説明

硬化性組成物、及びその架橋ゴム

【課題】 本発明は、低硬度で振動減衰性に優れる架橋ゴムを形成する成形性に優れた硬化性組成物、及びその架橋ゴムを提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)可塑剤、(E)無機フィラーを必須成分として含有する、常温で流動性を有する硬化性組成物により、硬化後のゴム硬度がJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下、かつ動的粘弾性装置にて23℃下、100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0.4以上である架橋ゴムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低硬度で振動減衰性に優れる架橋ゴムを形成する成形性に優れた硬化性組成物、及びその架橋ゴムに関する。さらに詳しくは、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するイソブチレン系重合体と1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒、可塑剤、無機フィラーを必須成分として含有し、硬化反応により低硬度かつ、振動減衰性に優れる架橋ゴムを、効率的に形成することができる成形性に優れたポリイソブチレン系硬化性組成物、及びその架橋ゴムに関する。本発明の硬化性組成物から得られるポリイソブチレン系架橋ゴムは、低硬度かつ高い振動減衰性を有していることから、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、振動吸収性、衝撃吸収性などが求められる幅広い用途に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、(A)1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはアルキニル基を含有する飽和炭化水素系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、並びに(C)ヒドロシリル化触媒からなる硬化性組成物が防音防振材料として有用であることが知られている。特許文献1では、飽和炭化水素系重合体の一つとしてイソブチレン系重合体が例示されており、硬度38°〜40°の架橋ゴムにて、23℃下での動的粘弾性において0.4〜0.5の高い損失正接を有することが記載されている。
【0003】
また、その他の関連文献として以下に示す特許文献2〜4が挙げられるが、その関連性については後述する。
【特許文献1】特許第3503844号
【特許文献2】特開2007−131665号
【特許文献3】特開2005−255883号
【特許文献4】特開2005−320524号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記の硬化組成物、すなわち(A)成分として飽和炭化水素系重合体の一つとしてアルケニル基を有するイソブチレン系重合体、(B)変性ハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金錯体触媒、さらにシリカ微粉末、可塑剤、その他添加剤からなる硬化性組成物から得られる架橋ゴムとして例示されているゴムは、動的粘弾性測定における23℃下の損失正接(tanδ)が0.4〜0.5と高いものの、硬度は38°〜40°であり、硬度の低い架橋ゴムの記載はない。
【0005】
一方、近年、音、振動を抑制したいとの要求は益々高まり、その要求内容も幅を広げている。特に光・磁気ディスクなどの回転体を内蔵する精密電子部品、すなわちパーソナルコンピューターやポータブルオーディオ、携帯電話などの携帯化が進んでおり、その耐久性、信頼性に対する要求が高まっている。また、自動車など振動する車両に搭載する機会も増えている。これらの電子機器は、そのもの自体の振動を抑える工夫とともに、外的な衝撃や振動から防御するといった工夫も必要となる。
【0006】
このような振動抑制、振動絶縁、衝撃吸収などの対策の多くには通常ゴムが使用される。しかし、従来のゴムは、タイプAデュロメーターにおいて20°以上とゴム硬度が高いものが一般的であり、このようなゴムは低周波数域での振動絶縁や共振抑制には効果が乏しいとされる。低周波数域での振動絶縁や共振抑制効果を高めるためには、ゴムの硬度下げるとの設計が一般的に知られているが、硬度の低いゴムは取り扱いが難しいほか、圧縮永久ひずみが大きいなど、実用上の課題を有する。尚、特許文献2では、アスカーC硬度26や10、すなわちタイプAデュロメーターでは約10°、5°以下に相当する低硬度の架橋ゴムも知られているが、振動吸収性に関する記載はなく、ゴムとしては液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴムが記載されているに過ぎず、高い振動吸収性は期待できない。
【0007】
また、特許文献3では、分子中にスチレンモノマーから成るブロックと、ビニルーポリイソプレンブロックとから成り、−40℃以上にtanδの主分散のピークを有するブロック共重合体が、ゴム組成物100重量部に対して10〜70重量部混合され架橋されて成るゴム弾性体として、100Hzにおけるtanδの25℃の値が0.3以上であり、硬度がA5〜80°である振動吸収体用組成物が記載されている。
【0008】
ブロック共重合体のみでは、tanδのピーク温度より低温領域にて、急激に制振性能を喪失するとの課題、一方弾性ゴムであるEPDMのみでは制振性能が不足するといった課題を解決すべく、両者をブレンドすることにより、前回課題を解決しようとしたものである。
【0009】
特許文献3に記載の図2から読み取ると、特に低硬度のゴム弾性体として、硬度10Aの架橋ゴムの25℃におけるtanδの値が0.4以上のものが例示されている。該組成物の性状については触れられていないが、スチレン系のブロック重合体とゴムとをブレンドすることから推測すれば、通常の固形ゴムや熱可塑性エラストマーとしての取り扱い性にとどまる。また、前記硬度10Aの架橋ゴムの50℃におけるtanδの値を特許文献3に記載の図2から読み取ると、0.3以下であり、高温領域での制振性能の喪失が見られる。
【0010】
一方、特許文献4には、ブチルゴム、23℃で液状ゴム、結晶性オレフィン系樹脂を含む熱可塑性エラストマーが提案されており、ショア硬度A20°以下にて、測定温度は示されていないが、損失正接が1.0以上と振動吸収性に優れる組成物が示されている。但し、該組成物はあくまでも熱可塑性エラストマーであり、記載されてはいないが、通常の熱可塑性エラストマーと同様、圧縮永久ひずみに劣るものと推測される。また、成形にあたっても、ペレットを用いた押出、射出成形にとどまる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は種々の検討を行った結果、(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)可塑剤、(E)無機フィラーを必須成分として含有する、常温で流動性を有する硬化性組成物により、硬化後のゴム硬度がJIS K 6253 に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下、かつ動的粘弾性装置にて23℃下、100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0.4以上である架橋ゴムを得るに至り、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、
(I).下記(A)〜(D)成分を必須成分とし、硬化後のゴム硬度がJIS K 6253 に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下、かつ動的粘弾性装置にて23℃下、100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0.4以上であることを特徴とする、常温で流動性を有する硬化性組成物、
(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)可塑剤、(E)無機フィラー、
(II).前記(A)〜(E)成分を必須成分としてなる硬化性組成物が、23℃下、B型回転粘度計、10rpmにて測定した粘度が5000Pa・s以下である(I)記載の硬化性組成物、
(III).硬化後のゴムにおいて、JIS K 6262に規定される、圧縮率25%、試験温度70℃、試験時間22時間の圧縮永久ひずみが10%以下であることを特徴とする(I)、(II)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(IV).(F)成分として、粘着付与樹脂を含有する(I)〜(III)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(V).前記(A)成分であるアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体の数平均分子量が3,000から50,000である(I)〜(IV)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VI)前記(B)成分が、一般式(1)で表されるヒドロシリル基を有する化合物であることを特徴とする(I)〜(V)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(VII).前記(F)成分が、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、脂肪族系(C5)石油樹脂、芳香族(C9)系石油樹脂、脂肪族(C5)/芳香族(C9)系石油樹脂、脂環族系石油樹脂から選ばれる、少なくとも1種であることを特徴とする(I)〜(VI)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(VIII).硬化後のゴム硬度がJIS K 6253 に規定されるタイプAデュロメーターにおいて10°以下であることを特徴とする(I)〜(VII)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(IX).動的粘弾性装置により100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0℃〜50℃の温度領域において、0.3以上であることを特徴とする請求項(I)〜(VIII)のいずれか1項に記載の硬化性組成物、
(X).(I)〜(IX)のいずれか1項に記載の硬化性組成物を、加熱成形することにより得られる架橋ゴム、
(XI).(I)〜(X)のいずれか1項に記載の硬化性組成物を、液状射出成形機により成形することにより得られる架橋ゴム、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化性組成物から得られるポリイソブチレン系架橋ゴムは、低硬度かつ高い振動減衰性を有していることから、共振抑制効果が高く、かつ低周波数域での振動減衰性に優れており、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、振動吸収性、衝撃吸収性などが求められる幅広い用途に利用できる。また、このような架橋ゴムを、塗布や注入、スクリーン印刷などのような接着剤やポッティング剤などと同様の取り扱いや、プレス成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形などにより、効率よく得ることができる。
生産性よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に用いる(A)成分は、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有するイソブチレン系重合体である。ここで、イソブチレン系重合体とは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されているものに限らず、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体中に含むものをさす。但し、イソブチレンと共重合性を有する単量体は、イソブチレン単位に起因する振動減衰性を大きく損なわない範囲で含有することが好ましく、50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下の範囲が好ましい。
【0017】
このような単量体成分としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエ−テル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。このような共重合体成分の具体例としては、例えば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ヘキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。 特に好ましくは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されたものである。
【0018】
前記イソブチレン系重合体(A)の数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)は、その取り扱いやすさと硬化後のゴム硬度の点から、好ましくは2,000〜100,000程度、さらに好ましくは3,000〜50,000である。一般的には数平均分子量が大きいほど、得られる架橋ゴムの硬度は低下する傾向にある。
【0019】
また、アルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素2重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基、メタクリル基等が挙げられる。これらの中では、ヒドロシリル化反応に対する活性が高い、アルケニル基の導入が比較的容易であるとの点から、アリル基であることが好ましい。
【0020】
本発明における(A)成分は、上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が、イソブチレン系重合体の主鎖末端あるいは側鎖にあってもよいし、また両方にあってもよい。とくに、アルケニル基が主鎖末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれるイソブチレン系重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、低硬度ながら高強度、低圧縮永久ひずみのゴム状硬化物が得られやすくなるなどの点から好ましい。
【0021】
本発明の(A)成分の製造方法としては、特開平3−152164号、特開平7−304969号公報に開示されているような水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させ重合体に不飽和基を導入する方法が上げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するのにアルケニルフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシランなどと置換反応を行う方法、種々のフェノール類とフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法などが上げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているような単量体の重合時に不飽和基を導入する方法も可能である。
【0022】
アルケニル基は、重合体(A)1分子中に平均1個を超える量、好ましくは平均5個以下存在するのがよい。重合体(A)1分子中に含まれるアルケニル基の数が平均1個以下になると、硬化性が不十分になるほか、得られる網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない。また、1分子中に含まれるアルケニル基が多くなると網目構造があまりに密となるため、得られる成形体は硬く脆くなり好ましくない。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0023】
本発明における(B)成分である1分子中に平均1を超えるヒドロシリル基を有する化合物は、ヒドロシリル基を有するものであれば特に制限無く用いることができるが、数平均分子量400〜3,000のものが好ましく、500〜1,000のものがさらに好ましい。数平均分子量400未満のものでは加熱硬化時に揮発して十分な硬化物が得られなく、3,000を超えるものでは、十分な硬化速度が得られなくなる。このような化合物の例としては、原材料の入手性や(A)成分への相溶性の面から、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが例示される。また、これら(B)成分は、(A)成分との相溶性が良好なものが好ましい。特に系全体の粘度が低い場合には、相溶性の低いものを使用すると、相分離が起こり硬化不良を引き起こすことがある。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、1<b+c≦40、1<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、又は、
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、3≦f+g≦20、1<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)等で示される鎖状又は環状のもの等が挙げられる。
(A)成分及び(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
式中、1<k+l≦20、1<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。
【0032】
(B)成分のより具体的な例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、(A)成分との相溶性確保と、SiH量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物が例示され、一例として、以下の構造があげられる。
【0033】
【化6】

【0034】
但し、1<p+q≦20、1<p≦19、0<q≦18である。
【0035】
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基含有化合物の使用量は、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.7以上である。[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る場合、得られる架橋ゴムは架橋密度が低いため、圧縮永久ひずみが大きいほか、粘着性が高く、成形体の取り扱いが難しくなる。また、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]が[(A)成分中のアルケニル基の総量]に比較し過剰になり過ぎると、三次元の網目骨格の形成が困難となり、同様に得られる成形体の取り扱いが難しくなる。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
【0036】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、任意のものを使用できる。具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、PtX(ViMeSiOSiMeVi)y 、Pt〔(MeViSiO)z};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu };白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu) (式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac)(ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al 、RuCl 、IrCl、FeCl 、AlCl 、PdCl・2HO、NiCl、TiCl 等が挙げられる。
【0037】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。触媒使用量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−6〜10−2molの範囲で用いるのがよい。10−8mol未満では、硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる可能性が高い。逆に10−1molを越える場合は、ポットライフの確保が困難であるため好ましくない。
【0038】
本発明の(D)成分である可塑剤は、ゴムの流動性、混練性、成形性等の改善に使用される一般的な可塑剤が使用できるが、本発明に用いるイソブチレン系重合体との相溶性の良いものが好ましい。このような可塑剤の具体例としては、例えばポリブテン、水添ポリブテン、α−メチルスチレンオリゴマー、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油、ポリα−オレフィン、セバシン酸エステルやアジピン酸エステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、単体ではイソブチレン系重合体との相溶性が悪い可塑剤でも、相溶性が良好な可塑剤と併用することにより使用できる。
【0039】
これらの(D)成分の使用量としては、(A)成分100重量部に対し10〜300重量部、好ましくは30〜250重量部、さらに好ましくは50〜200重量部である。これら成分の使用量が少な過ぎる場合、得られる架橋ゴムの硬度を低下させることが難しくなるとともに、硬化性組成物の流動性が低く、取り扱いも困難となる。一方、これらの使用量が多過ぎる場合、得られるゴムの強度が不足するとともに、圧縮永久ひずみも大きくなる。
【0040】
本発明の(E)成分である無機フィラーとしては、通常のゴムの補強に使用される、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウムなどの一般的な無機フィラーが挙げられる。このうち、硬化性組成物の流動性と得られる架橋ゴムの機械特性のバランスから、微粉末シリカ、なかでも表面を疎水した微粉末シリカ、カーボンブラック、膠質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレーなどが好ましい。
【0041】
一方、本発明の硬化性組成物は、硬化反応としてヒドロシリル化反応を利用するため、前記(E)成分の使用にあたっては、ヒドロシリル化反応への阻害の有無や、反応系の水分に注意する必要がある。ヒドロシリル化反応への阻害という点から、水分が多いと、硬化反応時に(B)成分である硬化剤のヒドロシリル基と水との反応により水素ガスを発生し、得られる硬化物中にボイドを生じることになる。従って、必要に応じて水分を除去する必要がある。
【0042】
これら(E)成分の使用量としては、(A)成分100重量部に対し、2〜300重量部、好ましくは5〜200重量部である。但し、これら(E)成分の使用量は、使用する(E)成分の種類によって最適な使用量は大きく異なる。例えば、補強効果や増粘効果の大きい微粉末シリカでは少量の使用により目的とする物性の発現を期待できるが、増量剤として使用される膠質炭酸カルシウムなどでは、同じような物性の発現を目指すためには多量に使用する必要がある。
【0043】
本発明の(F)成分である粘着付与樹脂は、本発明の硬化性組成物から得られる架橋ゴムの振動減衰性を高める目的で使用する。
【0044】
これら(F)成分である粘着付与樹脂としては、粘着剤として使用される一般的な粘着付与樹脂を使用できる。具体例としては、ロジン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などの天然物およびその誘導体、脂肪族系(C5)石油樹脂、芳香族(C9)系石油樹脂、脂肪族(C5)/芳香族(C9)系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂などの合成系樹脂などが挙げられる。
【0045】
このうち、(A)成分であるイソブチレン系重合体との相溶性、あるいは前記(A)成分と(D)成分である可塑剤との混合物に対する相溶性が良好なものが好ましい。また、本発明の硬化性組成物は硬化反応としてヒドロシリル化反応を利用するため、ヒドロシリル化反応への阻害が小さいものが好ましい。これらの観点から、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、脂肪族系(C5)石油樹脂、脂肪族(C5)/芳香族(C9)系石油樹脂、脂環族系石油樹脂が特に好ましい。
【0046】
また、これら(F)成分は、本発明の硬化性組成物から得られる架橋ゴムの振動減衰性、特に共振領域における共振抑制を目的に使用する。(F)成分の使用にあたっては、該架橋ゴムを使用する温度領域において共振抑制効果が発現するよう、ガラス転移温度を目安に(F)成分を選択すればよい。但し、(F)成分である粘着付与樹脂のガラス転移温度が高すぎると、使用温度領域における振動減衰効果が十分に発揮されない。また、ガラス転移温度が低すぎると、該架橋ゴムの粘着性が大きく取り扱いが難しくなる。両者のバランスを考慮し、最適なガラス転移温度を有する(F)成分を選択することが好ましい。
【0047】
これら(F)成分の使用量としては、(A)成分100重量部に対し、5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部である。これら成分の使用量が少な過ぎる場合、得られる架橋ゴムの振動減衰効果は不十分となり、使用量が多すぎる場合、得られる架橋ゴムの粘着性が高くなり、取り扱いが困難になるとともに、圧縮永久ひずみも大きくなる。
【0048】
また、本発明の(A)〜(E)成分、および(A)〜(F)成分からなる硬化性組成物には、硬化性組成物の保存安定性を改良する目的として保存安定性改良剤、耐熱性や耐候性を改良する目的として酸化防止剤や紫外線吸収剤など、着色を目的に各種顔料、表面性の改良を目的に金属石鹸やワックス、シリコン化合物など、その他必要に応じて界面活性剤や溶剤など使用できる。
【0049】
前記保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている通常の安定剤であって所期の目的を達成するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
また、本発明の硬化性組成物を得る方法としては、特に制限はないが、(A)〜(E)成分、あるいは(A)〜(F)成分、さらに必要に応じて使用する各種添加剤や充填剤をプラネタリーミキサーや2軸ディスパなどの回転式ミキサーや、ニーダー、バンパリーミキサー、ロールなどの装置を使用し、混合する方法が挙げられる。ここで、本発明の硬化性組成物における、(E)成分である無機フィラーを均一に分散、安定化させること、及び硬化性組成物中に含まれる水分をなるべく除去することが望ましい。(A)成分中への充填剤の分散が不均一、不安定であれば、組成物の性状が経時で大きく変化する。また、組成物中に水分が多い場合には、硬化反応時に(B)成分と水分との反応による発泡し、架橋ゴム中にボイドを生じることとなる。
【0051】
このようにして得られる本発明の硬化性組成物は、常温で流動性を有するものであり、23℃下、B型回転粘度計にて測定した粘度が5,000Pa・s以下のものである。このような、常温で流動性を有する組成物は液状射出成形に適用可能性であり、効率よく架橋ゴムを成形することができる。この液状射出成形は、加熱硬化タイプの液状シリコーンゴム向けに開発されたものであり、簡便かつ、生産性に優れえた液状ゴムの成形方法として知られている。
【0052】
また、本発明の硬化性組成物から架橋ゴムを得る方法としては、前記液状射出成形に限らず、一般的に使用されている加熱硬化型の液状ゴムと同様の方法をとることができる。塗布や注入、スクリーン印刷などのような接着剤やポッティング剤などと同様の取り扱いや、プレス成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形など、ゴム成形体を得る方法を適用できる。
【0053】
また、これら各種の取り扱い方法において、本発明の硬化性組成物は、全ての成分を含む1液形態として扱うことも、(B)成分と(C)成分とが混合しないように全成分を2液に配分した2液形態として扱うことも可能である。前者の場合、室温下でも徐々に反応は進行し得るため、低温下での保管が必要となるが、成形に際して2液を混合するなどの手間が省略できる。また、後者の場合には、成形する際に2液を混合し、泡を含まない状態で塗布、充填、射出できるように工夫が必要となるが、硬化性組成物の長期保管には有利である。このような2液形態の液状硬化性組成物の取り扱いには、液状シリコーン向けに開発された液状射出成形システムに使用されている2液混合吐出装置や、2液形態のウレタン樹脂、エポキシ樹脂に使用されている2液混合吐出装置が使用できる。
【0054】
本発明の硬化性組成物より得られるポリイソブチレン系架橋ゴムは、ゴム硬度がJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下であり、特に好ましくは10°以下である。このような硬度の低いゴムは、一般的に共振周波数が低く、振動絶縁性に優れる。しかし、その一方で架橋前のゴムは粘着性が大きいため生産性が低い、圧縮永久ひずみが大きいなどの短所を有している。この点、本発明の硬化性組成物は、前記したように液状ゴム用の成形システムへの適用が可能であり、高い生産性を確保できる。また、架橋反応としてヒドロシリル化反応を利用することから、圧縮永久ひずみも小さく、信頼性に優れた性能を発揮する。
【0055】
また、本発明の硬化性組成物より得られるポリイソブチレン系架橋ゴムは動的粘弾性装置にて、周波数100Hzのせん断モードにて測定した損失正接(tanδ)の値が23℃下で0.4以上である。さらに好ましくは、23℃下で0.4以上であるとともに、0℃〜50℃の温度領域における損失正接(tanδ)が0.3以上である。この損失正接(tanδ)は、動的粘弾性装置にて測定される貯蔵弾性率と損失弾性率の比であり、この値が高いほど振動減衰性は高いとされる。
【0056】
また、本発明の硬化性組成物より得られるポリイソブチレン系架橋ゴムは、JIS K 6262に規定される、圧縮率25%、試験温度70℃、試験時間22時間の圧縮永久ひずみが10%以下である。一般的に、振動吸収性や衝撃吸収性が求められるゴム部品は圧縮された状態で使用されることが多く、圧縮永久ひずみが大きい材料では、時間とともにゴムの性状が変化することから、振動吸収性や衝撃吸収性が大きく変化することになる。すなわち、長期にわたり、信頼性の高い振動吸収性や衝撃吸収性を確保するためには、圧縮永久ひずみが小さいことが求められる。
【0057】
本発明の硬化性組成物より得られる、このようなポリイソブチレン系架橋ゴムは高い減衰性を活かし、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、振動吸収性、衝撃吸収性などが求められる幅広い用途に利用できる。
【実施例】
【0058】
次に実施例により本発明の硬化性組成物、及びその架橋ゴムを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
(製造例1)
(―Si−O−)繰り返しユニットを平均して7.5個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.5当量のα−オレフィンを添加し、1分子中に平均約5.5個のヒドロシリル基を有する化合物(B−1)を得た。この化合物のSi−H基含有量は6mmol/gであった。
【0060】
(実施例1)
特開平8−127683号公報、製造例1に記載された方法に準じ、(A)成分である分子量約16,000、アリル基数2.0のアリル基末端ポリイソブチレン(A−1)を得た。この(A)成分100gに、(D)成分であるDURASYN 170(イネオスシンガポール社製)を120g、酸化防止剤としてMARK A−50(株式会社アデカ製)を2.0g、チヌビン−765(チバ・ジャパン株式会社製)を1.0g、(E)成分であるカーボンブラックASTM No.N−762を140g添加し、ミキサーにて混練した。この混合物を減圧下、加温することにより脱水した。冷却後、この混合物に保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業株式会社製、サーフィノール61)を0.7g、(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体触媒(ディーエムスクエアージャパン株式会社製、PT−VTSC−3.0X)を0.3g、(B)成分である変性メチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)を6g、順次混合し、液状の硬化性組成物を得た。これらの配合表を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
このようにして得られた液状硬化性組成物の粘度を、東機産業株式会社製 TVB−10形粘度計にて、23℃下で測定したところ、10rpmで600Pa・sであった。
【0063】
次に、この液状組成物を厚さ2mmのスペーサと2枚のプレス板を使用し、180℃、3分間の加熱プレス成形することにより2mm厚の硬化物シートを得た。さらに得られた硬化物シートを熱風乾燥機にて、180℃、4時間加熱処理した後、以下の各種特性を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0064】
硬度 : JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメーターにて測定した。
【0065】
動的粘弾性測定による損失正接(tanδ) :アイティー計測制御株式会社製 動的粘弾性測定装置DVA−200にて、周波数100Hzのせん断モードにて0℃、23℃、50℃下の損失正接(tanδ)を測定した。
【0066】
圧縮永久歪 : JIS K 6262に規定される、圧縮率25%、試験温度70℃、試験時間22時間の圧縮永久ひずみを測定した。
【0067】
【表2】

【0068】
(実施例2〜3、比較例1)
前記実施例1と同様の方法により、表1の配合表に従い、硬化性組成物を得た。また、前記実施例1と同様にして、硬化物シートを得て、硬度、損失正接、圧縮永久ひずみを測定した。これらの結果を表2に示す。
【0069】
(実施例4)
次に、実施例1で使用したものと同一の(A)成分100gに、(D)成分であるDURASYN 170(イネオスシンガポール社製)を75g、(F)成分であるガラス転移温度約60℃の水添テルペン樹脂を50g、酸化防止剤としてMARK A−50(株式会社アデカ製)を2.0g、チヌビン−765(チバ・ジャパン株式会社製)を1.0g、(E)成分であるカーボンブラックASTM No.N−762を120g添加し、ミキサーにて混練した。この混合物を減圧下、加温することにより脱水した。冷却後、この混合物に保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業株式会社製、サーフィノール61)を0.6g、(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体触媒(ディーエムスクエアージャパン株式会社製、PT−VTSC−3.0X)を0.2g、(B)成分である変性メチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)を6g、順次混合し、液状の硬化性組成物を得た。これらの配合表を表1に示す。
【0070】
また、前記実施例1と同様にして、硬化物シートを得て、硬度、損失正接、圧縮永久ひずみを測定した。これらの結果を表2に示す。
【0071】
(実施例5、比較例2)
前記実施例4と同様の方法により、表1の配合表に従い、硬化性組成物を得た。また、前記実施例1と同様にして、硬化物シートを得て、硬度、損失正接、圧縮永久ひずみを測定した。これらの結果を表2に示す。
【0072】
次に、実施例1〜3、5、及び比較例1〜2に従い、直径29mm、厚さ12.5mmの円筒形架橋ゴムを得た。これらの円筒形架橋ゴムを対象に、IMV株式会社製 振動試験装置i210LG/SA03を用いた振動伝達試験を行った。試験条件は下記の通りである。
【0073】
荷重 : 1個当たり約7kg
加速度 : 0.2G
振動数 : 5〜100Hz
結果を図1に示す。
【0074】
図1から明らかなように、実施例1〜3、5の低硬度ポリイソブチレン系架橋ゴムは、比較例である硬度A28°、同23°のポリイソブチレン系架橋ゴムに比較し、共振周波数が低く、従い40Hz以上の周波数領域における振動伝達率が低くなっている。すなわち、振動絶縁効果が大きいことを示している。
【0075】
これら実施例に示される、本発明の(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)可塑剤、(E)無機フィラーを必須成分として含有する硬化性組成物は、常温下にて流動性を有しており、JIS K 6253 に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下の硬度であり、かつ動的粘弾性装置にて23℃下、100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0.4以上であるポリイソブチレン系架橋ゴムを与えるものである。また、得られる低硬度のポリイソブチレン系架橋ゴムは高い振動減衰性を有している。低周波数域における共振抑制効果が高いとともに、特に低硬度であることから高い振動絶縁性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例と比較例で得た架橋ゴムの振動伝達率の周波数特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を必須成分とし、硬化後のゴム硬度がJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメーターにおいて15°以下、かつ動的粘弾性装置にて23℃下、100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0.4以上であることを特徴とする、常温で流動性を有する硬化性組成物。
(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)可塑剤
(E)無機フィラー
【請求項2】
前記(A)〜(E)成分を必須成分としてなる硬化性組成物が、23℃下、B型回転粘度計、10rpmにて測定した粘度が5000Pa・s以下である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化後のゴムにおいて、JIS K 6262に規定される、圧縮率25%、試験温度70℃、試験時間22時間の圧縮永久ひずみが10%以下であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(F)成分として、粘着付与樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分であるアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体の数平均分子量が3,000から50,000である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、一般式(1)で表されるヒドロシリル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
一般式(1):
【化1】

【請求項7】
前記(F)成分が、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、脂肪族系(C5)石油樹脂、芳香族(C9)系石油樹脂、脂肪族(C5)/芳香族(C9)系石油樹脂、脂環族系石油樹脂から選ばれる、少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
硬化後のゴム硬度がJIS K 6253 に規定されるタイプAデュロメーターにおいて10°以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
動的粘弾性装置により100Hzの条件下で測定される損失正接(tanδ)の値が0℃〜50℃の温度領域において、0.3以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を、加熱成形することにより得られる架橋ゴム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を、液状射出成形機により成形することにより得られる架橋ゴム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84499(P2009−84499A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258164(P2007−258164)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】