説明

硬化性樹脂組成物及び成型物

【課題】テーバー摩耗試験においても良好な耐擦傷性が得られ、透明性にも優れるハードコート層を形成可能な硬化性樹脂組成物、これを塗布、硬化させた成型物を提供する。
【解決手段】コロイダルシリカ(a1)と、イソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)とを反応させることによって得られるコロイダルシリカ含有単量体(A)と、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物をプラスチック成型体に塗布、硬化してハードコート層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や家電製品あるいは光学フィルム等において、従来の熱硬化型塗料に代わって活性エネルギー線硬化型塗料がハードコート剤として使用されている。活性エネルギー線硬化型塗料は熱硬化型塗料と比較して、硬化が速く生産性が良いこと、省エネルギー化が可能であることや、硬度に優れるため、急速に普及している。
【0003】
従来の有機材料を用いたハードコート剤は硬度には優れるものの、耐擦傷性が十分ではなかった。そこで、無機材料と有機材料の併用による耐擦傷性の向上が検討されてきたが、単に無機材料と有機材料を混合したものでは十分な耐擦傷性は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1及び2には、無機材料であるシリカと有機材料を化学的に結合させたハードコート剤が開示されている。これらは、耐擦傷性の試験方法の一つであるスチールウール試験においては良好な結果が得られているものの、テーバー摩耗試験においては十分な値が得られておらず、改良の余地があった。また、両者とも組成物中のシリカ含有量を一定以上にする必要があるため、形成される硬化皮膜の透明性が十分でないことや、経済的に不利である点も問題であった。
【特許文献1】特開2004−143201号公報
【特許文献2】特許第4169737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、テーバー摩耗試験においても良好な耐擦傷性が得られるハードコート層が形成される硬化性樹脂組成物、これを塗布、硬化させた成型物を提供することである。また、本発明の別の課題は、透明性に優れるハードコート層が形成され、経済的にも優れる硬化性樹脂組成物、これを塗布、硬化させた成型物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討を行なったところ、(メタ)アクリレート化合物として3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを使用することにより、コロイダルシリカ含有量が少ない場合であっても十分な硬度や耐擦傷性が得られ、コロイダルシリカ含有量を低減できたことによってハードコート層の透明性が向上することを見出した。
【0007】
請求項1の発明は、コロイダルシリカ(a1)とイソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)とを反応させることによって得られるコロイダルシリカ含有単量体(A)と、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有し、シリカ含有量が固形分で5〜50重量%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0008】
請求項2の発明は、アクリル板上に硬化性樹脂組成物を塗布、硬化させることによってハードコート層を形成してヘーズを測定し、テーバー摩耗試験後に再度ヘーズを測定した際、ヘーズの増加が20%以下であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性樹脂組成物である。
【0009】
請求項3の発明は、シリカ含有量が固形分比で5〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3いずれかに記載の硬化性樹脂組成物が塗布されていることを特徴とする成型物である。
【0011】
請求項5の発明は、前記成型物の基材がプラスチックであることを特徴とする請求項4記載の成型物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、テーバー摩耗試験においても良好な耐擦傷性が得られるハードコート層を形成できるため、携帯電話や家電製品あるいは光学フィルム等に用いられるハードコート剤として好適である。また、本発明の硬化性樹脂組成物はシリカ含有量を低減することができるため、ハードコート層の透明性に優れ、経済的にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるコロイダルシリカ含有単量体(A)は、コロイダルシリカ(a1)と、イソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)とを反応させることによって得られる。
【0014】
コロイダルシリカ(a1)としては、特に限定はされないが、平均粒子径が100nm以下で、有機溶剤を分散媒とした市販品各種を使用することができる。粒子径のより大きいシリカを用いた場合は、貯蔵安定性が悪くなるばかりか、本発明で目的とする良好な摩耗性を発現することができず、得られた硬化物が濁り、透明性に欠ける等の問題がある。好ましくは平均粒子径が5〜50nmのものがより好適である。シリカ表面上に存在する水酸基の一部が化学修飾されており、有機溶媒に分散可能な疎水基を持つコロイダルシリカを使用することが望ましい。さらに好ましくは、コロイダルシリカ表面上の水酸基の一部をジシロキサン化合物および/またはモノアルコキシシラン化合物のようなシリル化剤等で修飾し、0.1〜12重量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒にコロイダル分散していることが望ましい。
【0015】
コロイダルシリカの分散媒としての有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等を挙げることができる。また反応性溶媒としてメチルメタクリレートをはじめとするアクリルモノマー等をあげることができる。
【0016】
イソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリル酸2−イソシアネートエチル、メタクリル酸2−イソシアネートエチル等が挙げられる。また、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物を反応させたものを用いても良い。
【0017】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。
これらの化合物は、単独または二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物として、水酸基含有単官能アクリレートや、水酸基含有多官能アクリレート等が挙げられる。水酸基含有単官能アクリレートの具体例として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。水酸基含有多官能アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパンジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも水酸基を含有する3〜6官能アクリレートを用いた場合、架橋度性が向上するため硬化皮膜の耐擦傷性が向上し、かつ残存不飽和基による変色等の問題を回避することができる。
【0019】
さらに、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、ケイヒ酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロキシプロピルヘキサヒドロフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタレ−ト等の不飽和脂肪族カルボン酸類、2−(メタ)アクリロキシプロピルフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシプロピルエチルフタレ−ト等のカルボキシル基を有する不飽和芳香族カルボン酸、ビニルオキシエチルアミン、ビニルオキシドデシルアミン、アリルオキシプロピルアミン、2−メチルアリルオキシへキシルアミン、ビニルオキシ−(2−ヒドロキシ)ブチルアミン等のアミノ基含有モノマー等も使用できる。
これらの重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物は、単独または二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物を反応させる際、触媒を添加することもできる。たとえば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチルスズ、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いることが好ましい。これらの触媒は、コロイダルシリカ(a1)と、イソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)を反応させる際に用いることができる。
【0021】
また、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物を反応させる際、ウレタン触媒の存在下で、イソシアネート基に対して不活性な溶剤、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、フルフラール等の極性溶剤の1種または2種以上を使用できる。
【0022】
コロイダルシリカ(a1)と、イソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)を反応させてコロイダルシリカ含有単量体(A)を得る際には、IR測定またはアミン滴定を行うことによって経時的に残存イソシアネート基の濃度を測定し、変化が見られなくなったところを終点とする。残存イソシアネート基がある場合はこれをブロックするために、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、前記重合性不飽和基及びイソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物を添加してもよい。残存イソシアネート基が存在すると硬化性樹脂組成物の保存性が低下するおそれがある。
【0023】
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートや、これらをオリゴマー化したウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートオリゴマー等の多官能アクリレートオリゴマー等が挙げられる。官能基数が多いアクリレートほど表面硬度が高くなり、好ましい。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
硬化性樹脂組成物中のシリカ含有量は、固形分で5〜50重量%であることが好ましく、5〜20重量%以上であることがより好ましい。シリカ含有量が5重量%未満であると耐摩耗性が低下し、50重量%を超えるとバインダとなる有機材料が相対的に減少するため、塗工性が低下して外観不良となったり、シリカが塗膜から欠落しやすくなる。また、シリカ含有量が5〜20重量%の場合、形成されるハードコート層の透明性が優れ、経済的にも優れる。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は不飽和基を有するため、適当な重合開始剤の存在下で硬化させることができる。光重合開始剤を用いた場合、紫外線等活性エネルギー線を照射することによって短時間で硬化させることが可能なため、生産性を向上させたり、省エネルギー化が可能となる。
【0026】
光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のカルボニル化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物等を用いることができる。
【0027】
これらの光重合開始剤の市販品としてはIrgacure184、369、651、500(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LucirinLR8728(BASF社製)、Darocure1116、1173(メルク社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂等の各種樹脂や、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ化合物、二酸化チタン等の無機充填剤の他、シラン系やチタネート系等のカップリング剤、殺菌剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、帯電防止剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、レベリング調整剤、消泡剤、着色顔料、防錆顔料等の配合材料を添加してもよい。また、耐候性向上を目的に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物が塗布される基材は特に限定されないが、ABS、PC、アクリル、PS、MS、PBT、PPS、PET、TAC等を単独あるいは2種以上をアロイ化したもの等の各種プラスチックが挙げられる。特に摩耗性が要求される液晶パネル等の表示体には透明基材であるPC、アクリル、PET、TAC等が最適である。基材の形状はフィルム状や平板状だけではなく、成型体であってもよい。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布する方法は特に制限はなく、公知のスプレーコート、ディッピング、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバー等の塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法により形成できる。樹脂層の厚さは、1μm〜40μmが好ましい。樹脂層の厚みが1μm未満であると、十分な摩耗性が発生せず、40μmを越えるとクラックが発生するため好ましくない。
【0031】
本発明の硬化樹脂組成物はテーバー摩耗試験においても良好な耐擦傷性が得られるが、アクリル板上に硬化性樹脂組成物を塗布、硬化させることによってハードコート層を形成してヘーズを測定し、テーバー摩耗試験後に再度ヘーズを測定した際、ヘーズの増加が20%以下であることが好ましい。
具体的には、硬化性樹脂組成物をアクリル板(旭化成ケミカルズ社製、デラグラスA、2mm厚)上にスプレーで塗布し、80℃で1分間乾燥するにより溶剤を揮発させ、高圧水銀ランプを用いて500mJ/cmで照射することにより硬化させ、アクリル板上に膜厚10μmのハードコート層を形成する。
次に、JIS K 7136に基づき、ヘーズメータ(スガ試験機社製)を用いてヘーズを測定する。
さらに、テーバー磨耗試験機用サンドペーパーS−42(ダイトエレクトロン社製)を用いて、500g荷重をかけて塗膜を500往復擦った後のヘーズを測定し、テーバー摩耗試験後のヘーズの増加が20%以下であることが好ましい。
【0032】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0033】
コロイダルシリカ含有単量体の合成
ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業社製、商品名 NKエステル A−TMM−3LM−N)12重量部にイソホロンジイソシアネート(IPDI)4.85重量部、触媒としてDBTDL(ジブチルスズジラウレート)を0.01重量部加えて反応させることにより、ペンタエリスリトールトリアクリレート−IPDIモノマーを得た。このモノマーをメチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、SiO成分30%、平均粒子径20nm)80重量部に添加し、室温で24時間撹拌後、イソプロパノールを加えた。IRにてイソシアネート基の消失を確認し、コロイダルシリカ含有単量体A(固形分42%、単量体全体中シリカ量25%)を得た。
【0034】
実施例1〜5
表1の配合に示すように、得られた上記コロイダルシリカ含有単量体A 25〜200重量部に対して、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、固形分100%、商品名A−DPH)を20〜90重量部、開始剤としてIrgacure184を5重量部添加し、固形分30%となるように溶剤としてトルエンを適宜加えることにより、実施例1〜5の硬化性樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例6〜10
表1の配合に示すように、得られた上記コロイダルシリカ含有単量体A 25〜200重量部に対して、15官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、固形分100%、商品名U−15HA)を20〜90重量部、開始剤としてIrgacure184を5重量部添加し、固形分30%となるように溶剤としてトルエンを加えることにより、実施例6〜10の硬化性樹脂組成物を得た。
【0036】
比較例1
上記コロイダルシリカ含有単量体A 10重量部に対して、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート96重量部、開始剤としてIrgacure184を5重量部添加し、固形分30%となるように溶剤としてトルエンを加えることにより、比較例1の硬化性樹脂組成物を得た。
【0037】
比較例2
上記コロイダルシリカ含有単量体A 230重量部に対して、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、開始剤としてIrgacure184を5重量部添加し、固形分30%となるように溶剤としてトルエンを加えることにより、比較例2の硬化性樹脂組成物を得た。
【0038】
比較例3
実施例3において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、固形分100%、商品名ライトアクリレート3EG−A)60重量部を添加した他は実施例3と同様に行い、比較例3の硬化性樹脂組成物を得た。
【0039】
比較例4
コロイダルシリカ含有単量体を用いずに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、開始剤としてIrgacure184を5重量部、溶剤としてトルエンを適宜加え固形分30%の硬化性樹脂組成物を得た。
【0040】
各実施例、比較例で作成した硬化性樹脂組成物をアクリル板(旭化成ケミカルズ社製、デラグラスA、2mm厚)上にスプレーで塗布し、80℃で1分間乾燥するにより溶剤を揮発させ高圧水銀ランプを用いて500mJ/cmで照射することにより硬化させ、アクリル板上に膜厚10μmのハードコート層を形成し、以下の方法で試験評価を行った。
【0041】
全光線透過率の測定
JIS K 7136に基づき、ヘーズメータ(スガ試験機社製)を用いてヘーズを測定した。
【0042】
ヘーズの測定
JIS K 7136に基づき、ヘーズメータ(スガ試験機社製)を用いてヘーズを測定した。
【0043】
鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4に基づき、東洋精機製作所社製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いて1kg荷重にて行った。
【0044】
摩耗性の評価
テーバー磨耗試験機用サンドペーパーS−42(ダイトエレクトロン社製)を用いて、500g荷重をかけて塗膜を500往復擦った後のヘーズを測定し、テーバー摩耗試験前のヘーズからの増加量を算出した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1に示されるように実施例の各樹脂組成物を用いた試験体は耐摩耗性に非常に優れる結果となった。特に、シリカ含有量が5〜20重量%のものについては、透明性にも優れていた。一方、表2に示されるようにシリカ量が不足あるいは過剰の場合や、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を用いない場合、耐摩耗性に劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ(a1)とイソシアネート基及び重合性不飽和基を有するイソシアネート化合物(a2)とを反応させることによって得られるコロイダルシリカ含有単量体(A)と、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有し、シリカ含有量が固形分で5〜50重量%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル板上に硬化性樹脂組成物を塗布、硬化させることによってハードコート層を形成してヘーズを測定し、テーバー摩耗試験後に再度ヘーズを測定した際、ヘーズの増加が20%以下であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
シリカ含有量が固形分で5〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の硬化性樹脂組成物が塗布されていることを特徴とする成型物。
【請求項5】
前記成型物の基材がプラスチックであることを特徴とする請求項4記載の成型物。

【公開番号】特開2011−52143(P2011−52143A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203470(P2009−203470)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】