説明

硬化性樹脂組成物

【課題】表面硬化性と深部硬化性とが両方ともに優れた硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】両末端にアルケニル基およびアルコキシ基を有するシリコーン樹脂(A)と、有機チタン化合物(B)、ならびに/または、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)と、を含有し、上記ポリシロキサン化合物(C)を含有する場合、上記アルケニル基1モルに対する上記Si−H結合の量が0.5〜5.0モルである、硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両末端に反応性官能基を有するシリコーン樹脂を含有する硬化性樹脂組成物が知られており(特許文献1等を参照)、例えば、電子材料分野で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−270762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シリコーン樹脂を含有する硬化性樹脂組成物について要求される硬化性のレベルが高まっており、とりわけ、表面硬化性と深部硬化性とが両方ともに優れた硬化性樹脂組成物が求められていた。
そこで、本発明は、表面硬化性と深部硬化性とが両方ともに優れた硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定のシリコーン樹脂とその硬化に寄与する所定成分とを含有する組成物が、表面および深部の硬化性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供する。
【0006】
(1)両末端にアルケニル基およびアルコキシ基を有するシリコーン樹脂(A)と、有機チタン化合物(B)、ならびに/または、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)と、を含有し、上記ポリシロキサン化合物(C)を含有する場合、上記アルケニル基1モルに対する上記Si−H結合の量が0.5〜5.0モルである、硬化性樹脂組成物。
【0007】
(2)上記シリコーン樹脂(A)が、両末端にシラノール基を有するシリコーン樹脂と、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するアルコキシシランとの反応により得られる、上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0008】
(3)上記シリコーン樹脂(A)の25℃における粘度が、20〜1,000,000mPa・sである、上記(1)または(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0009】
(4)上記有機チタン化合物(B)を含有する場合は、上記シリコーン樹脂(A)100質量部に対する上記有機チタン化合物(B)の含有量が0.1〜10質量部である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(5)上記ポリシロキサン化合物(C)および上記ヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有する場合は、上記シリコーン樹脂(A)および上記ポリシロキサン化合物(C)の合計100質量部に対する上記ヒドロシリル化反応用触媒(D)の含有量が0.00001〜0.1質量部である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(6)上記ポリシロキサン化合物(C)および上記ヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有する場合は、さらに、硬化遅延剤(E)を含有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
(7)さらに、無機質充填剤(F)を含有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
(8)さらに、シランカップリング剤(G)を含有する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面硬化性と深部硬化性とが両方ともに優れた硬化性樹脂組成物を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)は、両末端にアルケニル基およびアルコキシ基を有するシリコーン樹脂(A)と、有機チタン化合物(B)、ならびに/または、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)と、を含有し、上記ポリシロキサン化合物(C)を含有する場合、上記アルケニル基1モルに対する上記Si−H結合の量が0.5〜5.0モルである、硬化性樹脂組成物である。
以下、本発明の組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0016】
<シリコーン樹脂(A)>
本発明の組成物が含有するシリコーン樹脂(A)は、両末端にアルケニル基とアルコキシ基とを有するシリコーン樹脂である。本発明の組成物は、シリコーン樹脂(A)を含有することによって、アルケニル基による付加型反応とアルコキシ基による縮合反応(湿気硬化)とが可能となる。
そして、本発明の組成物においては、付加型反応の進行により深部硬化性が担保され、また、縮合反応により表面硬化性が担保されることで、表面硬化性と深部硬化性とが両方ともに優れる。
【0017】
本発明の組成物に含有されるシリコーン樹脂(A)としては、両末端にアルケニル基とアルコキシ基とを有するシリコーン樹脂であれば特に限定されないが、下記式(A1)表されるシリコーン樹脂であるのが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
式(A1)中、R1は一価の炭化水素基を示し、R2はアルキル基を示し、Xはアルケニル基を示し、rは1または2の整数を示す。複数のR1,R2およびXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、nは、1以上の整数を示し、シリコーン樹脂(A)の重量平均分子量に対応する数値にすることができる。
【0020】
1が示す一価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜18のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの炭素数2〜18のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜18のアラルキル基;等が挙げられる。
これらのうち、機械特性、低粘度性、耐候性、および、入手の容易さの観点から、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であるのがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるのがさらに好ましく、メチル基、エチル基であるのが特に好ましい。
【0021】
2が示すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
これらのうち、機械特性、低粘度性、耐候性、および、入手の容易さの観点から、炭素数1〜10のアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましく、メチル基、エチル基であるのがさらに好ましい。
2が示すアルキル基を示すことにより、式(A1)中においては、「−OR2」がアルコキシ基を示す。
【0022】
Xが示すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、本発明の組成物の深部硬化性がより優れるという理由から、ビニル基、アリル基であるのが好ましい。
【0023】
シリコーン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)としては、機械特性、粘度操作のしやすさ、および、反応操作の容易さの観点から、500〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0024】
また、シリコーン樹脂(A)の25℃における粘度としては、機械特性、粘度操作のしやすさ、および、反応操作の容易さの観点から、20〜1,000,000mPa・sであるのが好ましく、500〜100,000mPa・sであるのがより好ましい。
なお、本発明において、粘度とは、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準拠し、25℃において測定されたものとする。
【0025】
(シリコーン樹脂(A)の製造方法)
このようなシリコーン樹脂(A)は、後述するシリコーン樹脂(a1)と後述するアルコキシシラン(a2)との反応により得られるものであるのが好ましい。以下、シリコーン樹脂(A)の製造方法について説明する。
【0026】
[シリコーン樹脂(a1)]
シリコーン樹脂(A)の製造方法に用いられるシリコーン樹脂(a1)は、下記式(1)で表される両末端にシラノール基を有するシリコーン樹脂である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子(Si)にヒドロキシ基(−OH)が直接結合したものをいう。
【0027】
【化2】

【0028】
式(1)中、R1は上述したR1と同義であり、複数のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは1以上の整数を示す。
mが示す整数としては、1以上であれば特に限定されず、シリコーン樹脂(a1)の重量平均分子量に対応する数値にすることができる。
【0029】
シリコーン樹脂(a1)の重量平均分子量(Mw)としては、機械特性、得られるシリコーン樹脂(A)の粘度操作のしやすさ、および、反応操作の容易さの観点から、500〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
また、シリコーン樹脂(a1)の25℃における粘度としては、同様の観点から、20〜1,000,000mPa・sであるのが好ましく、500〜100,000mPa・sであるのがより好ましい。
【0030】
[アルコキシシラン(a2)]
シリコーン樹脂(A)の製造方法に用いられるアルコキシシラン(a2)は、下記式(2)で表される1分子中に少なくとも2個のアルコキシ基を有するアルコキシシランである。
【0031】
【化3】

【0032】
式(2)中、R2,Xおよびrは、上述したR2,Xおよびrと同義である。複数のR2および複数ある場合における複数のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
アルコキシシラン(a2)の重量平均分子量(Mw)としては、反応性、機械特性、得られるシリコーン樹脂(A)の粘度操作のしやすさ、および、反応操作の容易さの観点から、100〜2,000であるのが好ましく、140〜1,000であるのがより好ましい。
【0034】
[カルボン酸化合物(a3)]
シリコーン樹脂(a1)とアルコキシシラン(a2)との反応は、下記式(3)で表される1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するカルボン酸化合物(a1)の存在下で行われるのが好ましい。これにより、緩やかな条件(低温かつ短時間)で、目的とするシリコーン樹脂(A)を得ることができる。
【0035】
【化4】

【0036】
式(3)中、R3は水素または一価の炭化水素基を示す。R3が示す一価の炭化水素基としては、R1が示す一価の炭化水素基として記載したものが挙げられ、なかでも、反応後における除去の容易さ、シリコーン樹脂との相溶性、および、入手のしやすさという観点から、一価の脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、アルキル基であるのがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのがさらに好ましい。
【0037】
[反応工程]
シリコーン樹脂(A)の製造方法は、シリコーン樹脂(a1)とアルコキシシラン(a2)とをカルボン酸化合物(a3)の存在下で反応させて反応生成物を得る工程(以下、「反応工程」ともいう)を備える。
反応工程において、各成分の含有量比は特に限定されないが、反応操作の容易さ、および、反応再現性の観点から、シリコーン樹脂(a1)100質量部に対して、アルコキシシラン(a2)5〜100質量部、カルボン酸化合物(a3)0.001〜10質量部であるのが好ましい。
【0038】
シリコーン樹脂(a1)とアルコキシシラン(a2)との反応は、撹拌により行われるのが好ましい。また、撹拌に際しては、より緩やかな反応条件という観点から、60〜120℃の温度範囲で加熱するのが好ましく、撹拌時間(反応時間)は、3〜12時間であるのが好ましい。
反応工程において、撹拌および加熱を行う方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって行うことができる。
【0039】
このような反応工程によって、カルボン酸化合物(a3)が触媒として機能し、シリコーン樹脂(a1)とアルコキシシラン(a2)との反応が進行する。すなわち、シリコーン樹脂(a1)が有する「−OH」と、アルコキシシラン(a2)が有する「−OR2」とが反応し、副生成物として「R2OH」を与えて、上述したシリコーン樹脂(A)が主生成物として生成する。
この反応工程を、より具体的に説明すると、例えば、下記式(3′)で表されるカルボン酸化合物(a3)が触媒として用いられ、下記式(1′)で表されるシリコーン樹脂(a1)が有する「−OH」と、下記式(2′)で表されるアルコキシシラン(a2)が有する「−OMe」とが反応し、副生成物として「MeOH」を与えて、下記式(A1′)で表されるシリコーン樹脂(A)が主生成物として生成する。なお、下記式中「Me」はメチル基を示す。
【0040】
【化5】

【0041】
反応工程においては、1H−NMRによって反応追跡を行い、シリコーン樹脂(a1)が有するシラノール基に由来するピークの消滅、または、反応に用いた成分以外の成分に由来するピークの出現を確認することにより、主生成物であるシリコーン樹脂(A)と副生成物とを含む反応生成物が得られたものとして、反応終了とすることができる。
【0042】
[除去工程]
さらに、本発明の製造方法は、上記反応生成物から副生成物を除去し、主生成物であるシリコーン樹脂(A)を得る工程(以下、「除去工程」ともいう)を備える。
副生成物の除去方法は、特に限定されず、例えば、反応生成物を加熱しながら、減圧条件下で撹拌することにより行う方法が挙げられる。
このとき、加熱温度、圧力、撹拌時間等の条件は、特に限定されず、生成する副生成物に応じて、適宜設定することができるが、副生成物とともに、未反応のアルコキシシラン(a2)および触媒であるカルボン酸化合物(a3)も同時に除去できる条件であるのが好ましい。
例えば、副生成物として「MeOH」(メタノール)が生成する場合には、加熱温度は120〜160℃であるのが好ましく、圧力は1〜30mmHgであるのが好ましく、撹拌時間は2〜5時間であるのが好ましい。
除去工程においては、反応生成物の粘度を測定し、粘度が当初より上昇して不変となったところで、副生成物、未反応のアルコキシシラン(a2)およびカルボン酸化合物(a3)が除去されたものとして、終了とすることができる。
【0043】
次に、上述したシリコーン樹脂(A)の硬化に寄与する成分として、有機チタン化合物(B)、ポリシロキサン化合物(C)、ヒドロシリル化反応用触媒(D)について説明する。
本発明の組成物は、有機チタン化合物(B)、ならびに/または、ポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有することにより表面および深部の硬化性が優れるが、これらの硬化性がより優れるという理由から、有機チタン化合物(B)、ならびに、ポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有するのが好ましい。
以下、各成分について詳述する。
【0044】
<有機チタン化合物(B)>
本発明の組成物に含有される有機チタン化合物(B)は、シリコーン樹脂(A)が有するアルコキシ基の縮合反応を促進する縮合触媒として機能する。
有機チタン化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート等が好適に用いられる。
【0045】
チタンアルコキシドとしては、特に限定されず、例えば、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−2−エチルヘキシルチタン等が挙げられ、なかでも、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−2−エチルヘキシルチタンが好ましい。
【0046】
チタンキレートとしては、特に限定されず、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等が挙げられ、なかでも、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタンが好ましい。
【0047】
これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が有機チタン化合物(B)を含有する場合、有機チタン化合物(B)の含有量は、シリコーン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、2〜5質量部であるのが好ましい。
有機チタン化合物(B)の含有量がこの範囲であれば、本発明の組成物は、硬化性がより優れ、機械強度および接着性にも優れる。
【0048】
<ポリシロキサン化合物(C)>
本発明の組成物に含有されるポリシロキサン化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するポリシロキサン化合物である。ここで、「Si−H結合」とは、シロキサン結合(…Si−O−Si…)で形成された主骨格中のケイ素原子(Si)に水素原子(H)が結合したものいう。
【0049】
ポリシロキサン化合物(C)は、シリコーン樹脂(A)が有するアルケニル基に対して付加反応(ヒドロシリル化反応)する。このとき、ポリシロキサン化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有しているため、シリコーン樹脂(A)どうしの架橋剤として機能する。
【0050】
本発明の組成物がポリシロキサン化合物(C)を含有する場合、硬化性を確保する観点から、上述したシリコーン樹脂(A)が有するアルケニル基1モルに対する上記Si−H結合の量(以下、「Si−H量」ともいう)は、0.5〜5.0モルを満たすことが必要であり、0.75〜1.25モルであるのが好ましい。
【0051】
ポリシロキサン化合物(C)としては、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記式(c)で表されるものが挙げられる。
【0052】
【化6】

【0053】
式(c)中、R′は一価の炭化水素基を示し、m′は2以上の整数を示し、n′は1以上の整数を示す。複数のR′は同一であっても異なっていてもよい。
R′が示す一価の炭化水素基としては、Rが示す一価の炭化水素基として記載したものが挙げられる。
m′が示す整数としては、2以上であれば特に限定されず、また、n′が示す整数としては、1以上であれば特に限定されず、いずれも、ポリシロキサン化合物(C)の重量平均分子量に対応する数値にすることができる。
【0054】
ポリシロキサン化合物(C)の重量平均分子量(Mw)としては、本発明の組成物の硬化性がより優れ、機械強度および接着性も優れるという理由から、100〜10,000であるのが好ましく、120〜5,000であるのがより好ましい。
また、ポリシロキサン化合物(C)の25℃における粘度としては、相溶性および作業性の観点から、0.1〜10,000mPa・sであるのが好ましく、1〜100mPa・sであるのがより好ましい。
【0055】
式(c)で表されるポリシロキサン化合物(C)としては市販品を使用することができ、具体的には、例えば、式(c)中のR′がメチル基を示すトリメチルシロキシ末端メチルHシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(HMS−013、Gelest社製、粘度:100mPa・s、重量平均分子量:45,000)等が挙げられる。
【0056】
<ヒドロシリル化反応用触媒(D)>
本発明の組成物に含有されるヒドロシリル化反応用触媒(D)は、ポリシロキサン化合物(C)と併用されて、シリコーン樹脂(A)のアルケニル基に対する付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒として機能する。
【0057】
ヒドロシリル化反応用触媒(D)としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられ、白金系触媒であることが好ましい。
白金系触媒の具体例としては、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィン錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−アルコール配位化合物、白金のジケトン錯体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ヒドロシリル化反応用触媒(D)の含有量は、触媒量であるが、本発明の組成物の硬化性がより優れるという理由から、上述したシリコーン樹脂(A)およびポリシロキサン化合物(C)の合計100質量部に対して、0.00001〜0.1質量部であるのが好ましく、0.0001〜0.01質量部であるのがより好ましい。
【0059】
<硬化遅延剤(E)>
本発明の組成物が、上述したポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有する場合、本発明の組成物は、さらに、硬化遅延剤(E)を含有していてもよい。
硬化遅延剤(E)は、本発明の組成物の硬化速度や作業可使時間を調整するための成分であり、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどの炭素−炭素三重結合を有するアルコール誘導体;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、ビニル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シランなどのアルキン含有シラン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化遅延剤(E)の含有量は、本発明の組成物の使用方法等に応じて適宜選択されるが、例えば、上述したシリコーン樹脂(A)およびポリシロキサン化合物(C)の合計100質量部に対して、0.00001〜0.1質量部であるのが好ましく、0.0001〜0.01質量部であるのがより好ましい。
【0060】
<無機質充填剤(F)>
本発明の組成物は、接着性をより良好にし、さらに、機械強度、耐熱性、および、放熱性を付与する目的で、無機質充填剤(F)を含有していてもよい。
無機質充填剤(F)としては、その目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、シリカ、タルク、ベンガラ、単結晶繊維、ガラス繊維等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機質充填剤(F)の含有量は、特に限定されないが、例えば、上述したシリコーン樹脂(A)100質量部に対して10〜10000質量部であるのが好ましく、50〜5,000質量部であるのがより好ましい。
【0061】
<シランカップリング剤(G)>
本発明の組成物は、さらに、シランカップリング剤(G)を含有していてもよい。
シランカップリング剤(G)としては、例えば、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、イミノシラン、これらの反応物、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられ、エポキシシランであるのが好ましい。
エポキシシランとしては、エポキシ基とアルコキシシリル基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランなどのジアルコキシエポキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシエポキシシラン;等が挙げられる。
シランカップリング剤(G)の含有量は、特に限定されないが、上述したシリコーン樹脂(A)100質量部に対して0.5〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0062】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂(A)と、有機チタン化合物(B)ならびに/またはポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)と、必要に応じて使用される、硬化遅延剤(E)、無機質充填剤(F)およびシランカップリング剤(G)とを混合することによって製造する方法が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の分野において、例えば、接着剤、プライマー、封止材等として使用できる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1〜6、比較例1〜5>
<硬化性樹脂組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で用い、これらを真空攪拌機で均一に混合して硬化性樹脂組成物を製造した。なお、同表中、「Si−H量」とは上述したとおりであり、後述するポリシロキサン化合物Cを含有しない実施例および比較例については「−」と記載した。
【0066】
<表面硬化性>
得られた硬化性樹脂組成物を、被着体(アルミニウム合金板、A1050P、パルテック社製、以下同じ。)に塗布し、室温で放置し、指触乾燥した時間(タックフリータイム[min])を測定した。結果を下記第1表に示す。タックフリータイムが短いほど表面硬化性に優れるものとして評価できる。
【0067】
<深部硬化性>
得られた硬化性樹脂組成物を、塗布厚5mmとなるように被着体に塗布し、100℃に保温されたオーブンに30分間放置した後、オーブンから取り出し、組成物に針を挿入して深部における硬化の程度を確認した。
深部が表面と均一に硬化されていた場合には、深部硬化性が非常に優れるものとして「◎」と評価し、深部の硬化が表面と比べてやや不十分であるものの実用上問題のない場合には、深部硬化性が優れるものとして「○」と評価し、深部の硬化が表面と比べて不十分であり実用上問題がある場合には、深部硬化性がやや劣るものとして「△」と評価し、深部の硬化が明らかに進行していなかった場合には、深部硬化性が非常に劣るものとして「×」と評価した。
【0068】
<引張せん断接着強さ、CF>
得られた硬化性樹脂組成物を、接着面積12.5mm×25mmとして、被着体の間に挟み込んだ後、100℃で30分間加熱することにより硬化させ、試験体を得た。得られた試験体を用いて、JIS K6850:1999に準拠して、引張試験を行い、引張せん断接着強さ[MPa]を測定した。また、接着面積に対する凝集破壊(CF)面積の割合[%]も測定した。いずれも結果を下記第1表に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・シリコーン樹脂A−1:後述するようにして製造した、両末端にビニル基およびメトキシ基を有するシリコーン樹脂(Mw:20,000、粘度:1,000mPa・s、ビニル基質量比:0.30%)
・シリコーン樹脂A−2:後述するようにして製造した、両末端にビニル基およびメトキシ基を有するシリコーン樹脂(Mw:37,000、粘度:32,000mPa・s、ビニル基質量比:0.15%)
・シリコーン樹脂3:両末端にメチル基およびビニル基を有するシリコーン樹脂(DMS−V25、Gelest社、Mw:17,200、粘度:500mPa・s、官能基質量比:0.40%)
・有機チタン化合物B:ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン(オルガチックスTC−750、マツモト交商)
・ポリシロキサン化合物C:トリメチルシロキシ末端メチルHシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(HMS−013、Gelest社製、Mw:45,000、粘度:100mPa・s)
・ヒドロシリル化反応用触媒D:塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Gelest社製、Mw:474.68)
・硬化遅延剤E:3−メチル−1−ブチン−3−オール(東京化成工業社製、Mw:100)
・無機質充填剤F:球状アルミナ(CB−A10、昭和電工社製)
・シランカップリング剤G:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)
【0071】
シリコーン樹脂A−1,A−2については、以下のとおり製造した。
まず、2Lの3口フラスコに、ジムロート冷却管とメカニカルスターラーとを備え付け、下記第2表に示す成分(単位は質量部)を封入した。次に、このフラスコをオイルバスに漬けて100℃に加熱しながら、メカニカルスターラーを回転させて、フラスコに封入された成分を撹拌し、6時間反応させた。
このとき、後述するシリコーン樹脂a1−1,a1−2が有するシラノール基に由来するピークの消滅、または、フラスコに封入された成分以外の成分に由来するピークの出現を、1H−NMRによって確認することにより、主生成物(シリコーン樹脂A−1,A−2)含む反応生成物が得られたものとして、反応終了とした。
次に、真空ポンプを用いて、反応生成物を、140℃、10mmHgの条件下で3時間撹拌し、粘度が不変となったところで、副生成物、未反応のアルコキシシランa2−1およびカルボン酸化合物a3−1の除去が終了したものとして、シリコーン樹脂A−1,A−2を得た。
【0072】
【表2】

【0073】
第2表中の各成分は、以下のものを使用した。
・シリコーン樹脂a1−1:両末端シラノールポリジメチルシロキサン(DMS−S27、Gelest社製、Mw:18,000、粘度:800mPa・s)
・シリコーン樹脂a1−2:両末端シラノールポリジメチルシロキサン(DMS−S32、Gelest社製、Mw:36,000、粘度:2000mPa・s)
・アルコキシシランa2−1:トリメトキシビニルシラン(KBM−1003、信越化学工業社製、Mw:148.2)
・カルボン酸化合物a3−1:酢酸(鹿1級、関東化学社製)
【0074】
第1表に示す結果を見ると、両末端にメチル基およびビニル基を有するシリコーン樹脂3を用いた比較例1〜3は、いずれも表面硬化性に劣り、さらに、比較例2の深部硬化性が特に劣ることが分かった。また、Si−H量が本発明の範囲の上限値を超える比較例4,5は、充分な硬化性が得られないことが分かった。
【0075】
これに対して、実施例1〜6は、いずれも、表面硬化性および深部硬化性が両方ともに優れ、引張試験の結果も良好であることが分かった。
とりわけ、有機チタン化合物Bと、ポリシロキサン化合物Cおよびヒドロシリル化反応用触媒Dとを併用した実施例1,4は、硬化性がより優れることが分かった。
また、シリコーン樹脂A−1を用いた実施例1〜3と比べて、より粘度の高いシリコーン樹脂A−2を用いた実施例4〜6の方が、表面硬化性がより優れ、また、引張せん断接着強さも良好であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端にアルケニル基およびアルコキシ基を有するシリコーン樹脂(A)と、
有機チタン化合物(B)、ならびに/または、1分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有するポリシロキサン化合物(C)およびヒドロシリル化反応用触媒(D)と、
を含有し、
前記ポリシロキサン化合物(C)を含有する場合、前記アルケニル基1モルに対する前記Si−H結合の量が0.5〜5.0モルである、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂(A)が、両末端にシラノール基を有するシリコーン樹脂と、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するアルコキシシランとの反応により得られる、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂(A)の25℃における粘度が、20〜1,000,000mPa・sである、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機チタン化合物(B)を含有する場合は、前記シリコーン樹脂(A)100質量部に対する前記有機チタン化合物(B)の含有量が0.1〜10質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサン化合物(C)および前記ヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有する場合は、前記シリコーン樹脂(A)および前記ポリシロキサン化合物(C)の合計100質量部に対する前記ヒドロシリル化反応用触媒(D)の含有量が0.00001〜0.1質量部である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリシロキサン化合物(C)および前記ヒドロシリル化反応用触媒(D)を含有する場合は、さらに、硬化遅延剤(E)を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、無機質充填剤(F)を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、シランカップリング剤(G)を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−102177(P2012−102177A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249621(P2010−249621)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】