説明

硬化性樹脂組成物

【課題】低温かつ短時間で硬化でき、更に、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリエステルウレタン(A)と、ポリアミド(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリイミドフィルムは多くの電子機器等に使用されるようになり、適用範囲が拡大している。一方、接着剤としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されてきたが、硬化温度が比較的高く、低温かつ短時間での接着には不向きであった。
このような問題に対し、特許文献1〜5には、ラジカル重合可能な樹脂を用いることにより、低温かつ短時間で接着し得る材料が記載されている。
【0003】
また、特許文献6には「光または熱によって硬化する接着剤組成物と、ウレタン基およびエステル基を有する有機化合物と、を含有し、基板およびこれの主面上に形成された回路電極を有する回路部材同士を接続するための回路接続材料」が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−285666号公報
【特許文献2】特許第3587859号公報
【特許文献3】特許第3344886号公報
【特許文献4】特開2005−307210号公報
【特許文献5】特開2007−45900号公報
【特許文献6】特開2006−318990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された材料は、低温かつ短時間で接着が可能であったとしてもポリイミドに対する接着性が十分でなかった。
また、特許文献4〜6に記載の回路接続材料は、高温高湿下に放置された後に接着性が著しく低下する場合があり、また、ポリイミドに対する接着性を更に向上させる余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、低温かつ短時間で硬化でき、更に、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリエステルウレタン(A)と、ポリアミド(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有する硬化性樹脂組成物が、低温かつ短時間で硬化でき、更に、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる硬化性樹脂組成物になることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記(1)〜(9)を提供する。
(1)ポリエステルウレタン(A)と、ポリアミド(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有する硬化性樹脂組成物。
【0009】
(2)前記ポリエステルウレタン(A)が、カルボキシ基を酸価として5.0KOHmg/g以上含む上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(3)前記ポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量が、100,000を超える上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(4)前記ポリエステルウレタン(A)のガラス転移温度が、0℃以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
(5)前記ポリアミド(B)が、ポリエーテルエステルアミドおよび/またはポリエステルアミドである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
(6)前記ポリアミド(B)の含有量が、前記ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して1〜50質量部である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
(7)前記ラジカル重合性化合物(C)の含有量が、前記前記ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して2〜200質量部である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
(8)前記ポリエステルウレタン(A)が、芳香族ジカルボン酸残基を含む上記(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0016】
(9)前記芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸残基である上記(8)に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低温かつ短時間で硬化でき、更に、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)は、ポリエステルウレタン(A)と、ポリアミド(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有する硬化性樹脂組成物である。
【0019】
<ポリエステルウレタン(A)>
本発明の組成物に用いられるポリエステルウレタン(A)は、カルボキシ基を有するポリエステル(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させて得られる化合物である。
【0020】
ポリエステルウレタン(A)としては、芳香族ジカルボン酸残基を含むものがポリイミドに対する接着性に優れる点から好ましい。特に、テレフタル酸残基を含むものがポリイミドに対する接着性により優れる点からより好ましい。
また、ポリエステルウレタン(A)としては、ジメチロールブタン酸残基および/またはジメチロールプロピオン酸残基を含むものがポリイミドに対する接着性に優れる点から好ましい。
なお、本明細書において、芳香族ジカルボン酸残基は、芳香族ジカルボン酸からカルボキシ基を除いた構造を意味する。ジメチロールブタン酸残基は、ジメチロールブタン酸からカルボキシ基とヒドロキシ基とを除いた構造を意味する。ジメチロールプロピオン酸残基は、ジメチロールプロピオン酸からカルボキシ基とヒドロキシ基とを除いた構造を意味する。
また、芳香族ジカルボン酸は、芳香環とこの芳香環に結合したカルボキシ基を2個有する化合物をいう。
【0021】
上記ポリエステル(a1)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸とポリオール化合物との反応により得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有する化合物が好適に挙げられる。また、ジメチロールブタン酸とポリオール化合物との反応により得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有する化合物も好適に挙げられる。
上記ポリエステル(a1)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0022】
上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、メタフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等がポリイミドに対する接着性に優れる組成物が得られる点から好適に挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、テレフタル酸がより高い接着性が得られる点から好ましい。
【0023】
また、アジピン酸、セバシン酸、長鎖ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸を上記芳香族ジカルボン酸と併用してもよい。
上記長鎖ジカルボン酸は、炭素数20以上のジカルボン酸であり、例えば、エイコサン二酸、ドコサン二酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0024】
上記ポリエステル(a1)に用いられるポリオール化合物としては、ポリエステルの製造に用いられる公知のポリオール化合物を特に制限なく使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、長鎖グリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記長鎖グリコールは、重量平均分子量400〜6000のグリコールであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,3−プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
上記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのポリイソシアネート化合物の中でも、耐熱性に優れる点からHDI、XDI、IPDIが好ましい。
【0026】
ポリエステルウレタン(A)を製造する方法は、特に限定されず、上記ポリエステル(a1)と上記ポリイソシアネート化合物(a2)とを原料として、公知の方法に準じて製造できる。好ましくは、得られるポリエステルウレタン(A)が、カルボキシ基を酸価として5.0KOHmg/g以上含むように、上記ポリエステル(a1)および上記ポリイソシアネート化合物(a2)を混合し、反応させる。
【0027】
ポリエステルウレタン(A)は、カルボキシ基を酸価として5.0KOHmg/g以上含むものが好ましい。ポリエステルウレタン(A)の酸価が上記範囲である場合、本発明の組成物はポリイミドに対する接着性、耐湿熱性および顔料分散性により優れる。これらの特性に更に優れる点から、カルボキシ基を酸価として10KOHmg/g以上含むものがより好ましく、15KOHmg/g以上が更に好ましく、20KOHmg/g以上が特に好ましい。
また、硬化後の収縮を抑えるという点から、50KOHmg/g以下が好ましい。
【0028】
ポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量は、耐屈曲性に優れる点から100,000を超えることが好ましい。また、被膜をより強靭にするという点からポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量は、150,000を超えることがより好ましく、200,000以上が更に好ましい。
また、ポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量は、他の成分との相溶性を損なわないという点から1,000,000以下が好ましい。
【0029】
ポリエステルウレタン(A)は、耐熱性に優れる点から、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であるのが好ましく、10℃以上であるのがより好ましい。
【0030】
また、ポリエステルウレタン(A)は、市販品を用いることもできる。例えば、東洋紡績社製のバイロンUR(例えば、UR3500、UR2300、UR1700)がポリイミドに対する接着性に優れる点から好適に挙げられる。
ポリエステルウレタン(A)としては、より高い接着性が得られる点からバイロンUR3500(酸価:35KOHmg/g)が好ましく、耐熱性に優れる点からバイロンUR1700が好ましく、耐熱性と接着性のバランスに優れる点からUR3500とUR1700とを併用するのが好ましい。
【0031】
<ポリアミド(B)>
本発明の組成物に用いられるポリアミド(B)は、主鎖中にアミド結合を有する重合体であれば特に限定されない。
ポリアミド(B)としては、具体的には、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン類等の脂肪族、脂環族または芳香族の炭素数が4以上のジアミンと、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、重合脂肪酸等の脂肪族、脂環族または芳香族の炭素数が6以上のジカルボン酸とから製造されるポリアミド;ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、ω−アミノカプリル酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数が6以上のアミノカルボン酸から製造されるポリアミド;カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等の炭素数が6以上のラクタムから製造されるポリアミド;これらの共重合ポリアミド、またはこれらの混合ポリアミド等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから製造されるポリアミド、ヘキサメチレンジアミンと重合脂肪酸とアゼライン酸またはセバシン酸とから製造されるポリアミド、12−アミノドデカン酸から製造されるポリアミド、カプロラクタムから製造されるポリアミドが好ましい。
【0032】
上記重合脂肪酸としては、不飽和脂肪酸、例えば炭素数が10〜24の二重結合または三重結合を1個以上有する一塩基性脂肪酸を重合して得た重合脂肪酸が用いられる。具体例としては、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の二量体が挙げられる。
【0033】
市販されている重合脂肪酸は、通常二量体化脂肪酸を主成分とし、他に原料の脂肪酸や三量体化脂肪酸を含有するが、二量体化脂肪酸含有量が70質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、更に、水素添加して不飽和度を下げたものが好ましい。
具体的には、例えば、プリポール1009、プリポール1004、プリポール1010(以上ユニケマ社製)やエンポール1010(ヘンケル社製)等が好適に挙げられる。
【0034】
上述したポリアミド(B)の重量平均分子量は、樹脂の凝集力が高くなり接着性が上がる点から5,000〜50,000であるのが好ましく、5,000〜30,000であるのがより好ましく、10,000〜20,000であるのが更に好ましい。
【0035】
ポリアミド(B)としては、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性により優れる点から、ポリエーテルエステルアミドおよび/またはポリエステルアミドが好ましい。
【0036】
上記ポリエーテルエステルアミドは、主鎖中にアミド結合、エーテル結合およびエステル結合を有する重合体であり、ポリアミド成分とポリエーテルエステル成分とを反応させて得ることができる。ポリエーテルエステルアミドとしては、例えば、特開2003−206428号公報に記載されたものを好適に使用できる。
【0037】
ポリエーテルエステルアミドの製造に用いられるポリアミド成分としては、例えば、上述したポリアミドを用いることができる。
【0038】
ポリエーテルエステルアミドの製造に用いられるポリエーテルエステル成分は、ポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸とを反応させて得ることができる。
【0039】
上記ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロックまたはランダム共重合体、二価フェノール化合物と上記ポリオキシアルキレングリコールとの共重合体等が挙げられる。
これらポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量は200〜3000であることが好ましい。
【0040】
上記ジカルボン酸としては、炭素数が6〜20のジカルボン酸が好ましく、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;等が挙げられる。特に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸が、重合性およびポリエーテルエステルアミドの物性の点から好ましい。
【0041】
上記ポリエーテルエステルアミドの製造に用いられるポリアミド成分とポリエーテルエステル成分との質量比は、95/5〜20/80であるのが好ましい。この範囲であると、耐衝撃性、機械的強度および耐熱性に優れる。
【0042】
上記ポリエーテルエステルアミドの重量平均分子量は、樹脂の凝集力が高くなり、接着性が上がる点から5,000〜50,000であるのが好ましく、5,000〜30,000であるのがより好ましく、10,000〜20,000であるのが更に好ましい。
【0043】
上記ポリエーテルエステルアミドの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、まずポリアミドオリゴマーを合成し、これにポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸を加え、減圧下で加熱して高重合度化させる方法が挙げられる。
【0044】
上記ポリエステルアミドは、上述したポリエーテルエステルアミド以外の主鎖中にアミド結合およびエステル結合を有する重合体であり、ポリアミドとポリエステルとを反応させて得ることができる。ポリエステルアミドとしては、例えば、特開2002−3601号公報に記載されたものを好適に用いることができる。
【0045】
上記ポリエステルアミドとしては、下記式(1)で表されるポリアミド単位(a−1)と下記式(2)で表されるポリアミド単位(a−2)とを有するコポリアミド成分(a)と、下記式(3)で表される繰返し単位を有するポリエステル成分(b)との共重合により得られるポリエステルアミドが好適に挙げられる。
【0046】
【化1】

【0047】
上記式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数6〜44の脂肪族ジアミンまたは脂環族ジアミンからアミノ基を除いた残基を表す。
は、炭素数6〜22の脂肪族または芳香族ジカルボン酸からカルボキシ基を除いた残基を表す。
は、炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基を表す。
【0048】
は、炭素数2〜54の置換または非置換の脂肪族または脂環族ジオールからヒドロキシ基を除いた残基を表す。
は、炭素数6〜22の脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸からカルボキシ基を除いた残基、または、炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基を表す。
【0049】
上記ポリエステルアミドは、少なくとも天然の脂肪酸から誘導された炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸および/またはその誘導体(誘導体にはダイマージオールおよびダイマージアミンも含まれる)に由来する残基が、構成成分量として10〜90質量%の範囲で含有されるのが好ましい。
【0050】
ポリアミド単位(a−1)の製造に用いられる炭素数6〜44の脂肪族ジアミンまたは脂環族ジアミン類としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、炭素数20〜48の重合脂肪酸から誘導されるダイマージアミン等の脂肪族ジアミン;ビス−(4,4′−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ジアミン;等が挙げられ、1種または2種以上の混合物であってもよい。
特に、ポリエステルアミドの溶剤への溶解性および力学的性質に優れる点から、脂環族ジアミン類が好ましい。
【0051】
ポリアミド単位(a−1)の製造に用いられる炭素数6〜22の脂肪族または芳香族ジカルボン酸およびこれらのエステル誘導体としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、ヘキサデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸およびこれらのエステル誘導体等が挙げられ、1種または2種以上の混合物であってもよい。
特に、ポリエステルアミドの溶剤への溶解性および力学的性質に優れる点から、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸が好ましい。
【0052】
ポリアミド単位(a−2)の製造に用いられる炭素数6〜44の脂肪族ジアミンまたは脂環族ジアミン類としては、ポリアミド単位(a−1)に例示したジアミン類から選ばれる1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0053】
ポリアミド単位(a−2)の製造に用いられる炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸およびその誘導体としては、主に炭素数10〜24の二重結合または三重結合を1個以上有する一塩基性不飽和脂肪酸を重合して得た重合脂肪酸が用いられる。例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の獣植物油脂肪酸およびこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、エルカ酸等から重合した重合脂肪酸およびこれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0054】
市販されている重合脂肪酸は、通常ダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とし、他に原料の脂肪酸や三量体化以上の脂肪酸を含有するが、ダイマー酸(二量体化脂肪酸)含有量が70質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、かつ水素添加して不飽和度を下げたものが望ましい。
特に、プリポール1004,1009,プリポール1010(以上ユニケマ社製)やエンポール1008(コグニス社製)等の市販品が好ましい。これらの混合物およびエステル誘導体も好ましい。
【0055】
本発明に用いられるコポリアミド成分(a)は、ポリアミド単位(a−1)とポリアミド単位(a−2)との共重合比が、質量比で95/5〜40/60の範囲で共重合されるのが好ましい。より好ましくは、ポリアミド単位(a−1)/ポリアミド単位(a−2)の共重合比が、質量比で90/10〜50/50の範囲である。
この範囲であると、コポリアミド成分(a)とポリエステル成分(b)との相溶性、コポリアミド成分(a)の凝集性(結晶性)、得られる組成物のポリイミドに対する接着性に優れる。
【0056】
上記ポリエステル成分(b)に用いられる炭素数2〜54の置換または非置換の脂肪族または脂環族ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族多価アルコール;シクロペンタジエン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環族多価アルコール;ダイマー酸(二量体化脂肪酸)を還元したダイマージオール;等が挙げられ、1種または2種以上の混合物であってもよい。
特に、ポリエステルアミドの溶剤への溶解性、力学的性質に優れる点から、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマージオールが好ましい。好ましく用いられる重合脂肪酸の誘導体であるダイマージオールとしては、ベスポールHP−1000(東亞合成社製),Pripol2033(ユニケマ社製),SpeziolC36/2(コグニス社製)等の市販品が挙げられる。
本明細書で、「重合脂肪酸の誘導体」と記載する場合には、上記のようなダイマージオールを含む場合がある。
【0057】
上記ポリエステル成分(b)に用いられる炭素数6〜22の脂肪族または芳香族ジカルボン酸およびこれらのエステル誘導体、炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸およびこの誘導体としては、ポリアミド単位(a-1)およびポリアミド単位(a−2)の原料として例示した化合物から選ばれる1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0058】
本発明のポリエステル成分(b)は、その構成成分中にダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸またはこの誘導体(誘導体にはダイマージオールおよびダイマージアミンも含まれる)を導入した系であれば特に限定されるものではない。
ポリエステル成分(b)としては、炭素数2〜6の置換または非置換の脂肪族ジオールおよび/または脂環式ジオールと、炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸およびそのエステル誘導体より得られるポリエステル成分、ならびに、炭素数6〜22の脂肪族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸およびそのエステル誘導体と、炭素数20〜48のダイマー酸(二量体化脂肪酸)を主成分とする重合脂肪酸から誘導されるダイマージオールより構成されるポリエステル成分が好適に挙げられる。
【0059】
ただし、ポリエステル成分(b)に含まれる重合脂肪酸またはこの誘導体成分(誘導体にはダイマージオールおよびダイマージアミンも含まれる)の構成割合は、コポリアミド成分(a)で使用した重合脂肪酸またはこの誘導体の構成割合を含めて、得られるポリエステルアミド共重合体中の10〜90質量%であるのが好ましい。より好ましくは、ダイマー酸(二量体化脂肪酸)またはこの誘導体成分の構成割合が、得られるポリエステルアミド中に20〜80質量%である。
この範囲であると、ポリエステルアミドの溶剤に対する溶解性、耐水性、柔軟性、ポリイミドに対する接着性等に優れる。
【0060】
上記ポリエステルアミドは、コポリアミド成分(a)/ポリエステル成分(b)の共重合比が、好ましくは質量比で95/5〜50/50、より好ましくは90/10〜60/40の範囲で共重合したものが好適に用いられる。この範囲であると、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性により優れる。
【0061】
上記ポリエステルアミドとしては、コポリアミド成分(a)とポリエステル成分(b)とがエステル結合またはアミド結合により連結し、その連続して形成される分子鎖の少なくとも片末端基がヒドロキシ基および/またはカルボキシ基で反応停止したもの、即ち、末端にヒドロキシ基および/またはカルボキシ基を有するものがポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる点から好ましい。
ポリエステルアミドの末端カルボキシ基濃度は、0.1〜30mgKOH/gであるのが好ましく、0.5〜15mgKOH/gであるのがより好ましい。この範囲であると、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性により優れる。
【0062】
上記ポリエステルアミドの重量平均分子量は、樹脂の凝集力が高くなり、接着性が上がる点から5,000〜50,000であるのが好ましく、5,000〜30,000であるのがより好ましく、10,000〜20,000であるのが更に好ましい。
【0063】
上記ポリエステルアミドは、公知の方法等により合成する事ができる。
例えば、上記コポリアミド構成成分を重縮合反応により進行させ、末端に官能基を有したコポリアミドを合成した後、コポリアミドの存在下、上記ポリエステル構成成分を重合させる方法等によって行う事ができる。この重縮合反応は、通常、第一段階としてアミド化反応を進行させ、第二段階にエステル化反応を進行させる事により実施される。
【0064】
上記アミド化反応は、ポリアミド単位(a−1)とポリアミド単位(a−2)の構成成分が所定割合になるように配合した後、昇温し、重縮合反応により生成する水を系外に除去しながら、180℃〜270℃の反応温度範囲で末端官能基濃度が所定濃度に到達するまで重合を進行させる。上記反応により得られるコポリアミドは、少なくとも片末端基がカルボキシル基またはアミノ基で反応停止されているのが好ましい。
【0065】
上記エステル化反応は、アミド化反応終了後、上記末端に官能基を有したコポリアミドとポリエステル構成成分との比が所定割合になるように、ポリエステル構成成分を配合した後、重縮合反応により生成する水を系外に除去しながら、180℃〜270℃の反応温度範囲でエステル化を進行させる。
コポリアミド成分とポリエステル成分との反応は、透明で均質な溶液状態で進行させるのが好ましく、不均一で濁った状態では、反応が効率よく進行しない。
このように、コポリアミド成分とポリエステル成分とを効率よく反応させるためには、減圧下、好ましくは、10mmHg以下で反応を進行させるのが好ましい。反応温度が180℃未満であると、反応速度が小さく、また、系の重合粘度が高くなるので、効率的な重縮合反応が困難となる。一方、反応温度が270℃を超えると、分解、着色反応が起こりやすくなり、好ましくない。
【0066】
上記エステル化反応において、反応を効率的に進行させるため、エステル化触媒を使用することができる。
触媒については、特に限定されるものではなく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグルシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、タングステン、スズ、アンチモン、セリウム、ホウ素、マンガン、ジルコニウム等の金属;有機金属化合物;有機酸塩;金属アルコキシド;金属酸化物;等が挙げられる。より好ましいものとしては、テトラブトキシチタン、酢酸カルシウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニル、ジアシル第一スズ、テトラアシル第二スズ、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、スズジオクタノエート、スズテトラアセテート、トリイソブチルアルミニウム、テトラブチルチタネート、テトラプロポキシチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、二酸化ゲルマニウム、タングステン酸、酸化アンチモン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
上記ポリエステルアミドの重合反応において、どの段階からも酸化分解、熱分解および着色性を防止する目的で、安定剤を併用する事ができる。
このような安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,3−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3′−チオジプロピオネート等の熱安定剤;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上述したポリアミド(B)の含有量は、ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して1〜50質量部であるのが好ましく、5〜25質量部であるのがより好ましく、5〜15質量部であるのが更に好ましい。この範囲であると、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性により優れる。
【0069】
<ラジカル重合性化合物(C)>
本発明の組成物に用いられるラジカル重合性化合物(C)は、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物であれば特に限定されない。
ラジカル重合性化合物(C)としては、例えば、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性化合物(C)は、モノマー、オリゴマーいずれの状態でも用いることができ、モノマーとオリゴマーとを併用することもできる。
【0070】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基およびトリアジン環のうち少なくとも1種を有する化合物が、耐熱性に優れる点から好ましい。
また、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を併用してもよい。
【0071】
上記マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、N,N′−p−フェニレンビスマレイミド、N,N′−m−トルイレンビスマレイミド、N,N′−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N′−4,4−(3,3′−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N′−4,4−(3,3′−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N′−4,4−(3,3′−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N′−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N′−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N′−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N′−3,3′−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−4−8(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4′−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン]、2,2−ビス[4−(4ーマレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
また、ラジカル重合性化合物(C)としては、ポリイミドに対する接着性に優れる組成物が得られる点から、(メタ)アクリロイル基と、芳香環と、この芳香環に直接結合したカルボキシ基とを有する化合物が好適に挙げられる。このような化合物としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が、ポリイミドに対する接着性により優れる組成物が得られる点から好適に挙げられる。また、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートも、ポリイミドに対する接着性に優れる組成物が得られる点から好ましい。
上記ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
【化2】

【0074】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜6の分岐していてもよい2価の炭化水素基であり、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、−CH(CH3)CH2−等が挙げられ、エチレン基であるのが好ましい。
上記式(5)中、R8は水素原子またはアクリロイル基を表す。
上記式(6)中、R9はメチル基またはヒドロキシ基を表し、メチル基であるのが好ましい。R10は炭素数2または3のアルキレン基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。nは0〜2の整数を表す。
上記式(7)中、rは1〜5の整数を表す。
【0075】
ラジカル重合性化合物(C)としては、具体的には、例えば、下記式(4′)、(5′)、(5′′)、または(6−1)〜(6−6)で表される化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性化合物(C)としては、下記式(4′)、(5′)、(6−1)、上記式(7)で表される化合物、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が、ポリイミドに対する接着性により優れる組成物が得られる点から好適に挙げられる。
【0076】
【化3】

【0077】
ラジカル重合性化合物(C)の含有量は、特に限定されないが、上記ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して2〜200質量部であるのが好ましく、50〜150質量部であるのがより好ましい。ラジカル重合性化合物(C)の含有量がこの範囲であると、ポリイミドに対する接着性に優れる。
【0078】
上記ラジカル重合性化合物(C)としては、例えば、東亞合成社製のアロニックス等の市販品を用いることもでき、上記式(4)に該当するものとしてはM−5400;上記式(5)に該当するものとしてはM−215、M−313、M−315;上記式(6)に該当するものとしてはM−309、M−305、M−310、M−320、M−350、M−360;上記式(7)に該当するものとしてはM−5600等が挙げられる。
また、新中村化学工業社製のU−324A、UA−512、UA−340P等のウレタン(メタ)アクリレート;NKオリゴ EA−1020等のビスフェノールA型エポキシアクリレート;NKオリゴ EA−6320等のフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート;NKオリゴ EA−6340、NKオリゴ EA−7140、NKオリゴ EA−7440等のカルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート;NKエステル A−BPE−10、NKエステル A−BPE−20、NKエステル BPE−500等のエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;NKエステル AMP−20GY、NKエステル AMP−60G等のフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等;共栄社化学社製のエポキシエステル3000A、エポキシエステル3002M、エポキシエステル80MFA、DCP−A等も好適に挙げられる。
【0079】
<ラジカル開始剤(D)>
本発明の組成物に用いられるラジカル開始剤(D)は、特に限定されず、公知のラジカル開始剤を用いることができる。
ラジカル開始剤(D)としては、例えば、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、シリルパーオキサイド等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも高反応性である点からパーオキシエステルが好ましい。
【0080】
上記パーオキシエステルとしては、具体的には、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0081】
上記ジアルキルパーオキサイドとしては、具体的には、例えば、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0082】
上記ハイドロパーオキサイドとしては、具体的には、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0083】
上記ジアシルパーオキサイドとしては、具体的には、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0084】
上記パーオキシジカーボネートとしては、具体的には、例えば、ジ−n−ブロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトジシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0085】
上記パーオキシケタールとしては、具体的には、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキスルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0086】
上記シリルパーオキサイドとしては、具体的には、例えば、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0087】
ラジカル開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.01〜5質量部であるのがより好ましい。ラジカル開始剤(D)の含有量がこの範囲であると、低温かつ短時間で硬化可能である。
【0088】
本発明の組成物は、更に、溶剤を含有するのが好ましい。
溶剤は、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0090】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0091】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0092】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0093】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0094】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0095】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0096】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等の撹拌機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
【0097】
本発明の組成物は、低温かつ短時間(例えば、160℃で10秒)で硬化でき、更に、ポリイミドに対する接着性および耐湿熱性に優れる。
また、ポリエステルウレタン(A)がカルボキシ基を酸価として5.0KOHmg/g以上含む場合、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性および顔料分散性により優れる。
また、ポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量が100,000を超えると、耐屈曲性により優れる。
また、ポリアミド(B)が、ポリエーテルエステルアミドおよび/またはポリエステルアミドである場合、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性により優れる。
したがって、本発明の組成物は、ポリイミド材料同士あるいはポリイミド材料と他の材料とを接合するための接着剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜6および比較例1)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す割合(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた各組成物について、下記に示す方法により、ポリイミドに対する接着性(初期)、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性を評価した。
結果を第1表に示す。
【0099】
<ポリイミドに対する接着性(初期)>
ポリイミドフィルム(カプトン(登録商標)、東レ・デュポン社製、厚さ25μm)を2枚用意し、一方のポリイミドフィルムに得られた各組成物を塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥して溶剤を除去した。次に、このフィルムの組成物塗布面に、他方のポリイミドフィルムを貼り合わせ、3MPa、160℃の条件で10秒間熱プレスして接着させた後、1cm幅に切り出し、試験片を作製した。
得られた試験片にて、剥離試験機(イマダ社製)により、試験温度23℃、引張速度50mm/minで180度剥離試験を行い、剥離強度を測定した。この値を剥離強度(初期)とした。
【0100】
<耐湿熱性>
上記<ポリイミドに対する接着性(初期)>のように作製した試験片を85℃、85%RHの条件下で500時間放置した後、上記と同様に剥離強度を測定した。
【0101】
<耐屈曲性>
得られた各組成物をPETフィルム(ルミラー、東レ社製、厚さ100μm)上に塗布し、150℃で20分間乾燥させて厚さ100μmの被膜を形成させて試験片を得た。
得られた試験片を1〜2秒で180度折り曲げを行い、折り曲げ部分の表裏両面共に異常のなかったものを「○」とし、少なくともどちらか一方の面に亀裂または剥離等の異常があったものを「×」とした。
【0102】
<顔料分散性>
得られた各組成物に酸化チタン(JR−310、テイカ社製)を各組成物中のポリエステルウレタン100質量部に対して50質量部加えて混合した後、ガラス板にバーコーター(マイクロメーター付きフィルムアプリケーター、Sheen社製)で塗布した。これを150℃で20分間乾燥して、厚さ40μmの着色塗膜を得た。
JIS K5400−1990に準じて、60度鏡面光度計(ハンディ型光沢計 PG−1、日本電色工業社製)を用いて60度鏡面反射率を測定した。
反射率が高いほど、塗膜の表面の光沢度合いが高く、顔料分散性に優れていると言える。
【0103】
【表1】

【0104】
上記第1表中の配合量は全て固形分量である。
第1表中の各成分は下記のとおりである。
・ポリエステルウレタン(A−1):テレフタル酸に由来する構造を含むポリエステルウレタン、バイロンUR3500、東洋紡績社製、酸価35KOHmg/g、重量平均分子量110,000、ガラス転移温度10℃、樹脂固形分濃度40質量%(溶剤 トルエン)
・ポリエステルウレタン(A−2):テレフタル酸に由来する構造を含むポリエステルウレタン、バイロンUR1700、東洋紡績社製、酸価26KOHmg/g、重量平均分子量360,000、ガラス転移温度92℃、樹脂固形分濃度30質量%(溶剤 メチルエチルケトン)
・ポリエステルウレタン(A−3):テレフタル酸に由来する構造を含むポリエステルウレタン、バイロンUR1400、東洋紡績社製、酸価1KOHmg/g未満、重量平均分子量110,000、ガラス転移温度83℃、樹脂固形分濃度30質量%(溶剤 メチルエチルケトン/トルエン=50/50)
【0105】
・ポリエステルウレタン(A−4):乾燥したポリエステルポリオール100gを脱水したトルエン100gに溶解させ、ジメチロールブタン酸1.4g、ヘキサメチレンジイソシアネート2.36gおよび触媒としてジブチルスズジラウレート0.05gを加え、80℃で5時間反応させた。反応終了後、脱水したメチルエチルケトン55.6gを加え、固形分40質量%のポリエステルウレタン(A−4)を得た。得られたポリエステルウレタンの重量平均分子量は80,000、酸価は5.11KOHmg/gであった。
【0106】
・ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体:TPAE−32、富士化成工業社製
・ポリエステルアミドブロック共重合体:TPAE−617、富士化成工業社製
・ラジカル重合性化合物(C−1):ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、DCP−A、共栄社化学社製
・ラジカル重合性化合物(C−2):イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、アロニックスM−315、東亞合成社製
・ラジカル開始剤(D):2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、パーヘキシン25B、日本油脂社製
【0107】
上記第1表に示す結果から明らかなように、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエステルアミドを含有しない組成物(比較例1)は、ポリイミドに対する接着性が十分ではなかった。
一方、実施例1〜6は、ポリイミドに対する接着性、耐湿熱性、耐屈曲性および顔料分散性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルウレタン(A)と、ポリアミド(B)と、ラジカル重合性化合物(C)と、ラジカル開始剤(D)とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルウレタン(A)が、カルボキシ基を酸価として5.0KOHmg/g以上含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルウレタン(A)の重量平均分子量が、100,000を超える請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルウレタン(A)のガラス転移温度が、0℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド(B)が、ポリエーテルエステルアミドおよび/またはポリエステルアミドである請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド(B)の含有量が、前記ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して1〜50質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性化合物(C)の含有量が、前記ポリエステルウレタン(A)100質量部に対して2〜200質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルウレタン(A)が、芳香族ジカルボン酸残基を含む請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸残基である請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−108216(P2009−108216A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282801(P2007−282801)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】