説明

硬化性樹脂組成物及びフィルム状接着剤

【課題】使用時には強固な接着力を保持し、不具合が発生した場合には、簡便に剥離することができる硬化性樹脂組成物及びフィルム状接着剤を提供すること。
【解決手段】
(A)ウレタン結合を有する樹脂、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)エポキシ樹脂及び(E)エポキシ樹脂硬化剤を含む硬化性樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びフィルム状接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品の高性能化、小型化、軽量化、また高集積化に伴い、一つの基板に搭載される半導体素子の数量が増加し、基板の価格が高騰している。従来、基板に用いられる接着剤は高接着性が求められており、多くの熱硬化性接着剤が用いられている。しかし、熱硬化性接着剤は、硬化後の剥離が困難なため、一度接着した部品又は基板に不具合が生じた場合には、基板ごと廃棄しなければならず、回収して再利用することが難しい。
【0003】
一方、剥離可能な接着剤として、例えば、特許文献1では加熱により接着力が低下する加熱剥離型粘着シートが開示されている。
【特許文献1】特許第3766304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱剥離型粘着シートは、部品を仮固定するために使用されるものであり、固定と剥離とを繰り返すことができるものの、加熱時の接着性が十分ではなく、高い接着性が求められる用途に使用することは難しい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使用時には強固な接着力を保持し、不具合が発生した場合には、簡便に剥離することができる硬化性樹脂組成物及びフィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、熱圧着時には熱硬化成分の硬化により強固な接着力を発現し、紫外線等の活性光線を照射した時には光硬化性成分の硬化により接着力を低下させるという、2種類の硬化性を兼ね備える樹脂組成物を用いることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)ウレタン結合を有する樹脂、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)エポキシ樹脂、及び(E)エポキシ樹脂硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
かかる樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、加熱圧着によって各種基板と優れた接着性を示しつつ、接着後に紫外線等の活性光線を照射すると、光硬化が進行して接着性が低下するため、容易に基板から剥離することが可能である。
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物において、有機溶剤への溶解性、柔軟性を向上できる観点から、上記(A)ウレタン結合を有する樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化1】


[式(1)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するX及びmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
耐熱性及び接着性を向上する観点から、上記(A)ウレタン結合を有する樹脂が、アミド結合及び/又はイミド結合を有する樹脂であることが好ましい。また、接着性及び光硬化後の剥離性を向上する観点から、上記(A)ウレタン結合を有する樹脂が、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格を有する樹脂であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を含有することが好ましい。これにより、光硬化後の剥離性をより一層向上することができる。
【0012】
本発明はまた、上記硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤を提供する。上記樹脂組成物をフィルム状に形成することで取り扱いが容易となり、使用時には強固な接着力を保持し、不具合が発生した場合には、簡便に剥離することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用時には強固な接着力を保持し、不具合が発生した場合には、簡便に剥離することができる硬化性樹脂組成物及びフィルム状接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン結合を有する樹脂(以下、場合により「(A)成分」という)、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)、(D)エポキシ樹脂(以下、場合により「(D)成分」という)及び(E)エポキシ樹脂硬化剤(以下、場合により「(E)成分」という)を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0016】
<(A)成分:ウレタン結合を有する樹脂>
(A)ウレタン結合を有する樹脂としては、基板との密着性に優れることから、例えば、ポリウレタン樹脂、ウレタン骨格を有するポリイミド樹脂、ウレタン骨格を有するポリアミドイミド樹脂、及び、ウレタン骨格を有するポリアミド樹脂等のウレタン骨格並びにアミド結合若しくはイミド結合を有する樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明において、(A)成分として使用することができるウレタン結合を有する樹脂は、例えば、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類、ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエンジオール類、ポリイソプレンジオール類等のジオール化合物を、イソシアネート基を有する化合物と反応させることで得られる。
【0018】
特に、(A)分子内にウレタン結合を有する樹脂は、有機溶剤への溶解性、柔軟性、耐熱性及び接着性を向上する観点から、ポリカーボネート骨格及び/又はイミド結合を有するポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂は、例えば、下記一般式(2);
【化2】


[式(2)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは1〜30の整数を示す。]で表されるポリカーボネートジオール類と、下記一般式(3);
OCN−X−NCO (3)
[式(3)中、Xは2価の有機基を示す。]で表されるジイソシアネート類とを反応させることにより得られる。
【0020】
こうして得られるポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【化3】


[式(1)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するX及びmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0021】
上記一般式(1)及び(3)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、及び、未置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。また、上記Xで示される2価の有機基としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基等の芳香環を2つ有する基が好ましいものとして挙げられる。
【0022】
上記一般式(2)で示されるポリカーボネートジオール類としては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオールが挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学(株)製のPLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL(商品名)、旭化成ケミカルズ社製のPCDL T−5651,T5652,T−6001,T6002(商品名)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、上記一般式(2)で表されるポリカーボネートジオール類と、ポリブタジエンジオール類又はポリイソプレンジオール類のような、分子内に二重結合を有するジオール化合物とを併用することが好ましい。ポリブタジエンジオール類又はポリイソプレンジオール類を用いて調整されるウレタン樹脂は、活性光線を照射した時に、後述する(B)成分との架橋密度が向上して、接着力を低下させることでき、一度接着した部品又は基板に不具合が生じた場合に容易に剥離することができる。
【0024】
ポリブタジエンジオール類又はポリイソプレンジオール類には、「1,4−繰り返し単位」又は「1,2−繰り返し単位」を有する化合物がある。
【0025】
ここで、ポリブタジエンジオール類のポリブタジエン骨格における、「1,4−繰り返し単位」とは、下記化学式(1t)又は(1c)で表されるような繰り返し単位であり、「1,2−繰り返し単位」とは、下記化学式(1d)で表されるような繰り返し単位である。
【化4】

【0026】
1,4−繰り返し単位を主に有するブタジエンジオール類としては、例えば、Poly bd R−45HT、Poly bd R−15HT(出光興産社製、商品名)が挙げられる。1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオール類としては、下記一般式(2A)で表される化合物が例示され、具体的には、G−1000、G−2000,G−3000(日本曹達社製、商品名)が挙げられる。また、1,2−繰り返し単位を主に有するポリイソプレンジオール類としては、例えば、Poly IP(出光興産社製、商品名)が挙げられる。
【化5】


[式(2A)中、nは1〜60の整数を示す。]
【0027】
特に生成した(A)ウレタン結合を有する樹脂の有機溶剤への溶解性を考慮すると、分岐骨格を有するポリブタジエンジオール類又はポリイソプレンジオール類が好ましく、このようなポリブタジエンジオール類又はポリイソプレンジオール類としては、1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールが好ましい。
【0028】
また、ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエンジオール類及びポリイソプレンジオール類以外のジオール化合物を併用することもできる。ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエンジオール類及びポリイソプレンジオール類以外のジオール化合物としては、例えば、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類、シリコーンジオール類が挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;ナフタレン−2,6−ジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート類のように、式(3)中のXが芳香環を有する基である芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、一般式(3)で表されるジイソシアネート類としては、本発明の目的の範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート、あるいは三官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。
【0031】
また、上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、ヒドロキシアクリレート、メタノールを代表とするアルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。
【0032】
上記ジオール化合物と上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類との配合割合は、生成する樹脂の末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかで適宜調整される。なお、ポリウレタン樹脂の高機能化のために種々の骨格を導入し易くできる観点から、水酸基数とイソシアネート基数の比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましい。このような比率にすることにより、樹脂の末端がイソシアネート基であるウレタン樹脂(以下、場合により「化合物(a−1)」という)となり、種々の骨格を導入し易くすることができる。
【0033】
上記ジオール化合物と、上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類との反応は、無溶媒又は有機溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、80〜180℃とすることがより好ましい。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件等により適宜選択することができる。例えば、1〜5L(リットル)のフラスコスケールで2〜5時間とすることができる。
【0034】
このようにして得られる化合物(a−1)の数平均分子量は、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜2,5000であることがより好ましく、1,500〜20,000であることが特に好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。また、数平均分子量、重量平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
【0036】
(a)数平均分子量(Mn)
Mn=Σ(N)/Ni=ΣX
(X=分子量Mの分子のモル分率=N/ΣN
(b)重量平均分子量(Mw)
Mw=Σ(N)/ΣN=ΣW
(W=分子量Mの分子の重量分率=N/ΣN
(c)分子量分布(分散度)
分散度=Mw/Mn
【0037】
(A)成分には、上記化合物(a−1)と、イソシアネート基と反応可能な化合物とを用いて、種々の骨格を導入することができる。
【0038】
化合物(a−1)としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化6】


[式(4)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0039】
イソシアネート基と反応可能な化合物としては、例えば、モノヒドロキシ化合物、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸、カルボキシル基を有する化合物、並びにカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0040】
上記酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表される化合物を使用することができる。
【化7】


【化8】


[式(5)及び(6)中、R’は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。]
【0041】
上記酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸としては、コスト面等から、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0042】
また、上記酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸についても特に限定されないが、例えば、下記一般式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化9】


[式(7)中、Yは、下記式(8):
【化10】


で示される複数の基から選ばれる一種を示す。]
【0043】
また、これらの他に必要に応じて、酸成分として、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)等を併用することができる。この場合、分子鎖中にアミド結合も形成される。
【0044】
上記ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂に、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、又は、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸を反応させる場合、上記イソシアネート化合物として、化合物(a−1)以外の化合物(以下、「化合物(a−2)」という)を使用することもできる。化合物(a−2)としては、化合物(a−1)以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、上記一般式(3)で表されるジイソシアネート類、3価以上のポリイソシアネート類等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。化合物(a−2)のイソシアネート化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(a−1)と同様である。
【0045】
また、本実施形態においては、上記イソシアネート化合物と共にアミン化合物を併用することもできる。アミン化合物としては、上記イソシアネート化合物におけるイソシアネート基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアネート基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(a−1)と同様である。
【0046】
化合物(a−2)としては、その総量の50〜100質量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0047】
化合物(a−1)と化合物(a−2)とを併用する場合、化合物(a−1)/化合物(a−2)の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、良好な基材との密着性、段差追従性を得ることができる。
【0048】
また、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び/又は、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸の配合割合は、イソシアネート中のイソシアネート基の総数に対する、カルボキシル基と酸無水物基の総数の比(カルボキシル基と酸無水物基の総数/イソシアネート基の総数)が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリイミド結合を含む樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向があり、目的とする特性が得られない可能性がある。
【0049】
なお、上記一般式(5)で表される化合物と、上記一般式(4)で表される化合物とを用いた場合、下記一般式(9);
【化11】


[式中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位を含むアミドイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0050】
また、上記一般式(6)で表される化合物と、上記一般式(4)で表される化合物とを用いた場合、下記一般式(10);
【化12】


[式中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位を含むアミドイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0051】
また、上記一般式(7)で表される化合物と、上記一般式(4)で表される化合物とを用いた場合、下記一般式(11);
【化13】


[式中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、Yは、上記式(8)で示される複数の基から選ばれる基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で示される繰り返し単位を含むイミド結合を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0052】
本発明において、(A)成分として使用される「ウレタン結合を有する樹脂」の製造方法における酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、イソシアネート化合物又はアミン化合物との反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
【0053】
また、本発明において、(A)成分として使用できるウレタン結合を有する樹脂のその他のものとしては、例えば、上記一般式(2)及び(3)並びに下記一般式(12)でそれぞれ表される化合物を混合し、上記化合物(a−1)を合成する時と同様の条件で反応させて得られる樹脂を用いることができる。
【化14】


[式(12)中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す]
【0054】
一般式(12)で表される化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸を挙げることができる。
【0055】
このようにして得られる樹脂は、下記一般式(13)で表される繰り返し構造を含むカルボキシル基を有するウレタン樹脂であり、後述の(D)成分であるエポキシ樹脂との反応性を向上することができる。
【化15】


[式(13)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR及びXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0056】
上述のようにして得られるカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、イソシアネート残基を有する場合、イソシアネート残基を酸無水物類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類等を用いて反応させてもよい。
【0057】
また、上記一般式(13)で表される繰り返し構造を含むカルボキシル基を有するウレタン樹脂には、カルボキシル基の一部又は全てを変性することで、光硬化性を有する不飽和基を導入することができる。これにより、紫外線等の活性光線を照射した時には光硬化性成分として機能することができ、(B)成分であるエチレン性不飽和基を有する光重合成化合物と光架橋して、接着層の接着力を低下させて、剥離性をより一層向上することができる。上記不飽和基は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を反応させることで導入することができる。
【0058】
上記非含窒素系極性溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記溶媒の中でも、生成する樹脂を溶解可能な溶媒を選択して使用するのが好ましい。また、合成後、そのまま硬化性樹脂組成物の溶媒として好適なものを使用することが好ましい。上記溶媒の中でも、高揮発性であり、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0060】
また、溶媒の使用量は、生成するウレタン結合を有する樹脂の0.8〜5.0倍(質量比)とすることが好ましい。この量が0.8倍未満では、合成時の粘度が高くなりすぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0061】
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。この温度が80℃未満では反応時間が長くなり過ぎる傾向があり、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易くなる傾向がある。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0062】
また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行ってもよい。
【0063】
また、合成終了後に、樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類、カルボン酸類、酸無水物類のブロック剤でブロックすることもできる。
【0064】
このようにして得られたウレタン結合を有する樹脂の数平均分子量は、10,000〜65,000であることが好ましく、15,000〜60,000であることがより好ましく、20,000〜55,000であることが特に好ましい。数平均分子量が10,000未満であると、光硬化後の剥離性が低下する傾向があり、数平均分子量が65,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解し難くなり、合成中に不溶化しやすい傾向があり、また、作業性に劣る傾向がある。
【0065】
本発明の樹脂組成物で用いる(A)成分の樹脂としては、数平均分子量が異なる2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。このとき、混合する2種以上の樹脂は全て、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が異なる樹脂を2種以上混合する際の混合比は特に制限されない。また、樹脂溶液の濃度も制限なく選択できる。
【0066】
<(B)成分:分子内に1つ以上の不飽和基を有する光重合性化合物>
(B)分子内に1つ以上の不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0068】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。このうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートプロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CHCHO−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CHCH(CH)O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0073】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート化合物が挙げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
ウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート;、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート;β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、ジイソシアネート化合物と、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類、シリコーンジオール類との付加反応物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のシクロアルキレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物が挙げられる。
【0075】
本発明の(B)成分としては、活性光線照射後の光硬化膜の剥離性をより向上できる観点から、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことが好ましく、分子内に5つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことがより好ましく、分子内に6つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことが特に好ましい。また、保存安定性の観点からは、分子内のエチレン性不飽和基は、20以下であることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のシクロアルキレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート化合物が挙げられる。
【0077】
また、活性光線照射前の接着性、柔軟性、耐薬品性及び耐水性をより向上できる観点からは、ポリカーボネート骨格を有する化合物が好ましい。ポリカーボネート骨格を有する化合物は、常温において高い結晶性を有し、高温においては結晶性が崩れ非晶質となるため、高温にして圧着した時(熱圧着)に高い接着性を示すものと本発明者らは考えている。また、ポリカーボネート骨格を有する化合物は、(A)成分であるウレタン樹脂との相溶性に優れることも高い接着性を可能にしている要因と考えている。(B)成分としてのポリカーボネート骨格を有する化合物としては、例えば、下記一般式(14)で表される化合物が挙げられる。
【化16】


[式(14)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、2価の有機基を示し、Zは、2〜6価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示し、p及びqはそれぞれ独立に1〜5の整数を示す。なお、複数存在するR、R、X及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0078】
上記一般式(14)で表される化合物は、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物と、2−ヒドロキエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基と水酸基を有する化合物とを反応させることで得ることができる。
【0079】
これら(B)成分の中でも特に、熱圧着した際の接着性及び光硬化後の剥離性を共に向上できる観点からは、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基、及びポリカーボネート骨格を有する化合物を用いることが好ましい。また、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、分子内に2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物を併用することも好ましい。分子内に2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物としては、上記一般式(14)で表される化合物において、p及びqが1である下記一般式(15)で表される化合物が挙げられる。
【化17】


[式(15)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、X及びZは、それぞれ独立に2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するR、R、X及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
上記、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、分子内に2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物とを併用する場合、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましく、10〜25質量部であることが特に好ましい。
【0081】
また、分子内に2つ以下のエチレン性不飽和基及びポリカーボネート骨格を有する化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜70質量部であることがより好ましく、30〜55質量部であることが特に好ましい。
【0082】
(B)成分である光重合性化合物は、数平均分子量が500〜6,000であることが好ましく、1,000〜5,000であることがより好ましく、1,500〜5,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、光硬化した膜を剥離した後、基板上に付着物が残る傾向があり、6,000を超えると活性光線照射前の接着性が低下し、また光硬化が十分に進行せず、剥離性も低下する傾向がある。
【0083】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましく、30〜60質量部であることが特に好ましい。この含有量が10質量部未満であると、光硬化性が不十分となり、剥離性が低下する傾向があり、80質量部を超えると、熱硬化時の接着性が低下する傾向がある。
【0085】
<(C)成分:光重合開始剤>
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満であると、光硬化が不十分で接着層が剥離しにくい傾向があり、20質量部を超えると、被着体表面を汚染しやすい傾向がある。
【0087】
<(D)成分:エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、脂肪族アルキル型、ノボラック型等のエポキシ樹脂を用いることできる。上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート828等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製の商品名YDF−170等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)性の商品名エピコート152、154;日本化薬(株)製の商品名EPPN−201;ダウケミカル社製の商品名DEN−438等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製の商品名EOCN−125S、103S、104S等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名Epon1031S;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイト0163;ナガセ化成(株)製の商品名デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート604;東都化成(株)製の商品名YH434;三菱ガス化学(株)製の商品名TETRAD−X、TERRAD−C;日本化薬(株)製の商品名GAN;住友化学(株)製の商品名ELM−120等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイトPT810等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製のERL4234、4299、4221、4206等)、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエン((ダイセル化学社製の商品PB−3600、日本曹達社製の商品名BF−1000等)、ビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族アルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、有機溶媒に可溶であるものが、硬化性樹脂組成物の透明性の保持の点から好ましく、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエンがより好ましい。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、10〜50質量部であることが特に好ましい。この含有量が1質量部未満であると、熱硬化性が不十分となり、接着性が低下する傾向があり、200質量部を超えると、被着体からの接着層の剥離性が低下する傾向がある。
【0089】
<(E)成分:エポキシ樹脂硬化剤>
エポキシ樹脂硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドや、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したもの挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硬化性樹脂組成物を塗布した際の乾燥工程の加温によるエポキシ樹脂熱重合の抑制、また熱圧着工程のエポキシ樹脂熱硬化時の光重合性化合物の熱重合を抑制するため、反応開始温度としては80℃〜150℃であるものが好ましく、110〜130℃であるものがより好ましい。このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、マイクロカプセル型、加熱溶解型等の潜在性硬化剤が挙げられ、マイクロカプセル型の代表的な製品として、ノバキュアシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)が、過熱溶解型の代表的な製品として、アミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
【0090】
マイクロカプセル型硬化剤は、加熱して所定の温度になると該硬化剤を覆っている周囲の樹脂が溶解し、硬化剤が樹脂中に拡散され、エポキシ樹脂との反応を開始する。また、加熱溶解型硬化剤は、室温では固体であるが、加熱により所定の温度になると溶解し、エポキシ樹脂と反応を開始する。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物における(E)成分の含有量は、(D)成分100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、1〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満であると、熱硬化が不十分で接着層の接着性が低下する傾向があり、200質量部を超えると、被着体表面を汚染しやすい傾向がある。
【0092】
<(F)成分:フィラー>
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて(F)フィラーを含有させることができる。フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー;アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー;、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーが挙げられる。フィラーの形状は、特に制限されるものではない。
【0093】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、硬化性樹脂組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され;非金属無機フィラーは、接着フィルムに熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され;有機フィラーは接着フィルムに靭性等を付与する目的で添加される。これらのフィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸アミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、カップリング剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、熱架橋剤などを含有させることができる。
【0095】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた接着方法及び剥離方法について、以下に説明する。
【0096】
(接着方法)
上記硬化性樹脂組成物の溶液は、被着体上に所望の厚さに塗布又は滴下することで、接着剤として使用することができる。また、硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形して被着体に貼り付けることにより、フィルム状接着剤として使用することもできる。これらの塗布、滴下、貼り付けの方法や条件は特に限定されない。
【0097】
硬化性樹脂組成物の溶液を直接用いる場合には、塗布、滴下後、60〜120℃で溶媒を乾燥させて使用することが好ましく、80〜100℃での乾燥させることがより好ましい。120℃を超えると、熱硬化してしまい接着性が低下し、60℃以下の場合は溶媒が乾燥しきらずに、接着性が低下してしまう可能性がある。
【0098】
フィルム状接着剤の作製する場合にも、同様の理由から、上記の温度条件下で処理することが好ましい。
【0099】
熱圧着は80〜200℃で行うことが好ましく、100〜180℃がより好ましい。200℃を超えると光硬化性成分の熱重合が開始し、接着力が低下する恐れがあり、また80℃未満では、硬化性樹脂組成物の熱硬化が進行せず、接着力が低下する可能性がある。
【0100】
熱圧着時の圧力及び時間は、(D)及び(E)成分を変更することで任意に調整が可能である。圧着温度は、(B)成分の熱硬化を抑制可能な温度とする必要がある。
【0101】
(剥離方法)
次に、上記熱硬化後の接着層に紫外線等の活性光線の照射等を行い、光硬化により接着層の粘着性を低下させることで基板から光硬化後の接着層を剥離する。
【0102】
ここで、活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0103】
本実施形態によれば、使用時には強固な接着力を保持し、不具合が発生した場合には、簡便に剥離することができる硬化性樹脂組成物を用いることにより、接着層の残渣がない基板を回収し、再利用することができる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0106】
(合成例)
<(A−1)成分の作製>
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、γ−ブチロラクトン565.84g、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルCD−220」)695.04g、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート105.0g、トルエンジイソシアネート83.52gを仕込み、150℃まで昇温し、150℃で4時間反応させた。
【0107】
次に、上記反応物に、無水トリメリット酸124.8gを加え、70℃で3時間反応させた。次いで、再び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート75.0g、トルエンジイソシアネート34.8gを加え、120℃で1時間及び180℃で3時間反応させた。反応後、メチルエチルケトン563.9gを加えて冷却し、さらにアクリル酸2−ヒドロキシエチル46.4gを加え、120℃で3時間反応させることで、数平均分子量45,000の樹脂(ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂:(A)成分)を得た。なお、数平均分子量は、反応時間毎に反応溶液を少量採取し、ガードナー製の気泡粘度計による粘度変化率を観察することで調整した。得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、不揮発分50質量%のポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0108】
<(A−2)成分の作製>
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5651」)108.26g、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−5652」)129.01g、ポリブタジエンジオール(日本曹達社製、商品名「G−1000」)70.49g、ナフタレンジイソシアネート50.8g、シクロヘキサノン300gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃に加熱して、9時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5.10gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量18000のポリウレタンアクリレート樹脂を得た。得られた樹脂をシクロヘキサノンで希釈し、不揮発分50質量%のポリウレタンアクリレート樹脂溶液を得た。
【0109】
<代替(A)成分:(A−3)成分の作製>
攪拌機、温度計、窒素導入管及びリンスタックトラップを備えた300mLの4つ口セパラブルフラスコにデカメチレンビストリメリテート二無水物(黒金化成社製、商品名「DBTA−KU」)7.3g(0.014mol)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)18.05g(0.056mol)、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」)38.86g(0.07mol)及びシクロヘキサノン164gを加えて40℃で15分攪拌した。添加終了後、150℃まで昇温し、3時間加熱還流を行った後、脱溶した。脱溶後、40℃で攪拌しながら不揮発分を30質量%に調整し、数平均分子量25000ポリイミド樹脂のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0110】
<(B−1)成分の作製>
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−6001」を100g、m−キシリレンジイソシアネート38.6g、シクロヘキサノン70.0gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら90℃〜100℃に加熱して、1時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル23.8gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量2000のポリウレタンアクリレート溶液(不揮発分70質量%)を得た。
【0111】
<(B−2)成分の作製>
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「PCDL T−6001」を100g、1,5−ナフタレンジイソシアネート43.2g、シクロヘキサノン72.0gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら90℃〜100℃に加熱して、1時間反応させた。次いで、アクリル酸2−ヒドロキシエチル24.3gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、数平均分子量2000のポリウレタンアクリレート溶液(不揮発分70質量%)を得た。
【0112】
<(B−3)成分>
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「YDF−8170C」)150g、アクリル酸67.8g、メチルハイドロキノン0.07g、トリフェニルホスフィン1.5g及びシクロヘキサノン145gを反応容器に仕込み、撹拌しながら100℃〜105℃に加熱して、20時間反応を行い、数平均分子量500のエポキシアクリレート溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0113】
<硬化性樹脂組成物の作製>
(実施例1)
上記(A−1)ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液12.6g(固形分:6.3g)及び上記(B−1)ポリウレタンアクリレート溶液3.9g(固形分:2.7g)に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートDPE−6A」)1.0g、(C)成分として2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−907」)及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−369」)をそれぞれ0.1gずつ加え、さらに(D)成分としてポリブタジエン変性エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、商品名「PB−3600」)0.8g、(E)成分としてマイクロカプセル型熱潜在性硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名「ノバキュアHXA−3792」)0.8g添加し、全体の固形分が50質量%になるように酢酸エチルを加えて40℃で1時間撹拌し、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0114】
(実施例2)
(B)成分である(B−1)に代えて、(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0115】
(実施例3)
(B)成分である(B−1)に代えて、(B−3)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0116】
(実施例4)
(A)成分である(A−1)に代えて、(A−2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0117】
(比較例1)
(E)成分を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0118】
(比較例2)
(D)成分を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0119】
(比較例3)
(A)成分である(A−1)に代えて、代替(A)成分である(A−3)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、硬化性樹脂組成物溶液を得た。
【0120】
(比較例4)
高耐熱絶縁接着フィルム(シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、日立化成工業社製、商品名「KS−7003」)を、フィルム状接着剤として準備した。
【0121】
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた硬化性樹脂組成物溶液の各成分の配合比を、まとめて表1に示す。
【0122】
【表1】


注)表中の値は、各成分の配合量(g)を示す。また、表中の記号「−」は、該当する成分を含有していないことを示す。
【0123】
(ピール強度評価試験片の作製)
実施例1〜4及び比較例1〜3を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに厚み約30μmになるように塗布し、100℃/15分乾燥し、10cm長さ×2cm幅に裁断し、硬化性樹脂組成物付きPETフィルム試験片を作製した。
【0124】
得られた試験片の硬化性樹脂組成物側を、80℃に熱したホットプレート上で、シリコン(Si)ミラーウエハ(厚み525μm)にウレタン性ゴムローラーで接着させ、150℃/60分間追加熱したものをそれぞれ2つ準備した(熱圧着工程)。作製した試験片のうち片方を、PETフィルム上から1000mJ/cm(波長365nm)の照射量で紫外線(UV)を照射した。
【0125】
比較例4では、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを10cm長さ×2cm幅に裁断し、150℃に熱したホットプレート上で、シリコンミラーウエハ(厚み525μm)とPENフィルムとの間に上記比較例4の高耐熱絶縁接着フィルムを挟んだ状態で、ウレタン性ゴムローラーで接着し、180℃/30分追加熱した(熱圧着工程)。
【0126】
(接着性及び剥離性評価)
オートグラフ(島津製作所製、商品名「AGS−H 100N」)を用いて、上記試験片の常温での180°ピール強度を測定した。接着性は、UV照射前のピール強度を測定して評価した。また、剥離性は、UV照射後のピール強度を測定して評価した。更に、剥離性評価後のシリコンミラーウェハー表面上の付着物又は残渣の有無(剥離後のSi表面付着物)について目視で観察した。シリコンミラーウェハー表面上に、硬化性樹脂組成物由来の付着物又は残渣が無いものをA、硬化性樹脂組成物由来の付着物又は残渣が有るものをBとした。
【0127】
【表2】


注)表中の記載「>25」は、Si基材が破壊したため、数値は最大値を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン結合を有する樹脂、
(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、及び
(E)エポキシ樹脂硬化剤
を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ウレタン結合を有する樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、Rは炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは2価の有機基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。なお、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数存在するX及びmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記(A)ウレタン結合を有する樹脂が、アミド結合及び/又はイミド結合を有する樹脂である、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ウレタン結合を有する樹脂が、ポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格を有する樹脂である、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、分子内に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤。


【公開番号】特開2010−138361(P2010−138361A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318789(P2008−318789)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】