説明

硬化性組成物、及びそれを用いた金属表面の腐食防止方法

【課題】 SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含有する硬化性組成物において、金属表面の腐食を抑制することが可能な硬化性組成物を提供すること、および、その硬化性組成物を使用して金属表面の腐食を防止する処理方法を提供することである。
【解決手段】 (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、及び、(D)陰イオン交換体、アミン系化合物及び吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関するものであり、更に詳しくは、金属表面の腐食を防止できる硬化性組成物、その硬化性組成物を使用した金属表面の腐食を防止する処理方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器用部品は長期使用において、耐腐食性を有することが必要である。しかし、電気・電子機器に用いられる材料中に含有されることのあるハロゲンイオン又はハロゲン系化合物や、大気中の腐食性物質(SO、HS、NO、海塩粒子)が電極等の金属表面の腐食を進行させることにより、電子機器の故障原因となる場合がある(非特許文献1)。
【0003】
例えば、大気中の硫黄源による金属表面の腐食を防止する方法として、シリコーンゴム組成物に硫黄含有ガスにより硫化されやすい金属粉を配合させる発明が提案されている(特許文献1,2)。しかし、当該発明は、透明性が必要な箇所へ使用ができないこと、ならびに金属粉を高充填した場合には電極間の短絡の恐れや絶縁性が必要な箇所には使用できない等の欠点がある。
【特許文献1】特開2003−096301
【特許文献2】特開2005−113115
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、2005年10月24日号、P32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含有する硬化性組成物において、金属表面の腐食を抑制することが可能な硬化性組成物を提供すること、および、その硬化性組成物を使用して金属表面の腐食を防止する処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、およびヒドロシリル化触媒を含有する組成物の硬化物で金属表面を被覆したものにおいて、金属表面が腐食される場合があることに直面し、当該現象の要因を鋭意検討したところ、当該組成物が奏する優れた耐熱性・耐光性を維持し、かつ、金属腐食の抑制にも有効な組成物を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、及び、(D)陰イオン交換体、アミン系化合物及び吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する硬化性組成物に関する(請求項1)。
【0007】
前記陰イオン交換体が、ハイドロタルサイト様化合物及び/又はハイドロタルサイト様化合物の焼成物である請求項1の硬化性組成物(請求項2)。
【0008】
前記アミン系化合物がベンゾトリアゾール誘導体及び/又はアミノアルコキシシランである、請求項1または2に記載の硬化性組成物(請求項3)。
【0009】
前記吸着剤がゼオライトである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項4)。
【0010】
前記(A)成分が、C、H、N、O、S及びハロゲンからなる群から選択される元素からなる化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項5)。
【0011】
前記(A)成分が、下記一般式(I)
【0012】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項6)。
【0013】
前記(B)成分が、(α)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物と、(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンとをヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項7)。
【0014】
前記(α)成分が脂肪族系化合物である、請求項7に記載の硬化性組成物(請求項8)。
【0015】
前記(β)成分が、下記一般式(II)
【0016】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンである、請求項7又は8に記載の硬化性組成物(請求項9)。
【0017】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物(請求項10)。
【0018】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を金属表面に塗布した後、硬化させることを特徴とする金属表面の腐食を防止する処理方法(請求項11)
に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬化性組成物によれば、極めて厳しい環境下でも金属表面の腐食を防止し、電気・電子機器の長期使用が可能となる。また、透明性や絶縁性が必要となる部材への適用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、及び、(D)陰イオン交換体、アミン系化合物及び吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する硬化性組成物、その硬化物及び金属表面の腐食を防止する処理方法に関するものである。
【0021】
以下に(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分について説明する。
【0022】
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれる元素のみを含むものであることが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、ガス透過性やはじきの問題がある。
【0023】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0024】
(A)成分の有機化合物は、有機重合体系化合物と有機単量体系化合物とに分類できる。
【0025】
有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物などがあげられる。
【0026】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0027】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0028】
【化3】

(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0029】
【化4】

で示される基が特に好ましい。
【0030】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)
【0031】
【化5】

(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0032】
【化6】

で示される脂環式の基が特に好ましい。
【0033】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンからなる群から選ばれる元素のみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0036】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0037】
【化9】

が挙げられる。
【0038】
(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

の他、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0041】
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0042】
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0043】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0044】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0045】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0046】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において100Pa・s未満のものが好ましく、30Pa・s未満のものがより好ましく、3Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0047】
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0048】
また、複屈折率が低い、光弾性係数が低い等のように光学特性が良好であるとともに耐光性が良好であるという観点からは、(A)成分としては脂肪族系化合物であることが好ましい。この場合脂肪族系化合物とは芳香環を含まないか含有量が少ないものを言う。具体的には芳香環の(A)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0049】
得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0050】
(A)成分としてはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合以外の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0051】
(一般式(I))
(A)成分としては、耐熱性および透明性が高いという観点からは、下記一般式(I)
【0052】
【化12】

(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0053】
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0054】
【化13】

等が挙げられる。
【0055】
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0056】
【化14】

で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、グリシジル基、
【0057】
【化15】

等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、およびOからなる群から選ばれる元素のみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0059】
【化16】

等が挙げられる。
【0060】
上記一般式(I)のRとしては、反応性が良好になるという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つが
【0061】
【化17】

で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(III)
【0062】
【化18】

(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのRのうち少なくとも2つが下記一般式(V)
【0063】
【化19】

(式中Rは直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機基(複数のRおよびRはそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0064】
上記一般式(V)のRは、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0065】
【化20】

等が挙げられる。
【0066】
上記一般式(V)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、およびOからなる群から選ばれる元素のみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0067】
【化21】

が挙げられる。
【0068】
上記一般式(V)のRは、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0069】
ただし、上記のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0070】
以上のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0071】
【化22】

等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物においては、(A)成分を、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0072】
((B)成分)
次に、(B)成分である1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物について説明する。
【0073】
(B)成分については1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0074】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましい。具体的には、
【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

が挙げられる。なかでも、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(II)
【0077】
【化25】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0078】
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、C、H、およびOからなる群から選ばれる元素のみから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0079】
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0080】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0081】
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる硬化物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0082】
((α)成分)
(α)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物であればよい。ここで、有機化合物については、上述の(A)成分と同様であり、(A)成分の好ましい態様は(α)成分についても同様に好ましい。また、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合についても、同様である。なお、(α)成分が有する、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合として、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンからなる元素のみを含むものであれば、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなりやすくなる。
【0083】
(α)成分には、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と同じものも用いることができ、(A)成分の好ましい化合物は(α)成分についても同様に好適である。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり力学強度が高く信頼性の高い硬化物となりやすい。
【0084】
(α)成分には、その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物も用いることができる。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすく、低応力により信頼性の高い硬化物としても使用できる。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物の具体的な例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシラン化合物等が挙げられる。
【0085】
この中でも、特に耐光性を有する点から、脂肪族炭化水素である上述の鎖状脂肪族炭化水素系化合物類及び環状脂肪族炭化水素系化合物類が好ましい。
【0086】
さらに、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等も挙げることができる。
【0087】
構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを用いることができる。分子量分布も特に制限ないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0088】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物のガラス転位温度が存在する場合はこれについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、ガラス点移転温度は100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。好ましい樹脂の例としてはポリブチルアクリレート樹脂等が挙げられる。逆に得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、ガラス転位温度は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが最も好ましい。ガラス転位温度は動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
【0089】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物としては、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合好ましい炭素数の下限は7であり、好ましい炭素数の上限は10である。
【0090】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合以外の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
上記のような(α)成分としては、単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0092】
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。
【0093】
具体的には、例えば
【0094】
【化26】

【0095】
【化27】

が挙げられる。
【0096】
ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0097】
【化28】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0098】
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、C、H、およびOからなる群から選ばれる元素から構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0099】
入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0100】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0101】
((α)成分と(β)成分の反応)
次に、本発明の(B)成分として、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0102】
尚、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(B)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作製することもできる。
【0103】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混合する(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0104】
(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応させる場合には適当なヒドロシリル化触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)n、Pt[(MeViSiO)]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0105】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。
【0106】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0107】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に使用される上記ヒドロシリル化触媒は、本願発明の硬化性組成物の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としても作用させることができる。
【0108】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0109】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合したものと、(β)成分とを混合する方法が好ましい。(α)成分および(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものと(α)成分とを混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0110】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0111】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0112】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0113】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0114】
(α)成分と(β)成分とを反応させた後に、溶媒、未反応の(α)成分および/または(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0115】
以上のような、(α)成分と(β)成分との反応物である(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、等を挙げることができる。
((A)成分と(B)成分の混合)
(A)成分と(B)成分の組合せについては(A)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。
【0116】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限は3≧Y/X、より好ましくは2≧Y/X、さらに好ましくは1.5≧Y/Xである。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0117】
((C)成分)
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0118】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されず、上述の(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に使用されるヒドロシリル化触媒と同様のものが挙げられ、(C)成分においても、上述のヒドロシリル化触媒の好ましいものが同様に好適である。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0119】
(C)成分の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0120】
また、上述の(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に使用されるヒドロシリル化触媒と同様に、助触媒も使用可能である。
((D)成分)
(D)成分としては陰イオン交換体、アミン系化合物及び吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種があげられる。
【0121】
陰イオン交換体としては、樹脂中及び環境由来から混入されるハロゲンイオンや硫黄系イオン(例えば、硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、硫化物イオン)のような金属に対する腐食性の高い陰イオンを捕捉・交換可能なものであれば特に制限はなく、陰イオンだけではなく、陽イオンも同時に捕捉・交換可能なものであってもよい。陰イオン交換体として、ポリスチレン系陰イオン交換樹脂、一般式M2+3+(OH(CO2−・nHOで表されるハイドロタルサイト様化合物(M2+は2価金属、M3+は3価金属を表し、a、b、c、d及びnは正数である)、一般式M2+3+x+1.5y(M2+は2価金属、M3+は3価金属を表し、x及びyは正数である)で表されるハイドロタルサイト様化合物の焼成物、活性アルミナ等を例示することができ、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0122】
ポリスチレン系陰イオン交換樹脂としては、商品名で、ダイヤイオン(三菱化学(株)製)が好適に使用される。具体的な商品名としては、ダイヤイオンSAシリ−ズ(SA10A、SA11A、SA12A、NSA100、SA20A、SA21A)、ダイヤイオンPAシリ−ズ(PA308、PA312、PA316、PA406、PA412、PA418)、ダイヤイオンHPAシリ−ズ(HPA25)、ダイヤイオンWAシリ−ズ(WA10、WA20、WA21J、WA30)等が挙げられる。
【0123】
ハイドロタルサイト様化合物及びハイドロタルサイト様化合物の焼成物としては、商品名で、DHT−4A、DHT−4C(アルミニウムマグネシウムハイドロタルサイト、協和化学工業(株)製)、キョーワードシリーズ(協和化学工業(株)製)、IXEシリーズ(東亞合成(株)製)が好適に使用される。
特に、硬化性組成物の硬化物において、耐熱性及び耐光性を有する点から陰イオン交換体としてはハイドロタルサイト様化合物及び/又はハイドロタルサイト様化合物の焼成物が好ましく、硬化物の透明性を有する点からアルミニウムマグネシウムハイドロタルサイトがより好ましい。
陰イオン交換体の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]((A)成分および(B)成分の総量)100重量部に対しての好ましい添加量の上限は20重量部、より好ましくは10重量部である。[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して0.01重量部、より好ましくは0.1重量部である。陰イオン交換体の添加量が多すぎると金属の腐食を逆に促進させる場合があり、少なすぎると金属の腐食防止効果が得られない場合があり好ましくない。
【0124】
アミン系化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンを硬化物が得られる範囲で用いることが可能であり、1種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、1級アミンはヒドロシリル化反応を大きく阻害するため、例えばケチミンとして保護基でキャップしたものや光塩基発生剤のような光や電子線により脱保護されアミン系化合物となるものを用いてもよい。
【0125】
アミン系化合物としては、トリアゾール及びトリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール及びイミダゾール誘導体、ピラゾール及びピラゾール誘導体、トリアジン及びトリアゾール誘導体、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のアミノアルコキシシラン等を好適に用いることができる。
【0126】
特に、硬化時の揮発性が少ないこと、及び比較的少量の添加により耐腐食性を付与可能なことから、トリアゾール誘導体及びアミノアルコキシシランを好適に用いることができる。また、トリアゾール誘導体の中でも入手が容易なことから、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として用いられている2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾチリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び、金属不活性化剤として用いられているN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−(4又は5)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンが好適に用いることができる。
【0127】
アミン系化合物の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]((A)成分および(B)成分の総量)100重量部に対しての好ましい添加量の上限は10重量部、より好ましくは5重量部である。[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して0.01重量部、より好ましくは0.1重量部である。アミン系化合物の添加量が多すぎると硬化物が得られなかったり、金属の腐食を逆に促進させる場合があり、少なすぎると金属の腐食防止効果が得られない場合があり好ましくない。
【0128】
吸着剤としては、大気由来の腐食成分である硫化水素や硫黄酸化物、窒素酸化物を吸着できるものであれば、特に制限されないが、一般的に使用されている活性炭、ゼオライト、金属ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等を使用することができる。
特に、硬化物の透明性が高いこと、及び比較的少量の添加により耐腐食性を付与可能なことから、ゼオライトを好適に用いることができる。
【0129】
ゼオライトの商品名としては、ABSENTS1000、ABSENTS2000、ABSENTS3000、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和(株)製)等を好適に用いることができる。
吸着体の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]((A)成分および(B)成分の総量)100重量部に対しての好ましい添加量の上限は20重量部、より好ましくは10重量部である。[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して0.01重量部、より好ましくは0.1重量部である。吸着体の添加量が多すぎると金属の腐食を逆に促進させる場合があり、少なすぎると金属の腐食防止効果が得られない場合があり好ましくない。
(1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物)
本発明の硬化性組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有すればその他の成分は特に制限されないが、さらに、(E)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物を含有していても良い。
本発明の硬化性組成物に使用できる(E)成分である、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物について説明する。
【0130】
(E)成分としては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物であれば特に限定なく種々のものを用いることができる。このような(E)成分の例としては、エポキシシラン類、エポキシ化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0131】
(E)成分の例であるエポキシシラン類とは、分子中にエポキシ基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物のことである。加水分解性のケイ素基の例としてはクロロシリル基、アシルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、取扱い性がよいという点でアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0132】
(E)成分の例であるエポキシシラン類の具体的な例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0133】
(E)成分の例であるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、4−ビニルシクロヘキセン1,2−エポキサイド、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、4−ビニルシクロヘキセン1,2−エポキサイドと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物等を挙げることができる。
【0134】
(E)成分の例であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートを共重合成分として含むオレフィン重合物等を挙げることができる。
【0135】
これらの1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物の内、接着性がより高くなりやすいという観点から、(E)成分としてはエポキシシラン類が好ましい。
【0136】
また、ヒドロシリル化反応により主鎖骨格に組みこまれることにより、接着性が高くなりやすく、あるいは硬化中の揮発が抑制されやすいという点において、(E)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合および/またはSiH基を含有する化合物であることが好ましい。
【0137】
(E)成分の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]((A)成分および(B)成分の総量)100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は80重量部、より好ましくは50重量部、さらに好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0138】
また、これらの1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0139】
(混合)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、硬化性組成物の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(A)成分、(C)成分および(D)成分を混合したものと、(B)成分とを混合する方法、(A)成分および(C)を混合したものと、(B)成分および(D)成分を混合したものとを混合する方法、(A)成分および(C)成分を混合したものと(B)成分とを混合したものに(D)成分を混合する方法等の、(B)成分と(C)成分とを直接混合しない方法が好ましい。
【0140】
混合の際に分散性を良くする目的のために適宜、溶媒を添加しても良い。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。使用する溶媒量も適宜設定でき、硬化物の物性に悪影響を与える場合は、混合後に減圧下で留去を行い、硬化性組成物を得ても良い。
【0141】
(添加剤)
(硬化遅延剤)
本発明の組成物にはの保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。
【0142】
硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチルなどが例示される。
【0143】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0144】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10−1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは50モルである。
【0145】
また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0146】
(接着性改良剤)
本発明の硬化性組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0147】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤とは、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物である。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からメタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0148】
好ましいシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0149】
上記接着性改良剤を用いる場合の添加量としては特に限定されず、種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]((A)成分および(B)成分の総量)100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0150】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0151】
本発明においてはカップリング剤やシランカップリング剤、エポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上及び/又は安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、アルミニウム系化合物、チタン系化合物、ホウ酸エステル、酸無水物類が好ましい。
【0152】
シラノール縮合触媒となるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類等が例示でき、取扱い性の点からアルミニウムキレート類がより好ましい。
【0153】
シラノール縮合触媒となるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類、オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
【0154】
また、シラノール縮合触媒となるホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリ−2−エチルヘキシル、ホウ酸ノルマルトリオクタデシル、ホウ酸トリノルマルオクチル、ホウ酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ホウ酸トリノルマルブチル、ホウ酸トリ−sec−ブチル、ホウ酸トリ−tert−ブチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリノルマルプロピル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル、ホウ素メトキシエトキサイドが例示でき、入手性の点からホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリノルマルブチルが好ましい。
【0155】
また、シラノール縮合触媒となる酸無水物類としては特に限定されないが、
【0156】
【化29】

2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0157】
これらの酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましい酸無水物類としては、例えば、
【0158】
【化30】

テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0159】
上記シラノール縮合触媒を用いる場合の添加量は特に限定されず、種々設定できるが、(E)成分100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0160】
また、これらの接着性改良剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0161】
(熱硬化性樹脂)
本発明の組成物には特性を改質する等の目的で、種々の熱硬化性樹脂を添加することも可能である。熱硬化性樹脂としては、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0162】
熱硬化性樹脂の添加量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと、接着性等目的とする効果が得られにくいし、添加量が多いと脆くなりやすい。
【0163】
上記熱硬化性樹脂は単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0164】

上記熱硬化樹脂を本発明の硬化性組成物に配合する場合には、熱硬化性樹脂の樹脂原料及び/又は硬化させたものを、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱硬化性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0165】
熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0166】
(熱可塑性樹脂)
本発明の組成物には特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0167】
熱可塑性樹脂としては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0168】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0169】
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0170】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなりやすいし、多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
【0171】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0172】
熱可塑性樹脂は(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0173】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0174】
(充填材)
本発明の組成物には充填材を添加してもよい。
【0175】
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用あるいは/および提案されている充填材等を挙げることができる。
【0176】
充填材は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
【0177】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0178】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0179】
その他にも充填材を添加する方法が挙げられる。例えばアルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマーあるいはオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等を、本発明の組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で充填材を生成させる方法も挙げることができる。
【0180】
以上のような充填材のうち硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きいという観点からは、シリカ系充填材が好ましい。
【0181】
充填材の平均粒径としては、封止材の狭い隙間への浸透性が良好となりやすいという点においては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0182】
充填材の形状としては、封止材の粘度が低くなりやすい観点からは、球状の充填材であることが好ましい。
【0183】
充填材は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0184】
充填材の添加量はとくに限定されないが、線膨張係数の低減化効果が高く、かつ組成物の流動性が良好であるという観点から、好ましい添加量の下限は全組成物中の30重量%、より好ましくは50重量%であり、好ましい添加量の上限は全組成物中の80重量%、より好ましくは70重量%である。
【0185】
(酸化防止剤)
本発明の組成物には酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2,2−チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム/ポリエチレンワックス(50wt%/50wt%混合物)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール類、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール等が挙げられる。
酸化防止剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対する好ましい添加量の下限は0.01重量部、より好ましくは0.1重量部であり、好ましい添加量の上限は10重量部、より好ましくは5重量部である。添加量が0.01重量部より少ないと高温下での酸化防止効果が十分に得られない恐れがあり、添加量が5重量部より多いと硬化物からブリードするような悪影響を及ぼす場合がある。
【0186】
また、これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0187】
(紫外線吸収剤)
本発明の組成物には一般的に用いられる紫外線吸収剤を添加してもよい。 紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0188】
(その他添加剤)
本発明の組成物には、その他、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、老化防止剤、熱安定化剤、ラジカル禁止剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0189】
(溶剤)
本発明の組成物は溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0190】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。
【0191】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0192】
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0193】
(硬化)
本発明においては、硬化組成物を硬化することにより硬化物を作製し、各種の用途に用いてもよいし、特に硬化性組成物を金属表面に塗布した後、硬化させることにより金属表面の腐食を防止することができる。
【0194】
硬化させる方法としては、単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0195】
硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは100℃であり、好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0196】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0197】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0198】
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。場合によって発生する揮発分を除きやすい、封止剤等として用いた場合に細部への充填性が良好であるという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。
【0199】
本発明の組成物が使用される製造工程において、組成物中へのボイドの発生および組成物からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0200】
硬化中の重量減少は以下のように調べられる。熱重量分析装置を用いて本発明の組成物10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。
【0201】
また、シリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
【0202】
(硬化物性状)
耐熱性が良好であるという観点からは、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。一方で、低応力であり、耐熱応力性が高いという観点からは、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃未満であるものが好ましく、80℃以下であるものがより好ましい。
【0203】
この場合、Tgは以下のようにして調べられる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0204】
また、電子材料として使用された場合に接触する配線等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、硬化物からの抽出イオン含有量が100ppm未満であることが好ましく、50ppm未満であることがより好ましく、10ppm未満であることがさらに好ましい。
【0205】
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン(登録商標)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
【0206】
本発明の硬化性組成物、硬化物及び金属表面の腐食を防止する方法は、電気・電子機器における金属製の電極部や導線を腐食性物質から保護する目的で使用することができるが、例えば自動車・輸送機分野、建築分野における耐腐食性塗料、耐腐食性接着剤としても使用することが可能であり、使用範囲が制限されることはない。
【実施例】
【0207】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0208】
なお、合成例1におけるSiH基の含有量は、下記のとおり測定した。
(NMR)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。(B)成分合成での反応追跡は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応アリル基由来のメチレン基のピークと、反応アリル基由来のメチレン基のピークから求めた。また(B)成分の官能基価は、ジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)を求めた。
【0209】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。H−NMRにより、反応生成物は1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(反応物Aと称する)。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、8.08mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0210】
【化31】

(実施例1〜4、比較例1)
(A)成分としてトリアリルイソシアヌレートを用い、(B)成分として合成例1で合成した反応物Aを用い、(C)成分として白金ビニルシロキサン錯体を用い、(D)成分として表1記載の成分を用いて硬化性組成物を作製した。
【0211】
(透明性)
作製された硬化性組成物を、60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間で段階的に加熱を行って硬化物を作製し、得られた硬化物の外観上の透明性を目視で評価した。
【0212】
(金属腐食防止性)
金属の腐食防止性は、以下に示した2通りの方法にて評価した。腐食度合いは目視にて評価し、腐食度合いが非常に激しいものを××、腐食の度合いが激しいものを×、腐食度合いが少ないものを○、腐食が全く進行していないものを◎とした。
【0213】
(次亜塩素酸Na処理)
表面が銀めっきされた金属板を有効塩素濃度0.01%の次亜塩素酸Na水溶液に10秒間浸漬し、すぐに取り出して純水で洗浄を行い、表面の水を軽く拭き取った後、室温乾燥させ、表面が酸化された銀めっき金属板とした。この金属板に表1記載の硬化組成物を薄く塗布し、150℃/30分で加熱して硬化させ、表面が硬化物で被覆された銀めっき金属板を作製した。表面を硬化物で被覆した金属板を試料固定式メタリングウェザーメーター試験機(スガ試験機製、型式:M6T、光源:メタルハライドランプ)にて、試料面放射照度を1.55kW/m、積算放射照度150MJ/m、試料表面温度100℃の環境下で腐食促進試験を行い、銀めっき金属板の表面の腐食が更に進行されているかを目視にて評価した。
(SO処理)
表面が銀めっきされた金属板に表1記載の硬化組成物を薄く塗布し、150℃/30分で加熱して硬化させ、表面が硬化物で被覆された銀めっき金属板とした。表面が硬化物で被覆された金属板を約5%濃度のSO雰囲気に1時間曝露し、次いで、試料固定式メタリングウェザーメーター試験機(スガ試験機製、型式:M6T、光源:メタルハライドランプ)にて、試料面放射照度を1.55kW/m、積算放射照度150MJ/m、試料表面温度100℃の環境下で腐食促進試験を行い、銀めっき金属板の表面が腐食されているかを目視にて評価した。
【0214】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明の硬化性組成物によれば、耐熱性、および耐光性を有していることから、極めて厳しい環境下でも金属表面の腐食を防止し、電気・電子機器の長期使用が可能となる。また、透明性や絶縁性が必要となる部材など、種々の用途への適用が可能であり、使用範囲が制限されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒、及び、
(D)陰イオン交換体、アミン系化合物及び吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種、
を含有する、硬化性組成物。
【請求項2】
前記陰イオン交換体が、ハイドロタルサイト様化合物及び/又はハイドロタルサイト様化合物の焼成物である、請求項1の硬化性組成物。
【請求項3】
前記アミン系化合物が、ベンゾトリアゾール誘導体及び/又はアミノアルコキシシランである、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記吸着剤がゼオライトである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、C、H、N、O、S及びハロゲンからなる群から選択される元素からなる化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(A)成分が、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、
(α)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物と、
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンと、
をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(α)成分が脂肪族系化合物である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記(β)成分が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンである、請求項7又は8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を金属表面に塗布した後、硬化させることを特徴とする金属表面の腐食を防止する処理方法。


【公開番号】特開2009−144103(P2009−144103A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325169(P2007−325169)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】