説明

硬化性樹脂組成物、塗料および塗装物

【課題】常温での硬化性に優れ、各種金属に高度の耐食性を付与できる硬化物与え、また、透明性に優れ低着色の硬化物を形成する硬化性樹脂組成物提供すること、前記硬化性樹脂組成物を含有する塗料を提供すること、さらに、前記塗料を塗装してなる塗装物を提供すること。
【解決手段】加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物ならびに有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を含有する塗料、前記塗料を被塗物に塗装して得られる塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、これらを含有する塗料、さらには当該塗料を塗装してなる塗装物に関する。さらに詳しくは特定のポリウレタン樹脂、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物ならびに有機溶剤を含有する硬化性に優れるとともに、耐食性に優れ、屈折率が高い硬化物を形成する硬化性樹脂組成物、この硬化性樹脂組成物を含有する塗料、さらには、この塗料を各種の基材に塗装、硬化させてなる、優れた耐食性や高屈折率を有する塗膜を備えた塗装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂と硬化触媒からなる硬化性組成物は、常温で硬化し、各種基材への付着性、耐加水分解性等に優れることから、各種の基材用の接着剤、シーリング剤、塗料等の各種の用途に使用できることが開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。こうした特許文献に記載の発明においては、硬化触媒としてジアルキル錫ジカルボキシレート、アルコキシチタン化合物等の金属化合物が使用されるが硬化性が不十分であり、ゲル分率が高い硬化物を形成しない問題点があった。また、金属のコーティング剤として使用した場合、付着性には優れるものの耐食性が不十分であり高度の耐食性が必要とされる用途には使用できない問題点があった。いっぽう、各種のディスプレイ等の用途に供されるコーティング剤として高屈折率を有する塗膜を形成する塗料の開発が進められているが、従来の塗料から得られる塗膜は透明性に劣ったり、着色したりする、等の問題点がありこうした欠点を解消でき塗料の開発が望まれている。
【0003】
【特許文献1】米国特許 3,632,557号公報
【0004】
【特許文献2】米国特許 3,979,344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、常温での硬化性に優れ、各種金属に高度の耐食性を付与できる硬化物与え、また、透明性に優れ低着色の硬化物を形成する硬化性樹脂組成物提供すること、前記硬化性樹脂組成物を含有する塗料を提供すること、さらに、前記塗料を塗装してなる塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)ならびに有機溶剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物は、常温での硬化性に優れ、耐食性に優れるとともに高屈折率の硬化物を形成すること、この硬化性樹脂組成物を含有する塗料を各種の基材に塗装して硬化させると屈折率が高い塗膜を形成すること、当該塗料を金属基材に塗装して硬化させると極めて耐食性に優れる塗膜形成すること、を見い出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物ならびに有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物に関するものである。また、前記硬化性樹脂組成物を含有する塗料に関するものでもあるし、さらに、前記塗料を被塗物に塗装して得られる塗装物に関するものでもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、常温での硬化性に優れ、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する塗料を金属基材に塗装した場合高度の耐食性を有する硬化塗膜を形成することから、金属の防食塗料用の硬化性樹脂組成物として好適である。また、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する塗料を各種の基材に塗装した場合、低着色で高屈折率の塗膜を形成することから各種ディスプレイの反射防止用のコーティング剤用の硬化性樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明で使用される加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)について説明をする。本発明で云うポリウレタン樹脂とは、1分子中に少なくとも2個のウレタン結合を含有する重合体を指称するものである。そして、当該ポリウレタン樹脂が含有する加水分解性シリル基としては、例えば、下記一般式(I)で表される様なシリコン原子に各種の加水分解性基が結合した原子団を挙げることができる。
【0010】
【化1】

(ただし、式中のRはアルキル基、アリール基またはアラルキル基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表し、また、mは0、1または2なる整数を表す。)
【0011】
前記一般式(I)中のRとして特に好ましいものは、加水分解により生成したアルコールが硬化物から容易に揮散する点から、アルコキシ基または置換アルコキシ基である。かかるアルコキシ基の代表的なものとしては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数が1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。
また、置換アルコキシ基の代表的なものとしては、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、4−メトキシブトキシ基等の低級アルコキシ基が置換した炭素数が2〜4のアルコキシ基が挙げられる

【0012】
かかる加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製するには、例えば、(1)イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1)にイソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物を反応させる方法、(2)水酸基を有するプレポリマー(P−2)にイソシアネート基と加水分解性シリル基を併有する化合物を反応させる方法、(3)カルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(P−3)にエポキシ基と加水分解性シリル基を併有する化合物を反応させる方法、等の方法を適用することができる。
【0013】
前記(1)の方法で使用されるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1)を調製するには、例えば、ポリマーポリオールおよびポリイソシアネートを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になるような比率で反応させればよい。
【0014】
前記ウレタンプレポリマー(P−1)を調製する際に使用されるポリマーポリオールの代表的なものとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオールや水添ポリブタジエンポリオール等のポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0015】
これらのポリマーポリオールのうち、ポリエステルポリオールは、例えば、低分子量の多価アルコールと低分子量のポリカルボン酸あるいはその反応性誘導体とをカルボキシル基に対して水酸基が過剰になるような比率でエステル化反応させることにより調製される。その際に使用される低分子量の多価アルコールの代表的なものとしては、エチレングリコール、プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,8−オクタンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。また、前記低分子量のポリカルボン酸の代表的なものとしては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸:トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のポリカルボン酸等が挙げられる。そして前記した各種の多価アルコールのうち、2価アルコールを主成分として使用するのが好ましい。また、前記した各種のポリカルボン酸のうち、ジカルボン酸を主成分として使用するのが好ましい。
【0016】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記したような低分子量多価アルコールの存在下にε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオールを使用することもできる。
【0017】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子含有基を2個以上有する化合物の1種または2種以上を重合開始剤として使用して、アルキレンオキサイドを開環重合させたものを使用することができる。重合開始剤として使用される活性水素原子含有基を2個以上有する化合物の代表的なものとしては、ポリエステルポリオールを調製する際に使用されるものとして前記した多価アルコールおよびポリカルボン酸に加えて、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。そして、これらのうち活性水素原子含有基を2個有する化合物を重合開始剤の主成分として使用することが好ましい。
【0018】
また、前記ポリエーテルポリオールの調製に際し使用されるアルキレンオキサイドの代表的なものとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。そして、このようなアルキレンオキサイドを開環重合して得られるポリエーテルポリオールの代表的なものとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール等が挙げられる。
【0019】
前記ポリカーボネートポリオールの代表的なものとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールと、ジフェニルカーボネートやホスゲンとを反応して得られる各種のポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0020】
前記した各種のポリマーポリオールの数平均分子量は、300〜10,000の範囲にあることが好ましく、500〜5,000の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
前記ウレタンプレポリマー(P−1)を調製する際に使用されるポリイソシアネートの代表的なものとしては、メタフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のアラルキレンジイソシアネート等が挙げられる。そして、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。そして、かかるポリイソシアネートのなかでは、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐水性を維持する観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートおよびアラルキレンジイソシアネートから選ばれる1種以上のジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0022】
前記したポリマーポリオールとポリイソシアネートを反応させることによりイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1)を調製することができる。その際、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の強度、伸度、耐熱性等の性能を調整するために、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の活性水素含有基を2個以上有する低分子量の化合物を併用することができる。また、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の水酸基以外の各種の活性水素含有基を2個以上有する重合体を併用することができる。
【0023】
かかる活性水素含有基を有する低分子量の化合物のなかで水酸基を有する化合物の代表的なものとしては、前記ポリエステルポリオールを調製する際に使用されるものとして例示したような低分子量の多価アルコールに加えて、酸基あるいは中和された酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0024】
前記した酸基を含有するポリオールおよび中和された酸基を含有するポリオールの代表的なものとしては、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸等のカルボキシル基を含有する低分子量のジオール;前記カルボキシル基を含有する低分子量のジオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有オリゴエステルポリオール;前記カルボキシル基を含有する低分子量のジオールあるいはカルボキシル基含有オリゴエステルポリオールを各種の塩基で中和して得られるカルボキシレート基を含有するポリオール;5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を含有するジカルボン酸と前記したような低分子量の多価アルコールとを反応させて得られるスルホン酸基を含有するオリゴエステルポリオール;前記したスルホン酸基を含有するジカルボン酸のスルホン酸基を塩基で中和して得られるスルホネート基を含有するジカルボン酸と低分子量の多価アルコールとを反応させて得られるスルホネート基を含有するオリゴエステルポリオール等が挙げられる。前記したカルボキシル基やスルホン酸基を中和して中和された酸基に変換する際に使用される塩基性化合物の代表的なものとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の3級アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性物質等が挙げられる。
【0025】
活性水素含有基を有する低分子量化合物のなかでアミノ基を含有する化合物の代表的なものとしては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、2−(エチルアミノ)エチルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン等のジアミン;ヒドラジン、N,N′−ジメチルヒドラジン等のヒドラジン類が挙げられる。また、メルカプト基を含有する低分子量の化合物のなかでメルカプト基を含有する化合物の代表的なものとしては、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール等のジメルカプト化合物が挙げられる。
【0026】
前記した各種の活性水素含有基を一分子中に2個以上有する低分子量の化合物の中では
、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性、当該組成物から得られる硬化物の透明性の点から、
酸基あるいは中和された酸基を有するポリオールを併用するのが好ましい。そして、酸基を含有するポリオールおよび中和された酸基を含有するポリオールのなかでも、ウレタンプレポリマー(P−1)を調製し易いことから、カルボキシル基を含有する低分子量のジオールを使用することが特に好ましい。
【0027】
前記した水酸基以外の各種の活性水素含有基を2個以上有する重合体の代表的なものとしては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。かかる、活性水素含有基を2個以上有する重合体の数平均分子量は、300〜10,000の範囲にあることが好ましく、500〜5,000の範囲にあることがより好ましい。
【0028】
前記ウレタンプレポリマー(P−1)を調製する際には、例えば、ポリマーポリオールに含有される水酸基ならびに必要に応じて使用される活性水素含有基を有する低分子量化合物および活性水素含有基を有する重合体に含有される活性水素含有基の合計当量数に対するポリイソシアネートに含有されるイソシアネート基の当量数の比〔イソシアネート基当量数/(ポリマーポリオール中の水酸基の当量数+活性水素含有基を有する低分子量化合物中の活性水素含有基の当量数+活性水素含有基を有する重合体に含有される活性水素含有基の当量数)〕が1.05〜2.5の範囲となるような比率で、より好ましくは1.1〜2.0の範囲となるような比率で、原料成分を反応させればよい。ポリオールとポリイソシアネートを、前記範囲の当量比で反応させることにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1)を得ることができる。かかるウレタンプレポリマー(P−1)を調製するには、無溶剤下または有機溶剤の存在下に30〜130℃、好ましくは50〜100℃で反応を行えばよい。
【0029】
前記ウレタンプレポリマー(P−1)を有機溶剤の存在下に調製する際に使用される有機溶剤の代表的なものとしては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0030】
前記(1)の方法により加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製する際に使用されるイソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物に含有される活性水素含有基の代表的なものとしては、アミノ基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0031】
かかる、イソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物のうち、活性水素含有基としてアミノ基を含有する化合物の代表的なものとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の1個のアミノ基と加水分解性シリル基を含有するシランカップリング剤;3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメチルメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン等の2個のアミノ基と加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤;特開昭58−105,925に開示されているようなN,N−ビス〔(3−トリメトキシシリル)プロピル〕アミンやN,N−ビス〔(3−トリエトキシシシリル)プロピル〕アミンに代表される1分子中に1個のアミノ基と2個の加水分解性シリル基を含有する化合物、等が挙げられる。
【0032】
イソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物うち、活性水素含有基としてメルカプト基を含有する化合物の代表的なものとしては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、等のメルカプト基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0033】
イソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物うち、活性水素含有基として水酸基を含有する化合物の代表的なものとしては、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルジメチルメトキシシラン、等の水酸基を含有するシラン化合物が挙げられる。
【0034】
イソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物うち、活性水素含有基としてカルボキシル基を含有する化合物の代表的なものとしては、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリエトキシシラン、3−カルボキシプロピルジメチルメトキシシラン、等のカルボキシル基を含有するシラン化合物が挙げられる。
【0035】
前記したイソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物のなかで、イソシアネート基との反応性が高く且つ、入手しやすいことから1個または2個のアミノ基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
【0036】
前記したイソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物とウレタンプレポリマー(P−1)を反応させることにより加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製することができる。例えば、ウレタンプレポリマー(P−1)と1個のアミノ基と加水分解性シリル基を併有する化合物とを反応させることにより主鎖末端に加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂を調製することができるし、2個のアミノ基と加水分解性シリル基を併有する化合物とを反応させることにより主鎖内部に加水分解性シリル基がペンダントした構造のポリウレタン樹脂を調製することができる。また、1個のアミノ基と加水分解性シリル基を併有する化合物と2個のアミノ基と加水分解性シリル基を併有する化合物を併用してウレタンプレポリマー(P−1)と反応させることにより主鎖末端と主鎖内部の両方に加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂を調製することができる。
【0037】
ウレタンプレポリマー(P−1)と、イソシアネート基と反応する活性水素含有基と加水分解性シリル基を併有する化合物との反応は、例えば、両者を混合、攪拌することによって進行させることができる。かかる反応は、10〜100℃、好ましくは30〜80℃の条件下で行えばよい。
【0038】
前記(2)の方法により加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製する際に使用される水酸基を有するプレポリマー(P−2)の代表的なものとしては、ウレタンプレポリマー(P−1)を調製する際に使用できるものとして例示した水酸基を含有する各種のポリマーポリオール類および水酸基を含有するポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
前記活性水素基を含有するプレポリマー(P−2)のうちポリウレタン樹脂を調製するには、例えば、ウレタンプレポリマー(P−1)を調製する際に使用されるものとして前記した、ポリマーポリオール、ポリイソシアネートおよび必要に応じて使用される活性水素含有基を2個以上有する低分子量の化合物および活性水素含有基を2個以上有する重合体を、イソシアネート基の当量数に対して、ポリマーポリオール中の水酸基の当量数と活性水素含有基の当量数の合計量が過剰になるような比率で反応させればよい。前記当量数の比率〔(ポリマーポリオール中の水酸基の当量数+活性水素含有基を有する低分子量の化合物中の活性水素含有基の当量数+活性水素含有基を2個以上有する重合体中の活性水素含有基の当量数)/イソシアネート基の当量数〕の好ましい範囲は1.05〜2.5、より好ましい範囲は1.1〜2.0である。そして、ポリイソシアネートの好ましいものは、プレポリマー(P−1)を調製する際に使用されるポリイソシアネートの好ましいものとして例示したものである。
【0040】
また、プレポリマー(P−2)のうちのポリウレタン樹脂の調製に際して、必要に応じて使用される活性水素含有基を2個以上有する低分子量の化合物の代表的なものとしては、ウレタンプレポリマー(P−1)を調製するにあたり使用されるものの代表的なものとして例示したものが挙げられる。そして、これらのうち、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性、当該硬化性組成物から得られる硬化物の透明性の点から、酸基あるいは中和された酸基を有するポリオールを併用するのが好ましい。そして、酸基を含有するポリオールおよび中和された酸基を含有するポリオールのなかでも、プレポリマー(P−2)を調製し易いことから、カルボキシル基を含有する低分子量のジオールを使用することが特に好ましい。
【0041】
また、プレポリマー(P−2)のうちのポリウレタン樹脂以外の上記した各種樹脂であって酸基あるいは中和された酸基を含有しない樹脂をそのまま使用して加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製することが出来るが、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性、当該組成物から得られる硬化物の透明性の点からは、予め、酸基および/または中和された酸基を導入した樹脂をプレポリマー(P−2)として使用することが好ましい。そして酸基あるいは中和された酸基の中でも、特に、カルボキシル基を導入することが好ましい。
【0042】
前記(2)の方法により加水分解性シリル基を含有するポリウレタン系樹脂(A)を調製する際に使用されるイソシアネート基と加水分解性シリル基を併有する化合物の代表的なものとしては、イソシアネート基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。かかるイソシアネート基を含有するシランカップリング剤の代表的なものとしては、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジメチルメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン等のイソシアネート基を有するアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0043】
前記したイソシアネート基と加水分解性シリル基を併有する化合物とプレポリマー(P−2)とを反応させることにより、ポリマー末端に加水分解性シリル基を有するポリマーを得ることができる。両成分を反応させる際のイソシアネート基の当量数と水酸基の当量数の比率(イソシアネート基の当量数/水酸基の当量数)は0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.2である。これら両成分の反応は、無溶剤下で行っても良いし、有機溶剤の存在下で行っても良い。有機溶剤の存在下に反応を行う際に使用される溶剤の代表的なものとしては、ウレタンプレポリマー(P−1)からポリウレタン樹脂(A)を調製する際に使用されるものとして前記したものが挙げられる。また、両成分の反応は室温でも進行するが、40〜100℃で行うことが好ましく、さらには50〜80℃で行うことがより好ましい。
【0044】
前記(3)の方法により加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製する際に使用されるカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(P−3)としては、例えば、前記(2)の方法で使用されるプレポリマー(P−2)であって、カルボキシル基および/または中和されたカルボシル基を含有するポリウレタン樹脂をそのまま使用できるし、前記(1)の方法で調製されるウレタンプレポリマー(P−1)であってカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマーと1分子中に1個の活性水素含有基を有する化合物を反応させることにより容易に調製できる。
【0045】
ウレタンプレポリマー(P−1)と1分子中に1個の活性水素含有基を有する化合物との反応によりカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(P−3)を調製する際に使用される活性水素含有基を有する化合物の代表的なものとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン等の1級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペラジン等の2級アミン類;N,N−ジメチルヒドラジン、N,N−ジエチルヒドラジン等のN,N−ジ置換ヒドラジン類;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等の活性メチレン基を有する化合物;さらにはアンモニア等が挙げられる。かかる活性水素含有基を有する化合物はそれぞれを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0046】
かかる両成分からポリウレタン樹脂(P−3)を調製する際の両成分の使用比率は、(活性水素含有基の当量数)/〔ウレタンプレポリマー(P−1)に含有されるイソシアネート基の当量数〕なる当量数の比率が0.8以上となる比率、好ましくは1.0以上となる比率である。活性水素含有基を有する化合物を大過剰に使用しても差し支えはないが、前記当量数の比率が10.0程度にとどめて反応させればよい。両成分の反応は、無溶剤下で行っても良いし、有機溶剤の存在下で行っても良い。有機溶剤の存在下に反応を行う際に使用される溶剤の代表的なものとしては、ウレタンプレポリマー(P−1)から加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製する際に使用されるものとして前記したものが挙げられる。また、両成分の好ましい反応温度は、活性水素含有基を有する化合物の種類によって異なるが、概ね、10〜100℃、好ましくは30〜80℃の範囲である。
【0047】
前記したカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(P−3)に、エポキシ基と加水分解性シリル基を併有する化合物を反応させることにより、加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製することができる。その際に使用されるエポキシ基と加水分解性シリル基を併有する化合物の代表的なものとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を含有するアルコキシシラン類が挙げられる。かかる両成分の反応において、両成分の反応によって得られる加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)中にカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基が残留しないように、ポリウレタン樹脂(P−3)に含有されるカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基に対してエポキシ基が過剰になるような比率で両成分を反応させてもよい。しかし、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性、当該硬化性組成物から得られる硬化物の透明性の点からは、カルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基に対してエポキシ基が等当量以下になるような比率で両成分を反応させてポリウレタン樹脂(A)中にカルボキシル基および/または中和されたカルボキシル基を残留させることが好ましい。かかる両成分の反応は、無溶剤下で行っても良いし、有機溶剤の存在下で行っても良い。反応温度は、50〜130℃の範囲が好ましく、70〜110℃が特に好ましい。
【0048】
前記のように各種の方法で加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)を調製することができるが、中和された酸基を併有するポリウレタン樹脂を調製するには、予め調製した酸基と加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂を塩基性化合物で中和する方法も適用することができる。その際に使用される塩基性化合物の代表的なものとしては、酸基を有するポリオールを中和する際に使用されるものとして前記した様な化合物が挙げられる。
【0049】
上述ようにして調製される加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)に導入される加水分解性シリル基の量は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性、安定性および硬化物の可とう性の点から、当該ポリウレタン樹脂(A)1,000g当たり0.02〜1.5モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜1.3モルの範囲であり、特に好ましくは0.1〜1.0モルの範囲である。
【0050】
また、ポリウレタン樹脂(A)に酸基および/または中和された酸基を導入する場合には、本発明組成物の硬化性および安定性の点から、当該ポリウレタン樹脂(A)1,000g当たり0.02〜1.5モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0モルの範囲であり、特に好ましくは0.08〜0.8モルの範囲である。
【0051】
また、前記したポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、チタノシロキサン化合物(B)とブレンドした場合に粘度が高くなって作業性に劣ったり短時間でゲル化したりすることがないことから、2,000〜200,000の範囲が好ましく、さらに好ましくは3,000〜100,000の範囲であり、特に好ましくは4,000〜50,000の範囲内である。
【0052】
次に、ポリウレタン樹脂(A)とブレンドして使用される有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)について説明する。チタノシロキサンとは、一般的に、分子中にTi−O−Si結合を含有する化合物を総称するものであり、有機溶剤に不溶のゲル状のものおよび有機溶剤に可溶ものがある。本発明では、均質で緻密な硬化物を形成させる点から
、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物が使用される。そして、かかる有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)の中でも、硬化性の点からチタン原子に結合したアルコキシ基および/またはシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物が好ましい。
【0053】
前記チタノシロキサン化合物(B)に含有されるアルコキシ基の代表的なものとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクトキシ基等の非置換アルコキシ基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の非置換シクロアルコキシ基;前記したアルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基等の基を置換基として有するアルコキシ基あるいはシクロアルコキシ基等が挙げられる。そしてかかる各種のアルコキシ基の中で特に好ましいものは、炭素数1〜4の非置換アルコキシ基、または、メトキシ基もしくはエトキシ基を置換基として有する炭素数が2〜4のアルコキシ基である。
【0054】
チタノシロキサン化合物(B)は、例えば、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)とアルコキシシラン化合物(b−3)とを部分共加水分解縮合することにより調製される。
【0055】
その際に使用されるアルコキシチタン化合物(b−1)の代表的なものとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキサノキシ)チタン等のテトラアルコキシチタンが挙げられる。また、アルコキシチタン化合物の部分加水分解縮合物(b−2)とは、前記したアルコキシチタン化合物を部分加水分解縮合して得られる主鎖がTi−O−Ti結合で連なったオリゴマー類である。その具体的なものとしては、テトライソプロポキシチタンの10量体であるA−10、テトラ−n−ブトキシチタンのそれぞれ2量体、4量体、7量体、10量体である、B−2、B−4、B−7、B−10(何れも、日本曹達株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
また、アルコキシチタン化合物(b−1)あるいはその部分加水分解縮合物(b−2)として、前記した各種のアルコキシチタン化合物あるいはその部分加水分解縮合物中のアルコキシ基の一部分が、アセチルアセトンやアセト酢酸エステル等の1,3−ジカルボニル化合物、モノカルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸で置換された化合物を使用することもできる。こうしたアルコキシチタン化合物の具体的なものとしては、トリイソプロポキシチタンモノアセチルアセトネート、ジ−n−ブトキシチタンビスアセチルアセトネート、トリイソプロポキシチタンモノエチルアセトアセテート、トリイソプロポキシチタンモノアセテート、トリ−n−ブトキシチタンモノアセテート等が挙げられる。
【0057】
前記した各種のアルコキシチタン化合物(b−1)、および、その部分加水分解縮合物(b−2)の中では、テトラアルコキシチタン、その部分加水分解縮合物(オリゴマー)が特に好ましい。
【0058】
前記アルコキシチタン化合物(b−1)、その部分加水分解縮合物(b−2)は、それぞれを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
チタノシロキサン化合物(B)を調製する際に使用するアルコキシシラン化合物(b−3)の代表的なものとしては、テトラアルコキシシラン類、モノオルガノトリアルコキシシラン類、ジオルガノジアルコキシシラン類、トリオルガノモノアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0060】
かかるアルコキシシラン類が有するアルコキシ基の代表的なものとしては、アルコキシチタン化合物(b−1)が有するアルコキシ基の代表的なものとして例示したものが挙げられる。そして各種のアルコキシ基の中で特に好ましいものは、炭素数1〜4の非置換アルコキシ基、メトキシキ基またはエトキシ基を置換基として有する炭素数2〜4のアルコキシ基である。
【0061】
アルコキシシラン化合物(b−3)のうち、テトラアルコキシラン類の代表的なものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0062】
モノオルガノトリアルコキシシラン類の代表的なものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類:シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン等のシクロアルキルトリアルコキシシラン類;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン等の一般的にシランカップリング剤と称される官能基を有するシラン化合物などが挙げられる。
【0063】
ジオルガノジアルコキシシラン類の代表的なものとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン類;シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン等のシクロアルキル基を有するジアルコキシシラン類;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のアリール基を有するジアルコキシシラン類;ビニルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシ基を有するシランカップリング剤類などが挙げられる。
【0064】
トリオルガノモノアルコキシシラン類の代表的なものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
前記した各種のアルコキシシラン化合物(b−3)のなかで、主成分として使用するものとして好ましいシランは、テトラアルコキシシラン類、モノオルガノトリアルコキシシラン類、ジオルガノジアルコキシシラン類である。そして、モノオルガノトリアルコキシシラン類、ジオルガノジアルコキシシラン類のなかで主成分として使用するものとして特に好ましいシランは、それぞれ、モノアルキルトリアルコキシシランおよびジアルキルジアルコキシシランである。
【0066】
前記した各種のアルコキシシラン化合物(b−3)は、主として単量体のままで使用されるが、それらを部分加水分解縮合して得られるオリゴマーを一部分併用してもよい。
【0067】
前記したアルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)、アルコキシシラン化合物(b−3)および水から、チタノシロキサン化合物(B)を調製する場合、反応方法としては各種の方法を適用できるが、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)とアルコキシシラン化合物(b−3)の混合物に水を滴下する方法が簡便で好ましい。その際、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)とアルコキシシラン化合物(b−3)の混合物に、さらに有機溶剤を加えて反応させることもできる。
【0068】
有機溶剤を加えて反応させる際に、使用される有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環属系炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルのエステル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジグリコールエーテルのエステル類;ジエチルエーテル、ジn−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;ジメチルスルホキサイド、スルホラン、N,N−ジメチルエチレン尿素等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの中で、有機溶剤に不溶解性のアルコキシチタン化合物単独の加水分解縮合物の生成を抑制できることから、水溶性の有機溶剤を使用することが特に好ましい。
【0069】
チタノシロキサン化合物(B)の調製に使用する水溶性有機溶剤としては、水との適度な混和性を有していれば特に限定されないが、これらの中でも、20℃の水100重量部に対して30重量部以上溶解する有機溶剤が好ましい。水と完全に混和する有機溶剤が更に好ましい。
【0070】
各種の有機溶剤の中で水溶性有機溶剤の代表的なものとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、エチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルあるいはジグリコールエーテルのエステル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;ジメチルスルホキサイド、スルホラン、N,N−ジメチルエチレン尿素等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
【0071】
水は、有機溶剤に溶解させずにそのまま滴下してもよいが、不溶性のアルコキシチタン化合物単独の加水分解縮合物の生成を抑制できることから、前記した各種の有機溶剤のなかでも特に水溶性有機溶剤で水を希釈した溶液として滴下することが好ましい。水溶性有機溶剤で水を希釈した溶液の滴下に際しては、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)、アルコキシシラン化合物(b−3)および必要に応じて添加される有機溶剤の混合物を十分に撹拌しながら、徐々に滴下することが好ましい。撹拌が不十分であったり、水溶性の有機溶剤で水を希釈した溶液の滴下速度が速すぎると、アルコキシチタン化合物単独の加水分解縮合反応が生起する傾向があり、不溶解性のゲル状物が生成しやすくなる。
【0072】
また、チタノシロキサン化合物(B)を調製する過程で不溶解性のゲル状物の生成を抑制すると共に、本発明の硬化性組成物の安定性の点から、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)、アルコキシシラン化合物(b−3)ならびに水の使用比率が、下記(イ)と(ロ)の2条件を満足するように設定して部分加水分解縮合を行うことにより、チタノシロキサン化合物(B)を調製することが好ましく、なかでも、下記(イ)〜(ハ)の3条件を満足するように設定して部分共加水分解縮合を行うことによりチタノシロキサン化合物(B)を調製することが特に好ましい。
【0073】
即ち、
(イ)水とアルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)に含有されるチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)を0.2〜1.3、好ましくは0.4〜1.1なる範囲に設定する。
(ロ)アルコキシシラン化合物(b−3)と水のモル比〔(b−3)/水〕を0.3〜5、好ましくは0.5〜3なる範囲に設定する。
(ハ)チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)を0.1〜4.0なる範囲、好ましくは0.3〜3.0なる範囲に設定する。
【0074】
チタノシロキサン化合物(B)の調製に際して、加水分解縮合を促進する触媒を添加しなくても目的物を調製することができるが、反応を促進するために各種の塩基性触媒や酸性触媒を添加することもできる。酸性触媒として塩酸、硫酸、硝酸等の強酸類を使用する場合、これらの酸が本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の中に残留して硬化物の性能等に悪影響を及ぼす可能性があるので、これらの強酸の使用は注意を要する。酸触媒を使用する場合には、燐酸、酸性燐酸エステル、カルボン酸等の比較的酸性度が低い酸の使用にとどめることが好ましい。
【0075】
アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)とアルコキシシラン化合物(b−3)を部分共加水分解縮合してチタノシロキサン化合物(B)を調製するには、概ね、−10〜120℃程度、好ましくは10〜100℃の温度範囲で、2〜15時間程度、好ましくは4〜10時間反応させればよい。
【0076】
かくして、チタノシロキサン化合物(B)は、反応により生成するアルコール類および必要に応じて使用される有機溶剤との混合物溶液として得られるが、この溶液をそのまま次工程で使用してもよいし、アルコール類および必要に応じて使用される有機溶剤等の揮発性成分を蒸留により除去してチタノシロキサン化合物(B)の含有率を高めて使用してもよい。
【0077】
こうして調製されるチタノシロキサン化合物(B)は、前記ポリウレタン樹脂(A)と反応させる為の官能基としてチタン原子に結合したアルコキシ基および/またはシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するものであり、より均質で緻密な架橋構造を有する硬化物が得られることから、両方のアルコキシ基を有するものが特に好ましい。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物を調製する際に使用される有機溶剤(C)の代表的なものとしては、前記チタノシロキサン化合物(B)を調製する際に使用されるものの代表的なものとして前記した各種の溶剤を使用することができる。そして、かかる各種の溶剤類の中で、本発明の硬化性樹脂組成物のポットライフの点から、アルコール類を必須の成分として含有する溶剤を使用することが好ましい。アルコール類の含有率としては有機溶媒の20〜100重量%、好ましくは30〜100重量%である。
【0079】
上述したポリウレタン樹脂(A)、チタノシロキサン化合物(B)および有機溶剤(C)から、本発明の硬化性樹脂組成物を調製するに当たり、ポリウレタン樹脂(A)とチタノシロキサン化合物(B)の配合比率は、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐クラック性、靱性、耐食性付与効果の点から、ポリウレタン樹脂(A)の100重量部当たりチタノシロキサン化合物(B)の5〜1,500重量部、好ましくは10〜1,200重量部、特に好ましくは15〜1,000重量部であり、且つ、得られる硬化物100重量部中にチタン原子が二酸化チタン換算で1〜55重量部、好ましくは3〜50重量部、特に好ましくは5〜45重量部が含有される様な比率である。そして、屈折率が高い硬化物を得る上では、得られる硬化物100重量部中にチタン原子が二酸化チタン換算で5〜50重量部、好ましくは10〜50重量部含有される様な比率でポリウレタン樹脂(A)、チタノシロキサン化合物(B)を使用すればよい。
【0080】
有機溶剤(C)の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の安定性や適用用途等に応じて適宜設定すればよいが、ポリウレタン樹脂(A)とチタノシロキサン化合物(B)の合計量100重量部に対して、概ね、30〜10,000重量部、好ましくは50〜5,000重量部、特に好ましくは100〜2,000重量部である。
【0081】
ポリウレタン樹脂(A)、チタノシロキサン化合物(B)および有機溶剤(C)から、本発明の硬化性樹脂組成物を調製するには、(イ)ポリウレタン樹脂(A)、チタノシロキサン化合物(B)および有機溶剤(C)を混合する、(ロ)ポリウレタン樹脂(A)の有機溶剤溶液、チタノシロキサン化合物(B)および有機溶剤(C)を混合する、(ハ)ポリウレタン樹脂(A)の有機溶剤溶液、チタノシロキサン化合物(B)の有機溶剤溶液を混合する、(ニ)ポリウレタン樹脂(A)の有機溶剤溶液、チタノシロキサン化合物(B)の有機溶剤溶液および有機溶剤(C)を混合する、等各種の方法を採用できる。これらのうち、
硬化性樹脂組成物調製時の不溶解物の生成やゲル化の生起を抑制する観点から、(ハ)や(ニ)の方法の様に、ポリウレタン樹脂(A)とチタノシロキサン化合物(B)それぞれの有機溶剤溶液を予め調製した後、これらを混合する方法が好ましい。
【0082】
前記のようにして調製される本発明の硬化性樹脂組成物は、反応性官能基として加水分解性シリル基、チタン原子に結合したアルコキシ基、シリコン原子に結合したアルコキシ基を含有する。また、ポリウレタン樹脂(A)がカルボキシル基等の酸基あるいはカルボキシレート基等の中和された酸基を含有する場合にはこれらの官能基も含有される。従って、当該組成物を基材等に塗布して常温で乾燥すると、Ti−O−Ti、Ti−O−Si、Si−O−Si、Ti−O(CO)−等の結合を形成して硬化物を形成する。Ti−O−Ti、Ti−O−Si、Si−O−Si等の酸素原子を介した金属原子同士の結合はTi原子に結合したアルコキシ基およびSi原子に結合したアルコキシ基が空気中の水分の存在下で加水分解縮合して形成される。そして、この加水分解縮合による前記した各種の結合の形成は当該硬化性樹脂組成物に含有されるチタノシロキサンの触媒作用で促進されると推定される。
【0083】
前記のようにして調製される、本発明の硬化性樹脂組成物は、着色顔料を含まないクリヤーな組成物として使用することが出来るし、また、種々の有機系あるいは無機系の顔料を配合して着色組成物としても使用することができる。
【0084】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに、反応性希釈剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤または吸水剤などの各種の添加剤類などをも配合した形で、種々の用途に供することができる。
【0085】
上記した反応性希釈剤の具体的なものとしては、珪素原子に結合した加水分解性基あるいはシラノール基を有する化合物が挙げられ、これらの代表的なものとしては、チタノシロキサン化合物(B)を調製する際に使用されるアルコキシシランの代表的なものとして例示した各種の化合物やかかるアルコキシシラン類を部分加水分解縮合あるいは完全加水分解縮合して得られるポリシロキサン類が挙げられる。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性を有するので空気中の水分が混入すると、加水分解縮合して増粘し、最終的にはゲル化に至る。従って、混入した水分による増粘、ゲル化を抑制するために、前記した吸水剤の添加が有効である。かかる吸水剤の代表的なものとしては、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルトカルボン酸エステル類が挙げられる。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物は、いずれも塗料、接着剤、シーリング剤、繊維処理剤、光学材料等各種の用途に使用できるが、本発明の硬化性樹脂組成物の特徴が発揮される好ましい用途の一つが塗料用途であり、本発明の塗料は、本発の明硬化性樹脂組成物を含有してなるものである。
【0088】
かかる本発明の硬化性樹脂組成物を含有する塗料は、各種塗料と同様に各種の用途に使用することができるが、金属基材に塗装した場合には耐食性に極めて優れる特徴を発現する。また、チタン含有率が高い硬化塗膜を形成する塗料を各種有機樹脂等の有機系基材やガラスを初めとする無機系基材類に塗装すると高屈折率の硬化塗膜を形成し、この特性を活かすことができる用途に使用することができる。
【0089】
本発明は、前記した塗料が塗装された塗装物をも提供するものであるが、本発明において、被塗物として使用される基材としては、各種のものがあるが、それらの代表的なものとしては、各種の金属基材、無機質基材、プラスチック基材、紙、木質系基材等が挙げられる。かかる各種の基材のうち、金属基材の具体例としては、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉛等の金属単体類;ステンレススチール、真鍮等の前記した金属単体類から得られる合金類;亜鉛、ニッケル、クロム等の金属でメッキした鉄等のメッキ処理を施した金属類;前記した金属単体類、合金類あるいはメッキ処理を施した金属等にクロム酸塩処理とか燐酸塩処理等の化成処理を施した金属類が挙げられる。
【0090】
また、無機質基材としては、セメント系、珪酸カルシウム等の珪酸塩系、石膏系、セラミックス系等で代表される無機質の材料を主とするものが挙げられ、その具体例としては、現場施工(湿式)基材として、打放しコンクリート、セメントモルタル、石膏プラスター、ドロマイトプラスター、漆喰等が挙げられ、また、工場生産品(乾式)基材としては、軽量気泡コンクリート(ALC)、ガラス繊維強化の珪酸カルシウム、石膏ボード、タイル等の粘土の焼成物、ガラスなどの各種のものが挙げられる。
【0091】
プラスチック基材の具体例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂の成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の成形品等が挙げられる。
【0092】
こうした各種の基材は、用途に応じて、それぞれ、板状、球状、フィルム状、シート状ないしは大型の構築物または複雑な形状の組立物あるいは成形物などの各種の形で使用されるものであって、特に制限はない。
【0093】
前記したような種々の基材上に、本発明の塗料を塗装し、硬化させることによって、本発明に係る塗装物を得ることができる。その際に、(1)当該塗料を基材に直接塗装する、(2)予め基材上に下塗り塗料を塗装してから、当該塗料を上塗り塗料として塗装する、(3)基材に下塗り塗料として本発明の塗料を塗装し、次いで別の上塗り塗料を塗装し塗膜を形成させる、等の塗装方法により本発明の塗装物を得ることができる。
【0094】
前記(1)の直接塗装する方法で、本発明に係る塗装物を得るには、基材上に、本発明の塗料を、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、フロー・コーター塗装、ロール・コーター塗装、電着塗装、スピンコーティング等の塗装方法によって塗装すればよい。そして、未硬化の塗膜で被覆された基材を、常温に1〜14日間程度放置したり、60〜250℃で10秒間〜3時間程度加熱したりすることによって、高屈折率を有する塗膜あるいは耐食性等に優れた塗膜で被覆された、目的とする塗装物を得ることができる。
【0095】
他方、前記(2)の方法で本発明に係る塗装物を得る際に用いられる下塗り塗料としては、種々のものを使用することができ、その代表的なものとしては、水性の溶液型または分散型塗料;有機溶剤系の溶液型または分散型塗料;粉体塗料、無溶剤型液状塗料などが挙げられる。
【0096】
こうした下塗り塗料を塗装し、次いで上塗り塗料として本発明の塗料を塗装、硬化して本発明の塗装物を得るには、前記したような塗装方法、各種の乾燥プロセス等を適用すればよい。下塗り塗料としてUV硬化型あるいは電子線硬化型の塗料を使用した場合には、
硬化促進に有効な活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0097】
前記(3)の方法で本発明に係る塗装物を得る際に用いられる上塗り塗料としては、種々のものを使用することができ、その代表的なものとしては、水性の溶液型または分散型塗料;有機溶剤系の溶液型または分散型塗料;粉体塗料、無溶剤型液状塗料などが挙げられる。
【0098】
かかる上塗り塗料を使用して本発明に係る塗装物を得るには、先ず、前記(1)の方法で適用される各種の塗装方法により、各種の基材上に本発明の塗料を下塗り塗料として塗装して上記(1)で採用されるような硬化条件で予め硬化させた後、前記した上塗り塗料を塗装して上塗り塗料の乾燥あるいは硬化に適した条件で乾燥あるいは硬化させることにより複層塗膜を備えた塗装物を得ることができる。また、基材に本発明の塗料を塗装し本発明の塗料から形成される塗膜が未硬化のまま上塗り塗料として上記の塗料を塗装し上塗り塗膜の乾燥あるいは硬化と同時に下塗り塗膜を硬化させることにより複層塗膜を備えた塗装物を得ることができる。
【0099】
前記のようにして、耐食性に優れる硬化塗膜あるいは屈折率が高い硬化塗膜で被覆された、本発明に係る塗装物を得ることができる。かかる塗装物の、より具体的なものとしては、基材として金属基材が使用された自動車、自動二輪車、電車、その他の輸送関連機器類;基材として金属基材あるいはプラスチック基材等が使用された、テレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、クーラー室外機、コンピュータ、その他の家電製品類;各種の無機質系の瓦や屋根材、金属製の屋根材、無機質系外壁材、太陽電池の保護材、金属製の壁材、金属製の窓枠、ガラス、金属製あるいは木製のドアまたは内壁材等の建材類;道路標識、ガードレール、橋梁、タンク、煙突、ビルディング等の屋外構築物;ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種の有機フィルムに塗装した被覆フィルムなどが挙げられるが、本発明に係る塗装物は、こうした用途に、有効に利用することができるものである。
【実施例】
【0100】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層具体的に説明をするが、本発明は、これらの例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、すべて重量基準である。
【0101】
合成例1〔加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび窒素ガス導入口を備えた反応容器に、窒素ガス雰囲気下で「PTMG−650」〔三菱化学(株)製ポリテトラメチレングリコール、水酸基当量:325g/当量〕500部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)51部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)307部および酢酸エチル572部を仕込んだ。次いで、撹拌しながら混合物を75℃に昇温して同温度で10時間加熱撹拌させることにより、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1−1)の溶液を得た。反応終了後、この溶液を40℃まで降温した。
【0102】
ウレタンプレポリマー(P−1−1)調製時と同様の反応容器に、3−アミノプロピルトリエトシキシラン(APTES)92部およびイソプロピルアルコール(IPA)853部を仕込み、窒素雰囲気下に35℃で撹拌しながらウレタンプレポリマー(P−1−1)の溶液の全量を1時間で滴下した。次いで、50℃に昇温し、同温度で2時間加熱撹拌を行ってウレタンプレポリマーとAPTESを反応させて、NVが40.3%、溶液酸価が9.2mgKOH/g、Mwが11,300のカルボキシル基ならびに加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の溶液を得た。以下、この溶液をポリウレタン樹脂溶液(A−1)と略称する。
合成例2〔加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、窒素ガス雰囲気下で「PTMG−2000」〔三菱化学(株)製ポリテトラメチレングリコール、水酸基当量:1,000g/当量〕667部、DMPA22.3部、IPDI133部およびメチルエチルケトン(MEK)396部を仕込んだ。次いで、撹拌しながら混合物を75℃に昇温して同温度で12時間加熱撹拌させることにより、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1−2)の溶液を得た。反応終了後、この溶液を40℃まで降温した。
【0103】
合成例1と同様の反応器に、APTES39.8部およびIPA925部を仕込み、窒素雰囲気下に35℃で撹拌しながら前記ウレタンプレポリマー(P−1−2)の溶液の全量を1時間で滴下した。次いで、50℃に昇温し、同温度で2時間加熱撹拌を行ってウレタンプレポリマーとAPTESを反応させて、NVが39.5%、溶液酸価が4.3mgKOH/g、Mwが13,400のカルボキシル基ならびに加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の溶液を得た。以下、この溶液をポリウレタン樹脂溶液(A−2)と略称する。
【0104】
合成例3〔加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、窒素ガス雰囲気下で「ニッポラン 981」〔日本ポリウレタン工業(株)製ポリカーボネートジオール、水酸基当量:1,000g/当量〕134部、DMPA22.3部および酢酸エチル323部を仕込んだ。次いで、窒素ガス雰囲気下で60℃に昇温して30分間撹拌を行い均一な溶液を得た後、同温度で撹拌しながらIPDI133.4部を10分間で添加した。そして、撹拌しながら混合物を75℃に昇温して同温度で12時間加熱撹拌させることにより、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1−3)の溶液を得た。反応終了後、この溶液を40℃まで降温した。
【0105】
合成例1と同様の反応器に、APTES40部およびIPA484部を仕込み、窒素雰囲気下に35℃で撹拌しながら前記ウレタンプレポリマー(P−1−3)の溶液の全量を1時間で滴下した。次いで、50℃に昇温し、同温度で2時間加熱撹拌を行ってウレタンプレポリマーとAPTESを反応させて、NVが39.6%、溶液酸価が7.3mgKOH/g、Mwが12,600のカルボキシル基ならびに加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の溶液を得た。以下、この溶液をポリウレタン樹脂溶液(A−3)と略称する。
【0106】
合成例4〔加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、「ポリライト OD−X−2330」〔DIC(株)製アジピン酸−エチレングリコール−1,4−ブタンジオール系ポリエステル樹脂、水酸基当量:1,000g/当量〕800部、DMPA13.4部およびMEK1,277部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で60℃に昇温して30分間撹拌を行い均一な溶液を得た後、同温度で撹拌しながらIPDI131部を10分間で添加した。そして、撹拌しながら混合物を75℃に昇温して同温度で12時間加熱撹拌させることにより、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P−1−4)の溶液を得た。反応終了後、この溶液を40℃まで降温した。
【0107】
合成例1と同様の反応器に、APTES37部およびtert−ブタノール547部を仕込み、窒素雰囲気下に35℃で撹拌しながら前記ウレタンプレポリマー(P−1−4)の溶液の全量を1時間で滴下した。次いで、50℃に昇温し、同温度で2時間加熱撹拌を行ってウレタンプレポリマーとAPTESを反応させて、NVが35.0%、溶液酸価が2.0mgKOH/g、Mwが22,000のカルボキシル基ならびに加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の溶液を得た。以下、この溶液をポリウレタン樹脂溶液(A−4)と略称する。
【0108】
合成例5〔加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、窒素ガス雰囲気下でPTMG−2000 400部、DMPA13.4部、IPDI44.5部および酢酸エチル457部を仕込んだ。次いで、撹拌しながら混合物を75℃に昇温して同温度で10時間加熱撹拌させることにより、両末端に水酸基を有するプレポリマー(P−2−1)の溶液を得た。さらに、この溶液を同温度で撹拌しながら、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン49.5部を20分間で滴下した後、同温度で5時間の加熱撹拌を行った。その後、IPA304部を加えて、NVが40.0%、溶液酸価が4.4mgKOH/g、Mwが16,000のカルボキシル基ならびに加水分解性シリル基を有するポリウレタン樹脂の溶液を得た。以下、この溶液をポリウレタン樹脂溶液(A−5)と略称する。
【0109】
合成例6〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)1,090部、B−7〔日本曹達(株)製テトラ−n−ブトキシチタンの部分加水分解縮合物(平均7量体)〕1,601部およびIPA2,031部を仕込み80℃に昇温した。窒素雰囲気下に同温度で撹拌しながら脱イオン水190.1部およびIPA660部からなる混合物を2時間かけて滴下し、さらに同温度で4.5時間加熱撹拌を行った。その後、IPAならびに反応により生成したメタノールとn−ブタノールを減圧下に留去して、1,875部の黄色透明の高粘度液状生成物を得た。次いで、469部のプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル加えて撹拌し有効成分が80%の黄色透明溶液を得た。この溶液は、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物の溶液である。以下、これをチタノシロキサン化合物溶液(B−1)と略称する。このチタノシロキサン化合物溶液(B−1)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびCHSiO1.5に換算して、23.0%および22.9%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は0.66、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は1.32、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.88であった。
【0110】
合成例7〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、MTMS1,635部、B−7 1,601部およびIPA2,480部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら空冷下に脱イオン水216部およびIPA756部からなる混合物を2時間かけて滴下した。この間、発熱により混合物の温度は22℃から37℃まで上昇した。次いで、70℃に昇温し、同温度で5時間加熱撹拌を行った。その後、IPAならびに反応により生成したメタノールとn−ブタノールを減圧下に留去して、2,446部の淡黄色透明の液状生成物を得た。この液状生成物は、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物である。以下、これをチタノシロキサン化合物(B−2)と略称する。このチタノシロキサン化合物(B−2)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびCHSiO1.5に換算して、21.9%および33.0%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は0.75、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は1.0、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.58であった。
【0111】
合成例8〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、MTMS2,179部、B−7 1,601部およびIPA2,780部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら空冷下に脱イオン水288部およびIPA1,000部からなる混合物を2時間かけて滴下した。この間、発熱により混合物の温度は20℃から35℃まで上昇した。次いで、70℃に昇温し、同温度で4.5時間加熱撹拌を行った。その後、IPAならびに反応により生成したメタノールとn−ブタノールを減圧下に留去して、2,749部の淡黄色透明の液状生成物を得た。この液状生成物は、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物である。以下、これをチタノシロキサン化合物(B−3)と略称する。このチタノシロキサン化合物(B−3)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびCHSiO1.5に換算して、19.5%および39.1%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は1.0、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は1.0、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.43であった。
【0112】
合成例9〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、テトラエトキシシラン1,667部、B−7 1,601部およびIPA2,768部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら空冷下に脱イオン水144部およびIPA500部からなる混合物を2時間かけて滴下した。この間、発熱により混合物の温度は20℃から35℃まで上昇した。次いで、70℃に昇温し、同温度で4.5時間加熱撹拌を行った。その後、IPAならびに反応により生成したエタノールとn−ブタノールを減圧下に留去して、2,428部の淡黄色透明の液状生成物を得た。この液状生成物は、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物である。以下、これをチタノシロキサン化合物(B−4)と略称する。このチタノシロキサン化合物(B−4)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびSiOに換算して、22.1%および19.8%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は0.5、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は1.0、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.87であった。
【0113】
合成例10〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、MTMS272.4部、テトラ−n−ブトキシチタン340.3部およびIPA432部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら空冷下に脱イオン水36部およびIPA180部からなる混合物を2時間かけて滴下した。この間、発熱により混合物の温度は27℃から34℃まで上昇した。次いで、80℃に昇温し、同温度で5時間加熱撹拌を行って、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物の淡黄色透明溶液を得た。以下、この溶液をチタノシロキサン溶液(B−5)と略称する。このチタノシロキサン溶液(B−5)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびCHSiO1.5に換算して、6.4%および10.6%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は0.5、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は1.0、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.5であった。
【0114】
合成例11〔チタノシロキサン化合物(B)の調製〕
合成例1と同様の反応容器に、MTMS681部、B−4〔日本曹達(株)製チタンテトラ−n−ブトキサイドの部分加水分解縮合物(平均4量体)〕1,011部およびIPA1,182部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら空冷下に脱イオン水90.1部およびIPA313部からなる混合物を2時間かけて滴下した。この間、発熱により混合物の温度は20℃から28℃まで上昇した。次いで、70℃に昇温し、同温度で4.5時間加熱撹拌を行った。その後、IPAならびに反応により生成したメタノールとn−ブタノールを減圧下に留去して、256.8部の黄色透明の液状生成物を得た。この液状生成物は、チタン原子に結合したアルコキシ基ならびにシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するチタノシロキサン化合物である。以下、これをチタノシロキサン化合物(B−6)と略称する。このチタノシロキサン化合物(B−6)に含有されるチタン原子とシリコン原子は、それぞれ、TiOおよびCHSiO1.5に換算して、24.8%および26.2%である。尚、本合成例において、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)は0.5、アルコキシシラン化合物と水のモル比(アルコキシシラン/水)は0.5、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)は0.80であった。
【0115】
実施例1
チタノシロキサン化合物溶液(B−1)174.0部とIPA139.0部の混合物にポリウレタン樹脂溶液(A−1)49.6部を加えて十分混合し、有効成分が27.5%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−1)と略称する。尚、本実施例および以下の実施例において、有効成分とは硬化性組成物の硬化反応が100%進行したと仮定した場合に生成する硬化物を指すものとする。
【0116】
次いで、調製した組成物(KS−1)を、そのまま塗料として用い、以下のように塗装物を作成した。
【0117】
塗装物の作成に際して、基材として下記の溶融亜鉛メッキ鋼板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびポリプロピレン樹脂(PP)成形板を使用した。
溶融亜鉛メッキ鋼板:クロメート処理した溶融亜鉛メッキ鋼板(サイズ 70×150×0.8mm)
PETフィルム:コロナ放電処理を施したPETフィルム(膜厚 25μm)
PP樹脂成形板:未処理PP樹脂板(サイズ 70×150×2mm)
【0118】
上記溶融亜鉛メッキ鋼板、PETフィルムおよびPP樹脂成形板に乾燥膜厚が、それぞれ、2μm、10μm、30μmになるようにバーコーターを使用して組成物(S−1)を塗布し、室温(25℃)に7日間放置して硬化させ、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)の計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:CHSiO1.5=20.0:40.0:40.0
【0119】
これらの塗装板および塗装フィルムを使用して下記の様に性能評価を行った。
耐食性:溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)上の塗膜にカッターナイフを使用してクロス
カットを入れ、塩水噴霧試験機にセットして600時間の塩水噴霧試験を行った(JIS
K−5400 9.1に基づく試験)。試験終了後、塗装板を水洗、乾燥した後、カット
部から発生した錆の最大幅(片幅)を測定して耐食性の尺度とした。この値が小さいほど
耐食性に優れる。
硬化性:ゲル分率値によって判定した。ゲル分率はPP樹脂成形板の塗装板(3)上の硬
化塗膜を剥離してアセトンに常温(25℃)で1日間浸漬した後の残留塗膜を110℃で
1時間乾燥し、得られたゲル分の重量を浸漬前の塗膜重量で除して得られる値を100倍
して決定した。この値が大きいほど硬化性に優れる。
屈折率:PETフィルムへの塗装フィルム(2)について、屈折率測定装置(METRCON
モデル2010 プリズムカプラー)を使用して屈折率を測定し硬化塗膜の屈折率値を得た。
【0120】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜の性能は下記の通りであった。
耐食性:錆の最大幅 0.2mm
屈折率:1.610
ゲル分率:91.7%
【0121】
実施例2
チタノシロキサン化合物(B−3)136.5部とIPA136.5部の混合物にポリウレタン樹脂溶液(A−1)49.6部を加えて十分混合し、有効成分が30.1%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−2)と略称する。
【0122】
次いで、調製した組成物(S−2)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(S−2)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)の計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:CHSiO1.5=20.0:26.6:53.4
【0123】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 0.5mm
屈折率:1.580
ゲル分率:92.9%
【0124】
実施例3
チタノシロキサン化合物(B−2)72.9部とIPA141.4部の混合物にポリウレタン樹脂溶液(A−2)151.9を加えて十分混合し、有効成分が27.3%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−3)と略称する。
【0125】
次いで、調製した組成物(S−3)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(S−3)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:CHSiO1.5=60.0:16.0:24.0
【0126】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 0.9mm
屈折率:1.555
ゲル分率:90.5%
【0127】
実施例4
チタノシロキサン化合物(B−6)58.8部、IPA70部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)71.4部から成る混合物にポリウレタン樹脂溶液(A−3)176.8部を加えて十分混合し、有効成分が30.0%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−4)と略称する。
【0128】
次いで、調製した組成物(S−4)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(S−4)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:CHSiO1.5=70.0:14.6:15.4
【0129】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 0.5mm
屈折率:1.565
ゲル分率:91.5%
【0130】
実施例5
チタノシロキサン化合物(B−4)35.8部、IPA27.0部およびPGMAC27.7部から成る混合物にポリウレタン樹脂溶液(A−4)242.8部を加えて十分混合し、有効成分が30.0%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−5)と略称する。
【0131】
次いで、調製した組成物(S−5)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(S−5)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:SiO=85.0:7.9:7.1
【0132】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 1.0mm
屈折率:1.545
ゲル分率:88.5%
【0133】
実施例6
チタノシロキサン化合物の溶液(B−5)176.5部にポリウレタン樹脂溶液(A−5)250.0部を加えて十分混合し、有効成分が23.4%の硬化性樹脂組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(S−6)と略称する。
【0134】
次いで、調製した組成物(S−6)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(S−6)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂、チタン原子およびシリコン原子を含有するクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。得られたフィルムは、透明性に優れ極僅かに黄色に着色していた。得られたクリヤー塗膜中のポリウレタン樹脂、酸化物に換算したチタンおよびシリコンの含有比率(重量比率)計算値は下記の通りである。
ポリウレタン樹脂:TiO:SiO=70.0:11.3:18.7
【0135】
本実施例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 0.9mm
屈折率:1.550
ゲル分率:92.1%
【0136】
比較例1
ポリウレタン樹脂溶液(A−1)248.1部、硬化触媒としてのジブチル錫ジアセテート(DBTDA)2.0部およびIPA35.6部を混合してNVが35.2%のチタノシロキサン化合物を含有しない比較用の硬化性組成物を調製した。以下、この硬化性樹脂組成物を組成物(RS−1)と略称する。次いで、調製した組成物(RS−1)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(RS−1)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂からのクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。
【0137】
本比較例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 6.5mm
屈折率:1.533
ゲル分率:65.5%
【0138】
比較例2
ポリウレタン樹脂溶液(A−3)252.5部、DBTDA2.0部、IPA15.0部およびPGMAC16.2部を混合してNVが35.2%のチタノシロキサン化合物を含有しない比較用の硬化性組成物を調製した。以下、この硬化性組成物を組成物(RS−2)と略称する。次いで、調製した組成物(RS−2)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(RS−2)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂からのクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。
【0139】
実施例1と同様にして硬化性の評価を行ったところ、ゲル分率はゼロであり本比較例の組成物の硬化性は著しく劣ることが判った。硬化塗膜が得られなかったので、耐食性と屈折率の評価を行わなかった。
【0140】
比較例3
ポリウレタン樹脂溶液(A−4)285.7部、DBTDA2.0部、IPA25.0部およびPGMAC22.6部を混合してチタノシロキサン化合物を含有しない比較用の硬化性組成物を調製した。以下、この硬化性組成物を組成物(RS−3)と略称する。次いで、調製した組成物(RS−3)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(RS−3)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂からのクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。
【0141】
本比較例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 5.5mm
屈折率:1.535
ゲル分率:60.5%
【0142】
比較例4
ポリウレタン樹脂溶液(A−5)250.0部、DBTDA2.0部、IPA17.0部およびPGMAC18.7部を混合してNVが35.0%のチタノシロキサン化合物を含有しない比較用の硬化性組成物を調製した。以下、この硬化性組成物を組成物(RS−4)と略称する。次いで、調製した組成物(RS−4)を、そのまま塗料として用い、組成物(S−1)に代えて組成物(RS−4)を使用する以外は実施例1と同様にして塗装、硬化させて、ポリウレタン樹脂からのクリヤー塗膜を備えた溶融亜鉛メッキ鋼板の塗装板(1)、PETフィルムへの塗装フィルム(2)およびPP樹脂成形板の塗装板(3)を得た。
【0143】
本比較例の塗料から得られた硬化塗膜について実施例1と同様に評価を行って下記の結果を得た。
耐食性:錆の最大幅 5.8mm
屈折率:1.530
ゲル分率:70.1%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)および有機溶剤(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)が、チタン原子に結合したアルコキシ基および/またはシリコン原子に結合したアルコキシ基を含有するものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)が、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)とアルコキシシラン化合物(b−3)とを部分共加水分解縮合して得られるものである請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)が、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)が0.2〜1.3なる範囲、および、アルコキシシラン化合物(b−3)と水のモル比〔(b−3)/水〕が0.3〜5なる範囲をいずれも満足する比率で、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)、アルコキシシラン化合物(b−3)ならびに水を使用して、部分共加水分解縮合を行うことにより得られるものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)が、水とチタン原子に結合したアルコキシ基のモル比(水/アルコキシ基)が0.2〜1.3なる範囲、アルコキシシラン化合物(b−3)と水のモル比〔(b−3)/水〕が0.3〜5、および、チタン原子とシリコン原子の原子数比(Ti/Si)が0.1〜4.0なる範囲をいずれも満足する比率で、アルコキシチタン化合物(b−1)および/またはその部分加水分解縮合物(b−2)、アルコキシシラン化合物(b−3)ならびに水を使用して、部分共加水分解縮合を行うことにより得られるものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記加水分解性シリル基を含有するポリウレタン樹脂(A)と前記有機溶剤に可溶なチタノシロキサン化合物(B)との比率が、重合体(A)100重量部に対して、チタノシロキサン化合物(B)が5〜1,500重量部である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂が酸基および/または中和された酸基を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記酸基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項10】
請求項9に記載の塗料を塗装して得られるものであることを特徴とする塗装物。

【公開番号】特開2010−95673(P2010−95673A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269653(P2008−269653)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】