説明

硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子

【課題】低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物と、光反応開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物である硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
また、従来のカラムスペーサ用樹脂組成物からなるカラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。
【0006】
しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2002−251007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物と、光反応開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物である硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、硬化性樹脂組成物として、特定の構造の分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを併用することにより、カラムスペーサ用途に用いた場合、パターン形成時の解像性に優れ、鮮明なパターンのカラムスペーサを形成することができるとともに、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するカラムスペーサを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
このような本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサによれば、加熱時の液晶膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能である。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物の用途としては特に限定されず、種々の用途に用いることができるが、なかでも、液晶表示素子のカラムスペーサ用途に特に好適に用いることができる。
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物と、光反応開始剤とを含有する。
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物である(以下、本発明に係る重合性化合物ともいう)。
上記有機イソシアネートは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機化合物であるが、露光時の光反応性の点から上記重合性不飽和結合を有する化合物は分子内に3以上の重合性不飽和結合を有することが好ましく、従って、上記有機イソシアネートも、イソシアネート基を3以上有することがより好ましい。
【0011】
分子内にイソシアネート基を2つ有する有機イソシアネートとしては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートモノマーが挙げられる。
【0012】
分子内に3以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては特に限定されず、例えば、ジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性させた下記一般式(1)で表される化合物、ジイソシアネートモノマーをアダクト変性させた下記一般式(2)で表される化合物、ジイソシアネートモノマーをビウレット変性させた下記一般式(3)で表される化合物、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、トリアミノノナントリイソシアネート等のイソシアネートプレポリマーが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するにあたって上記有機イソシアネートと反応させるカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートは、下記一般式(4)で表される化合物であり、活性エネルギー線硬化性官能基(CH=)を有している。このカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
【化5】

【0019】
はH又はCHを示し、nは1〜10の整数、mは1〜25の整数である。
【0020】
このポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数が異なるウレタン(メタ)アクリレート間における上記繰り返し数の平均は、1〜5の範囲が好ましく、1〜2.5の範囲がより好ましい。また、同繰り返し数の差は、9以下が好ましく、4〜9の範囲がより好ましい。
【0021】
上記有機イソシアネートと上記カプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させる際の反応温度としては特に限定されないが、常温〜100℃であることが好ましく、また、反応時間としては特に限定されないが1〜10時間であることが好ましい。
【0022】
上記有機イソシアネートと上記カプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとの反応は、無溶媒の状況下で行ってもよいが、必要に応じて溶媒中で行ってもよい。反応に使用できる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上述した本発明に係る重合性化合物の含有量としては特に限定されないが、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分に対し、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は90重量%である。20重量%未満であると、本発明の硬化性樹脂組成物が充分に光硬化せず、カラムスペーサ用途に用いた場合、フォトリソグラフの手法によりカラムスペーサのパターンを形成することができないことがある。90重量%を超えると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、カラムスペーサを製造する際に使用するアルカリ現像液への溶解性が不足し、製造するカラムスペーサのパターンの現像性が不充分となることがある。より好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0024】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した本発明に係る重合性化合物に加えて、反応性、現像性等を調整するために、分子内に重合性不飽和結合を有する化合物(以下、単に重合性不飽和結合含有化合物ともいう)を、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた際に、製造するカラムスペーサの柔軟性や現像性を損なわない範囲で併用してもよい。
【0025】
上記重合性不飽和結合含有化合物としては特に限定されず、例えば、2官能のものとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
また、3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物が上記重合性不飽和結合含有化合物を含有する場合、その含有量としては特に限定されないが、上記本発明に係る重合性化合物との合計量の40重量%未満であることが好ましい。40重量%を超えると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、得られるカラムスペーサの柔軟性が損なわれ、重力不良及び低温発泡の抑制効果が低下することがある。より好ましい上限は30重量%である。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。
上記アルカリ可溶性高分子化合物としては特に限定されないが、カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物であることが好ましい。上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物としては、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合やエポキシ基のような反応性の官能基を有する単官能化合物とを共重合した共重合体(以下、単に共重合体ともいう)等が挙げられる。また、例えば、ダイセル化学社製「サイクロマーP」等の市販のものを用いてもよい。
【0029】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0030】
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0031】
上記エポキシ基を有する単官能化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
なかでも、共重合反応性及び得られるカラムスペーサの強度を高めることから、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル及びp−ビニルベンジルグリシジルエーテルが好適である。なお、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
【化6】

【0033】
上記一般式(5)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは、0〜10の整数である。
【0034】
また、上記共重合体としては特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート等のメタクリル酸環状アルキルエステル;シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等のアクリル酸環状アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等のジカルボン酸ジエステル;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
なかでも、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性に優れることから、スチレン、t−ブチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、p−メトキシスチレン、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、1,3−ブタジエン等が好適である。なお、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記共重合体において、上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。10重量%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難となることがあり、40重量%を超えると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、カラムスペーサを製造する際の現像時の膨潤が著しく、カラムスペーサパターンの形成が困難となることがある。より好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0036】
上記共重合体の重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は3000、好ましい上限は10万である。3000未満であると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、カラムスペーサを製造する際の現像性が低下することがあり、10万を超えると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、カラムスペーサを製造する際の解像度が低下することがある。より好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。
【0037】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合やエポキシ基のような反応性の官能基を有する単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0038】
溶液重合法により上記共重合体を製造する場合の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコール等の脂肪族アルコール類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶剤等を用いることができる。
【0039】
また、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の非水系の分散重合により上記共重合体を製造する場合の媒体としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の液状の炭化水素や、その他の非極性の有機溶剤等を用いることができる。
【0040】
上記共重合体を製造する場合に用いるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては特に限定されないが、例えば、上記共重合体を製造するための全単量体成分100重量部に対して好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5.0重量部であり、より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0041】
上記分子量調節剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン系の連鎖移動剤等を用いることができる。なかでも、臭気や着色が少ないことから、炭素数8以上の長鎖アルキルメルカプタンが好適である。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記アルカリ可溶性高分子化合物の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は80重量%である。10重量%未満であると、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、カラムスペーサを製造する際に使用するアルカリ現像液への溶解性が不足し、製造するカラムスペーサのパターンの現像性が不充分となることがあり、80重量%を超えると、本発明の硬化性樹脂組成物が充分に光硬化せず、カラムスペーサ用途に用いた場合、フォトリソグラフィーによりカラムスペーサのパターンを形成することができないことがある。より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は60重量%である。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等、従来公知の光反応開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記光反応開始剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。1重量%未満であると、本発明の硬化性樹脂組成物が光硬化しないことがあり、20重量%を超えると、カラムスペーサ用途に用いた場合、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤を含有してもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより、光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
【0046】
上記反応助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等を用いることができる。これらの反応助剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することが好ましい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、熱架橋剤として働き、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することで、本発明の硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0048】
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるもの等が挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
また、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物に上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が含有されている場合、その含有量としては特に限定されないが、上記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明の硬化性樹脂組成物が充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて後述する弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈されてもよい。
上記希釈剤としては、本発明の硬化性樹脂組成物との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく特に限定されないが、本発明の硬化性樹脂組成物をスピンコーター、スリットコーターを用いて塗工する場合には、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上するためのシランカップリング剤等、従来公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(及び熱硬化)させることにより圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができ、また、パターン形成時に現像残滓を生じることがなくシャープな解像性を得ることができる。また、このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
【0054】
このような本発明の硬化性樹脂組成物は、光照射(及び加熱)により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎて、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、セルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて、本発明の硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0055】
なお、本明細書において硬化物とは、光照射(及び加熱)により本発明の硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたときの硬化物を意味する。ほぼ完全に硬化させる条件は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、加熱する場合は、200〜250℃の温度で20分程度熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることができる。
また、本明細書において15%圧縮とは、カラムスペーサの高さの変形率が15%となるように圧縮することを意味する。更に、弾性係数及び回復率は、以下の方法により測定したものである。
すなわち、まず、基板上に形成したカラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮する。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとする。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定する。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとする。弾性計数及び回復率は、下記式(1)及び下記式(2)により算出することができる。
【0056】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0057】
上記式(1)中、Fは荷重(N)を表し、Dはカラムスペーサの高さの変形率を表し、Sはカラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上述した分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物、アルカリ可溶性高分子化合物、光反応性開始剤、及び、必要に応じて添加される重合性不飽和結合含有化合物、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0059】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法を説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する場合には、まず、本発明の硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように基板上に塗工して被膜を形成する。
上記塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。
【0060】
次いで、形成した被膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して、紫外線等の活性光線を照射する。これにより、光照射部においては、本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と光反応開始剤とが反応して光硬化する。
上記活性光線の照射量としては特に限定されないが、紫外線の場合で50mJ/cm以上であることが好ましい。50mJ/cm未満であると、光硬化が不充分で続くアルカリ処理を行ったときに露光部まで溶解しパターンが形成されないことがある。
【0061】
次いで、光硬化後の光硬化物をアルカリ現像して基板上に本発明の硬化性樹脂組成物の光硬化物からなる所定のパターンのカラムスペーサを形成する。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成したカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率とを有するものとなる。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に、現像処理後のパターン化された光硬化物を加熱することにより、含有されるアルカリ可溶性高分子化合物と2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
上記加熱の条件としては、上記パターンの大きさや厚さ等を考慮して適宜決定すればよいが、少なくとも、200℃、20分間以上であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0063】
本発明のカラムスペーサは、25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0064】
本発明のカラムスペーサは、その高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、低温発泡を生ずることなく重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制することができる液晶表示素子を得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサは、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するものとなり、このようなカラムスペーサによれば、加熱時の液晶膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能な液晶表示素子を作製することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、低温発泡および重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
(1)分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の合成
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N、イソシアネート含有量:20.9%)50重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA1)63重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン63重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は1である。
【0068】
(2)アルカリ可溶性高分子化合物の合成
3L容のセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸8重量部、メタクリル酸n−ブチル12重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル10重量部、アゾビスバレロニトリル0.4重量部、及び、n−ドデシルメルカプタン0.8重量部を3時間かけて連続的に滴下した。
その後、90℃にて30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、アルカリ可溶性高分子化合物溶液を得た。
得られたアルカリ可溶性高分子化合物をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約2万であった。
【0069】
(3)硬化性樹脂組成物の調製
得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部(固形分率40重量%)、ウレタンアクリレート120重量部(固形分率50重量%)、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部及びDETX−S(日本化薬社製)10重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル70重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0070】
(実施例2)
(1)分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の合成
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性タイプ(旭化成工業社製、デュラネート24A−90CX、不揮発分:90%、イソシアネート含有量:21.2%)50重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA2D)92重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン82重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は2である。
【0071】
(2)硬化性樹脂組成物の調製
アルカリ可溶性高分子化合物として、サイクロマーP、ACA−230AA(ダイセル化学社製)100重量部(固形分率40重量%)、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物として、(1)のウレタンアクリレート120重量部(固形分率50重量%)、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部及びDETX−S(日本化薬社製)10重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル70重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
(実施例3)
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、実施例2で得られたウレタンアクリレート120重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0073】
(実施例4)
(1)分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の合成
トルエン50重量部にステアリルアルコール(日本油脂社製、NAA−46、水酸基価:207)4.2重量部を加え、40℃にまで昇温してステアリルアルコールを完全に溶解させた。次に、そこにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)50重量部を加え、70℃で30分間保持した。続いて、ジブチル錫ラウレート0.02重量部を加え、70℃で3時間保持した。さらに、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA3)114重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を加え、70℃で3時間保持した。その後、トルエン118.2重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は3である。
【0074】
(2)硬化性樹脂組成物の調製
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物として、(1)で得られたウレタンアクリレート120重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部及びDETX−S(日本化薬社製)10重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル70重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0075】
(実施例5)
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)50重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA5)179重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン179重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は5である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0076】
(実施例6)
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)25重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA10)162.8重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン137.8重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は10である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0077】
(実施例7)
トルエン60重量部にポリエーテル変性セチルアルコール(日本油脂社製、ノニオンP−208、水酸基価:95)10.3重量部を加え、40℃にまで昇温してポリエーテル変性セチルアルコールを完全に溶解させた。次に、そこにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)50重量部を加え、70℃で30分間保持した。続いて、ジブチル錫ラウレート0.02重量部を加え、70℃で3時間保持した。さらに、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA1)55.9重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を加え、70℃で3時間保持した。その後、トルエン56.2重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は1である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0078】
(実施例8)
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)50重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA1)47重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA3)31重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン78重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートの混合物を得た。なお、これらのウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は1.5である。また、ウレタンアクリレート間における前記繰り返し数の差は最大で2である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0079】
(実施例9)
トルエン50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)50重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA1)55重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA5)24重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン79重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートの混合物を得た。なお、これらのウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は1.5である。また、ウレタンアクリレート間における前記繰り返し数の差は最大で4である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0080】
(実施例10)
トルエン25重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性タイプ(大日本インキ化学工業社製、バーノックDN−950、不揮発分:75%、イソシアネート含有量:12%)50重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHOA)13.3重量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製、プラクセルFA10)35.9重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン49.2重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートの混合物を得た。なお、これらのウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は2である。また、ウレタンアクリレート間における前記繰り返し数の差は最大で10である。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0081】
(比較例1)
トルエン25重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製、タケネートD−170N)25重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルHOA)32重量部、ジブチル錫ラウレート0.02重量部、及び、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02重量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン32重量部を加えて固形分率50重量%のウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数はゼロである。
得られたウレタンアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0082】
(比較例2)
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、重合性不飽和結合含有化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬社製)60重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部及びDETX−S(日本化薬社製)10重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル70重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0083】
(比較例3)
実施例1で得られたアルカリ可溶性高分子化合物溶液100重量部、重合性不飽和結合含有化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部及びDETX−S(日本化薬社製)10重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル70重量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
【0084】
<評価>
実施例1〜10、及び、比較例1〜3で得られた硬化性樹脂組成物について以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0085】
(1)カラムスペーサの作製及びパターン形成評価
透明導電膜が形成されたガラス基板上に、得られた硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、100℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、20μm角のドットパターンマスクを介して100mJ/cmの紫外線を照射した後、0.04%KOH溶液により40秒間現像し、純水にて30秒間洗浄してカラムスペーサのパターンを形成した。
その後、220℃、30分のベーキング処理を行った後、カラムスペーサの断面積は20μm×20μm(400μm)、高さは3.0μmであった。以下の基準によりパターン形状を評価した。
○:パターン表面が平滑で、かつ、パターン周縁に残滓が見られない状態
×:パターン表面の荒れ、又は、パターン周縁の残滓が見られる状態
【0086】
(カラムスペーサの評価)
(圧縮特性)
温度25℃に調整した室内において、カラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。
次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。なお、式(1)中、Eは圧縮弾性係数(Pa)を表し、Fは、荷重(N)を表し、Dは、カラムスペーサの高さ変形率=(H−H)/Hを表し、Sは、カラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0087】
E=F/(D×S) (1)
R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0088】
(2)液晶表示素子の製造
得られたカラムスペーサが形成されたガラス基板上に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布した。
続いて、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方のガラス基板を重ねあわせてシール部に高圧水銀ランプを用い紫外線を50mW/cmで60秒照射した。
その後、液晶アニールを120℃にて1時間行い熱硬化させ、液晶表示素子を作製した。
【0089】
(液晶表示素子の評価)
液晶表示素子を点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
また、液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて60時間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により表示画像を観察し、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
更に、液晶表示素子を−20℃の条件下にて24時間放置した。放置後、引き続き−20℃の条件下にてクロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により観察し、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
低温発泡の評価
〇:発泡なし
×:発泡あり
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物と、アルカリ可溶性高分子化合物と、光反応開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物である
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項4】
25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.2〜1.0GPaであることを特徴とする請求項3記載のカラムスペーサ。
【請求項5】
請求項1若しくは2記載の硬化性樹脂組成物、又は、請求項3若しくは4記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2009−193005(P2009−193005A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36166(P2008−36166)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】