説明

硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物およびカラーフィルタ

【課題】耐熱性の優れた硬化物を与えることができ、より高輝度のカラーフィルタを実現できる硬化性樹脂組成物、そして顔料を含有する硬化性樹脂組成物、これらの硬化性樹脂組成物を用いて形成したカラーフィルタを提供する。
【解決手段】(A)重合体成分、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)光開始剤、(D)溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物であって、重合体成分(A)が(メタ)アクリル酸を必須成分とし(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合したものである硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物およびカラーフィルタに関する。より詳しくは、重合体成分、多官能(メタ)アクリレート、光開始剤、溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物、この硬化性樹脂組成物に顔料を含有する硬化性樹脂組成物、この硬化性樹脂組成物を用いて形成したカラーフィルタに関する
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは軽量、薄型、低消費電力等の特性を活かし、液晶テレビ以外に携帯電話、ノートパソコン、携帯用パソコン、デジタルカメラ、デスクトップモニタ等様々な用途で使用されており、液晶ディスプレイの需要が高まっている。2011年7月にアナログテレビ放送が終了しデジタルテレビ放送に移行することもあり、さらに液晶ディスプレイの市場は拡大している状況にある。液晶テレビは性能を向上させながらも価格低下が激しいことから、液晶ディスプレイ関連部材は高品質ながらも低コストであることが望まれている。高品質な液晶ディスプレイのカラー表示化に向けて表示パネルの高輝度化が強く求められている。
赤色、緑色そして青色の顔料等の色材をそれぞれ含有した硬化性樹脂組成物について、輝度を高くするための検討が種々なされている。しかしながら、硬化性樹脂組成物中に含まれる重合体、添加剤、光重合開始剤等に起因するポストベーク工程における硬化物層の黄変が、カラーフィルタの輝度を低下させる要因となっている。
このようなカラーフィルタの輝度を向上させる手法に関し、特許文献1には、輝度の高い優れた青色画素を提供するために、青色着色剤を含有する青色カラーフィルタ用感放射性樹脂組成物において、組成物中に特定の酸化防止剤を含有させるとともに、その含有量を特定の範囲とする旨の記載がされている。特許文献2には、デカハイドロナフチル基を有する重合体を着色層形成用感放射線性組成物として用いることで透明性に優れ輝度の高い画素を形成できる旨の記載がされている。特許文献3には、塩素化銅フタロシアニン顔料の平均塩素原子導入数を特定の範囲とし、かつ黄色顔料を含有することで高色純度、高輝度、高コントラスト比となるカラーフィルタを形成できる旨の記載がされている。特許文献4には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するカラーフィルタ用着色組成物を用いることで、カラーフィルタの形成工程において明度の低下が小さく、色差ΔEab*が小さい高輝度を保ったカラーフィルタを提供できる旨の記載がされている。
以前、特許文献5に2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルのエーテルダイマーである特定構造の化合物を重合してなるポリマーを硬化成分とともに含む樹脂組成物が、熱性とともに透明性にも極めて優れた塗膜を形成することができるので、輝度および色純度が高く、色ムラ等を生じることのない良好な表示品質の表示装置を提供することができることを開示した。
上記のように、種々のカラーフィルタ用の硬化性樹脂組成物が開発されている。特許文献5に記載のポリマーを硬化成分とともに含む樹脂組成物を用いることで耐熱性の優れた塗膜を形成することができるが、より高輝度化に対応するためには更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−122650号公報(第3頁等)
【特許文献2】特開2009−229979号公報(第3頁等)
【特許文献3】特開2010−2550号公報(第3頁等)
【特許文献4】特開2010−8650号公報(第3頁等)
【特許文献5】特開2004−300204号公報(第3頁等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑み、耐熱性の優れた硬化物を与えることができ、より高輝度のカラーフィルタを実現できる硬化性樹脂組成物、そして顔料を含有する硬化性樹脂組成物、これらの硬化性樹脂組成物を用いて形成したカラーフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、(A)特定の重合体成分と、(B)多官能(メタ)アクリレートと、(C)光開始剤と、(D)溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物とすると、その硬化物は耐熱試験での変色が小さくなることを見出した。また、このような硬化性樹脂組成物が、カラーフィルタの基板上に設けられる硬化物層に特に有用なものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、(A)重合体成分、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)光開始剤、(D)溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物であって、重合体成分(A)が(メタ)アクリル酸を必須成分とし(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合してなる、ことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、前記重合体成分(A)が、下記一般式(1)で示される単量体成分を更に重合してなる硬化性樹脂組成物でもある。
【0006】
【化1】


(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
本発明はまた、前記硬化性樹脂組成物に顔料を含有する硬化性樹脂組成物でもある。
本発明はまた、前記硬化性樹脂組成物を用いてなるカラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物でもある。
そして、本発明はまた、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層が基板上に設けられてなるカラーフィルタでもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(A)重合体成分、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)光開始剤、(D)溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物であって、重合体成分(A)が(メタ)アクリル酸を必須成分とし(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合してなる硬化性樹脂組成物である。なお、これらの必須成分は、各々1種又は2種以上使用してもよく、本発明の作用効果を損なわない限り、他の成分を更に含有していてもよい。以下では、上記(A)の重合体成分を「(A)成分」、上記(B)の多官能(メタ)アクリレートを「(B)成分」、上記(C)の光開始剤を「(C)成分」、上記(D)の溶剤を「(D)成分」とも称する場合もある。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の両方を表現した表記である。
上記硬化性樹脂組成物において、(A)重合体成分は、(メタ)アクリル酸を必須成分とし(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合してなるものであるが、(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物としては、例えば、下記一般式(2)
【0007】
【化2】


(式中、R は炭素数1〜5のアルキルを表し、R は炭素数1〜8のアルキルを表し、R は水素または炭素数1〜8のアルキルを表し、R は水素またはメチルを表す)で示される(メタ)アクリレート系化合物である。これらの中でも、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートが好ましい。
【0008】
また、(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、下記一般式(3)
【0009】
【化3】


(式中、R は水素または炭素数1〜8のアルキルを表し、R は水素またはメチルを表す)で示される(メタ)アクリレート系化合物である。具体的には、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどが挙げられる。その他の(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらの中でも、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが好ましい。
前記(A)重合体成分を得る際の単量体成分は、必須成分である(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤の他に必要に応じて、他の共重合可能な単量体を含んでいてもよい。他の共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のアルキル置換マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等の芳香族基を有するマレイミド;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、ビニルトルエン、N−ベンジルマレイミドが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他の単量体は、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0010】
前記(A)重合体成分を得る際の単量体成分は、必須成分である(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤以外に、下記一般式(1)
【0011】
【化4】


(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で示される単量体成分(以下では「エーテルダイマー」と称することもある。)を更に重合してなることが好ましい。この単量体成分は、重合の際にエーテルダイマーが環化反応して、重合体の構成単位中にテトラヒドロピラン環構造が形成されていると推測される。
上記一般式(1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、RおよびRは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
上記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
上記(A)重合体成分を得る際の単量体成分中における上記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中2〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%であるのがよい。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となる恐れがある。
前記(A)重合体成分は、更に側鎖に重合性二重結合を含むことが好ましい。側鎖に重合性二重結合を持たせることにより、熱や光で硬化させることができる。その為、より耐熱分解性が向上するほか、感光性樹脂組成物としたときの光に対する感度が向上し、より少ない光で硬化し、かつ硬化後の機械強度も高くなる。側鎖に重合性二重結合を導入する方法としては、前記重合体の酸基の一部に、二重結合及び酸基と反応する官能基を持った単量体を反応させる方法が好ましい。二重結合及び酸基と反応する官能基を持った単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、イソプロペニルオキサゾリン等が好ましく、メタクリル酸グリシジルが工業的入手性や反応性の点から最も好ましい。
(A)重合体成分の側鎖に二重結合を導入する場合、二重結合1つあたりの分子量である二重結合当量としては、400〜10万が好ましく、400〜1万が更に好ましく、500〜3000が最も好ましい。二重結合当量が高すぎる場合、光に対する感度が低くなる恐れがあり、また、二重結合当量が低すぎる場合、保存安定性が悪くなる場合や、溶媒に対する溶解性が低下する恐れがある。
(A)重合体成分中の酸基の一部に(メタ)アクリル酸グリシジルの様な酸基と反応する官能基を持った単量体を付加する方法は、公知の方法を採用すればよく、特に制限はないが、反応温度は60℃〜140℃が好ましく、また、トリエチルアミンやジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、塩化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、臭化テトラフェニルホスホニウム等のホスホニウム塩、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物等、公知の触媒を使用することが好ましい。
前記単量体成分の重合反応の方法としては、特に制限はなく、従来公知の各種重合方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度(%)=[単量体成分の全重量/(単量体成分の全重量+溶媒重量)]X100とする)は、使用する単量体成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なるが、好ましくは、重合温度40〜150℃、重合濃度20〜50%とするのがよく、さらに好ましくは、重合温度60〜130℃、重合濃度30〜45%とするのがよい。

前記単量体成分の重合において溶媒を用いる場合には、溶媒として通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いるようにすればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。また、特に、酸基含有単量体の含有量が30質量%を越える場合には、重量体の析出を防止するために、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒と、プロピレングリコールモノメチルエーテルやイソプロパノール等のアルコール系溶媒との混合溶媒が好ましい。なお、ここでの酸基含有単量体の含有量とは、側鎖に反応性二重結合を導入するために消費される量を上乗せしたものである。

前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、通常用いられる重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのがよい。
前記単量体成分を重合する際には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのが好ましい。
本発明の(A)重合体成分の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは2000〜200000、より好ましくは5000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎて塗膜を形成しにくくなり、一方、2000未満であると充分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。なお、重量平均分子量の測定方法は、下記実施例において示す。
前記(A)重合体成分は、酸価が30〜300mgKOH/gであるのが好ましく、より好ましくは50〜200mgKOH/gであるのがよい。酸価が30mgKOH/g未満の場合、アルカリ現像に適用することが難しくなり、300mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎて塗膜を形成しにくくなる傾向がある。また、溶媒に対する溶解性が低くなり、合成中に析出して、攪拌が不可能となる恐れがある。
上記硬化性樹脂組成物において、(B)多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記硬化性樹脂組成物において、(C)光開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類、その他、フェニルグリオキシリックメチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノンが好ましい。
上記硬化性樹脂組成物において、(D)溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
上記硬化性樹脂組成物において、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分のほかに、本発明に効果を損なわない範囲で、例えば、染料、顔料等の着色剤、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、分散剤等の公知の添加剤を含有するものであってもよい。
上記顔料としては、種々の有機又は無機着色剤を1種又は2種以上用いることができる。有機着色剤としては、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものが好適である。
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23:19等のバイオレット系ピグメント;及び、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント。
上記無機着色剤としては、無機顔料、体質顔料が好適であり、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、透明性、耐熱性に優れており、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途に用いることができ、特に、(A)成分が酸基を有する場合には、カラーフィルタや光導波路等を作製するためのアルカリ現像型のネガ型レジスト材料等として好適に用いることができる。さらに、(A)成分の構造中にテトラヒドロピラン環構造を有する場合には良好な顔料分散性をも有するため、カラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる。
本発明のカラーフィルタは、硬化樹脂層が基板上に設けられてなるカラーフィルタにおいて、前記硬化樹脂層となる樹脂組成物が上記本発明の硬化性樹脂組成物であるものである。前記カラーフィルタとは、画像のカラー化に必要な、透明基板上に少なくとも3原色の微細な画素とそれらを区切るブラックマトリクスを有する光学フィルタであり、3原色としては、一般に、赤(R)・緑(G)・青(B)が用いられる。カラーフィルタを構成する部材としては、具体的には、3原色(RGB)画素、樹脂ブラックマトリックス、保護膜、柱状スペーサーがあるが、本発明のカラーフィルタは、該フィルタを構成する各部材の少なくとも1つが、前記硬化性樹脂組成物を硬化させて形成されたものであればよい。
上記カラーフィルタにおいては、3原色(RGB)画素、樹脂ブラックマトリックス、保護膜および柱状スペーサーとなる硬化樹脂層は、(A)成分が酸基を有する重合体である場合の硬化性樹脂組成物によって形成されていることが好ましい。また、RGB画素を形成する場合の硬化性樹脂組成物は、赤・緑・青の各3原色の顔料を含み、樹脂ブラックマトリックスを形成する場合の硬化性樹脂組成物は、黒色の顔料を含み、保護膜または柱状スペーサーを形成する場合の硬化性樹脂組成物は、顔料を含まなくてもよい。なお、顔料を含む場合には、分散剤をも含有させることが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、例えば、次のようにして作製することができる。1)顔料を含む硬化性樹脂組成物を、ガラス、好ましくは無アルカリガラス、透明プラスチックなどの透明基板上に、スピンコート法、スプレー法など公知の方法でコートし、乾燥し、塗膜を作製する。コート法としてはスピンコート法が好ましく用いられる。乾燥条件としては、室温〜120℃、好ましくは60℃〜100℃の温度、10秒〜60分、好ましくは30秒から10分、常圧または真空下で加熱乾燥する方法が好ましい。2)その後、所望のパターン形状に応じた開口部を設けたフォトマスク(パターニングフィルム)を、上記塗膜の上に接触状態でまたは非接触状態で載せ、光を照射し、硬化させる。ここで、光とは、可視光のみならず、紫外線、X線、電子線などの放射線を意味するが、紫外線が最も好ましい。紫外線源としては、一般に高圧水銀ランプが好適に使用される。3)光照射後、溶剤、水、アルカリ水溶液などで現像を行う。これらのなかで、アルカリ水溶液が、環境への負荷が少なく高感度の現像を行うことができるため好ましい。アルカリ成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが好ましい。アルカリの濃度としては、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がさらに好ましく、0.1〜1重量%が最も好ましい。アルカリ濃度が上記範囲より低いと前記硬化性樹脂の溶解性が不足する恐れがあり、逆に高いと溶解力が高すぎて現像性が劣る場合がある。さらに、アルカリ水溶液には、界面活性剤を添加してもよい。まず、以上の1)〜3)の工程を、黒色顔料を含む硬化性樹脂組成物を用いて行い、基板上に樹脂ブラックマトリックスを形成する。
次に、硬化性樹脂組成物の顔料を赤(R)、緑(G)、青(B)と順次変えて、上記1)〜3)の工程を繰り返し行い、R、G、Bの画素を形成して、RGB画素を作製する。次に、基板上に形成されたRGB画素の保護や表面平滑性を向上させる目的で、必要に応じて、保護膜を形成する。
さらに、上記カラーフィルタが液晶表示装置用カラーフィルタである場合には、柱状スペーサーを形成することが好ましい。柱状スペーサーは、スペーサーを形成すべき面に硬化性樹脂組成物を所望のスペーサーの高さとなるような厚みに塗工し、上記1)〜3)の工程を経て作製することができる。
カラーフィルタを作製する際には、各部材の作成時に、現像後加熱して(ポストベーク)硬化をさらに進行させ、かつ溶媒が残存している場合はこれを完全に除去させることが好ましい。ポストベークの際の温度としては120〜300℃が好ましく、150〜250℃がさらに好ましく、180〜230℃が最も好ましい。ポストベーク温度が上記より高いと、画素の着色や熱分解により塗膜の平滑性を損なう恐れがあり、逆に低いと硬化の進行が少なく、塗膜強度が低下する恐れがある。ポストベークは、各部材形成における現像後に行っても良いし、全ての部材を形成した後に行っても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であり、耐熱性の優れた硬化物を与えることができるものである。このような硬化性樹脂組成物から得た硬化樹脂層をカラーフィルタに用いれば輝度および色純度が高く、色ムラ等を生じることのない良好な表示品質の表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。各合成例・比較合成例における分析は、下記のようにして行った。
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定装置(「Shodex GPC System−21H」昭和電工製)を用い、ポリスチレン換算で測定した。
<重合体溶液中の重合体濃度>
重合体溶液1gにアセトン4gを加えて溶解させた溶液を常温で自然乾燥させ、さらに5時間減圧乾燥(160℃/5mmHg)した後、デシケータ内で放冷し重量を測定した。そして、重量減少量から、重合体溶液の不揮発分を算出し、これを重合体濃度とした。
<酸価>
重合体溶液0.5〜1gに、アセトン80mlおよび水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM−555」平沼産業製)を用いて滴定し、溶液の酸価を測定した。そして、溶液の酸価と重合体濃度から、重合体の酸価を算出した。
<合成例1>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、メタクリル酸(以下「MAA」と称する)15質量部、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名「スミライザーGM」、住友化学社製;以下「スミライザーGM」と称する)1質量部、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(以下「MD」と称する)20質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(以下「CHMA」と称する)44質量部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)20質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」、日本油脂製;以下「PBO」と称する)3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と称する)40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール(以下「n−DM」と称する)4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40%の重合体溶液1を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/gであった。
<合成例2>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA15質量部、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート(商品名「スミライザーGS」、住友化学社製;以下「スミライザーGS」と称する)1質量部、MD20質量部、CHMA44質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40%の重合体溶液2を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/gであった。
<合成例3>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA15質量部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(商品名「アデカスタブLA82」、ADEKA社製;以下「アデカスタブLA82」と称する)1質量部、MD20質量部、CHMA44質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40%の重合体溶液3を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/gであった。
<合成例4>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA34質量部、スミライザーGM1質量部、MD20質量部、CHMA25質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃とし、3時間110℃を維持した。一旦室温まで内温を冷却した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル(以下「GMA」と称する)24部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.05部、トリエチルアミン(以下「TEA」と称する)0.4部を仕込み、そのまま110℃で12時間反応させた。その後、PGMEA36部を加えて室温まで冷却し、濃度が40%の重合体溶液4を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は12000、酸価は100mgKOH/gであった。
<比較合成例1>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA15質量部、MD20質量部、CHMA45質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA128質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40%の比較重合体溶液1を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/gであった。
<比較合成例2>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA34質量部、MD20質量部、CHMA26質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA128質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃とし、3時間110℃を維持した。一旦室温まで内温を冷却した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル(以下「GMA」と称する)24部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.05部、トリエチルアミン(以下「TEA」と称する)0.4部を仕込み、そのまま110℃で12時間反応させた。その後、PGMEA36部を加えて室温まで冷却し、濃度が40%の比較重合体溶液2を得た。(A)重合体成分の重量平均分子量は12000、酸価は100mgKOH/gであった。
<実施例1>
合成例1で得られた重合体溶液1を100質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「ライトアクリレートDPE−6A」、共栄社化学株式会社製;以下「DPE−6A」と称する)4.5部、光開始剤(商品名「イルガキュア907」、チバ・ガイギー社製;以下「Irg907」と称する)1.3部、PGMEA78部を均一になるよう攪拌混合し、硬化性樹脂組成物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて無アルカリガラス板上に全乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布し、ホットプレートにて100℃で3分間乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて照射量が100mJ/cmとなるように紫外線を照射した。照射後、更にホットプレートにて220℃で20分間乾燥させ試験片1を得た。得られた試験片1の透明性を下記の方法で測定した。そしてこの試験片1を用いて下記の方法で耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
<透明性>
分光光度計(「UV−3100」島津製)を用いて波長350〜650nmにおける透過率(%)を測定した。
<耐熱性>
試験片1をホットプレートにて230℃で2時間加熱し、室温に冷却してから再度透明性を測定した。そして、耐熱試験前後の光線透過率の減少量(%:耐熱試験前の光線透過率−耐熱試験後の光線透過率)を算出した。
実施例2〜4、比較例1〜6
実施例1と同様にして、各成分を表1に示した割合で混合して(数値は重量部で示す)、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物を実施例1と同じ評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

表1に示すように(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合した重合体成分(A)を用いた方が、得られた硬化物における耐熱性後の光線透過率の減少量が小さく、硬化性樹脂組成物に(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を添加剤として加えた場合、そして添加剤を加えない場合は、得られた硬化物における耐熱性後の光線透過率の減少量が大きいことが確認された。
表2に示す配合比(数値は重量部で示す)の各成分を均一になるように攪拌混合し、緑(G)の着色硬化性樹脂組成物を得た。なお、緑顔料分散液としては「ピグメントグリーン36」:「ピグメントイエロー138」=6:4(重量比)の分散液(固形分量22質量%)を用いた。得られた緑の着色硬化性樹脂組成物を1μmのフィルターを用いて濾過した後、スピンコーターを用いて無アルカリガラス板上に全乾燥後の厚さが1mとなるように塗布し、ホットプレートにて100℃で3分間乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて照射量が100mJ/cmとなるように紫外線を照射した。照射後、更にホットプレートにて220℃で20分間乾燥させ試験片2を得た。そしてこの試験片2を用いて下記の方法で耐熱試験後の色度を評価した。結果を表2に示す。
<色度(Y値)>
得られた試験片2をホットプレートにて230℃で2時間加熱し、室温に冷却してから分光光度計(「UV−3100」島津製)を用いて透過スペクトルを測定した。C光源にて算出した色度(Y値)を求めた。
実施例5〜8、比較例7〜12
実施例5と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0015】
【表2】

表2に示すように顔料を含有する硬化性樹脂組成物においても、(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合した重合体成分(A)を用いた方が、得られた硬化物における耐熱性後の色度(Y値)が高く、硬化性樹脂組成物に(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を添加剤として加えた場合、そして添加剤を加えない場合は、得られた硬化物における耐熱性後の色度(Y値)が低いことが確認された。
以上より、上記構成の樹脂組成物とすることによって初めて、耐熱性の優れた硬化物を与えることができるものである。このような硬化性樹脂組成物から得た硬化樹脂層をカラーフィルタに用いれば輝度(Y値)および色純度が高く、色ムラ等を生じることのない良好な表示品質の表示装置を提供することができることが確認されたといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合体成分、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)光開始剤、(D)溶剤とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物であって、重合体成分(A)が(メタ)アクリル酸を必須成分とし(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードフェノール化合物、および/または(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤を重合してなる
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の重合体成分(A)が、下記一般式(1)
【化1】


(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
で示される単量体成分を更に重合してなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の前記硬化性樹脂組成物に顔料を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4何れかに記載の前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層が基板上に設けられてなることを特徴とするカラーフィルタ。

【公開番号】特開2011−162716(P2011−162716A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29181(P2010−29181)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】