説明

硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、光学材料、並びに発光装置

【課題】 機械的特性や光学的特性が発光素子の封止部材や充填部材などとして好適であり、シリコーン樹脂材料の特性に特化した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その複合材料が硬化してなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供すること。
【解決手段】 高屈折率無機微粒子の表面を表面処理剤R11〜R33で処理する。R1は長鎖状の脂肪族又は脂環族炭化水素基である。R2は付加反応性炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。R3は芳香族環を有する炭化水素基である。これらは一部の水素原子が置換されていてもよく、エステル結合やエーテル結合を有していてもよい。X1、X2、及びX3は、−COOH、−PH(O)(OH)、−PO(OH)2、−SO(OH)、−SO2(OH)、−SH、−NH2、又は−CH=CH2である。次に、この微粒子とSiH基含有シロキサン系化合物とを混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が変更された樹脂−微粒子複合体の材料である硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズや光透過性フィルムなどの一般光学部品や、オプトエレクトロニクス用の精密光学部品の材料として、有機高分子樹脂からなる光学材料(以下、略して有機光学樹脂と言う。)が用いられる傾向が強まっている。この理由として、有機光学樹脂が、無機光学材料に比べて、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れていることが挙げられる。
【0003】
例えば、有機光学樹脂は、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの発光素子を備えた発光装置(発光デバイス)の封止部材等として用いられている。これらの発光装置は、小型でありながら、高輝度であるため、自動車のストップランプ、信号灯、野外用大型ディスプレイ等、種々の用途で用いられている。また、消費電力が少なく、長寿命であることから、最近では携帯電話用液晶ディスプレイや大型液晶テレビのバックライト光源等としても用いられている。
【0004】
図5は、上記発光装置の一般的な構造の一例を示す断面図である。図5に示すように、発光装置100では、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように封止部材114が配置されている。発光素子13から出射された光は、封止部材114との境界面を通過した後、封止部材114内を通り、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、外部に取り出される。
【0005】
封止部材114は、発光素子13や配線が空気中の酸素や湿気やその他の腐食性ガスに直接接触するのを防止することや、さらには発光素子が外力によって物理的な損傷を受けるのを防止すること等を目的として設けられるもので、発光装置100の特性や封止部材114の設置目的に応じて、適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、一般的なLEDでは、発光素子13の上あるいは上方に、図5に示すような形状で適当な厚さに配置される。
【0006】
封止部材114の材料としては、従来、有機光学樹脂の1種であるビスフェノールAグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が用いられてきた。しかし、この樹脂は耐熱性および耐光性、特に紫外(UV)光や青色光に対する耐光性が不足し、近年需要が増大している高輝度LEDやUV発光LED等で使用された場合には、LEDから放射される熱や光によって変色を起こし、LEDの輝度が経時変化するという問題がある。この問題を解決するために、高透明性のエポキシ樹脂の開発が進められているが、いまだ十分な耐熱性や耐光性を得るには至っていない。
【0007】
そこで、最近、高輝度LEDや青色発光LEDでは、エポキシ樹脂に代わる封止材料として、シリコーン樹脂が用いられるようになってきている。シリコーン樹脂は耐光性が良好であり、高輝度LEDや青色発光LED等の封止に用いられた場合でも、LEDの出力を低下させる原因になりにくい。また、適度な柔軟性を有するので、発光素子の発熱によって加熱され高温になった場合でも、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。しかし、シリコーン樹脂には、その屈折率がエポキシ樹脂より小さく、1.41〜1.51であるため、LEDからの光取り出し効率が劣るという問題点がある。
【0008】
すなわち、高輝度LEDにおいては、そのチップ基板としてサファイア基板が用いられることが多く、サファイア基板側から光を取り出す方式が主流になっている。高輝度LEDから出射された光がサファイア基板と封止部材114との境界面で全反射されず、封止部材114側へ効率よく取り出されるためには、封止部材114の屈折率がサファイア基板の屈折率である1.76に近い方がよい。しかしながら、シリコーン樹脂の屈折率は、一般的なジメチルシリコーン樹脂で1.41であり、フェニル基を導入することで屈折率を高めたジフェニルジメチル系やフェニルメチル系のシリコーン樹脂でも1.51程度であり、エポキシ樹脂の屈折率である1.53〜1.57よりも小さい。そのため、高輝度LEDの封止部材114の材料としてシリコーン樹脂を用いる場合には、エポキシ樹脂を用いる場合に比べて光取り出し効率が低下することを余儀なくされる。
【0009】
上記の例のように、有機光学樹脂は一般に屈折率が小さく、屈折率が1.7をこえるものを得ることは難しい。そこで、大きな屈折率を有する無機ナノ粒子を有機光学樹脂に分散させ、有機光学樹脂を複合体化することによって、より大きな屈折率を有し、しかも、有機光学樹脂と同様に、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れている材料を実現しようとする研究開発が行われている。近年、粒径が1μm以下のナノ粒子が注目されており、粒径が光の波長の1/4以下であれば、光を散乱させることは少ない。また、無機ナノ粒子の中には、金属酸化物などからなり、大きな屈折率を有するものがある。
【0010】
例えば、後述の特許文献1には、上述した有機光学樹脂−無機ナノ粒子複合体を介して、LEDなどの発光素子からの光を取り出すように構成された発光装置が提案されている。有機光学樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示され、高屈折率の無機材料としては、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が例示され、高屈折率の無機ナノ粒子の添加によって、複合体の屈折率を1.5から1.8程度へ向上させることができると記載されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1には、有機光学樹脂に無機ナノ粒子を均一に分散させる構成や製造方法に関しては何も述べられていない。通常、有機光学樹脂に無機微粒子を均一に分散させる方法としては、まず、適当な溶媒に無機微粒子を分散させた分散液を調製し、これに硬化前の硬化性有機光学樹脂モノマーを均一に混合した後、モノマーを重合させ、有機光学樹脂−無機微粒子複合体を形成する方法が用いられる。この際、無機微粒子は一般に有機材料に対する親和性が乏しく、しかも、無機微粒子同士は凝集し合う力が極めて強いので、無機微粒子同士が凝集し、上記複合体の透明性が損なわれてしまう懸念がある。このような凝集を起こさせず、無機微粒子を有機光学樹脂中に均一に分散させるためには、無機ナノ粒子の表面処理など、何らかの追加的構成や製造方法が必要であるのは明らかである。
【0012】
無機ナノ粒子の表面処理に関しては、例えば、後述の特許文献2に、粒子径が1〜100nmの金属酸化物超微粒子の表面を酸性基、あるいは酸性基と塩基性基の両方で修飾し、電子供与性を有するポリマー中に分散させた複合体が提案されている。ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、およびビスフェノールAとエピクロロヒドリンの共重合ポリマー等が例示され、酸性基を有する表面処理剤としては、炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族カルボン酸が例示され、塩基性基を有する表面処理剤としては、炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族アミンが例示されている。
【0013】
また、後述の特許文献3には、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの金属酸化物からなるナノ粒子の表面が、特定の化学構造を有する表面処理剤で被覆されたナノ粒子であって、屈折率が1.8以上であり、アクリル樹脂モノマーに対する相溶性に優れた被覆ナノ粒子が提案されている。この表面処理剤は、ナノ粒子に対して吸着性または反応性を有する部分(A)、ナノ粒子にアクリル樹脂モノマーに対する相溶性を付与する部分(B)、および高屈折率を有する部分(C)を有し、高い屈折率を維持しながら、ナノ粒子を広範なアクリル樹脂に分散可能であると記載されている。
【0014】
部分(A)は、(I)イオン結合性基、(II)ナノ粒子と反応して共有結合を形成する基、あるいは(III)水素結合基または配位結合基のいずれかであり、(I)の場合、酸性基またはその塩、塩基性基またはその塩のいずれかであり、(II)の場合、−Si(OR1)3、−Ti(OR2)3、イソシアナト基、エポキシ基、およびエピスルフィド基のいずれかであり、(III)の場合、ヒドロキシ基(水酸基)、チオール基、ホスフィンオキシドのいずれかであると例示されている。また、部分(B)は、(メタ)アクリル基、ポリアルキレングリコール基(ポリエチレングリコール基やポリプロピレングリコール基など)、芳香族基のいずれかであると例示され、部分(C)は、少なくとも一つの硫黄原子と少なくとも一つの芳香環から構成され、かつ表面処理剤自体の屈折率が1.52以上であると例示されている。
【0015】
【特許文献1】特開2004−15063号公報(第8−10頁、図2及び3)
【特許文献2】特開2003−73558号公報(第2−4頁)
【特許文献3】特開2006−273709号公報(第4−9頁、表1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
既述したように、特許文献1には、無機ナノ粒子の表面処理に関して何も述べられていない。特許文献2に示されている酸性基を有する表面処理剤(炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族カルボン酸)、および塩基性基を有する表面処理剤(炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族アミン)のそれぞれ1種では、複合体に分散させ得る無機ナノ粒子の添加量、複合体における屈折率の向上の度合い、対応できる有機樹脂材料の種類などが狭い範囲に限定される。
【0017】
また、特許文献3に示されている表面処理剤のように、1種類の分子に、ナノ粒子に対する吸着性または反応性を有する部分(A)、有機樹脂モノマーに対する相溶性を付与する部分(B)、および高屈折率を有する部分(C)のすべてをもたせようとすると、表面処理剤分子は特殊な分子にならざるを得ない。実際、特許文献3に示されている表面処理剤は、フェニルチオ酢酸を除けば、複雑で、容易に入手できない化合物である。また、有機樹脂材料の特性が変化すると、それに合わせて部分(B)を変える必要があり、いちいち別種の表面処理剤を合成する必要がある。
【0018】
特許文献2および特許文献3には、シリコーン樹脂に特化して無機微粒子を凝集なく分散させる技術は開示されていない。また、特許文献2および特許文献3には、上記複合体を封止部材などとして用いる場合に必要な特性、例えば、硬化前の樹脂材料の流動性や、硬化後の樹脂の硬度や強度などに関する記述はない。既述したように、発光素子の封止部材などとして用いるためには、硬化前の樹脂材料が、薄膜コーティングや印刷や注入などの方法で配置できるように、好適な粘度を有する必要がある。しかも、硬化後の樹脂が、発光素子を保護できる硬度をもち、かつ、熱応力により発光素子から剥離したり、発光素子を破損したり、配線を断線させたりする等の障害を生じないように、線膨張係数が小さく、適度な柔軟性をもつ必要がある。
【0019】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、硬化前の流動性及び硬化後の硬度や強度などの機械的特性、並びに、屈折率などの光学的特性が、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適であり、シリコーン樹脂材料の特性に特化した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
即ち、本発明は、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記シリコーン樹脂材料として、少なくとも、水素原子と結合しているケイ素原子を 有するSiH基含有シロキサン系化合物を含有し、
前記微粒子の表面が、下記一般式(1)〜(3)でそれぞれ示される第1の表面処理 剤、第2の表面処理剤、及び第3の表面処理剤を含む表面処理剤によって表面処理され ており、
硬化処理に際して、前記SiH基含有シロキサン系化合物と前記第2の表面処理剤と がヒドロシリル化反応によって結合する、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に係わるものである。
第1の表面処理剤の一般式(1):R1−X1
第2の表面処理剤の一般式(2):R2−X2
第3の表面処理剤の一般式(3):R3−X3
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する、長鎖状の脂肪族又は脂環族の炭化水素基である。R2は、前記シリコーン樹脂材料と親和性を有し、付加反応性炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。R3は、芳香族環又は芳香族複素環を有する炭化水素基である。R1、R2、及びR3は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1、X2、及びX3は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、チオール基−SH、アミノ基−NH2、又はビニル基−CH=CH2である。)
【0021】
本発明は、また、前記した、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
下記一般式(1)〜(3)でそれぞれ示される第1の表面処理剤、第2の表面処理剤 、及び第3の表面処理剤を含む表面処理剤を含有する溶媒中において、前記微粒子の2 次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する 工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、水素原子と結合しているケイ素原子を有するSiH基 含有シロキサン系化合物を少なくとも含有する前記シリコーン樹脂材料とを混合する工 程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法に係わるものである。
第1の表面処理剤の一般式(1):R1−X1
第2の表面処理剤の一般式(2):R2−X2
第3の表面処理剤の一般式(3):R3−X3
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する、長鎖状の脂肪族又は脂環族の炭化水素基である。R2は、前記シリコーン樹脂材料と親和性を有し、付加反応性炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。R3は、芳香族環又は芳香族複素環を有する炭化水素基である。R1、R2、及びR3は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1、X2、及びX3は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、チオール基−SH、アミノ基−NH2、又はビニル基−CH=CH2である。)
【0022】
本発明は、また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料に係わり、また、発光素子から出射された光が、前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置に係わるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の特徴の1つは、表面処理剤として、特性の異なる3種類の表面処理剤、すなわち、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤と前記第3の表面処理剤とを用いることにある。
【0024】
前記第1の表面処理剤R1−X1は、基X1によって前記微粒子の表面に吸着されるが、炭化水素基R1は長鎖状の脂肪族又は脂環族炭化水素基であるため、前記微粒子の表面を厚く被覆する。このため、前記微粒子同士が結びつき凝集するのを防止する立体障害として機能し、前記微粒子の分散安定化に寄与する。R1は、直鎖状、分岐状、環状の何れでもよく、飽和でも不飽和でもよく、また、各種の置換基を有していてもよい。必要に応じて、前記第1の表面処理剤を2種類以上用いてもよい。
【0025】
前記第2の表面処理剤R2−X2は、前記第1の表面処理剤に比べると小さな分子であってよい。前記第2の表面処理剤は、基X2によって前記微粒子の表面に吸着される一方、前記R2によって前記シリコーン樹脂材料と親和する。このR2は、前記付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有し、前記シリコーン樹脂材料が硬化する際に、後述するヒドロシリル化反応によって前記シリコーン樹脂材料と結合し、前記シリコーン樹脂材料と一体化する。このようにして、前記第2の表面処理剤R2−X2は、硬化した樹脂−微粒子複合体において前記微粒子を安定に保持する働きをする。必要に応じて、前記第2の表面処理剤を2種類以上用いてもよい。
【0026】
前記第3の表面処理剤R3−X3は、前記R3の屈折率が高く、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を高める働きをする。
【0027】
上記のように、本発明では表面処理剤がもつべき機能を、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤と前記第3の表面処理剤とで分担し、複数種の表面処理剤の組み合わせによって実現する。このため、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤と前記第3の表面処理剤として、一般的で容易に入手可能な材料を用いることが可能になり、特許文献3に示されている構成のように特殊な材料を新たに合成する必要がない。また、前記第1の表面処理剤、前記第2の表面処理剤、及び前記第3の表面処理剤は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に必要とされる透明性、耐光性、耐熱性等の物性に応じて、それぞれ独立に、適宜選択して用いることができる。なお、前記第1の表面処理剤、前記第2の表面処理剤、及び前記第3の表面処理剤は、何れか一つでも欠けた場合には、前記未硬化又は半硬化樹脂材料中に前記微粒子を分散させる性能が不十分であるか、または屈折率を十分に高めることができない。
【0028】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の他の特徴は、前記シリコーン樹脂材料として、少なくとも前記SiH基含有シロキサン系化合物を含有し、硬化処理に際して、前記SiH基含有シロキサン系化合物と、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有する前記第2の表面処理剤とがヒドロシリル化反応によって結合することである。付加反応性とは、アルケンなどの炭素−炭素二重結合が一般的に有する、酸分子などの付加を受けやすい反応性のことであるが、本発明では、特に、下記の反応式(1)で示されるように、ケイ素原子に水素原子が結合した基(SiH基)の付加を受け、二重結合を形成している2個の炭素原子が、それぞれ、水素原子およびケイ素原子と結合を形成するヒドロシリル化反応を行う反応性を意味するものとする。
【0029】
反応式(1):
【化1】

【0030】
通常、硬化性シリコーン樹脂材料は、SiH基含有シロキサン系化合物と、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有するC=C結合含有シロキサン系化合物とで構成され、両者がヒドロシリル化反応によって重合することによって硬化する。このような硬化性シリコーン樹脂材料からなる、従来の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、前記微粒子と前記シリコーン樹脂材料との結びつきが弱い場合、硬化が始まり、SiH基含有シロキサン系化合物とC=C結合含有シロキサン系化合物との結びつきが強まり、シリコーン樹脂の高次の網目状構造が形成されると、シリコーン樹脂材料のみが高分子化して、前記微粒子が排除され、前記微粒子同士の凝集が生じ、白濁することがある。
【0031】
これに対し、本発明の前記シリコーン樹脂材料では、SiH基含有シロキサン系化合物が、前記微粒子に結合している前記第2の表面処理剤とヒドロシリル化反応によって一体化し、前記微粒子同士を橋かけすることによって、硬化する。前記微粒子をシリコーン樹脂に取り込むことによって硬化が進行するので、硬化の際に、前記微粒子がシリコーン樹脂から排除されて凝集することはない。
【0032】
上記のように、本発明の前記シリコーン樹脂材料では、C=C結合含有シロキサン系化合物がなくても硬化が可能であり、前記シリコーン樹脂材料は、C=C結合含有シロキサン系化合物を含有していても、含有していなくてもよい。前記シリコーン樹脂材料にC=C結合含有シロキサン系化合物が含まれない場合、重合度は比較的小さくなるので、硬化して生じる樹脂−微粒子複合体は柔軟性に富んだものになる。一方、前記シリコーン樹脂材料にC=C結合含有シロキサン系化合物が含まれる場合、重合度が大きくなるので、樹脂−微粒子複合体の硬度が増す。このように、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料によれば、樹脂−微粒子複合体の硬度を広い範囲にわたって変化させることができる。
【0033】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法は、
第1の表面処理剤、第2の表面処理剤、及び第3の表面処理剤を含む表面処理剤を含有する溶媒中において、前記微粒子の2次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、少なくとも、水素原子と結合しているケイ素原子を有 するSiH基含有シロキサン系化合物を含有する前記シリコーン樹脂材料とを混合する 工程を行う、
ので、前記微粒子の前記2次凝集を解消し、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を確実に製造することができる。
【0034】
また、本発明の光学材料は、前記未硬化又は半硬化樹脂材料が硬化して生じた樹脂と前記微粒子との樹脂−微粒子複合体からなる。この際、前記微粒子の表面が前記表面処理剤によって表面処理されており、しかも、前記第2の表面処理剤と一体化した前記SiH基含有シロキサン系化合物によって前記微粒子同士が橋かけされることによって硬化が起こるため、前記微粒子同士が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した樹脂−微粒子複合体が得られる。特に、粒径が小さく、高屈折率の無機材料からなる微粒子を用いれば、樹脂単独の場合と同様に、透明、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れており、しかも、樹脂単独の場合よりも大きな屈折率を有する樹脂−微粒子複合体からなる前記光学材料が得られる。なお、本発明において、「透明である」とは、後述の実施例において説明する光透過率の測定方法に基づいて測定された光透過率が、波長380〜750nmの可視光に対して80%以上であることを意味するものとする。
【0035】
また、本発明の発光装置では、発光素子から出射された光が、本発明の光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている。このため、前記光学材料として、樹脂単独の場合よりも大きな屈折率を有する上記の樹脂−微粒子複合体を用いれば、光取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、ヒドロシリル化反応触媒を含有するのがよく、その製造方法は、ヒドロシリル化反応触媒を添加して混合する工程を有するのがよい。本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、前記ヒドロシリル化反応触媒がなくても硬化可能であるが、触媒を添加すると硬化速度が速くなる利点がある。一方、前記ヒドロシリル化反応触媒の添加量が多すぎると、前記樹脂−微粒子複合体が黄変または茶変する等の問題が生じることがあるので、純度を重視する場合には、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に前記ヒドロシリル化反応触媒を添加しない方がよいこともある。
【0037】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法において、また、前記R1は、炭素数5〜18の、置換又は非置換の炭化水素基であるのがよい。具体的には、X1がカルボキシル基である場合、前記第1の表面処理剤は、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸などである。
【0038】
また、前記第2の表面処理剤R2−X2が、前記R2の末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有するのがよく、例えば、前記R2がアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するのがよい。市販のものを利用できる前記第2の表面処理剤として、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルアッシドホスフェート、アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアッシドフォスフェート、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。下記にこれらの屈折率、入手先、商品名、及び構造式を示す。
【0039】
メタクリル酸(屈折率1.4290、共栄社化学株式会社、商品名ライトエステルA):
【化2】

【0040】
2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(屈折率1.4628、共栄社化学株式会社、商品名HO−MS):
【化3】

【0041】
2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(屈折率1.4818、共栄社化学株式会社、商品名HO−HH):
【化4】

【0042】
アクリル酸(屈折率1.421、和光純薬工業株式会社):
【化5】

【0043】
2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(屈折率1.4642、共栄社化学株式会社、商品名HOA−MS):
【化6】

【0044】
2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(屈折率1.4839、共栄社化学株式会社、商品名HOA−HH):
【化7】

【0045】
2−アクリロイルオキシエチルフタル酸(屈折率1.5168、東亞合成株式会社、商品名M−5400):
【化8】

【0046】
2−アクリロイルオキシ−1−メチルエチルフタル酸(大阪有機化学工業株式会社、商品名ビスコート#2100):
【化9】

【0047】
ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成株式会社、商品名M−5300):
【化10】

(式中、n≒2)
【0048】
アクリル酸ダイマー(東亞合成株式会社、商品名M−5600):
【化11】

(式中、n≒1.4)
【0049】
また、一般式(3)において、R3は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であり、各種の置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ジフェニルメチル基、テルフェニル基、トリフェニルメチル基、ナフタレン基、フルオレン基、アントラセン基、ピレン基等の単環あるいは多環の芳香族炭化水素基であり、芳香族複素環基は、例えば、ピロール基、チオフェン基、チアゾール基、インドール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、カルバゾール基、ジベンゾチオフェン基等の単環あるいは多環の芳香族複素環基である。
【0050】
具体的には、X3がカルボキシル基である場合、前記第3の表面処理剤は、例えば、安息香酸、3−アセチル安息香酸、4−アセチル安息香酸、2−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸、4−ブチル安息香酸、4−tert−ブチル安息香酸、3,5−ジ−tert−ブチル安息香酸、2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、4−メトキシ安息香酸、2−エトキシ安息香酸、3−エトキシ安息香酸、4−エトキシ安息香酸、4−n−ブトキシ安息香酸、2−フェノキシ安息香酸、3−フェノキシ安息香酸、4−フェノキシ安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、(±)−2−フェニルプロパン酸、3−フェニルプロパン酸、2,2−ジフェニルプロパン酸、3,3−ジフェニルプロパン酸、4−ビフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ビフェニル−2−カルボン酸、ビフェニル−4−カルボン酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、(2−ナフチルチオ)酢酸、フルオレン−1−カルボン酸、フルオレン−4−カルボン酸、フルオレン−9−カルボン酸、9−アントラセンカルボン酸、1−ピレンカルボン酸、ピロール−2−カルボン酸、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、3−(2−チエニル)アクリル酸、4−チアゾールカルボン酸、インドール−2−カルボン酸、インドール−3−カルボン酸、インドール−4−カルボン酸、インドール−5−カルボン酸、インドール−6−カルボン酸、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸、ベンゾチアゾール−6−カルボン酸、4−ジベンゾチオフェンカルボン酸などである。
【0051】
上記カルボン類は、屈折率が1.56〜1.78(計算値)と高いため、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を高めることができる。
【0052】
また、前記SiH基含有シロキサン系化合物は、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分、例えばメチルフェニルシロキサンやジフェニルシロキサンの構造を有する部分からなるのがよい。有機シロキサンは化学的に安定な構造である。また、芳香族環を含有すると、前記シリコーン樹脂材料、ひいては前記樹脂−微粒子複合体の屈折率が高くなるので好ましい。この際、前記シリコーン樹脂材料は、置換基としてエポキシ基、カルボキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、グリシジルエーテル基、ポリエーテル基、およびカルビノール基などを有するのがよい。これらの基は、前記シリコーン樹脂材料と基板材料などとの結びつきを強化する働きをする。
【0053】
また、前記シリコーン樹脂材料に、ヒドロシリル化反応によって互いに重合する重合性シロキサン系化合物、すなわち、前記SiH基含有シロキサン系化合物と、付加反応性炭素−炭素二重結合を有するC=C含有シロキサン系化合物との両方が含まれているのがよい。既述したように、これは従来の硬化性シリコーン樹脂材料の構成であり、前記C=C結合含有シロキサン系化合物が適度に含まれていると、重合度が大きくなり、前記樹脂−微粒子複合体の硬度が増加する。
【0054】
前記SiH基含有シロキサン系化合物と前記C=C結合含有シロキサン系化合物とが、次々に連結して高分子を形成するには、各単量体がSiH基および付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)をそれぞれ2個以上保有していることが必要である。それ以外の制限はこれらの単量体にないが、適切な特性を有する単量体を用い、重合度を適切に調節することによって、硬化前の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、および硬化後の前記樹脂−微粒子複合体の硬度を所望の大きさにするか、少なくとも近づけることができる。例えば、低分子量の単量体を用いれば、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度を低下させることができる。また、単量体1分子が保有する付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)及び/又はSiH基の数を増加させることによって、三次元網状に高分子鎖を連結して、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させることができる。
【0055】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の前記硬化処理は、加熱によってヒドロシリル化反応による重合を促進することによって行われるのがよい。また、前記ヒドロシリル化反応触媒が白金族系触媒であるのがよく、具体的には、白金ジビニルシロキサン、白金環状ビニルメチルシロキサン、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金、塩化白金酸、ビス(エチレン)テトラクロロ二白金、シクロオクタジエンジクロロ白金、ビス(シクロオクタジエン)白金、ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ジクロロ白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、および白金カーボンなどの白金含有触媒を挙げることができる。白金含有触媒の添加量は、白金の質量が、重合性シロキサン系化合物の全質量に対して0.5〜200ppmであるのが好ましい。白金族系触媒の添加量が多すぎると、前記樹脂−微粒子複合体が黄変または茶変する等の問題が生じることがある。
【0056】
また、前記シリコーン樹脂材料に、前記SiH基含有シロキサン系化合物及び前記C=C含有シロキサン系化合物と重合しない非重合性シロキサン系化合物が含まれているのがよい。このように前記シリコーン樹脂材料を前記重合性シロキサン系化合物と前記非重合性シロキサン系化合物との混合物で構成すると、前記重合性シロキサン系化合物の粘度が大きい場合でも、低粘度の前記非重合性シロキサン系化合物を添加することによって、前記シリコーン樹脂材料全体の平均としての粘度を低下させることができる。この結果、前記シリコーン樹脂材料−微粒子複合材料において、前記微粒子の添加量を多くしても、薄膜コーティングや印刷や注入などの方法で配置できる好適な粘度を達成することができる。さらに、前記非重合性シロキサン系化合物は、硬化後の前記樹脂−微粒子複合体に柔軟性を付与する。このため、前記樹脂−微粒子複合体を用いて発光ダイオードチップを封止したLEDにおいて、前記樹脂−微粒子複合体は、熱応力によって発光素子から剥離したり、発光素子を破損したり、配線を断線させたりする等の障害を生じない、適度な柔軟性をもつことができる。
【0057】
前記非重合性シロキサン系化合物は、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分からなり、且つ、粘度が80℃において1Pa・s以下であるのがよい。例えば、前記非重合性シロキサン系化合物は、下記の一般式(4)又は(5)で示される化合物であるのがよい。但し、下記一般式(4)および(5)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、それらの結合順などの構造を示すものではない。
【0058】
一般式(4):
【化12】

【0059】
一般式(5):
【化13】

(一般式(4)及び(5)中、RAは、アルキル基、アラルキル基、ポリエーテル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、又はフルオロアルキル基であり、RB は、アルキル基、アラルキル基、ポリエーテル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、フルオロアルキル基、又はフェニル基である。RA同士及びRB 同士は、それぞれ、互いに同じでも違っていてもよい。フェニル基は、他のアリール基であってもよい。l、m、及びnは0以上の整数である。)
【0060】
この際、前記非重合性シロキサン系化合物の、前記重合性シロキサン系化合物に対する配合質量比が、0.01〜100であるのがよい。このうち、配合質量比が0.01〜2.5であると、前記樹脂−微粒子複合体はゴム状になる。封止部材などとして用いる場合のように、外部からの衝撃によって前記樹脂−微粒子複合体の形状が変化してしまわないように、比較的大きな硬度を有することが必要な場合にはこの範囲がよい。但し、配合質量比が0.01未満では、前記非重合性シロキサン系化合物を配合する有意の硬化が得られないので不都合である。一方、この比が2.5〜100であると、前記樹脂−微粒子複合体はゲル状になる。ゲル状であるとは、柔軟性を有し、しかも、全体形状を保つ性質があり、塑性変形しない性状であると定義される。封止部材と発光素子との間を埋める充填部材などとして用いる場合など、発光素子への配線を断線させたりしないように柔軟性が強く求められる場合には、この範囲がよい。但し、配合質量比が100をこえると、前記樹脂−微粒子複合体がゲル状に固化せず、発光装置の充填部材として用いた場合、充填部材が発光装置から漏れる問題が生じるので不都合である。
【0061】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が80℃で100Pa・s以下(E型粘度計による測定値。以下、同様。)であるのがよい。このようであれば、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、薄膜コーティング、印刷、注入等の方法で配置するのに適したものとなる。
【0062】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は透明であるのがよい。このようであれば、硬化して得られる樹脂−微粒子複合体を光学材料として用いることができる。
【0063】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率が1.53以上であるのがよい。この場合、この硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、既存のエポキシ樹脂の屈折率と同等以上となり、屈折率の高い光学樹脂材料として高い利用価値をもつことになる。
【0064】
また、前記微粒子を構成する前記無機材料は1.9以上の屈折率を有するのがよい。この前記無機材料は、例えば、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなるのがよい。前記微粒子は、これら無機化合物のうちの2種類以上の前記微粒子が混合された状態で構成されていてもよい。なお、上記の無機化合物を構成する金属元素の窒化物によって、前記微粒子を構成することもできる。
【0065】
また、前記微粒子の粒径(R)が20nm以下であり、2〜20nm、好ましくは2〜10nmであることが望ましい。ここで言う前記微粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した前記微粒子の観察像の粒径を計測することによって得た測定値である。透過型電子顕微鏡にて観察された前記微粒子の立体形状が球形ではない(平面形状が円形ではない)場合には、観察された前記微粒子の平面形状の面積と同じ面積を有する円形を想定し、その円形の直径を粒径とするものとする。球形ではない前記微粒子の立体形状の例として、ロッド状、回転楕円体状、直方体などを挙げることができる。
【0066】
前記微粒子の粒径(R)の平均値をRave、標準偏差をσとしたとき、前記微粒子の粒径(R)の上限が20nmであり、好ましくは10nmであるとは、
ave+2σ≦20nm
であり、好ましくは
ave+2σ≦10nm
であることを意味するものとする。
【0067】
前記微粒子の粒径を20nm以下に限定することで、レイリー散乱に起因した樹脂−微粒子複合体における光透過率の低下を抑制することができ、実用上、透明な樹脂−微粒子複合体を得ることができる。光透過率は、光路長が長くなるに伴って指数関数的に減少するので、光路長が長くなる程、小さな微粒子を用いることが好ましい。なお、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料中において前記微粒子の2次凝集体が形成されると、2次凝集体のサイズが実効的な粒子サイズとなるので、光の散乱を抑えるためには、既述したように、前記微粒子が2次凝集体を形成しないように表面処理された状態で分散していることが必要である。
【0068】
なお、前記微粒子の粒径が2nmより小さくなると、前記微粒子の比表面積が著しく大きくなり、前記微粒子の表面を被覆するために必要になる表面処理剤の量が多くなりすぎる。このような場合、被覆された前記微粒子において、屈折率の小さい表面処理剤の割合が大きくなりすぎ、前記微粒子を添加しても硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率をそれほど高めることができなくなる。また、粒径が2nmより小さくなると、少量の前記微粒子の添加で硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が著しく増加する。これらの理由から、前記微粒子の粒径は2nm以上であるのがよい。
【0069】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、以下の考え方に基づき、前記微粒子の充填量によって調節することができる。即ち、高屈折率の前記微粒子が樹脂材料中に均一に分散した前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、Maxwell-Garnet理論に基づく下記の関係式(1)を用いて見積もることができる(C. F. Bohren and D. R. Huffman, "Adsorpiton and Scattering of Light by Small Particles", John Wiley & Sons, New York, 1983, pp 213 参照)。但し、関係式(1)においては、前記微粒子を被覆する表面処理剤はないものと仮定している。

(式中、εav :前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の比誘電率
εp :前記微粒子の比誘電率
εm :樹脂の比誘電率
η :前記微粒子の体積充填率)
【0070】
屈折率nは、n=ε1/2で表されるので、式(1)を用いて、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を見積もることができる。
【0071】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料においては、前記微粒子の充填量によって屈折率の調整が可能であるため、予め前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の目標の屈折率に応じて前記微粒子の材料を選定し、更には、充填量を設定すればよい。本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の充填量は、1〜70wt%、好ましくは5〜50wt%、より好ましくは10〜40wt%である。前記微粒子の充填量が70wt%を超えると、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が高くなり、薄膜コーティング、印刷、注入等の用途に適さない。
【0072】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、前記樹脂材料単独の場合と同様に、透明、軽量、安価で、加工性や量産性に優れており、しかも、前記樹脂単独の場合よりも大きな屈折率を有するため、発光装置の光路に屈折率調整部材を設けるための発光装置用充填材料として好適に用いられ、発光装置からの光出射効率を向上させることができる。
【0073】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料には、この複合材料における樹脂材料の硬化速度および粘度、並びに、硬化によって生じる樹脂−微粒子複合体の屈折率、透明性、耐光性、耐熱性等の物性の調整のため、必要に応じて、種々の添加剤モノマーを含有させることができる。ただし、添加剤モノマーは前記微粒子の分散性を損なわない必要がある。
【0074】
また、樹脂−微粒子複合体の耐熱性、耐光性を向上させるため、公知のヒンダードアミン系化合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、TINUVIN 123等)、ヒンダードフェノール系化合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、IRGANOX 1010等)を使用することができる。その配合量は、シリコーンの合計量100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましい。
【0075】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤による前記微粒子の表面処理は、液相中において行う。具体的には、先ず、前記微粒子を有機溶媒中に展開し、次に、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤を添加する。有機溶媒は、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤が溶解するものであればよい。前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤の添加量は、前記微粒子表面を一層だけ被覆する量よりも少し過剰な量とすることが望ましい。
【0076】
次に、この混合物に対して、公知の分散機を用いた処理を行う。これによって、前記微粒子の2次凝集体が解砕される。前記微粒子が、液相合成されたものであって、未乾燥のものであれば、2次凝集が緩やかであるため、解砕が容易であり、好適である。また、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤は、分散機による解砕処理の際に前記微粒子表面に吸着される。分散機による解砕処理の温度は、室温から150℃までの間であることが望ましい。
【0077】
その後、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤で被覆された前記微粒子を、前記微粒子が一様に分散した分散液あるいは沈殿物として回収する。分散液あるいは沈殿物の違いは、使用する有機溶媒の種類による。また、得られた分散液に貧溶媒を添加して前記微粒子を再凝集させ、遠心分離により沈殿物として回収することも可能である。沈殿物として回収する場合には、遠心分離による沈殿分離、洗浄用の有機溶媒による洗浄を繰り返して余剰の前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤を除去して回収する。回収した後、沈殿物は減圧乾燥してもよい。
【0078】
また、本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記第1の表面処理剤〜前記第3の表面処理剤によって表面処理された前記微粒子と硬化性樹脂材料との混合は、具体的には、以下の2通りの方法の何れかによって行うことができる。すなわち、第1の方法は、前記微粒子を硬化性樹脂材料、および必要に応じて添加される添加成分と共通の良溶媒中に分散させた後、樹脂材料および添加成分を混合、攪拌した後、溶媒のみを加熱減圧下で除去する方法である。この際、樹脂材料および添加成分は蒸気圧が低いため、ほとんど蒸発することはない。第2の方法は、微粒子の乾燥粉と、樹脂材料および添加成分とを直接混合し、公知の混練機を用いて均一に混ぜ合わせる方法である。
【0079】
前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、温度80〜150℃に加熱することによって硬化させることができる。前記第2の表面処理剤は、前記R2の末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有するため、効率よくその一部の分子がヒドロキシル化反応によって前記SiH基含有シロキサン系化合物と一体化することが可能である。この際、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の分散性が維持されたまま、硬化が起こり、前記微粒子の位置が固定化されるので、硬化時における前記微粒子同士の凝集と、その結果起こる白濁とを効果的に防止することができる。
【0080】
本発明の光学材料は、屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられるのがよい。例えば、前記屈折率調整材料としては発光装置用充填部材に用いることができる。
【0081】
本発明の発光装置は、前記発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材とを具備する発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなるのがよい。この際、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記封止部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。
【0082】
また、前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなるのがよい。
【0083】
この際、上記発光装置が、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。この発光装置は、光を主として前方へ出射する光源として用いられる。
【0084】
或いは、上記発光装置が、前記封止部材は、円形の底面と、凸レンズ形状の側面と、凹レンズ形状の頂面とを有する軸対称形状をもち、前記底面に凹部が設けられ、前記発光素子は前記凹部内で前記底面の中心の位置に配置されており、前記発光素子から出射された光が、主として、直接に、或いは前記頂面で反射されて前記側面から外部へ取り出されるように構成されているのがよい。この発光装置は、光を主として側方へ出射する光源として用いられる。
【0085】
また、前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材及び前記封止部材が前記光学材料からなるのもよい。
【0086】
これらの発光装置において、前記封止部材の表面に防汚層が設けられているのがよい。この防汚層は、フッ素系樹脂、例えば、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物などからなるのがよい。
【0087】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態に基づく発光装置についてより具体的に説明するが、本発明の発光装置はこれらの例に限定されるものではない。
【0088】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に基づく発光装置10の構造を模式的に示す断面図である。発光装置10は、請求項36及び37に記載した発光装置に対応し、図5に示した従来の一般的な発光装置100と同様の構造を有し、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように封止部材14が配置されており、発光素子13から出射された光が、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、封止部材14を介して外部に取り出されるように構成されている。封止部材14は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置10の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図1に示すように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。
【0089】
発光装置10の特徴は、封止部材14を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子13から出射された光が発光素子13と封止部材14との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が従来の発光装置100よりも向上している。
【0090】
発光装置10を構成する発光素子13として、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザを挙げることができる。ここで、発光ダイオードとしては、赤色光(例えば、波長640nmの光)を発光する赤色発光ダイオード、緑色光(例えば、波長530nmの光)を発光する緑色発光ダイオード、青色光(例えば、波長450nmの光)を発光する青色発光ダイオード、白色発光ダイオード(例えば、紫外または青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色光を出射する発光ダイオード)を例示することができる。発光ダイオードは、所謂フェイスアップ構造を有していてもよいし、フリップチップ構造を有していてもよい。即ち、発光ダイオードは、基板、および、基板上に形成された発光層から構成されており、発光層から光が外部に出射される構造としてもよいし、発光層からの光が基板を通過して外部に出射される構造としてもよい。
【0091】
より具体的には、発光ダイオード(LED)は、例えば、基板上に形成された第1導電型(例えばn型)を有する化合物半導体層からなる第1クラッド層、第1クラッド層上に形成された活性層、活性層上に形成された第2導電型(例えばp型)を有する化合物半導体層からなる第2クラッド層が積層された構造を有し、第1クラッド層に電気的に接続された第1電極、および、第2クラッド層に電気的に接続された第2電極を備えている。発光ダイオードを構成する層は、発光波長に依存して、周知の化合物半導体材料から構成すればよい。
【0092】
なお、封止部材14の代わりに、実施の形態3において後述する光取り出しレンズを取り付けた発光装置とすることもできる。また、後述するように、封止部材14の表面に防汚層を設けてもよい。
【0093】
実施の形態2
図2は、本発明の実施の形態2に基づく発光装置20の構造を模式的に示す断面図である。発光装置20は、請求項38及び39に記載した発光装置に対応し、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように充填部材21が配置され、充填部材21に接して封止部材22が配置されており、発光素子13から出射された光が、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、充填部材21および封止部材22を介して外部に取り出されるように構成されている。
【0094】
発光装置20の特徴は、充填部材21を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子23の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子13から出射された光が発光素子13と充填部材21との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が向上している。
【0095】
しかも、光学材料が好適な硬度を有するが故に、動作中に発光素子13が高い温度になった場合においても、応力歪みが小さく抑えられる。例えば、充填部材21に埋め込まれて形成されている、(図示省略した)発光素子13の素子電極と配線電極とを接続するワイヤ配線に対し、光学材料から断線を生じさせるような応力が作用することがない。また、光学材料は耐光性および耐熱性の良好なものである。これらのことから、本発明による光学材料を用いることで、発光装置20に高い耐久性を付与することができる。
【0096】
封止部材22は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置20の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図2に示すように、充填部材21を封入するように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。封止部材22は、透明材料(例えば、屈折率1.6のポリカーボネート樹脂)からなるが、充填部材21との界面における光反射を抑制するという観点から、充填部材21を構成する光学材料と同程度の高屈折率材料からなるのが好ましい。
【0097】
高屈折率材料としては、例えば、セイコーオプティカルプロダクツ株式会社の商品名プレステージ(屈折率:1.74)や、昭和光学株式会社の商品名ULTIMAX V AS 1.74(屈折率:1.74)や、ニコン・エシロールの商品名NL5−AS(屈折率:1.74)などの高屈折率を有するプラスチック材料、HOYA株式会社製の硝材NBFD11(屈折率n:1.78)や、M−NBFD82(屈折率n:1.81)や、M−LAF81(屈折率n=1.731)などの光学ガラス、並びに、KTiOPO4(屈折率n:1.78)や、ニオブ酸リチウム[LiNbO3](屈折率n:2.23)などの無機誘電体材料を挙げることができる。
【0098】
或いはまた、封止部材22を構成する材料として、具体的には、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スピロ化合物、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、(臭素化)ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体およびその共重合体、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)、不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。なお、封止部材は、これらの材料の少なくとも1種類の材料から構成されていればよい。また、耐熱性を考慮した場合、アラミド系樹脂の使用も可能である。この場合、後述するフッ素系樹脂からなる防汚層を形成する際の加熱温度の上限が200℃以上となり、フッ素系樹脂の選択自由度を高めることができる。
【0099】
なお、封止部材22の代わりに、実施の形態3において後述する光取り出しレンズを取り付けた発光装置とすることもできる。また、後述するように、封止部材22の表面に防汚層を設けてもよい。
【0100】
実施の形態3
例えば、実施の形態1および2で説明した発光装置10または20では、発光素子13から出射された光は、反射カップ11による反射や、封止部材14や22による凸レンズ効果によって進路が変更され、発光装置10または20から外部へ出射される光の多くは、主として発光面に垂直な方向(z軸方向)に向かい、主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かう光は少ない。このような発光装置を液晶表示装置のバックライト用光源などの面状光源装置に用いた場合、面方向に広がる光が少ないため、面状光源装置に輝度むらが発生してしまう場合がある。
【0101】
本発明の実施の形態3に基づく発光装置は、上記のような現象の発生を回避するためのもので、請求項40に記載した発光装置に対応し、発光装置から外部へ出射される光の多くが、主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かうように構成されている。この発光装置は、液晶表示装置のバックライト用光源などの面状光源装置に用いるのに適している。
【0102】
図3は、本発明の実施の形態3に基づく発光装置30の構造を模式的に示す断面図である。発光装置30では、基板31の上に発光素子(発光ダイオード)32が配置され、基板31に設けられた配線部(図示せず)と発光素子32とを接続する配線39が形成されている。発光素子32の光出射側には光取り出しレンズ34が配置されており、その底面35には凹部36が設けられている。発光素子32はこの凹部36内に納められ、発光素子32と光取り出しレンズ34との間の隙間は、充填部材33によって満たされている。
【0103】
光取り出しレンズ34は、軸対称の形状をもち、円形の底面35と、側面37および頂面38とを有し、底面35の中心部に有限の大きさを有する面光源(発光素子32)が配置される(光取り出しレンズ34の詳細については、特願2005−300117参照。)。光取出しレンズ34を構成する材料の例としては、実施の形態2で前述した封止部材22を構成する材料と同じ材料を挙げることができる。
【0104】
発光素子32から上方(z軸方向)へ向かって出射された光は、充填部材33および光取り出しレンズ34内を通過した後、光取り出しレンズ34と外部との境界面であるレンズ34の頂面38に達する。小さな入射角で頂面38に入射した一部の光は、頂面38で屈折し、凹レンズ効果によって光束が広がるように光の進路が変化するものの、上方へ向かって外部へ出射される。一方、大きな入射角で頂面38に入射した大部分の光は、頂面38で全反射され、光の進路が主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かうように変化し、側面37から外部へ出射される。発光素子13から光取り出しレンズ34の側面37へ向かって出射された光は、充填部材33および光取り出しレンズ34内を通過した後、小さな入射角で側面37に入射するため、わずかに屈折するだけでほぼ直進し、外部へ出射される。結局、発光素子13から出射された多くの光が、直接に、或いはレンズ34の頂面38で反射されて、側面37から外部に取り出される。
【0105】
本実施の形態に基づく発光装置30の特徴は、充填部材33を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子(図示せず)の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子32から出射された光が発光素子32と充填部材33との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が向上する。
【0106】
なお、光取り出しレンズ34の要点を補足すると、下記の通りである。すなわち、底面35の中心を原点とし、底面35の中心を通る法線をz軸とする円筒座標(r,φ,z)を想定したとき、
頂面38は、面光源から出射される半全立体角放射光のうち、側面37と頂面38の 交わる部分における極角Θ0よりも小さい極角を有する放射光成分の一部分を全反射さ せるための、z軸に対して回転対称である非球面から成り、
側面37は、面光源から出射される半全立体角放射光のうち、極角Θ0よりも大きな 極角を有する放射光成分、および、頂面38によって全反射された放射光成分を透過さ せるための、z軸に対して回転対称である非球面から成り、
非球面からなる側面37を表すzを変数とした関数r=fS(z)において、側面3 7と頂面38の交わる部分のz座標をz1としたとき、0≦z≦z1の閉区間においてz が減少するとき関数r=fS(z)は単調増加し、且つ、該閉区間においてzの2階微 係値の絶対値|d2r/dz2|が極大となる点を少なくとも1つ有する。
但し、光取り出しレンズは、図3に示した光取り出しレンズ34に限定するものではなく、如何なる構成、構造の光取り出しレンズとすることもできる。
【0107】
実施の形態4
図4は、本発明の実施の形態4に基づく発光装置40の構造を模式的に示す断面図である。発光装置40は請求項44及び45に記載した発光装置に対応し、配線基板41上に1つ以上の発光素子43が配置され、発光素子43を封止する封止部材45、および発光素子43と封止部材45との間に存在する隙間を埋める充填部材46が配線基板41上に設けられている。発光素子43は発光ダイオード(LED)チップなどで、発光素子43の(図示省略した)素子電極は、直づけで、あるいはワイヤ配線44やはんだバンプを介して、配線層42の配線電極に接続される。
【0108】
発光装置40の特徴は、封止部材45および充填部材46を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子43から出射された光が発光素子43と充填部材46との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が従来の発光装置100よりも向上する。この際、前記非重合性シロキサン系化合物の、前記重合性シロキサン系化合物に対する配合質量比が0.01〜2.5である前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を硬化させて得たゴム状の前記樹脂−微粒子複合体を封止部材45として用い、配合質量比が2.5〜100である前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を硬化させて得たゲル状の前記樹脂−微粒子複合体を充填部材46として用いるのがよい。
【0109】
1枚の配線基板41には、三原色に対応する赤色発光LED、緑色発光LED、および青色発光LEDをセットにして配置し、これらのLEDが出射する光の混色で白色光を発生させることができる。このLEDセットをアレイ状又はマトリックスに配置した発光装置40は、白色光を出射する線状または面状光源として用いることができる。この線状または面状光源40をさらにアレイ状又はマトリックス状に配置すれば、透過型のカラー液晶表示パネルのバックライト装置として用いることができる。
【0110】
実施の形態1〜4に示した発光装置10〜40は、光の出射を必要とする如何なる分野においても使用することができ、このような分野として、例えば、液晶表示装置のバックライト[面状光源装置を含み、直下型およびエッジライト型(サイドライト型とも呼ばれる)の2形式が知られている]、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送手段における灯具や灯火(例えば、ヘッドライト、テールライト、ハイマウントストップライト、スモールライト、ターンシグナルランプ、フォグライト、室内灯、メーターパネル用ライト、各種のボタンに内蔵された光源、行き先表示灯、非常灯、非常口誘導灯等)、建築物における各種の灯具や灯火(外灯、室内灯、照明具、非常灯、非常口誘導灯等)、街路灯、信号機や看板、機械、装置等における各種の表示灯具、トンネルや地下通路等における照明具や採光部を挙げることができる。
【0111】
また、封止部材14および22や、光取り出しレンズ34の表面に防汚層を形成することもできる。防汚層の厚さは特に限定されないが、透明性の関係から0.5〜50nm、好ましくは1〜20nmであることが望ましい。防汚層を構成する材料は、フッ素系樹脂などがよく、基本的にはパーフルオロポリエーテル基を有していればよく、好ましくはアルコキシシリル基を有していればよい。
【0112】
防汚層を構成する材料は、本質的にはパーフルオロポリエーテル基以外の分子構造についての制限はないが、実際的には、合成の行い易さ、つまり実現性の観点からの要請に基づく制限は存在する。すなわち、防汚層を構成するのに好ましいフッ素系樹脂として、下記の一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を例示することができる。
f(CO−U−R4−Si(OR5)3)j・・・(6)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基であり、Uは2価の原子または基であり、R4はアルキレン基であり、R5はアルキル基であり、j=1または2である。)
【0113】
化学式(6)で示されるアルコキシシラン化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取り扱い易さ等の点から、数平均分子量で4×102〜1×104、好ましくは5×102〜4×103である。
【0114】
パーフルオロポリエーテル基Rfは、一価または二価のパーフルオロポリエーテル基であり、このようなパーフルオロエーテル基の具体的な構造を一般式(7)〜(10)に示すが、これらに限定されるものではない。一般式(7)〜(10)中、pおよびqは1〜50の整数であることが好ましく、k〜nは、それぞれ、1以上の整数を示す。また、l/mの値は、0.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。
【0115】
j=2である場合、一般式(6)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(7)を例示することができる。
−CF2−(OC24)p−(OCF2)q−OCF2−・・・(7)
【0116】
また、j=1である場合、一般式(6)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(8)〜(10)を例示することができる。但し、全てのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている必要はなく、部分的に水素原子が含まれていてもよい。
F(CF2CF2CF2)k− ・・・(8)
CF3(OCF(CF3)CF2)l(OCF2)m− ・・・(9)
F(CF(CF3)CF2)n− ・・・(10)
【0117】
また、パーフルオロポリエーテル基を含む防汚層を構成する材料として、例えば、末端に極性基を持つパーフルオロポリエーテル(特開平9−127307号公報参照。)、特定構造を有するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物(特開平9−255919号公報参照。)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を各種材料と組み合わせて得られる表面改質剤(特開平9−326240号公報、特開平10−26701号公報、特開平10−120442号公報、および特開平10−148701号公報参照。)を用いることもできる。
【0118】
Uは、パーフルオロポリエーテル基RfとR4とを連結する、2価の原子または原子団であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外の−O−、−NH−、−S−といった原子または原子団が好ましい。R4は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲であることが好ましい。具体的には、R4としてメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基等のアルキレン基や、フェニレン基を例示することができる。R5はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまり、イソプロピル基、プロピル基、エチル基、およびメチル基を例示することができる。但し、炭素数は4以上であってもよい。
【0119】
防汚層の形成のためには、通常、フッ素系樹脂(例えば、一般式(6)で示したアルコキシシラン化合物)を、溶媒に希釈して用いる。この溶媒としては、特に限定されないが、使用に当たっては、組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決める必要がある。具体的には、エチルアルコール等のアルコール系溶剤やアセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤等を例示することができ、更には、これらの単独あるいは2種以上の混合物を溶媒として用いることができる。
【0120】
あるいは又、フッ素系樹脂を溶解する溶媒は、使用にあたっての組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決定すればよく、例えば、フッ素化炭化水素系溶媒が用いられる。フッ素化炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素、エーテル等の炭化水素系溶媒の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した化合物である。例えば、日本ゼオン社製の商品名ZEORORA−HXE(沸点78℃)、パーフルオロヘプタン(沸点80℃)、パーフルオロオクタン(沸点102℃)、アウトジモント社製の商品名H−GALDEN−ZV75(沸点75℃)、H−GALDEN−ZV85(沸点85℃)、H−GALDEN−ZV100(沸点95℃)、H−GALDEN−C(沸点130℃)、H−GALDEN−D(沸点178℃)等のハイドロフルオロポリエーテル、あるいは、SV−110(沸点110℃)、SV−135(沸点135℃)等のパーフルオロポリエーテル、住友3M社製のFCシリーズ等のパーフルオロアルカン等を挙げることができる。そして、これらのフッ素化炭化水素系溶媒の中でも、上記フッ素系化合物を溶解する溶媒として、ムラのない、膜厚が均一な防汚層を得るために、沸点が70〜240℃の範囲のものを選択し、中でも、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)を選択し、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることが好ましい。沸点が低すぎると、例えば塗布ムラになり易い傾向があり、一方、沸点が高すぎると、乾燥し難くなり、均一な防汚層の形成が困難となる傾向にある。HFPEまたはHFCは、上記フッ素系化合物に対する溶解性が優れており、優れた塗布面を得ることができる。
【0121】
そして、上記フッ素系樹脂を溶媒に希釈したものを、封止部材の表面に塗布し、例えば加熱することによって溶媒を揮発させると共に、封止部材を構成する材料と防汚層を構成するフッ素系樹脂との結合を生じさせることで、封止部材の表面に防汚層を形成することができる。塗布方法としては、通常のコーティング作業で用いられる各種の方法が適用可能であるが、スピン塗布、スプレー塗布等を好ましく用いることができる。また、作業性の点から紙、布等の材料に液を含浸させて、塗布する方法を採用してもよい。加熱温度は、封止部材の耐熱性等を考慮して選定すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を封止部材として用いた場合には、30〜80℃の範囲が適当である。
【0122】
一般式(6)で示されるアルコキシシラン化合物は、パーフルオロポリエーテル基を分子中に有することにより、撥水性を有し、耐汚染性が向上している。従って、このアルコキシシラン化合物を含有する防汚層の形成によって、更に、封止部材の表面に耐摩耗性、耐汚染性等の特性を付与することができる。
【0123】
なお、封止部材を構成する材料と、防汚層を構成する材料との間の反応を促進するための触媒として、酸、塩基、リン酸エステル、および、アセチルアセトンからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を防汚層を構成する材料に添加することが好ましい。触媒として、具体的には、塩酸等の酸、アンモニア等の塩基、あるいは、リン酸ジラウリルエステル等のリン酸エステルを例示することができる。触媒の添加量として、1×10-3〜1mmol/Lを挙げることができる。酸または塩基を添加する場合には、アセチルアセトンのようなカルボニル化合物を添加すると、その反応性が高まることから、防汚層を形成するための組成物にカルボニル化合物を添加することが推奨される。このようなカルボニル化合物の添加量は、1×10-1〜1×102mmol/L程度とすることができる。このように、触媒を添加することによって、加熱(乾燥)温度を低くしても、封止部材と防汚層との間に強い結合を形成することができる。その結果、製造プロセス的に有利になると共に、封止部材を構成する材料の選定範囲が広がる。
【0124】
次に、実施の形態2で示した発光装置20の封止部材22の表面に防汚層を形成した実例について説明する。
【0125】
フッ素系樹脂として、両末端にパーフルオロポリエーテル基を有する、下記の一般式(11)で示されるアルコキシシラン化合物(平均分子量は約4000)
f(CO−NH−C36−Si(OCH2CH3)3)2・・・(11)
2重量部を、フッ素系溶剤であり、沸点が130℃のハイドロフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製、商品名H−GALDEN)200重量部に溶解し、更に、触媒として、リン酸のパーフルオロポリエーテルエステル0.08重量部を加えて均一な溶液とした後、更に、メンブランフィルターで瀘過を行い、防汚層形成用の組成物を得た。そして、封止部材22の表面に、防汚層形成用の組成物をスプレーを用いて塗布した後、温度70℃で1時間乾燥させ、封止部材22の表面に防汚層が形成された発光装置20を得た。
【0126】
得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0127】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(13)で示される樹脂(平均分子量約2000)
f=−CH2CF2(OC24)p(OCF2)qOCF2−・・・(13)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0128】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(14)で示される樹脂(平均分子量約650)
CF3(CF2)8CH2Si(OC25)3・・・(14)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0129】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0130】
実施例1〜8では、前記微粒子として酸化ジルコニウムZrO2(屈折率2.2)のナノ粒子を用い、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、前記樹脂−微粒子複合体、および前記発光装置を作製し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、屈折率、および波長380〜750nmにおける光透過率を測定し、樹脂−微粒子複合体の耐光性試験、耐熱性試験、および熱衝撃試験を行った例について具体的に説明する。この際、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における、前記非重合性シロキサン系化合物の、前記重合性シロキサン系化合物に対する配合質量比は0.01〜2.5とし、これを硬化させて得たゴム状の前記樹脂−微粒子複合体を、前記発光装置の封止部材として用いた。
【0131】
実施例1
実施例1では、前記SiH基含有シロキサン系化合物として下記の構造式(1)で示されるシロキサン系化合物Aを用い、前記非重合性シロキサン系化合物として下記の構造式(2)で示されるシロキサン系化合物Cを用いた。そしてシリコーン樹脂材料におけるシロキサン系化合物Aとシロキサン系化合物Cとの配合比を80重量部:20重量部とした。また、前記ヒドロシリル化反応触媒として白金環状ビニルメチルシロキサンを用いた。
【0132】
シロキサン系化合物Aの構造式(1):
【化14】

(式中、m、n、およびpは1〜10の整数で、且つ、n=mまたはm+1である。)
【0133】
シロキサン系化合物Cの構造式(2):
【化15】

【0134】
また、前記表面処理剤には、ZrO2ナノ粒子10gに対し、長鎖炭化水素基を有する前記第1の表面処理剤としてステアリン酸10g、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有する前記第2の表面処理剤として2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、商品名HOA−MS)2.4mL、および、芳香族環を有し、高屈折率の前記第3の表面処理剤として4−フェノキシ安息香酸4.4gを用いた。
【0135】
(1)ナノ粒子表面の処理
ゾル−ゲル法で合成された粒径8nmのZrO2ナノ粒子10gをトルエンに加え、これにステアリン酸10gとHOA−MS(商品名)2.4mLと4−フェノキシ安息香酸4.4gとを添加し、ディスパーを用いて室温で撹拌した。次に、エタノールを加えた後、遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。そして、この沈殿物にエタノールを加えて、ディスパーで沈殿物を解砕した後、再び遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。この解砕と遠心分離との工程を3回繰り返した後、沈殿物を回収し、ステアリン酸、HOA−MS、および4−フェノキシ安息香酸によって表面を被覆されたZrO2ナノ粒子を得た。なお、ZrO2ナノ粒子の粒径が8nmであるとは、粒径の平均値をDave、標準偏差をσとしたとき、Dave+2σの値が8nmを越えることはないことを意味する。
【0136】
(2)シリコーン樹脂材料の調製
まず、シロキサン系化合物A80重量部とシロキサン系化合物C20重量部とを配合し、均一に混合した。次に、白金環状ビニルメチルシロキサンを、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになるように配合し、均一に混合した。
【0137】
(3)硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の作製
(1)で得たZrO2ナノ粒子の所定量をトルエンに加え、ディスパーによってトルエン中に分散させた。この分散液と、(2)で得たシリコーン樹脂材料の所定量とを配合し、脱泡攪拌機にて両者を均一に混合した。次に、エバポレーター(設定温度40℃)を用いてこの混合液からトルエンを除去し、ステアリン酸、HOA−MS、および4−フェノキシ安息香酸によって表面を被覆されたZrO2ナノ粒子が、シリコーン樹脂材料中に分散した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を得た。
【0138】
上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の80℃における粘度を、E型粘度計(東機産業社製:型番RE550L)を用いて測定したところ、粘度は100Pa・s以下であった。また、上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を、周知のアッベ屈折率計(ATAGO社製:型番NAR−4T)を用いて測定した。測定波長はナトリウムD線(589nm)、測定温度は25℃とした。この測定結果を表1に示す。表中、粒子充填率は、被覆剤の質量を含まない、ZrO2ナノ粒子単独の質量で求めた数値である。被覆されたZrO2ナノ粒子(粒径8nm)において、ZrO2ナノ粒子の質量分率はおよそ70〜80%の間であり、残り、およそ20〜30%が表面処理剤の質量分率であった。
【0139】
また、上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光透過率を、UV−可視分光光度計(日立ハイテク社製:型番U−3410)を用い、光路長0.5mmの石英セルを使用し、波長380〜750nmの測定範囲で測定した。光透過率は90%以上であった。
【0140】
上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を2枚のシリコーンゴムシートからなる離型フィルムに挟み込み、厚みを調整し、150℃のオーブンで6時間熱処理して硬化させた。室温に戻した後、離型フィルムを取り除き、厚さ0.5mmの硬化物シートを得た。上述の硬化物シートを試験片とし、JIS A1415に基づき、フェードメーターによる96時間の耐光性試験を行い、色の変化の有無を目視で調べたところ、色の変化は無かった。また、上述の硬化物シートを試験片として、150℃の空気雰囲気下で96時間加熱する耐熱性試験を行い、その前後の透明性の変化の有無を目視で調べたところ、変化はみとめられなかった。
【0141】
(4)発光装置の組み立て
市販のLED(Lumileds社製、LUXEON(登録商標)III)から、レンズ部と封止樹脂とを除去することにより、LEDチップ基部(ベアチップと配線とその台座)を得た。次に、LEDチップ基部のベアチップと配線の全てが覆われるように上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を配置し、150℃のオーブン中で6時間加熱処理して硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を硬化させた。室温に冷却後、樹脂−微粒子複合体で封止されたLED素子を得た。
【0142】
上記のLED素子を試験片とし、−40℃で20分保持した後、120℃で20分保持する工程を300回繰り返す熱衝撃試験を行い、樹脂−微粒子複合体の剥離、チップの破損及び配線の断線の有無を調べたところ、樹脂−微粒子複合材料の剥離、チップの破損及び配線の断線はなかった。この際、同じ条件で試験片を10個作製し、その10個全てを試験し、10個全てがこの試験に合格した。
【0143】
実施例2
実施例2では、シリコーン樹脂材料におけるシロキサン系化合物Aとシロキサン系化合物Cとの配合比を60重量部:40重量部に変更し、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになる量の白金環状ビニルメチルシロキサンを触媒として配合した。それ以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0144】
実施例3
実施例3では、第3の表面処理剤である4−フェノキシ安息香酸を、ZrO2ナノ粒子10gに対し9.0gに増量した。また、前記非重合性シロキサン系化合物として、シロキサン系化合物C20重量部の代わりに、下記の構造式(3)で示されるシロキサン系化合物D20重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0145】
シロキサン系化合物Dの構造式(3):
【化16】

【0146】
実施例4
実施例4では、シリコーン樹脂材料におけるシロキサン系化合物Aとシロキサン系化合物Dとの配合比を60重量部:40重量部に変更し、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになる量の白金環状ビニルメチルシロキサンを触媒として配合した。それ以外は実施例3と同様にして硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0147】
実施例5
実施例5では、前記非重合性シロキサン系化合物として、シロキサン系化合物C20重量部の代わりに、下記の構造式(4)で示されるシロキサン系化合物E20重量部を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0148】
シロキサン系化合物Eの構造式(4):
【化17】

【0149】
実施例6
実施例6では、シリコーン樹脂材料におけるシロキサン系化合物Aとシロキサン系化合物Eとの配合比を60重量部:40重量部に変更し、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになる量の白金環状ビニルメチルシロキサンを触媒として配合した。それ以外は実施例5と同様にして硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0150】
実施例7
実施例7では、前記SiH基含有シロキサン系化合物としてシロキサン系化合物Aを用い、前記C=C結合含有シロキサン系化合物として下記の構造式(5)で示されるシロキサン系化合物Bを用い、前記非重合性シロキサン系化合物としてシロキサン系化合物Cを用いた。そしてシリコーン樹脂材料におけるシロキサン系化合物Aとシロキサン系化合物Bとシロキサン系化合物Cとの配合比を、40重量部:40重量部:20重量部とした。また、また、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになる量の白金環状ビニルメチルシロキサンを触媒として配合した。それ以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0151】
シロキサン系化合物Bの構造式(5):
【化18】

(式中、mおよびnは1〜10の整数で、且つ、n=mまたはm+1である。)
【0152】
実施例8
実施例8では、第3の表面処理剤である4−フェノキシ安息香酸を、ZrO2ナノ粒子10gに対し9.0gに増量した。また、前記非重合性シロキサン系化合物として、シロキサン系化合物C20重量部の代わりにシロキサン系化合物D20重量部を用いた。それ以外は実施例7と同様にして硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0153】
実施例2〜8でも、実施例1と同様、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の80℃における粘度、屈折率、および波長380〜750nmの光透過率を測定し、樹脂−微粒子複合体の耐光性試験、耐熱性試験、および熱衝撃試験を行った。80℃における粘度はいずれの実施例でも100Pa・s以下であった。屈折率の測定結果を表1に示す。光透過率はいずれの実施例でも90%以上であった。耐光性試験および耐熱性試験では、いずれの実施例でも変化はみとめられなかった。熱衝撃試験では、いずれの実施例でも樹脂−微粒子複合材料の剥離、チップの破損及び配線の断線はなかった。
【0154】
また、ヒドロシリル化反応触媒を添加していないこと以外は、実施例1〜8で用いた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料と同じ構成の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を用いて、硬化させることができた。この場合、硬化条件としては、150℃のオーブンで24時間加熱処理することとした。ヒドロシリル化反応触媒を添加した場合に比べて、硬化に要する時間は長くなるものの、得られた樹脂−微粒子複合体は、それぞれ、実施例1〜8で得られた樹脂−微粒子複合体と同様の評価結果を示した。
【0155】
【表1】

【0156】
実施例9および10では、実施例1〜8と同様、前記微粒子として酸化ジルコニウムZrO2のナノ粒子を用い、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、前記樹脂−微粒子複合体、および発光装置を作製し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、屈折率、および波長380〜750nmの光透過率を測定し、樹脂−微粒子複合体の耐光性試験、耐熱性試験、および熱衝撃試験を行った例について具体的に説明する。この際、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における、前記非重合性シロキサン系化合物の、前記重合性シロキサン系化合物に対する配合質量比は2.5〜100とし、これを硬化させて得たゲル状の前記樹脂−微粒子複合体を、前記発光装置の充填部材として用いた。
【0157】
実施例9
実施例9では、シリコーン樹脂材料には、前記SiH基含有シロキサン系化合物としてシロキサン系化合物A2.5重量部と、前記C=C結合含有シロキサン系化合物としてシロキサン系化合物B2.5重量部と、前記非重合性シロキサン系化合物としてシロキサン系化合物C95重量部を用いた。
【0158】
また、前記表面処理剤には、実施例1と同様、ZrO2ナノ粒子10gに対し、長鎖炭化水素基を有する前記第1の表面処理剤としてステアリン酸10g、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有する前記第2の表面処理剤として2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、商品名HOA−MS)2.4mL、および、芳香族環を有し、高屈折率の前記第3の表面処理剤として4−フェノキシ安息香酸4.4gを用いた。
【0159】
(1)ナノ粒子表面の処理
実施例1と同様にして、ステアリン酸、HOA−MS、および4−フェノキシ安息香酸によって表面を被覆されたZrO2ナノ粒子を得た。
(2)シリコーン樹脂材料の調製
まず、シロキサン系化合物A2.5重量部と、シロキサン系化合物B2.5重量部と、シロキサン系化合物C95重量部とを配合し、均一に混合した。次に、白金環状ビニルメチルシロキサンを、白金の質量がシロキサン系化合物Aの質量の5ppmになるように配合し、均一に混合した。
【0160】
(3)硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の作製
実施例1と同様にして、(1)で得たZrO2ナノ粒子の所定量をトルエンに加え、ディスパーによってトルエン中に分散させた。この分散液と、(2)で得たシリコーン樹脂材料の所定量とを配合し、脱泡攪拌機にて両者を均一に混合した。次に、エバポレーター(設定温度40℃)を用いてこの混合液からトルエンを除去し、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を得た。
【0161】
実施例1と同様にして、上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、屈折率、および光透過率を測定した。80℃における粘度はいずれの実施例でも100Pa・s以下であった。屈折率の測定結果を表2に示す。波長380〜750nmの光透過率はいずれの実施例でも90%以上であった。
【0162】
上述の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を2枚のシリコーンゴムシートからなる離型フィルムに挟み込み、厚みを調整し、150℃のオーブンで6時間加熱処理して硬化させた。室温に戻した後、離型フィルムを取り除き、厚さ0.5mmの硬化物シートを得た。上述の硬化物シートを試験片とし、JIS A1415に基づき、フェードメーターによる96時間の耐光試験を行い、色の変化の有無を目視で調べたところ、色の変化は無かった。また、上述の硬化物シートを試験片として、150℃の空気雰囲気下で96時間加熱する耐熱性試験を行い、その前後の透明性の変化の有無を目視で調べたところ、変化はみとめられなかった。
【0163】
(4)発光装置の組み立て
市販のLED(Lumileds社製、LUXEON(登録商標)III)から、そのレンズ部と封止樹脂とを除去することにより、LEDチップ基部(ベアチップと配線とその台座)を得た。一方、直径7mmの半球状のくぼみ形状を有する封止部材を用い、そのくぼみの中に充填剤として上記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を流し込んだ。次に、その上方からLEDチップ基部を、チップ基部が硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に接するように下向きに配置した。次に、150℃のオーブン中で6時間加熱処理して硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を硬化させ、充填部材を形成した。放冷して室温に戻し、LEDチップ基部、封止部材、およびLEDチップ基部と封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備した発光装置を得た。
【0164】
上記のLED素子を試験片とし、−40℃で20分保持した後、120℃で20分保持する工程を300回繰り返す熱衝撃試験を行い、樹脂−微粒子複合体の剥離、チップの破損及び配線の断線の有無を調べたところ、樹脂−微粒子複合材料の剥離、チップの破損及び配線の断線は無かった。この場合も同じ条件で試験片を10個作製し、その10個全てを試験し、10個全てがこの試験に合格した。
【0165】
実施例10
実施例10では、第3の表面処理剤である4−フェノキシ安息香酸を、ZrO2ナノ粒子10gに対し9.0gに増量した。また、前記非重合性シロキサン系化合物として、シロキサン系化合物C95重量部の代わりに、シロキサン系化合物D95重量部95を用いた。それ以外は実施例9と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。
【0166】
実施例10でも、実施例9と同様、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の80℃における粘度、屈折率、および波長380〜750nmの光透過率を測定し、樹脂−微粒子複合体の耐光性試験、耐熱性試験、および熱衝撃試験を行った。80℃における粘度は100Pa・s以下であった。屈折率の測定結果を表2に示す。光透過率は90%以上であった。耐光性試験および耐熱性試験では、変化はみとめられなかった。熱衝撃試験では、樹脂−微粒子複合材料の剥離、チップの破損及び配線の断線はなかった。
【0167】
【表2】

【0168】
比較例1
比較例1では、ステアリン酸、HOA−MS、4−フェノキシ安息香酸の何れか一つ以上を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料においては、ZrOナノ粒子は樹脂材料中で著しく凝集しており、透明でなかった。
【0169】
比較例2
比較例2では、シリコーン樹脂材料として非重合性のシロキサン系化合物のみを用いて、樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた樹脂材料−微粒子複合材料は熱硬化しなかった。
【0170】
本実施例では、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法に基づけば、第1の表面処理剤〜第3の表面処理剤を適切に組み合わせ、予めZrO2ナノ粒子の表面をこれらの表面処理剤によって表面処理した後、重合性シロキサン系化合物(前記SiH基含有シロキサン系化合物単独、または、前記SiH基含有シロキサン系化合物と前記C=C結合含有シロキサン系化合物との混合物)、および、非重合性シロキサン系化合物の混合物と混合することによって、透明で、屈折率が1.53以上であり、LEDの封止部材の形成に好適な粘度を有する硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が得られることが示された。また、この材料を硬化して得られた樹脂−微粒子体複合体は、耐熱性および耐光性に優れ、これを封止部材および充填部材として用いたLEDにおいて、この複合体は、止部材の剥離、チップの破損、および配線の断線などの障害が生じない程度に好適な柔軟性を有していた。
【0171】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が変更された樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置は、光の入出射を必要とするすべての分野において応用することができ、光学装置、とりわけ発光装置の特性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0174】
10…発光装置、11…反射カップ、12…凹部、13…発光素子、14…封止部材、
15…高屈折率微粒子、20…発光装置、21…充填部材、22…封止部材、
23…高屈折率微粒子、30…発光装置、31…基板、32…発光素子、
33…充填部材、34…光取り出しレンズ、35…光取り出しレンズの底面、
36…凹部、37…光取り出しレンズの側面、38…光取り出しレンズの頂面、
39…配線、40…発光装置、41…配線基板、42…配線層、43…発光素子、
44…ワイヤ配線、45…封止部材、46…充填部材、100…発光装置、
114…封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記シリコーン樹脂材料として、少なくとも、水素原子と結合しているケイ素原子を 有するSiH基含有シロキサン系化合物を含有し、
前記微粒子の表面が、下記一般式(1)〜(3)でそれぞれ示される第1の表面処理 剤、第2の表面処理剤、及び第3の表面処理剤を含む表面処理剤によって表面処理され ており、
硬化処理に際して、前記SiH基含有シロキサン系化合物と前記第2の表面処理剤と がヒドロシリル化反応によって結合する、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
第1の表面処理剤の一般式(1):R1−X1
第2の表面処理剤の一般式(2):R2−X2
第3の表面処理剤の一般式(3):R3−X3
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する、長鎖状の脂肪族又は脂環族の炭化水素基である。R2は、前記シリコーン樹脂材料と親和性を有し、付加反応性炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。R3は、芳香族環又は芳香族複素環を有する炭化水素基である。R1、R2、及びR3は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエーテル基及び/又はエステル基を有していてもよい。X1、X2、及びX3は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、チオール基−SH、アミノ基−NH2、又はビニル基−CH=CH2である。)
【請求項2】
ヒドロシリル化反応触媒を含有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項3】
前記R1の炭素数が5〜18である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項4】
前記R2は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項5】
前記第2の表面処理剤が、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルアッシドホスフェート、アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアッシドフォスフェート、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項4に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項6】
前記SiH基含有シロキサン系化合物は、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分からなる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂材料に、ヒドロシリル化反応によって互いに重合する重合性シロキサン系化合物、すなわち、前記SiH基含有シロキサン系化合物と、付加反応性炭素−炭素二重結合を有するC=C含有シロキサン系化合物との両方が含まれている、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項8】
前記硬化処理は加熱によって行われる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項9】
前記ヒドロシリル化反応触媒が白金族系触媒である、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項10】
前記シリコーン樹脂材料に、前記SiH基含有シロキサン系化合物及び前記C=C含有シロキサン系化合物と重合しない非重合性シロキサン系化合物が含まれている、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項11】
前記非重合性シロキサン系化合物は、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分からなり、且つ、粘度が80℃において1Pa・s以下である、請求項10に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項12】
前記非重合性シロキサン系化合物の、前記重合性シロキサン系化合物に対する配合質量比が、0.01〜100である、請求項10に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項13】
粘度が80℃において100Pa・s以下である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項14】
透明である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項15】
屈折率が1.53以上である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項16】
前記無機材料は1.9以上の屈折率を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項17】
前記無機材料は、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなる、請求項16に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項18】
前記微粒子の粒径が20nm以下である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項19】
発光装置の光路に屈折率調整部材を配置するための発光装置用充填材料として用いられる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項20】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
下記一般式(1)〜(3)でそれぞれ示される第1の表面処理剤、第2の表面処理剤 、及び第3の表面処理剤を含む表面処理剤を含有する溶媒中において、前記微粒子の2 次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記表面処理剤で表面処理する 工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、水素原子と結合しているケイ素原子を有するSiH基 含有シロキサン系化合物を少なくとも含有する前記シリコーン樹脂材料とを混合する工 程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
第1の表面処理剤の一般式(1):R1−X1
第2の表面処理剤の一般式(2):R2−X2
第3の表面処理剤の一般式(3):R3−X3
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する、長鎖状の脂肪族又は脂環族の炭化水素基である。R2は、前記シリコーン樹脂材料と親和性を有し、付加反応性炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。R3は、芳香族環又は芳香族複素環を有する炭化水素基である。R1、R2、及びR3は、一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1、X2、及びX3は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、チオール基−SH、アミノ基−NH2、又はビニル基−CH=CH2である。)
【請求項21】
ヒドロシリル化反応触媒を添加して混合する工程を有する、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項22】
前記第1の表面処理剤として、前記R1の炭素数が5〜18である表面処理剤を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項23】
前記第2の表面処理剤として、前記R2にアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する表面処理剤を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項24】
前記第2の表面処理剤として、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルアッシドホスフェート、アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアッシドフォスフェート、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項23に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項25】
前記SiH基含有シロキサン系化合物として、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分からなるシロキサン系化合物を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項26】
前記シリコーン樹脂材料として、ヒドロシリル化反応によって互いに重合する重合性シロキサン系化合物、すなわち、前記SiH基含有シロキサン系化合物と、付加反応性炭素−炭素二重結合を有するC=C含有シロキサン系化合物との両方を含むシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項27】
前記硬化処理を加熱によって行う、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項28】
前記ヒドロシリル化反応触媒として白金族系触媒を用いる、請求項21に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項29】
前記シリコーン樹脂材料として、前記SiH基含有シロキサン系化合物及び前記C=C含有シロキサン系化合物と重合しない非重合性シロキサン系化合物を含むシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項30】
前記非重合性シロキサン系化合物として、主として、芳香族環を含有する有機シロキサンの構造を有する部分からなり、且つ、粘度が80℃において1Pa・s以下であるシロキサン系化合物を用いる、請求項29に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項31】
前記非重合性シリコーンの、前記重合性シリコーンに対する配合質量比を、0.01〜100とする、請求項29に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項32】
請求項1〜19のいずれか1項に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を硬化させてなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料。
【請求項33】
屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられる、請求項32に記載した光学材料。
【請求項34】
発光装置用充填部材として用いられる、請求項32に記載した光学材料。
【請求項35】
発光素子から出射された光が、請求項32に記載した光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置。
【請求項36】
前記発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材とを具備する発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなる、請求項35に記載した発光装置。
【請求項37】
反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記封止部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、請求項36に記載した発光装置。
【請求項38】
前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなる、請求項35に記載した発光装置。
【請求項39】
反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、請求項38に記載した発光装置。
【請求項40】
前記封止部材は、円形の底面と、凸レンズ形状の側面と、凹レンズ形状の頂面とを有する軸対称形状をもち、前記底面に凹部が設けられ、前記発光素子は前記凹部内で前記底面の中心の位置に配置されており、前記発光素子から出射された光が、主として、直接に、或いは前記頂面で反射されて前記側面から外部へ取り出されるように構成されている、請求項38に記載した発光装置
【請求項41】
前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材及び前記封止部材が前記光学材料からなる、請求項35に記載した発光装置。
【請求項42】
前記封止部材の表面に防汚層が設けられている、請求項36、38、及び41のいずれか1項に記載した発光装置。
【請求項43】
前記防汚層はフッ素系樹脂からなる、請求項42に記載した発光装置。
【請求項44】
配線基板上に1つ以上の前記発光素子が配置され、前記発光素子を封止する封止部材が配線基板上に設けられている発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなる、請求項35に記載した発光装置。
【請求項45】
前記発光素子として発光ダイオードが配置され、アレイ状又はマトリックス状に配置されてバックライト装置を形成するように構成されている、請求項44に記載した発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−24117(P2009−24117A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190335(P2007−190335)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】