説明

硬化性樹脂組成物の製造方法

【課題】 比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保できる製造方法を提供すること。
【解決手段】 架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、珪素原子に炭素数2以上のアルキレン基が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、上記フィラー(C)が加熱処理される工程を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物の製造方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物の製造方法に関し、より詳細には、比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保できる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主鎖が有機重合体であり、その分子内に分子間架橋可能な架橋性珪素基を有する硬化性樹脂は、アルコキシシリル基等の架橋性珪素基が大気中の水分で加水分解し架橋する、いわゆる湿気硬化型樹脂であり、シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして幅広く利用されている(特許文献1〜4)。このような湿気硬化型樹脂は、シーリング材、接着剤、塗料等に使用する場合、一般的に有機錫化合物などが、該湿気硬化型ポリマーの硬化を促進させるために配合される(特許文献5、6)。また、該湿気硬化型樹脂をさらに速く硬化させることができる技術として、三フッ化ホウ素等に代表されるハロゲン化ホウ素化合物やフルオロシラン化合物等のハロゲン化合物を用いることが提案されている(特許文献7〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特許第3030020号公報
【特許文献3】特許第3343604号公報
【特許文献4】特表2005−514504号公報
【特許文献5】特開平8−283366号公報
【特許文献6】特許第3062625号公報
【特許文献7】特開2005−054174号公報
【特許文献8】WO2006/051799号公報
【特許文献9】WO2007/123167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、架橋性珪素基を含有する湿気硬化型樹脂を用いた研究開発を進めるなかで、上記特許文献4に記載されるような特定の架橋性珪素基近傍の化学構造を持つ硬化性樹脂と、従来公知の架橋性珪素基を有する硬化性樹脂とを併用すると、驚くべきことに系全体の硬化性能が引き上げられることを見出し、この併用系を先に出願した(特願2008−187669)。また、この系に対して一段速い硬化速度を付与する技術についても出願した(特願2009−113928)。これらの硬化性樹脂組成物は、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するものである。
【0005】
ところが、本発明者らは、上記の硬化性樹脂組成物の系を実用化・製品化する研究を進めるなかで、予期せぬ問題にぶつかった。その問題とは、上記の硬化性樹脂組成物の系において、一般的に用いられるフィラー(充填剤)を単に添加すると、製造時又は貯蔵時の安定性が悪くなる場合があった。実用化・製品化にあたっては、長期の流通に耐え得る高度の安定性が必要となるが、このような問題は、上記の硬化性樹脂組成物の系での製品化検討を進めなければわからないものであった。
【0006】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の製造方法を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜6の発明から構成される。
【0008】
第1の発明は、架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、珪素原子に炭素数2以上のアルキレン基が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、上記フィラー(C)が加熱処理される工程を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。フィラーを加熱処理することによって、比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保することができる。
【0009】
第2の発明は、フィラー(C)の加熱工程が、80〜180℃で10分〜7日間加熱処理を行うものであることを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。また、第3の発明は、フィラー(C)の加熱工程が、100mmHg以下の減圧下で行われることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。フィラーの加熱処理をこれらの条件を行うことが好ましい。
【0010】
第4の発明は、フィラー(C)の加熱工程が、下記の工程X及びYを経るものであることを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
工程X:硬化性樹脂組成物に配合される液状成分と、フィラー(C)とを混合撹拌し、ペースト状スラリーを調製する工程。
工程Y:上記ペースト状スラリーを、80〜180℃で10分〜7日間及び/又は100mmHg以下の減圧下で加熱処理する工程。
これらの工程を採用することにより、より効率よくフィラーの加熱処理を行うことができる。
【0011】
第5の発明は、上記工程Xにおいて使用される、硬化性樹脂組成物に配合される液状成分が、硬化性樹脂(B)であることを特徴とする、第4の発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。また、第6の発明は、上記工程Yの後に、さらに下記の工程Zを経ることを特徴とする、第4又は第5の発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
工程Z:工程Yで加熱処理されたペースト状スラリーに、硬化性樹脂(A)及び硬化促進剤(D)を配合する工程。
このような工程を採用することによって、さらに簡便に効率よくフィラーの加熱処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法は、比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0014】
[硬化性樹脂組成物の製造方法について]
本発明における硬化性樹脂の製造方法は、それぞれ後述する硬化性樹脂(A)、硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、フィラーを加熱処理することを特徴とするものである。フィラー(C)が、加熱処理されていることにより、得られる硬化性樹脂組成物の製造時及び貯蔵時の安定性が高くなる。
【0015】
フィラー(C)の加熱処理の条件としては、80〜180℃で10分〜7日間加熱処理するのが好ましく、90〜160℃で10分〜5日間加熱処理するのがより好ましく、100〜140℃で10分〜3日間加熱処理するのが特に好ましく、110〜130℃で10分〜24時間加熱処理するのが最も好ましい。加熱処理温度が80℃を下回ると、製造安定性を確保するための加熱処理時間が長期間かかる場合があり、加熱処理温度が180℃を上回ると、フィラーの種類によってはフィラー同士が擬凝集してフィラー本来の特性が失われる場合がある。また、加熱処理時間が10分を下回ると、製造時の安定性の向上が不十分である場合があり、加熱処理時間が7日間を上回ると、製造コストがかかってしまうため産業上好ましくない。加熱処理されたフィラー(C)を用いることで製造時及び貯蔵時の安定性が向上する理由としては、フィラー中に存在する微量の活性成分が失活すること、及び、フィラーの含水量が減少することなどが考えられる。
【0016】
また、フィラー(C)の加熱処理の条件としては、減圧下で加熱処理するのも好ましい。減圧下で加熱処理することにより、より効率的に製造時及び貯蔵時の安定性を向上させることができる。フィラー(C)の減圧下での加熱処理における減圧度としては、100mmHg以下であるのが好ましく、80mmHg以下であるのがより好ましく、60mmHg以下であるのが特に好ましく、40mmHg以下であるのが最も好ましい。減圧度が100mmHgを上回ると、減圧により製造安定性が向上する効果が十分発揮されない場合がある。
【0017】
さらに、フィラー(C)の加熱処理の方法としては、フィラーを撹拌しながら加熱処理することで、より効果的に処理することができる。その際、フィラー単独で撹拌加熱処理(又は減圧下で撹拌加熱処理)してもよいし、硬化性樹脂に配合される液状成分にフィラーを分散させたうえで撹拌加熱処理(又は減圧下で撹拌加熱処理)してもよい。なかでも、より効率的に加熱処理を行うことができるため、フィラー(C)の加熱工程が、下記の工程X及びYを経るものであることが好ましい。
工程X:硬化性樹脂組成物に配合される液状成分と、フィラー(C)とを混合撹拌し、ペースト状スラリーを調製する工程。
工程Y:上記ペースト状スラリーを、80〜180℃で10分〜7日間及び/又は100mmHg以下の減圧下で加熱処理する工程。
【0018】
[工程Xについて]
上記工程Xは、通常、硬化性樹脂組成物を得るために配合すべき硬化性樹脂をはじめとした可塑剤等の種々の液状成分と、フィラー(C)とを混合撹拌し、これら液状成分にフィラーを予め分散させたペースト状スラリーを調製する工程である。用いることができる液状成分については後述する。
【0019】
[工程Yについて]
上記工程Yは、上記工程Xで得られた上記ペースト状スラリーを、80〜180℃で10分〜7日間及び/又は100mmHg以下の減圧下で加熱処理する工程である。フィラー(C)を液状成分に分散させ、ペースト状スラリーとしているので、装置内で撹拌にともなってフィラーが舞い上がったりすることなく、フィラーの加熱処理をより効率的に行うことができる。
【0020】
[液状成分について]
上記工程Xで用いることができる液状成分としては、本発明に係る硬化性樹脂組成物に配合されるべき液状成分(原料)であれば特に限定されないが、該液状成分(原料)の主成分の沸点が200℃以上のものであって、なおかつ加熱処理しても化学的・物理的に変化しにくいものであることが好ましい。沸点が200℃以下であると、加熱処理する際に気化する成分が多くなり好ましくない。加熱硬化型樹脂のような加熱により硬化してしまうものや、熱潜在性硬化剤のような加熱により分解してしまうものは、加熱処理することで当該液状成分(原料)本来の性質が失われてしまうため好ましくない。
【0021】
上記液状成分の具体例としては、後述する硬化性樹脂(B)や沸点200℃以上の可塑剤等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記液体成分を、フィラー(C)の加熱処理に使用する場合は、1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。つまり、硬化性樹脂(B)と沸点200℃以上の可塑剤とが配合される場合を例にとると、硬化性樹脂(B)とフィラー、沸点200℃以上の可塑剤とフィラーの組み合わせだけでなく、硬化性樹脂(B)と沸点200℃以上の可塑剤とフィラーとを全て又はその一部を混合して、撹拌加熱処理(又は減圧下で撹拌加熱処理)してもよい。
【0022】
本発明における硬化性樹脂(B)は、主鎖骨格が有機重合体であるため実質的に沸騰せず、なおかつ熱により硬化あるいは分解するものではないため、フィラー(C)の加熱処理に好適に用いることができる。また、上記可塑剤は、本発明において必須成分ではないが、硬化物が柔軟な硬化性樹脂組成物を調製する場合に配合することがある。例えば、建築用シーリング材や、高いはく離接着強さが求められる接着剤などを調製する際に用いられる。上記可塑剤は粘度が低い液状成分(原料)であるため、フィラー(C)の加熱処理に好適に用いることができる。上記可塑剤としては、フタル酸エステル系化合物、アルキルスルホン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、炭化水素系化合物、アクリル系液状樹脂、液状ポリオール化合物及びそれらから誘導される液状ポリマー等から選択された1種以上の化合物等が利用できる。
【0023】
上記フタル酸エステル系化合物としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等が挙げられる。
【0024】
上記アルキルスルホン酸エステル化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸フェニルエステル(製品名:メザモール、バイエルケミカルズジャパン社製)、デカンスルホン酸フェニルエステル、ウンデカンスルホン酸フェニルエステル、ドデカンスルホン酸フェニルエステル、トリデカンスルホン酸フェニルエステル、テトラデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸クレジルエステル、ヘキサデカンスルホン酸フェニルエステル、ヘプタデカンスルホン酸フェニルエステル、オクタデカンスルホン酸フェニルエステル、ノナデカンスルホン酸フェニルエステル、イコサンデシルスルホン酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0025】
上記アジピン酸エステル系化合物として例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0026】
上記炭化水素系化合物としては、パラフィン系、ポリオレフィン系、ナフテン系、アロマ系等が挙げられる。構造的には、直鎖状でも分岐があってもよい。具体的な製品名として、出光興産社製のダイアナプロセスオイルPWシリーズ、PSシリーズ、NPシリーズ、NRシリーズ、NSシリーズ、NMシリーズ、ACシリーズ、AHシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
上記アクリル系液状樹脂としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等であり、例えば、アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体及び、その共重合体である。具体的な製品名として、東亞合成株式会社製アルフォンUP−1000シリーズ、UF−5000シリーズ、US−6000シリーズ、綜研化学株式会社製アクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0028】
上記液状ポリオール化合物及びそれらから誘導される液状ポリマーとしては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格、ポリビニル骨格、ポリアクリル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格等の従来公知の主鎖構造を1種又は2種以上有する液状ポリオール化合物、及び、それら液状ポリオール化合物の分子内にある水酸基の水素原子をアルキル基等の有機基に置換してエーテル化した液状化合物、水酸基に対してカルボン酸を反応させエステル化した液状化合物、水酸基に対してイソシアネート化合物を反応させウレタン化した液状化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記液状ポリオール化合物のなかでは、ポリエーテル骨格を有するポリオール液状化合物、及び、ポリアクリル骨格を有する液状ポリオール化合物が好適に用いられる。
【0029】
上記ポリエーテル骨格を有するポリオール液状化合物としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)の共重合体等が例示される。具体的な製品名としては、旭硝子株式会社製のエクセノール2020、プレミノールS4006、三井化学株式会社製D−2000、D−4000、株式会社ADEKA製アデカポリエーテルPR−3007、BPX−33、三洋化成工業株式会社製のサンフレックスSPX−80等が挙げられる。
【0030】
上記可塑剤のなかでは、分子内に水酸基を有さない化合物である可塑剤が好ましい。分子内に水酸基を有する可塑剤でも、本発明にかかる製造時の安定性が高い硬化性樹脂組成物を得る効果は発現されるが、配合の組み合わせによっては、長期貯蔵中に硬化が遅くなる場合がある。
【0031】
本発明の製造方法で調製される硬化性樹脂組成物に、上記可塑剤を配合する場合、その配合量は求められる性能に応じて適宜選択すれば良いが、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の総和100質量部に対して、500質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、150質量部以下が特に好ましく、50質量部以下が最も好ましい。500質量部よりも多くなると、相対的に硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の配合割合が少なくなり硬化物の物性が低下する等の不具合が起こる場合がある。
【0032】
[工程Zについて]
さらに、本発明においては、上記工程Xにおいて使用される液状成分が硬化性樹脂(B)である場合には、上記工程Yの後に、さらに下記の工程Zを経ると、より簡便に効率よく硬化性樹脂組成物を製造できることから特に好ましい。
工程Z:工程Yで加熱処理されたペースト状スラリーに、硬化性樹脂(A)及び硬化促進剤(D)を配合する工程。
【0033】
上述した既出願(特願2008−187669及び特願2009−113928)の明細書中でも述べられているが、本発明における硬化性樹脂組成物の系においては、硬化性樹脂(A)はそれ自体が硬化するとともに、硬化性樹脂(B)の硬化速度をも引き上げる働きをしている。また、硬化促進剤(D)は、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)の硬化速度を向上させる働きをするものである。したがって、系の安定性を低下させる要因となり得る硬化性樹脂(A)及び硬化促進剤(D)が存在しない状態で、フィラーを工程X及び工程Yを経て加熱処理し、ここに硬化性樹脂(A)及び硬化促進剤(D)を配合して硬化性樹脂組成物を得ることは、一連の流れの中で簡便かつ効率的に硬化性樹脂組成物を製造できる合理的な方法である。
【0034】
[硬化性樹脂組成物について]
本発明の製造方法で製造される硬化性樹脂組成物について説明する。当該硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)、硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物である(各成分については後述する)。
【0035】
[硬化性樹脂(A)について]
本発明における硬化性樹脂(A)は、架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂である。珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する架橋性珪素基は、その架橋活性が高いため、硬化性樹脂(A)は、硬化促進活性は非常に高いが毒性に関する懸念がある有機錫化合物を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量(硬化性樹脂組成物全質量部に対して1000ppm未満)でも、十分な硬化性を発現する。なお、硬化性樹脂(A)中の架橋性珪素基としては、硬化性の観点では、従来公知の加水分解性基である、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、ハロゲン基などを有する架橋性珪素基が利用できるが、これらの中でも、高反応性及び低臭性などの点から、アルコキシ基が最も好適に用いられる。
【0036】
また、硬化性樹脂(A)は、分子内に下記一般式(1)で表される架橋性珪素基含有官能基を有する硬化性樹脂が好適に用いられる。
−A−CH−SiR3−a(OR ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、aは1、2又は3を、それぞれ示す)
本発明では、上記一般式(1)で表されるような化学構造を「α−シラン構造」と表記する。α−シラン構造を選択することにより通常の架橋性珪素基よりも極めて高い湿分反応性を示すため、有機錫化合物を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量(硬化性樹脂組成物全質量部に対して1000ppm未満)でも十分な硬化速度を得ることができるのである。
【0037】
上記ヘテロ原子は、非共有電子対を有する原子であれば特に限定されないが、特に求核性の高い原子や電気陰性度の高い原子が好ましい。なかでも、原料の入手のしやすさや合成の容易さから、窒素(N)原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子、ハロゲン(I、Br、Cl、F)原子であるのが好ましく、各種性能のバランスから、窒素(N)原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子であるのがより好ましく、硬化性の高さから、窒素(N)原子であるのが特に好ましい。ヘテロ原子が、求核性の高い原子や電気陰性度の高い原子であると、通常の架橋性珪素基よりも極めて高い湿分反応性を示す理由は定かではないが、求核性の高い原子の場合は、その高求核性原子が近接する珪素原子に相互作用することにより珪素原子の反応性が高まることが、電気陰性度の高い原子の場合は、その高電気陰性度原子の効果で隣接する炭素原子を介して珪素原子から電子が流れることにより珪素原子の反応性が高まることが、要因であると推察される。
硬化性樹脂(A)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0038】
硬化性樹脂(A)について、分子内に上記一般式(1)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂を代表例として、詳細に説明する。該架橋性珪素基は、珪素原子にメチレン基を介して非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基が結合している。ここで、結合官能基とは、架橋性珪素基と主鎖をつなぐ構造であり、架橋性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合していれば特に制限されないが、(チオ)ウレタン基,アロファネート基,その他のN−置換ウレタン基,N−置換アロファネート基等の(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア基,ビウレット基,それ以外のN−置換ウレア基,N,N′−置換ウレア基、N−置換ビウレット基,N,N′−置換ビウレット基等の(チオ)ウレア基由来の結合基、アミド基、N−置換アミド基等のアミド基由来の結合基、イミノ基由来の結合基に代表される含窒素特性基や、(チオ)エステル基、(チオ)エーテル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、硬化性の高さから含窒素特性基が好ましく、合成の容易さから、(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア由来の結合基がより好ましい。ここで上述の「(チオ)」とは、各結合基中の酸素原子のうち1個以上が硫黄原子となった基を意味する。一例を挙げると、「(チオ)ウレタン基」とは、ウレタン基[−NH−C(=O)O−]及びチオウレタン基[−NH−C(=S)O−、−NH−C(=O)S−又は−NH−C(=S)S−]の総称として表記している。また、上述の「N−置換」とは、各結合基中の窒素原子に結合する水素原子が他の有機基に置換されている基を意味する。一例を挙げると、「N−置換ウレタン基」とは、化学式−NR−C(=O)O−(ここでのRは有機基を意味する)という結合基を意味するものである。
【0039】
また、当該珪素原子については、メチレン基との結合手以外に、加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合しているものである。ここで、Rは、例えば、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基等のアルコキシアルキル基が含まれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基(−O−CHCH−O−C)、フェノキシ基であるのが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0040】
また、硬化性樹脂(A)の架橋性珪素基に結合する加水分解性基の数は、各々の硬化性樹脂組成物に求められる性能によって、適宜比率を調整すればよく、例えば、速硬化性や高モジュラス性を付与したい場合には、トリアルコキシ(a=3)やジアルコキシ(a=2)が好適に用いられ、長い可使時間や低モジュラス性を付与したい場合には、ジアルコキシ(a=2)やモノアルコキシ(a=1)が好適に用いられる。これらのなかでは、ジアルコキシ(a=2)が、入手が容易であること、及び、硬化性と硬化物モジュラスのバランスが優れているため好ましい。
【0041】
硬化性樹脂(A)の主鎖骨格としては、従来公知の有機重合体の主鎖骨格を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用できる。これらのなかでは、本質的にポリオキシアルキレンあるいはビニル重合体であることが、入手の容易さ、合成の容易さの点からより好ましく、ポリオキシアルキレンであることが硬化物の皮膜物性のバランス等から特に好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(A)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(A)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0042】
硬化性樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、数平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、1,500〜100,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が200,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0043】
硬化性樹脂(A)を得るためには、従来公知の方法で合成を行えばよい。例えば、(1)ポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法、(2)ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させイソシアネート基末端ポリマーを合成した後、該イソシアネート基末端ポリマーにメルカプトメチルアルコキシシラン化合物あるいはアミノメチルアルコキシシラン化合物等のアルコキシシリル基の珪素原子のα位炭素に活性水素基を有するヘテロ原子が結合している化合物を反応させる方法、(3)分子内に二重結合基を有する有機重合体にメルカプトメチルアルコキシシランをラジカル付加させる方法、(4)珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する構造をもつ架橋性珪素基を有する重合性ビニル系化合物を単独もしくはその他の重合性ビニル系化合物と共重合させる方法、(5)分子内に二重結合基を有する有機重合体に対して、珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する構造を有する有機基及び水素原子が少なくとも結合したシラン化合物をヒドロシリル化反応により付加反応させる方法等が知られている。
【0044】
なお、ここではトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシシラン、ジアルキルアルコキシシシランを総称して「アルコキシシラン」と表記している。該アミノメチルアルコキシシラン化合物のアミノ基は、第1級アミノ基であっても第2級アミノ基であってもよいが、第2級アミノ基であるほうが、硬化性樹脂(A)の粘度が比較的低粘度に調製できるため好ましい。なお、第2級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物は、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物から誘導することもできる。具体的には、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物と、α,β−不飽和カルボニル化合物あるいはアクリロニトリル化合物等のアミノ基と共役付加反応を起こす官能基を有する化合物とを反応させる方法などが挙げられる。さらに、特表2004−518801、特表2004−536957、特表2005−501146、WO2010/004948等に記載の方法で容易に合成できる。
【0045】
上記イソシアネート基末端ポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることで合成できる。該ポリオール化合物として、上記の主鎖骨格を有するポリオール化合物を選択すればよく、ポリイソシアネート化合物として、従来公知のポリイソシアネート化合物を用いればよい。また、上記イソシアネート基末端ポリマーを合成する際、原料となるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0046】
上記ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格、ポリビニル骨格、ポリアクリル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格等の従来公知の主鎖構造を1種又は2種以上有するポリオール化合物が例示される。この他、ポリシロキサン骨格を有するポリオールや、フッ素原子、珪素原子、硫黄原子又はロジン骨格を有する有機基を含有するポリオール化合物が挙げられ、使用目的や求められる性能に応じて、適宜ポリオール化合物を単独あるいは複数混合して用いればよい。分子1個あたりの平均水酸基数は、1.1以上であるものが好ましく、1.3以上であるものがより好ましく、1.5以上のものが特に好ましいが、物性調整等のため1.1未満のものも必要に応じて使用できる。
【0047】
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレン等の単独重合体、並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた1種又は2種以上のモノエポキシド及び/又は環状エーテルを開環共重合させてなる共重合体が例示される。
【0048】
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールの市販品としては、株式会社ADEKA製P−2000、P−3000、PR−3007、PR−5007等、旭硝子株式会社製エクセノール2020、エクセノール510、PMLS4012、PMLS4015、PMLS3011等、三井化学株式会社製D−1000、D−2000、D−4000、T−5000等、住化バイエルウレタン株式会社製スミフェン3600、スミフェン3700、保土谷化学工業株式会社製PTG−2000、PTG−L2000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0049】
上記ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸類の1種又は2種以上と、ジオール類の1種又は2種以上とを重縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、バレロラクトン等の環状エステル類の1種又は2種以上を開環重合させてなる開環重合物、活性水素を2個以上有するひまし油等のひまし油誘導体化合物が例示される。市販品としては、株式会社ADEKA製NS−2400、川崎化成工業株式会社製FSK−2000、マキシモールRDK−133、豊国製油株式会社製HS 2N−220S、伊藤製油株式会社製URIC PH−5001等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0050】
上記ポリカーボネート骨格を有するポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから誘導されるポリカーボネート骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、日本ポリウレタン工業株式会社製ニッポラン971、ニッポラン965、ニッポラン963、旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノールT5652、デュラノールT5650J、デュラノールT4672、デュラノールTG3452等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0051】
上記ポリオレフィン骨格を有するポリオールとしては、水添ポリブタジエン骨格を有するポリオール、エチレン・α−オレフィン骨格を有するポリオール、ポリイソブチレン骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、三菱化学株式会社製ポリテールH、ポリテールHA、日本曹達製GI−1000、GI−2000(以上、いずれも商品名)等が例示される。
【0052】
上記ポリビニル骨格を有するポリオール又はポリアクリル骨格を有するポリオールとしては、ビニルエーテル化合物やアクリル化合物等に代表されるビニル重合性モノマーと、水酸基を有するビニル重合性モノマーを共重合させたポリオール化合物等が例示される。市販品としては、東亞合成株式会社製アルフォンUH−2000、UH−2032等、綜研化学株式会社製アクトフローUT−1001、UMB−2005、UME−2005等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0053】
上記ポリブタジエン骨格又はポリイソプレン骨格を有するポリオールとしては、ブタジエンやイソプレン等に代表されるジエン系モノマーを重合して得られる化合物等が例示される。市販品としては、出光興産株式会社製Poly bd R−15HT、Poly bd R−45HT、Poly ip、クレイソールLBH2000、LBH−P3000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0054】
また、複数の骨格を有するポリオール化合物としては、1分子中にポリエーテル骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリカーボネート骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリエーテル骨格とポリアクリル骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、旭硝子株式会社製商品名アドバノールシリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製商品名ニッポラン982R等が例示される。
【0055】
上記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。以下に、それらの具体例を挙げる。
脂肪族ジイソシアネート化合物:トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等。
脂環式ジイソシアネート化合物:1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物:1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はそれらの混合物、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−若しくは1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン又はそれらの混合物等。
芳香族ジイソシアネート化合物:m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等。
脂肪族ポリイソシアネート化合物:リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等。
脂環式ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3−イソシアネート−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等。
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等。
芳香族ポリイソシアネート化合物:トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4′−ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等。
その他のポリイソシアネート化合物:フェニルジイソチオシアネート等硫黄原子を含むジイソシアネート類等。
【0056】
上記ポリイソシアネート化合物は、使用目的や求められる性能に応じて、適宜単独あるいは複数混合して用いればよい。また、物性調整等のため、上に例示した多量体(例えば、二量体、三量体)や、モノイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0057】
硬化性樹脂(A)の市販品としては、GENIOSIL STP−E10(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約10,000、粘度約10,000mPa・s/25℃(カタログ値))、GENIOSIL STP−E30(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約16,000、粘度約30,000mPa・s/25℃(カタログ値))等が挙げられる。該STP−E10及び該STP−E30の架橋性珪素基の構造は、下記一般式(2)で示され、主鎖構造はポリオキシプロピレンである。
−O−CO−NH−CH−SiCH(OCH ・・・式(2)
硬化性樹脂(A)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0058】
[硬化性樹脂(B)について]
本発明における硬化性樹脂(B)は、珪素原子に炭素数2以上のアルキレン基が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂である。本発明においては、硬化性樹脂(B)が含有されると、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上するうえ、硬化性樹脂(A)単独より、最終硬化物の皮膜物性の調整等が容易になる。
【0059】
なお、硬化性樹脂(B)中の架橋性珪素基としては、硬化性の観点では、従来公知の加水分解性基である、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、ハロゲン基などを有する架橋性珪素基が利用できるが、これらの中でも、高反応性及び低臭性などの点から、アルコキシ基が最も好適に用いられる。
硬化性樹脂(B)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0060】
また、硬化性樹脂(B)は、分子内に下記一般式(3)で表される架橋性珪素基含有官能基を有する硬化性樹脂が好適に用いられる。
−X−SiR3−b(OR ・・・式(3)
(但し、Xは炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、bは1、2又は3を、それぞれ示す)
以下、硬化性樹脂(B)について、分子内に上記一般式(3)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂を代表例として、詳細に説明する。該架橋性珪素基中の珪素原子には、炭素数2〜20の炭化水素基(X)が結合し、さらに該炭化水素基は、主骨格に結合している。なお、炭化水素基(X)と主鎖骨格との間に後述する含窒素特性基が存在していてもよい。
【0061】
また、当該珪素原子については、炭素数2〜20の炭化水素基との結合手以外に、加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合しているものである。ここで、Rは、例えば、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基等のアルコキシアルキル基が含まれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基(−O−CHCH−O−C)、フェノキシ基であるのが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0062】
また、硬化性樹脂(B)の架橋性珪素基に結合する加水分解性基の数は、各々の硬化性樹脂組成物に求められる性能によって、適宜比率を調整すればよく、例えば、速硬化性や高モジュラス性を付与したい場合には、トリアルコキシ(b=3)やジアルコキシ(b=2)が好適に用いられ、長い可使時間や低モジュラス性を付与したい場合には、ジアルコキシ(b=2)やモノアルコキシ(b=1)が好適に用いられる。これらのなかでは、ジアルコキシ(b=2)が、入手が容易であること、及び、硬化性と硬化物モジュラスのバランスが優れているため好ましい。
【0063】
硬化性樹脂(B)の主鎖骨格としては、従来公知の有機重合体の主鎖骨格を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用できる。これらのなかでは、本質的にポリオキシアルキレンあるいはビニル重合体であることが、入手の容易さ、合成の容易さの点からより好ましく、ポリオキシアルキレンであることが硬化物の皮膜物性のバランス等から特に好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(B)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(B)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0064】
硬化性樹脂(B)としては、分子内に含窒素特性基等の極性基を有する硬化性樹脂を用いることもできる。上記含窒素特性基の具体例としては、(チオ)ウレタン基,アロファネート基,その他のN−置換ウレタン基,N−置換アロファネート基等の(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア基,ビウレット基,それ以外のN−置換ウレア基,N,N’−置換ウレア基、N−置換ビウレット基,N,N’−置換ビウレット基等の(チオ)ウレア基由来の結合基、アミド基、N−置換アミド基等のアミド基由来の結合基、イミノ基由来の結合基に代表される含窒素特性基や、(チオ)エステル基、(チオ)エーテル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、硬化性の高さから含窒素特性基が好ましく、合成の容易さから、(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア由来の結合基がより好ましい。また、該含窒素特性基は、上記硬化性樹脂(B)中に1個だけ含まれていてもよく、さらに1種又は2種以上の含窒素特性基が複数含まれていてもよい。ここで「(チオ)」及び「N−置換」の表記は上記と同様である。
【0065】
硬化性樹脂(B)中に上記含窒素特性基等の極性基が含まれると、硬化物の強靱性が向上するうえ、硬化性及び接着強さが高まる。特に、上記架橋性珪素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、より硬化性が高まる。その理由としては、該含窒素特性基の極性基同士が、水素結合等の相互作用により強く引き合うことが挙げられる。該含窒素特性基の極性基同士が強く引き合うことにより、硬化性樹脂の分子同士も強く結びつく(ドメイン形成する)ことで硬化物に強靱性が発現すると考えられるのである。また、上記架橋性珪素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、該含窒素特性基同士ドメイン形成に際し、それに伴って該架橋性珪素基同士も近接することによって、該架橋性珪素基同士の接触確率も向上し、さらに、該含窒素特性基中の極性基による触媒硬化によって該架橋性珪素基同士の縮合反応性が向上することが考えられる。
【0066】
硬化性樹脂(B)の分子量は特に制限されないが、数平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、1,500〜100,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が200,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0067】
硬化性樹脂(B)の合成方法としては、硬化性樹脂(A)と同様に、従来公知の方法を用いればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。これらのなかでは、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法が、原料選択の幅が広いため好ましい。また、アミノ基含有アルコキシシラン化合物は、そのアミノ基が第2級アミノ基である第2級アミノシラン化合物であることが、低粘度の硬化性樹脂(B)が調製できるため好ましい。該第2級アミノシラン化合物は、分子内に第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物(第1級アミノシラン化合物)から誘導することができる。例えば、アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,マレイン酸エステル化合物等のα,β−不飽和カルボニル化合物や、アクリロニトリル等に、該第1級アミノシラン化合物を共役付加させる方法などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0068】
硬化性樹脂(B)の配合量は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、10〜900質量部が好ましく、20〜700質量部がより好ましく、30〜500質量部が特に好ましく、40〜300質量部が最も好ましい。10質量部を下回ると、製造安定性が十分取れない場合があり、900質量部を上回ると、硬化性樹脂(A)の効果が薄れ硬化性が低下してしまう場合がある。
【0069】
硬化性樹脂(B)は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスター(ES)シリーズ、Wacker Chemie AG製のGENIOSIL STP−E15、GENIOSIL STP−E35、デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亞合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0070】
[フィラー(C)について]
本発明におけるフィラー(C)は、加熱処理されたフィラーである。フィラー(C)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、特に限定されず、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。フィラー(C)の成分の具体例としては、例えば、無機系フィラーとして、炭酸カルシウム系粉体、炭酸マグネシウム系粉体、クレー系粉体、タルク系粉体、カオリン系粉体、シリカ系粉体、フュームドシリカ系粉体、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系粉体、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュ等の無機中空粉体、針状結晶状粉体、カーボンブラック、酸化チタン系粉体等が、有機系粉体として、有機高分子系粉体、プラスチックバルーン系粉体等が、その他のフィラーとしてフィブリル化繊維等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
また、フィラー(C)は表面処理されていてもよく、上記に例示したフィラーを表面処理したものを好適に用いることができる。表面処理されていることで、硬化性樹脂組成物の作業性が向上する場合がある。その表面処理剤としては、従来公知の表面処理剤が利用できるが、具体的には、パルミチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等に代表される脂肪酸や不飽和脂肪酸、及び、ロジン酸系化合物等のカルボン酸及びそのエステル、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を有するシランカップリング剤等のシラン化合物、チタンカップリング剤等のチタン化合物、アルミニウムカップリング剤等のアルミニウム化合物、ジルコニウムカップリング剤等のジルコニウム化合物、シリコーンオイル系化合物、パラフィン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0072】
これらのなかでは、炭酸カルシウム系粉体、表面処理炭酸カルシウム系粉体、クレー系粉体、表面処理クレー系粉体、シリカ系粉体、表面処理シリカ系粉体等が、作業性と補強硬化のバランスがよく好適に用いられる。炭酸カルシウム系粉体及び表面処理炭酸カルシウム系粉体としては、重質炭酸カルシウム系粉体、軽質炭酸カルシウム系粉体、膠質炭酸カルシウム系粉体、及びそれらを表面処理した粉体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例えば、硬化性樹脂組成物の粘度を低くしたい場合は、粒径が比較的大きい重質炭酸カルシウム系粉体及びその表面処理粉体が好適に用いられ、配合物の粘度を上げてより揺変性を付与したい場合は、粒径が比較的小さい膠質炭酸カルシウム系粉体及びその表面処理粉体が好適に用いられる。
【0073】
上記炭酸カルシウム系粉体は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、08重炭、R重炭、スーパーS、スーパー#1500、スーパー#2300、ナノックス30、カルテックス5(以上、丸尾カルシウム株式会社製商品名)、BF−300、ホワイトンB、ソフトン2200(以上、白石カルシウム株式会社製商品名)、SS#30、NN#500、NN#200、NS#100、NS#400、NS#2300、NITOREX30P、NITOREX#80(以上、日東粉化工業株式会社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0074】
上記表面処理炭酸カルシウム系粉体は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、カルファイン200、カルファイン200M、カルファインN−350、カルファイン500、カルファインN−40、シーレッツ200、MS−100M、ナノコートS−25、ナノコートS−30、MCコートS−10、MCコートP−10(以上、丸尾カルシウム社製商品名)や、VIGOT−10、VIGOT−15、白艶華CC、白艶華CC−R、白艶華CCR−B、白艶華CCR−S、白艶華CCR−S10、ビスコエクセル30、ビスコエクセル30−K、ホモカルD、ACTIFORT−700、SL−101、ライトンS−4(以上、白石カルシウム社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
上記シリカ系粉体及び表面処理シリカ系粉体としては、親水性シリカ系粉体、疎水性シリカ系粉体、溶融石英ガラス系粉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでは、特に、疎水性シリカ系粉体が好ましい。上記疎水性シリカ系粉体としては、例えば、接着剤その他で揺変剤として多く用いられているヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)やシリカエアロゲル等のシリカ系粉体を有機珪素化合物、例えばジメチルジクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルシロキサン、トリメトキシオクチルシラン等で処理し、疎水性としたものが使用できるが、特に煙霧質シリカをヘキサメチルジシラザンで処理したもの並びにシリカエアロゲルをジメチルシロキサン及び/又はヘキサメチルジシラザンで処理したものが好ましい。
【0076】
上記溶融石英ガラス系粉体としては、二酸化ケイ素含有量が99.8%以上で、アルカリ金属他の不純物の極めて少ないものが好ましい。溶融石英ガラス粉体は、そのまま使用してもよく、表面処理剤で表面処理したものを使用してもよい。
【0077】
上記有機高分子系粉体としては、ポリエステル系粉体、ポリカーボネート系粉体、ウレタン樹脂系粉体、ポリメチルシルセスキオキサン系粉体、アクリル樹脂系粉体、スチレン樹脂系粉体、塩化ビニル樹脂系粉体等のビニル樹脂系粉体、SBR系粉体、クロロプレン系粉体、NBR系粉体、アクリルゴム系粉体等のゴム系粉体、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系粉体、シリコーン系粉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
上記フィブリル化繊維としては、フィブリル化した芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリロニトリル繊維等が挙げられ、平均繊維長さが0.1〜5mm程度のものが好ましい。又、上記フィブリル化繊維よりもフィブリル化が低い低フィブリル化繊維も上記フィブリル化繊維と組み合わせて用いることができる。フィブリル化が低いとは、幹繊維の単位長さあたりにおいて、ヒゲ状の分岐が少ないことを意味する。低フィブリル化繊維としては、フィブリル化又は非フィブリル化したポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の他、セピオライト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0079】
フィラー(C)の平均粒子径は、求められる性能に応じて適宜選択すれば良く特に限定されないが、1nm〜400μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、60nm〜50μmが特に好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。フィラー(C)の平均粒子径が10nmを下回ると、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎる場合があり、400μmを上回ると、意匠性が損なわれる場合がある。また、平均粒子径の概念がない上記針状結晶状粉体や上記フィブリル化繊維等のフィラーの場合は、長辺の長さが、100nm〜4mmが好ましく、500nm〜2mmがより好ましく、0.1μm〜200μmが特に好ましく、1μm〜100μmが最も好ましい。
【0080】
フィラー(C)の配合量は、フィラー粒子の大きさなどによって最適な配合量が変わるため、求められる性能に応じて適宜選択すれば良いが、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)の総和100質量部に対して、1.0〜1,000質量部が好ましく、10〜600質量部がより好ましく、20〜400質量部が特に好ましく、40〜200質量部が最も好ましい。フィラー(C)の配合量が、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)の総和100質量部に対して1質量部を下回ると、補強効果が十分ではない場合があり、1,000質量部を上回ると、硬化物が脆くなったり粘度が上がりすぎたりする場合がある。特に、平均粒子径が100nm以下の場合、配合量に対する粘度の増加が大きいことから比較的少量の配合量になり、また、平均粒子径が10μm以上の場合、配合量に対する粘度の増加が小さいことから比較的多量の配合量になる。その他、表面処理の有無によっても最適な配合量は影響を受ける。
【0081】
[硬化促進剤(D)について]
本発明における硬化促進剤(D)は、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)の硬化を促進する化合物である。硬化促進剤(D)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0082】
硬化促進剤(D)の具体例としては、従来公知のカルボン酸,リン酸,各種ルイス酸等の酸性化合物及びその塩、アミンやホスファゼン等の塩基性化合物及びその塩、非錫系有機金属化合物、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260933号公報で提案されている多価フルオロ化合物のアルカリ金属塩、フルオロシラン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記ルイス酸としては、金属ハロゲン化物、ハロゲン化ホウ素化合物等が挙げられる。これらのなかでは、塩基性化合物、非錫系有機金属化合物、ハロゲン化ホウ素化合物が、その活性の高さから好適に用いられる。なお、安全性の問題から有機錫化合物は使用しないのが好ましい。但し、用途に応じて有機錫化合物も硬化触媒として利用することができる。その場合、オクチル錫化合物やカルボン酸錫化合物が、トリブチル錫誘導体を含まないため好ましい。
【0083】
上記塩基性化合物としては、アミン化合物が好適に用いられる。該アミン化合物は、分子内に少なくとも第一級アミノ基、第二級アミノ基、又は第三級アミノ基を有する化合物である。該アミン化合物は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0084】
上記アミン化合物の具体例としては、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等の第一級アミン化合物、ジn−ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ピペリジン等の第二級アミン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の第三級アミン化合物、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、N,N′−ジフェニルグアニジン、1−フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン化合物、ピリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等の環状アミン化合物、HN(CNH)nH(n≧1)で表わされる化合物、ハンツマン社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシアルキレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記のアミン化合物における第一級アミノ基含有化合物とケトン類との反応生成物であるケチミン化合物、第一級アミノ基含有化合物とアルデヒド類との反応生成物であるアルジミン化合物、β−アミノアルコール化合物とケトン類との反応生成物であるオキサゾリジン化合物も使用することができる。
これらの化合物の中では、助触媒的な効果が高い1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の環状アミン化合物が好ましく、さらに液状であることから1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンがより好ましい。
【0085】
また、硬化促進剤(D)として、分子内に1個以上のアミノ基と1個以上の架橋性珪素基を有するアミノシラン化合物を利用することができる。該アミノシラン化合物の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等の第2級アミノ基含有アミノシラン化合物、分子内にイミダゾール基及び反応性珪素基を有するイミダゾールシラン化合物等の第3級アミノ基を有するアミノシラン、下記一般式(4)で示される化合物、下記一般式(5)で示される化合物、水と反応して第1級アミノ基を生成する官能基を有するケチミンシラン化合物(3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等)あるいはアルジミンシラン化合物、及びこれらアミノシラン化合物のシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物(例えば、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)、DYNASYLAN1146(エボニックデグサ社製商品名))等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
N−R−SiR3−c(OR ・・・式(4)
(但し、R、Rは分子量500以下の有機基又は水素原子を、Rは分子量500以下の有機基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、cは1、2又は3を、それぞれ示す)
N−R10−NH−R11−SiR123−d(OR13 ・・・式(5)
(但し、R10は分子量300以下の有機基を、R11は炭素数1〜12の炭化水素基を、R12は炭素数1〜20の炭化水素基を、R13は分子量300以下の有機基を、dは1、2又は3を、それぞれ示す)
一般的にアミノシラン化合物は、金属材料に対する接着性付与剤として機能するため、本発明において上記アミノシラン化合物は、硬化促進剤兼接着性付与剤として活用することができる。
【0086】
上記非錫系有機金属化合物としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物、遷移金属系金属元素(例えば、第3族の希土類系金属元素、第4族のチタン族系金属元素、第5族のバナジウム族系金属元素、第6族のクロム族系金属元素、第7族のマンガン族系金属元素、第8族の鉄族系金属元素、第9族系金属元素、第10族の白金族系金属元素、第11族の銅族系金属元素)を主体とする化合物、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記非錫系有機金属化合物は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0087】
上記非錫系有機金属化合物は、アルコキサイド、カルボキシラート、キレート等の構造を取ることによって、触媒としての活性も高まるうえ、各硬化性樹脂との相溶性が高まり、効果的に硬化促進能が発現される。上記非錫系有機金属化合物は、一つの化合物中に、アルコキサイド、カルボキシラート、キレート等の構造がそれぞれ単独で存在してもよいし、複数の構造が混在してもよい。さらに、例えばアルコキサイドを例に取ると、複数のアルコキサイド構造(例えば、メトキサイド構造とブトキサイド構造等)が混在してもよく、カルボキシラート、キレート等の構造においても、種々の構造が複数混在してもよい。
【0088】
上記アルコキサイド構造としては、メトキサイド、エトキシサイド、ノルマルプロポキサイド、イソプロポキサイド、ノルマルブトキサイド、s−ブトキサイド、イソブトキサイド、t−ブトキサイド等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記カルボキシラート構造としては、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ドデカン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらに、キレート構造としては、アセチルアセトナト錯体、アセト酢酸エチル錯体の他、種々のキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0089】
上記非錫系有機金属化合物の具体例としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等が、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム等が、遷移金属系金属元素を主体とする化合物として、オクチル酸イットリウム、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトン錯体、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトン錯体、マンガンアセチルアセトン錯体、オクチル酸鉄、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ニッケルアセチルアセトン錯体、ナフテン酸銅、銅アセチルアセトン錯体等が、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物として、亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物として、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体、インジウムアセチルアセトン錯体等が、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0090】
上記非錫系有機金属化合物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、ナーセムアルミニウム、ナーセムクロム、ナーセム第一コバルト、ナーセム第二コバルト、ナーセム銅、ナーセム第二鉄、ナーセムニッケル、ナーセムバナジル、ナーセム亜鉛、ナーセムインジウム、ナーセムマグネシウム、ナーセムマンガン、ナーセムイットリウム、ナーセムセリウム、ナーセムストロンチウム、ナーセムパラジウム、ナーセムバリウム、ナーセムモリブデニル、ナーセムランタン、ナーセムジルコニウム、ナーセムチタン、ナフテックスCoシリーズ、ニッカオクチックスCoシリーズ、ナフテックスMnシリーズ、ニッカオクチックスMnシリーズ、ナフテックスZnシリーズ、ニッカオクチックスZnシリーズ、ナフテックスCaシリーズ、ニッカオクチックスCaシリーズ、ナフテックスKシリーズ、ニッカオクチックスKシリーズ、ニッカオクチックスBiシリーズ、ネオデカン酸Biシリーズ、プキャットシリーズ、PAシリーズ、ナフテックスZrシリーズ、ニッカオクチックスZrシリーズ、ナフテックスFeシリーズ、ニッカオクチックスFeシリーズ、ナフテックスMgシリーズ、ナフテックスLiシリーズ、ナフテックスCuシリーズ、ナフテックスBaシリーズ、ニッカオクチックス・レアースシリーズ、ニッカオクチックスNiシリーズ等(以上、日本化学産業社製商品名)、オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320、オルガチックスTA−10、オルガチックスTA−25、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−30、オルガチックスTC−100、オルガチックスTC−401、オルガチックスTC−200、オルガチックスTC−750、オルガチックスTPHS等(以上、マツモトファインケミカル社製商品名)、SNAPCURE3020、SNAPCURE3030、VERTEC NPZ等(以上、ジョンソン・マッセイ社製商品名)、ネオスタンU−600、ネオスタンU−660等(以上、日東化成社製商品名)、ケンリアクトNZ01、ケンリアクトNZ33、ケンリアクトNZ39等(以上、ケンリッチ社製商品名)、アルミニウムエトキサイド、AIPD、PADM、AMD、ASBD、ALCH、ALCH−TR、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF、プレンアクトALM等(以上、川研ファインケミカル社製商品名)、A−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181等(以上、日本曹達社製商品名)、オクトープシリーズ、ケロープシリーズ、オリープシリーズ、アセトープシリーズ、ケミホープシリーズ等(ホープ製薬社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0091】
なかでも、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物からなる群から選ばれる一種以上であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保でき、さらに実使用に耐えうる硬化速度が得られやすいという点で好ましい。また、上記非錫系有機金属化合物の安定性を重視する場合は、カルボキシラートあるいはキレート等の構造が好ましく、上記非錫系有機金属化合物の硬化促進能を重視する場合は、アルコキサイドあるいはカルボキシラート等の構造が好ましい。
【0092】
上記ハロゲン化ホウ素化合物としては、三フッ化ホウ素化合物が好適に用いられる。
三フッ化ホウ素化合物の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記三フッ化ホウ素化合物の中では、入手の容易さ及び配合のしやすさから、アルコール錯体又はアミン錯体が好ましく、安定性と触媒活性を兼ね備えていることから、アミン錯体が最も好ましい。
【0093】
上記三フッ化ホウ素のアミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ハンツマン社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式 HN(CNH)H(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物等の他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。三フッ化ホウ素アミン錯体は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が挙げられる。
【0094】
硬化促進剤(D)の配合量は、求められる硬化速度に応じて適宜選択すれば良いが、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の総和100質量部に対して0.001〜30質量部が好ましく、0.01〜20質量部がより好ましく、0.05〜10質量部が特に好ましく、0.1〜5質量部が最も好ましい。0.001質量部を下回ると、硬化促進効果が十分でない場合があり、30質量部を上回ると、接着阻害を起こす場合がある。なお、硬化促進効果は化合物によって異なるので、極めて硬化促進効果の高い上記三フッ化ホウ素化合物であれば配合量は少なくてよいし、比較的硬化促進効果の低い上記アミン化合物や上記非錫系有機金属化合物であれば多めに配合するのがよい。また、特に、有機錫化合物の含有量が、硬化性樹脂組成物の全質量部に対して0〜1000ppm未満であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保できることから好ましい。
【0095】
[その他の成分]
本発明にかかる硬化性樹脂組成物中には、その他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、本発明で用いる硬化性樹脂以外の各種硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、オキセタン系樹脂、環状カーボネート系樹脂)及び非硬化性の樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等)、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油系樹脂、ロジン系樹脂等の粘着付与剤、低極性被着材への密着性を向上させる塩素化ポリプロピレン,無水マレイン酸変性ポリプロピレン,酸化ポリエチレン等の極性基含有ポリオレフィン、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、難燃剤、各種機能性オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
【0096】
本発明における硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。
【0097】
本発明における硬化性樹脂組成物は、水分の存在下で、架橋性珪素基同士が架橋することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気中の水分と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性樹脂が硬化するのである。
【0098】
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性樹脂組成物に対して、さらに粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得る。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。
このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0100】
[硬化性樹脂(A)の準備]
硬化性樹脂(A)として、「GENIOSIL STP−E10」(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約10,000、粘度約10,000mPa・s/25℃(カタログ値))を準備した。
【0101】
[硬化性樹脂(B)の準備]
(硬化性樹脂B−1の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びニッカオクチックスジルコニウム12%(T)(日本化学産業株式会社製商品名、2−エチルヘキサン酸ジルコニル化合物溶液(Zr含有率=約12質量%)、PMLS4012に対してジルコニウム金属換算で20ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。
さらに、上記シラン化合物SE−1(8.39質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−1中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−1中の第二級アミノ基とを80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン基、活性水素が1個置換されたウレア基、及び、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性樹脂B−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0102】
硬化性樹脂(B)として、カネカMSポリマーS203(株式会社カネカ製商品名、上記式(2)で表される架橋性珪素基を有するプロピレンオキサイド重合体)を準備した。
【0103】
[フィラーの準備]
フィラーとして、以下のものを準備した。
・スーパーS(丸尾カルシウム株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径(注1):2.7μm、表面処理なし)
・08重炭(丸尾カルシウム株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:40〜400μm、表面処理なし)
・KC−N(株式会社ニッチツ株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:50μm、表面処理なし)
・ナノックス30(丸尾カルシウム株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径(注1):0.7μm、表面処理なし)
・NS#2300(日東粉化工業株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.0μm、表面処理なし)
・NS#400(日東粉化工業株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.7μm、表面処理なし)
・スーパー3S(丸尾カルシウム株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径(注1):1.8μm、表面処理なし)
・BF−100(備北粉化工業株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径(空気透過法):3.6μm、表面処理なし)
・NN#500(日東粉化工業株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:4.4μm、表面処理なし)
・NCC#2310(日東粉化工業株式会社製商品名、疎水性表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.0μm)
・NCC P−2300(日東粉化工業株式会社製商品名、疎水性表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.0μm)
・スノーライト3S(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径(注1):1.7〜2.2μm、表面処理:脂肪酸処理)
・MCコートS−1(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.8μm、表面処理:脂肪酸処理)
・MCコートP−1(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.8μm、表面処理:パラフィン系処理)
・白艶華CCR−B(白石カルシウム株式会社製商品名、表面処理膠質炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):80nm、表面処理:脂肪酸処理)
・VISCOEXCEL−30(白石カルシウム株式会社製商品名、表面処理膠質炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):30nm、表面処理:脂肪酸処理)
・白艶華CC(白石カルシウム株式会社製商品名、表面処理膠質炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):40nm、表面処理:脂肪酸処理)
・MS−100M(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):50nm、表面処理:脂肪酸・樹脂酸処理)
・カルファイン200M(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):50nm、表面処理:脂肪酸処理)
・ホモカルDM(白石カルシウム株式会社製商品名、表面処理膠質炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):70nm、表面処理:樹脂酸処理)
・MS−700(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):70nm、表面処理:脂肪酸処理)
・カルファイン200(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):70nm、表面処理:脂肪酸処理)
・MS2000(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):70nm、表面処理:脂肪酸処理)
・シーレッツ200(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):70nm、表面処理:特殊有機物処理)
・ルミナス(丸尾カルシウム株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):100nm、表面処理:特殊高分子処理)
・Viscolite−OS(白石カルシウム株式会社製商品名、表面処理膠質炭酸カルシウム系粉体、一次粒子径(注2):80nm、表面処理:脂肪酸処理)
・NEOLIGHT SP−T(竹原化学工業株式会社製商品名、表面処理炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:150nm、表面処理:脂肪酸処理)
・SCPE2315(三共精粉株式会社製商品名、表面処理重質炭酸カルシウム系粉体、平均粒子径:1.7μm、表面処理:ステアリン酸処理)
・グラスバブルスS38(住友3M株式会社製商品名、ガラスバルーン系粉体)
・アエロジル200(日本アエロジル株式会社製商品名、親水性ヒュームドシリカ系粉体、一次粒子平均径(注2):12nm、表面処理なし)
・アエロジルRY200(日本アエロジル株式会社製商品名、疎水性ヒュームドシリカ系粉体、一次粒子平均径(注2):12nm、表面処理:シリコーンオイル処理)
・ケミベストFDSS−2(三井化学株式会社製商品名、ポリエチレン綿状ファイバー)
・グラスバブルスS38(住友3M株式会社製商品名、ガラスバルーン系粉体)
(注1):比表面積からの計算による
(注2):電子顕微鏡観察による
【0104】
[揺変剤の準備]
揺変剤として、A−S−A T−1800(伊藤製油株式会社、アマイドワックス)を準備した。
【0105】
[希釈剤の準備]
希釈剤として、シェルゾールTK(シェルケミカルズジャパン株式会社製商品名、イソパラフィン系化合物)を準備した。
【0106】
[シランカップリング剤の準備]
シランカップリング剤として、KBM−1003(信越化学工業株式会社製商品名、ビニルトリメトキシシラン)、KBM−603(信越化学工業株式会社製商品名、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、KBM−403(信越化学工業株式会社製商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を準備した。本発明において該KBM−603は、カップリング剤としての効果だけでなく、硬化促進剤(D)としても機能する。
【0107】
[硬化促進剤(D)の準備]
硬化促進剤(D)として、ネオスタンS−1(日東化成株式会社製商品名、ジオクチル錫化合物)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(BF−MEAと略す場合がある)を準備した。
【0108】
(予備実験例1〜7)
予備実験として、表1に示す配合割合(質量部)で、硬化性樹脂(B)及びフィラー(C)を撹拌機付きの密閉式反応容器に投入し、常温常圧で10分間混練りし、ペースト状スラリーを得た(工程X)。
その後引き続き、上記で得られたペースト状スラリーを、60mmHg以下の減圧下、100〜120℃で加熱しながら、1時間撹拌混合して、フィラー(C)の加熱処理を行った(工程Y)。
さらに、得られたペースト状スラリーを60℃以下まで冷却した後、硬化性樹脂(A)を添加し、再度、60mmHg以下の減圧下、60℃以下で、10分以上撹拌混合することで、硬化促進剤(D)を含有しないペースト状スラリーを得た。得られたペースト状スラリーを室温まで冷却し、その状態を観察した。
【0109】
【表1】

【0110】
本発明の工程X及び工程Yを備えた予備実験例1〜7に関しては、得られたペースト状スラリーは硬化性樹脂(A)を含有しているにも関わらず、製造時の安定性が極めて高いことが分かる。予備実験例1〜7に代表されるペースト状スラリーは、ゲル化現象が観察されなかったため、さらに硬化促進剤を添加して最終的な硬化性樹脂組成物を調製することができるものであった。
【0111】
(予備実験例8〜14)
表2に示す配合割合(質量部)で、硬化性樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び各種フィラー(C)を撹拌機付きの密閉式反応容器に投入し、常温常圧で10分間混練りし、ペースト状スラリーを調製した。
その後引き続き、60mmHg以下の減圧下、100〜120℃で加熱しながら、1時間撹拌混合して、フィラー(C)の加熱処理を行った。得られた硬化促進剤(D)を含有しないペースト状スラリーを室温まで冷却し、その状態を観察した。
【0112】
【表2】

【0113】
表2に示されるように、予備実験例8〜14に関しては、硬化性樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及びフィラー(C)を同時に減圧下で撹拌加熱処理しているため、硬化促進剤を含有しないペースト状スラリーであるにも関わらず製造時に安定性が保たれなかった。最終的に硬化性樹脂組成物を調製するためには、上記ペースト状スラリーに硬化促進剤を添加する必要があるが、予備実験例8〜14に代表されるペースト状スラリーは、すでにゲル化(硬化)もしくはゲル化に近い非常に高粘度な混合物となっており、硬化促進剤を添加することができなかった。
【0114】
(実施例1〜40)
[本発明にかかる製造方法による硬化性樹脂組成物の調製]
表3〜6に示す配合割合(質量部)で、硬化性樹脂(B)及び各種フィラーを撹拌機付きの密閉式反応容器に投入し、常温常圧で10分間混練りした(工程X)。その後、60mmHg以下の減圧下、100〜120℃で加熱しながら、1時間撹拌混合した(工程Y)。さらに引き続き、得られたペースト状スラリーに対して硬化性樹脂(A)を添加し、再度、60mmHg以下の減圧下、100〜120℃で加熱しながら、10分以上撹拌混合した。得られた硬化性樹脂(A)を含有するペースト状スラリーを60℃以下まで冷却し、その状態を観察したところ、ゲル化等の不具合は起こっていなかった。そこで、さらに、表3〜6に示す配合割合(質量部)で、希釈剤、シランカップリング剤及び硬化促進剤を添加し、湿気を遮断した密閉条件下で混練りすることで、硬化性樹脂組成物を得た(工程Z)。得られた硬化性樹脂組成物は、湿気を遮断する密閉容器に充填した。
なお、本検討では、製造直後〜翌日までの硬化性樹脂組成物を「初期」、得られた硬化性樹脂組成物を湿気遮断の密閉式容器に充填した状態で50℃2週間暴露したものを「貯蔵後」とする。
【0115】
[粘度測定]
各硬化性樹脂組成物の粘度は、23℃±2℃の条件下で、B型粘度計を用いて測定した。各硬化性樹脂組成物の初期の粘度と、貯蔵後の粘度を測定した。
【0116】
[タックフリー時間測定]
各硬化性樹脂組成物の硬化性を比較した。硬化性の比較はタックフリー時間を用いて行った。タックフリー時間は、各硬化性樹脂組成物を23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気に暴露した直後を開始時間とし、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、指触により暴露された各硬化性樹脂組成物の表面を触って指に各硬化性樹脂組成物がつかなくなる時間とした。各硬化性樹脂組成物の50℃2週間暴露前と暴露後の皮張り時間を表3〜6に示す。
【0117】
[ダンベル物性測定]
各硬化性樹脂組成物の硬化皮膜のダンベル物性を比較した。各硬化性樹脂組成物を硬化物皮膜の厚みが2mmとなるように離型性の型に充填し、23±2℃相対湿度50±5%で2週間硬化養生して得られた硬化物について、JIS K 6251に準じて、ダンベル物性(ダンベル状3号形、引張速度:200mm/分)を測定した。各硬化性樹脂組成物の硬化皮膜の50%モジュラス、100%モジュラス、破断時強度、破断時伸びを測定した。
【0118】
表3〜6に各硬化性樹脂組成物の配合割合(質量部)と、粘度測定、タックフリー時間測定の結果を示す。
【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

※トーカブラック#7350/F(東海カーボン株式会社製商品名、カーボンブラック)
※JR−600E(テイカ株式会社製商品名、酸化チタン)
※カーボンペースト:トーカブラック#7350/Fをフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)に分散させて調製(配合割合は質量比で1:1)
【0122】
表6に各硬化性樹脂組成物の配合割合(質量部)と、粘度測定、タックフリー時間測定に加えて、ダンベル物性測定を行った結果を示す。
【0123】
【表6】

【0124】
表3〜6に示される通り、本発明に係る製造方法で製造された硬化性樹脂組成物は、いずれも製造時の安定性が極めて高く、貯蔵後でも大きな粘度変化を示さず、貯蔵安定性も極めて高いということが分かる。また、代表例として、表6で示される硬化性樹脂組成物について硬化皮膜のダンベル物性値を示したが、これらの硬化性樹脂組成物は従来公知のシーリング材あるいは接着剤の用途に十分展開可能な物理特性を有していることが分かる。
【0125】
また、一例として、実施例15、23、33及び37に係る硬化性樹脂組成物に関して、JIS K 6850に準じて引張せん断接着強さ(アサダ材同士、5mm×25mm×100mm、接着面積:25mm×12.5mm、塗付量:150g/m、養生時間:23℃相対湿度50%で7日間)を、JIS A 5538及びJIS A 1612に準じて単軸引張せん断接着強さ(フレキシブルボード同士、片面10mm×70mm×70mm、片面5mm×40mm×40mm、接着面積:40mm×40mm、塗付厚1mm、養生時間:23℃相対湿度50%で7日間)を測定した。各測定結果を表7に示す。
【0126】
【表7】

【0127】
表7に示す通り、本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、接着剤として十分利用可能な性能を有していることが分かる。
【0128】
以上をまとめると、本発明に係る製造方法を用いない硬化性樹脂組成物は、製造時の安定性が極めて悪く、実質的に硬化性樹脂組成物を調製することができない。一方、本発明に係る製造方法で得られた硬化性樹脂組成物は、製造時及び貯蔵時の安定性が極めて高い。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る硬化性樹脂組成物の製造方法は、比較的硬化性が高い硬化性樹脂組成物を安定して製造し、その貯蔵安定性を確保できる製造方法であり、得られた硬化性樹脂組成物は、従来一液型又は多液型の硬化性樹脂組成物が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。特に、硬化物に柔軟性が求められる用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、
珪素原子に炭素数2以上のアルキレン基が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(B)、
フィラー(C)、
及び、硬化促進剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
上記フィラー(C)が加熱処理される工程を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
フィラー(C)の加熱工程が、80〜180℃で10分〜7日間加熱処理を行うものであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
フィラー(C)の加熱工程が、100mmHg以下の減圧下で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
フィラー(C)の加熱工程が、下記の工程X及びYを経るものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
工程X:硬化性樹脂組成物に配合される液状成分と、フィラー(C)とを混合撹拌し、ペースト状スラリーを調製する工程。
工程Y:上記ペースト状スラリーを、80〜180℃で10分〜7日間及び/又は100mmHg以下の減圧下で加熱処理する工程。
【請求項5】
上記工程Xにおいて使用される、硬化性樹脂組成物に配合される液状成分が、硬化性樹脂(B)であることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
上記工程Yの後に、さらに下記の工程Zを経ることを特徴とする、請求項4又は5に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
工程Z:工程Yで加熱処理されたペースト状スラリーに、硬化性樹脂(A)及び硬化促進剤(D)を配合する工程。


【公開番号】特開2011−168769(P2011−168769A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7534(P2011−7534)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】