説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するうえに、硬化後表面にタックが残らず、硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、珪素原子に加水分解性基2個、非加水分解性基1個及び炭素数2以上のアルキレン基1個が結合する構造を有する架橋性珪素基が、ウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結される硬化性樹脂(B)、及び、塩基性化合物(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、硬化性樹脂(A)と(B)の割合(質量部)が5:95〜95:5であり、硬化性樹脂(A)と(B)との総和100質量部に対して、塩基性化合物(C)が0.1〜30質量部含有されることを特徴とする、硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、架橋性珪素基を含有する硬化性樹脂組成物に関し、より詳しくは、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するうえに、硬化後表面にタックが残らず、さらに硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主鎖が有機重合体であり、その分子内に分子間架橋可能な架橋性珪素基を有する硬化性樹脂は、アルコキシシリル基等の架橋性珪素基が大気中の水分で加水分解し架橋する、いわゆる湿気硬化型ポリマーであり、シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして幅広く利用されている(特許文献1〜4)。このような湿気硬化型ポリマーは、シーリング材、接着剤、塗料等に使用する場合、一般的に有機錫化合物などが、該湿気硬化型ポリマーの硬化を促進させるために配合される(特許文献5、6)。
【0003】
しかしながら、有機錫化合物は、その硬化促進活性は非常に高いが、近年その毒性が問題となっているものがあるため、有機錫化合物に代わる硬化促進剤が求められていた。ところが、その代替の硬化促進剤に例えばアミン化合物等を利用すると、有機錫化合物と比較して硬化促進活性が低いため硬化性が不十分であるという問題があった。また、カルボン酸等の酸性化合物を利用すると、シーリング材や接着剤等に応用する際に、接着性が不十分になる場合があるという問題があった。
【0004】
そこで、そのような問題を解決するために、三フッ化ホウ素等に代表されるハロゲン化ホウ素化合物やフルオロシラン化合物等のハロゲン化合物が、該湿気硬化型ポリマーの硬化促進剤として使用できることが提案されている(特許文献7〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特許第3030020号公報
【特許文献3】特許第3343604号公報
【特許文献4】特表2005−514504号公報
【特許文献5】特開平8−283366号公報
【特許文献6】特許第3062625号公報
【特許文献7】特開2005−054174号公報
【特許文献8】WO2006/051799号公報
【特許文献9】WO2007/123167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、地球環境のみならず作業者の使用環境に至るまで、環境に対する関心の高まりから化学物質の安全性に関する要求は強くなっている。有機錫化合物については、近年その毒性が問題となっているものがあり、その使用量については組成物に対し1000ppm未満に抑えることが望まれている。特に有機錫化合物の中でも、毒性の比較的高いトリブチル錫誘導体が含まれているもの(例えばジブチル錫化合物には副生成物としてトリブチル錫化合物が含有される可能性がある)は、その使用について特に注意が必要となる。つまり、硬化促進剤としては非常に有用な有機錫化合物の含有量を硬化性樹脂組成物全質量部に対して1000ppm未満に抑えたうえ、十分な硬化性が発現し、なおかつ、諸性能のバランスが取れた硬化性樹脂組成物の開発が求められていた。
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、上記特許文献4に記載されるような特定の架橋性珪素基近傍の化学構造を持つ硬化性樹脂と、従来公知の架橋性珪素基を有する硬化性樹脂とを併用すると、驚くべきことに系全体の硬化性能が引き上げられることを見出し、この併用系を先に出願した(特願2008−187669)。また、この系に対して一段速い硬化速度を付与する技術についても出願した(特願2009−113928)。
【0008】
しかし、上記の発明において、環境負荷の低減と安全性の確保はできたものの、硬化性樹脂組成物を主体とするシーリング材や接着剤としての実用化を考えた場合には、十分な硬化速度だけでなく、最終硬化物の皮膜物性のバランスが良い(例えば、伸びの大きい)、あるいは着塵の問題から、硬化物表面にタックが残らない硬化性樹脂組成物の開発が求められていた。
【0009】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するうえに、硬化後表面にタックが残らず、さらに硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記特許出願した発明に着目し、さらに当該技術を深化させ、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜8の発明から構成される。
【0011】
第1の発明は、架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、珪素原子に加水分解性基2個、非加水分解性基1個及び炭素数2以上のアルキレン基1個が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有し、かつ、該架橋性珪素基がウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結される硬化性樹脂(B)、及び、塩基性化合物(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の割合(質量部)が5:95〜95:5であり、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)との総和100質量部に対して、塩基性化合物(C)が0.1〜30質量部含有されることを特徴とする、硬化性樹脂組成物に関するものである。架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)(以下、単に「硬化性樹脂(A)」と表記することがある)が一定の割合で含有されていることで硬化性が高まる。また、珪素原子に加水分解性基2個、非加水分解性基1個及び炭素数2以上のアルキレン基1個が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有し、かつ、該架橋性珪素基がウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結される硬化性樹脂(B)(以下、単に「硬化性樹脂(B)」と表記することがある)が一定の割合で含有されていることで、硬化後表面にタックが残らず、硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
第2の発明は、硬化性樹脂(A)が、分子内に下記一般式(1)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂であって、硬化性樹脂(B)が、分子内に下記一般式(2)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂であることを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
−A−CH−SiR3−a(OR ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の炭化水素基を、aは1、2又は3を、それぞれ示す)
−X−SiR3−b(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2〜20のアルキレン基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の炭化水素基を、bは2を、それぞれ示す)
硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)が、特定構造の架橋性珪素基を有することにより、硬化後表面にタックが残らず、硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
第3の発明は、硬化性樹脂(A)及び/又は硬化性樹脂(B)の主鎖が、ポリオキシアルキレンであることを特徴とする、第1又は第2のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。硬化性樹脂(A)及び/又は硬化性樹脂(B)の主鎖が、ポリオキシアルキレンであることで、硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物を得やすい。
【0014】
第4の発明は、硬化性樹脂(B)が、その分子内にウレタン基由来の結合基を含む硬化性樹脂であることを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。硬化性樹脂(B)が、その分子内にウレタン基由来の結合基を含む硬化性樹脂であることで、硬化後表面にタックが残らず、十分な硬化性が得られやすい。
【0015】
第5の発明は、塩基性化合物(C)が、下記一般式(3)で表されるアミノシラン化合物であることを特徴とする、第1〜4のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
N−R−SiR3−c(OR ・・・式(3)
(但し、R、Rは分子量500以下の有機基又は水素原子を、Rは分子量500以下の有機基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、cは1、2又は3を、それぞれ示す)
アミノシラン化合物(C)が特定構造の化合物であるため、硬化後表面にタックが残らず、十分な硬化性が得られ、さらにシーリング材や接着剤等に応用した際に十分な接着性が発現しやすい。
【0016】
第6の発明は、塩基性化合物(C)が、下記一般式(4)で表されるアミノシラン化合物であることを特徴とする、第1〜5のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
N−R10−NH−R11−SiR123−d(OR13 ・・・式(4)
(但し、R10は分子量300以下の有機基を、R11は炭素数1〜12の炭化水素基を、R12は炭素数1〜20の炭化水素基を、R13は分子量300以下の有機基を、dは1又は2を、それぞれ示す)
アミノシラン化合物(C)が特定構造の化合物であるため、硬化後表面にタックが残らず、十分な硬化性が得られ、さらにシーリング材や接着剤等に応用した際に十分な接着性がより発現しやすい。
【0017】
第7の発明は、有機錫化合物の含有量が、硬化性樹脂組成物全質量部に対して0〜1000ppm未満であることを特徴とする、第1〜6のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。有機錫系触媒の含有量が上記の範囲であれば、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保できることから好ましい。
【0018】
第8の発明は、第1〜7のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーリング材組成物、接着剤組成物又は粘着剤組成物前駆体に関するものである。本発明の硬化性樹脂組成物は、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するうえに伸びの大きい硬化性樹脂組成物であることから、シーリング材組成物、接着性組成物又は粘着剤組成物前駆体として特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、架橋性珪素基を含有する硬化性樹脂組成物に関し、より詳しくは、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ、十分な硬化速度を有するうえに、硬化後表面にタックが残らず、さらに硬化物の柔軟性が高い硬化性樹脂組成物が得られるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0021】
[硬化性樹脂(A)について]
本発明における硬化性樹脂(A)は、架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂である。珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する架橋性珪素基は、その架橋活性が高いため、硬化性樹脂(A)は、硬化促進活性は非常に高いが毒性に関する懸念がある有機錫化合物を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量(硬化性樹脂組成物全質量部に対して1000ppm未満)でも、十分な硬化性を発現する。なお、硬化性樹脂(A)中の架橋性珪素基としては、硬化性の観点では、従来公知の加水分解性基である、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、ハロゲン基などを有する架橋性珪素基が利用できるが、これらの中でも、高反応性及び低臭性などの点から、アルコキシ基が最も好適に用いられる。
【0022】
また、硬化性樹脂(A)は、分子内に上記一般式(1)で表される架橋性珪素基含有官能基を有する硬化性樹脂も好適に用いられる。本発明では、上記一般式(1)で表されるような化学構造を「α−シラン構造」と表記する。α−シラン構造を選択することにより通常の架橋性珪素基よりも極めて高い湿分反応性を示すため、有機錫化合物を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量(硬化性樹脂組成物全質量部に対して1000ppm未満)でも十分な硬化速度を得ることができるのである。
【0023】
上記ヘテロ原子は、非共有電子対を有する原子であれば特に限定されないが、特に求核性の高い原子や電気陰性度の高い原子が好ましい。なかでも、原料の入手のしやすさや合成の容易さから、窒素(N)原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子、ハロゲン(I、Br、Cl、F)原子であるのが好ましく、各種性能のバランスから、窒素(N)原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子であるのがより好ましく、硬化性の高さから、窒素(N)原子であるのが特に好ましい。ヘテロ原子が、求核性の高い原子や電気陰性度の高い原子であると、通常の架橋性珪素基よりも極めて高い湿分反応性を示す理由は定かではないが、求核性の高い原子の場合は、その高求核性原子が近接する珪素原子に相互作用することにより珪素原子の反応性が高まることが、電気陰性度の高い原子の場合は、その高電気陰性度原子の効果で隣接する炭素原子を介して珪素原子から電子が流れることにより珪素原子の反応性が高まることが、要因であると推察される。
硬化性樹脂(A)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0024】
硬化性樹脂(A)について、分子内に上記一般式(1)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂を代表例として、詳細に説明する。該架橋性珪素基は、珪素原子にメチレン基を介して非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基が結合している。ここで、結合官能基とは、架橋性珪素基と主鎖をつなぐ構造であり、架橋性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合していれば特に制限されないが、(チオ)ウレタン基、アロファネート基、その他のN−置換ウレタン基、N−置換アロファネート基等の(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア基、ビウレット基、それ以外のN−置換ウレア基、N,N′−置換ウレア基、N−置換ビウレット基、N,N′−置換ビウレット基等の(チオ)ウレア基由来の結合基、アミド基、N−置換アミド基等のアミド基由来の結合基、イミノ基由来の結合基に代表される含窒素特性基や、(チオ)エステル基、(チオ)エーテル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、硬化性の高さから含窒素特性基が好ましく、合成の容易さから、(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア由来の結合基がより好ましい。ここで上述の「(チオ)」とは、各結合基中の酸素原子のうち1個以上が硫黄原子となった基を意味する。一例を挙げると、「(チオ)ウレタン基」とは、ウレタン基[−NH−C(=O)O−]及びチオウレタン基[−NH−C(=S)O−、−NH−C(=O)S−又は−NH−C(=S)S−]の総称として表記している。また、上述の「N−置換」とは、各結合基中の窒素原子に結合する水素原子が他の有機基に置換されている基を意味する。一例を挙げると、「N−置換ウレタン基」とは、化学式−NR−C(=O)O−(ここでのRは有機基を意味する)という結合基を意味するものである。
【0025】
また、当該珪素原子については、メチレン基との結合手以外に、加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合しているものである。ここで、Rは分子量300以下の炭化水素基、例えば、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基等のアルコキシアルキル基が含まれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基(−O−CHCH−O−C)、フェノキシ基であるのが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0026】
また、硬化性樹脂(A)の架橋性珪素基に結合する加水分解性基の数は、各々の硬化性樹脂組成物に求められる性能によって、適宜比率を調整すればよく、例えば、速硬化性や高モジュラス性を付与したい場合には、トリアルコキシ(a=3)やジアルコキシ(a=2)が好適に用いられ、長い可使時間や低モジュラス性を付与したい場合には、ジアルコキシ(a=2)やモノアルコキシ(a=1)が好適に用いられる。これらのなかでは、ジアルコキシ(a=2)が、入手が容易であること、及び、硬化性と硬化物モジュラスのバランスが優れているため好ましい。
【0027】
硬化性樹脂(A)の主鎖骨格としては、従来公知の有機重合体の主鎖骨格を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用できる。これらのなかでは、本質的にポリオキシアルキレンあるいはビニル重合体であることが、入手の容易さ、合成の容易さの点からより好ましく、ポリオキシアルキレンであることが硬化物の皮膜物性のバランス等から特に好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(A)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(A)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0028】
硬化性樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、数平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、1,500〜100,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が200,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0029】
硬化性樹脂(A)を得るためには、従来公知の方法で合成を行えばよい。例えば、(1)ポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法、(2)ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させイソシアネート基末端ポリマーを合成した後、該イソシアネート基末端ポリマーにメルカプトメチルアルコキシシラン化合物あるいはアミノメチルアルコキシシラン化合物等のアルコキシシリル基の珪素原子のα位炭素に活性水素基を有するヘテロ原子が結合している化合物を反応させる方法、(3)分子内に二重結合基を有する有機重合体にメルカプトメチルアルコキシシランをラジカル付加させる方法、(4)珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する構造をもつ架橋性珪素基を有する重合性ビニル系化合物を単独もしくはその他の重合性ビニル系化合物と共重合させる方法、(5)分子内に二重結合基を有する有機重合体に対して、珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合する構造を有する有機基及び水素原子が少なくとも結合したシラン化合物をヒドロシリル化反応により付加反応させる方法等が知られている。
【0030】
なお、ここではトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシシラン、ジアルキルアルコキシシシランを総称して「アルコキシシラン」と表記している。該アミノメチルアルコキシシラン化合物のアミノ基は、第1級アミノ基であっても第2級アミノ基であってもよいが、第2級アミノ基であるほうが、硬化性樹脂(A)の粘度が比較的低粘度に調製できるため好ましい。なお、第2級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物は、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物から誘導することもできる。具体的には、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物と、α,β−不飽和カルボニル化合物あるいはアクリロニトリル化合物等のアミノ基と共役付加反応を起こす官能基を有する化合物とを反応させる方法などが挙げられる。さらに、特表2004−518801、特表2004−536957、特表2005−501146、WO2010/004948等に記載の方法で容易に合成できる。
【0031】
硬化性樹脂(A)の市販品としては、GENIOSIL STP−E10(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約10,000、粘度約10,000mPa・s/25℃(カタログ値))、GENIOSIL STP−E30(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約16,000、粘度約30,000mPa・s/25℃(カタログ値))等が挙げられる。該STP−E10及び該STP−E30の架橋性珪素基の構造は、下記一般式(5)で示され、主鎖構造はポリオキシプロピレンである。
−O−CO−NH−CH−SiCH(OCH ・・・式(5)
硬化性樹脂(A)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0032】
[硬化性樹脂(B)について]
本発明における硬化性樹脂(B)は、珪素原子に加水分解性基2個、非加水分解性基1個及び炭素数2以上のアルキレン基1個が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有し、かつ、該架橋性珪素基がウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結される硬化性樹脂である。硬化性樹脂(B)は、該架橋性珪素基がウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結されているため、硬化後表面にタックが残りにくい。タックが残りにくい理由としては、上述のウレア基由来の結合基同士がその高い極性からドメインを形成し、それに伴って該架橋性珪素基同士も近接することによって、該架橋性珪素基同士の接触確率も向上し、さらに、ウレア基由来の結合基中の窒素原子による触媒効果によって該架橋性珪素基同士の縮合反応性が向上することが考えられる。また、硬化性樹脂(A)に硬化性樹脂(B)を配合することにより、タックが発現せずに、最終硬化物の皮膜が柔らかい硬化性樹脂組成物を得ることができる。ここで、本発明において「最終硬化物の皮膜が柔らかい」とは、例えば、JIS K 6251に準じたダンベル物性(ダンベル状3号形(2mm厚)、引張速度:200mm/分)において100%以上の伸びを示すような最終硬化物を指すものである。
【0033】
上記ウレア基由来の結合基の具体例としては、ウレア基、ビウレット基、それ以外のN−置換ウレア基、N,N′−置換ウレア基、N−置換ビウレット基、N,N′−置換ビウレット基等の結合基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、合成の容易さから、N−置換ウレア基がより好ましい。また、ウレア基由来の結合基は、上記硬化性樹脂(B)中に1個だけ含まれていてもよく、さらに1種又は2種以上のウレア基由来の結合基が複数含まれていてもよい。さらに硬化性樹脂(B)が、その分子内にウレタン基由来の結合基を含む硬化性樹脂であると、よりタックが残りにくくなる。その理由としては、ウレタン基由来の結合基によって分子間の相互作用がさらに高まることが推察される。
【0034】
なお、硬化性樹脂(B)中の架橋性珪素基としては、硬化性の観点では、従来公知の加水分解性基である、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、ハロゲン基などを有する架橋性珪素基が利用できるが、これらの中でも、高反応性及び低臭性などの点から、アルコキシ基が最も好適に用いられる。
硬化性樹脂(B)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0035】
硬化性樹脂(B)について、分子内に上記一般式(2)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂を代表例として、詳細に説明する。該架橋性珪素基中の珪素原子には、炭素数2〜20のアルキレン基(X)が結合し、さらに該アルキレン基には、直接又は間に他の結合基を介して上記ウレア基由来の結合基が結合している。
また、当該珪素原子については、上記炭素数2〜20のアルキレン基(X)との結合手以外に、加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が2個結合すると共に、残りの結合手として非加水分解性基である炭化水素基(R)が1個結合しているものである。ここで、Rは分子量300以下の炭化水素基、例えば、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基等のアルコキシアルキル基が含まれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基、フェノキシ基であるのが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している非加水分解性基である炭素数1〜20の炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0036】
硬化性樹脂(B)の主鎖骨格としては、従来公知の有機重合体の主鎖骨格を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用できる。これらのなかでは、本質的にポリオキシアルキレンあるいはビニル重合体であることが、入手の容易さ、合成の容易さの点からより好ましく、ポリオキシアルキレンであることが硬化物の皮膜物性のバランス等から特に好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(B)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(B)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0037】
硬化性樹脂(B)の分子量は特に制限されないが、数平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、1,500〜100,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が200,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0038】
硬化性樹脂(B)の合成方法としては、従来公知の方法を用いればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。これらのなかでは、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法が、原料選択の幅が広いため好ましい。また、アミノ基含有アルコキシシラン化合物は、そのアミノ基が第2級アミノ基である第2級アミノシラン化合物であることが、低粘度の硬化性樹脂(B)が調製できるため好ましい。該第2級アミノシラン化合物は、分子内に第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物(第1級アミノシラン化合物)から誘導することができる。例えば、アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,マレイン酸エステル化合物等のα,β−不飽和カルボニル化合物や、アクリロニトリル等に、該第1級アミノシラン化合物を共役付加させる方法などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0039】
上記第2級アミノシラン化合物においては、アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,マレイン酸エステル化合物等のα,β−不飽和カルボニル化合物や、アクリロニトリル等に、該第1級アミノシラン化合物を共役付加させる方法によって得られる第2級アミノシラン化合物が、α,β−不飽和カルボニル化合物由来のカルボニル基やアクリロニトリル由来のニトリル基と、ウレア基由来の結合基及びウレタン由来の結合基との相互作用により、さらにタック低減効果が得られるうえに、硬化性樹脂(B)の硬化速度、硬化物物性、粘度等を分子設計によってコントロールしやすいため好ましい。なかでも、アクリル酸エステル又はマレイン酸エステルと第1級アミノシラン化合物との反応によって得られる第2級アミノシラン化合物(それらのなかでも下記一般式(6)〜(8)で表されるもの)が、そのような各種の機能性を付与しながらも硬化性樹脂(B)の合成が容易であるため、最も好ましい。
【0040】
【化1】

(但し、R、R、Xは前述のとおりであり、R14は炭素数1〜10個である直鎖の又は側鎖を有するアルキレン基又はアリーレン基、R15は水素原子又は−COOR16、R16は炭素数1〜18個である直鎖の又は側鎖を有するアルキル基である。)
【0041】
上記イソシアネート基末端ポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることで合成できる。該ポリオール化合物として、上記の主鎖骨格を有するポリオール化合物を選択すればよく、ポリイソシアネート化合物として、従来公知のポリイソシアネート化合物を用いればよい。また、上記イソシアネート基末端ポリマーを合成する際、原料となるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0042】
上記ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格、ポリビニル骨格、ポリアクリル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格等の従来公知の主鎖構造を1種又は2種以上有するポリオール化合物が例示される。この他、ポリシロキサン骨格を有するポリオールや、フッ素原子、珪素原子、硫黄原子又はロジン骨格を有する有機基を含有するポリオール化合物が挙げられ、使用目的や求める性能に応じて、適宜ポリオール化合物を単独あるいは複数混合して用いればよい。分子1個あたりの平均水酸基数は、1.1以上であるものが好ましく、1.3以上であるものがより好ましく、1.5以上のものが特に好ましいが、物性調整等のため1.1未満のものも必要に応じて使用できる。
【0043】
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレン等の単独重合体、並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた1種又は2種以上のモノエポキシド及び/又は環状エーテルを開環共重合させてなる共重合体が例示される。
【0044】
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールの市販品としては、株式会社ADEKA製P−2000、P−3000、PR−3007、PR−5007等、旭硝子株式会社製エクセノール2020、エクセノール510、PMLS4012、PMLS4015、PMLS3011等、三井化学株式会社製D−1000、D−2000、D−4000、T−5000等、住化バイエルウレタン株式会社製スミフェン3600、スミフェン3700、保土谷化学工業株式会社製PTG−2000、PTG−L2000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0045】
上記ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸類の1種又は2種以上と、ジオール類の1種又は2種以上とを重縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、バレロラクトン等の環状エステル類の1種又は2種以上を開環重合させてなる開環重合物、活性水素を2個以上有するひまし油等のひまし油誘導体化合物が例示される。市販品としては、株式会社ADEKA製NS−2400、川崎化成工業株式会社製FSK−2000、マキシモールRDK−133、豊国製油株式会社製HS 2N−220S、伊藤製油株式会社製URIC PH−5001等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0046】
上記ポリカーボネート骨格を有するポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから誘導されるポリカーボネート骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、日本ポリウレタン工業株式会社製ニッポラン971、ニッポラン965、ニッポラン963、旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノールT5652、デュラノールT5650J、デュラノールT4672、デュラノールTG3452等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0047】
上記ポリオレフィン骨格を有するポリオールとしては、水添ポリブタジエン骨格を有するポリオール、エチレン・α−オレフィン骨格を有するポリオール、ポリイソブチレン骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、三菱化学株式会社製ポリテールH、ポリテールHA、日本曹達製GI−1000、GI−2000(以上、いずれも商品名)等が例示される。
【0048】
上記ポリビニル骨格を有するポリオール又はポリアクリル骨格を有するポリオールとしては、ビニルエーテル化合物やアクリル化合物等に代表されるビニル重合性モノマーと、水酸基を有するビニル重合性モノマーを共重合させたポリオール化合物等が例示される。市販品としては、東亞合成株式会社製アルフォンUH−2000、UH−2032等、綜研化学株式会社製アクトフローUT−1001、UMB−2005、UME−2005等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0049】
上記ポリブタジエン骨格又はポリイソプレン骨格を有するポリオールとしては、ブタジエンやイソプレン等に代表されるジエン系モノマーを重合して得られる化合物等が例示される。市販品としては、出光興産株式会社製Poly bd R−15HT、Poly bd R−45HT、Poly ip、クレイソールLBH2000、LBH−P3000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0050】
また、複数の骨格を有するポリオール化合物としては、1分子中にポリエーテル骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリカーボネート骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリエーテル骨格とポリアクリル骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、旭硝子株式会社製商品名アドバノールシリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製商品名ニッポラン982R等が例示される。
【0051】
上記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。以下に、それらの具体例を挙げる。
脂肪族ジイソシアネート化合物:トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等。
脂環式ジイソシアネート化合物:1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物:1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はそれらの混合物、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−若しくは1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン又はそれらの混合物等。
芳香族ジイソシアネート化合物:m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等。
脂肪族ポリイソシアネート化合物:リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等。
脂環式ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3−イソシアネート−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等。
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等。
芳香族ポリイソシアネート化合物:トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4′−ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等。
その他のポリイソシアネート化合物:フェニルジイソチオシアネート等硫黄原子を含むジイソシアネート類等。
【0052】
上記ポリイソシアネート化合物は、使用目的や求める性能に応じて、適宜単独あるいは複数混合して用いればよい。また、物性調整等のため、上に例示した多量体(例えば、二量体、三量体)や、モノイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0053】
硬化性樹脂(B)の配合割合(質量部)は、硬化性樹脂(A):硬化性樹脂(B)=5:95〜95:5が好ましく、7:93〜90:10がより好ましく、10:90〜80:20が特に好ましく、15:85〜70:30が最も好ましい。硬化性樹脂(B)の配合割合が、硬化性樹脂(A):硬化性樹脂(B)=95:5を下回ると、硬化性樹脂(B)を配合する効果が薄れ最終硬化物の皮膜のバランスが悪くなる場合があり、硬化性樹脂(A):硬化性樹脂(B)=5:95を上回ると、硬化性樹脂(A)の効果が薄れ硬化性が低下してしまう場合がある。
【0054】
[塩基性化合物(C)について]
本発明における塩基性化合物(C)は、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)の硬化を促進する化合物である。塩基性化合物(C)としては、アミン化合物やホスファゼン化合物が好適に用いられる。該アミン化合物は、分子内に少なくとも第一級アミノ基、第二級アミノ基、又は第三級アミノ基を有する化合物である。塩基性化合物(C)は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0055】
該アミン化合物の具体例としては、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等の第一級アミン化合物、ジn−ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ピペリジン等の第二級アミン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の第三級アミン化合物、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、N,N′−ジフェニルグアニジン、1−フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン化合物、ピリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等の環状アミン化合物、HN(CNH)H(n≧1)で表わされる化合物、ハンツマン社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシアルキレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記のアミン化合物における第一級アミノ基含有化合物とケトン類との反応生成物であるケチミン化合物、第一級アミノ基含有化合物とアルデヒド類との反応生成物であるアルジミン化合物、β−アミノアルコール化合物とケトン類との反応生成物であるオキサゾリジン化合物も使用することができる。
これらの化合物の中では、助触媒的な効果が高い1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の環状アミン化合物が好ましく、さらに液状であることから1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンがより好ましい。
【0056】
また、本発明における塩基性化合物(C)として、分子内に1個以上のアミノ基と1個以上の架橋性珪素基を有するアミノシラン化合物を利用することができる。該アミノシラン化合物の具体例としては、上記一般式(3)で表される化合物及び/又は上記一般式(4)で表される化合物であり、より具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等の第2級アミノ基含有アミノシラン化合物、分子内にイミダゾール基及び架橋性珪素基を有するイミダゾールシラン化合物等の第3級アミノ基を有するアミノシラン、水と反応して第1級アミノ基を生成する官能基を有するケチミンシラン化合物(3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等)あるいはアルジミンシラン化合物、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)、DYNASYLAN1146(エボニックデグサ社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
一般的にアミノシラン化合物は、金属材料に対する接着性付与剤として機能するため、本発明にかかる上記アミノシラン化合物は、硬化促進剤兼接着性付与剤として活用することができる。また、これらのうち、加水分解性基が2個である架橋性珪素基を有するアミノシラン化合物、特に上記一般式(4)で表されるアミノシラン化合物は、硬化促進効果と最終硬化物の皮膜のバランスが優れるため、好適に用いることができる。
【0057】
塩基性化合物(C)の配合量は、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)が硬化する量であれば特に限定されないのではあるが、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)との総和100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部を下回ると、硬化促進効果が十分でない場合があり、30質量部を上回ると、最終硬化物の皮膜のバランスが悪くなる場合がある。
【0058】
[その他の成分]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、その他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、本発明で用いる硬化性樹脂以外の各種硬化性樹脂(例えば、硬化性樹脂(A)並びに硬化性樹脂(B)以外の湿気硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オキセタン系樹脂、環状カーボネート系樹脂)及び非硬化性の樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、親水性又は疎水性シリカ粉体、酸化チタン粉体、カーボンブラック粉体等の無機系フィラー、ポリアクリル粉体、ポリスチレン粉体、ポリウレタン粉体等の有機系フィラー、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油系樹脂、ロジン系樹脂等の粘着付与剤、低極性被着材への密着性を向上させる塩素化ポリプロピレン,無水マレイン酸変性ポリプロピレン,酸化ポリエチレン等の極性基含有ポリオレフィン、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、各種液状機能性オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
【0059】
また、本発明においては、用途に応じて、塩基性化合物(C)以外の硬化促進剤を利用することができる。該硬化促進剤は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。該硬化促進剤の具体例としては、従来公知のカルボン酸,リン酸,各種ルイス酸等の酸性化合物及びその塩、非錫系金属化合物、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260932号公報で提案されているフッ素化剤、特開2008−260933号公報で提案されている多価フルオロ化合物のアルカリ金属塩、フルオロシラン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記ルイス酸としては、金属ハロゲン化物、ハロゲン化ホウ素化合物等が挙げられる。これらのなかでは、塩基性化合物、非錫系金属化合物、ハロゲン化ホウ素化合物が、その活性の高さから好適に用いられる。なお、安全性の問題から有機錫化合物は使用しないのが好ましい。但し、用途に応じて、有機錫化合物も硬化促進剤として利用することができる。その場合、オクチル錫化合物やカルボン酸錫化合物が、トリブチル錫誘導体を含まないため好ましい。
【0060】
上記非錫系金属化合物としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物、遷移金属系金属元素(例えば、第3族の希土類系金属元素、第4族のチタン族系金属元素、第5族のバナジウム族系金属元素、第6族のクロム族系金属元素、第7族のマンガン族系金属元素、第8族の鉄族系金属元素、第9族系金属元素、第10族の白金族系金属元素、第11族の銅族系金属元素)を主体とする化合物、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記非錫系金属化合物は、所望の性能を得るために適宜選択すればよく、さらに1種単独又は2種以上合わせて使用してもよい。
【0061】
上記非錫系金属化合物は、アルコキサイド、カルボキシラート、キレート等の構造を取ることによって、硬化促進剤としての活性も高まるうえ、各硬化性樹脂との相溶性が高まり、効果的に硬化促進能が発現される。上記非錫系金属化合物は、一つの化合物中に、アルコキサイド、カルボキシラート、キレート等の構造がそれぞれ単独で存在してもよいし、複数の構造が混在してもよい。さらに、例えばアルコキサイドを例に取ると、複数のアルコキサイド構造(例えば、メトキサイド構造とブトキサイド構造等)が混在してもよく、カルボキシラート、キレート等の構造においても、種々の構造が複数混在してもよい。
【0062】
上記アルコキサイド構造としては、メトキサイド、エトキサイド、ノルマルプロポキサイド、イソプロポキサイド、ノルマルブトキサイド、s−ブトキサイド、イソブトキサイド、t−ブトキサイド等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記カルボキシラート構造としては、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ドデカン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらに、キレート構造としては、アセチルアセトナト錯体、アセト酢酸エチル錯体の他、種々のキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0063】
上記非錫系金属化合物の具体例としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等が、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム等が、遷移金属系金属元素を主体とする化合物として、オクチル酸イットリウム、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトン錯体、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトン錯体、マンガンアセチルアセトン錯体、オクチル酸鉄、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ニッケルアセチルアセトン錯体、ナフテン酸銅、銅アセチルアセトン錯体等が、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物として、亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物として、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体、インジウムアセチルアセトン錯体等が、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
上記非錫系金属化合物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品の具体例としては、ナーセムアルミニウム、ナーセムクロム、ナーセム第一コバルト、ナーセム第二コバルト、ナーセム銅、ナーセム第二鉄、ナーセムニッケル、ナーセムバナジル、ナーセム亜鉛、ナーセムインジウム、ナーセムマグネシウム、ナーセムマンガン、ナーセムイットリウム、ナーセムセリウム、ナーセムストロンチウム、ナーセムパラジウム、ナーセムバリウム、ナーセムモリブデニル、ナーセムランタン、ナーセムジルコニウム、ナーセムチタン、ナフテックスCoシリーズ、ニッカオクチックスCoシリーズ、ナフテックスMnシリーズ、ニッカオクチックスMnシリーズ、ナフテックスZnシリーズ、ニッカオクチックスZnシリーズ、ナフテックスCaシリーズ、ニッカオクチックスCaシリーズ、ナフテックスKシリーズ、ニッカオクチックスKシリーズ、ニッカオクチックスBiシリーズ、ネオデカン酸Biシリーズ、プキャットシリーズ、PAシリーズ、ナフテックスZrシリーズ、ニッカオクチックスZrシリーズ、ナフテックスFeシリーズ、ニッカオクチックスFeシリーズ、ナフテックスMgシリーズ、ナフテックスLiシリーズ、ナフテックスCuシリーズ、ナフテックスBaシリーズ、ニッカオクチックス・レアースシリーズ、ニッカオクチックスNiシリーズ等(以上、日本化学産業社製商品名)、オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320、オルガチックスTA−10、オルガチックスTA−25、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−30、オルガチックスTC−100、オルガチックスTC−401、オルガチックスTC−200、オルガチックスTC−750、オルガチックスTPHS等(以上、マツモトファインケミカル社製商品名)、SNAPCURE3020、SNAPCURE3030、VERTEC NPZ等(以上、ジョンソン・マッセイ社製商品名)、ネオスタンU−600、ネオスタンU−660等(以上、日東化成社製商品名)、ケンリアクトNZ01、ケンリアクトNZ33、ケンリアクトNZ39等(以上、ケンリッチ社製商品名)、アルミニウムエトキサイド、AIPD、PADM、AMD、ASBD、ALCH、ALCH−TR、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF、プレンアクトALM等(以上、川研ファインケミカル社製商品名)、A−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181等(以上、日本曹達社製商品名)、オクトープシリーズ、ケロープシリーズ、オリープシリーズ、アセトープシリーズ、ケミホープシリーズ等(ホープ製薬社製商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0065】
なかでも、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物からなる群から選ばれる一種以上であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保でき、さらに実使用に耐えうる硬化速度が得られやすいという点で好ましい。また、上記非錫系金属化合物の安定性を重視する場合は、カルボキシラートあるいはキレート等の構造が好ましく、上記非錫系金属化合物の硬化促進能を重視する場合は、アルコキサイドあるいはカルボキシラート等の構造が好ましい。
【0066】
上記ハロゲン化ホウ素化合物としては、三フッ化ホウ素化合物が好適に用いられる。
三フッ化ホウ素化合物の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記三フッ化ホウ素化合物の中では、入手の容易さ及び配合のしやすさから、アルコール錯体又はアミン錯体が好ましく、安定性と硬化促進活性を兼ね備えていることから、アミン錯体が最も好ましい。
【0067】
上記三フッ化ホウ素のアミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ハンツマン社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式 HN(CNH)H(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物等の他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。三フッ化ホウ素アミン錯体は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が挙げられる。
【0068】
本発明における硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。
本発明における硬化性樹脂組成物は、水分の存在下で、架橋性珪素基同士が架橋することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気中の水分と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性樹脂が硬化するのである。
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性樹脂組成物に対して、さらに粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得る。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。
このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0070】
[硬化性樹脂(A)の準備]
(硬化性樹脂A−1の合成)
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量約10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びオクトープZr17%(ホープ製薬株式会社製商品名、2−エチルヘキサン酸ジルコニル化合物溶液(Zr含有率=約17質量%)、PMLS4012に対してジルコニウム金属換算で20ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。
さらに、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン(5.69質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−1中のイソシアネート基とシクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン中の第二級アミノ基とを80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン基、活性水素が1個シクロヘキシル置換されたウレア基、及び、トリエトキシシリル基を有する硬化性樹脂A−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0071】
硬化性樹脂(A)として、GENIOSIL STP−E10(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約10,000、粘度約10,000mPa・s/25℃(カタログ値))を準備した。
硬化性樹脂(A)として、GENIOSIL STP−E30(Wacker Chemie AG製商品名、メトキシ基当量から換算した分子量約16,000、粘度約30,000mPa・s/25℃(カタログ値))を準備した。
【0072】
[硬化性樹脂(B)の準備]
(硬化性樹脂B−1の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−2を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量約10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びニッカオクチックスジルコニウム12%(T)(日本化学産業株式会社製商品名、2−エチルヘキサン酸ジルコニル化合物溶液(Zr含有率=約12質量%)、PMLS4012に対してジルコニウム金属換算で20ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−2を得た。
さらに、上記シラン化合物SE−2(8.39質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−2中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−2中の第二級アミノ基とを80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン基、活性水素が1個置換されたウレア基(N−置換ウレア基)、及び、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性樹脂B−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0073】
[本発明にかからない硬化性樹脂の準備]
本発明にかからない硬化性樹脂として、ESS2410(旭硝子株式会社製商品名、主鎖がポリオキシアルキレンであり、分子内にメチルジメトキシシリル基を有する硬化性樹脂)を準備した。
本発明にかからない硬化性樹脂として、ESG3440ST(旭硝子株式会社製商品名、主鎖がポリオキシアルキレンであり、分子内にトリメトキシシリル基を有する硬化性樹脂)を準備した。
【0074】
(硬化性樹脂P−1の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−3を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量約10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(PMLS4012に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−3を得た。
さらに、上記シラン化合物SE−3(8.90質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−3中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−3中の第二級アミノ基とを80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン基、活性水素が1個置換されたウレア基、及び、トリメトキシシリル基を有する硬化性樹脂P−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0075】
[塩基性化合物(C)の準備]
塩基性化合物(C)として、KBM−603(信越化学工業株式会社製商品名、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、KBM−602(信越化学工業株式会社製商品名、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)を準備した。
【0076】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1に示す配合割合(質量部)で、各原料を反応容器に投入し、減圧下で10分混練することで、各硬化性樹脂組成物を調製した。得られた各硬化性樹脂組成物は、密閉容器に充填した。各硬化性樹脂組成物のゲル化時間を、23±2℃相対湿度50±5%の条件下で測定した。当該測定においては、密閉容器から23±2℃相対湿度50±5%の条件下に暴露された時間を開始時間とし、1時間に1回の頻度で各硬化性樹脂組成物の表面を針でひっかき、硬化物の表面に形成された皮膜により針のひっかき傷が残るようになった時間を終了時間として、開始から終了までの時間をゲル化時間とした。また、別に、各硬化性樹脂組成物を、23±2℃相対湿度50±5%で7日間養生後、さらに50℃相対湿度95%で3日間養生させた硬化物表面のタックを指触で評価した。タックの評価における記号の意味は、以下の通りである。
○:タックなし。
△:タックあり。
×:タック強い。
各硬化性樹脂組成物のゲル化時間及び硬化物表面のタックを表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示す通り、実施例1及び2における本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、一般的に使用される有機錫化合物を配合しなくとも十分硬化するうえ、ウレア基由来の結合基を有する硬化性樹脂B−1を使用しているため、硬化物表面にタックがなかった。一方、ウレア基由来の結合基を有さないESS2410及びESG3440STを用いた比較例1〜3は、ほぼ同様にゲル化したが、硬化物表面にタックが残った。このことから、本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、着塵の問題が起きにくい硬化性樹脂組成物であり、これは特定の硬化性樹脂を組み合わせることにより得られた特異な効果であるといえる。
【0079】
(実施例3〜9、比較例4〜6)
表2及び表3に示す配合割合(質量部)で、各原料を反応容器に投入し、減圧下で10分混練することで、各硬化性樹脂組成物を調製した。得られた各硬化性樹脂組成物は、密閉容器に充填した。各硬化性樹脂組成物の硬化皮膜のダンベル物性を比較した。硬化物皮膜の厚みが2mmとなるように離型性の型に充填し、23±2℃相対湿度50±5%で7日間養生後、さらに50℃相対湿度95%で3日間養生して得られた硬化物について、JIS K 6251に準じて、ダンベル物性(ダンベル状3号形、引張速度:200mm/分)を測定した。各硬化性樹脂組成物の硬化皮膜の50%モジュラス、100%モジュラス、破断時強度、破断時伸びを測定した。また、硬化物表面のタックも同様に評価した。各硬化性樹脂組成物のダンベル物性及び硬化物表面のタックを表2及び表3に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
表2及び表3に示す通り、本発明にかかる硬化性樹脂組成物(実施例3〜9)は、硬化物表面のタックがなく、硬化物の柔軟性が高かった。一方、本発明にかからない硬化性樹脂組成物(比較例4〜6)は、比較的架橋密度が高くなるトリメトキシシリル型の硬化性樹脂を用いることで硬化物表面のタックはないが、ダンベル物性における伸びが十分発現していないことから、硬化物に柔軟性が乏しいことが分かる。本発明にかかる効果は、添加剤等によりタックや伸びを調製するものではなく、特定の硬化性樹脂を組み合わせることにより得られた極めて特異な効果であるといえる。
【0083】
以上のことから、本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、着塵の問題が起きにくい硬化性樹脂組成物であり、硬化物に柔軟性があることから、比較的柔軟性が求められる用途(例えば、建築用目地剤等)に使用されるシーリング材や接着剤などに好適に用いることができる。また、本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、毒性に関する懸念がある有機錫化合物を添加しなくとも十分な硬化性が発現することから、応用範囲が広く、産業上極めて有用であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明における硬化性樹脂組成物は、従来一液型又は多液型の硬化性樹脂組成物が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。特に、硬化物に柔軟性が求められる用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性珪素基の珪素原子に炭素原子が結合し、さらに該炭素原子に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合した化学構造を有する架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、
珪素原子に加水分解性基2個、非加水分解性基1個及び炭素数2以上のアルキレン基1個が結合する構造を有する架橋性珪素基を分子内に有し、かつ、該架橋性珪素基がウレア基由来の結合基を介して主鎖に連結される硬化性樹脂(B)、
及び、塩基性化合物(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、
硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の割合(質量部)が5:95〜95:5であり、
硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)との総和100質量部に対して、塩基性化合物(C)が0.1〜30質量部含有されることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂(A)が、分子内に下記一般式(1)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂であって、硬化性樹脂(B)が、分子内に下記一般式(2)で表される架橋性珪素基を有する硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
−A−CH−SiR3−a(OR ・・・式(1)
(但し、Aは架橋性珪素基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の炭化水素基を、aは1、2又は3を、それぞれ示す)
−X−SiR3−b(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2〜20のアルキレン基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の炭化水素基を、bは2を、それぞれ示す)
【請求項3】
硬化性樹脂(A)及び/又は硬化性樹脂(B)の主鎖が、ポリオキシアルキレンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂(B)が、その分子内にウレタン基由来の結合基を含む硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
塩基性化合物(C)が、下記一般式(3)で表されるアミノシラン化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
N−R−SiR3−c(OR ・・・式(3)
(但し、R、Rは分子量500以下の有機基又は水素原子を、Rは分子量500以下の有機基を、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、cは1、2又は3を、それぞれ示す)
【請求項6】
塩基性化合物(C)が、下記一般式(4)で表されるアミノシラン化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
N−R10−NH−R11−SiR123−d(OR13 ・・・式(4)
(但し、R10は分子量300以下の有機基を、R11は炭素数1〜12の炭化水素基を、R12は炭素数1〜20の炭化水素基を、R13は分子量300以下の有機基を、dは1又は2を、それぞれ示す)
【請求項7】
有機錫化合物の含有量が、硬化性樹脂組成物全質量部に対して0〜1000ppm未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーリング材組成物、接着剤組成物又は粘着剤組成物前駆体。

【公開番号】特開2011−168772(P2011−168772A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8565(P2011−8565)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】