説明

硬化性樹脂組成物および透明フィルム

【課題】硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性および低線膨張率性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物およびそれを硬化してなる透明フィルムを提供することである。
【解決手段】特定構造の反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、及び重合開始剤(D)を含む組成物であって、シリカ微粒子(C)が、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、該シリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下の、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理して得られることを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線等の活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性組成物、ならびにそれを硬化させてなる透明フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性、低線膨張率性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物およびそれを硬化してなる透明フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基材表面の擦傷防止や汚染防止のための保護コーティング材、保護フィルム、各種基材の接着剤、シーリング材、フィルム型液晶素子、タッチパネル、およびプラスチック光学部品等の用途において、硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性および低線膨張率性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物が要求されている。これらの要求性能の中でも、近年、特に低線膨張率性と低複屈折率性の両立が求められている。
【0003】
硬度や柔軟性等が良好な硬化膜を得る方法として、例えば特許文献1には、特定構造を有する反応性(メタ)アクリレートポリマー、反応性モノマー、および表面処理したシリカ微粒子とを含む組成物を使用することによって、硬度や耐擦傷性および柔軟性が良好な硬化膜を製造できる旨が開示されている。しかし、低線膨張率性と低複屈折率性の両立については、開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/142237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性および低線膨張率性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物およびそれを硬化してなる透明フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、及び重合開始剤(D)を含む組成物であって、シリカ微粒子(C)が、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、該シリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部未満の、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理して得られたものである硬化性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおり要約される。
[1]下記一般式(1)
【0008】
【化1】

(R1は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R2は素原子またはメチル基を表し、X1は炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエステル結合で結合させて形成される原子団、または炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエーテル結合で結合させて形成される原子団を表し、nは2から4の整数を表し、mは1〜5の整数を表す。)
で表されるモノマー単位を有する反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、及び重合開始剤(D)を含む組成物であって、
シリカ微粒子(C)が、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、該シリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下の、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理して得られたものである
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[2]前記一般式(1)で表されるモノマー単位が、下記一般式(2)
【0009】
【化2】

(式(2)中、R1、R2、X1およびmは、それぞれ前記式(1)におけるR1、R2、X1およびmと同様の意味を示す。)
で表されるモノマー単位であることを特徴とする[1]に記載の硬化性組成物。
[3]前記一般式(2)で表されるモノマー単位が、下記一般式(3)、(4)または(5)で表されるモノマー単位であることを特徴とする[2]に記載の硬化性組成物。
【0010】
【化3】

(式(3)中、R1、R2は一般式(2)と同様の意味を示し、pは1〜30の整数を表す。)
【0011】
【化4】

(式(4)中、R1およびR2は、それぞれ前記式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R3およびR4は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、R3とR4とが同じ基になることはなく、pは1〜30の整数を表す。)
【0012】
【化5】

(式(5)中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R5は炭素数2〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表し、qは1〜30の整数を表す。)
【0013】
[4]反応性モノマー(B)が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)が、下記一般式(13)および(14)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0014】
【化6】

(式(13)中、R12は水素原子又はメチル基を表し、R14は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、rは0〜2の整数であり、sは1〜6の整数である。)
【0015】
【化7】

(式(14)中、R13、R14、rおよびsは、それぞれ上記式(13)におけるR13、R14、rおよびsと同様の意味を表し、R15は(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールのアルコール残基を表す。
[6][1]〜[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる透明フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、及び重合開始剤(D)を含む組成物であって、シリカ微粒子(C)が、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、該シリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下の、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理して得られたものである硬化性樹脂組成物を用いることによって、硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性および低線膨張率性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物およびそれを硬化してなる透明フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において(メタ)アクリレートなどの表現はすべてメタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。また、構造を記載する上でのcis/transの関係は特に区別はなく、そのいずれをも意味するものとする。また、本文中で使用する「残基」とは、ある特定の構造を除いた部分構造を指すものとする。例えば、エタノールのヒドロキシル基残基とは、エタノールからヒドロキシル基を除いたエチル基部分を指すものとする。また、エタノールにおける、酢酸と反応したエステル結合残基とは、エタノール由来の骨格からエステル結合部を除いたエチル基を表すものとする。
【0018】
<反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)>
本発明の反応性(メタ)アクリルポリマー(A)は、少なくとも一般式(1)で表されるモノマー単位を有する。
【0019】
【化1】

式(1)中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R2は素原子またはメチル基を表し、X1は炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエステル結合で結合させて形成される原子団、または炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエーテル結合で結合させて形成される原子団を表し、nは2から4の整数を表し、mは1〜5の整数を表す。
【0020】
また、上記(1)の構造のうち、好ましくは下記に示した式(2)
【0021】
【化2】

(式(2)中、R1、R2、X1およびmは、それぞれ前記式(1)におけるR1、R2、X1およびmと同様の意味を示す。)
の構造が挙げられ、更に好ましくは下記一般式(3)、(4)および(5)の構造が挙げられる。
【0022】
【化3】

(式(3)中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、pは1〜30の整数を表す。)
【0023】
【化4】

(式(4)中、R1およびR2は、それぞれ前記式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R3およびR4は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、R3とR4とが同じ基になることはなく、pは1〜30の整数を表す。)
【0024】
【化5】

(式(5)中、R1およびR2は、それぞれ一般式(1)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R5は炭素数2〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表し、qは1〜30の整数を表す。)
また、下記一般式(6)または(7)で表される構造のモノマー単位を有する反応性(メタ)アクリルポリマー(A)も使用することができる。
【0025】
【化8】

(式中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示す。)
【0026】
【化9】

(式中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示す。)
【0027】
本発明の反応性(メタ)アクリルポリマー(A)のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000〜100000であり、好ましくは2000〜70000、更に好ましくは2500〜50000である。重量平均分子量が1000未満であると、共重合ポリマーに特有の靭性を十分に発揮することが困難であり、100000を超えると粘度が高いために、樹脂組成物の塗工性を損ねるおそれがある。
【0028】
硬化性組成物に反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)を含有させることで、柔軟性、表面硬度のバランスに優れた硬化物が得られる。すなわち、本発明の硬化物からなる種々の製品について高い品質が達成される。
【0029】
反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)は、下記式(8)で示されるイソシアネート化合物を、その炭素−炭素二重結合を使って単独重合または炭素−炭素二重結合を有する他の化合物と共重合させて、(メタ)アクリル単独重合体または(メタ)アクリル共重合体を合成したのち、該重合体と(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコールとを反応させることで得ることができる。下記式(8)のイソシアネート化合物は、ポリエチレングリコール骨格を有する不飽和基含有イシソアネート化合物であり、中でも、2−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0030】
【化10】

(式(8)中、R1およびnは、それぞれ式(1)におけるR1およびnと同様の意味を表す。)
【0031】
したがって(メタ)アクリル(共)重合体の重合ユニットには一般式(8)の化合物が必須成分として含まれ、必要に応じて(a1)その他のイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物、(a2)脂環式骨格または複素環式骨格を有する(メタ)アクリル化合物、(a3)他の炭素−炭素二重結合を有する化合物が共重合ユニットとして含まれていてもよい。本願明細書において、(共)重合体とは、共重合体または単独重合体を意味する。
【0032】
(a1)の化合物としては例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソアイアネート、4−(メタ)アクリロイルブチルイソシアネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、および4−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネートなどを挙げることができるが、その他のイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を用いることもでき、これらを単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0033】
(a2)の化合物としては例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、モルホリニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げることができ、これらを単独で用いることも、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0034】
また、この中でもガラス転移点が高く、高い強度が得られる点からイソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、モルホリニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0035】
(a1)の化合物の共重合比率としては特に限定されるものではないが、強度と柔軟性の両立の観点から、一般式(8)の化合物と(a1)の化合物との合計が、(メタ)アクリル(共)重合体を構成するモノマー全体に対して40mol%以上であることが好ましく、さらに、80mol%以上であることが好ましい。式(8)の化合物と(a1)の化合物との合計が40mol%を下回ると、硬化物の架橋密度が十分に得られず、強度不足となるおそれがある。
【0036】
一般式(8)の化合物と(a1)の化合物との比率については、一般式(8)の化合物に対し、(a1)の化合物の比率が80質量%以下であることが好ましく、さらには75質量%以下であることが好ましい。
【0037】
(a2)の化合物の共重合比率としては特に限定されるものではないが、強度と柔軟性の両立の観点から、(メタ)アクリル(共)重合体を構成するモノマー全体に対して60mol%以下であることとし、さらに、20mol%以下になることが好ましい。(a2)の化合物の共重合比率が60mol%を上回ると、架橋密度が十分に得られなくなるおそれがあり、更には反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)の溶解性が減少する、ないしは、結晶性が向上し、ハンドリング性が低下するおそれがある。
【0038】
(a3)他の炭素−炭素二重結合を有する化合物としては例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、p−メトキシスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、エチレン性不飽和ピリジン、エチレン性不飽和イミダゾールなどのエチレン性不飽和芳香族化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0039】
(a3)の化合物の共重合比率としては特に限定されるものではないが、上記の(a2)の場合と同様の理由から、(メタ)アクリル(共)重合体を構成するモノマー全体に対して60mol%以下であることとし、さらに、20mol%以下になることが好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル(共)重合体の合成には連鎖移動剤を併用しても良い。用いる連鎖移動剤としては特に制限はないが、反応性や樹脂の特性の観点からメルカプト基を有する化合物を用いることが好ましい。具体的には、2−メルカプトエタノール、メルカプトベンゼン、ドデシルメルカプタンなどの単官能チオール化合物類、下記一般式(9)
【0041】
【化11】

(式(IX)中、R7は多官能アルコール化合物のアルコール残基を表し、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子あるいはメチル基である。X3、X4はそれぞれ独立して単結合か炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキレン基であり、lは2〜10の整数を表し、好ましくは2〜4である。)で表される多官能チオール化合物が挙げられる。
【0042】
前記多官能アルコールとしては特に制限はなく、任意の多官能アルコール化合物を好ましく用いることができる。具体的にはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルキルグリコール、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0043】
また3官能以上の連鎖移動剤を用いることにより、分岐状の構造を有する共重合体を得ることができる。分岐状のポリマーは樹脂の粘性が低下するため、反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)のハンドリング性を向上させることができる。
【0044】
(メタ)アクリル(共)重合体の合成に用いる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒やトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を好ましく用いることができる。
【0045】
(メタ)アクリル(共)重合体の合成時の反応温度は通常60℃〜130℃であり、好ましくは70℃〜125℃、更に好ましくは75℃〜120℃である。反応温度が60℃より低いと、重合開始剤が十分にその機能を果たさないおそれがあり、130℃より高いとイソシアネート基が破壊されるおそれがある。
【0046】
(メタ)アクリル(共)重合体の合成に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤および過酸化物系開始剤などを挙げることができるが、イソシアネート基の安定性の観点からアゾ系開始剤を用いることが好ましく、具体的にはアゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、およびジメチル―2,2―アゾビス−(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル(共)重合体へ不飽和基を導入するために用いる(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(以下「(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコール」ともいう)としては、具体的には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエスリトールトリアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。また、不飽和基の含有量を調整する目的で、ブタノールなどの不飽和基を有しないアルコールを併用してもよい。
【0048】
前記一般式(8)および(a1)のイソシアネート化合物中のイソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物中の活性水素基との反応に用いることができる触媒の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸リチウム、トリエチルアミン、および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。これらのウレタン化触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
触媒の添加量は、前記一般式(8)のイソシアネート化合物および(a1)のイソシアネート化合物の合計100質量部に対して好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。ウレタン化触媒の添加量が0.01質量部未満であると、反応性が著しく低下する場合がある。一方、ウレタン化触媒の添加量が5質量部を超えると、反応時に副反応が起きる可能性がある。
【0050】
イソシアネート基と活性水素基との反応に用いる溶媒としては、経済的観点から、共重合反応で用いた溶媒を用いるのが好ましい。
イソシアネート基と活性水素基の反応に適した反応温度は20℃〜100℃であり、好ましくは25℃〜90℃、更に好ましくは30℃〜80℃である。反応温度が20℃より低いと未反応のイソシアネート基が残存してしまうおそれがあり、100℃を超えるとゲル化、または望まない着色のおそれがある。
【0051】
本発明の反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)の二重結合当量は、100〜1000g/molであることが好ましく、120〜850g/mol であることが更に好ましく、140〜700g/molであることが最も好ましい。二重結合当量が1000g/molより大きい場合は、皮膜強度が低下することがあり、100g/molより小さい場合は、硬化収縮が大きくなることがある。二重結合当量は下記式のように定義した。この式の分子は反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)の質量に相当する。
二重結合当量=[全モノマーの質量(g)+重合開始剤の質量(g)+全アルコールの質量(g)]/[(メタ)アクリル(共)重合体との反応に用いた(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールの量(mol)×(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコール中の不飽和基の数]
【0052】
また、本発明の反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)のウレタン当量は100〜1000g/mol であることが好ましく、120〜850g/mol であることが更に好ましく、140〜700g/molであることが最も好ましい。ウレタン当量が1000g/molより大きい場合は、皮膜強度が低下することがあり、100 g/molより小さい場合は、粘度が上昇し、または結晶化しやすくなり、ハンドリング性が低下することがある。ウレタン当量は下記式のように定義した。
ウレタン当量=[全モノマーの質量(g)+重合開始剤の質量(g)+全アルコールの質量(g)]/[(メタ)アクリル(共)重合体との反応に用いた(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールの量(mol)]
【0053】
尚、共重合成分としてウレタン(メタ)アクリレート化合物をさらに用いた場合は、上記のウレタン当量の式の分母にウレタン(メタ)アクリレート化合物の量(mol)を加える。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)反応性(メタ)アクリレートポリマー以外の他の成分を配合することによって例えば、コーティング剤に好適な硬化性組成物となる。以下にそれぞれの具体例を示す。
【0055】
<反応性モノマー(B)>
反応性モノマー(B)は、活性光線の照射時に光重合開始剤から発生するラジカルで重合または架橋する化合物、または加熱により重合または架橋する化合物である。反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)と反応性モノマー(B)とを共重合させることで架橋物となり、本発明の硬化性組成物が硬化する。反応性モノマー(B)は反応性希釈剤とも称され、組成物の粘度の調整、硬化性の調整などの役割などを有する。反応性モノマー(B)としては、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する化合物が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、またはウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく使用される。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル類としては具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどのジアクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどの多官能(メタ)アクリレート類、
ならびにそれらのエチレンオキサイド変性およびプロピレンオキサイド変性体が挙げられる。
【0057】
また、エポキシ(メタ)アクリレート類は、公知のエポキシ化合物に対して不飽和基を有するカルボン酸を反応させることで得られる。エポキシ化合物としては、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルプロピルトリメトキシシラン、炭素数1〜12の直鎖アルコールの両末端グリシジルエーテル体、ジエチレングリオールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。不飽和基を有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0058】
上記、エポキシ化合物と不飽和基を有するカルボン酸は従来公知の方法で容易に反応させることができ、反応の速やかな進行のためには、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類に代表される化合物を触媒として用いることもできる。
【0059】
特に好ましいエポキシ(メタ)アクリレート類としては、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物である、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0060】
また、ウレタン(メタ)アクリレート類は、公知のアルコール化合物、チオール化合物またはアミン化合物に対して、不飽和基含有イソシアネート類を反応させるか、公知のポリオール類とポリイソシアネート類をイソシアネート基過剰の条件化でウレタン化反応をさせ、反応終了後に末端イソシアネートに対して不飽和基を有するアルコール化合物、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールを反応させることで得られる。
【0061】
公知のアルコール化合物と不飽和基含有イソシアネート類の反応物としては、例えば下記一般式(10)、(11)および(12)で表される化合物を挙げることができる。
【0062】
【化12】

(式中、R10は水素原子またはメチル基を表し、R11は酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、X5は脂肪族基および芳香族基から選ばれる一種の基を表し、mは一般式(1)におけるmと同様の意味を示し、pは1または2を示す。)
【0063】
【化13】

(式中、R10は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基であり、R11は酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、X5は脂肪族基、芳香族基および複素環基から選ばれる一種の基を表し、mは一般式(1)におけるmと同様の意味を示す。)
【0064】
【化14】

(式中、R10は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基であり、R11は酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、X5は脂肪族基、芳香族基および複素環基から選ばれる一種の基を表し、mは一般式(1)におけるmと同様の意味を示す。)
【0065】
公知のアルコール化合物としては、具体的には2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリヒドロキシペンタン、1,4−ジチアン−2,5−ジメタノールトリシクロデカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ノルボルナンジメタノール、ポリカーボネートジオール、ポリシロキサンジオール、ビスフェノールA、パープルオロアルコール類、およびそれらの、EO変性体、PO変性体、カプロラクトン変性体が挙げられる。
【0066】
また、公知のチオール化合物としては、炭素数1〜12の直鎖両末端ジチオール、2,4,6−メルカプト−S−トリアジン、ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパン(3−メルカプトプロピオネート)、イソシアヌルトリス(3−メルカプトピロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパン(3−メルカプトブチレート)、イソシアヌルトリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0067】
一方、不飽和基含有イソシアネート化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、5−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2,2−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
また、硬化性樹脂組成物中の反応性モノマー(B)の含有量としては、反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)100質量部に対して1質量部〜300質量部が好ましく、10質量部〜200質量部が更に好ましい。反応性モノマーが1質量部を下回ると、架橋密度が低下し硬度不足となるおそれがあり、300質量部を上回ると、架橋密度の増大により、柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0069】
<シリカ微粒子(C)>
本発明で用いられるシリカ微粒子(C)としては、平均粒子径が1〜100nmのものを好適に用いることができる。平均粒子径が1nm未満であると、作製した硬化性組成物の粘度が増大し、シリカ微粒子(C)の硬化性組成物中での含有量が制限されるとともに、硬化性組成物中での分散性が悪化し、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物(以下単に硬化物とも言う)が十分な耐熱性を得ることができない傾向がある。また、平均粒子径が100nmを越えると、外観性能や機械特性が低下する場合がある。
【0070】
シリカ微粒子(C)の平均粒子径は、硬化性組成物の粘度を好適値に調整する点から、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは5〜50nm、最も好ましくは5〜40nmである。なお、シリカ微粒子(C)の平均粒子径は、高分解能透過型電子顕微鏡(株)日立製作所製 H−9000型)で微粒子を観察し、観察される微粒子像より任意に100個の粒子像を選び、公知の画像データ統計処理手法により数平均粒子径として求めることができる。
【0071】
硬化性組成物中のシリカ微粒子(C)の含有量は、20〜80質量%であることが好ましく、硬化物の耐熱性、耐環境性と硬化性組成物の粘度とのバランスの点から、より好ましくは50〜80質量%である。含有量が20質量%以下であると線膨張係数が低い硬化物が得られなくなるおそれがあり、80質量%を超えると分散性が損なわれ、硬化物の成形が困難となるおそれがある。
【0072】
また、シリカ微粒子(C)は、硬化性組成物中での分散性の点から、有機溶媒に分散した状態で用いることが好ましい。有機溶媒としては、硬化性樹脂組成物中に含有される反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、重合開始剤(D)などを溶解またはよく分散させることができるものを用いることが好ましい。
【0073】
前記有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられるが、溶媒量調整の容易さから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒が好ましい。
【0074】
このような有機溶媒に分散したシリカ微粒子(C)は従来公知の方法で製造することができ、またたとえば商品名スノーテックIPA−ST(日産化学(株)製)などとして市販されているシリカ微粒子を原料として合成することができる。
【0075】
また、本発明に使用されるシリカ微粒子(C)は、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理することにより得られたものであり、必要に応じてさらに芳香環を有するシラン化合物で表面処理することにより得られたものである。
以下これら各シラン化合物について説明する。
【0076】
<重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)>
本発明で使用する重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシラン化合物であり、中でも後述の一般式(13)で表される不飽和基を有するシラン化合物(E1)または下記一般式(14)で表される不飽和基とウレタン結合を有するシラン化合物(E2)を好適に用いることができる。
【0077】
[シラン化合物(E1)]
シラン化合物(E1)は、下記一般式(13)で表される。
【0078】
【化6】

上記式(13)中、R12は水素原子又はメチル基を表し、R14は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、rは0〜2の整数であり、sは1〜6の整数である。
【0079】
硬化性組成物の粘度の低減、保存安定性の点から、好ましいR12はメチル基であり、好ましいR14はメチル基であり、好ましいsは3であり、好ましいrは0である。
シラン化合物(E1)は、硬化性組成物の粘度を低減させると同時に、シリカ微粒子(C)の硬化性組成物中における分散安定性を向上させるため、及び硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮を低減し、かつ硬化物に成形加工性を付与するために用いられるものである。つまり、不飽和基を有するシラン化合物(E1)でシリカ微粒子(C')を表面処理しない場合には、硬化性組成物の粘度が高くなるとともに、硬化時の硬化収縮が大きくなり、硬化物が脆くなり、硬化物にクラックが発生したりするので好ましくない。
【0080】
シラン化合物(E1)としては、例えば、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0081】
これらの中で、シリカ微粒子(C)の硬化性組成物中における凝集防止、硬化性組成物の粘度の低減及び保存安定性向上の点からは、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、より好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。また、これらは、2種以上を併用して用いることができる。
また、このようなシラン化合物(E1)は公知の方法で製造することができ、また市販されている。
【0082】
[シラン化合物(E2)]
本発明で用いられるシラン化合物(E2)は、下記一般式(14)で表される。
【0083】
【化7】

上記の式(14)中、R13、R14、rおよびsは、それぞれ一般式(13)におけるR13、R14、rおよびsと同様の意味を表し、R15は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールのアルコール残基を表す。
【0084】
シラン化合物(E2)は、アルコキシシリル基を有するイソシアネート化合物と前記(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールとを反応させることで得ることができる。シラン化合物(E2)は、シリカ微粒子(C)の硬化性組成物中における分散安定性を向上させるため、及び硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮を低減させるために用いられる。またシラン化合物(E2)を使用することで、分子内のウレタン結合の水素結合に由来する凝集効果によって、硬化物の靭性と不飽和基の反応性を高めることができる。
【0085】
シラン化合物(E2)の合成に用いる、アルコキシシリル基を有するイソシアネート化合物としては、トリメチルシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
アルコキシシリル基を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールの活性水素基との反応に用いることができる触媒、触媒の添加量および使用できる溶媒は、前述の一般式(8)および(a1)のイソシアネート化合物中のイソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物中の活性水素基との反応の際に用いることができる触媒、触媒の添加量および使用できる溶媒として示したものを用いることができる。
【0087】
[芳香環を有するシラン化合物]
本発明で用いられる芳香環を有するシラン化合物は、下記一般式(15)などで表される。
【0088】
【化15】

上記式(15)中、R13、R14、rおよびsは、それぞれ一般式(13)におけるR13、R14、rおよびsと同様の意味を表す。一般式(15)に示す構造の左端に存在するフェニル基には、本発明の効果を損なわない範囲で置換基が結合していてもよい。
【0089】
硬化性組成物の粘度の低減、保存安定性の点から、好ましいR14はメチル基であり、好ましいsは0又は1であり、好ましいrは0である。rが0でない場合、好ましいR13はメチル基である。シリカ微粒子と芳香環を有するシラン化合物が反応すると、シリカ微粒子の表面に疎水性が付与され、前記有機溶媒中でのシリカ微粒子の分散性が向上し、硬化性組成物の粘度を低減させ、硬化性組成物の保存安定性を向上させる。
【0090】
芳香環を有するシラン化合物としては、例えば、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジエチルメトキシシラン、ベンジルエチルジメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジエチルエトキシシラン、ベンジルエチルジエトキシシラン、およびベンジルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
硬化性組成物の粘度の低減、保存安定性向上、吸水率の低下も含めた耐環境性の向上の観点からは、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましく、フェニルトリメトキシシランがより好ましい。また、これらのシラン化合物は、2種以上を併用して用いることができる。
【0092】
シリカ微粒子を表面処理する際の重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)の使用量は、表面処理されていないシリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下が好ましく、50質量部より多く85質量部以下がより好ましく、50質量部より多く70質量部以下が更に好ましい。重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)の使用量が50質量部以下であると、硬化性組成物の粘度が高くなり、シリカ微粒子(C)の硬化性組成物中での分散性が悪化してゲル化を生じる可能性がある。また100質量部を超えると、シリカ微粒子(C)の凝集を引き起こすことがある。重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)と芳香環を有するシラン化合物との使用量の合計はシリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下が好ましい。
【0093】
<重合開始剤(D)>
本発明で用いられる重合開始剤(D)としては、ラジカルを発生する光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。これらは、それぞれ単独に用いてもよく、併用してもよい。
【0094】
光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−フェニルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシドが挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用してもよい。
【0095】
光重合開始剤の硬化性組成物中における含有量は、硬化性組成物を適度に硬化させる量であればよく、硬化性組成物全体に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、硬化性組成物の保存安定性が低下したり、着色したり、架橋して硬化物を得る際の架橋が急激に進行し硬化時の割れ等の問題が発生する場合があるほか、高温処理時のアウトガス成分が増加し、装置を汚染する危険性がある。一方、光重合開始剤の添加量が少なすぎると、硬化性組成物の硬化が不十分となるおそれがある。
【0096】
前記熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2―ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3―テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2、2'−アゾビス(N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオナミド、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2、2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオナミド)、2、2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオナミド)等が挙げられる。
【0097】
また、硬化性樹脂組成物中の熱重合開始剤の含有量は、前述の光重合開始剤の場合と同様である。
また、光重合開始剤と熱重合開始剤は併用してもよい。
【0098】
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、硬化性樹脂組成物の成分である、反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、重合開始剤(D)およびシラン化合物(E)を分散させたものである。また組成物の粘度を調節する目的で、これらに溶剤を添加することができる。
【0099】
使用する溶剤としては、有機溶媒が好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられる。その中でも、前述した組成の分散、粘度の調節のしやすさから、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒が好ましい。
【0100】
溶剤の沸点は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。また、硬化性樹脂組成物中の溶剤の含有量は、反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)100質量部に対して2000質量部以下が好ましく、1000質量部以下が更に好ましい。溶剤の量が2000質量部より多いと、粘度が下がりすぎ、ハンドリング性が悪化するおそれがある。
【0101】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には必要に応じて、蛍光増白剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、防かび剤、帯電防止剤、磁性体、導電材料、抗菌・殺菌材料、多孔質吸着体、香料等、シランカップリング剤や酸性リン酸エステル等の密着性向上剤、硬化促進剤、染料、充填剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤を添加してもよく、好ましい添加剤としては酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0102】
特に、酸化防止剤は硬化物の熱劣化を抑制し、アウトガスの低減効果を発現することができ、耐熱性に寄与できる。具体的には、住友化学社製のスミライザーGM、チバジャパン社製のイルガノックス1135等のヒンダートフェノール系の酸化防止剤を好適に使用することができる。
【0103】
<硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化方法>
本発明の硬化性組成物は、以下のように配合、調製できる。
本発明で用いる反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、重合開始剤(D)およびシラン化合物(E)を、室温または加熱条件下で、ミキサー、ボールミルあるいは3本ロールなどの混合機により混合するか、あるいは、溶剤などを希釈剤として添加し溶解し、配合、調製することができる。
【0104】
上記の硬化性樹脂組成物の硬化方法としては特に制限されないが、例えば、基材上に上記の硬化性組成物を塗布し、塗膜を形成した後、放射線を照射するか、あるいは加熱するか、さらには放射線照射および加熱を組み合わせて使用することで、硬化させることができる。
【0105】
塗布方法としては、例えば、ダイコーター、スピンコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、ロールコーターなどによる塗布、スクリーン印刷などによる塗布、ディッピングなどによる塗布方法が挙げられる。
【0106】
塗膜の厚さに関しては、1〜200μmの範囲内の値とするのが好ましいが、用途により適宜設定することができる。
硬化のために使用される放射線としては、特に限定はされないが、電子線、あるいは紫外から赤外線の範囲の光源が好ましい。例えば、紫外線であれば超高圧水銀あるいはメタルハライド光源、可視光線であればメタルハライドあるいはハロゲン光源、また、赤外線であればハロゲン光源などが使用できるが、この他にもレーザー、LEDなどの光源も使用できる。赤外線を使用すれば熱的な硬化もできる。放射線の照射量についても、光源の種類、塗膜の膜厚などに応じて適宜設定することができる。
【0107】
このような硬化プロセスを経て、透明フィルムもしくは透明シートを製造することができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(1)硬化性樹脂組成物の成分の調製
[製造例1]:反応性(メタ)アクリレートポリマー(A):(P−1)の合成
滴下漏斗、温度計、冷却管、撹拌機を取り付けた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMACと表記する)210.1gを仕込み、1時間4つ口フラスコ内を窒素置換した。さらにオイルバスで100℃まで加温した後、2−(2−メタクロリルオキシ)エトキシエチルイソシアネート24.9g、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート19.4 g、ジメチル−2、2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(以下V−601と表記する)7.3gの混合液を2時間かけて滴下した。その後30分間攪拌を継続した後、V−601を0.9gとPGMAC2.7gの混合液を加え3時間攪拌した後、さらに120℃に昇温して1時間重合を行った後、40℃まで冷却した。ここでフラスコ内のAir置換を行った後、重合禁止剤として3,5−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.2gを加えた。3分間攪拌した後、この溶液にジブチル錫ジラウリレートを0.4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート29.0g加え、1時間撹拌した。ここで赤外分光計を用いてイソシアネートに特有の2250cm-1のピークが消失していることを確認し反応を終了することで、側鎖に不飽和基を有する反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)を合成し、これを(P−1)とした。GPCにより測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は8,000であった。
【0109】
この場合、二重結合当量は、
二重結合当量=[全モノマーの質量(g)+重合開始剤の質量(g)+全アルコールの質量(g)]/[(メタ)アクリル(共)重合体との反応に用いた(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールの量(mol)×(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコール中の不飽和基の数]
=[[24.9(g)+19.4(g)]+[7.3(g)+0.9(g)]+[29.0(g)]]
/[29.0(g)/116.12(g/mol)]
=326
ウレタン当量は、
ウレタン当量=[全モノマーの質量(g)+重合開始剤の質量(g)+全アルコールの質量(g)]/[(メタ)アクリル(共)重合体との反応に用いた(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールの量(mol)]
=[[24.9(g)+19.4(g)]+[7.3(g)+0.9(g)]+[29.0(g)]]
/[29.0(g)/116.12(g/mol)]
=326
であった。
【0110】
[製造例2]:反応性(メタ)アクリレートポリマー(A):(P−2)の合成
製造例1における2−(2−メタクロリルオキシ)エトキシエチルイソシアネート24.9gを39.8gに変更し、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート19.4gを31.0gに変更し、2−ヒドロキシエチルアクリレート29.0gを46.9gに変更し、さらに溶剤、重合開始剤、重合禁止剤、触媒であるジブチル錫ジラウリレートの添加量を表1に示した量に変更した以外は、製造例1と同様に反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)を合成し、これを(P−2)とした。GPCにより測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は20,000であった。
この場合、二重結合当量およびウレタン当量は、ともに300であった。
【0111】
[製造例3]:反応性(メタ)アクリレートポリマー(A):(P−3)の合成
製造例1における2−(2−メタクロリルオキシ)エトキシエチルイソシアネート24.9gを19.9gに変更し、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート19.4gを、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート15.5gおよびトリシクロデカニルメタクリレート44.1gに変更し、2−ヒドロキシエチルアクリレート29.0gを23.0gに変更し、さらに溶剤、重合開始剤、重合禁止剤、触媒であるジブチル錫ジラウリレートの添加量を表1に示した量に変更した以外は、製造例1と同様に反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)を合成し、これを(P−3)とした。GPCにより測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は15,000であった。
【0112】
この場合、二重結合当量およびウレタン当量は、ともに540であった。
製造例1、2および3の製造条件および合成した反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)の分子量、二重結合当量、ウレタン当量を、表1に示す。
【0113】
[製造例4]:シリカ微粒子の表面処理(1):(M−1)
セパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ含量15質量%、平均粒子径9〜15nm、商品名スノーテックIPA−ST−UP;日産化学(株)製)280.0g(100質量部;うちシリカ量は42g)を入れ、該セパラブルフラスコにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.6g(4.5質量部)を加え攪拌混合し、さらに0.1825質量%のHCl溶液4.5g(1.6質量部)を加え、室温で24hr撹拌することにより、シリカ微粒子の表面処理を行い、シリカ微粒子分散液(M−1)を得た。なお、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解による消失は、ガスクロマトグラフィー(アジレント(株)製 型式6850)により確認した。無極性カラムDB−1(J&W社製)を使用し、温度50〜300℃、昇温速度10℃/min、キャリアガスとしてHeを使用し、流量1.2cc/min、水素炎イオン化検出器にて内部標準法で測定した。γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、上記HCl溶液を添加後8hrで消失した。
また、得られたシリカ微粒子分散液(M−1)の固形分濃度は18.7%であった。
【0114】
[製造例5]:シリカ微粒子の表面処理(2):(M−2)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.6gを25.2gに変更し、0.1825質量%のHCl溶液4.5gを9.0gに変更した以外は製造例4と同様の操作を行い、得られたシリカ微粒子分散液を(M−2)とした。また、得られたシリカ微粒子分散液(M−2)の固形分濃度は22.0%であった。
【0115】
[製造例6]:シリカ微粒子の表面処理(3):(M−3)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.6gを、後述の製造例8で得られるHEMA−TEPI25.2gに変更し、0.1825質量%のHCl溶液4.5gを9.0gに変更した以外は製造例4と同様の操作を行い、得られたシリカ微粒子分散液を(M−3)とした。また、得られたシリカ微粒子分散液(M−3の固形分濃度は)22.0%であった。
製造例4〜6の製造条件を表2に示す。
【0116】
[製造例7]:反応性モノマー(B)の合成:HEA−AOI
反応容器中に2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)100部(31.3g)にBHT(純正化学(株)製)200ppm含有ヘキサン(純正化学(株)製)142質量部(44.4g)、ジブチル錫ジラウレート(東京化成工業(株)製)2.8質量部(0.9g)を入れて撹拌した。その後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製)122質量部(38.1g)を徐々に滴下し、室温にて撹拌を行った。高速液体クロマトグラフィーで原料がほぼ消失したことを確認して反応を終了し、続いてBHT200ppm含有ヘキサン203質量部(63.5g)を用いて4回洗浄を行いウレタン(メタ)アクリレート類の反応性モノマー(B)に属するウレタン化合物(HEA−AOI)を得た。
【0117】
[製造例8]:重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)の合成:HEMA−TEPI
塩化メチレン溶液100gを満たした反応容器中に2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業社製)13.8質量部(50.0g)とトリメトキシシリルプロピルイソシアネート(商品名:KBM−9007 信越化学工業社製)23.5質量部(85.1g)、ジブチルスズジラウレート(東京化成工業(株)製)0.3質量部(1.1g)を入れて、室温にて24時間撹拌した。ここで赤外分光計を用いてイソシアネートに特有の2250cm-1のピークが消失していることを確認し反応を終了することで、不飽和基とウレタン結合を有するシラン化合物(E2)に属するウレタン化合物(HEMA−TEPI)を合成した。
【0118】
(2)硬化性樹脂組成物の調製
(実施例1)
製造例1で合成した反応性(メタ)アクリレートポリマー(P−1)10.3質量部(0.16g)、製造例4で調製したシリカ微粒子分散液(M−2)1310質量部(20.0g)、製造例6で合成した反応性モノマー(B)(HEA−AOI)10.3質量部(0.16g)、その他の反応性モノマー(B)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:ビスコート#295;大阪有機化学(株)製)100質量部(1.53g)、及びトリシクロデカンジアクリレート(製品名:ダイセル化学社製IRR−214K)20.2部(0.31g)を混合し、更に光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(製品名:チバスペシャリティケミカルズ社製ダロキュア1173)12.9質量部(0.20g)、及びフェニルグリオキシックアシッドメチルエステル(製品名:LAMBSON社製スピードキュアMBF)8.6質量部(0.13g)を加え、遮光中室温にてスターラーで24時間攪拌することで、硬化性樹脂組成物(C−1)を得た。
【0119】
(実施例2〜5、比較例1)
同様の要領で調製を行った硬化性樹脂組成物C−1〜C−5、及びR−1の組成を表3に示す。
【0120】
(3) サンプル評価
以下にサンプルの評価方法を記載する。また、評価結果を表3に示す。
【0121】
<硬化フィルムの製造>
実施例1〜5、比較例1の硬化性組成物溶液をそれぞれ別々のガラス基板(50mm×50mm)に、硬化膜の厚みが100μmになるようにディッピングおよびロールでフィルム状に塗布し、100℃で1時間乾燥することで溶剤を完全に除去した後、超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名:GSユアサ社製UV−SYSTEM CSN2−40)で1J/cm2露光し塗膜を硬化させてフィルムとした。フィルムの膜厚は100μmであった。これらのフィルムに対して以下の評価を行った。
【0122】
<鉛筆硬度>
JIS K5600に記載の方法に基づき、表面性測定機(新東科学株式会社製)を用いて鉛筆硬度の測定を行った。
【0123】
<平均線膨張係数(CTE)>
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素の存在下、1分間に5℃の割合で前記フィルムの温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜230℃の間の寸法変化から各温度の線膨張係数を求め、それらを平均化して平均線膨張係数(CTE)を算出した。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。測定は、独自に設計した石英引張チャック(材質:石英,線膨張係数0.5ppm)を用いて、サンプルの両端を固定して行った。
【0124】
<全光線透過率>
分光光度計U3200(日立製作所製)を用いて全光線透過率を測定した。
【0125】
<複屈折率(レターデーション):Rth>
複屈折率(レターデーション)は自動複屈折計KOBRA−21H(王子計測機器株式会社製)を用い、測定方法にはKOBRA法(平行ニコル回転法)を用いて測定した。測定は室温で行った。
【0126】
<屈曲性>
直径6φの金属線を用意し、金属線の周囲にフィルムを室温で180°巻きつけたときに、フィルムが破断するか否かを評価した。1つのフィルムにつきこの試験を5回行い、5回中破断した回数が0回であれば「破断しなかった」(表記を○)、1〜2回であれば「若干破断した」(表記を△)、3回以上であれば「破断した」(表記を×)とした。
【0127】
表3から、シリカ微粒子100質量部に対して50質量部より多い量である60質量部の重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理されて得られたシリカ微粒子(C)を使用した組成物が、30質量部の重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理されて得られたシリカ微粒子を使用した組成物に比べて低線膨張率性に優れ、硬度、柔軟性、透明性、低複屈折率性とのバランスにも優れていることがわかる。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(R1は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X1は炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエステル結合で結合させて形成される原子団、または炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基の少なくとも2つをエーテル結合で結合させて形成される原子団を表し、nは2から4の整数を表し、mは1〜5の整数を表す。)
で表されるモノマー単位を有する反応性(メタ)アクリレートポリマー(A)、反応性モノマー(B)、シリカ微粒子(C)、及び重合開始剤(D)を含む組成物であって、
シリカ微粒子(C)が、表面処理されていないシリカ微粒子(C')を、該シリカ微粒子(C')100質量部に対して50質量部より多く100質量部以下の、重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)によって表面処理して得られたものである
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるモノマー単位が、下記一般式(2)
【化2】

(式(2)中、R1、R2、X1およびmは、それぞれ前記式(1)におけるR1、R2、X1およびmと同様の意味を示す。)
で表されるモノマー単位であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記一般式(2)で表されるモノマー単位が、下記一般式(3)、(4)または(5)で表されるモノマー単位であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【化3】

(式(3)中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、pは1〜30の整数を表す。)
【化4】

(式(4)中、R1およびR2は、それぞれ前記式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R3およびR4は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、R3とR4とが同じ基になることはなく、pは1〜30の整数を表す。)
【化5】

(式(5)中、R1およびR2は、それぞれ一般式(2)におけるR1およびR2と同様の意味を示し、R5は炭素数2〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表し、qは1〜30の整数を表す。)
【請求項4】
反応性モノマー(B)が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
重合性不飽和基を有するシラン化合物(E)が、下記一般式(13)および(14)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化6】

(式(13)中、R12は水素原子又はメチル基を表し、R14は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表し、R13は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、rは0〜2の整数であり、sは1〜6の整数である。)
【化7】

(式(14)中、R13、R14、rおよびsは、それぞれ上記式(13)におけるR13、R14、rおよびsと同様の意味を表し、R15は(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコールのアルコール残基を表す。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる透明フィルム。

【公開番号】特開2011−246548(P2011−246548A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119271(P2010−119271)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】