)
実施例1の第二工程までを実施し、PGMAcで固形分調整することにより固形分50%の分散剤溶液(12)を得た。得られた分散剤の酸価は75、重量平均分子量は12000であった。
(比較例3)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、PGMAc1374部を仕込み、反応容器内を110℃に加熱して、窒素ガスで置換した。n−ブチルメタクリレート400部、ベンジルメタクリレート400部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート200部、2,2’−アゾビスジイソブチレート6部の混合物を反応容器内に2時間かけて滴下した。更に反応を5時間行い、固形分測定により95%が反応したことを確認した、重量平均分子量が8000の中間体を得た。次に、ピロメリット酸無水物99部、PGMAc113部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン1.0部を投入し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。最後に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート125部、PGMAc130部を仕込み、IRにてイソシアネート基に基づく2270cm−1のピークの消失を確認するまで反応を行った。ピーク消失の確認後、反応溶液を冷却して、PGMAcで固形分調整することにより固形分50%の分散剤溶液(13)を得た。得られた分散剤の酸価は43、不飽和二重結合当量は1593、重量平均分子量は25000であった。
【0130】
(実施例11〜20及び比較例4〜7)
実施例1で得られた分散剤溶液(1)と、顔料としてPB15:6(C.I.Pigment Blue 15:6)と、塩基性誘導体(1)と、溶剤と、ガラスビーズ(0.8mm)とを表3及び表4に示す重量(g)比で140mLのガラス瓶に仕込み、シェイカー(F&FM社製スキャンデックスSO400)(以下スキャンデックスと呼ぶ)に設置して3時間分散した。この分散体からガラスビーズを取り除き、24時間25℃で放置後、下記の試験を行った。
更に、実施例2〜10で得られた分散剤溶液(2)〜(10)、比較例1〜3で得られた分散剤溶液(11)〜(13)、市販の分散剤(比較例7、分散剤(14))と、溶剤と、ガラスビーズ(0.8mm)とを表3及び表4に示す重量(g)比で140mLのガラス瓶に仕込み、スキャンデックスにて3時間分散した。24時間25℃で放置後、下記の試験を行い、結果を表3及び表4に示した。
【0131】
(1)粘度測定
得られた分散体について、直径60mm、角度0度59分のコーンプレートを用いた、コーンプレート型粘度計で、10rad/秒の回転速度で25℃での粘度を測定した。
(2)経時保存安定性
得られた分散体について、50℃の恒温機に1週間保存して経時促進させた後、経時後の顔料分散体の粘度を前項(1)「粘度測定」と同じ方法で測定し、50℃で1週間保存した前後の粘度の変化率を計算し、以下の基準により2段階で評価した。
○:粘度変化率が±10%以内で、沈降物を生じなかった場合。
×:粘度変化率が±10%を超える場合、又は粘度変化率が±10%以内であっても沈降物を生じていた場合。
(3)耐溶剤性
得られた分散体をアルミ板の上に、バーコーター#3で塗装し、230℃オーブンで5分間焼き付けた。これをMEKに15分間浸漬し、外観を目視で判定した。
○:外観に、特に変化が見られない場合。
△:外観に、若干の変化が見られる場合。
×:表面の光沢がなくなるなど、外観に大きく変化が見られる場合。
(4)耐薬品性
前記着色膜を濃度5%の食塩水に24時間浸漬し、耐薬品性を評価した。
○:外観に、特に変化が見られない場合。
△:外観に、若干の変化が見られる場合。
×:表面の光沢がなくなるなど、外観に変化が見られる場合。
【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
PB15:6 :C.I.Pigment Blue 15:6(銅フタロシアニンブルー顔料)
PG36 :C.I.Pigment Green 36(ハロゲン化銅フタロシアニングリーン顔料)
PY138 :C.I.Pigment Yellow 138(キノフタロンイエロー顔料)
PR254 :C.I.Pigment Red 254(ジケトピロロピロールレッド顔料)
PR177 :C.I.Pigment Red 177(アントラキノンレッド顔料)
【0135】
塩基性誘導体(1):
【0136】
【化31】

(CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す)

塩基性誘導体(2):
【0137】
【化32】


(CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す)

塩基性誘導体(3):
【0138】
【化33】




塩基性誘導体(4):
【0139】
【化34】

【0140】
PGMAc:メトキシプロピルアセテート
アノン:シクロヘキサノン
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
市販分散剤:ビックケミー社製「BYK111」
以上の評価結果から明らかなように、本発明の分散剤を使用して分散した実施例11〜20の顔料分散体は、低い初期粘度で経時粘度の増加がほとんどなく良好な安定性を示しており、かつ塗膜の耐性も良好であることがわかった。これに対して、比較例4及び6の顔料分散体は粘度が高く、経時安定性が悪く分散性に問題があった。又、比較例5及び7の顔料分散体は低粘度な分散体を得ることができるが、塗膜の耐性が悪いことが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸無水物(a)及びトリカルボン酸無水物(b)から選ばれる一種以上の酸無水物中の酸無水物基と水酸基含有化合物(c)中の水酸基とを反応させてなる、カルボキシル基を有するポリエステル部分Aと、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)から選ばれる一種以上のエチレン性不飽和単量体ラジカル重合してなるビニル重合体部分Bからなる分散剤であって、ビニル重合体部分Bに(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤。
【請求項2】
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)中の水酸基と、テトラカルボン酸無水物(a)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h1)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k1)中の水酸基と、
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤。
【請求項3】
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)及びチオール基を有さない水酸基含有化合物(j)中の水酸基と、テトラカルボン酸無水物(a)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h2)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k2)中の水酸基と、
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤。
【請求項4】
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(g)中の水酸基と、トリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基と、を反応させて生成される化合物(h3)の存在下に、水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなる水酸基含有化合物(k3)中の水酸基と、
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)中のイソシアネート基と、を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有する硬化性分散剤。
【請求項5】
不飽和二重結合当量が300〜3500である、請求項1〜4いずれか記載の硬化性分散剤。
【請求項6】
重量平均分子量が2,000〜100,000であり、かつ、酸価が5〜200mgKOH/gである請求項1〜5いずれか記載の硬化性分散剤。
【請求項7】
テトラカルボン酸無水物(a)が、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の硬化性分散剤。
一般式(1)
【化1】

[一般式(1)中、kは1又は2である。]
一般式(2)
【化2】

[一般式(2)中、R1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、式:
【化3】

で表される基、又は式:
【化4】

で表される基である。]
【請求項8】
トリカルボン酸無水物(b)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の硬化性分散剤。
一般式(3)
【化5】

[一般式(3)中、kは1又は2である。]
【請求項9】
水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(f)をラジカル重合してなるビニル重合体部分Bの重量平均分子量が、1,000〜50,000である請求項1〜8いずれか記載の硬化性分散剤。
【請求項10】
水酸基を有さないエチレン性不飽和単量体(e)が、下記一般式(4)で表わされる単量体を含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の硬化性分散剤。
一般式(4)
【化6】

[一般式(4)において、R2は、炭素原子数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜15の脂環式のアルキル基である。]
【請求項11】
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)が、1つのイソシアネート基と1つまたは2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の硬化性分散剤。
【請求項12】
1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(i)が、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートのいずれかであることを特徴とする請求項1〜11いずれか記載の硬化性分散剤。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか記載の硬化性分散剤と、顔料とを含有する顔料組成物。
【請求項14】
更に、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる塩基性誘導体の少なくとも一種を含有する請求項13記載の顔料組成物。
【請求項15】
請求項13又は14記載の顔料組成物をワニスに分散させてなる顔料分散体。

【公開番号】特開2011−157416(P2011−157416A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17896(P2010−17896)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】