説明

硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム及びプリント配線板

【課題】ハロゲンフリーで難燃性を達成でき、且つ、解像性、低反り性に優れた高反射白色塗膜層を形成可能な硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム及び硬化物、並びにこれらによりソルダーレジスト等の難燃性皮膜が形成されてなるプリント配線板を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種、酸化チタン、及びホスフィン酸金属塩を含有する。好適には、硬化性樹脂組成物はさらに熱硬化性樹脂を含む。また、上記カルボキシル基含有樹脂はウレタン骨格を有するカルボン酸樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性の硬化性樹脂組成物、特に低反りで難燃性に優れた塗膜を形成できる硬化性樹脂組成物に関する。本発明はまた、かかる硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルム及びそれらの硬化塗膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板及びフレキシブル配線板(以下、FPCと略称する)は、電子機器に搭載されるため難燃性が要望されており、これらの一部である塗膜にも難燃性が要求されている。この中でも、FPCは、通常、ポリイミド基板からなるため、ガラスエポキシ基板のプリント配線板とは異なり薄膜である。しかしながら、塗布されるべき塗膜は、プリント配線板もFPCも同じ膜厚であるため、薄膜のFPCの場合、相対的に塗膜への難燃化の負担が大きくなる。
【0003】
そのため、従来から塗膜の難燃化について種々の提案がなされている。例えば、特開2007−10794号公報(特許文献1)には、(a)バインダポリマー、(b)ブロモフェニル基等のハロゲン化芳香環と、(メタ)アクリロイル基等の重合可能なエチレン性不飽和結合とを分子中に有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤、(d)ブロックイソシアネート化合物、及び(e)分子中にリン原子を有するリン化合物を含有するFPC用の難燃性の感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、ハロゲン化芳香環と重合可能な不飽和二重結合を有する化合物のような、ハロゲン化合物の使用は環境負荷の観点から好ましくない。
一方、発光ダイオード(LED)を搭載するFPCにおいては、高反射率、耐折り曲げ性、解像性についての要求がある。しかし、高反射率を追求すると耐折り曲げ性、解像性が低下するなど、要求を充分に満たすソルダーレジストは得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−10794号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような従来技術の問題を解決すべくなされたものであり、その主たる目的は、ハロゲンフリーで難燃性を達成でき、且つ、解像性、低反り性に優れた高反射白色塗膜層を形成可能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、かかる硬化性樹脂組成物を用いることによって、低反りで難燃性に優れたドライフィルム及び硬化塗膜、並びにこのような優れた特性の難燃性皮膜を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明によれば、カルボキシル基含有樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種のエポキシ樹脂、酸化チタン、及びホスフィン酸金属塩を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、さらに熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記カルボキシル基含有樹脂が、ウレタン骨格を有するカルボン酸樹脂であることを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムが提供される。
さらに本発明によれば、上記硬化性樹脂組成物又は上記硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを、熱硬化又は光硬化あるいは光硬化及び熱硬化して得られる硬化塗膜が提供される。
【0008】
さらにまた、本発明によれば、上記硬化性樹脂組成物又は上記硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを、熱硬化又は光硬化あるいは光硬化及び熱硬化して得られる硬化塗膜を有するプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、カルボキシル基含有樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種のエポキシ樹脂、酸化チタン、及びホスフィン酸金属塩を含有するため、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性に優れ、且つ、解像性、低そり性に優れた塗膜を形成することができる。
また、ここで形成される塗膜は、白色顔料である酸化チタンを含有するため、白色度が高く、高反射率で液晶パネルのバックライト等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、前記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、カルボキシル基含有樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種のエポキシ樹脂、酸化チタン、及びホスフィン酸金属塩を含有する硬化性樹脂組成物は、白色度が高く高反射率なだけでなく、耐現像性が向上することにより良好な解像性を得られることを見出した。上記3成分の組合せ使用によりこのような効果が得られるということは、従来技術からは予測されない驚くべき効果であった。
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
【0011】
前記カルボキシル基含有樹脂としては、架橋反応、密着性及びアルカリ現像性を付与する目的で分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、アルカリ現像を行う感光性の組成物として光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸又はそれらの誘導体由来のものが好ましい。尚、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する感光性化合物(光重合性モノマー)を併用する必要がある。
【0012】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が好ましい。
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0013】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物及び必要に応じて1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0014】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0015】
(4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0016】
(5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0017】
(6)後述するような2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0018】
(7)後述するような2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0019】
(8)後述するような2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0020】
(9)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0021】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0022】
(11)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0023】
(12)上記(1)〜(11)の樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0025】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜120mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が20mgKOH/g未満であると、塗膜の密着性が得られなかったり、光硬化性樹脂組成物の場合にはアルカリ現像が困難となる。
一方、酸価が120mgKOH/gを超えた場合には、硬化塗膜の反りが非常に大きくなり、目的としているFPC用のコーティング剤として不適当である。また、光硬化性樹脂組成物の場合には、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。好ましいカルボキシル基含有樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物の場合には酸価が20〜60mgKOH/gのものが、
密着性と低反りの観点から好ましく、さらに現像性を付与する場合は、それら樹脂に酸価60〜120mgKOH/gの樹脂を併用することが好ましい。
【0026】
また、低酸価の樹脂としては、ウレタン構造を有するカルボキシル基含有ポリウレタンが密着性、低反りの観点から好ましく、高酸価の樹脂としては、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂であることが難燃性、耐熱性、現像性の観点から好ましい。
この関係が逆であると、現像を必要とする光硬化性樹脂組成物の場合には、現像不良が発生したり、低反りや折り曲げ性が劣る結果となる。
特に好ましいウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルと脂肪族及び脂環式イソシアネートを原料としたものが好ましい。また、芳香族環を有するカルボキシル基含有樹脂としては、ビフェニルノボラック構造を有するものが難燃性、耐熱性の観点から好ましい。
【0027】
さらに、前記(9)、(10)のようなフェノール性水酸基を有する化合物から合成されるカルボキシル基含有感光性樹脂は、光反応性基と熱硬化反応性基とがそれぞれ独立して存在するため、硬化収縮が少なく、低反り性、耐折性に優れるため好ましい。
【0028】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、塗膜のタックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、組成物の貯蔵安定性が劣ることがある。
【0029】
このようなカルボキシル基含有樹脂の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%の範囲が適当である。カルボキシル基含有樹脂の配合量が上記範囲より少ない場合、皮膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、組成物の粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類でも複数種混合しても使用することができる
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いられる酸化チタンとしては、硫酸法、塩素法によるものや、ルチル型、アナターゼ型のもの、含水金属酸化物による表面処理や、有機化合物による表面処理を施した酸化チタンなどを用いることができる。これらの酸化チタンの中でも、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して白色度が高いためによく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、光硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定したコーティング膜を得ることができる。
【0031】
ルチル型酸化チタンとしては、公知のルチル型のものを使用することができる。具体的には、富士チタン工業(株)製TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業(株)製R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、CR−97、チタン工業(株)製KR−270、KR−310、KR−380等を使用することができる。これらのルチル型酸化チタンの中でも、表面が含水アルミナ又は水酸化アルミニウムで処理された酸化チタンを用いることが、分散性、保存安定性、難燃性の観点から特に好ましい。
【0032】
このような酸化チタンの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1〜500質量部、好ましくは5〜300質量部である。前記配合量が、1質量部未満の場合、硬化塗膜の低反り性、難燃性が充分に得られず好ましくない。一方、500質量部を超えた場合、硬化塗膜の充分な柔軟性が得られ難くなるので好ましくない。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩を含むことを特徴としている。ホスフィン酸金属塩を用いることにより、硬化塗膜の柔軟性と難燃性を両立させることができる。また、ホスフィン酸金属塩は塗膜中に溶解せず、分散しているため良好な解像性を得ることができる。ホスフィン酸金属塩としては、下記一般式(I)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化1】

(式(I)中、R、Rは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数12以下のアリール基を表し、Mは、カルシウム、アルミニウム又は亜鉛を表し、M=アルミニウムのときm=3であり、それ以外の金属のときはm=2である。)
【0034】
また、耐熱性に優れるホスフィン酸金属塩を用いることにより、実装時の熱プレスにおいて難燃剤のブリードアウトを抑えることができる。
ホスフィン酸金属塩の市販品としては、クラリアント社製のEXOLIT OP 1230、EXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935などが挙げられる。
【0035】
これらホスフィン酸金属塩の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜100質量部の範囲が望ましく、好ましくは3〜80質量部、より好ましくは5〜70質量部である。
【0036】
本発明の樹脂組成物を熱硬化性樹脂組成物に組成する場合、あるいは光硬化性熱硬化性樹脂組成物に組成する場合には、硬化塗膜の耐熱性、絶縁信頼性等の特性を向上させる目的で、ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種のエポキシ樹脂を配合する。また、前記カルボキシル基含有樹脂のもつカルボキシル基と反応しうる従来公知の熱硬化性成分を配合することができる。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物に好ましい熱硬化性成分は、分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、「環状(チオ)エーテル基」と略す)を有する熱硬化性成分である。中でも2官能性のエポキシ樹脂が良く、他にはジイソシアネートやその2官能性ブロックイソシアネートも使用することができる。
【0038】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0039】
前記多官能エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・ジャパン社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・ジャパン社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・ジャパン社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000L、NC−3000、NC−3000H、NC−3100、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・ジャパン社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・ジャパン社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・ジャパン社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・ジャパン社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL−931、チバ・ジャパン社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・ジャパン社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのエポキシ樹脂の中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましく、さらに好ましいエポキシ樹脂としてはビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂であり、耐熱性、とくに難燃性を向上させることができる。市販品としては、日本化薬(株)製のNC−3000L、NC−3000、NC−3000H、NC−3100等が挙げられる。
【0040】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0041】
前記分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0042】
前記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3〜2.5当量、より好ましくは、0.5〜2.0当量となる範囲にある。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.3未満である場合、前記カルボキシル基含有樹脂との架橋反応が少なくなるため、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0043】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0044】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の硬化性及び得られる硬化膜の強靭性を向上させるために1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物を加えることができる。このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物、又は1分子中に複数のブロック化イソシアネート基を有する化合物、すなわちブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0046】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0047】
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0048】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。
ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。このイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0049】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0050】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0051】
上記の1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
このような1分子中に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、50質量部未満、より好ましくは、1〜40質量部の割合が適当である。前記配合量が、50質量部を超えた場合、保存安定性が低下するので好ましくない。特に好ましいのはビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂との併用であり、そのときの配合量は前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、10質量部である。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに難燃性を向上させる目的で前記ホスフィン酸金属塩以外のリン化合物を併用することもできる。ホスフィン酸金属塩以外のリン化合物としては、有機リン系難燃剤として慣用公知のものを用いることができ、リン酸エステル及び縮合リン酸エステル、環状フォスファゼン化合物、フォスファゼンオリゴマー、もしくは下記一般式(II)で表される化合物がある。
【化2】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子以外の置換基を示す。)
【0054】
上記一般式(II)で表される化合物の市販品としては、HCA、SANKO−220、M−ESTER、HCA−HQ(いずれも三光(株)の商品名)等がある。
【0055】
本発明において用いられる特に好ましいホスフィン酸金属塩以外のリン化合物としては、反応性基として(1)アクリレート基を有するものや、(2)フェノール性水酸基を有するもの、(3)オリゴマーもしくはポリマー、及び(4)フェノキシフォスファゼンオリゴマーが挙げられる。
【0056】
(1)アクリレート基を有するリン化合物
リン元素含有アクリレートは、リン元素を有しており、分子中に複数の(メタ)アクリレートを含む化合物が良く、具体的には、前記一般式(II)におけるRとRが水素原子であり、Rがアクリレート誘導体である化合物が挙げられ、一般に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドと公知慣用の多官能アクリレートモノマーとのマイケル付加反応により合成することができる。
【0057】
上記公知慣用のアクリレートモノマーとしては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物もしくはカプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;及び上記ポリアルコール類のウレタンアクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0058】
(2)フェノール性水酸基を有するリン化合物
このフェノール性水酸基を有するリン化合物は、疎水性、耐熱性が高く、加水分解による電気特性の低下が無く、はんだ耐熱性が高い。また、好適な組み合わせとして、熱硬化性成分としてビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂やその他のエポキシ樹脂を使用することによって、エポキシ樹脂と反応し、ネットワークに取り込まれるので、硬化後にブリードアウトすることが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製HCA−HQなどがある。
【0059】
(3)オリゴマーもしくはポリマー
オリゴマーもしくはポリマーであるリン化合物は、アルキル鎖の影響により折り曲げ性の低下が少なく、また分子量が大きいため硬化後のブリードアウトが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製M−Ester−HP、東洋紡(株)製バイロン337などがある。
【0060】
(4)フォスファゼンオリゴマー
フォスファゼンオリゴマーとしてはフェノキシフォスファゼン化合物が有効であり、置換もしくは無置換フェノキシフォスファゼンオリゴマー又は3量体、4量体、5量体の環状物があり、液状や固体粉末のものがあるがいずれも好適に使用することができる。市販品としては、(株)伏見製薬所製FP−100、FP−300、FP−390などがある。
【0061】
これらホスフィン酸金属塩以外のリン化合物は、1種類でも複数種混合しても使用することができる。
【0062】
これらホスフィン酸金属塩以外のリン化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、150質量部以下が適当であり、特に好ましくは100質量部以下である。ホスフィン酸金属塩以外のリン化合物の配合量が150質量部を超えた場合、難燃剤のブリードアウトや硬化塗膜の折り曲げ特性等が悪くなるので好ましくない。
【0063】
前記したホスフィン酸金属塩以外のリン化合物の中でも、好ましいのは反応性基を有するもの、リン元素含有ポリマー、フォスファゼンオリゴマーであり、特に光硬化性樹脂組成物に組成する場合には、リン元素含有アクリレート化合物がブリードアウトの観点から好ましく、リン元素含有ポリエステルポリマーは密着性の観点から好ましい。また、フォスファゼンオリゴマーはフェノキシホスファゼンが耐熱性の観点から好ましく、さらにはシアノ基、アルキル基などの置換基が存在する置換フェノキシフォスファゼンが溶解性の観点から好ましい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物には、水酸化アルミニウムを加えることができる。水酸化アルミニウムを使用する目的は、難燃性を向上させるためだけではなく、特に光硬化性樹脂組成物にした場合に、感光性樹脂と親和性、屈折率が近く、光硬化を効率的に進行させる点にある
【0065】
本発明に用いられる水酸化アルミニウムは汎用公知のものが使用できる。市販品としては、昭和電工社製ハイジライトシリーズ、HW、H21、H31、H32、H42M、H43Mなどがある。尚、水酸化アルミニウムの粒径が細かい方が耐折れ性に効果的であるので、予め溶剤や樹脂と一緒にビーズミル等で一次粒経まで分散加工し、フィルタリング等で3μm以上、より好ましくは1μm以上のものをろ過選別して使用したほうが、得られる硬化皮膜の難燃性、折り曲げ性の観点から好ましい。
【0066】
このような水酸化アルミニウムの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して300質量部以下、好ましくは200質量部以下である。前記配合量が300質量部を超えた場合、折り曲げ性が悪くなるので好ましくない。
【0067】
本発明の樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物もしくは光硬化性熱硬化性樹脂組成物に組成する場合には、光重合開始剤を配合することができる。好ましい開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することができる。
【0068】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、チバ・ジャパン社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02、アデカ社製N−1919、NCI−831などが挙げられる。また、分子中に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化3】

(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは0か1の整数である。)
【0069】
特に前記一般式中、X、Yが、それぞれ、メチル基又はエチル基であり、Zはメチル又はフェニルであり、nは0であり、Arは、結合か、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであることが好ましい。
【0070】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満であると、光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、5質量部を超えると、塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは、0.5〜3質量部である。
【0071】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・ジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0072】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・ジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0073】
これらα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、同様に銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、15質量部を超えると、アウトガスの低減効果が得られず、さらに塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0074】
その他、本発明の硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0075】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0076】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0077】
アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0078】
チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0079】
ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0080】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0081】
3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などが挙げられる。
【0082】
これらのうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることが、深部硬化性の面から好ましい。中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物を含むことが好ましい。
【0083】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合量が20質量部を超えると、厚膜硬化性が低下するとともに、製品のコストアップに繋がる。より好ましくは10質量部以下である。
【0084】
また、3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物及びケトクマリン類が特に好ましい。
【0085】
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが好ましい。
【0086】
このような3級アミン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部未満であると、充分な増感効果を得ることができない傾向にある。20質量部を超えると、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0087】
これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0088】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として働くことがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、塗膜のライン形状及び開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
【0089】
前記した光重合開始剤の中でも特に好ましいのはアシルホスフィンオキサイド系開始剤であり、フォトブリーチ性能から光の透過性がもっとも良く、且つ、リン元素を有しておりラジカル重合を効率的に進行させるほか、その成長末端ではリン元素が含まれる構造になるため難燃化付与材としても効果があることがわかった。また、オキシムエステル系開始剤は開始剤効率が良く、少量で感度向上に効果的であるため、レジスト皮膜形成後の熱処理時アウトガスによる体積変化が少なく、皮膜の反り低減に効果的であるので好ましい。特に好ましいのは両者の併用である。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化性とする場合に用いられる分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する感光性化合物は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、前記カルボキシル基含有樹脂を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。このような感光性化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが使用でき具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0091】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0092】
このような分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する感光性化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、10〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなるので、好ましくない。この中でも特に好ましいのは多官能性のアクリレートでペンタエリスリトールやジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等のポリオールをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びカプロラクトンで分子延長したものや、2官能性のポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネートのウレタンアクリレートが好ましい。
【0093】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0094】
赤色着色剤:
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
モノアゾ系:Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23, 31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258, 266, 267, 268, 269。
ジスアゾ系:Pigment Red 37, 38, 41。
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2, 53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,68。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208。
ぺリレン系:Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224。
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272。
縮合アゾ系:Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242。
アンスラキノン系:Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207。
キナクリドン系:Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red
207、Pigment Red 209。
【0095】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には:Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60。
染料系としては、Solvent Blue 35、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 70、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0096】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的にはPigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Green 20、Solvent Green 28等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0097】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下のものが挙げられる。
アントラキノン系:Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202。
イソインドリノン系:Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185。
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181。
モノアゾ系:Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73, 74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 183。
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 198。
【0098】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等がある。
【0099】
前記したような着色剤の配合割合は、特に制限はないが、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、特に好ましくは0.1〜5質量部の割合で充分である。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイト及びタルクが好ましく用いられる。さらに、金属酸化物、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
【0101】
これらフィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が、500質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり印刷性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0102】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有樹脂の合成や組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0103】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0104】
本発明の硬化性樹脂組成物には、酸化を防ぐために、発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤又は/及び発生した過酸化物を無害な物質に分解して新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などの酸化防止剤を添加することができる。
【0105】
酸化防止剤としては、具体的な化合物としては、ヒドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系、メタキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物等などが挙げられる。
【0106】
ラジカル捕捉剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−87(以上、旭電化(株)製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0107】
過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としてトリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0108】
過酸化物分解剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブTPP(旭電化(株)製、商品名)、マークAO−412S(アデカ・アーガス化学(株)製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学(株)製、商品名)などが挙げられる。
上記の酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
本発明の硬化性樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、上記酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0110】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。ベンゾフェノン誘導体の具体的な例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾエート誘導体の具体的な例としては、2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。トリアジン誘導体の具体的な例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0111】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0112】
上記の紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、前記酸化防止剤と併用することで本発明の硬化性樹脂組成物より得られる硬化皮膜の安定化が図れる。
【0113】
本発明の樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物又は光硬化性熱硬化性樹脂組成物として組成されている場合には、感度を向上するために連鎖移動剤として公知慣用のNフェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を用いることができる。連鎖移動剤の具体例を挙げると、例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1−ブタンチオール、ブチル−3−メルカプトプロピオネート、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2,2−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4−メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4−チオビスベンゼンチオール等である。
【0114】
また、多官能性メルカプタン系化合物を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン−1,6−ジチオール、デカン−1,10−ジチオール、ジメルカプトジエチルエーテル、ジメルカプトジエチルスルフィド等の脂肪族チオール類、キシリレンジメルカプタン、4,4′−ジメルカプトジフェニルスルフィド、1,4−ベンゼンジチオール等の芳香族チオール類;エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)等の多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート)類;エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等の多価アルコールのポリ(3−メルカプトプロピオネート)類;1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリリトールテトラキス(3−メルタプトブチレート)等のポリ(メルカプトブチレート)類を用いることができる。
【0115】
これらの市販品としては、例えばBMPA、MPM、EHMP、NOMP、MBMP、STMP、TMMP、PEMP、DPMP、及びTEMPIC(以上、堺化学工業(株)製)、カレンズMT−PE1、カレンズMT−BD1、及びカレンズ−NR1(以上、昭和電工(株)製)等を挙げることができる。
【0116】
さらに、連鎖移動剤として働くメルカプト基を有する複素環化合物として、例えば、メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、2−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットF)、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットDB)、及び2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製:商品名 ジスネットAF)等が挙げられる。
【0117】
特に、光硬化性樹脂組成物もしくは光硬化性熱硬化性樹脂組成物の現像性を損なうことがない連鎖移動剤であるメルカプト基を有する複素環化合物として、メルカプトベンゾチアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールが好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独又は2種以上を併用することができる。
【0118】
本発明の硬化性樹脂組成物には、層間の密着性、又は塗膜層と基材との密着性を向上させるために密着促進剤を用いることができる。具体的に例を挙げると、例えば、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール(商品名:川口化学工業(株)製アクセルM)、3−モルホリノメチル−1−フェニル−トリアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチル−チアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などがある。
【0119】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0120】
熱重合禁止剤は、重合性化合物の熱的な重合又は経時的な重合を防止するために用いることができる。熱重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル又はアリール置換ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、クロラニル、ナフチルアミン、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、4−トルイジン、メチレンブルー、銅と有機キレート剤反応物、サリチル酸メチル、及びフェノチアジン、ニトロソ化合物、ニトロソ化合物とAlとのキレート等が挙げられる。
【0121】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。その後、光硬化性樹脂組成物又は光硬化性熱硬化性樹脂組成物の場合、活性エネルギー線を照射するコンベア式の光硬化装置で全面に露光を行ってもよい。さらに、接触式又は非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性熱硬化性樹脂組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と、分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、熱硬化性成分を含有していない光硬化性樹脂組成物の場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残った光硬化性成分のエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0122】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0124】
上記のように本発明の硬化性樹脂組成物を塗布し、溶剤を揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0125】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。
画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜2000mJ/cm、好ましくは20〜1500mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0126】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0127】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに硬化性樹脂組成物を塗布乾燥して形成した塗膜層を有するドライフィルムの形態で使用することもできる。本発明の硬化性樹脂組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
【0128】
ドライフィルムは、キャリアフィルムと、塗膜層と、必要に応じて用いられる剥離可能なカバーフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。塗膜層は、前記硬化性樹脂組成物をキャリアフィルム又はカバーフィルムに塗布乾燥して得られる層である。キャリアフィルムに塗膜層を形成した後に、カバーフィルムをその上に積層するか、カバーフィルムに塗膜層を形成し、この積層体をキャリアフィルムに積層すればドライフィルムが得られる。
【0129】
キャリアフィルムとしては、2〜150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
【0130】
塗膜層は、硬化性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに10〜150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。
【0131】
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、塗膜層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0132】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に保護膜(永久保護膜)を作製するには、カバーフィルムを剥がし、塗膜層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上に塗膜層を形成する。形成された塗膜層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
【実施例】
【0133】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0134】
合成例1
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、アルコール性ヒドロキシル基を複数有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製T5650J、数平均分子量800)を3600g(4.5モル)、ジメチロールブタン酸を814g(5.5モル)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール118g(1.6モル)を投入した。次に、芳香環を有しないイソシアネート化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート2009g(10.8モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が60wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有樹脂を得た。得られたカルボキシル基含有ポリウレタンの固形分の酸価は49.8mgKOH/gであった。以下、この反応生成物の樹脂溶液をワニスA−1とする。
【0135】
合成例2
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製、T5650J、数平均分子量800)を2400g(3モル)、ジメチロールプロピオン酸を603g(4.5モル)、及びモノヒドロキシル化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレートを238g(2.6モル)投入した。次いで、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート1887g(8.5モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50質量%となるようにカルビトールアセテートを添加した。得られたカルボキシル基含有樹脂の固形分の酸価は50mgKOH/gであった。以下、この反応生成物の樹脂溶液をワニスA−2とする。
【0136】
合成例3
セパラブルフラスコ中に、ビスフェノールA型エポキシ化合物として、日本化薬(株)製RE310S(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0g、アクリル酸(分子量:72.06)を142.7g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを2.94g及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.53g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(理論分子量:510.7)を得た。次いで、この反応液に反応用溶媒としてのカルビトールアセテートを588.2g、ジメチロールプロピオン酸(分子量:134.16)を105.5g加え、45℃に昇温させた。この溶液にイソホロンジイソシアネート(分子量:222.28)264.7gを反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ、更に98℃の温度で2時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂を60重量%含む樹脂溶液を得た。酸価を測定したところ、28.9mgKOH/g(固形分酸価:48.1mgKOH/g)であった。以下、この反応生成物の樹脂溶液をワニスA−3とする。
【0137】
合成例4
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g、アクリル酸360g、及びハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0gを仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65%の樹脂溶液を得た。以下、この樹脂溶液をワニスA−4とする。
【0138】
合成例5
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子(株)製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、不揮発分71%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。以下、この樹脂溶液をワニスA−5とする。
【0139】
感光性基含有でビスフェノールF構造の多官能エポキシ樹脂を使用した感光性カルボキシル基含有樹脂(日本化薬(株)製ZFR−1124:固形分63%、樹脂としての酸価は102mgKOH/g)を用いた。以下、この樹脂溶液をワニスA−6とする。
【0140】
水酸化アルミニウムスラリーの調製:
水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライト42M)700gと、溶剤としてカルビトールアセテート280g、BYK−110(ビックケミー・ジャパン(株)製湿潤分散剤)20gを混合攪拌し、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmのフィルターを通した水酸化アルミニウムスラリーを作製した。
【0141】
実施例1〜6、比較例1、2
前記各合成例の樹脂溶液を用い、表1に示す種々の成分とともに表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた各硬化性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0142】
【表1】

【0143】
性能評価:
<最適露光量>
上記実施例2〜6及び比較例1、2の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。乾燥後、メタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いてステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが6段の時を最適露光量とした。
【0144】
<解像性>
実施例2〜6及び比較例1,2の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、銅べた基板上にスクリーン印刷で前面塗布し、80℃で30分乾燥させた。L/S(ライン/スペース)=80/400μmのネガフィルムを用いて最適露光量で露光し、上記条件で現像する。現像後、80μmのラインが残っているかどうかを確認した。
○:銅べた基板上に80μmのラインが残っている。
×:銅べた基板上に80μmのラインが残っていない。
【0145】
<可撓性(耐折性)>
上記各実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を、25μm厚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン100H)にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。実施例1の熱硬化性樹脂組成物については、得られた基板を150℃で60分加熱して硬化した。実施例2〜6及び比較例1、2の光硬化性熱硬化性樹脂組成物については、得られた基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でレジストパターンを露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得、この基板を、150℃で60分加熱して硬化した。
得られた評価基板に対してハゼ折りにより180°折り曲げを数回繰り返して行い、その際の塗膜におけるクラック発生状況を目視及び200倍の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生しなかった回数を評価した。
【0146】
<低反り性>
可撓性(耐折性)の評価用サンプルと同様に作製したサンプルを50mm×50mm□に切り出し、4角の反りを測定して平均値を求め、以下の基準で評価した。
○:反りが1mm未満であるもの。
△:反りが1mm以上、4mm未満であるもの。
×:反りが4mm以上であるもの。
【0147】
<難燃性>
各実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を、12.5μm又は25μm厚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン50H、100H)にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷した。さらに裏面を同様にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷し両面塗布基板を得た。実施例1の熱硬化性樹脂組成物については、得られた基板を150℃で60分加熱して硬化し、試験片とした。実施例2〜6及び比較例1、2の光硬化性熱硬化性樹脂組成物については、この基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストを全面露光し、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、150℃で60分間熱硬化を行い評価サンプルとした。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価は難燃性試験合格をVTM−0、不合格を燃焼と表した。
前記各評価試験の結果を表2にまとめて示す。
【0148】
【表2】

【0149】
上記表2に示す結果から、実施例1〜6の硬化性樹脂組成物の場合、充分な低反り性、可撓性、解像性を有し、且つ、優れた難燃性も兼ね備えていることが分かる。一方、酸化チタンを含有しない比較例1及びホスフィン酸金属塩を含有しない比較例2の硬化性樹脂組成物の場合、低反り性、解像性と難燃性のバランスを達成するのが非常に困難なことが分かる。
【0150】
実施例7〜11
表1に示す実施例2〜6の各光硬化性熱硬化性樹脂組成物をシリコーン系消泡剤を配合せずに調製した各硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで希釈し、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥して、厚さ20μmの硬化性樹脂組成物層を形成し、その上にカバーフィルムを貼り合わせて、それぞれ実施例7〜11のドライフィルムを得た。このドライフィルムを、前述した試験方法に用いた試験基板にラミネーターを用いて張り合わせ、試験基板を作製した。得られた試験基板について、前述した評価方法と同様にして各特性の評価試験を行った。結果を表3に示す。
【0151】
【表3】

【0152】
上記表3に示す結果から、実施例7〜11のドライフィルムの場合、充分な低反り性、可撓性、解像性を有し、且つ、優れた難燃性も兼ね備えていることが分かる。硬化性樹脂組成物としてだけではなく、そのドライフィルム及びドライフィルムを用いて作製した基板も低反り性、可撓性、解像性、及び難燃性という特性に優れていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂、
ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの混合物のうち少なくとも1種、
酸化チタン、及び
ホスフィン酸金属塩
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有樹脂がポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物又は該硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを、熱硬化又は光硬化あるいは光硬化及び熱硬化して得られる硬化塗膜。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物又は該硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを、熱硬化又は光硬化あるいは光硬化及び熱硬化して得られる硬化塗膜を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2013−33282(P2013−33282A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236756(P2012−236756)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2010−82197(P2010−82197)の分割
【原出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】