説明

硬化性樹脂組成物及び硬化物

【課題】硬化物の製造工程における硬化・加工特性の再現性に優れて、品質の安定した硬化物が得られる低硬化収縮特性を備えた樹脂組成物であって、尚且つ、耐熱変色性、低熱膨張性、高透明性の硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に脂肪族不飽和結合を2個以上有し、且つ、籠型シロキサンと有機成分からなる有機−無機複合体、(B)1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物、及び(C)硬化触媒を必須成分とし、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の有機−無機複合体を主成分として少なくとも30重量部以上含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び硬化物に関する。詳しくは、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の光学材料、機械部品材料、電気・電子部品材料等として有用な硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて得られた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料等をはじめ、樹脂を硬化させた成形材が広く使われており、また、成形物以外においても、各種塗料や接着剤として硬化性の樹脂を含んだ樹脂組成物が使用されている。これらの硬化性樹脂組成物には、無機物質を含有させることで、硬化物の熱膨張率を下げることができ、また、耐熱性や透明性を向上させることも可能であることから、近年では、特に電子・電気部品材料において、無機ガラスにかわるものとしてその有用性が期待されている。具体的には、デジタルカメラモジュールは携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、低コスト化が求められることから、無機ガラスに代わってPMMA・PCやポリシクロオレフィン等のプラスチックレンズの採用が進んでおり、また、車載カメラなどでの高温暴露環境下での使用を考慮し、長時間の耐熱性が要求されることから、更なる硬化性樹脂組成物の検討が進められている。
【0003】
これらのような硬化性樹脂組成物として、主に耐熱性や透明性に優れた硬化物を得ることができるシリコーン樹脂組成物や、他の硬化性樹脂に比べ硬化収縮が低く成形性が良好な硬化性エポキシ樹脂組成物等が挙げられる。このうち、シリコーン樹脂組成物において、熱膨張率を低下させるために、特定のオルガノポリシロキサン、例えば多官能籠型シルセスキオキサン、ラダー型シルセスキオキサン等の高密度シロキサン化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定のオルガノポリシロキサン(籠型シルセスキオキサン等)と特定のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加硬化させたものを含んだ樹脂組成物も数多く報告されている(例えば、特許文献2〜4参照)。一方、硬化性エポキシ樹脂組成物において、機械特性、耐熱性を改良する目的でヒュームドシリカなどの無機充填粉末を添加する方法(例えば特許文献5参照)や、透明性の改良のために、オルガノシリカゾル、好ましくはMEKゾルとして無機粒子を添加する方法(例えば、特許文献6、7参照)のほか、シランカップリング剤で表面修飾されたコロイダルシリカを添加する方法(例えば、特許文献8)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−133442号公報
【特許文献2】特開平9−316299号公報
【特許文献3】特開2006−131848号公報
【特許文献4】特開2008−248170号公報
【特許文献5】特開平6−63502号公報
【特許文献6】特開2004−250521号公報
【特許文献7】特開2002−327165号公報
【特許文献8】特開平3−143915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコーン系樹脂を含んだ組成物は耐熱性や耐熱変色性に優れた硬化物を得ることはできても、硬化物製造時に硬化収縮を生じ、硬化物を得る上での再現性に問題がある。一方で、エポキシ系樹脂を含んだ組成物は硬化時の収縮性が低くて成形性に優れるが、併用されるアンチモン系の硬化触媒が高い温度での黄変をもたらすといった耐熱変色性に問題がある。これらの問題は、従来報告されている各種組成物においてそれぞれ完全に解決できているわけではない。
【0006】
本発明は、硬化性樹脂組成物の現状に鑑みてなされたものであり、硬化物の製造工程における硬化・加工特性の再現性に優れて、品質の安定した硬化物が得られる低硬化収縮特性を備えた樹脂組成物であって、尚且つ、耐熱変色性、低熱膨張性、高透明性の硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とし、また、これにより得られた硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、有機成分と無機成分とを含んだ特定の複合体を含んだ硬化性樹脂組成物によれば、硬化収縮と熱変色の問題を同時に解決しながら、硬化・加工特性の再現性に優れて、尚且つ、低熱膨張性、及び高透明性の硬化物を得ることができる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明は、(A)1分子中に脂肪族不飽和結合を2個以上有し、且つ、籠型シロキサンと有機成分からなる有機−無機複合体、(B)1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物、及び(C)硬化触媒を必須成分とし、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の有機−無機複合体を主成分として少なくとも30重量部以上含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明は、上記の硬化性樹脂組成物を、熱、光、またはその両方を用いて硬化して得た硬化物である。
【0010】
本発明においては、上記(A)成分の有機−無機複合体が、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(式中、R1及びR2はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、炭素数5〜50の脂環式構造、炭素数5〜50の芳香族構造、又は−OCOO−結合のいずれかであり、互いに異なる2種以上を含んでもよく、n、m及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m+lは2〜2,000である。)で表され、重量平均分子量がMw=5,000〜1,000,000であり、1分子中に不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を少なくとも2つ以上有することが、好ましい態様である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、高い耐熱変色性を備えると共に、高透明性、低熱膨張性及び低硬化収縮性に優れた硬化物を得ることができる。また、得られた硬化物は光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の光学材料や電気・電子部品をはじめ、各種機械部品、自動車部品、土木建築材、塗料、接着剤等の幅広い用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、合成例1で得られたシラノール基含有籠型シロキサン(21)のGPCチャート
【図2】図2は、合成例1で得られたシラノール基含有籠型シロキサン(21)の1H−NMRチャート
【図3】図3は、合成例1で得られた有機−無機複合体(22)のGPCチャート
【図4】図4は、合成例2で得られたシラノール基含有籠型シロキサン(23)のGPCチャート
【図5】図5は、合成例2で得られた有機−無機複合体(24)のGPCチャート
【図6】図6は、合成例3で得られたシラノール基含有籠型シロキサン(25)のGPCチャート
【図7】図7は、合成例3で得られた有機−無機複合体(26)のGPCチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)成分の有機−無機複合体として好適に用いることができる樹脂として、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(但し、R1及びR2はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、Xは、炭素数5〜50の脂肪族構造、炭素数5〜50の脂環式構造、炭素数5〜50の芳香族構造、又は−OCOO−結合のいずれかであり、互いに異なる2種以上を含んでもよく、n、m、及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m+lは2〜2,000である。)で表され、重量平均分子量Mw=5,000〜1,000,000であり、1分子中に少なくとも2つ以上は不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を有する有機−無機複合体を挙げることができる。
【0014】
上記式(1)で表される有機−無機複合体を得るための好ましい方法としては、下記式(2)
(R1SiO3/2)n(HO2/2)k (2)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、n及びkは平均値であり、nは6〜14の数、kは1〜4の数を示す。)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンと、下記式(3)
HO−X−OH (3)
(但し、Xは、炭素数5〜50の脂肪族構造、炭素数5〜50の脂環式構造、炭素数5〜50の芳香族構造、又は−OCOO−結合のいずれかである。)で表される有機ジオール化合物とを、下記式(4)
【化1】

(但し、R2は水素原子、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン基であって互いに同じか異なるものであってもよい。)で表されるジクロロシランをシラノール基含有籠型シロキサン及び有機ジオールの合計モルに対して0.5〜5倍モル、好ましくは0.5〜3.0倍モルの範囲で添加して脱塩酸縮合させて式(1)で表される有機−無機複合体とすることができる。
【0015】
上記式(2)のシラノール基含有籠型シロキサンと上記式(3)の有機ジオール化合物とを、上記式(4)のジクロロシランを用いて脱塩酸により共重合する具体的な反応条件について、好ましくは塩基性条件下で行うようにするのがよい。例えば、シラノール基含有籠型シロキサンと有機ジオール化合物とを溶媒兼塩基としてピリジン、又はテトラヒドロフランとトリエチルアミンの混合液に溶解し、ジクロロシランをピリジンに溶解した溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、室温で滴下し、その後、室温で2時間以上撹拌を行うようにするのがよい。この際、反応時間が短いと反応が完結しない。反応終了後、トルエンと水を加え、式(1)で表される有機−無機複合体をトルエンに溶解し、副成する塩酸及び塩酸塩を水層に溶解し除去するようにする。また、有機層を硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥し、使用した塩基及び溶媒を減圧濃縮によって除去するようにする。
【0016】
下記式(2)
(R1SiO3/2)n(HO2/2)k (2)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、n及びkは平均値であり、nは6〜14の数、kは1〜4の数を示す。)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンを得る好ましい手段については、下記式(5)
1SiY3 (5)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、Yはアルコキシ基、ハロゲン原子及びヒドロキシル基からなる群から選ばれた加水分解性基を示す。)で表されるケイ素化合物を、単独又は複数用いて、塩基性触媒をR1SiY3:塩基性触媒=3〜7モル:1モルとなる範囲の塩基性触媒存在下、極性溶媒又は非極性溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で加水分解すると共に加水分解物を縮合反応させ、更に、シロキサン結合の形成(シラノール基の縮合)と開裂を繰り返す過程(平衡)で、塩基性触媒由来のカウンターカチオンを開裂部と結合せしめた後、酸で処理し、開裂部を水酸基に変換して得ることができる。この際、使用する塩基性触媒が上記範囲より少ないとシラノール基の縮合が優先され、シラノール基が減少する。反対に上記範囲より多いと、シロキサン結合の開裂が優先されて、過剰のシラノール基が増加する。これらのことから塩基性触媒の量が上記範囲から外れた場合、次工程の有機化合物とのジクロロシランの脱塩酸反応を用いての縮合反応で、反応不足やゲル化の原因となる。
【0017】
上記式(2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンを得る際に用いる溶媒については、非極性溶媒と極性溶媒のうち1つもしくは両方を合わせた溶媒である。このうち、非極性溶媒については、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒が例示される。極性溶媒については、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が例示される。これらの中でも、反応速度制御の観点から2−プロパノールとトルエンの2相系が好ましい。2−プロパノール/トルエンの体積比は1/2であるのが好ましい。有機溶媒の好ましい使用量は、式(5)のアルコキシシランに対するモル濃度(モル/リットル:M)が0.01〜10Mの範囲であるのがよく、より好ましくは0.01〜1Mであるのがよい。
【0018】
上記式(2)のシラノール基含有籠型シロキサンを合成する際の反応条件について、反応温度は0〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり未反応の加水分解性基及びシラノール基が多く残存する結果となる。反対に60℃より高いと、反応速度が速すぎるために複雑な縮合反応が進行し、結果として高分子量化が促進される。また、反応時間は上記式(5)で表される構造のR1によっても異なるが、通常は数分〜数時間であり、好ましくは1〜3時間であるのがよい。
【0019】
式(2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物の具体例を、下記構造式(6)〜(12)にそれぞれ示す。構造式(6)はn=6,k=2、(7)はn=7,k=3、(8)−1及び(8)−2はn=8,k=2、(9)はn=9,k=1、(10)はn=10,k=2、(11)はn=12,k=2、(12)はn=14,k=2である。但し、式(2)で表される構造単位は、構造式(6)〜(12)に示すものに限らない。また、構造式(6)〜(12)において、R1は式(5)と同じである。
【化2】

【化3】

【0020】
上記式(5)で表されるケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシルエチル)トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が例示される。中でも原料の入手が容易である、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0021】
上記式(5)の加水分解及び縮合反応に用いられる塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、或いはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が例示される。これらの中でも、触媒活性の高い点からテトラメチルアンモニウムヒドロキシト゛が好ましく用いられる。
【0022】
シラノール基含有籠型シロキサンの合成反応終了後は、反応溶液を弱酸性溶液で中和する。中性もしくは酸性よりにした後、水または水含有反応溶媒を分離する。その後、有機層を水又は飽和食塩水で十分に洗浄する。その後、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥する。乾燥剤をろ別除去した後、減圧濃縮することで、反応生成物(シラノール基含有籠型シロキサン)を回収できる。減圧濃縮は40℃以下で行う。40℃を超えると反応で生じたシラノール基が縮合し、高分子量化及びゲル化や、次の反応が進行しなくなるという問題が生じる。弱酸性溶液としては硫酸希釈溶液、塩酸希釈溶液、クエン酸希釈溶液、酢酸、塩化アンモニウム水溶液、リンゴ酸溶液、シュウ酸溶液などが例示される。
【0023】
次いで、上記で得られた式(2)シラノール基含有籠型シロキサンと式(3)の有機ジオール化合物とを、式(4)のジクロロシランを用いて共重合することにより籠型シロキサンと有機成分とからなる有機−無機複合体を得ることができる。
【0024】
ここで、式(3)で表される有機ジオール化合物としては、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、下記式(13)〜(20)、
【化4】

(但し、上記式(20)のR3は炭素数5〜10の脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素であり、Mw=500〜2,000である。)等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
式(4)で表されるジクロロシラン化合物としては、アリルジクロロシラン、アリルへキシルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、シクロへキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリル−2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、ヘプチルメチルシラン、ジブチルジクロロシラン、メチル−β−フェネチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジへキシルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(A)成分の「有機−無機複合体」の配合量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対して30重量部以上となるようにする。30重量部に満たないと、耐熱変色性が低下し、更に粘度の低下、硬化収縮が高くなり、成形が困難となる。
【0027】
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、(B)成分「1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物」は、希釈剤兼架橋剤として作用するものである。(A)成分の「有機−無機複合体」の粘度を成形容易な粘度、好ましくは0.1〜500Pa・s、より好ましくは1〜200Pa・sに調整する、又は、硬化物の高架橋化による低熱膨張化や高強度化のために用いる。
【0028】
(B)成分「1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物」の配合量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対して70重量部未満となるようにするのがよい。70重量部以上になると、耐熱変色性が低下し、更に粘度の低下、硬化収縮が高くなり、成形が困難となる。
【0029】
(B)成分の「1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物」の具体例としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−のナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートエステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和化合物を併用することも出来る。
【0030】
また、(C)成分の硬化触媒については、熱重合開始剤又は光重合開始剤を用いることができる。添加量は硬化性樹脂組成物の合計100重量部に対して0.01〜10重量部であるのがよく、0.01〜5重量部であるのが好ましい。開始剤の添加量が0.01重量部に満たないと硬化が不十分であり、硬化物の強度や剛直性が低くなる。反対に5重量部を超えると、着色等の問題が生じるおそれがある。また、熱重合開始剤又は光重合開始剤は単独で用いてもよく、またその両方を併用してもよい。
【0031】
このうち、熱重合開始剤としては有機過酸化物が好ましく、ケトンパーオキサイド類、ジアシルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類などが挙げられる。これらの中で触媒活性の点から、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。具体的には、シクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキサパーオキシ)シクロヘキサノン、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0032】
光重合開始剤としてはアルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルフォスフォンオキサイド類などが挙げられる。これらの中で触媒活性の点から、アルキルフェノン類が好ましい。具体的には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォルノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホリニル)フェニル]−1−ブタノン等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0033】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、透明性を阻害しない範囲であれば、従来公知の酸化防止剤、アエロジルのような超微細シリカ、屈折率を硬化した樹脂に合わせた無機質充填剤などを機械強度の向上や熱膨張係数を調整する観点から適宜配合してもよい。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は熱、光、又はその両方を用いて硬化することができる。熱重合開始剤を用いて硬化を行なう場合は、熱重合開始剤と促進剤の選択により、室温から200℃前後までの広い範囲で硬化することができる。必要に応じて、ポストキュア(追加加熱)を行うようにしてもよい。一方、光重合開始剤を用いて硬化を行なう場合は、光照射によって硬化物を得ることができ、例えば波長100〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射する。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生剤として用いるランプとしては低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光開始剤の種類に応じて選定する。熱重合開始剤及び光重合開始剤を併用する場合は、上記条件に沿って光熱、熱光の順で順次硬化することができる。特に熱重合性と光重合性が異なる場合に効率よく使用することにより短時間で硬化することができる。更には、本発明の硬化性樹脂組成物を射出成形や圧縮成形することによって、所定の形状を有した硬化物を得るようにしてもよい。この際、成形する成形装置は特に制限されるものではない。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐熱変色性、低熱膨張性、高透明性及び低硬化収縮性に優れるため、本来、主にガラスが用いられていた光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途の各種材料や、機械部品材料、電気・電子部品材料等を、本発明の硬化性樹脂組成物からなる成型物(硬化物)に置き換えることも可能である。例えば、はんだリフローに耐え得る耐熱性を備えることから、携帯電話、デジタルカメラ、車載カメラ等に搭載されるレンズ付きCCD、レンズ付きCMOSセンサなどのように、半導体とレンズとを一体化したカメラモジュール等の電子部品に適用することもでき、更には回折格子、偏光部品、反射鏡等のガラス代替材料にも使用することができる。
【実施例】
【0036】
[合成例1]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物(関東化学製)14.3gを加え、水17.0gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、ビニルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製;KBM1003)46.8gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温でビニルトリメトキシシランを3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。その後、反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(21)24.9g(97%)を得た。
【0037】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(21)のGPCを測定した結果を図1に示す。図1から、Mw=1005、Mw/Mn=1.225であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=668、Mw/Mn=1.020であった。次に、H1NMRを測定した結果を図2に示す。5.8〜6.2ppmのビニル基によるマルチプレットピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、ビニル基1に対して、シラノール基0.174であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1はビニル基)であることが示唆された。
【0038】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(21)のシラノール基の存在を確認するためにIRを測定した。その結果、3100〜3400cm-1にシラノール基由来のブロードピークを有していたことから、シラノール基の存在を確認した。以上の結果より、上記式(2)で表される無色透明粘性液体の構造はシラノール基含有籠型シロキサンと判断された。
【0039】
上記で得られたシラノール基含籠型シルセスキオキサン(21)のエレクトロスプレーイオン化法質量分析(ESI-MS)を行った結果を表1に示す。下記表1には、質量分析して検出された主なピークとn、kに当てはまる数値をまとめて示す。検出されるピークm/zは、シラノール基含有籠型シロキサン(21)の分子量に、アンモニウムイオン(Mw=18)が付加した値である。この質量分析の結果からも籠構造を形成するシロキサン結合の一部が開裂し、末端部にシラノール基を有する構造となっていることが示される。
【0040】
【表1】

【0041】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シロキサン(21)23.7g、及び下記式(19)
【化5】

で表されるエポキシアクリレート(共栄社化学株式会社製;3002M)19.3gをはかり込み窒素置換し、ピリジン60mLに溶解した。滴下ロートにジフェニルジクロロシラン19.2g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(22)を52.1g(回収率97%)得た。
【0042】
上記で得た無色透明粘性液体の有機−無機複合体(22)のGPCを測定した結果を図3に示す。図3から、Mw=8035、Mw/Mn=2.755であった。従って、得られた有機−無機複合体(22)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基、R2はフェニル基、及びXは式(19)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=5であることを確認した。
【0043】
[合成例2]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物14.3gを加え、水17gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;KBM1003)23.4g、及びエチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;LS−890)23.7gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温でビニルトリメトキシシランとエチルトリメトキシシランの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。次に、反応容器にディンスターク、冷却管を備え、トルエン95mLを加え、オイルバスを用いて90℃で2−プロパノール、及び加水分解の際に生じたメタノールの除去を行った。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、水を除去しながらトルエンを過熱還流し、再縮合反応を行った。トルエン還流後、3時間撹拌した後、室温に戻して反応を終了とした。反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(23)25.5g(98%)を得た。
【0044】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(23)のGPCを測定した結果を図4に示す。図から、Mw=863、Mw/Mn=1.195であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=650、Mw/Mn=1.032であった。次に、1H−NMRを測定した結果、5.8〜6.2ppmのビニル基によるマルチプレットピーク、0.4〜1.2ppmのエチル基によるマルチプレットピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、ビニル基1に対してエチル基1、シラノール基0.189であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式(2)
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1はビニル基:エチル基=1:1)であることが示唆された。
【0045】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(23)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジフェニルジクロロシラン19.2g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(24)を35.3g(回収率92%)得た。
【0046】
上記で得た有機−無機複合体(24)のGPCを測定した結果を図5に示す。図5から、Mw=13937、Mw/Mn=4.369であった。従って、得られた有機−無機複合体(24)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基:エチル基=1:1、R2はフェニル基及びXはシクロヘキサンジメタノールからなる)で表され、nは6〜14、m+l=11であることを確認した。
【0047】
[合成例3]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物14.3gを加え、水17gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシキシシラン(信越化学工業株式会社製;LS−3380)78.4gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温で3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。次に、反応容器にディンスターク、冷却管を備え、トルエン95mLを加え、オイルバスを用いて90℃で2−プロパノール、及び加水分解の際に生じたメタノールの除去を行った。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、水を除去しながらトルエンを過熱還流し、再縮合反応を行った。トルエン還流後、3時間撹拌した後、室温に戻して反応を終了とした。反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(25)47.4g(98%)を得た。
【0048】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(25)のGPCを測定した結果を図6に示す。図から、Mw=2156、Mw/Mn=1.092であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=1480、Mw/Mn=1.028であった。次に、1H−NMRを測定した結果、5.4〜6.2ppmのメタクリル基によるピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、メタクリル基1に対してシラノール基0.189であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式(2)
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1は3−メタクリロキシプロピル基)であることが示唆された。
【0049】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(25)20.0g、及び下記式(20)
【化6】

(但し、R3は−(CH2)6−、Mw=1000である旭化成株式会社製;ETERNACOLL UH−100)で表される有機ジオール化合物13.8gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジフェニルジクロロシラン8.7g、及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(26)を40.1g(回収率95%)得た。
【0050】
上記で得た有機−無機複合体(26)のGPCを測定した結果を図7に示す。図7から、Mw=28164、Mw/Mn=7.277であった。従って、得られた有機−無機複合体(26)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1は3−メタクリロキシプロピル基、R2はフェニル基、及びXは上記式(20)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=10であることを確認した。
【0051】
[実施例1]
(A)成分である上記合成例1で得られた有機−無機複合体(22)70重量部、及び(B)成分である下記式(27)
【化7】

(共栄社化学株式会社製;DCP−A)で表される化合物30重量部を混合し、(C)成分である下記式(28)
【化8】

(日本油脂株式会社製;パークミルD)で表される硬化触媒を(A)、(B)成分の合計100重量部に対して1重量部混合し、よく撹拌し、実施例1の硬化性樹脂組成物を調製した。
【0052】
[実施例2]
有機−無機複合体(22)の代わりに、(A)成分として上記合成例2で得られた有機−無機複合体(24)を70重量部用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る硬化性樹脂組成物を調製した。
【0053】
[実施例3]
(A)成分である上記合成例3で得られた有機−無機複合体(26)70重量部、及び(B)成分である上記式(27)30重量部を混合し、(C)成分である下記式(29)
【化9】

(チバ・ジャパン株式会社製;Irgacure184)で表される硬化触媒を(A)、(B)成分の合計100重量部に対して1重量部混合し、よく撹拌し、実施例3の硬化性樹脂組成物として調製した。
【0054】
[実施例4]
(A)成分である上記合成例2で得られた有機−無機複合体(24)80重量部、及び(B)成分である下記式(30)
【化10】

で表されるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(共栄社化学株式会社製;TMPTA)20重量部を混合し、(C)成分である上記式(28)及び(29)の硬化触媒をそれぞれ1重量部混合し、よく撹拌し、実施例5の硬化性樹脂として調製した。
【0055】
[比較例1]
上記合成例1で調製したシラノール基含有籠型シロキサン(21)100重量部に対して(C)成分の上記式(28)の硬化触媒を1重量部混合し、よく撹拌し、比較例1の組成物を調製した。
【0056】
[比較例2]
(B)成分である上記式(27)で表される化合物100重量部に対して(C)成分の上記式(28)の硬化触媒を1重量部混合し、よく撹拌し、比較例2の組成物を調製した。
【0057】
上記実施例及び比較例で調製した組成物を用いて、ガラス板に組み込んだ型に厚み2mmとなるように流し込み、[実施例1、2]及び[比較例1、2]については120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で2時間それぞれ加熱して成形し、[実施例3]については30W/cmの高圧水銀ランプを用いて、2000mJ/cm2の積算露光量で成形し、[実施例4]は30W/cmの高圧水銀ランプを用いて、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化した後、更に200℃で1時間加熱して、それぞれ、50mm×25mm×厚さ2mmの試験用の成形物を得た。
【0058】
硬化性樹脂組成物の粘度、及び得られた成形物について、下記方法により硬化収縮率、熱膨張係数、リフロー試験後の耐熱性、及び透明性について評価した。結果を表2に示す。
【0059】
<粘度>
24℃、回転速度D=1/s時の粘度をR/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)にて評価した。粘度20Pa・s以上ではRC−25−1の測定治具を使用し、20未満ではRC50−1の治具を使用した。D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、D=5〜100/sの値を外挿して硬化性樹脂組成物の粘度として評価した。
【0060】
<硬化収縮率>
硬化前後の比重を測定し体積収縮率を算出した。硬化性樹脂組成物の比重はピクノメーター法(JIS K 7112)、硬化物は水中置換法(JIS K 7112)により求めた。
硬化収縮率=(1−硬化前の樹脂の比重/硬化後の樹脂の比重)×100
【0061】
<熱膨張係数>
熱機械分析法に基づき、昇温速度5℃/min及び圧縮荷重0.1Nの条件で求めた。
【0062】
<透過率>
吸光度計(島津製作所製、分光光度計UV−3100)を用いて、波長450nmにおける硬化物の透過率を評価した。また、硬化物を、260℃、10分乾燥機内に保持した後の透過率も評価した。
【0063】
<屈折率>
屈折率計(アタゴ社製、DR−M2)を用いて評価した。また、硬化物を260℃、10分乾燥機内に保持した後の屈折率も評価した。
【0064】
<濁度>
(日本電色社製、NDH2000)を用いて、硬化物のヘイズを評価した。
【0065】
<硬化後の硬化物の状態>
割れについて目視で確認した。
【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に脂肪族不飽和結合を2個以上有し、且つ、籠型シロキサンと有機成分からなる有機−無機複合体、
(B)1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物、及び
(C)硬化触媒
を必須成分とし、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の有機−無機複合体を主成分として少なくとも30重量部以上含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分の有機−無機複合体が、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(但し、R1及びR2は、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、Xは、炭素数5〜50の脂肪族構造、炭素数5〜50の脂環式構造、炭素数5〜50の芳香族構造、又は−OCOO−結合のいずれかであり、互いに異なる2種以上を含んでもよく、n、m及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m+lは2〜2,000である。)で表され、重量平均分子量がMw=5,000〜1,000,000であり、1分子中に不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を少なくとも2つ以上有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を、熱、光、またはその両方を用いて硬化して得た硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−195986(P2010−195986A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44626(P2009−44626)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】