説明

硬化性樹脂組成物

【課題】ポリカーボネートに対して優れた意匠性および密着性を有する塗膜を形成する硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリカーボネート骨格を有し、質量平均分子量が800〜10000であるポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材の表面に直接接着する塗膜に用いる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂等のプラスチックは、軽量であって、かつ、耐衝撃性および成形加工性に優れ、さらに、安価であることから、種々の分野で使用されている。
プラスチックの成型品は、その表面を損傷から保護すること等を目的として、塗膜で被覆されているのが一般的である。
このような塗膜に用いられる硬化性樹脂組成物に関して、本願出願人は、特許文献1において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と、不飽和二重結合、ヒドロキシ基および芳香環をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物(a2)とを含む単量体成分を重合させて得られる共重合体(A)と、硬化性樹脂(B)とを含有する硬化性樹脂組成物。」を提供している([請求項1][0091])。
また、本願出願人は、特許文献2において、「分子量が50,000〜140,000の(メタ)アクリル重合体(A)と、ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性単量体(C)と、1分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し主鎖骨格が脂肪族炭化水素である2官能性単量体(D)と、光重合開始剤(E)とを含有する硬化性樹脂組成物。」を提供している([請求項1][0061])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−56813号公報
【特許文献2】特開2008−255228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上述したような硬化性樹脂組成物について検討した結果、得られる塗膜のポリカーボネートに対する意匠性および密着性が不十分であることを明らかにした。
そこで、本発明は、ポリカーボネートに対して優れた意匠性および密着性を有する塗膜を形成する硬化性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリカーボネート骨格を有する所定のウレタン(メタ)アクリレート(A)と1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する所定のウレタン(メタ)アクリレート(B)とを含有する硬化性樹脂組成物から得られる塗膜が、プラスチック(特にポリカーボネート)に対して優れた意匠性および密着性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
【0006】
(1)ポリカーボネート骨格を有し、質量平均分子量が800〜10000であるポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する硬化性樹脂組成物。
【0007】
(2)上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を50〜200質量部、上記光重合開始剤(C)を1〜40質量部含有する、上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0008】
(3)上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の質量平均分子量が、500〜2000である、上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0009】
(4)上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、1分子中に2〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(5)さらに、質量平均分子量が20000〜100000であってガラス転移温度が90〜120℃であるポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(6)上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を10〜40質量部含有する、上記(5)に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラスチック(特に、ポリカーボネート)に対して優れた意匠性および密着性を有する塗膜を形成する硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」という)は、ポリカーボネート骨格を有し、質量平均分子量が800〜10000であるポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する硬化性樹脂組成物である。以下に、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0014】
<ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)>
本発明の組成物に含有されるポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリカーボネート骨格を有し、かつ、質量平均分子量が800〜10000であるウレタン(メタ)アクリレートである。
本発明においては、「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、分子鎖中にウレタン結合及び(メタ)アクリロイル基を有するものをいう。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちのいずれか一方またはその両方であることを意味する。
なお、以下の説明において、ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)を、単に、「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」ということがある。
【0015】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含有することにより、本発明の組成物においては、得られる塗膜の硬化性が良好となり、プラスチック基材に対する意匠性および密着性が優れる。これは、樹脂の構造中に含まれるポリカーボネート骨格とプラスチック基材との極性が近づき、両者間で化学的な相互作用が発生するため、密着性が向上するものと考察される。また、同様の理由により、プラスチック基材への濡れ性が向上し、意匠性が向上するものと考察される。
【0016】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の質量平均分子量は、プラスチック基材に対する意匠性および密着性がより優れるという理由から、1000〜8000であることが好ましく、1000〜6000であることがより好ましい。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した質量平均分子量(ポリスチレン換算)であり、測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いるのが好ましい(以下、同じ)。
【0017】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、基材および蒸着層との密着性に優れるという理由から、1分子中に2〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることが好ましい。
【0018】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、1分子中に(メタ)アクリロイル基と少なくとも1個のヒドロキシ基とを有する化合物(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、ポリカーボネートポリオール(a3)とを反応させることによって得られるものであることが好ましい。
【0019】
化合物(a1)としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基と少なくとも1個のヒドロキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、骨格がペンタエリスリトールである化合物、骨格がジペンタエリスリトールである化合物等が挙げられる。
骨格がペンタエリスリトールである化合物(a1)としては、例えば、下記式(2)で表されるペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートが挙げられる。
骨格がジペンタエリスリトールである化合物(a1)としては、例えば、1分子中に、少なくとも1個のヒドロキシ基および3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が挙げられ、具体的には、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、下記式(3)で表されるジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
これらのうち、密着性、意匠性により優れ、硬化性に優れるという観点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、1−ヒドロキシブチルメタクリレート(HBMA)が好ましい。
化合物(a1)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
ポリイソシアネート(a2)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されず、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートを用いることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、脂環式ポリイソシアネートを用いることができ、脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビシクロヘプタントリイソシアネート、上述した各芳香族ポリイソシアネートの水添化合物等が挙げられる。
これらのうち、耐黄変性、密着性、入手の容易さという理由から、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)であるのがより好ましい。
ポリイソシアネート(a2)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
ポリカーボネートポリオール(a3)は、ポリカーボネート骨格を有する多価アルコールである。ポリカーボネートポリオール(a3)としては、特に限定されず、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じ方法で合成されるものを用いることができ、例えば、ホスゲン法で合成されるもの;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートまたはジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応などで合成されるもの;等が挙げられる。
ジアルキルカーボネート等と共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
このようなポリカーボネートポリオール(a3)としては、具体的には、例えば、PCDL T4671、T4672、T5650J、T5651、T5652(いずれも旭化成ケミカルズ社製)等が市販品として入手可能である。
ポリカーボネートポリオール(a3)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造において、ポリイソシアネート(a2)およびポリカーボネートポリオール(a3)の量は、化合物(a1)2モルに対して、それぞれ、1.0〜4.0モル、0.5〜2.5モルであるのが好ましい。
【0025】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造としては、例えば、化合物(a1)とポリイソシアネート(a2)とポリカーボネートポリオール(a3)とを、50〜80℃の条件下において、触媒として既存の有機スズ触媒(例えばジブチルスズジラウレート)を使用し、溶媒としてメチルエチルケトン、酢酸エチルを使用する方法が挙げられる。
【0026】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、具体的には、例えば、下記式(4)で表されるものを好ましく用いることができる。
【0027】
【化2】

【0028】
式(4)中、Rは、一般式C2nで表される脂肪族炭化水素であり、n=3〜12であることが好ましい。
【0029】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)>
本発明の組成物に含有される多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
なお、以下の説明において、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を、単に、「ウレタン(メタ)アクリレート(B)」ということがある。
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)が1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有することによって、本発明の組成物はプラスチック基材に対する密着性に優れる。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、塗膜の密着性が良好になるという理由から、上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、50〜200質量部であるのが好ましく、70〜150質量部であるのがより好ましく、80〜120質量部であるのがさらに好ましい。
【0031】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)が有する(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、密着性、意匠性により優れ、紫外線硬化性、表面硬度に優れるという観点から、6〜15個であるのが好ましく、6〜10個であるのがより好ましい。
【0032】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、密着性、意匠性により優れるという観点から、1分子中に(メタ)アクリロイル基と少なくとも1個のヒドロキシ基とを有する化合物(b1)と脂肪族ポリソシアネート(b2)とを反応させることによって得られるものであるのが好ましい。
【0033】
化合物(b1)としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基と少なくとも1個のヒドロキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、上述した化合物(a1)として挙げたものを好ましく用いることができ、中でも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)が好ましい。
【0034】
脂肪族ポリソシアネート(b2)は、イソシアネート基を2個有する脂肪族炭化水素化合物であれば特に限定されない。脂肪族ポリソシアネート(b2)が有する2価の脂肪族炭化水素基は、その炭素原子数が1〜20個であるのが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状、分岐状および脂環式のいずれであってもよい。
脂肪族ポリソシアネート(b2)は、密着性、意匠性により優れるという観点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、および、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
脂肪族ポリソシアネート(b2)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)の製造において、化合物(b1)の量は、脂肪族ポリソシアネート(b2)1モルに対して、1.5〜2.5モルであるのが好ましい。
【0036】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)の製造としては、例えば、化合物(b1)と脂肪族ポリソシアネート(b2)とを、50〜80℃の条件下において、触媒として既存の有機スズ触媒(例えばジブチルスズジラウレート)を使用し、溶媒としてメチルエチルケトン、酢酸エチルを使用する方法が挙げられる。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)としては、具体的には、例えば、下記式(5)、下記式(6)、下記式(7)で表されるものが挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
式(7)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基である。2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、その脂肪族骨格の炭化水素原子の数が2〜20個であるのが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、密着性、意匠性により優れ、塗装作業性、耐水性に優れるという観点から、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、またはジシクロペンタジエンジメタノールが有する、ヒドロキシ基以外の2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0040】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(B)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
<光重合開始剤(C)>
本発明の組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物のようなカルボニル化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
より具体的には、例えば、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、下記式(8)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物:等が挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
これらのうち、光安定性、光開裂の高効率性、低揮発、低臭気という観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが好ましい。
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの市販品としては、例えば、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)が挙げられる。
【0044】
上記光重合開始剤(C)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
上記光重合開始剤(C)は、塗膜の密着性が良好になるという理由から、上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのがより好ましい。
【0046】
<ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)>
本発明の組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)をさらに含有することが好ましい。本発明の組成物に含有されるポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)としては、質量平均分子量が20000〜100000であり、かつ、ガラス転移温度が90〜120℃であれば、特に限定されない。
なお、ガラス転移点は、示差熱分析計(DSC)を用い、ASTMD3418−82に従い、昇温速度10℃/分にて測定した値である。
本発明の組成物が上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を含有することにより、薄膜化した塗膜(膜厚2μm程度)においても意匠性に優れる。これは、固体成分であるポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)が塗料に乾燥性を付与することで、基材上に存在する油脂等によってはじかれることなく塗膜を形成することができるためであると考えられる。
【0047】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)の質量平均分子量は、30000〜100000であることが好ましい。また、上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)のガラス転移温度は、100〜110℃であることが好ましい。
【0048】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)は、塗膜の密着性がより優れるという理由から、上記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、固形分で、10〜40質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。
【0049】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを重合したものを用いることができ、(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミスチリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、塗膜の耐熱性および乾燥性に優れるという理由から、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートであるのが好ましく、ポリメチル(メタ)アクリレートであるのがより好ましい。
【0050】
<多官能(メタ)アクリルモノマー(E)>
本発明の組成物は、入手の容易さ、硬化性および塗料粘度の調整のしやすさという理由から、多官能(メタ)アクリルモノマー(E)を含有することが好ましい。
上記多官能(メタ)アクリルモノマー(E)の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
<溶剤>
本発明の組成物は、作業性の観点から、さらに、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、具体的には、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0052】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、艶消し剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、染料、顔料等を含有することができる。
【0053】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法等により製造することができる。
【0055】
本発明の組成物は、プラスチック基材の表面に直接接着する用途に用いることができ、例えば、アンダーコート剤組成物として使用できる。
【0056】
上記プラスチック基材としては、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックを問わず種々のプラスチック基材を用いることができる。
具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、中でも、塗膜の意匠性および密着性がより優れるという理由から、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0057】
本発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の塗布方法を採用できる。
【0058】
本発明の組成物の塗布量としては、硬化時の塗膜の膜厚が1〜30μmとなるようにするのが好ましい。硬化塗膜の膜厚が1μm以上の場合、特に基材であるプラスチックの表面劣化の防止効果に優れ、30μm以下の場合、基材との密着性により優れ、クラックの発生を防ぐことができる。
【0059】
本発明の組成物の硬化は、紫外線により行うことができる。本発明の組成物を硬化させる際に使用する紫外線の照射量としては、速硬化性、作業性の観点から、500〜3000mJ/cmが好ましい。本発明の組成物を紫外線照射により硬化させる際の温度は、20〜80℃であるのが好ましい。紫外線を照射するために使用する装置は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
<ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造>
第1表に示す化合物(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、ポリカーボネートポリオール(a3)とを、第1表に示す組成比(モル比)で、80℃でかくはんさせ、付加させることによってウレタン(メタ)アクリレート(A)を得た(A1〜A5)。A1〜A5のウレタン(メタ)アクリレート(A)は、反応後の残留イソシアネートパーセントを測定し、測定値が0.1%未満になった時点で反応を終了した。A1〜A5の材料特徴は、第1表に示す通りである。
なお、第1表に示す成分は以下の通りである。
・HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート):日本触媒社製
・HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート):住友バイエルウレタン社製
・IPDI(イソホロンジイソシアネート):住友バイエルウレタン社製
・T5651(ポリカーボネートポリオール):旭化成ケミカルズ社製、Mw1000
・T5652(ポリカーボネートポリオール):旭化成ケミカルズ社製、Mw2000
【0062】
【表1】

【0063】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の製造>
第2表に示す化合物(b1)と、脂肪族ポリイソシアネート(a2)とを、第2表に示す組成比(モル比)で、80℃でかくはんさせ、付加させることによってウレタン(メタ)アクリレート(B)を得た(B1〜B5)。B1〜B5のウレタン(メタ)アクリレート(B)は、反応後の残留イソシアネートパーセントを測定し、測定値が0.1%未満になった時点で反応を終了した。B1〜B5の材料特徴は、第2表に示す通りである。
なお、第2表に示す成分は以下の通りである。
・PETIA(ペンタエリスリトールトリアクリレート):ダイセル・サイテック社製
・DPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート):東亞合成
・HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート):日本触媒社製
・HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート):住友バイエルウレタン社製
・IPDI(イソホロンジイソシアネート):住友バイエルウレタン社製
【0064】
【表2】

【0065】
<ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)の製造>
単量体成分であるメタクリル酸メチル(共栄社化学社製)100質量部を、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下、反応温度80℃の条件下で溶剤(メチルエチルケトン)中において重合させて、各ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を得た(D1〜D3)。得られた各ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)は、固形分を30質量%の割合で含有するメチルエチルケトン溶液であった。D1〜D3のガラス転移温度(Tg)および質量平均分子量(Mw)は、第3表に示す通りである。
【0066】
【表3】

【0067】
<実施例1〜17、比較例1〜8>
第4表に示す各成分を、第4表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し、各硬化性樹脂組成物を得た。
第4表に示すA1〜A5、B1〜B5、および、D1〜D3については、上述したものを用いた。また、第4表に示すその他の成分については以下に示す通りである。
・光重合開始剤(C):イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)
・多官能(メタ)アクリルモノマー(E):TMPTA(ダイセルサイテック社製)
・酢酸ブチル(関東化学社製)
【0068】
得られた各硬化性樹脂組成物の意匠性および密着性を以下の方法により評価した。その結果を第4表に示す。
(意匠性)
塗布面を45°に傾けた状態のポリカーボネート製基板に対して、得られた各硬化性樹脂組成物をスプレーで10μmまたは2μmの膜厚となるよう塗布し、サンプルを得た。
スプレー塗布後、得られたサンプルの塗布面を水平にして、60℃で3分間乾燥させた後、サンプルの塗布面に対して斜め45°の角度からサンプルを肉眼で観察した。
意匠性の評価基準は、塗膜の光沢に優れて凹凸が少ないものを「○」、異常があるものについてはその異常に関する外観を記載した。実施例2〜8における膜厚2μmのサンプルについては、評価を行わなかったので「−」とした。
なお、塗膜の膜厚は、上記サンプルの作製条件と同一の条件において鉄板(磁性金属)に塗装し、硬化した後に、電磁膜厚計(株式会社ケット科学研究所製、LE―200J)を用いて測定した。得られた値をサンプルにおける塗膜の膜厚とした。
【0069】
(密着性)
密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験によって行った。
具体的には、まず、意匠性の評価で使用したサンプルに対して、日本電池社製のGS UV SYSTEMを用いて、ピーク強度が80mW/cm、積算光量が600mJ/cmまたは900mJ/cmとなるようにUV照射を行い、薄膜を形成させた。
次いで、薄膜上に、碁盤目テープはく離試験用の試験体を作製した。
得られた試験体に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をポリカーボネート製基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。実施例2〜8における膜厚2μmのサンプルについては、評価を行わなかったので「−」とした。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
第4表に示す結果から明らかなように、A1〜A4のポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)またはB1〜B4の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)のいずれか一方を欠いて調製した比較例1〜8の硬化性樹脂組成物は、意匠性、密着性について満足できる結果にはならないことが分かった。
【0073】
一方、A1〜A4のポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)およびB1〜B4の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を用いて調製した実施例1〜17の硬化性樹脂組成物は、意匠性および密着性に優れることが分かった。
特に、D1〜D3のポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を用いた実施例9〜17の硬化性樹脂組成物は、薄膜化した塗膜(膜厚2μm)においても意匠性に優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート骨格を有し、質量平均分子量が800〜10000であるポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
1分子中に4〜15個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、
光重合開始剤(C)と、を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を50〜200質量部、前記光重合開始剤(C)を1〜40質量部含有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の質量平均分子量が、500〜2000である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、1分子中に2〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、質量平均分子量が20000〜100000であってガラス転移温度が90〜120℃であるポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル(D)を10〜40質量部含有する、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−157419(P2011−157419A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18021(P2010−18021)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】