説明

硬化性樹脂組成物およびその用途

【課題】重金属を使用することなく、長鎖のパーフルオロアルキル基も使用せず、一般的な公知の含フッ素モノマーを使用して、系への溶解性に優れ弾きも抑制した含フッ素化合物を用いた硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記ブロック共重合体(A)、溶媒(B)および樹脂(C)を含む硬化性樹脂組成物。
ブロック共重合体(A):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1質量%の濃度で混合した際に、白濁することなく透明な液体が得られるブロック共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体を含む硬化性樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や可視光線などにより重合する光硬化性樹脂組成物は、塗料、接着剤、コーティング剤等、各種用途で用いられている。中でも、レジスト組成物は、フォトレジスト組成物や、液晶表示装置のカラーフィルタ用のカラーレジスト組成物として用いられているものであり、塗布時に特に均一な塗膜を形成できることが求められている。
【0003】
塗膜の均一性を高めるためには、組成物のレベリング性が優れていることが必要である。
レベリング性を付与するために、パーフルオロアルキル基を含む含フッ素化合物を組成物に添加することが行われている。その際、よりレベリング性を高めるために、パーフルオロアルキル基を含むモノマーの比率を高くする、パーフルオロアルキル基を含むモノマーの構造に工夫を加える(特許文献1)、あるいは、ブロック重合を行うといったことでフッ素の機能を強めようとしたもの(特許文献2、特許文献3)などが開発されてきている。
【0004】
しかし、レベリング性を付与することを目的に含フッ素化合物を加える場合、そのレベリング性により均一に塗布された面の一部に含フッ素化合物が残ることになる。この塗布後の面に含フッ素化合物が内在することによりそのフッ素の機能の影響で、自身が弾かれるということがおき、均一性が保てずピンホールが生じてしまうことがある。
【0005】
パーフルオロアルキル基を含むモノマーの比率を高くすることによってフッ素の機能を強めると、組成物そのものへの溶解性が悪くなる。また、上記のように弾きが出てしまう問題がある。
また、パーフルオロアルキル基を含むモノマーの構造に工夫を加えたものは、その合成経路が煩雑でコスト面で課題がある。
また、ブロック重合を行う場合は、まず、その手法において重金属を含むような合成経路を辿る場合はそれ自体が問題であるし、別の経路を用いた場合においても、ブロック重合という手法の性質上、共重合体の中でパーフルオロアルキル基がまとまることによって、やはり弾きが発生しやすくなる傾向があるし、組成物そのものへの溶解性が悪くなるという問題がある。
また、別の経路を用いた、特許文献3に記載されたブロック共重合体は、重金属を使用せず、良好な表面張力低下能を有するものの、該文献には共重合体の中でパーフルオロアルキル基がまとまることによって溶解性が悪化することへの対処についての記載もなく、硬化性樹脂組成物についての具体的記載もなく、特に具体的に硬化性樹脂組成物への溶解性の点についての記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−115258号公報
【特許文献2】特開2006−063132号公報
【特許文献3】特開2008−297522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重金属を使用することなく、長鎖のパーフルオロアルキル基も使用せず、一般的な公知の含フッ素モノマーを使用して、系への溶解性に優れ弾きも抑制した含フッ素化合物を用いた硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定のブロック共重合体を硬化性樹脂組成物に添加することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、下記の硬化性樹脂組成物を提供する。
下記ブロック共重合体(A)、溶媒(B)および樹脂(C)を含む硬化性樹脂組成物。
ブロック共重合体(A):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1質量%の濃度で混合した際に、白濁することなく透明な液体が得られるブロック共重合体であり、下式(2)で表される化合物から導かれる構成単位と、下式(3)で表される化合物から導かれる構成単位と、下式(1)で表される化合物の残基を有する。
【化1】

式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、P(O)(OH)基または1価の有機基。
:水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、NH基または1価の有機基。
:水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基。
:水素原子または1価の基。
A:−O−または−NR−(Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)。
:水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基。
B:−O−または−NR7−。
5、R6、R7:相互に独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または下式(r)で表される基。
−Q2−Rf2 (r)
Rf1、Rf2:相互に独立して、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
1、Q2:相互に独立して、単結合または2価の連結基。
【0010】
前記ブロック共重合体(A)について、下記計算式(α)で求められるFnが1〜120であるものが好ましい。
計算式(α) Fn = Mw×(Fw/Fm)×Cn
式中の記号は以下の意味を示す。
Mw:ブロック共重合体(A)の質量平均分子量。
Fw:Fa/(Fa+Fb)
Fm:式(3)で表される化合物の分子量。
Fa:式(3)で表される化合物の使用量。
Fb:式(2)で表される化合物の使用量。
Cn:式(3)で表される化合物のRf1の炭素数。ただしRf2が存在する場合は、これも含む。
【0011】
本発明は、硬化性樹脂組成物として、上記ブロック共重合体(A)を溶媒(B)中に含む溶液を提供することもできる。
本発明において、前記溶媒(B)はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物を用いたレジスト組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、カラーフィルターに使用されるカラーレジスト材料としての前記レジスト組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記レジスト組成物を用いて作成したカラーフィルターを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特定のブロック共重合体を含むことにより、表面張力が大きく低下する。このことから、組成物のレベリング性が向上し、塗布時のムラも生じにくく、均一な塗膜を形成できると考えられる。また、特定のブロック共重合体がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対して良好な溶解性を示すため、組成物に白濁等が生じないとともに、塗布後に弾きを生じないという効果も有する。本発明の硬化性樹脂組成物を用いたレジスト組成物は、白濁も無く均一な塗膜を形成できることから、カラーフィルターとしても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において式(1)で表される化合物を化合物(1)とも記す。他の式で表される化合物も同様に表記することがある。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする。本発明に係るブロック共重合体(A)は、化合物(2)から導かれる構成単位すなわち化合物(2)から導かれる繰り返し単位を含むブロックセグメントと、化合物(3)から導かれる構成単位すなわち化合物(3)から導かれる繰り返し単位を含むブロックセグメントと、化合物(1)の残基を有する。
【0018】
本明細書において式(1)で表される化合物を化合物(1)とも記す。他の式で表される化合物も同様に表記することがある。
【0019】
[化合物(1)]
化合物(1)は、チオカルボニルチオ基を有する化合物(チオカルボニルチオ化合物)である。化合物(1)を連鎖移動剤として用いることにより、ブロック共重合体(A)の主鎖末端に、化合物(1)の残基が導入される。
式(1)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、P(O)(OH)基または1価の有機基である。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0020】
本発明において、「有機基」とは、炭素原子を含む基を意味する。
における1価の有機基としては、特に限定されない。好ましい有機基としては、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基等が挙げられる。
前記の各有機基中の炭素原子は、置換基を有していてもよい。ここで、炭素原子が置換基を有するとは、当該炭素原子に、水素原子以外の原子または基が結合していることを意味する。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、ニトロ基等が挙げられる。
【0021】
アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基は、それぞれ、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5が特に好ましい。これらの基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
【0022】
ジアルキルアミノ基におけるアルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5が特に好ましい。該アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよく、直鎖状が好ましい。
また、ジアルキルアミノ基において、窒素原子に置換した2つのアルキル基は、それぞれ、同じ構造でもよく、別の構造でもよく、それぞれの末端同士が結合し、共同で環を形成していてもよい。
【0023】
前記の各有機基のうち、環基(飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基)における環は、単環であってもよく、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。
これらの環基は、炭素数4〜12が好ましく、炭素数4〜10が特に好ましい。
飽和炭化水素環基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素環基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、式(1)中のXは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基(ただし、前記の各基中の炭素原子は置換基を有していてもよい。)であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、Xの、チオカルボニル基の炭素に結合する原子が、ヘテロ原子であることが好ましい。
ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子などが挙げられ、中でも酸素原子または窒素原子が好ましい。
【0026】
本発明において、Xは、下式(4)または下式(5)で表される基であることが好ましい。
8−O− (4)
【化2】

【0027】
[式中、R8は炭素数1〜10のアルキル基であり;R9、R10はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。]
【0028】
8、R9およびR10おけるアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。該アルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
9およびR10は、少なくとも一方がアルキル基であることが好ましく、両方がアルキル基であることがより好ましい。
【0029】
化合物(1)のYは水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、NH基または1価の有機基である。
におけるハロゲン原子としては、前記Xで挙げたものと同様のものが挙げられる。
におけるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、ナトリウム原子が好ましい。
がアルカリ金属原子またはNH基である場合、化合物(1)は塩として存在する。
における1価の有機基としては、特に限定されず、たとえば前記Xにおいて挙げた有機基と同様のものが挙げられる。
本発明においては、Yが、チオカルボニル基を有する1価の有機基であることが好ましく、特に、下式(6)または下式(7)で表される基であることが好ましい。
【化3】


[式中、X、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基(ただし、前記の各基中の炭素原子は置換基を有していてもよい。)を示す。]
【0030】
、Xにおけるハロゲン原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基としては、前記Xで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0031】
本発明においては、前記式(1)中のXが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基(ただし、前記の各基中の炭素原子は置換基を有していてもよい。)であり、Yが前記式(6)または前記式(7)で表される基であることが好ましい。
すなわち、化合物(1)は、下式(1’)または下式(1”)で表されることが好ましい。
【化4】


[式中、X11〜X13はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基(ただし、前記の各基中の炭素原子は置換基を有していてもよい。)を示す。]
【0032】
11〜X13としては、前記X、Xと同様のものが挙げられる。
【0033】
化合物(1)として特に好ましいのは、下式(1−1)、下式(1−2)または下式(1−3)で表される化合物である。
【化5】

【0034】
[式中、R8は炭素数1〜10のアルキル基であり;R9、R10はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。]
【0035】
式(1−1)中のR8は、前記式(4)中のR8と同様であり、2つのR8はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
式(1−2)〜(1−3)中のR9、R10は、それぞれ前記式(5)中のR9、R10と同様であり、2つのR9、R10はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
[化合物(2)]
化合物(2)は、少なくとも1つの重合性基を有する重合性化合物である。
式(2)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基である。
ハロゲン原子としては、前記Xで挙げたものと同様のものが挙げられる。
におけるアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。該アルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、1が特に好ましい。
フルオロアルキル基は、前記アルキル基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基である。
としては、水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0037】
式(2)中のAは、−O−または−NR−(Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)である。
−NR−におけるアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
Aは、−O−であることが好ましい。
【0038】
式(2)中のRは、水素原子または一価の基である。
一価の基としては、特に限定されず、たとえば飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基、芳香族炭化水素環基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、シリル基(トリアルキルシリル基等)、アルコキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0039】
化合物(2)としては、以下の化合物(2−1)〜(2−8)が例示できる。
CH=C(R)−COO−R’ …(2−1)
CH=C(R)−COO−(Ak)−(O)−Cyc …(2−2)
CH=C(R)−COO−(Ak)−(AkO)−R’ …(2−3)
CH=C(R)−COO−(Ak)−(AkO)−Cyc …(2−4)
CH=C(R)−COO−(Ak)−(AkO)−(Ak)−OCO−C(R)=CH …(2−5)
CH=C(R)−COO−(Ak)−OP(O)(OH) …(2−6)
CH=C(R)−COO−(Ak)−Si((O)R’) …(2−7)
CH=C(R)−CONR−R’ …(2−8)
【0040】
上記式(2−1)〜(2−8)中、R、R’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜22の鎖状脂肪族炭化水素基である。
該脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよい。該基中の水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基またはイソシアネート基で置換されていてもよい。また、該基中の炭素原子が、−O−、−NR−(Rは前記と同じである。)または−CO−に置換されていてもよい。
Cycは飽和炭化水素環基、不飽和炭化水素環基または芳香族炭化水素環基である。これら各基中の炭素原子は、−O−、−NR−(Rは前記と同じである。)に置換されていてもよい。
Akは炭素数1〜10のアルキレン基である。該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。一分子中にAkが複数存在する場合、各Akは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
lは0または1の整数である。
mは0または1の整数である。
nは1〜50の整数である。
pは0または1の整数である。
【0041】
こういった化合物は市販されており、共栄社化学社のライトエステル、ライトアクリレート、興人社のモノマー製品、昭和電工社のカレンズ、日本油脂社のブレンマー、新中村化学工業社のNKエステル、チッソ社のサイラプレーンといった、それぞれのブランドの製品のものや、その同等品が使用できる。
【0042】
これらのなかでより具体的に好ましい構造としては、以下に示す化合物が挙げられる。
メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート。
【0043】
アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボロニルアクリレート。
【0044】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセリンメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜45)、ポリエチレングリコールアクリレート(EO数:平均1〜45)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜45)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(EO数平均1〜45)、ポリプロピレングリコールメタクリレート(PO数平均1〜22)、ポリプロピレングリコールアクリレート(PO数平均1〜22)、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)メタクリレート(EO数平均1〜22、PO数平均1〜22)、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)アクリレート(EO数平均1〜22、PO数平均1〜22)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(EO数平均1〜22)、ポリエチレングリコールジアクリレート(EO数平均1〜22)、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)メタクリレート(EO数平均1〜22、BO数平均1〜22)、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)アクリレート(EO数平均1〜22、BO数平均1〜22)、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)メタクリレート(PO数平均1〜22、BO数平均1〜22)、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)アクリレート(PO数平均1〜22、BO数平均1〜22)、エトキシジエチレングリコールモノアクリレート オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜22、PO数平均1〜12)、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート(EO数平均1〜22、PO数平均1〜12)、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜22)、ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート(EO数平均1〜22)、ステアロキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜22)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(EO数平均1〜22)、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO数平均1〜22)。
【0045】
グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート。
【0046】
n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレートフェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(EO数平均1〜22)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸−2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロキシメチルトリメチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリクロロシラン。
【0047】
上記において、EO数平均、PO数平均、BO数平均とは、それぞれ、当該化合物の一分子中に含まれるエチレンオキサイド繰り返し単位(−CHCHO−)、プロピレンオキサイド繰り返し単位、ブチレンオキサイド繰り返し単位の平均のモル数である。
【0048】
化合物(2)は、分子量が10,000未満であることが好ましく、5,000未満であることがより好ましい。分子量が10,000未満であると、得られるブロック共重合体の、各種溶剤への溶解性が向上する。
【0049】
化合物(2)としては、ブロック共重合体として必要とされる性能に応じて、適宜公知の化合物から選択することができる。
特に、前記式(2−3)〜式(2−5)のようなAkO構造を含むモノマーを1種類以上使用することが好ましく、その中でも、Akの炭素数が2から4であることが好ましい。
【0050】
[化合物(3)]
化合物(3)は、少なくとも1つの重合性基と、パーフルオロアルキル基を有する重合性化合物である。
式(3)中のRf1は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である。パーフルオロアルキル基は直鎖状でもよく、分岐状でもよく、直鎖状が好ましい。
Rf1の炭素数は、4〜6が好ましく、6がより好ましい。
【0051】
式(3)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基であり、具体的には、前記式(2)中のRと同様のものが挙げられる。
としては、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
【0052】
式(3)中のQ1は、単結合または2価の連結基である。
1が単結合の場合は、式(3)中においてQ1の左端にあるCR56と、Q1の右端にあるRf1とが直接結合することを意味する。
【0053】
2価の連結基としては、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基、2価の環状の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族環基、2価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−NR11−(式中、R11は炭素数1〜5のアルキル基である。)、−SO−、−PO−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−CO−、−CH(OH)−等の基や、これらの基の組合せから構成される基が挙げられる。例えば、−CO−と−O−との組み合わせは−COO−であり、−NR11−と−SO−との組み合わせは−NR11−SO−である。なおこれらの基とさらに別の基を組み合わせてもよい。
また、これらの基は、置換基を有していてもよい。該置換基の例としては、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられる。
【0054】
1としては、2価の連結基が好ましく、2価の連結基としては2価の鎖状の脂肪族炭化水素基、−COO−またはこれらの組み合わせが好ましい。
2価の鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。
2価の鎖状の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基等が挙げられるがアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0055】
式(3)中のR5およびR6は、相互に独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または下式(r)で表される基である。
−Q2−Rf2 (r)
Rf2は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。Rf2は、前記Rf1と同様のものが挙げられ、Rf2と同一であっても異なっていてもよい。また、化合物(3)中に複数のRf2が存在する場合は、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
2は、単結合または2価の連結基である。Q2は、前記Q1と同様のものが挙げられ、Q1と同一であっても異なっていてもよい。また、化合物(3)中に複数のQ2が存在する場合は、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(3)において、R5およびR6は同一であっても異なっていてもよい。R5およびR6は、いずれも水素原子であるか、一方が水素原子でありもう一方が式(r)で表される基であることが好ましく、いずれも水素原子であるものが特に好ましい。
【0056】
式(3)中のBは、−O−または−NR7−である。
7は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または前記式(r)で表される基である。R7は、前記R5およびR6と同様のものが挙げられ、R5およびR6と同一であっても異なっていてもよい。
Bとしては、−O−またはR7が式(r)で表される基である−NR7−が好ましく、−O−が特に好ましい。
【0057】
化合物(3)としては、以下の化合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=CH−COO−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=CH−COO−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=CH−COO−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=C(CH)−COO−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=C(CH)−COO−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
【0058】
CH=CH−CONH−(CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−(CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−(CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−(CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCH(OH)CH−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCHN(CH)−SO−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=CH−CONH−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=C(CH)−CONH−CHCHN(C)−SO−(CF−F、
CH=CH−CONH−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=CH−CONH−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=C(CH)−CONH−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CFF、
CH=C(CH)−CONH−(CH−N(CHCHCH)−SO−(CF
【0059】
CH=CH−CONH−CH(COO−C(CFF)−CH−COO−C−(CF
CH=C(CH)−CONH−CH(COO−C(CFF)−CH−COO−C−(CF
CH=CHCON(CHCOOC(CFF)
CH=CH−CONH−CH(COO−C(CF4F)−CH−COO−C−(CF4
CH=C(CH)−CONH−CH(COO−C(CF4F)−CH−COO−C−(CF4
CH=CHCON(CHCOOC(CF4F)
【0060】
化合物(3)としては、特に、以下の化合物が好ましい。
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=CH−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
CH=C(CH)−COO−(CH−(CF−F、
【0061】
ブロック共重合体(A)の製造方法としては、化合物(1)が系中に存在する状態で、化合物(2)を重合させ、得られた重合体に、さらに化合物(3)を重合させる方法が好ましい。当該製造方法としては、特開2008−297522号公報を参考にすることができる。その際、本発明のブロック共重合体(A)すなわちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1質量%の濃度で混合した際に、白濁することなく透明な液体が得られるブロック共重合体を得る指標として、化合物(2)および化合物(3)を後述するFnを満たすように選択することが望ましい。したがって、本発明は、化合物(2)および化合物(3)について、分子量、使用量などに係る該Fnを満たすように各選択してブロック共重合体(A)を製造する方法を提供することもできる。
【0062】
ブロック共重合体(A)の製造は、まず、化合物(1)が系中に存在する状態で、化合物(2)を重合させる。
化合物(1)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
化合物(1)の使用量は、ブロック共重合体の製造に用いられる化合物(2)および化合物(3)の合計に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。化合物(1)を2種類以上用いる場合は、それらの合計が前記範囲内にあることが好ましい。
【0063】
化合物(2)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
化合物(2)の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体の製造に用いられる化合物(2)および化合物(3)の合計に対して、50〜99質量%であることが好ましく、70〜97質量%であることがより好ましい。化合物(2)を2種類以上用いる場合は、それらの合計が前記範囲内にあることが好ましい。
【0064】
化合物(2)の重合は、溶媒不存在下で行ってもよく、溶媒存在下で行ってもよい。
化合物(2)の重合を溶媒存在下で行う場合、使用する溶媒は、原料が溶解するものであれば特に限定されず、構造中にフッ素原子を含まない溶媒(以下、フッ素不含溶媒と記す。)であってもよく、含フッ素溶媒であってもよく、これらの中から1種または2種以上を適宜して用いればよい。
フッ素不含溶媒としては、原料が溶解するものであれば特に限定されず、たとえばアセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
含フッ素溶媒としては、原料が溶解するものであれば特に限定されず、たとえばパーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、その他、構造中にフッ素原子を含む溶媒が挙げられる。
代表的な含フッ素溶媒としては、具体的には、3M社のHFEシリーズ、フロリナートシリーズ、旭硝子社のアサヒクリンシリーズ、日本ゼオン社のゼオローラH 三井デュポンフロロケミカルズ社のバートレル ソルベイソレクシス社のHガルデンシリーズ等がある。これらの他にも、含フッ素芳香族化合物誘導体、含フッ素アルコール、含フッ素ケトン、トリフルオロメチルベンゼンおよびその誘導体、ヘキサフルオロキシレンおよびその誘導体等が挙げられる。
含フッ素溶媒は、オゾン破壊係数を持たないものが好ましく、中でも、非フッ素系重合物に対しても十分高い溶解力を持つことから、フッ素置換芳香族類、フルオロアルキル置換芳香族類、フルオロアルコール類が好ましい。
【0065】
化合物(2)の重合は、化合物(2)の質量に対して0.5〜10倍の範囲内の溶媒の存在下で行うか、または、溶媒不存在下で行うことが好ましい。
【0066】
化合物(2)の重合にはラジカル重合法が用いられ、その形態は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合のいずれであってもよい。
化合物(2)の重合には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、特に限定されず、たとえば2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ラウロイルペルオキシド等の有機化酸化物等が挙げられる。
【0067】
重合温度は、制御の容易さの点で0〜150℃が好ましい。特に、溶媒不存在下で重合を行う際には、生成する重合物のガラス転移温度以上の温度で行うことが好ましい。
重合圧力は、簡便であるという点から、常圧、または、閉鎖系の場合、重合開始剤の分解によって生じるガス程度の圧力が好ましい。
重合時の雰囲気は、空気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等が挙げられる。重合時のラジカルを消費しない為に、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0068】
化合物(2)の重合後、得られる重合体と、化合物(3)とを重合させる。
化合物(3)としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
化合物(3)の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体の製造に用いられる化合物(2)および化合物(3)の合計に対し、1〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましい。化合物(3)を2種類以上含む場合は、それらの合計が前記範囲にあることが好ましい。化合物(3)の使用量がこの範囲内であることで、ハンドリング性に悪影響を与えることなく、希望するFnの範囲にブロック共重合体(A)を調製することが容易になる。Fnについては後述する。
【0069】
化合物(3)の重合は、溶媒不存在下または含フッ素溶媒存在下で行う。
前記化合物(2)の重合を溶媒不存在下で行い、かつ化合物(3)の重合を溶媒不存在下で行う場合は、前記化合物(2)の重合に引き続き、そのまま化合物(3)の重合を実施できる。
前記化合物(2)の重合を溶媒不存在下で行い、かつ化合物(3)の重合を含フッ素溶媒存在下で行う場合は、前記化合物(2)の重合後、含フッ素溶媒を添加してから化合物(3)を重合させる。
前記化合物(2)の重合を溶媒存在下で行い、かつ化合物(3)の重合を溶媒不存在下で行う場合は、前記化合物(2)の重合後、溶媒を除去してから化合物(3)を重合させる。溶媒の除去方法としては、エバポレーター等の蒸発装置を使用する等の公知の方法が利用できる。
前記化合物(2)の重合を溶媒存在下で行い、かつ化合物(3)の重合を含フッ素溶媒存在下で行う場合は、前記化合物(2)の重合に用いた溶媒が含フッ素溶媒を含んでいればそのまま化合物(3)の重合を行ってもよく、さらに含フッ素溶媒を添加してもよい。前記化合物(2)の重合に用いた溶媒が含フッ素溶媒を含んでいなければ、含フッ素溶媒を添加して化合物(3)の重合を行う。
好ましくは、化合物(2)の重合を溶媒存在下で行い、かつ化合物(3)の重合を含フッ素溶媒存在下で行うことであり、特に、化合物(2)の重合を含フッ素溶媒存在下で行いそのまま化合物(3)の重合を行うことが、簡便であるという理由で好ましい。
【0070】
化合物(3)の重合を含フッ素溶媒存在下で行う場合、該含フッ素溶媒としては、前記化合物(2)の重合で挙げたものと同様のものが挙げられ、いずれか一種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
化合物(3)の重合を含フッ素溶媒存在下で行う場合、重合溶媒として、含フッ素溶媒のみを用いてもよく、含フッ素溶媒とともに、フッ素不含溶媒を併用してもよい。
フッ素不含溶媒としては前記化合物(2)の重合で挙げたものと同様のものが挙げられ、いずれか一種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
含フッ素溶媒とフッ素不含溶媒とを併用する場合、含フッ素溶媒とフッ素不含溶媒との合計量に対する含フッ素溶媒の割合は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0071】
化合物(3)の重合は、化合物(2)および化合物(3)の合計の質量に対して1〜20倍の範囲内の重合溶媒の存在下で行うか、または、溶媒不存在下で行うことが好ましい。
ここで、重合溶媒とは、重合時に系内に存在する全溶媒の合計である。化合物(3)の重合に際しては、重合溶媒は、含フッ素溶媒を含有する必要がある。
つまり、含フッ素溶媒存在下での化合物(3)の重合においては、含フッ素溶媒およびフッ素不含溶媒の合計量(フッ素不含溶媒を用いない場合は含フッ素溶媒の量)が、化合物(2)および化合物(3)の合計の質量に対して1〜20倍の範囲内であることが好ましい。
【0072】
化合物(3)の重合には、前記化合物(2)の重合と同様、ラジカル重合法が用いられ、重合温度、重合圧力、重合時の雰囲気等の重合条件は、前記化合物(2)の重合と同様であってよい。
【0073】
化合物(2)の重合は、化合物(2)の転化率が80%以上となるまで行うことが好ましい。該転化率は、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましい。このように、ある程度以上化合物(2)を重合させ、その後で化合物(3)を重合させることにより、得られるブロック共重合体中のブロック部分のランダム性が低下し、得られるブロック共重合体の性能(液体の表面張力の低下能等)が向上する。
また、化合物(3)の重合は、化合物(3)の転化率が80%以上となるまで行うことが好ましい。該転化率は、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましい。これにより、得られるブロック共重合体が、液体の表面張力の低下能等の性能に優れたものとなる。
ここで、転化率とは、使用した化合物(化合物(2)または(3)。本段落ではまとめて「モノマー」と記す。)のうち、実際に重合反応に用いられたモノマーの割合(%)を意味する。
転化率は、たとえば、反応前の系中のモノマー量(モル)および反応後の系中のモノマー量(つまり未反応のモノマー量)を、ガスクロマトグラフ等により測定し、その測定値から、下記式により求めることができる。
転化率(%)={(反応前の系中のモノマー量−反応後の系中のモノマー量)/反応前の系中のモノマー量}×100
【0074】
ブロック共重合体(A)は、25℃においてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1質量%の濃度で混合した際に、該溶液が白濁することなく透明である。この「透明」とは、目視で確認したものを意味する。白濁しないことにより、光学材料として好適に用いることができる。
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、このようなブロック共重合体(A)を溶媒(B)中に含む溶液の特に好ましい形態として、ブロック共重合体(A)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液も提供し得る。該溶液のブロック共重合体(A)の濃度は、通常、0. 001〜10質量%、好ましくは0. 003〜3質量%である。該溶液中には、勿論、後述の樹脂(C)を含んでもよい。
【0075】
ブロック共重合体(A)は、下記計算式(α)で求められるFnが1〜120であることが好ましい。特に1〜100が好ましく、より好ましくは10〜100、更に好ましくは30〜100である。この範囲であると、フッ素原子を有する化合物の量が多すぎず、塗膜の均一性が保たれやすい。なお、Fnおよび式(α)は、式(α)で規定されるFnが、ブロック共重合体中にパーフルオロアルキル基が連続して並ぶ中に、パーフルオロアルキル基の炭素原子がいくつ存在するかというのを表す指標として、本発明者が見出したものであり、Fnの数値が大きいほどその炭素数は多くなるものである。
計算式(α) Fn = Mw×(Fw/Fm)×Cn
Mw:ブロック共重合体(A)の質量平均分子量。
Fw:Fa/(Fa+Fb)
Fm:式(3)で表される化合物の分子量。
Fa:式(3)で表される化合物の使用量。
Fb:式(2)で表される化合物の使用量。
Cn:式(3)で表される化合物のRf1の炭素数。ただしRf2が存在する場合は、これも含む。
【0076】
計算式(α)において、Mwはブロック共重合体(A)の質量平均分子量を意味する。本発明におけるMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、カラム充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体、移動相:テトラヒドロフラン)により測定されるポリメチルメタクリレート(標準物質)換算分子量である。
【0077】
計算式(α)において、Fmは化合物(3)の分子量であり、Faは化合物(3)の使用量であり、Fbは化合物(2)の使用量である。なお、化合物(2)を2種類以上を併用する場合は、Fbは各化合物(2)の使用量の合計量である。
【0078】
Faにおける「使用量」とは、ブロック共重合体(A)の製造に用いた化合物(2)と化合物(3)の合計に対する、化合物(3)の割合を意味する。なお、化合物(2)を先に重合し、その全量を化合物(3)との重合に用いる場合は、化合物(2)の仕込み量と、化合物(3)の仕込み量に対する、化合物(3)の仕込み量の割合がFaとなる。化合物(2)を先に重合し、得られた重合体の一部のみを化合物(3)との重合に用いた場合は、化合物(2)の仕込み量は、化合物(3)との重合に用いた重合体の、得られた重合体全体に対する割合を乗じて計算するものとする。なお、Fbの場合も同様に、化合物(2)の割合を意味する。また前記「仕込み量」は質量部を意味する。
なお、上記化合物(2)、(3)の重合では、通常、仕込み量がすべて重合に費やされたとみなされることから、ここでの使用量は、実質的に共重合体における該当化合物から導かれる構成単位量に相当する。
【0079】
計算式(α)において、Cnは化合物(3)のRf1の炭素数である。例えば、Rf1がC613である場合は、Cnは6である。また、式(3)の1つの分子中に複数のパーフルオロアルキル基が存在する場合は、その炭素数を足し合わせたものをCnとする。例えば、Rf1がC613であり、Rf2がC49である場合は、Cnは10である。また、Rf2が複数存在する場合は、それらも同様に足し合わせる。
Cnとしては、ブロック共重合体(A)の表面張力低下能力が向上することから1〜12が好ましく、4〜12がより好ましく、4〜6が特に好ましい。
【0080】
化合物(3)を2種類以上を併用する場合は、それぞれの化合物(3)について個別に「Mw×(Fw/Fm)×Cn」を計算し、それらを合計してFnを求める。例えば、化合物(3)として、2種類(例えば、CH2=CH−COO−C24−C613(C6FA)と、CH2=CH−COO−C24−C49(C4FA))を併用する場合は、下記の計算となる。3種類以上の場合も同様に、Fn1+Fn2+Fn3…と個別に計算し、最後に合計することでFnを求める。
Fn=Fn1+Fn2
Fn1=Mw×((Fa1/(Fa1+Fa2+Fb))/Fm1)×Cn1
Fn2=Mw×((Fa2/(Fa1+Fa2+Fb))/Fm2)×Cn2
(ただし、式中のFa1、Fm1、Cn1はそれぞれC6FAにおけるFa、Fm、Cnであり、Fa2、Fm2、Cn2はそれぞれC4FAにおけるFa、Fm、Cnである。他の記号は式(α)と同じ意味である。)
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶媒(B)を含む。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる溶媒(B)としては、例えば、アルコール類として、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、ブチロラクトン、エステル類として、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、酢酸−t−ブチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸−i−プロピル、酪酸−n-ブチル、酪酸−i−ブチル、乳酸エチル、乳酸-n-ブチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、グリコール類として、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
そのほかにも、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0083】
特に、ケトン類、エステル類またはグリコールエーテル類が好ましく、その中でも特に、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましい。
溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
溶媒(B)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれを含む混合溶媒が好ましい。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物は、通常、樹脂(C)を含む。
樹脂(C)はアルカリ性溶液に対して可溶であることが望ましい。
樹脂(C)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、などの単量体を含む単独重合または共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノールなどが挙げられる。
【0085】
樹脂(C)として好ましいのは、アルカリ溶液中での現像が可能となることから、カルボキシル基または水酸基を有する樹脂であり、中でも、好ましいのは、アクリル酸またはメタクリル酸を組成中に含む、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとの共重合体である。こういった樹脂は、現像性、透明性に優れ、単量体の選択の幅が広く、性能をコントロールすることが容易である。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他成分を含んでもかまわない。例えば、その他成分として重合性モノマーが挙げられる。
重合性モノマーとしては、特に限定されないが、少なくとも一つのエチレン性不飽和基を持つ化合物が好ましい。
例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン、あるいは多官能アルコールにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加させた後にアクリレート化もしくはメタクリレート化したような化合物群が挙げられる。
中でも、アクリロイル基を3個以上有するアクリル化合物が好ましい。
これら重合性モノマーは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもかまわない。
【0087】
その他の成分としては、重合開始剤も挙げられる。
熱で硬化させることも可能なので重合開始剤は必須ではないが、使用する方が好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィンオキシド化合物が挙げられる。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ブロック共重合体(A)とは異なる界面活性剤を併用してもよい。ただし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶かした際に、白濁することなく透明な溶液が得られる範囲内においてである。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤のほかに、シリコーン系界面活性剤や、炭化水素系界面活性剤が上げられ、親水基構造としては、ノニオン型、アニオン型、カチオン型、ベタイン型、いずれも選択することができる。
これらは塗布性をより向上させる観点から加えるものであるが、本発明のブロック共重合体(A)を用いることで十分な塗布性を付与することが出来るので、加えなくともよい。
【0089】
その他成分としては、保存時の安定性を付与する為に重合禁止剤を加えてもよい。
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、フェノチアジン、β−ナフトール、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、4−メトキシ−1−ナフトール、塩化第一銅、などが挙げられる。
【0090】
その他にも、必要に応じて、各種添加物、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、凝集防止剤、密着促進剤、などを加えることができる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物は、レジスト組成物として用いることが好適である。
本発明のレジスト組成物を用いたカラーレジスト材料には、着色剤が用いられる。
着色剤は硬化性樹脂組成物を着色するものを指す。着色剤としては、赤、青、緑の染料もしくは顔料、色度調整用の黄、橙、紫、茶などの染料もしくは顔料、またはカーボンブラックなどが挙げられる。
例えば、赤色系顔料としては、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系の顔料が挙げられる。さらに詳しくは、カラーインデックス番号で表記すると、C.I. Pigment Red 177、207、209、224、254などが挙げられる。
緑色系顔料としては、ハロゲン化銅フタロシアニンが挙げられる。カラーインデックス番号で表記すると、C.I. Pigment 7、36などが挙げられる。
青色系顔料としてはフタロシアニン系顔料が挙げられる。カラーインデックス番号で表記すると、C.I. Pigment Blue 15:2 15:3 15:6などが挙げられる。
黄色系顔料としては、カラーインデックス番号で表記すると、C.I. Pigment Yellow 138、139、150などが挙げられる。
紫色系顔料としては、カラーインデックス番号で表記すると、C.I. Pigment Violet23などが挙げられる。
【0092】
本発明のレジスト組成物を用いて作成されるカラーフィルタは、透明基板上にブラックマトリックスを形成し、さらにその上に、通常、赤、緑、青の画素を形成することにより作成することができる。すなわち、本発明のレジスト組成物を、ブラックマトリックスの黒色または、赤、緑、青のいずれか少なくとも1種類において使用する。
【0093】
各層は、本発明のレジスト組成物を支持体上に任意の方法にて塗布し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像液で現像することによって、ネガ型またはポジ型の着色されたレジストパターンを形成することが出来る。
任意の方法とは、スピナー法、フローコート法、ロールコート法、ダイコート法、スプレー法などが挙げられる。また、そのほかにも、本発明のレジスト組成物を用いてインクジェット法でカラーフィルターを作成することも出来る。
【0094】
本発明のレジスト組成物を用いたカラーフィルターの製造に用いられる露光光源は、400nm以下の波長を有する光源であれば特に限定されるものではない。例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク、低圧水銀灯、中圧水銀灯、蛍光ランプ、Arイオンレーザー、Krイオンレーザー、ArFレーザー、レーザーKrF、XeFレーザー、Nレーザーなどが利用できる。
【0095】
続いて、現像処理を行い、本発明の硬化性樹脂組成物が塗布された層のうち、上記露光工程における光未照射により硬化していない部分を溶出させる。この現像処理にはアルカリ性溶液が使用される。アルカリ性溶液は無機アルカリ現像液でもよいし、有機アルカリ現像液でもかまわない。
【0096】
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、などが挙げられる。
【0097】
アルカリ性溶液には、その濡れ性を向上させるために界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤としては、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系と種類を問わないし、また、アニオン性、カチオン性、ベタイン性、ノニオン性とそのイオン性も問わない。
アルカリ性溶液には有機溶剤を加えてもかまわない。
【0098】
アルカリ性溶液を用いた現像後は、一般に、純粋で洗浄を行う。
現像、洗浄後、ポストベークと呼ばれる熱硬化処理を行う。
熱硬化処理は、100〜280℃の範囲で行われ、好ましくは150〜250℃の範囲で行われる。
これら、塗布、露光、現像、洗浄、ポストベークの工程を経て一色のパターニングが行われる。この工程を順次繰り返し、全色のパターニングを行い、カラーフィルターは作成される。
【0099】
なお、ここに、カラーフィルターの製造工程について記したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の硬化性樹脂組成物を使用する範囲において、各種の改変を行ってかまわない。
【実施例】
【0100】
以下に具体的な実施例を示す。
使用した試薬類は以下の通りである。
AM−230G(製品名):新中村化学工業社製ポリエチレングリコールアクリレートCH=CH−COO−(CO)−CH(n=平均23)
AM−90G(製品名):新中村化学工業社製ポリエチレングリコールアクリレート(上記式中、n=平均9)
2−エチルヘキシルアクリレート:Aldrich社製
2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート:ダイキン化成品販売社製
イソプロピルキサントゲンジスルフィド:和光純薬工業社製
メタキシレンヘキサフルオリド:東京化成工業社製
メチルエチルケトン:和光純薬工業社製
ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)V−601:和光純薬工業社製
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:和光純薬工業社製
分子量測定は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(昭和電工社製 GPC−101)を用いて、ポリメチルメタクリレートを標準物質として行った。
表面張力測定は、静的表面張力計CBVP−A3型(協和界面科学社製)を用いて行った。
【0101】
[参考例1]
100mlの耐圧ガラス瓶に、AM−230G 14.2g、2−エチルヘキシルアクリレート 14.2g、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 0.39g、メタキシレンヘキサフルオリド 71.05g、V−601 0.21gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定して2−エチルヘキシルアクリレートの転化率は98.6%であった。得られた溶液を(S1)とする。
【0102】
[合成例1]
25mlの耐圧ガラス瓶に、参考例1の方法で得られた溶液(S1)24.22g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 0.77g、V−601 0.052gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間過熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は98.6%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、6.50gを回収した。
また分子量Mwは28,000であった。
【0103】
[合成例2]
25mlの耐圧ガラス瓶に、参考例1の方法で得られた溶液(S1)24.62g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 0.37g、V−601 0.024gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は94.2%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、6.50gを回収した。
また、分子量Mwは27,200であった。
【0104】
[合成例3]
25mlの耐圧ガラス瓶に、参考例1の方法で得られた溶液(S1)17.61g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 1.26g、メタキシレンヘキサフルオリド 6.10g、V−601 0.039gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は97.5%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、6.64gを回収した。
また、分子量Mwは30,500であった。
【0105】
[参考例2]
100mlの耐圧ガラス瓶に、AM−230G 19.70g、2−エチルヘキシルアクリレート 19.68g、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 1.06g、メタキシレンヘキサフルオリド 59.07g、V−601 0.60gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定して2−エチルヘキシルアクリレートの転化率は98.6%であった。得られた溶液を(S2)とする。
【0106】
[合成例4]
25mlの耐圧ガラス瓶に、参考例2の方法で得られた溶液(S2)24.47g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 0.51g、V−601 0.040g を仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は97.3%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、9.92gを回収した。
また、分子量Mwは15,900であった。
【0107】
[参考例3]
100mlの耐圧ガラス瓶に、AM−230G 29.6g、2−エチルヘキシルアクリレート 29.6g、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 0.40g、V−601 0.45gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−エチルヘキシルアクリレートの転化率は99.3%であった。得られた溶液を(S3)とする。
【0108】
[比較合成例1]
200mlの耐圧ガラス瓶に、参考例3の方法で得られた溶液(S3)53.8g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 13.4g、メタキシレンヘキサフルオリド 107.5g、V−601 0.41gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートのピークは確認できなかった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、65.6gを回収した。
また、分子量Mwは72,700であった。
【0109】
[参考例4]
500mlの耐圧ガラス瓶に、AM−90G 60.0g、2−エチルヘキシルアクリレート 60.0g、メチルエチルケトン 120.0g、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 0.81g、V−601 0.90gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−エチルヘキシルアクリレートの転化率は99.1%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し重合物(P1)を回収した。
【0110】
[比較合成例2]
100mlの耐圧ガラス瓶に、参考例4の方法で得られた重合物(P1)のうち10.0g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート 2.51g、メタキシレンヘキサフルオリド 40.0g、V−601 0.075g を仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は96.7%であった。この溶液を70℃で減圧下溶媒を留去し、12.2gを回収した。
また、分子量Mwは47,500であった。
【0111】
[比較合成例3]
50mlの耐圧ガラス瓶に、AM−230G 4.71g、2−エチルヘキシルアクリレート4.70g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート0.50g、オクタンチオール0.048g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.90g、V−601 0.15gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は99.4%であった。この溶液の固形分濃度は50.1%であった。
また、分子量Mwは32,300であった。
【0112】
[比較合成例4]
50mlの耐圧ガラス瓶に、AM−230G 4.46g、2−エチルヘキシルアクリレート4.46g、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート0.99g、オクタンチオール0.048g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.90g、V−601 0.15gを仕込み、密閉した後、70℃で16時間加熱した。ガスクロマトグラフによって測定した2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレートの転化率は99.3%であった。この溶液の固形分濃度は50.1%であった。
また、分子量Mwは32,900であった。
【0113】
合成例1〜4および比較合成例1〜2によって得られた共重合体を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに10質量%または1質量%溶解させて、外観の確認を行った。また、それぞれの共重合体のFnの計算も行った。結果を表1に示す。
【表1】

上記のとおり、各共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液は、比較合成例の共重合体の10質量%溶液は白濁しており、1質量%溶液でも白濁していたのに対し、本発明のブロック共重合体は10質量%溶液でも無色透明であった。
【0114】
合成例1〜4によって得られた共重合体を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて表2に示す濃度に調製し、静的表面張力を測定した。結果を表2に示す。表2中の各数値は静的表面張力の値(単位「mN/m」)を意味する。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの同条件における静的表面張力の測定値は27.6mN/mであった。
【表2】

【0115】
合成例1〜4によって得られた共重合体を用いて、感光性樹脂組成物を調製した。その感光性樹脂組成物の表面張力測定を行った。結果を表3に示す。なお、表3中の各原料の仕込み量は「質量部」である。
【表3】

なお、表3中の各成分の略称の意味は以下のとおりである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
バインダー:メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/グリシジルメタクリレート=15/80/5(質量比)共重合物のPGMEA 40%溶液
PPZ:共栄社化学社製 2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン
【0116】
これらの結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、特定のブロック共重合体を含むことにより、表面張力が大きく低下することがわかった。このことから、組成物のレベリング性が向上し、塗布時のムラも生じにくく、均一な塗膜を形成できると考えられる。また、特定のブロック共重合体がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対して良好な溶解性を示すため、組成物に白濁等が生じないとともに、塗布後に弾きを生じないという効果も有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ブロック共重合体(A)、溶媒(B)および樹脂(C)を含む硬化性樹脂組成物。
ブロック共重合体(A):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに1質量%の濃度で混合した際に、白濁することなく透明な液体が得られるブロック共重合体であり、下式(2)で表される化合物から導かれる構成単位と、下式(3)で表される化合物から導かれる構成単位と、下式(1)で表される化合物の残基を有する。
【化1】

式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、P(O)(OH)基または1価の有機基。
:水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、NH基または1価の有機基。
:水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基。
:水素原子または1価の基。
A:−O−または−NR−(Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)。
:水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフルオロアルキル基。
B:−O−または−NR7−。
5、R6、R7:相互に独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または下式(r)で表される基。
−Q2−Rf2 (r)
Rf1、Rf2:相互に独立して、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
1、Q2:相互に独立して、単結合または2価の連結基。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(A)について、下記計算式(α)で求められるFnが1〜120である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
計算式(α) Fn = Mw×(Fw/Fm)×Cn
式中の記号は以下の意味を示す。
Mw:ブロック共重合体(A)の質量平均分子量。
Fw:Fa/(Fa+Fb)
Fm:式(3)で表される化合物の分子量。
Fa:式(3)で表される化合物の使用量。
Fb:式(2)で表される化合物の使用量。
Cn:式(3)で表される化合物のRf1の炭素数。ただしRf2が存在する場合は、これも含む。
【請求項3】
前記溶媒(B)がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む請求項1または2のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いたレジスト組成物。
【請求項5】
カラーフィルターに使用されるカラーレジスト材料である請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物を用いて作成したカラーフィルター。

【公開番号】特開2013−36034(P2013−36034A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156754(P2012−156754)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】