説明

硬化性樹脂組成物

【課題】硬化性樹脂膜組成物を提供する。
【解決手段】式(4A)の含フッ素モノマーと式(4B)のエステル系モノマーとを反応させて得た共重合体に式(5)のイソシアネート基を有する反応性化合物を反応させることにより得られる、反応性含フッ素オリゴマーを含む硬化性樹脂組成物。CH=CR−COOーRーOーRf(4A)CH=CR−COOーR−OH(4B)


式中、R1〜3は官能基を有しても良い長鎖の二価飽和脂肪族基、R4〜6はH又はメチル基、Rfは式(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型ディスプレイ、PCモニター等は様々な環境で使用されることから、その画面に指紋等の様々な汚れが付着しやすい。また、銀行ATM、携帯電話、携帯情報機器、携帯ゲーム機、カーナビゲーション等のタッチパネル化が進んでいる機器の画面では指紋汚れが付く機会が非常に高くなる。
【0003】
指紋等の汚れ付着による問題点として、画面の透明性が低下する、画像の鮮明性が低下する等が挙げられる。指紋等の汚れを除去するために、水や洗剤を含ませた布等による拭き取りが行われるが、汚れの拭き取りは容易ではない。特に指紋の拭き取りは困難であり、拭き取れるまで何度も拭く必要がある。また、何度も拭き取りを行うことにより、画面に擦傷痕が生じることもある。
【0004】
汚れの付着防止又は除去性向上の手段の一つとして、画面表面の撥水撥油性を向上させる手法が提案されている。実際のディスプレイにおける画面表面とは、画面保護を目的としたハードコート層又は画面への映り込み防止のための反射防止層等であるため、これらの層の撥水撥油性を向上させることが必要となる。
【0005】
撥水撥油性向上の手段としては、フッ素やシリコーンの導入がよく知られている。フッ素やシリコーンの導入手法として、フッ素やシリコーンを含有する樹脂モノマーからなる樹脂膜を作製する手法がある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0006】
この手法は、樹脂膜自体が撥水撥油性を発現するため、高い防汚性を示し、撥水撥油成分の脱離がないため防汚性の持続性に優れる。しかし、樹脂モノマー自体に撥水撥油成分を付与すると、樹脂モノマー及びそれから成る硬化膜が高価格化する、塗液溶媒への溶解性が低下することにより塗液設計の自由度が低下する等の問題点がある。
【0007】
一方、含フッ素化合物やシリコーンからなる界面活性剤を添加剤として膜組成物に導入するという手法も数多く提案されている(例えば、特許文献3)。この手法は、添加剤として含フッ素化合物等を使用するため価格への影響が少ない、塗液設計の自由度が高いという利点がある。しかしながら、一般的な界面活性剤は硬化成分と化学的に結合していないため、時間の経過や外部からの刺激により樹脂硬化膜中から界面活性剤が抜け去り、撥水撥油効果が消失してしまう、さらに膜中で可塑剤的作用を示し、膜強度を低下させるといった問題点がある。
【0008】
また、一般的に有機系樹脂硬化膜はその製造工程において、フィルム等の基材上へ塗工する工程を含み、この工程で発生する、スジ、ハジキ、ムラ、ブツ、不濡れ等の不良を抑制するために塗液にレベリング剤が添加されている。レベリング剤には、界面活性剤が使用されることが多い。しかしながら、レベリング剤は硬化性樹脂成分の塗工工程でのレベリング作用を目的に添加されているため、樹脂硬化膜の防汚性等機能面については期待されていない。また、レベリング剤も膜強度を低下させる要因と成り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−104403号公報
【特許文献2】特開2002−241446号公報
【特許文献3】特開平10−110118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消した、新規な硬化性樹脂組成物及びその硬化膜を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、これらの問題点を改善すべく鋭意検討した結果、硬化性樹脂成分と化学的に結合できる反応性官能基(水酸基、末端炭素−炭素二重結合)をフッ素系界面活性剤に導入した、反応性含フッ素オリゴマーを使用することにより、防汚性能の持続性に優れ、添加しても硬化膜の強度を低下させない防汚性付与剤が得られることを見出した。また、この防汚性付与剤は優れたレベリング性能を示すフッ素系界面活性剤を基本構造としており、反応性官能基を導入した場合にも優れたレベリング効果を示すことを見出した。これらの知見から、硬化したときに持続性に優れた防汚効果とレベリング効果を合わせ持ち、膜強度にも影響しない硬化性樹脂組成物を開発するに至った。すなわち、本発明は、下記項1〜9の硬化性樹脂組成物及びその硬化膜に関する。
【0012】
項1. 下記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、Rfは下記一般式(2)又は(3)で表される基である。R1は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である。
R2は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である。
R3は、炭素原子数が2〜10の二価又は三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。
R4はH又はメチル基である。
R5及びR6は相互に独立してH又はメチル基である。
n及びpは相互に独立して1〜30の整数であり、mは0〜60の整数である(但し、繰り返し単位の各基の順番は特定されない。)。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
項2. 前記反応性含フッ素オリゴマーの重量平均分子量が2,000〜50,000である項1に記載の硬化性樹脂組成物。
項3. 前記一般式(1)において、nとm+pの割合が、0.1≦n/(m+p)≦10.0であり、mとm+pの割合が、0≦m/(m+p)≦1.0である項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
項4. 前記一般式(1)のRが炭素数2〜30の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
項5. 前記一般式(1)のRが炭素数2〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合又はアリール基を有していてもよい。)である項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
項6. 前記一般式(1)のRが炭素数2〜5の二価又は三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
項7. 硬化性樹脂組成物中の反応性含フッ素オリゴマーの含有量が、0.0006〜17重量%である項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
項8. 前記項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜。
項9. 水の接触角が90度以上である項8に記載の硬化膜。
【0018】
以下、本発明の硬化性組成物及びその硬化膜について詳述する。
【0019】
反応性含フッ素オリゴマー
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1):
【0020】
【化4】

【0021】
で表される反応性含フッ素オリゴマーを含むことを特徴とする。
【0022】
一般式(1)において、Rfは下記一般式(2)又は(3)で表される基である。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
n個のRfは、一般式(2)、(3)で表される基が混合していてもよく、どちらか一方のみでも良い。
【0026】
一般式(1)において、R1は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりハロゲン原子、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−又はO−CO−)、アミド結合(−NHCO−又は−CONH−)又はアリール基を有していてもよい。R1の好ましい炭素原子数は2〜30である。
【0027】
R2は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりハロゲン原子、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−又はO−CO−)、アミド結合(−NHCO−又はCONH−)又はアリール基を有していてもよい。Rの好ましい炭素原子数は2〜50である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子又は塩素原子が挙げられる。また、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基、アントラニル基、フェナントリル基等の炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0028】
R3は炭素原子数が2〜10の二価又は三価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。Rの好ましい炭素原子数は2〜5である。なお、R3が三価の場合、一般式(1)において、Rに結合する−OC(=O)CR=CHがRに二つ結合している。
【0029】
R4はH又はメチル基である。R5及びR6は相互に独立してH又はメチル基である。
n及びpは相互に独立して1〜30の整数であり、mは0〜60の整数である。但し、繰り返し単位の各基の順番は特定されず、ランダムでもブロックでもよい。
【0030】
好ましいnとm+pの割合は0.1≦n/(m+p)≦10.0であり、より好ましくは0.1≦n/(m+p)≦8.0である。
【0031】
また、mとm+pの割合は0≦m/(m+p)≦1.0であり、好ましくはmとm+pの割合が、0.1≦m/(m+p)≦1.0である。
【0032】
前記一般式(1)において、特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0033】
−(CHn1− (n1=2〜10)
−(CHn2OCOC− (n2=2〜10)
−(CHn3− (n3=1〜10)
−(CHCHO)n4CHCH− (n4=1〜10)
−(CHCHO)n5COC− (n5=1〜10)
[式中、各結合は、一般式(1)のRにおいて、どちらに結合しても良い]。
【0034】
前記一般式(1)において、特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0035】
−(CHn6− (n6=2〜10)
−(CHCHO)n7CHCH− (n7=1〜20)
−(CHCHCHO)n8CHCHCH− (n8=1〜10)。
【0036】
[式中、各結合は、一般式(1)のRにおいて、どちらに結合しても良い。]。
【0037】
前記一般式(1)において、特に好ましいRとしては、具体的に以下の基が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
[式中、各結合は、一般式(1)のRにおいて、どちらに結合しても良い。また、三価の基の場合は、いずれか2つの結合に一般式(1)における式:−OC(=O)CR=CHで表される基が結合しており、残りの1つの結合にN原子が結合している]。
【0040】
一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーの重量平均分子量は、通常2,000〜50,000程度であり、特に2,500〜30,000程度が好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーは、例えば、下記一般式(4):
【0042】
【化8】

【0043】
[式中、Rf、R、R、R、R、n及びmは前記一般式(1)と同じものであり、繰り返し単位の各基の順番は特定されない。]
で示される水酸基含フッ素オリゴマーと、下記一般式(5):
【0044】
【化9】

【0045】
[式中、R及びRは前記一般式(1)と同じものである。]
で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物とを、アルカリ性触媒存在下、有機溶剤中で反応させることにより得られる。
【0046】
また、前記一般式(4)で示される水酸基含有含フッ素オリゴマーは、例えば、下記式(4A)
CH=CR−COO−R−O−Rf (4A)
(式中、R、R及びRfは、前記に定義される通りである)
で表される含フッ素モノマー、下記式(4B)
CH=CR−COO−R−OH (4B)
(式中、R及びRは、前記に定義される通りである)
で表されるエステル系モノマーを、前記n:mの比率で混合し、重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を適量加えて、溶媒の存在下に室温〜100℃程度の温度で1〜24時間程度反応させることにより得ることができる。この際、前記式(4A)、(4B)の混合順序は特に限定されない。
【0047】
式(4A)、(4B)で表されるモノマーは、公知の方法により得ることができ、市販品を使用することもできる。
【0048】
式(4A)で表されるモノマーは、公知の方法により得ることができ、市販品を使用することもできる。本発明において、式(4A)で表されるモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
また、式(4B)で表されるモノマーとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート(日油製、商品名:ブレンマーGLM等)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーE等)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPE90、PE200、PE350等)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーAE90、AE200、AE400等)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーP等)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPP1000、PP500、PP800等)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーAP150、AP400、AP550等)、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)−モノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー50PEP−300等)、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール−モノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー70PEP−350B等)、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)−モノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー55PET−800等)、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)−モノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPPT等)、プロピレングリコール・ポリブチレングリコール−モノメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー10PPB−500B等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業製 商品名:HEA等)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業製 商品名:HPA等)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成製 商品名:4HBA、大阪有機化学工業製 商品名:4−HBA等)、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。本発明において、これらのモノマーを1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
さらに、前記一般式(4A)、(4B)で表されるモノマーから前記一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーを得る場合、必要に応じて(例えば、硬化性樹脂組成物中の各成分の相溶性の調整、その他機能の向上等を目的として)、前記一般式(4A)、(4B)で表される化合物以外のエステル系モノマーを加えてもよい。
【0051】
前記一般式(4A)、(4B)で表される化合物以外のエステル系モノマーを加える場合、該モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーG等)、シクロヘキシルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーCHMA等)、シクロヘキシルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーCHA等)、2−エチルヘキシルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーEHMA−25等)、4−tert−ブチルヘキシルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーTBCHMA等)、4−tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーTBCHA等)、t−ブチルアクリレート(大阪有機化学工業 商品名:TBA等)、イソオクチルアクリレート(大阪有機化学工業製 商品名:IOAA、デシルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーDMA等)、ラウリルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーLMA、SLMA等)、ラウリルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーLA、新中村化学工業製 商品名:NKエステル LA、大阪化学工業 商品名:LA等)、セチルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーCMA)、セチルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーCA等)、ステアリルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーSMA、新中村化学工業製 商品名:NKエステル S、S−1800M等)、ステアリルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーSA、新中村化学工業製 商品名:NKエステル S−1800A、大阪有機化学工業製 STA等)、ベヘニルメタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーVMA等)、ベヘニルアクリレート(日油製 商品名:ブレンマーVA、新中村化学工業製 商品名:NKエステル A−BH等)、イソボロニルメタクリレート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル IB等)、イソボロニルアクリレート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル A−IB、大阪有機化学工業製 商品名:IBXA)等)、メトキシ(ポリ)エチレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPME100、PME200、PME400、PME550、日立化成工業製 商品名:FA−400M、新中村化学工業製 商品名:NKエステル M−20G、90G、230G等)、メトキシポリエチレングリコール−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマーAME400、新中村化学工業製 商品名:NKエステル AM−30G、90G、130G、230G等)、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー50POPE−800B等)、ラウロキシポリエチレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPLE200等)、ラウロキシポリエチレングリコール−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマーALE等)、ステアロキシポリエチレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPSE400、PSE1300等)、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−511A等)、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−513M等)、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−513A等)、ジシクロペンテニルオキシエシルエチルメタクリレート(日立化成工業製 FA−512M等)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業製 FA−512MT等)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業 商品名:FA−512A等)、ベンジルメタクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−BZM等)、ベンジルアクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−BZA等)、フェノキシエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル PHE−1G等)、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル AMP−10G等)、フェノキシポリエチレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマーPAE50、PAE100等)、フェノキシポリエチレングリコール−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマーAAE50、AAE300、新中村化学工業製 商品名:NKエステル AMP−20GY等)、ノニルフェノキシ−ポリエチレングリコール−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマーANE1300、日立化成工業製 商品名:FA−314A、FA−318A等)、ノニルフェノキシ−ポリプロピレングリコール−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマーANP300等)、フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(日油製 商品名:ブレンマー43APE−600B等)、ノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)−アクリレート(日油製 商品名:ブレンマー75ANEP−600等)、ペンタメチルピペリジルメタクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−711MM等)、テトラメチルピペリジルメタクリレート(日立化成工業製 商品名:FA−712HM等)、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(新中村化学工業製 商品名:NKエステル ACB−3等)、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル SA等)、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学工業製 商品名:NKエステル A−SA等)等が挙げられる。これらのモノマーを使用する場合、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0052】
一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量は、通常2,000〜50,000程度、特に2,000〜30,000程度が好ましい。
【0053】
本発明の製造方法において、一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0054】
また、前記一般式(5)で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物は、従来公知のものを使用すればよく、市販品を入手することもできる。例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製 商品名:カレンズMOI等)、2−アクロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製 商品名:カレンズAOI等)、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(昭和電工製 商品名:カレンズMOIEG等)等が挙げられる。一般式(5)で表される化合物は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0055】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーを含む硬化性樹脂組成物は、基材に塗布するための塗液として調製される。硬化性樹脂組成物(塗液)には、主に防汚性を発揮する成分として反応性含フッ素オリゴマー、主に樹脂膜として機能するエネルギー線硬化性樹脂モノマー又は樹脂オリゴマー、その他、重合開始剤、溶剤等が配合される。ただし、無溶剤系塗液とする場合には溶剤は配合せず、放射線硬化の場合は重合開始剤を必要としない。また、塗液には必要に応じてその他の成分を加えてもよい。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーの含有量は、通常0.0006〜17重量%程度、好ましくは0.007〜13重量%程度、より好ましくは、0.07〜10重量%程度である。
【0057】
本発明の前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーは、後述のエネルギー線硬化性樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーと重合して得られる硬化膜において、防汚性付与剤としての機能を発揮する。
【0058】
エネルギー線硬化性樹脂モノマー成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーに加えて、これと反応して樹脂硬化膜となるエネルギー線硬化性樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー(以下、樹脂モノマー、樹脂オリゴマーということがある)を含む。
【0059】
このような樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーは、前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーと反応して硬化膜を形成するものであれば、特に限定されず、通常ハードコート膜や反射防止コート膜に用いられるエネルギー線硬化性の樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを任意に使用することができる。
【0060】
当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーとしては、例えば、各種アクリレートやアクリルウレタン等のアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の反応性化合物が挙げられ、好ましくはアクリル系樹脂が用いられる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化して膜形態で用いられるため、2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを用いることが好ましい。
【0061】
2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー、樹脂オリゴマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、各種ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製 紫光シリーズ、根上工業株式会社製 アートレジンシリーズ等)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。該樹脂モノマー、樹脂オリゴマーは1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0062】
樹脂モノマー、樹脂オリゴマーを硬化させるエネルギー線としては、放射線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。放射線、電子線による硬化では電磁波のエネルギーが高いため、重合性二重結合のみで重合が可能である。紫外線、可視光線をエネルギー源とする場合には、後述の重合開始剤成分を配合することが好ましい。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーの含有量は、通常55〜99.9重量%程度、好ましくは60〜99.5重量%程度、より好ましくは、70〜99重量%程度である。
【0064】
また、当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーと前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーの使用割合は、樹脂モノマー及び樹脂オリゴマー100重量部に対して、前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーを通常0.001〜18重量部程度、好ましくは0.01〜15重量部程度、より好ましくは0.1〜10重量部程度使用すればよい。
【0065】
重合開始剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーに加えて、必要に応じて、重合開始剤成分を含んでいても良い。
【0066】
重合開始剤成分は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤を使用することができる。
【0067】
光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して要すればよい。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0068】
重合開始剤成分を使用する場合、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。重合開始剤成分の添加量は、重合性樹脂成分(前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100重量部に対して、通常0.1〜50重量部程度、好ましくは0.5〜40重量部程度、より好ましくは1〜30重量部程度とすればよい。
【0069】
溶剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤成分を含む必要はないが、必要に応じて溶剤成分を含んでいても良い。溶剤成分としては、従来公知の溶剤成分を使用すればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等が挙げられる。これらの溶剤成分は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0070】
溶剤成分を使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の溶剤成分の使用量は、重合性樹脂成分(前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100重量部に対して、通常25〜5000重量部程度、好ましくは40〜2000重量部程度、より好ましくは60〜1000重量部程度とすればよい。
【0071】
その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化膜表面に形状を設けたり、その他の望む機能を付与するために、必要に応じて微粒子、フィラー等を配合してもよい。
【0072】
硬化膜の作製方法
本発明においては、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液とし、該塗液を基材に塗布した後、光照射等を行うことにより硬化膜とすることができる。
【0073】
本発明の硬化膜を得るための手順としては、前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー、さらに、必要に応じて、重合開始剤成分、溶剤成分、微粒子、フィラー等を適当な配合比で混合溶解させて、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液として調製する。ついで、基材上に塗液を一定の膜厚となるよう塗布し、温風乾燥、真空乾燥等により溶媒成分を除去した後、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線を照射することにより硬化膜を得ることができる。
【0074】
塗液の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等が挙げられる。
【0075】
硬化膜を作製する基材としては、硬化膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらのシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
【0076】
本発明の硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
【0077】
本発明の硬化膜は、撥水撥油性が高く、水の接触角は通常90度以上である。
【発明の効果】
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物によって、基材表面(樹脂、フィルム等の表面)に硬化膜を付与することで、表面保護を目的としたハードコートを得ることができる。この硬化膜は、反応性含フッ素オリゴマー由来の部位が優れたレベリング性を示すため、均一な膜厚で、かつ平滑な表面となり、特に光学的な目的に適したハードコート膜として期待できる。また、反応性含フッ素オリゴマー部位の効果により硬化膜表面が高い撥水撥油性を示すため、高い防汚性が期待できる。さらに、本発明の硬化膜は、反応性含フッ素オリゴマーが分子内にもつ反応性基により樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー成分と化学的に結合しているため、防汚性能の高い持続性が期待できる。また、この結合のため、反応性含フッ素オリゴマーの添加による硬化膜強度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明の内容を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明の内容は実施例により限定して解釈されるものではない。
【0080】
実施例1
硬化性樹脂モノマーとしてペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(東亞合成社製、商品名:M−305)20重量部、重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)を0.8重量部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を78.8重量部、表1に示した実施例1の反応性含フッ素オリゴマー(前記一般式(1))0.2重量部を酢酸エチル0.2重量部に予め溶解した混合溶液を混合し、硬化性樹脂組成物(塗液)を作製した。これを、No.8のバーコーターでポリエステルフィルム(ユニチカ社製、商品名:エンブレットSA)に塗り広げ、60℃に設定した乾燥器に2分間投入し、溶剤を揮発させた後、UV照射することで硬化膜を得た。表1に各評価結果を示す。
【0081】
評価
(1)レベリング性
UV照射後の硬化膜表面を目視で観察した。
【0082】
評価基準:スジ、ハジキ等が無い ○
スジ、ハジキ等が有る ×
(2)初期防汚性
作製直後の硬化膜表面に対する水の接触角を接触角測定装置(協和界面化学製 DropMasteR600)で測定した。
【0083】
評価基準:水の接触角が90度以上 ○
水の接触角が90度以下 ×
(3)防汚持続性
硬化膜の表面をエタノールで濡らせたティッシュペーパーで一方向に100回拭き、乾燥後の水接触角を測定した。
【0084】
評価基準:エタノール拭き後の接触角が90度以上 ○
エタノール拭き後の接触角が90度以下 ×
(4)膜硬度
引っかき硬度(鉛筆法)試験法 JIS K5600−5−4記載の方法で硬化膜の硬度を測定した。測定には塗膜測定検査機器(コーテック製)を使用した。
【0085】
実施例2〜6
それぞれ表1に記載の実施例2〜6の含フッ素オリゴマーと塗液配合を用い、実施例1と同様の手順でサンプルを作製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表中、Rは、式:−(C2H4O)9C2H4−で表される基の紙面右側の結合が、一般式(1)のOH基に結合している。以下、同様である。
【0088】
比較例1〜6
含フッ素オリゴマーを表2に記載の含フッ素オリゴマーに変更した以外は同番号の実施例と同様の手順で硬化膜を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
比較例A
含フッ素オリゴマーを含まないこと以外は実施例1と同様にして硬化膜を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
比較例B
実施例1の反応性含フッ素オリゴマーをn/(m+p)が0となる表2記載のフッ素非含有反応性オリゴマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順で硬化膜を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
実施例7〜9及び比較例7〜8
実施例7〜9および比較例7として、実施例1で用いた反応性含フッ素オリゴマーを用い表3に記載した配合比で調製した塗液から、実施例1と同様にして硬化膜を作製し、評価を行った。
【0093】
また、比較例8として、比較例1で用いた含フッ素オリゴマーを用い表3に記載した配合比で調製した塗液から、実施例1と同様にして硬化膜を作製し、評価を行った。それぞれの結果を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
実施例10〜12
実施例1で用いた樹脂モノマーを、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(実施例10、東亞合成社製 商品名:M−402)、ウレタン系多官能オリゴマー(実施例11:日本合成化学社製 商品名 紫光UV6300B、実施例12:日本合成化学社製 商品名 紫光UV7600B)に変更した以外は実施例1と同様の手順で硬化膜を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0096】
【表4】

【0097】
実施例1〜12の反応性含フッ素オリゴマーを使用した硬化膜は、いずれも良好なレベリング性を示し、防汚性、性能持続性にも優れていることが分かった。一方、比較例1〜6の反応性を持たない含フッ素オリゴマーを使用した硬化膜は、性能持続性が劣ることが分かった。比較例Aは、樹脂モノマー、溶剤、光開始剤のみから成る系だが、レベリング性が悪く、防汚性も不十分であった。比較例Bは反応性オリゴマーを含む系であるが、防汚性が不十分であった。
【0098】
比較例7の結果から明らかなように、樹脂モノマーに対する含フッ素オリゴマーの重量比が0.2を超えると、硬化膜の状態が悪化する。また、実施例9及び比較例8の比較から、反応性を持たない含フッ素オリゴマーは添加により硬化膜の硬度を著しく低下させるが、反応性含フッ素オリゴマーは添加による硬化膜の硬度への影響が無いこと分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】

[式中、Rfは下記一般式(2)又は(3)で表される基である。R1は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である。R2は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である。R3は、炭素原子数が2〜10の二価又は三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R4はH又はメチル基である。R5及びR6は相互に独立してH又はメチル基である。n及びpは相互に独立して1〜30の整数であり、mは0〜60の整数である(但し、繰り返し単位の各基の順番は特定されない。)。
【化2】

【化3】

【請求項2】
前記反応性含フッ素オリゴマーの重量平均分子量が2,000〜50,000である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、nとm+pの割合が、0.1≦n/(m+p)≦10.0であり、mとm+pの割合が、0≦m/(m+p)≦1.0である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)のRが炭素数2〜30の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)のRが炭素数2〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合又はアリール基を有していてもよい。)である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)のRが炭素数2〜5の二価又は三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化性樹脂組成物中の反応性含フッ素オリゴマーの含有量が、0.0006〜17重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜。
【請求項9】
水の接触角が90度以上である請求項8に記載の硬化膜。

【公開番号】特開2010−241879(P2010−241879A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89661(P2009−89661)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】