説明

硬化性樹脂組成物

【課題】プラスチック、特にエンジニアリングプラスチックとの接着性に優れ、作業性および耐熱性も良好な硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、潜在性硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1液型のポリウレタン系硬化性樹脂組成物は数多く知られており、具体的には、ウレタンプレポリマーと、ケチミン、オキサゾリジンなどの潜在性硬化剤とを含有する組成物が挙げられる。この組成物は、大気中の水分により潜在性硬化剤が加水分解して再生されたアミンがウレタンプレポリマーと反応して硬化するものであり無発泡性なものとなることが知られている。
【0003】
また、このような1液型のポリウレタン系硬化性樹脂組成物は、従来より、建築用もしくは自動車用シーラント、接着剤、コーティング剤、塗料、防水材、床材等として広く使用されているが、近年になって、プラスチック、特にエンジニアリングプラスチックに対する接着性が要求される用途にも使用されるようになってきている。具体的には、カーボネート骨格やエーテル骨格を有するウレタンが用いられている(例えば、特許文献1および2参照)。
しかしながら、カーボネート骨格を有するウレタンは室温で固体であるためウレタンプレポリマーとしてよりも熱可塑性ウレタンとして用いられる場合が殆どであり、室温での作業性が悪いという問題を有しており、エーテル骨格を有するウレタンは室温で液体であるものの耐熱性に劣るという問題を有していた。
【0004】
【特許文献1】特開2001−192553公報
【特許文献2】特表2004−506075公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、プラスチック、特にエンジニアリングプラスチックとの接着性に優れ、作業性および耐熱性も良好な硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のウレタンプレポリマーと、潜在性硬化剤とを含有する組成物が、エンジニアリングプラスチックとの接着性に優れ、作業性および耐熱性も良好な硬化性樹脂組成物になることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(I)〜(VI)に示す硬化性樹脂組成物を提供する。
【0007】
(I)水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、潜在性硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【0008】
(II)上記ウレタンプレポリマーが、分子内の全てのイソシアネート(NCO)基に第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素が結合した構造を有する上記(I)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0009】
(III)上記ウレタンプレポリマーが、重量平均分子量1500以下で官能基数3以上のウレタンプレポリマーを2質量%以上含有する上記(I)または(II)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(IV)上記潜在性硬化剤が、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物である上記(I)〜(III)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(V)上記ケトンまたはアルデヒドが、下記一般式(1)または(2)で表される化合物である上記(IV)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、R1はメチル基または水素原子を表し、R2はメチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1およびR4、または、R2およびR4は結合して環を形成していてもよい。R5はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基または水素原子を表し、R6はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基を表す。
【0014】
(VI)更に、エポキシ樹脂を含有する上記(I)〜(V)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラスチック、特にエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)との接着性に優れ、作業性および耐熱性も良好な硬化性樹脂組成物を提供することができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、潜在性硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物であり、更に、エポキシ樹脂を含有しているのが好ましい。
次に、本発明の硬化性樹脂組成物に用いるウレタンプレポリマー、潜在性硬化剤、エポキシ樹脂について詳述する。
【0017】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるウレタンプレポリマーは、水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーであり、後述するカルビノール変性ポリシロキサンと過剰のポリイソシアネート化合物(即ち、水酸(OH)基に対して過剰のNCO基)を反応させて得られる反応生成物である。
【0018】
ここで、本発明に用いるカルビノール変性ポリシロキサンは、下記一般式(3)で表される化合物であって、水酸基価が30〜240mgKOH/gのものあれば特に限定されず、下記一般式(4)で表される化合物であるのが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
上記一般式(3)中のRa〜Rjは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、−Rk−OHを表す(ただし、少なくとも1つは−Rk−OHであり、Rkはアルキレン基を表す)。r、sは、0または正の整数(ただし、r+s≧1)を表す。なお、Ra〜Rjは、それぞれが結合した環構造を形成していてもよい。
上記一般式(4)中のRmおよびRnは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、tは1以上の整数を表す。
【0021】
このようなカルビノール変性ポリシロキサンとしては、市販品として信越化学工業社製のX−22−160AS(水酸基価:120mgKOH/g)、KF−6001(水酸基価:62mgKOH/g)、KF−6002(水酸基価:35mgKOH/g)、X−22−4015(水酸基価:30mgKOH/g)等を用いることができる。
【0022】
一方、本発明に用いるポリイソシアネート化合物は、分子内にNCO基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)などの脂環式ポリイソシアネート;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるウレタンプレポリマーは、上述したように、水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンと過剰のポリイソシアネート化合物を反応させることによって得られるものであり、その具体例としては、上記一般式(3)で表されるカルビノール変性ポリシロキサンと、各種ポリイソシアネート化合物との組み合わせによるものが挙げられる。
このようなウレタンプレポリマーを用いることにより、得られる本発明の硬化性樹脂粗組成物の粘度が適当(23℃下で10〜100Pa・s)となるため作業性が良好となり、また、エンジニアリングプラスチック(特に、ナイロン、PC、PPO、PBT、PPS)との接着性に優れ、硬化後の耐熱性も良好となる。ここで、エンジニアリングプラスチックとの接着性が優れ、また耐熱性も良好となる理由は、特定の水酸基価のカルビノール変性ポリシロキサンを用いて得られるウレタンプレポリマーのウレタン結合部位(極性部)とシロキサン結合部位(非極性部)とのバランスが良好で、均一に近い相構造を形成するため、物性(引張強度と伸びのバランス等)が良好となり、また、被着体であるプラスチックとの相互作用が強く、更に、硬化後の架橋密度も高いためであると考えられる。
【0024】
本発明においては、上記ウレタンプレポリマーは、下記一般式(5)で表されるように、分子内の全てのNCO基に第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素が結合した構造を有していることが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の一液型としての保存(貯蔵)安定性が良好となり、また、硬化後の耐熱性がより向上し、耐水性も良好となる理由から好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
上記一般式(5)中、pは2以上の整数を表し、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいてもよい有機基であり、R8は水素原子であってもよい。また、複数のR7およびR8は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。更に、R8が水素原子である場合においては、R7とR8の一部とが結合して環を形成していてもよい。
【0027】
ここで、上記有機基としては、具体的には、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基などの炭化水素基;O、NおよびSからなる群より選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ有する基(例えば、エーテル、カルボニル、アミド、尿素基(カルバミド基)、ウレタン結合など)を含む有機基等が挙げられる。これらのうち、R7およびR8で表される有機基は、アルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基であることが好ましい。
【0028】
このようなウレタンプレポリマーを生成するポリイソシアネート化合物としては、上記一般式(5)で表される構造を有するウレタンプレポリマーが得られるものであるのが好ましく、公知の1液型のポリウレタン樹脂組成物の製造に用いられるものを用いることができる。
具体的には、上記で例示したポリイソシアネート化合物のうち、TMXDI、IPDI、水添MDI、水添TDIを用いることが、得られるウレタンプレポリマー自体の保存安定性および該ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤とを含有して得られる本発明の硬化性樹脂組成物の保存安定性が優れ、また、硬化後の耐熱性がより向上し、耐水性も良好となる理由から好ましい。
【0029】
また、本発明においては、上記ウレタンプレポリマーが、重量平均分子量1500以下で官能基数3以上のウレタンプレポリマーを2質量%以上含有していることが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の架橋密度が上がり、耐熱性がより向上するという理由から好ましい。
ここで、「重量平均分子量1500以下で官能基数3以上のウレタンプレポリマー」としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の低分子多価アルコール類と、上記ポリイソシアネート化合物のうちのジイソシアネート化合物との付加体が挙げられ、具体的には、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)とから合成されるTMXDI・TMP付加体が好適に挙げられる。
このような付加体としては、市販品として日本サイテックインダストリーズ社製のサイセン3174等を用いることもできる。また、上記付加体は、必ずしもOH:NCO完全付加体でなくても、未反応原料を含んでいてもよい。
【0030】
<潜在性硬化剤>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる潜在性硬化剤は、上述したウレタンプレポリマーの硬化剤であって、具体的には、以下に示すケチミン化合物が好適に例示される。
【0031】
本発明において潜在性硬化剤として好適に用いられるケチミン化合物は、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有する化合物である。したがって、本明細書においてケチミン化合物とは、−HC=N結合を有するアルジミンも含む意味で用いられる。
【0032】
このようなケチミン化合物の合成に用いられるケトンまたはアルデヒドとしては、広く公知のものを使用することができ、例えば、下記一般式(1)または(2)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
上記一般式(1)中、R1はメチル基または水素原子を表し、R2はメチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、R1およびR4、または、R2およびR4は結合して環を形成していてもよい。
上記一般式(2)中、R5はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基または水素原子を表し、R6はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基を表す。
【0035】
上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチル−t−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ピバルアルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、カルボニル基に分岐炭素が結合したイソブチルアルデヒド((CH3)2CHCHO)、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキシルケトン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、MTBK、MIPKであるのが好ましい。
また、上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ブチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトンであるのが好ましい。
【0036】
また、上記ケチミン化合物合成の原料として用いることができるアミン化合物としては、広く公知のものを使用することができ、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンであるのが好ましく、反応調整が容易という観点から下記一般式(6)で表されるポリアミンであるのがより好ましい。
【0037】
【化5】

式中、nは、2〜6の整数を表す。
【0038】
具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ポリアミドアミン、イソホロンジアミン、ポリエーテル骨格のジメチレンアミンであるH2N(CH2CH2O)2(CH22NH2(ジェファーミンEDR148、サンテクノケミカル社製)等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン(X2000、三和化学社製等)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC、三菱ガス化学社製)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジアミンであるノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ジェファーミンEDR148(商品名)、ポリアミドアミンであるのが好ましい。
【0039】
潜在性硬化剤として好適に用いられるケチミン化合物は、上述したように、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれる化合物であり、上記で例示した各種ケトンまたはアルデヒドと、各種アミンとの組み合わせによるものが挙げられる。
具体的には、後述する「ケチミン結合のα位に嵩高い基を有するケチミン化合物」および「アルデヒドとポリアミンとの組み合わせから得られるケチミン化合物(アルジミン)」の具体例以外に、メチルイソブチルケトン(MIBK)とプロピレンジアミンとから得られるもの、メチルエチルケトン(MEK)とブチレンジアミンとから得られるもの、ジエチルケトンとm−キシリレンジアミン(MXDA)とから得られるもの等が挙げられる。
このようなケチミン化合物は、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとを、無溶媒下、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱環流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
【0040】
また、本発明においては、上記ケチミン化合物は、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素または環員炭素が結合した構造、即ち、ケチミン結合のα位に嵩高い基を有する化合物であることが、上記ウレタンプレポリマーとの配合により得られる組成物の保存中、即ち、本発明の硬化性樹脂組成物の保存中において、該ウレタンプレポリマーと該ケチミン化合物との反応が抑制され、それらを安定に存在させることができる理由から好ましい。ここで、環員炭素は、芳香環を構成する炭素であっても、脂環を構成する炭素であってもよい。
【0041】
このようなケチミン化合物において、ケチミン炭素のα位に、分岐炭素または環員炭素を導入する際は、カルボニル基のα位に分岐状炭化水素基または環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒドが用いられる。
ここで、「カルボニル基のα位に分岐状炭化水素基または環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒド」としては、ジイソプロピルケトンや上記一般式(1)で表される分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒド;シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサンカルボクスアルデヒドなどの環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒド;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
ケチミン結合のα位に嵩高い基を有するケチミン化合物としては、具体的には、メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチル−t−ブチルケトン(MTBK)と、ジェファーミンEDR148とから得られるもの;MIPKまたはMTBKと、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)とから得られるもの;MIPKまたはMTBKと、ノルボルナンジアミン(NBDA)とから得られるもの;MIPKまたはMTBKと、m−キシリレンジアミン(MXDA)とから得られるもの;MIPKまたはMTBKと、ポリアミドアミン(X2000)とから得られるもの等が好適に例示される。
これらのうち、MIPKまたはMTBKと、1,3BACとから得られるもの、MIPKまたはMTBKと、NBDAとから得られるもの、MIPKまたはMTBKと、MXDAとから得られるものが、得られる本発明の硬化性樹脂組成物の硬化前の保存安定性がより向上するため好ましい。
【0043】
また、アルデヒドとポリアミンとの組み合わせから得られるケチミン化合物(アルジミン)としては、具体的には、ピバルアルデヒド、イソブチルアルデヒドおよびシクロヘキサンカルボクスアルデヒドからなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドと、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、ジェファーミンEDR148およびm−キシリレンジアミン(MXDA)からなる群より選択される少なくとも1種のアミンとの組み合わせから得られるものが好適に例示される。
【0044】
本発明においては、上述したケチミン化合物以外の他の潜在性硬化剤として、オキサゾリジン化合物を用いてもよい。
オキサゾリジン化合物は、酸素と窒素を含む飽和5員環の複素環を有する化合物で、湿気(水)の存在下で開環するオキサゾリジン環を有する化合物である。具体的には、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンおよびそのポリイソシアネート付加物、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネートオキサゾリジン、エステルオキサゾリジン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明において、上記潜在性硬化剤の含有量は、潜在性硬化剤の種類により変化するため特に限定されないが、例えば、潜在性硬化剤がケチミン化合物である場合は、(上記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基)/(ケチミン化合物中のケチミン結合)で表される当量比が、0.5〜5.0となるように含有していることが好ましく、1.0〜2.0となるように含有していることがより好ましい。
なお、後述するエポキシ樹脂を含有する場合においては、上記潜在性硬化剤の含有量は、(上記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基+後述するエポキシ樹脂中のエポキシ基)/(ケチミン化合物中のケチミン結合)で表される当量比が、0.5〜6.0となるように含有していることが好ましく、1.0〜3.0となるように含有していることがより好ましい。
【0046】
<エポキシ樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物に所望により添加されるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物からなる樹脂であれば特に限定されず、一般的に、エポキシ当量が90〜2000のものである。
このようなエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、更にナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
下記式(7)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;
【0047】
【化6】

【0048】
下記式(8)で表されるトリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類もしくはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
【0049】
【化7】


式中、mは、0〜15の整数を表す。
【0050】
脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記で例示した各種エポキシ樹脂のうち、骨格に芳香環を有するエポキシ樹脂を用いるのが、得られる硬化性樹脂組成物のエンジニアリングプラスチックとの接着性に優れ、硬化後の耐熱性が良好となる理由から好ましい。
また、このようなエポキシ樹脂としては、市販品としてジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート154、エピコート630等を用いることができる。
【0052】
本発明において、上記エポキシ樹脂の含有量は、上記ウレタンプレポリマーおよび上記エポキシ樹脂の合計質量に対して、5〜90質量%であるのが好ましく、10〜80質量%であるのがより好ましい。
エポキシ樹脂の含有量がこの範囲であれば、得られる本発明の硬化性樹脂組成物のエンジニアリングプラスチックに対する接着性および硬化後の耐熱性がより向上する理由から好ましい。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記潜在性硬化剤の加水分解触媒を含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明に用いられる加水分解触媒は、特に限定されず、その具体例としては、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などのカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどの有機金属類;等が挙げられる。
このような加水分解触媒を含有していれば、エンジニアリングプラスチックに本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した際に、潜在性硬化剤の湿気(水)による加水分解が促進され、接着性発現までの時間が短縮され、作業性および接着性のバランスが向上するため好ましい。
【0054】
本発明において、加水分解触媒の含有量は、上記潜在性硬化剤100質量部に対して0.01〜20質量部であるのが好ましく、0.1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明に用いられるシランカップリング剤は、特に限定されず、その具体例としては、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、ケチミンシランもしくはこれらの混合物もしくは反応物、または、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0056】
アミノシランは、アミノ基もしくはイミノ基と加水分解性のケイ素含有基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン等が挙げられる。
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メタクリルシランとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
イソシアネートシランとしては、例えば、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
ケチミンシランとしては、例えば、ケチミン化プロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0058】
シランカップリング剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマーおよび所望により添加される上記エポキシ樹脂の合計100重量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましい。
シランカップリン剤の含有量がこの範囲であれば、エンジニアリングプラスチックとの接着性がより良好となる理由から好ましい。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各種成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
【0060】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0061】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0062】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記のような各成分から本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上述したウレタンプレポリマーおよび潜在性硬化剤ならびに所望により加えられるエポキシ樹脂および各種添加剤を、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合する方法が挙げられる。
【0064】
このような本発明の硬化性樹脂組成物は、湿気硬化型であり、1液型の組成物として使用することができる。また、必要に応じて、ウレタンプレポリマーを主剤(A液)側とし、潜在性硬化剤を硬化剤(B液)側とした2液型の組成物として使用することもできる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、湿気にさらすと、潜在性硬化剤の加水分解により生起するアミン化合物により硬化反応が進行する。また、適宜水分を供給して、硬化反応を進行させることもできる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上のような特性を有することから、電子部品ハウジング、電機部品に用いられるエンジニアリングプラスチックの接着剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ウレタンプレポリマー1>
ウレタンプレポリマー1として、カルビノール変性ポリシロキサン(商品名:X−22−160AS、水酸基価:120mgKOH/g、重量平均分子量:1000、信越化学工業社製)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、日本サイテックインダストリーズ社製)とを、イソシアネート基/水酸基(水酸基1個あたりのイソシアネート基の基数)(以下、単に「NCO/OH」という。)=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、撹拌しながら反応させることにより合成した、NCO基を5.5質量%含有するPSi1000・TMXDIを用いた。
【0067】
<ウレタンプレポリマー2>
ウレタンプレポリマー2として、カルビノール変性ポリシロキサン(商品名:KF−6003、水酸基価:22mgKOH/g、重量平均分子量:5000、信越化学工業社製)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、日本サイテックインダストリーズ社製)とを、NCO/OH=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、撹拌しながら反応させることにより合成した、NCO基を1.5質量%含有するPSi5000・TMXDIを用いた。
【0068】
<ウレタンプレポリマー3>
ウレタンプレポリマー3として、カルビノール変性ポリシロキサン(商品名:X−22−160AS、水酸基価:120mgKOH/g、重量平均分子量:1000、信越化学工業社製)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI、デグッサヒュルス社製)とを、NCO/OH=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、撹拌しながら反応させることにより合成した、NCO基を5.5質量%含有するPSi1000・IPDIを用いた。
【0069】
<ウレタンプレポリマー4>
ウレタンプレポリマー4として、ポリプロピレングリコール(商品名:エクセノール1020、重量平均分子量:1000、旭硝子社製)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI、デグッサヒュルス社製)とを、NCO/OH=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、撹拌しながら反応させることにより合成した、NCO基を5.5質量%含有するPPG1000・IPDIを用いた。
【0070】
<ウレタンプレポリマー5>
ウレタンプレポリマー5として、ポリカーボネートポリオール(商品名:プラクセルCD220、重量平均分子量:1000、ダイセル化学工業社製)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI、デグッサヒュルス社製)とを、NCO/OH=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、撹拌しながら反応させることにより合成した、NCO基を5.5質量%含有するPCD1000・IPDIを用いた。
【0071】
<ウレタンプレポリマー6>
ウレタンプレポリマー6として、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)と、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)との反応物(NCO/OH=2.0)であるTMXDI・TMP付加体(サイセン3174、日本サイテックインダストリーズ社製)を用いた。
【0072】
<潜在性硬化剤1>
潜在性硬化剤1として、ノルボルナンジアミン(NBDA、三井東圧化学社製)100gと、メチルイソプロピルケトン(MIPK)200gとを、トルエン200gとともにフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら20時間反応させることで合成した、下記式(9)で表されるケチミン化合物1を用いた。
【0073】
【化8】

【0074】
<潜在性硬化剤2>
潜在性硬化剤2として、m−キシリレンジアミン(MXDA)100gと、ジエチルケトン200gとを、トルエン200gとともにフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら20時間反応させることで合成した、下記式(10)で表されるケチミン化合物2を用いた。
【0075】
【化9】

【0076】
<エポキシ樹脂1>
エポキシ樹脂1として、汎用ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEP4100E(旭電化工業社製、エポキシ当量190)を用いた。
【0077】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
上述した各組成成分および下記表1に示す各種添加剤(加水分解触媒、充填剤、水)を、下記表1に示す成分比(質量部)で配合し、各組成物を調製した。得られた各組成物について、以下に示す作業性、接着性および耐熱性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0078】
<作業性>
作業性の評価として、得られた各組成物の粘度を調べた。
粘度(Pa・s)は、得られた各組成物の調整直後、BS型粘度計(No.7ロータ)を用いて、23℃下、回転速度10rpm下で計測した。
【0079】
<接着性>
接着性の評価として、得られた各組成物の引張せん断接着強さを調べた。
引張せん断接着強さの測定は、以下に示すように接着・硬化した、ナイロン製被着体の引張せん断接着強さ試験により行った。
試験片としては、ナイロン製被着体(寸法:3mm×25mm×70mm)に、得られた各組成物を接着面積が25mm×10mmとなるように2mm厚塗布し、接着剤の塗布面同士を0.1MPaの圧力で押さえつけた後、該圧力を解除した状態で、23℃、60%RHの条件下、1日間硬化させたものを用いた。
引張せん断接着強さ試験は、JIS K6850:1999に準じて行い、引張り速度が20mm/minで23℃における引張り強さ(引張せん断接着強さ)の値(MPa)を測定した。
【0080】
<耐熱性>
耐熱性の評価として、上記引張せん断接着強さ試験で用いた試験片を更に120℃下、1週間保存した後、室温下で引張せん断接着強さを調べた。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示す結果より、実施例1〜5に示す組成物は、比較例1〜3の組成物に比べ、作業性、接着性および耐熱性に優れ、そのバランスも良好であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が30〜240mgKOH/gのカルビノール変性ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、潜在性硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーが、分子内の全てのイソシアネート基に第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素が結合した構造を有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマーが、重量平均分子量1500以下で官能基数3以上のウレタンプレポリマーを2質量%以上含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記潜在性硬化剤が、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ケトンまたはアルデヒドが、下記一般式(1)または(2)で表される化合物である請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1はメチル基または水素原子を表し、R2はメチル基またはエチル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1およびR4、または、R2およびR4は結合して環を形成していてもよい。R5はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基または水素原子を表し、R6はカルボニル基のα位に分岐状炭化水素基もしくは環状炭化水素基を有しない炭素数2以上の炭化水素基を表す。)
【請求項6】
更に、エポキシ樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−77156(P2006−77156A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263850(P2004−263850)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】