説明

硬化性樹脂およびこれを含んでなる硬化性樹脂組成物

【課題】硬化速度が速く、硬化物の耐薬品性、耐傷性、耐候性について改良された高い屈折率を有する硬化性樹脂と該樹脂を含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式Iで示される構造の硬化性樹脂。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光および熱硬化性を有する新規な硬化性樹脂および該硬化性樹脂を含む硬化性組成物に関する。より詳しくは、1,3,4−チアジアゾール基を有する新規な硬化性樹脂に関し、またこれを利用した熱硬化性樹脂組成物または光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエポキシアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂あるいはウレタンアクリレート樹脂と称される重合性二重結合基を有する樹脂は、硬化性を有する機能性高分子材料として、感光性材料、光学材料、歯科材料、各種高分子架橋剤などの様々な分野で使用されてきた。その中で特にビスフェノール構造を有するエポキシアクリレートは硬化性が速く、耐薬品性に優れることから種々のコーティング材料として広く使用されている。例えば、特開2004−212805号公報(特許文献1)、特開2004−170816号公報(特許文献2)、特開2008−189782号公報(特許文献3)、特開2008−20629号公報(特許文献4)等には、ビスフェノール構造にアルキレンオキシ基を介して(メタ)アクリロイル基が結合した構造のエポキシアクリレート樹脂の応用が開示されている。しかしながら、これらの既存の樹脂では、耐熱性、耐光性、耐候性等の問題に加えて様々な要求性能に対する満足度が不十分であった。
【0003】
例えば感光性材料として利用する場合には、重合性二重結合基の重合性が十分でなく、光硬化後においても未反応の重合二重結合基が多量に残存するため、耐薬品性や力学的強度に劣る場合があった。
【0004】
あるいは光学材料用途に使用した場合においても、樹脂の屈折率が十分に高くなく、さらには体積収縮が顕著であるためレンズなどの光学部品への使用には問題があった。
【0005】
こうした様々な問題点を改良すべく従来から様々な試みがなされており、耐候性や耐熱性の改良として、例えば特開平7−48424号公報(特許文献5)や特開2002−105168号公報(特許文献6)等にはフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂が開示されている。
【0006】
これら何れの場合においても、未だ硬化速度が遅く、硬化物の耐薬品性、耐傷性、耐候性および屈折率についても十分な満足の得られる樹脂が得られていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−212805号公報
【特許文献2】特開2004−170816号公報
【特許文献3】特開2008−189782号公報
【特許文献4】特開2008−20629号公報
【特許文献5】特開平7−48424号公報
【特許文献6】特開2002−105168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硬化速度が速く、硬化物の耐薬品性、耐傷性、耐候性について改良された高い屈折率を有する硬化性樹脂と該樹脂を含む硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、下記一般式Iで示される構造の硬化性樹脂を用いることで解決される。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは、アリーレン基、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−CH−、−CH(OH)−、−CH(−)−および−CHO−から選ばれる基あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Xはビスフェノール構造を有する連結基を表す。nは0〜20の整数を表す。
【発明の効果】
【0012】
硬化速度が速く、硬化物の耐薬品性、耐傷性、耐候性について改良された高い屈折率を有する硬化性樹脂と該樹脂を含む硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記一般式Iで示される構造の樹脂について詳細に説明を行う。Xで示すビスフェノール構造を有する基として好ましい例を下記化学式で例示する。
【0014】
【化2】

【0015】
次に、一般式I中の重合に寄与する部分(CH=C(R)−L−)の好ましい例を下記化学式で例示する。
【0016】
【化3】

【0017】
上記化学式から選ばれる任意の重合性基が一般式Iで示される構造式中の1,3,4−チアジアゾール基に結合した一方の硫黄原子に結合する。他方のチアジアゾール基に結合している硫黄原子はヒドロキシ置換プロピレン基を介して基Xに結合している。一般式Iの構造の樹脂の合成方法について説明する。一般式Iの構造の樹脂を得るためには、ビスフェノール構造を有する基Xを有する化合物とエピクロルヒドリンから下記一般式IIの構造の中間体を合成する工程が必要である。式中nは一般式Iにおけるnと同一である。
【0018】
【化4】

【0019】
上記において具体的には基Xを有する各種ビスフェノール誘導体として例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノール誘導体と、エピクロルヒドリンを反応させることで一般式IIの構造の中間体を得ることができる。この場合の合成条件として、反応温度は50〜120℃の範囲で、反応時間は3〜48時間の範囲で行われる。発生する塩酸を中和するため、水酸化ナトリウムなどの水溶液を添加して反応を行うことが好ましく行われる。この際、発生する水は減圧下に溜去されることが好ましい。この際のビスフェノール誘導体とエピクロルヒドリンの割合を変化させたり、合成条件を変化させることで、付加モル数であるnの値を0から20の範囲にあるよう制御することが可能である。このような一般式IIの構造のエポキシ樹脂の合成方法については、例えば、S.R.Sandler and W.Karo,PolymerSyntheses,Vol.2,second Ed.,AcademicPress,Inc.,Chapter3等に詳しく述べられている。
【0020】
一般式IIの構造の中間体を用いて一般式Iの構造の樹脂を得るには下記スキームIとスキームIIの二つのルートが可能である。スキームIは、下記一般式IIIの中間体を合成し、これと一般式IIの中間体を反応させることで一般式Iの構造の樹脂を得る方法である。
【0021】
【化5】

【0022】
上記化学式中のRおよびLは一般式I中のRおよびLと各々同一である。
【0023】
【化6】

【0024】
スキームIIは一般式IIIの中間体の合成を行わず、一般式IIの中間体に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを反応させ、次いで重合性二重結合基を有する基を付加させる工程からなる。
【0025】
【化7】

【0026】
スキームIおよびスキームIIのどちらの合成方法を選択するかは、一般式IIIの中間体の合成の容易さやコストおよび目的とする一般式Iの構造の硬化性樹脂の収率やコストなどの様々な因子をみて最適の方法が決定される。具体的な合成方法については後述する合成例にさらに詳しく述べる。
【0027】
本発明で得られる一般式Iの構造の硬化性樹脂の好ましい例を以下に挙げる。好ましい例の最初のケースとしてスチレン誘導体の場合を挙げることができる。式中nは0から20までの整数を表す。
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
一般式Iの構造の硬化性樹脂の別の好ましい例として、下記で示す様々な構造のメタクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。式中nは0から20までの整数を表す。
【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
一般式Iの構造の硬化性樹脂の別の好ましい例として、下記で示す様々な構造のアクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。式中nは0から20までの整数を表す。
【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
一般式Iの構造の硬化性樹脂のさらに別の好ましい例として、下記で示す様々な構造の酢酸ビニル誘導体を挙げることができる。式中nは0から20までの整数を表す。
【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
本発明で得られる一般式Iの構造の硬化性樹脂を使用して硬化性組成物を形成するためには、該化合物と併せて重合開始剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる重合開始剤としては、熱重合開始剤と光重合開始剤が挙げられる。熱重合開始剤と本発明の該樹脂の両方を含む組成物は熱硬化性組成物として利用可能であり、光重合開始剤と本発明の該樹脂の両方を含む組成物は光硬化性組成物として利用可能である。
【0042】
本発明の熱硬化性組成物に用いることのできる熱重合開始剤としては、公知の各種重合開始剤を用いることができ、例えば、ケトンパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系、アゾビス系などのラジカル重合開始剤が用いられる。これらの内、特にジアシルパーオキサイド系およびアゾビス系の重合開始剤が好ましく用いることができ、例えば過酸化ベンゾイルやアゾビス(イソブチロニトリル)などが最も好ましく用いられる。
【0043】
本発明の光硬化性組成物に用いることのできる光重合開始剤としては、光または電子線の照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。好ましい例としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)アジニウム化合物、(g)活性エステル化合物、(h)メタロセン化合物、(i)トリハロアルキル置換化合物、および(j)有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0044】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、“RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、あるいはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類を挙げることができる。
【0045】
(b)芳香族オニウム塩の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げることができる。
【0046】
(c)有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を一個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
【0047】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0048】
(e)ケトオキシムエステルの例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0049】
(f)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報等に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0050】
(g)活性エステル化合物の例としては特公昭62−6223号公報等に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報等に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0051】
(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報等に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。具体的なチタノセン化合物としては、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
【0052】
(i)トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号明細書、米国特許第3,987,037号明細書、米国特許第4,189,323号明細書、特開昭61−151644号公報、特開昭63−298339号公報、特開平4−69661号公報、特開平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号公報、特開昭55−77742号公報、特開昭60−138539号公報、特開昭61−143748号公報、特開平4−362644号公報、特開平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0053】
(j)有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号公報、特開平9−106242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物および有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号公報、特開平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−292014号公報、特開平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号公報、特開平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
【0054】
上記した熱重合開始剤あるいは光重合開始剤は単独で用いても良いし、任意の2種以上の組み合わせで用いても良い。上記のような種々の重合開始剤を本発明の一般式Iの構造の硬化性樹脂とともに用いる場合には両者の割合には好ましい範囲が存在する。該硬化性樹脂あるいはこれとともに下記に示すこれ以外の各種モノマーと混合して使用する場合には、全ての硬化性樹脂およびモノマーの総量100質量部に対して、重合開始剤の好ましい使用量は0.5質量部から50質量部の範囲である。
【0055】
本発明の一般式Iの構造の硬化性樹脂は単独で使用しても良いが、あるいはこれとともに公知の各種モノマーと併用して用いることも可能である。併用して用いるモノマーは特に反応性希釈剤として機能し、該硬化性組成物としての粘度を低下させることから熱および光硬化速度を高めたり、反応率を高める上で効果がある場合がある。反応性希釈剤として用いることのできるモノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステルあるいはアルキルアリールエステル類、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、あるいは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、あるいは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、あるいは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、あるいは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、あるいはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、あるいは多官能性モノマーとして、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー、あるいは、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種重合体としてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等各種モノマーを適宜反応性希釈剤として本発明の該樹脂とともに使用することができる。
【0056】
本発明の一般式Iの構造の硬化性樹脂を、これとともに上記の反応性希釈剤としての各種モノマーと併用して用いる場合には、両者の総和を100質量%とした場合に、本発明の硬化性樹脂は20質量%以上の割合で含まれていることが必要であり、これ未満の割合では、本発明の効果が認められない場合がある。
【0057】
本発明に関わる該硬化性組成物中は各種ポリマー中に分散した状態でも使用することが可能であり、任意のポリマーをバインダーとして使用することも好ましく行うことができる。用いることのできるバインダーとしてのポリマーの例を挙げると、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリカーボネート樹脂等の種々の疎水性樹脂や、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロース等セルロース誘導体、各種変性でんぷんその他の水溶性ポリマーを加えて使用することも可能である。
【0058】
本発明の該硬化性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的でアゾ染料、シアニン色素、酸化チタン、カーボンブラックやフタロシアニン系顔料などの種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で炭酸カルシウム、シリカなど無機物微粒子あるいはポリスチレンビーズ、ポリシロキサンビーズなどの有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0059】
本発明の該硬化性組成物中には、さらに長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、公知の各種フェノール化合物、ハイドロキノン類、ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等が好ましく使用できる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)化合物TD−1の合成例(スキームIのルートによる)
特開2001−290271号公報に記載される方法により2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと4−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)から、一般式IIIの化合物であるチアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する下記化号物M−1を合成した。
【0061】
【化18】

【0062】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(東京化成工業株式会社製試薬)114グラムをエピクロルヒドリン(東京化成工業株式会社製試薬)925グラムに溶解し、これにベンジルトリメチルアンモニウムクロライド0.1グラムを加えて70℃に加熱した。減圧下で水酸化ナトリウム40グラムを溶解した水溶液100グラムを3時間にわたり滴下を行った。その際、生成する水をエピクロルヒドリンとの共沸で溜去し、分離したエピクロルヒドリンは再び反応系に戻した。滴下終了後さらに1時間加熱を続けた後、濾過により生成した塩を除き、減圧下にエピクロルヒドリンを溜去して、残渣をヘキサン中に移し、析出した生成物をデカンテーションにより回収した。真空乾燥器内で1昼夜乾燥した後、プロトンNMRで構造解析を行った結果、下記構造の一般式IIの化合物であることを示唆する結果を得た。
【0063】
【化19】

【0064】
さらに生成物のGPC解析を行うため、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行った。その結果、生成物は上記の化学式においてn=0の成分が約90質量%含まれ、n=1以上の成分が残りを占める分子量の混合物であることが判明した。数平均分子量から計算した生成物のエポキシ当量は190であった。
【0065】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた1リットルフラスコ内に、上記で得たM−1を133グラム秤取し、メタノール500グラムを加えて攪拌した。トリエチルアミンを5グラム加え、次いで水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液に上記で得た一般式IIの化合物95グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色固体である生成物を濾過により分離し、メタノールにより洗浄を行った後、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMRによる構造解析およびGPC解析の結果、TD−1の化学式で表される樹脂(n=0の成分が約90質量%含まれ、n=1以上の成分が残りを占める)であることを確認した。収率は78%であった。
【0066】
(実施例2)樹脂TD−1の合成例(スキームIIのルートによる)
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた200mlのフラスコ内に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを15.5グラム秤取り、メタノール80グラムを加えて攪拌した。水浴の温度を60℃に上昇し、懸濁した溶液に実施例1で得た一般式IIの化合物19グラムを内温の上昇が急激に起こらないよう注意しながら少しずつ添加した。滴下終了後、均一に溶解した溶液をさらに60℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色固体である生成物をデカンテーションにより分離し、メタノールにより洗浄した。得られた生成物をエタノール100グラムおよび2−ジメチルアミノエタノール8.5グラムを加えて溶解し、4−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)15グラムを加えて40℃の水浴上で5時間加熱攪拌を行った。その後、反応混合物を氷冷し、析出した生成物をメタノールで数回洗浄を行い、真空乾燥機内で乾燥させ、淡黄色固体を得た。プロトンNMRによる構造解析およびGPC解析の結果から目的とする樹脂TD−1の生成を確認した。収率は80%であった。
【0067】
(実施例3)樹脂TD−2の合成例(スキームIのルートによる)
実施例1において2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに換えて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(東京化成工業株式会社製試薬)168グラムを用いた以外は同様にして反応を行った。反応終了後、実施例1と同様にして生成物を回収し、プロトンNMRおよびGPCによる構造解析を行った結果、生成物のエポキシ当量は240であった。実施例1で得たM−1を加えて実施例1と同様に反応を行い、生成物を回収することで目的とする樹脂TD−2を収率80%で得た。
【0068】
(実施例4〜9)樹脂TD−3〜TD−8の合成例
実施例1において2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに換えて、各々、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(実施例4、TD−3)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(実施例5、TD−4)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド(実施例6、TD−5)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(実施例7,TD−6)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(実施例8、TD−7)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(実施例9、TD−8)をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、各々一般式IIの構造の中間体を合成し、これとM−1を実施例1と同様にして反応させることで目的とする樹脂TD−3〜TD−8を合成した。
【0069】
(実施例10)樹脂MA−1の合成例
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール400グラムを加えて攪拌を行い、水浴上に移した。懸濁した溶液中にグリシジルメタクリレート142グラム(1モル)を徐々に添加することで内温が上昇し、約15分間をかけて滴下を終了した。内温は室温から上昇して滴下終了時には55℃付近まで上昇した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させると均一に溶解した溶液を得た。この状態で1時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、さらに氷冷することで結晶が析出した。グラスフィルター上で吸引濾過を行い、水/メタノール(1/1)混合溶媒で数回洗浄を行い、乾燥させた。プロトンNMRによる構造解析の結果、一般式IIIで表される下記化合物M−2が得られていることを確認した。
【0070】
【化20】

【0071】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた200mlフラスコ内に、上記M−2を14.6グラム秤取し、メタノール80グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液に実施例1で得た一般式IIの化合物9.5グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMR解析を行い、さらに先と同様なGPC解析を行った結果、MA−1の化学式で表される樹脂であることを確認した。収率は76%であった。
【0072】
(実施例11〜17)樹脂MA−2〜MA−8の合成例
実施例1において2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに換えて、各々、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン(実施例11、MA−2)、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル(実施例12、MA−3)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド(実施例13、MA−4)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(実施例14、MA−5)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(実施例15、MA−6)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(実施例16、MA−7)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(実施例17、MA−8)をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、各々一般式IIの構造の中間体を合成し、これとM−2を実施例10と同様にして反応させることで目的とする樹脂MA−2〜MA−8を合成した。
【0073】
(実施例18)樹脂BA−1の合成例
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール600グラムを加えて氷冷下、攪拌を行いながら、ジメチルアミノエタノール89グラム(1モル)を加えて溶液とした。50℃に調整した水浴上に移し、溶液中に2−ブロモエチルアクリレート142グラム(1モル)を約30分間かけて滴下した。さらに4時間攪拌を行った後、溶媒をエバポレートし、酢酸エチル300mlを加えて残渣を溶解し、分液漏斗に移して蒸留水で数回洗浄した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで1晩乾燥させ、エバポレートした。プロトンNMRによる構造解析の結果、一般式IIIで表される下記化合物M−3が得られていることを確認した。
【0074】
【化21】

【0075】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた200mlフラスコ内に、上記M−3を12.4グラム秤取し、メタノール80グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液に実施例1で得た一般式IIの化合物9.5グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMR解析を行い、さらに先と同様なGPC解析を行った結果、BA−1の化学式で表される樹脂であることを確認した。収率は70%であった。
【0076】
(実施例19)樹脂BA−3の合成例
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール400グラムを加えて攪拌を行い、50℃に調節した水浴上に移した。懸濁した溶液中に4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製4HBAGE)200グラム(1モル)を約15分間かけて徐々に滴下した。内温は僅かに上昇して滴下終了時には55℃付近まで上昇した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させて均一に溶解した溶液を得た。この状態で1時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、さらに氷冷することで粘稠な液体が析出した。デカンテーションによる分離を行い、水/メタノール(1/1)混合溶媒で数回洗浄を行い、乾燥させた。プロトンNMRによる構造解析の結果、下記化合物M−4が得られていることを確認した。
【0077】
【化22】

【0078】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた200mlフラスコ内に、上記M−4を18.3グラム秤取し、メタノール80グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液に実施例1で得た一般式IIの化合物9.5グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMR解析を行い、さらに先と同様なGPC解析を行った結果、BA−3の化学式で表される樹脂であることを確認した。収率は76%であった。
【0079】
(実施例20)樹脂VA−1の合成例
1リットルのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを300グラム(1モル)投入した。氷冷しながらメタノール450グラムを加え、攪拌を行いながらジメチルアミノエタノール198グラムを徐々に加え溶解した。50℃に調節した水浴上に移し、溶液中にクロロ酢酸ビニル(東京化成工業株式会社製)241グラム(1モル)を約15分間かけて徐々に滴下した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させて3時間攪拌を行った後、蒸留水100グラムを加えて室温まで冷却し、さらに氷冷することで無色結晶が析出した。濾過による分離を行い、水で数回洗浄を行い、乾燥させた。ジイソプロピルエーテル/ヘキサン混合溶媒から再結晶を行い、プロトンNMRによる構造解析の結果、下記化合物M−5が得られていることを確認した。
【0080】
【化23】

【0081】
水浴上で、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた200mlフラスコ内に、上記M−5を11.7グラム秤取し、メタノール80グラムを加えて溶解した。水浴の温度を60℃に上昇し、溶液に実施例1で得た一般式IIの化合物9.5グラムを少しずつ添加した。添加終了後、反応溶液をさらに65℃において3時間攪拌を行い、その後氷冷して放置した。沈降した淡黄色粘稠液体である生成物をデカンテーションにより分離し、再度メタノールを加えて攪拌を行い、氷冷後分離した液体をデカンテーションにより回収し、真空乾燥機内で1昼夜乾燥を行った。得られた生成物を重水素化クロロホルムに溶解しプロトンNMR解析を行い、さらに先と同様なGPC解析を行った結果、VA−1の化学式で表される樹脂であることを確認した。収率は69%であった。
【0082】
(比較合成例1)比較用樹脂R−1の合成例
実施例1で合成した一般式IIの構造の中間体19グラムを溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)50グラムに添加し、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.1グラムおよび重合禁止剤としてニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロン)0.1グラムを加え、さらにアクリル酸7.2グラムを加えて100℃に加熱した。この温度で10時間攪拌を行い、その後減圧してPGMEAを溜去し、下記構造の比較用樹脂R−1を得た。
【0083】
【化24】

【0084】
(実施例21〜24)熱硬化性組成物の実施例と比較例1、2
上記の実施例で得られた本発明の樹脂としてTD−1、MA−1、BA−1およびVA−1を使用して、各々30質量部に対して、反応性希釈剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(東京化成工業株式会社製試薬)を20質量部加え、熱重合開始剤としてアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を1質量部混合して熱硬化性組成物(実施例21〜24)を作製した。また、比較として、比較合成例1で合成した比較用樹脂R−1と、同様の構造を有する市販のビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(新中村化学工業株式会社製EA−1020)を用いて、同じ配合で同様に比較熱硬化性組成物(比較例1、2)を作製した。
【0085】
各々の熱硬化性組成物に対して、溶剤として1,4−ジオキサン(DOXと略記)を50質量部加えて溶解した溶液を作製し、この熱硬化性組成物溶液を用いて、厚みが200μmのポリエステルフィルム上にドクターバーを使用して、乾燥皮膜の厚みが5μmになるように塗布し、ドライヤーを使用して熱硬化性組成物である乾燥皮膜をポリエステルフィルム上に形成した。80℃に加熱した乾燥器内に1時間放置して各々試験用試料(実施例21〜24および比較例1、2)を作製した。
【0086】
上記のようにして形成したポリエステルフィルム上の熱硬化性組成物の熱硬化物に対する各種評価を以下のようにして実施した。
【0087】
耐薬品性の評価は、硬化後の試料表面をアセトンで湿らせた布を用いて20回強く擦りつけ、全く変化が認められなかった場合を◎とし、皮膜が僅かに変質するか、部分的に傷が入った場合を○とし、皮膜は残存しているが明白なダメージが認められる場合を△とし、皮膜が完全に除去された場合を×とした。
【0088】
耐傷性の評価は、硬化後の試料表面を#1000のスチールウールで軽く押さえながら該スチールウールを30往復させて摩擦し、摩擦により生じる傷の有無、程度に応じて次のように評価した。即ち、傷がつかず外見上変化が認められなかった場合を◎とし、僅かに傷がつくが光沢に変化が認められない場合を○とし、傷がつき光沢がやや低下した場合を△、顕著に傷が入り、光沢が失われた場合を×とした。
【0089】
耐候性の評価は、硬化後の試料をキセノンフェードメータを使用して100時間キセノンランプの光を試料表面に照射し、試料表面の着色の程度を照射前の試料と比較することで評価した。この場合、比較としてポリスチレンを用い、これより着色の程度が著しい場合を×とし、同等の場合を○、その中間を△とした。
【0090】
屈折率の評価は、硬化前の熱硬化性組成物を形成する前の各々の樹脂単体を用いて、アッベ屈折率計を用いて測定した。
【0091】
このようにして得られた結果を表1にまとめた。
【0092】
【表1】

【0093】
本発明の樹脂を含んでなる熱硬化性組成物は優れた耐薬品性、耐傷性、耐候性および高い屈折率を示すことが明らかとなった。
【0094】
(実施例25〜28)光硬化性組成物の実施例と比較例3,4
上記の実施例で得られた本発明の樹脂としてTD−1、MA−1、BA−1およびVA−1を使用して、各々30質量部に対して、反応性希釈剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(東京化成工業株式会社製試薬)を20質量部加え、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを2質量部加え、さらに重合禁止剤としてニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロン)0.1質量部を加えたものを混合して光硬化性組成物(実施例25〜28)を作製した。また、比較として、比較合成例1で合成した比較用樹脂R−1と、下記構造を有する市販のビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(ナガセケムテックス株式会社製デナコールアクリレートDA−250)を用いて、同じ配合で同様に比較光硬化性組成物(比較例3、4)を作製した。
【0095】
【化25】

【0096】
各々の光硬化性組成物に対して、溶剤として1,4−ジオキサン(DOX)を50質量部加えて溶解した溶液を作製し、この光硬化性組成物溶液を用いて、200μm厚みのポリエステルフィルム上にドクターバーを使用して乾燥皮膜の厚みが大凡5μmになるように塗布し、ドライヤーを使用して光硬化性組成物である乾燥皮膜をポリエステルフィルム上に形成して各々試験用試料(実施例25〜28および比較例3、4)を作製した。
【0097】
上記のようにして形成したポリエステルフィルム上の光硬化性組成物に対して紫外線照射を行い、光硬化を行った。紫外線照射はウシオ電機株式会社製超高圧水銀ランプ搭載露光装置スポットキュアSP−Vを使用して、照射光量が300mW/cmになるように調整して、照射時間は2秒間露光を行い、都度表面のべたつきを確認しながら露光を繰り返し、表面のべたつきが認められなくなるまで光照射を繰り返した。この際の硬化に要した時間(秒)を硬化時間とした。また、各々の光硬化物に対する各種評価を先の実施例と同様にして実施し、表2に示す結果を得た。
【0098】
【表2】

【0099】
本発明の樹脂を含んでなる光硬化性組成物は速い硬化速度と優れた耐薬品性、耐傷性、耐候性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明で得られる樹脂およびこれを含む硬化性組成物は、印刷版、インキ、塗料、接着剤、表面処理剤、光学レンズ材料や光ファイバーコーティングその他の光学材料、三次元造形、ホログラフィー記録材料、プリント配線板やIC等の電子材料に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで示される構造の硬化性樹脂。
【化1】

(一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは、アリーレン基、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−CH−、−CH(OH)−、−CH(−)−および−CHO−から選ばれる基あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Xはビスフェノール構造を有する連結基を表す。nは0〜20の整数を表す。)
【請求項2】
前記請求項1に記載の硬化性樹脂とともに併せて熱重合開始剤を含んでなる熱硬化性組成物。
【請求項3】
前記請求項1に記載の硬化性樹脂とともに併せて光重合開始剤を含んでなる光硬化性組成物。

【公開番号】特開2011−93974(P2011−93974A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247445(P2009−247445)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】