説明

硬化性化合物の製造方法及びそれにより得られる硬化性化合物

【課題】各種用途に有用な化合物であって、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとすることができ、かつ安全性に優れた硬化性化合物を製造する方法、並びに、その製造方法により得られる硬化性化合物及びその硬化性化合物を含む組成物を提供するものである。
【解決手段】下記一般式(1);
【化1】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)で表される化合物と、ビニルエーテル基を有する化合物とを反応させてなる硬化性化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の官能基を有する化合物を反応させることにより各種用途において有用な硬化性化合物を製造する方法、並びに、それにより得られる硬化性化合物及び組成物に関する。より詳しくは、加熱や活性エネルギー線によって硬化し得る組成物を構成する硬化性化合物の製造方法、並びに、該製造方法により得られる硬化性化合物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱や活性エネルギー線の照射によって架橋構造を形成し硬化する組成物等を構成する化合物は、各種用途における原材料として重要である。その技術は、例えば、住設分野、土木・建築分野、電気・電子・情報分野、輸送分野等における複合材料マトリックス、注型材料、インキ、コーティング剤、塗料、接着剤等の各種用途に用いられ、工業的に非常に有用である。このような硬化性組成物において、反応性を有する官能基を複数個有する化合物を用いることによって、作業時には低粘度であるため様々な形状への加工が可能で、硬化後には架橋構造を形成してガラス転移点(Tg)が高く、耐熱性や耐溶剤性等の物性に優れた硬化物を得ることができる。
【0003】
このような硬化性組成物の具体例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の硬化性化合物を含有するものが知られており、このような硬化性化合物は様々な用途に応じて使い分けられている。これらのうち特に(メタ)アクリロイル基を有する化合物は優れた硬化性を有しており、各種の塗料、接着剤、レジスト、印刷インキ等の幅広い用途に用いられている。
【0004】
ところで、このような硬化性組成物には、低粘度化のためにしばしばトルエンやメチルエチルケトンといった有機溶剤や、スチレンやメタクリル酸メチルのような揮発性の高い反応性希釈剤が使用されている。一方で、近年においては、環境問題から有機溶剤や高揮発性の反応性希釈剤に替えて水を希釈剤として用いた硬化性組成物が求められている。このような水系の硬化性組成物における硬化性化合物がエステル結合を有する化合物の場合、加水分解を受けて加熱や活性エネルギー線の照射による硬化性が低下したり、硬化物の耐水性や耐熱性が低下する傾向があり、これらの点において工夫の余地があった。
【0005】
従来の硬化性組成物の製造方法としては、N−ヒドロキシメチル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させてなる化合物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、種々の条件下で分解せず、安定的で品質を向上することができ、それに伴って各種の用途で好適に用いることができるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2004−131456号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、各種用途に有用な化合物であって、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとすることができ、かつ安全性に優れた硬化性化合物を製造する方法、並びに、その製造方法により得られる硬化性化合物及びその硬化性化合物を含む組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、硬化性化合物の製造方法について種々検討したところ、原料としてN−ヒドロキシメチルアクリルアミドのメチレン基を炭素数2以上のアルキレン基を有する化合物(N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物)とすると、強い酸等に曝されても加水分解等が生じず、安定なものとすることができるため、製造工程において原料の分解のおそれがないもことのとすることができることを見いだした。また、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることにより硬化性化合物が得られることになり、この硬化性化合物が安定な−NRO−(Rは、炭素数2以上のアルキレン基)を有するものとすることができることを見いだした。更に、生成物である硬化性化合物が耐加水分解性を発揮し、長期保存する場合において分解することなく、不純物となるアクリルアミド、ホルマリン等の発生を抑制することができ、安全性に優れるものとなることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、得られる硬化性化合物が高光感度、かつ、硬化物物性に優れることも見いだし、種々の用途に好適に適用することができることも見いだした。また、このような化合物は、水系溶媒中で保存される場合、経時後の硬化性に優れていることも見出し、更に、このような化合物と塩基性化合物とを含む組成物が有用であることも見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)で表される化合物と、ビニルエーテル基を有する化合物とを反応させてなる硬化性化合物の製造方法である。
本発明はまた、上記硬化性化合物の製造方法によって得られる硬化性化合物でもある。
本発明は更に、上記硬化性化合物と塩基性化合物とを含む組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表される化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させてなる。なお、本明細書中、上記一般式(1)で表される化合物をN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物ともいう。本発明において、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物と、ビニルエーテル基を有する化合物とは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような本発明の製造方法により得られる化合物は、各種用途に有用なものであって、用途に応じて、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを選択することにより、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとすることができるものである。このように、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物との反応によって得られる化合物、及び、後述する本発明の好ましい形態によって得られる化合物もまた、本発明の一つである。
【0012】
上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物において、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表すものである。なお、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基とは、炭素数1〜6のアルキル基が任意の炭素数の置換基を有することを意味する。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、水酸基が好適である。
またRは、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表すものである。この場合も上記と同様に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基とは、炭素数2〜6のアルキレン基が任意の炭素数の置換基を有することを意味する。炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。炭素数2〜6のアルキレン基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好適である。
上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物としては、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。最も好ましくは、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドである。
【0013】
本発明においては、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物との反応によって得られる化合物は、N−ヒドロキシアルキル基とビニルエーテル基との反応により−O−CH(CH)−O−で表される構造のアセタール結合を有する化合物を必須とするものであるか、又は、当該化合物と他の化合物との混合物であると考えられる。このような化合物においては、エステル結合を有することなく硬化性を有するものとすることができることから、エステル結合に起因する硬化物の耐水性が低下することを抑制することが可能となる。このように、エステル結合を有しないようにN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを選択して得た化合物、特にアミド基中の窒素原子とビニルエーテル基中の不飽和結合を構成する炭素原子とが結合した構造を有する化合物が生成するように反応させる形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
【0014】
本発明におけるビニルエーテル基(HC=CH−O−)を有する化合物としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル;1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ポリグリセリンポリビニルエーテル、アルキレンオキシドを付加したトリメチロールプロパントリビニルエーテル、アルキレンオキシドを付加したペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、アルキレンオキシドを付加したグリセリントリビニルエーテル、アルキレンオキシドを付加したポリグリセリンポリビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル等の(メタ)アクリロイル基含有ビニルエーテル;ビニロキシエトキシエチルアクリレート(VEEA)、ビニロキシエトキシエチルメタクリレート(VEEM)の重合体や共重合体等の側鎖ビニルエーテル基含有オリゴマー又はポリマー等が好適である。これらの中でも、ビニルエーテル基を有する化合物としては、1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有するものであることが好ましい。より好ましくは、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテルである。
【0015】
また本発明の製造方法によって得られる化合物は、水溶性のものであることが好ましい。水溶性を有するとは、固形分換算で2質量%となるように、本発明による化合物を25℃の水に溶解した場合において、その化合物を100質量%とすると、その50質量%以上が水に溶解することを意味する。好ましくは、固形分換算で5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上となるように溶解した場合である。
上記化合物に水溶性を付与する方法としては、(1)化合物中にポリエチレングリコール鎖を導入する方法、(2)水酸基を導入する方法、(3)カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン塩等の塩を導入する方法等が好適であるが、これらの中でも、(1)の方法が好ましい。
【0016】
上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物との反応モル比としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の用途や所望する物性等により適宜設定すればよいが、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物におけるN−ヒドロキシアルキル基1モルに対して、ビニルエーテル基を有する化合物におけるビニルエーテル基が0.02モル以上となるようにすることが好ましく、また、50モル以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは、0.1モル以上であり、また、10モル以下である。更に好ましくは、0.5モル以上であり、また、2モル以下である。
【0017】
上記製造方法における反応方法で、上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させる際の添加方法としては、反応初期に一括して仕込んでもよく、どちらか又は両方を連続又は断続的に反応系中に添加してもよい。また、上記反応は、触媒の存在下に行なわれることが好ましい。本発明で用いることができる触媒としては、酸が好適である。
【0018】
上記酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ピルビン酸、グリコール酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;安息香酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸キノリニウム塩等の芳香族スルホン酸又はその塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ジルコニウム等の硫酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸;リンバナジドモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸;酸性ゼオライト;ベースレジンがフェノール系樹脂又はスチレン系樹脂であり、ゲル型、ポーラス型又はマクロポーラス型の何れかの形態を示し、かつ、スルホン酸基及びアルキルスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン交換基を有する酸性イオン交換樹脂等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シュウ酸、マレイン酸、硫酸水素カリウム、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸が好ましい。他の酸触媒の場合、付加反応の触媒として作用するほか、ビニルエーテルのカチオン重合開始剤として作用することがあり、温度コントロールを厳密に行う必要がある。一方、塩酸やリン酸の場合、カチオン重合開始剤としては作用せず、付加反応にのみ選択的に効くため、温度コントロール幅が広く、製造面で非常に有利である。
【0019】
上記触媒の使用量としては、反応に用いるN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物の種類や組み合わせ等により適宜設定すればよいが、収率、触蝶の安定性、生産性及び経済性の点から、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物及びビニルエーテル基を有する化合物100質量部に対して、触媒としての有効成分で0.00001質量部以上とすることが好ましく、また、1質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、触媒としての有効成分で0.00005質量部以上であり、また、0.5質量部以下である。
【0020】
上記製造方法における反応方法としてはまた、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物及び/又はビニルエーテル基を有する化合物がラジカル重合性基を有する化合物である場合には、重合禁止剤の存在下で反応を行うことが好ましく、これにより重合を抑制し、収率を向上することができることになる。
【0021】
上記重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、アルキル化ジフェニルアミン、ベンゾキノン、フェノチアジン、及び、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類が好ましい。更に好ましくは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類である。
【0022】
上記重合禁止剤の添加量としては、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物の種類等に応じて適宜設定すればよいが、重合抑制効果、収率、生産性及び経済性の点から、該N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物及びビニルエーテル基を有する化合物100質量部に対して、0.001質量部以上とすることが好ましく、また、5質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量部以上であり、また、1質量部以下であり、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、0.1質量部以下である。
【0023】
上記製造方法の反応条件において、反応温度としては、収率、生産性及び経済性の点から、−40〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは、−30〜100℃であり、特に好ましくは、−20〜70℃である。反応時間としては、上記反応が完結するように、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物、触蝶や用いる有機溶剤の種類や組み合わせ、使用量等に応じて適宜設定すればよい。反応圧力としては、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物の種類、反応温度等により適宜設定すればよいが、反応系が液体状態に保たれる圧力であればよく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0024】
本発明の製造方法では特に溶剤を使用する必要はないが、有機溶剤1種又は2種以上を使用することもできる。有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類:クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が好適である。
【0025】
上記有機溶剤の使用量としては、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物の種類や組み合わせ等により適宜設定すればよいが、収率、生産性及び経済性の点から、これらの合計質量100質量部に対して、0〜200質量部とすることが好ましい。より好ましくは、0〜100質量部であり、特に好ましくは、0〜70質量部である。
【0026】
本発明のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物を熱や光により硬化させる場合、(熱又は光)重合開始剤が用いられる。
上記熱重合開始剤としては、公知のものを使用でき、具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエー卜、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物等が好適である。また、熱重合時には硬化促進剤を混合して使用してもよく、硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等又は3級アミン等が好適である。熱重合開始剤の添加量としては、上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物100質量部に対し、0.01質量部以上とすることが好ましく、また、10質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、また、5質量部以下であり、最も好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下である。
【0027】
上記光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、具体的には、以下のような化合物が好適である。これらは1種又は2種以上の混合物として使用される。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類。
【0028】
2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;アシルフォスフィンオキサイド類及びキサントン類。
【0029】
また水を溶媒とした水系の硬化性組成物とする場合には、水溶性の光重合開始剤を用いることが好ましく、具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー2959)又はそれの水酸基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)の水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのフェニル基へ−OCHCOONaを導入したもの、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、ダロキュアー1173)の水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのフェニル基へ−OCHCOONaを導入したもの等のα−ヒドロキシアルキルアセトフェノン類;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー369)等のα−アミノアルキルフェノン類のアミノ基を四級アンモニウム塩化したもの等が挙げられる。
【0030】
上記光重合開始剤の添加量としては、上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物100質量部に対し、0.01質量部以上とすること好ましく、また、30質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、また、20質量部以下であり、最も好ましくは0.1質量部以上であり、また、10質量部以下である。
【0031】
本発明のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物を光により硬化させる場合、光重合開始剤とともに塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としてはアミン化合物を用いることが好ましく、上記アミン化合物としては、特に制限されないが、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中で特に三級アミン化合物が好適である。
【0032】
また水を溶媒とした水系の硬化性組成物とする場合には、前述の水溶性光重合開始剤とともに水溶性の三級アミン化合物を用いることが好ましい。
具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、メチルジブタノールアミン、エチルジエタノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、エチルジブタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、プロピルジイソプロパノールアミン、プロピルジブタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルブタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、ジエチルブタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジプロピルイソプロパノールアミン、ジプロピルブタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミン、ジブチルブタノールアミン、メチルエチルエタノールアミン、メチルエチルイソプロパノールアミン、メチルエチルブタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトラプロパノールエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水酸基含有三級アミン化合物にエチレンオキサイドを付加させてポリエチレングリコール鎖を導入したもの、水酸基含有三級アミン化合物に水酸基と反応性を有する官能基を含有するモノマーを付加させて重合性二重結合を導入したもの、ポリマー又はオリゴマーに三級アミノ基を導入したもの等も用いることができる。これらのアミン化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記アミン化合物の使用量は、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物100質量部に対し、0.005質量部以上とすることが好ましく、また、15質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.025質量部以上であり、また、10質量部以下であり、最も好ましくは0.05質量部以上であり、また、5質重部以下である。
【0034】
本発明のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物はまた、他の重合性モノマー、オリゴマー、ポリマーと共存させてもよい。他の重合性モノマーとしては、以下のような化合物が好適である。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物類;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等の単官能ビニル化合物類;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、クロトン酸、クロトン酸メチル等の単官能α,β−不飽和化合物類。
【0035】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物類。
【0036】
上記他の重合性モノマーの使用量としては、上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、また、500質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは5質量部以上であり、また、200質量部以下であり、最も好ましくは10質量部以上であり、また、100質量部以下である。
【0037】
上記重合性オリゴマー又はポリマーとしては、飽和及び不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるウレタンポリ(メタ)アクリレート;多価エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が好適である。
【0038】
上記重合性オリゴマー又はポリマーの使用量としては、上記N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、また、200質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは5質量部以上であり、また、100質量部以下、最も好ましくは10質量部以上であり、また、50質量部以下である。
【0039】
本発明のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させて得られる硬化性化合物は、アルデヒドスカベンジャーを共存させてもよい。N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物との反応において、水分などの影響により副生成物としてアセトアルデヒドが生成する可能性があり、そのようなアルデヒド化合物を除去する際にはアルデヒドスカベンジャーを用いることが有効である。アルデヒドスカベンジャーの例としては、尿素、メチル尿素、フェニル尿素などのアミド化合物;エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミンなどの一級及び二級アミン化合物;ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトールなどのポリオール化合物;メラミン;ベンゾグアナミンやアセトグアナミンなどのグアナミン類などが好適に用いられる。これらの中で尿素が特に好ましい。
アルデヒドスカベンジャーの使用量としてはN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させて得られる硬化性化合物100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、また40質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは2質量部以上であり、また、30質量部以下、最も好ましくは5質量部以上であり、また、20質量部以下である。
【0040】
本発明のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることによって得られる硬化性化合物はまた、必要に応じて各種添加剤や強化材と共存させてもよい。添加剤や強化材としては、例えば、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、増粘剤、増感剤、顔料や染料などの着色剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、湿潤剤、分散安定剤、揺変化剤、導電性付与剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、その他の公知の添加剤等が好適である。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。上記硬化性化合物は、上記用途において、水系でも有機溶媒系でも好適に用いることができる。
【0041】
本発明はまた、上記硬化性化合物の製造方法によって得られる硬化性化合物でもある。このような硬化性化合物としては、上記一般式(1)で表されるN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物とを反応させることにより得られるものであり、上述のN−ヒドロキシアルキル基を有する化合物と上述のビニルエーテル基を有する化合物を、それぞれ1種又は2種以上を任意に組み合わせて得ることができるものである。上記硬化性化合物としては、例えば、ビニルエーテル基を有する化合物として1〜3官能のものを用いる場合、例えば、下記式(2)〜(4)で表される化合物であることが好適である。
なお、得られる硬化性化合物としては、下記式(2)〜(4)の場合、N−ヒドロキシアルキル基を有する化合物の水酸基とビニルエーテル基を有する化合物のビニルエーテル基とが反応した形態であるが、他の反応基が反応した形態である化合物を含んだ混合物であってもよい。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
上記式(2)〜(4)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Xは、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nは、1〜6の整数を表す。
上記式(4)において、Xとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好適である。
【0046】
本発明における好ましい実施形態として、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドとビニルエーテル基を有する化合物とを反応させる際の反応式を以下に示す。下記反応式においては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドにおける水酸基と、上述したビニルエーテル基を有する化合物(CH=CHO−Rで表す。Rは、上述したビニルエーテル基を有する化合物に対応した有機基を表す。)におけるビニルエーテル基とが反応して、下記式(5)で表される化合物等が生成することになる。
【0047】
【化5】

【0048】
またビニルエーテル基は、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドにおけるアミド基とも反応するため、下記式(6)で表される化合物が一部生成する。
【0049】
【化6】

【0050】
式中、R及びR’は、同一若しくは異なって、上記式(5)中のRと同様である。
R及びR’は、前述のビニルエーテル基を有する化合物として例示した各種化合物の骨格から選ばれるものが好ましい。
【0051】
本発明の化合物、すなわち本発明の化合物の製造方法により得られる硬化性化合物と、塩基性化合物とを含む組成物は、上述した用途に好適なものであり、このような本発明の硬化性化合物と塩基性化合物とを含む組成物もまた、本発明の一つである。
なお、このような組成物において、好ましい形態は、上述したような光硬化性を有する形態である。
【発明の効果】
【0052】
本発明の硬化性化合物の製造方法及びそれにより得られる硬化性化合物は、上述の構成よりなり、各種用途に有用な化合物であって、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとすることができ、かつ安全性に優れた硬化性化合物を製造する方法、並びに、その製造方法により得られる硬化性化合物及びその硬化性化合物を含む組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0054】
実施例1
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、滴下装置を備えたフラスコに、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人製、HEAA、以下「HEAA」と呼ぶ)115g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」と呼ぶ)0.049gと塩酸(35%塩化水素水溶液)0.423gを入れて攪拌し、水浴で30℃に保持した。続いてトリエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド工業株式会社製、TEGVE)131gを発熱に注意しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応を行い、IRにて水酸基に起因する3500cm−1付近のピークの減少、NMRにてビニルエーテル基に起因する4.0〜4.2ppm付近と6.5ppm付近のピークの消失及びアセタール結合のメチル基に起因する1.3ppm付近のピークの生成を確認した。その後、室温にてトリイソプロパノールアミン7.75gを添加した。最後に100℃に加熱し、減圧にて1時間かけて低分子量成分を除去して硬化性化合物を(1)得た。下記条件によりIR及びNMRを測定した。得られた硬化性化合物のIRチャートを図1に、NMRチャートを図2に示す。
【0055】
(IR測定条件)
装置:Thermo Nicolet社製 IR200 spectrometer
スキャン数:16
分解能:4.0
ゲイン:1
測定波数:4000〜400cm−1
【0056】
(NMR測定条件)
装置:Varian社製 UNITY plus−400
標準H測定
パルスシークエンス:s2pul
溶媒:CDCl
温度:室温
リラクゼーションディレイ: 3.000秒
パルス:45.0度
取り込み時間:4.000秒
スペクトル範囲:8000.0Hz
積算回数:16回
観測 H1, 399.9675703MHz
データプロセッシング
データポイント数 65536
測定時間 1分, 52秒
【0057】
実施例2
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、滴下装置を備えたフラスコに、HEAA115g、4H−TEMPO 0.039gと塩酸0.334gを入れて攪拌し、水浴で30℃に保持した。続いてトリメチロールプロパントリビニルエーテル(以下「TMPTVE」と呼ぶ)79.7gを発熱に注意しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応を行い、IRにて水酸基に起因する3500cm−1付近のピークの減少、NMRにてビニルエーテル基に起因する4.0〜4.2ppm付近と6.5ppm付近のピークの消失及びアセタール結合のメチル基に起因する1.3ppm付近のピークの生成を確認した。その後、室温にてトリイソプロパノールアミン6.13gを添加した。最後に100℃に加熱し、滅圧にて1時間かけて低分子量成分を除去して硬化性化合物(2)を得た。
【0058】
実施例3
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、滴下装置を備えたフラスコに、HEAA115g、4H−TEMPO 0.071gと塩酸0.611gを入れて攪拌し、水浴で30℃に保持した。続いてビニロキシエトキシエチルアクリレート(以下、VEEA)と呼ぶ)242gを発熱に注意しながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応を行い、IRにて水酸基に起因する3500cm−1付近のピークの減少、NMRにてビニルエーテル基に起因する4.0〜4.2ppm付近と6.5ppm付近のピークの消失及びアセタール結合のメチル基に起因する1.3ppm付近のピークの生成を確認した。その後、室温にてトリイソプロパノールアミン30.3gを添加した。最後に100℃に加熱し、減圧にて1時間かけて低分子量成分を除去して硬化性化合物(3)を得た。
【0059】
実施例4〜6及び比較例1、2
表1に示す配合で硬化性組成物を調合し、調合直後及び70℃30日保存後のUV硬化性試験とアクリルアミド含有量の測定を下記の方法で行った。それらの結果を表1に示す。
【0060】
〔UV硬化性試験〕
硬化性化合物20質量部に対してイオン交換水50質量部、ビス(2−メトキシエチル)エーテル28質量部と1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア2959)2質量部を混合して硬化性組成物を調合した。この硬化性組成物の調合直後のもの及び70℃30日保存後のものをガラス基材上に塗布し、水及び溶剤を含んだまま250W超高圧水銀ランプ(主波長365nm)のUVを照射した。照射エネルギーが100mJ/cmとなるごとに照射装置から取り出し、硬化度合いを指触にて評価した。評価基準は、○=固化、△=ゲル化、×=未硬化(液状)とした。
【0061】
〔アクリルアミドの定量〕
表1に示す硬化性組成物の調合直後のもの及び70℃30日保存後のものに含まれるアクリルアミド量を液体クロマトグラフィー(LC)を用いて内部標準法により定量し、組成物全体に対する含有率で示した。
100mLのメスフラスコに表1に示す硬化性組成物約0.33g(精秤する)と内部標準として使用するN−ビニルピロリドン約0.1g(精秤する)を添加して溶離液で100mLに希釈した後、下記の測定条件により測定した。
【0062】
(測定条件)
カラム:TSK−gelODS−80Ts(25cm)
溶離液:0.05質量%リン酸二水素アンモニウム水溶液/アセトニトリル=50/50(質量比)
溶離液の流量:0.5mL/分
検出波長:210nm
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態の一例である硬化性化合物(1)のIRチャートである。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態の一例である硬化性化合物(1)のNMRチャートある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表す。)で表される化合物と、ビニルエーテル基を有する化合物とを反応させてなることを特徴とする硬化性化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ビニルエーテル基を有する化合物は、1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有することを特徴とする請求項1記載の硬化性化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物は、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の硬化性化合物の製造方法によって得られることを特徴とする硬化性化合物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化性化合物と塩基性化合物とを含むことを特徴とする組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−290790(P2006−290790A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113139(P2005−113139)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】