説明

硬化性組成物、硬化性フィルム、硬化性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板

【課題】表面平滑性、耐熱性、強靭性、現像性、及び絶縁性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた硬化性フィルム、硬化性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板を提供することである。
【解決手段】本発明は、樹脂被覆無機微粒子を含有することを特徴とする。前記樹脂被覆無機微粒子は、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアナト基、グリシジル基を有するシランカップリング剤により表面修飾された後、熱可塑性樹脂により被覆されて形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジスト材料として好適な硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた硬化性フィルム、硬化性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ソルダーレジスト等の永久パターンを形成するに際して、支持体上に硬化性組成物(感光性組成物)を塗布し、乾燥することにより硬化層を形成させた硬化性フィルムが用いられてきている。ソルダーレジスト等の永久パターンを形成する方法としては、例えば、永久パターンが形成される銅張積層板等の基体上に、硬化性フィルムを積層させて積層体を形成し、該積層体における硬化層(感光層)に対して露光を行い、該露光後、硬化層を現像してパターンを形成させ、その後硬化処理等を行うことにより永久パターンを形成する方法等が知られている。
【0003】
前記ソルダーレジストは、プリント配線板製造等において使用されているが、近年はBGAやCSPといった新しいLSIパッケージにも使用されるようになってきた。また、ソルダーレジストはソルダリング工程で半田が不必要な部分に付着するのを防ぐ保護膜として、また、永久マスクとして必要とされる材料である。
【0004】
このようなソルダーレジストには、表面平滑性、耐熱性、強靭性、現像性、及び絶縁性等の諸特性に優れることが求められている。
特に、近時においては、プリント基板の高密度化が求められており、これに伴い配線の密度の向上、出入力の端子の数が、さらに増える傾向にある。そのため、プリント基板の薄膜化すること、及びプリント基板と接続される部品との間隔を狭くすることが求められるが、プリント基板の薄膜化に伴い、プリント基板の表面平滑性が低下するという問題がある。プリント基板の表面平滑性が不十分であると、プリント基板と部品との間隔が均一に維持されず、接続不良となる問題があり、プリント基板と接続される部品との間隔を狭くすることができない。
【0005】
表面平滑性を改善させる硬化性組成物として、例えば、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、着色剤と、を含有し、前記アルカリ可溶性樹脂として、特定のアルカリ系樹脂を含有させる硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この硬化性組成物は、カラーフィルタのブラックマトリックスにおけるシワの発生を抑制するためのものであり、前記表面平滑性の低下に基づく接続不良等の問題を充分に解消することができず、また前記ソルダーレジストに求められる諸特性を満足することができない。
そのため、表面平滑性、耐熱性、強靭性、現像性、及び絶縁性のすべてにおいて優れた特性が得られる硬化性組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−286478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、表面平滑性、耐熱性、強靭性、現像性、及び絶縁性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた硬化性フィルム、硬化性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段はとしては、以下の通りである。即ち、
<1> 樹脂被覆無機微粒子を含有することを特徴とする硬化性組成物である。
<2> 熱架橋剤及び熱硬化促進剤を含有する前記<1>に記載の硬化性組成物である。
<3> 光重合開始剤及び重合性化合物を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<4> バインダーを含有する前記前記<1>から<3>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<5> 無機微粒子が、シリカである前記<1>から<4>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<6> 樹脂被覆無機微粒子が、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアナト基、及びグリシジル基のいずれかを有し、熱可塑性樹脂により被覆されて形成される前記<1>から<5>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<7> 熱可塑性樹脂が、重縮合及び付加重合のいずれかにより得られる樹脂である前記<6>に記載の硬化性組成物である。
<8> 熱可塑性樹脂におけるSP値と、バインダーにおけるSP値との差が、5MPa1/2以下である前記<6>から<7>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<9> プリント基板用硬化性組成物として用いられる前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化性組成物である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化性組成物を含む硬化層を支持体上に有してなることを特徴とする硬化性フィルムである。
<11> 基体上に、前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化性組成物を含む硬化層を有することを特徴とする硬化性積層体である。
<12> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化性組成物により形成された硬化層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法である。
<13> 前記<12>に記載の永久パターン形成方法により永久パターンが形成されることを特徴とするプリント基板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、表面平滑性、耐熱性、強靭性、現像性、及び絶縁性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた硬化性フィルム、硬化性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板を提供することを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、樹脂被覆微粒子を含有し、必要に応じて、バインダー、熱架橋剤、連鎖移動剤、光重合開始剤、重合成化合物、その他の成分を含有する。
【0011】
<樹脂被覆無機微粒子>
前記樹脂被覆無機微粒子としては、樹脂により被覆された無機微粒子であれば、特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤により表面修飾された後、樹脂により被覆されて形成されることが好ましい。
この場合、前記無機微粒子に前記シランカップリング剤を反応させ、前記無機微粒子の表面を修飾する。次いで、前記無機微粒子の表面に修飾された前記シランカップリング剤が有する有機化合物と反応する官能基と、被覆樹脂とを反応させることにより、前記無機微粒子を前記樹脂で被覆させた前記樹脂被覆無機微粒子を形成することができる。
【0012】
前記樹脂被覆無機微粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.05μm〜5.0μmが好ましく、0.1μm〜3.0μmがより好ましく、0.1μm〜2.0μmが特に好ましい。
前記平均粒径が、0.05μm未満であると、硬化性組成物の塗布性が劣ることがあり、5.0μmを超えると、パターン平坦性が低下することがある。
【0013】
−無機微粒子−
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)等の金属酸化物や、金属水酸化物などが挙げられる。中でも、シリカ、アルミナが好ましい。
前記無機微粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.05μm〜5.0μmが好ましく、0.1μm〜3.0μmがより好ましく、0.1μm〜2.0μmが特に好ましい。
前記平均粒子径が、0.05μm未満であると、硬化性組成物の塗布性が劣ることがあり、5.0μmを超えると、パターン平坦性が低下することがある。
【0014】
前記樹脂被覆無機微粒子の前記硬化性組成物における含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜80質量%が好ましく、5質量%〜60質量%がより好ましく、10質量%〜50質量%が特に好ましい。
前記含有率が、1質量%未満であると、耐熱性が劣ることがあり、80質量%を超えると、パターン形成性が劣ることがある。
【0015】
−シランカップリング剤−
前記シランカップリング剤は、無機化合物と反応する官能基と、有機化合物と反応する官能基とを有するケイ素化合物であり、前記ケイ素化合物としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記シランカップリング剤の官能基としては、例えば、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアナト基、グリシジル基、ビニル基、メタクリロイル基、アクリル基、スチリル基等が挙げられるが、中でも、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアナト基、グリシジル基を有するものが好ましい。ビニル基、メタクリロイル基等であると、耐熱性・強靭性に劣ることがある。
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−〔β−(N−ビニルベンザルアミノ)エチル〕−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記シランカップリングによる表面処理を行う方法としては、特に制限はなく、例えば、水溶液法、有機溶媒法、気層法等が挙げられる。
また、前記表面処理を行なう場合の前記シランカップリング剤の添加量としては、特に制限はないが、前記無機微粒子100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.2質量部〜10質量部がより好ましく、0.2質量部〜5質量部が特に好ましい。
前記添加量が、0.1質量部未満であると、充分に表面を被覆できないことがあり、20質量部を超えると、粒子間が凝集することがある。
【0017】
−樹脂−
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重縮合及び付加重合のいずれかにより得られる樹脂が好ましい。
【0019】
前記重縮合及び付加重合のいずれかにより得られる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアリルアミンなどが挙げられる。中でも、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミック酸が好ましい。
【0020】
前記被覆樹脂の添加量としては、特に制限はないが、前記無機微粒子100質量部に対し、0.1質量部〜100質量部が好ましく、0.2質量部〜50質量部がより好ましく、0.2質量部〜20質量部が特に好ましい。
前記添加量が、0.1質量部未満であると、充分に被覆されないことがあり、100質量部を超えると、粒子間が凝集することがある。
【0021】
また、前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダーとの相溶性に優れたものであることが好ましく、前記熱可塑性樹脂におけるSP値と、前記バインダーにおけるSP値とが所定の差であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂におけるSP値としては、特に制限はないが、前記バインダーにおけるSP値との差が5MPa1/2以下であることが好ましく、4MPa1/2以下であることがより好ましく、3MPa1/2以下であることが特に好ましい。
前記SP値の差が、5MPa1/2を超えると、被覆樹脂とバインダー樹脂との相溶性が悪化し、充分な耐熱性、強靭性、平坦性をあらわせないことがある。
なお、SP値とは、物質の相互溶解性を示す指標であり、分子構造から計算可能な溶解度パラメーターが定義されている。例えば、溶解度パラメーターとしては、沖津法が定義されており、該パラメーターにより算出することができる。
【0022】
前記樹脂により被覆されて形成される前記樹脂被覆無機微粒子を含む前記硬化性組成物においては、特に表面平滑性が向上する。この理由としては、樹脂被覆することにより無機粒子がバインダー中に充分に分散され、表面に無機粒子が現れにくいためであると考えられる。
【0023】
<重合性化合物>
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物が好ましい。
【0024】
前記エチレン性不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエステル、ビニルエーテル等のビニル基;アリルエーテルやアリルエステル等のアリル基などが挙げられる。
【0025】
前記エチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0026】
前記(メタ)アクリル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0027】
前記重合性化合物の前記硬化性組成物固形分中の固形分含有量は、2質量%〜50質量%が好ましく、2質量%〜40質量%がより好ましい。該固形分含有量が2質量%以上であれば、現像性(解像性)、露光感度が良好となり、50質量%以下であれば、硬化層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0028】
<光重合開始剤>
前記光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視光線に対して硬化性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、波長約300nm〜800nmの範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。前記波長は330nm〜500nmがより好ましい。
前記光重合開始剤としては、中性の光重合開始剤が用いられる。また、必要に応じてその他の光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0029】
前記中性の光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも芳香族基を有する化合物であることが好ましく、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物であることがより好ましい。前記中性の光重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、などが挙げられる。これらの中でも、硬化層の感度、保存性、及び硬化層とプリント配線板形成用基板との密着性等の観点から、オキシム誘導体、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物が好ましい。
【0031】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシドとしては、例えば2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
前記アセトフェノン系化合物としては、例えばアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えばベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ケタール誘導体化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
前記チオキサントン化合物としては、例えば2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0032】
本発明で好適に用いられるオキシム誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される。
【化1】

【0033】
ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基のいずれかを表し、Rは、それぞれ独立に置換基を表す。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Aは、4、5、6、及び7員環のいずれかを表す。また、Aは、5及び6員環のいずれかであるのが好ましい。
【0034】
なお、前記オキシム化合物の特開2008−249857号公報、特開2008−242372号公報、特開2008−122546号公報、特開2008−122545号公報等に記載の事項を適用することができる。
【0035】
<バインダー>
前記バインダーとしては、硬化性基及びアルカリ現像性を付与するための酸基を導入した化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸基を導入したポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカーボネートなどが挙げられる。さらに、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とビニル基含有有機酸とを反応させた後、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体;カルボキシル基含有樹脂の少なくとも一部の酸基にグリシジル基乃至脂環式エポキシ基を有するビニル化合物を付加させた変性共重合体;ヒドロキシル基含有樹脂の少なくとも一部のヒドロキシル基にイソシアナト基乃至酸無水物基を有するビニル化合物を付加させた変性共重合体;アミノ基含有樹脂の少なくとも一部のアミノ基にイソシアナト基乃至酸無水物基を有するビニル化合物を付加させた変性共重合体;ビニル基含有ジオール乃至ジアミンの共重合体;グリシジル基乃至オキセタニル基乃至脂環式エポキシ基を有するビニル化合物の開環重合体などが挙げられる。
【0036】
これらの中でも、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とビニル基含有有機酸とを反応させた後、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体、ポリイソシアネートとポリイソシアネートからなるポリウレタンが好ましい。
【0037】
前記ポリウレタンとしては、ポリイソシアネートとポリイソシアネートに由来する構造を有しており、前記ポリウレタンとしては、アルカリ現像性と硬化膜の強靭性という点から酸変性ビニル基含有バインダーを使用することが好ましい。
【0038】
<<酸変性ビニル基含有バインダー>>
前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂、(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0039】
−(i)側鎖にビニル基を有するポリウレタン樹脂−
前記側鎖にビニル基を有するウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その側鎖に、下記一般式(2)〜(4)で表される官能基のうち少なくとも1つを有するものが挙げられる。
【0040】
【化3】

【0041】
前記一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。前記R1としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基が好ましい。また、前記R及びRとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それぞれ独立に、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
前記一般式(2)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表し、前記R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。前記R12としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましい。
ここで、導入し得る前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、などが挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
前記一般式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。前記R〜Rとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0044】
導入し得る置換基としては、一般式(2)と同様のものが挙げられる。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表す。前記R12は、一般式(3)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0045】
【化5】

【0046】
前記一般式(4)中、R〜R11は、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表す。前記一般式(4)中、前記Rとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基が好ましい。前記一般式(4)中、前記R10及びR11としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0047】
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(2)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。前記R13としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0048】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するウレタン樹脂は、下記一般式(5)で表されるジイソシアネート化合物の少なくとも1種と、一般式(6)で表されるジオール化合物の少なくとも1種と、の反応生成物で表される構造単位を基本骨格とするポリウレタン樹脂である。
【0049】
OCN−X−NCO(5)
HO−Y−OH(6)
【0050】
前記一般式(5)及び(6)中、X、Yは、それぞれ独立に2価の有機残基を表す。
【0051】
前記一般式(5)で表されるジイソシアネート化合物、又は、前記一般式(6)で表されるジオール化合物の少なくともどちらか一方が、前記一般式(2)〜(4)で表される基のうち少なくとも1つを有していれば、当該ジイソシアネート化合物と当該ジオール化合物との反応生成物として、側鎖に前記一般式(2)〜(4)で表される基が導入されたポリウレタン樹脂が生成される。かかる方法によれば、ポリウレタン樹脂の反応生成後に所望の側鎖を置換、導入するよりも、側鎖に前記一般式(2)〜(4)で表される基が導入されたポリウレタン樹脂を容易に製造することができる。
【0052】
前記一般式(5)で表されるジイソシアネート化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリイソシアネート化合物と、不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させて得られる生成物などが挙げられる。
前記トリイソシアネート化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0034」〜「0035」に記載された化合物、などが挙げられる。
【0053】
前記不飽和基を有する単官能のアルコール又は前記単官能のアミン化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0037」〜「0040」に記載された化合物、などが挙げられる。
【0054】
ここで、前記ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジイソシアネート化合物を用いる方法が好ましい。前記ジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トリイソシアネート化合物と不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させることにより得ることできるジイソシアネート化合物であって、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0042」〜「0049」に記載された側鎖に不飽和基を有する化合物などが挙げられる。
【0055】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、重合性組成物中の他の成分との相溶性を向上させ、保存安定性を向上させるといった観点から、前記不飽和基を含有するジイソシアネート化合物以外のジイソシアネート化合物を共重合させることもできる。
【0056】
前記共重合させるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することでき、例えば、下記一般式(7)で表されるジイソシアネート化合物である。
【0057】
OCN−L−NCO(7)
【0058】
前記一般式(7)中、Lは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。必要に応じ、Lは、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
【0059】
前記一般式(7)で表されるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することでき、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;などが挙げられる。
【0060】
前記一般式(6)で表されるジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、などが挙げられる。
【0061】
ここで、ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、前述の方法の他に、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物を用いる方法も好ましい。前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物は、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物等の化合物と、不飽和基を含有する、カルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物等の化合物との反応により容易に製造される化合物であってもよい。前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0057」〜「0060」に記載された化合物、下記一般式(G)で表される特開2005−250438号公報の段落「0064」〜「0066」に記載された化合物、などが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(G)で表される特開2005−250438号公報の段落「0064」〜「0066」に記載された化合物が好ましい。
【化6】

前記一般式(G)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表し、Aは2価の有機残基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表し、前記R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。
なお、前記一般式(G)におけるR〜R及びXは、前記一般式(2)におけるR〜R及びXと同義であり、好ましい態様もまた同様である。
前記一般式(G)で表されるジオール化合物に由来するポリウレタン樹脂を用いることにより、立体障害の大きい2級アルコールに起因するポリマー主鎖の過剰な分子運動を抑制効果により、層の被膜強度の向上が達成できるものと考えられる。
【0062】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、例えば、重合性組成物中の他の成分との相溶性を向上させ、保存安定性を向上させるといった観点から、前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物以外のジオール化合物を共重合させることができる。
前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物以外のジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、などを挙げることできる。
【0063】
前記ポリエーテルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0068」〜「0076」に記載された化合物などが挙げられる。
【0064】
前記ポリエステルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0077」〜「0079」、段落「0083」〜「0085」におけるNo.1〜No.8及びNo.13〜No.18に記載された化合物などが挙げられる。
【0065】
前記ポリカーボネートジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0080」〜「0081」及び段落「0084」におけるNo.9〜No.12記載された化合物などが挙げられる。
【0066】
また、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物を併用することもできる。
前記イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0087」〜「0088」に記載された化合物などが挙げられる。
【0067】
さらに、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、カルボキシル基を有するジオール化合物を併用することもできる。前記カルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、以下の式(1)〜(3)に示すものが含まれる。
【0068】
【化7】

【0069】
前記式(1)〜(3)中、R15としては、水素原子、置換基(例えば、シアノ基、ニトロ基、−F、−Cl、−Br、−I等のハロゲン原子、−CONH、−COOR16、−OR16、−NHCONHR16、−NHCOOR16、−NHCOR16、−OCONHR16(ここで、前記R16は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数7〜15のアラルキル基を表す。)などの各基が含まれる。)を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素原子、炭素数1〜8個のアルキル基、炭素数6〜15個のアリール基が好ましい。前記式(1)〜(3)中、L、L10、L11は、それぞれ同一でもよいし、相違していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜8個のアルキレン基がより好ましい。また必要に応じ、前記L9〜L11中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、カルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテル基を有していてもよい。なお、前記R15、L、L、Lのうちの2個又は3個で環を形成してもよい。
前記式(3)中、Arとしては、置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数6〜15個の芳香族基が好ましい。
【0070】
上記式(1)〜(3)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミドなどが挙げられる。
【0071】
このようなカルボキシル基の存在により、ポリウレタン樹脂に水素結合性とアルカリ可溶性といった特性を付与できるため好ましい。より具体的には、前記側鎖にエチレン性不飽和結合基を有するポリウレタン樹脂が、さらに側鎖にカルボキシル基を有する樹脂であり、より具体的には、側鎖のビニル基が、0.05mmol/g〜1.80mmol/gであることが好ましく、0.5mmol/g〜1.80mmol/gであることがより好ましく、0.75mmol/g〜1.60mmol/gであることが特に好ましく、且つ、側鎖にカルボキシル基を有することが好ましく、酸価が、20mgKOH/g〜120mgKOH/gであることが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gであることがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。
【0072】
また、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物を併用することもできる。
前記テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0095」〜「0101」に記載された化合物などが挙げられる。
【0073】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を、非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知の触媒を添加し、加熱することにより合成される。合成に使用されるジイソシアネート及びジオール化合物のモル比(M:M)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1:1〜1.2:1が好ましく、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、分子量あるいは粘度といった所望の物性の生成物が、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0074】
前記エチレン性不飽和結合基の前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂における導入量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニル基当量としては、0.05mmol/g〜1.80mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜1.80mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜1.60mmol/gが特に好ましい。さらに、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂には、前記エチレン性不飽和結合基とともに、側鎖にカルボキシル基が導入されていることが好ましい。酸価としては、20mgKOH/g〜120mgKOH/gが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。
【0075】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量平均分子量で5,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。特に、本発明の硬化性組成物を硬化性ソルダーレジストに用いた場合には、無機充填剤との分散性に優れ、クラック耐性と耐熱性にも優れ、アルカリ性現像液による非画像部の現像性に優れる。
【0076】
また、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂としては、ポリマー末端、主鎖に不飽和基を有するものも好適に使用される。ポリマー末端、主鎖に不飽和基を有することにより、さらに、硬化性組成物と側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂との間、又は側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂間で架橋反応性が向上し、光硬化物強度が増す。その結果、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂を平版印刷版に使用した際、耐刷力に優れる版材を与えることができる。ここで、不飽和基としては、架橋反応の起こり易さから、炭素−炭素二重結合を有することが特に好ましい。
【0077】
ポリマー末端に不飽和基を導入する方法としては、以下に示す方法がある。すなわち、上述した側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成の工程での、ポリマー末端の残存イソシアネート基と、アルコール類又はアミン類等で処理する工程において、不飽和基を有するアルコール類又はアミン類等を用いればよい。このような化合物としては、具体的には、先に、不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物として挙げられた例示化合物と同様のものを挙げることができる。
なお、不飽和基は、導入量の制御が容易で導入量を増やすことができ、また、架橋反応効率が向上するといった観点から、ポリマー末端よりもポリマー側鎖に導入されることが好ましい。
導入されるエチレン性不飽和結合基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋硬化膜形成性の点で、メタクリロイル基、アクリロイル基、スチリル基が好ましく、メタクリロイル基、アクリロイル基がより好ましく、架橋硬化膜の形成性と生保存性との両立の点で、メタクリロイル基が特に好ましい。
また、メタクリロイル基の導入量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニル基当量としては、0.05mmol/g〜1.80mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜1.80mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜1.60mmol/gが特に好ましい。
【0078】
主鎖に不飽和基を導入する方法としては、主鎖方向に不飽和基を有するジオール化合物をポリウレタン樹脂の合成に用いる方法がある。前記主鎖方向に不飽和基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、ポリブタジエンジオール、などが挙げられる。
【0079】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、該特定ポリウレタン樹脂とは異なる構造を有するポリウレタン樹脂を含むアルカリ可溶性高分子を併用することも可能である。例えば、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、は、主鎖及び/又は側鎖に芳香族基を含有したポリウレタン樹脂を併用することが可能である。
【0080】
前記(i)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、特開2005−250438号公報の段落「0293」〜「0310」に示されたP−1〜P−31のポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、段落「0308」及び「0309」に示されたP−27及びP−28のポリマーが好ましい。
【0081】
−(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂−
前記ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートと、カルボン酸基含有ジオールとを必須成分とするカルボキシル基含有ポリウレタンと、分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂である。目的に応じて、ジオール成分として、質量平均分子量300以下の低分子ジオールや質量平均分子量500以上の低分子ジオールを共重合成分として加えてもよい。
前記ポリウレタン樹脂を用いることにより、無機充填剤との安定した分散性や耐クラック性や耐衝撃性に優れることから、耐熱性、耐湿熱性、密着性、機械特性、電気特性が向上する。
また、前記ポリウレタン樹脂としては、置換基を有していてもよい二価の脂肪族及び芳香族炭化水素のジイソシアネートと、C原子及びN原子のいずれかを介してCOOH基と2つのOH基を有するカルボン酸含有ジオールとを必須成分とした反応物であって、得られた反応物と、−COO−結合を介して分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるものであってもよい。
また、前記ポリウレタン樹脂としては、下記一般式(I)で示されるジイソシアネートと、下記一般式(II−1)〜(II−3)で示されるカルボン酸基含有ジオールから選ばれた少なくとも1種とを必須成分とし、目的に応じて下記一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が800〜3,000の範囲にある高分子ジオールから選ばれた少なくとも1種との反応物であって、得られた反応物と、下記一般式(IV−1)〜(IV−16)で示される分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるものであってもよい。
【化8】

ただし、前記一般式(I)中、Rは、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基のいずれかが好ましい)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。必要に応じ、前記Rは、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基のいずれかを有していてもよい。前記一般式(I)中、Rは、水素原子、置換基(例えば、シアノ基、二トロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、−CONH、−COOR、−OR、−NHCONHR、−NHCOOR、−NHCOR、−OCONHR、−CONHR(ここで、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜15のアラルキル基のいずれかを表す)、などの各基が含まれる)を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基を表す。これらの中でも、水素原子、炭素数1個〜3個のアルキル基、炭素数6個〜15個のアリール基が好ましい。前記一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R及びRは、それぞれ同一でも相異していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基の各基が好ましい)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。これらの中でも、炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜8個のアルキレン基が更に好ましい。また、必要に応じ、前記R、R及びR中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、カルボニル基、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、エーテル基のいずれかを有していてもよい。なお、前記R、R、R及びRのうちの2個又は3個で環を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、炭素数6個〜15個の芳香族基が好ましい。
【0082】
【化12】

ただし、前記一般式(III−1)〜(III−3)中、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ同一でもよいし、相異していてもよく、二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。前記R、R、R10及びR11は、それぞれ炭素数2個〜20個のアルキレン基又は炭素数6個〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数2個〜10個のアルキレン又は炭素数6個〜10個のアリーレン基がより好ましい。前記Rは、炭素数1個〜20個のアルキレン基又は炭素数6個〜15個のアリーレン基を表し、炭素数1個〜10個のアルキレン又は炭素数6個〜10個のアリーレン基がより好ましい。また、前記R、R、R、R10及びR11中には、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エーテル基、カルボニル基、エステル基、シアノ基、オレフィン基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、又はハロゲン原子などがあってもよい。前記一般式(III−4)中、R12は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。水素原子、炭素数1個〜10個のアルキル基、炭素数6個〜15個のアリール基、炭素数7個〜15個のアラルキル、シアノ基又はハロゲン原子が好ましく、水素原子、炭素数1個〜6個のアルキル及び炭素数6個〜10個のアリール基がより好ましい。また、前記R12中には、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、アルコキシ基、カルボニル基、オレフィン基、エステル基又はハロゲン原子などがあってもよい。
前記一般式(III−5)中、R13は、アリール基又はシアノ基を表し、炭素数6個〜10個のアリール基又はシアノ基が好ましい。前記一般式(III−4)中、mは、2〜4の整数を表す。前記一般式(III−1)〜(III−5)中、n、n、n、n及びnは、それぞれ2以上の整数を表し、2〜100の整数が好ましい。前記一般式(III−5)中、nは、0又は2以上の整数を示し、0又は2〜100の整数が好ましい。
【0083】
【化17】


【化31】

ただし、前記一般式(IV−1)〜(IV−16)中、R14は、水素原子又はメチル基を表し、R15は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R16は、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。pは、0又は1〜10の整数を表す。
【0084】
また、前記ポリウレタン樹脂は、さらに第5成分として、カルボン酸基非含有の低分子量ジオールを共重合させてもよく、該低分子量ジオールとしては、前記一般式(III−1)〜(III−5)で表され、質量平均分子量が500以下のものである。該カルボン酸基非含有低分子量ジオールは、アルカリ溶解性が低下しない限り、また、硬化膜の弾性率が十分低く保つことができる範囲で添加することができる。
【0085】
前記ポリウレタン樹脂としては、特に、一般式(I)で示されるジイソシアネートと、一般式(II−1)〜(II−3)で示されるカルボン酸基含有ジオールから選ばれた少なくとも1種とを必須成分とし、目的に応じて、一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が800〜3,000の範囲にある高分子ジオールから選ばれた少なくとも1種や、一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が500以下のカルボン酸基非含有の低分子量ジオールとの反応物に、さらに一般式(IV−1)〜(IV−16)のいずれかで示される分子中に1個のエポキシ基と少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有する化合物を反応して得られる、酸価が20mgKOH/g〜120mgKOH/gであるアルカリ可溶性光架橋性ポリウレタン樹脂が好適である。
【0086】
これらの高分子化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。硬化性組成物などの全固形分中に含まれる、前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂の含有量としては、2質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜25質量%がより好ましい。前記含有量が、2質量%未満では硬化膜の高温時の十分な低弾性率が得られないことがあり、30質量%を超えると現像性劣化や硬化膜の強靱性低下が起きることがある。
【0087】
−カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂の合成法−
前記ポリウレタン樹脂の合成方法としては、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は好ましくは、0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0088】
−−ジイソシアネート−−
前記一般式(I)で示されるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落「0021」に記載された化合物などが挙げられる。
【0089】
−−高分子量ジオール−−
前記一般式(III−1)〜(III−5)で示される高分子量ジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落「0022」〜「0046」に記載された化合物などが挙げられる。
【0090】
−−カルボン酸基含有ジオール−−
また、前記一般式(II−1)〜(II−3)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落「0047」に記載された化合物などが挙げられる。
【0091】
−−カルボン酸基非含有低分子量ジオール−−
前記カルボン酸基非含有低分子量ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落「0048」に記載された化合物などが挙げられる。
前記カルボン酸基非含有ジオールの共重合量としては、低分子量ジオール中の95モル%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、50%以下が特に好ましい。
前記共重合量が、95モル%を超えると、現像性のよいウレタン樹脂が得られないことがある。
【0092】
前記(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とビニル基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、特開2007−2030号公報の段落「0314」〜「0315」に示されたU1〜U4、U6〜U11のポリマーにおけるエポキシ基及びビニル基含有化合物としてのグリシジルアクリレートを、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:サイクロマーA400(ダイセル化学製))、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(商品名:サイクロマーM400(ダイセル化学製))に代えたポリマー、などが挙げられる。
【0093】
前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂の前記硬化性組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜75質量%がより好ましく、30質量%〜70質量%が特に好ましい。
前記含有量が、5質量%未満であると、耐クラック性が良好に保つことができないことがあり、80質量%を超えると、耐熱性が破綻をきたすことがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、良好な耐クラック性と耐熱性の両立の点で有利である。
【0094】
前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000〜60,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。
前記質量平均分子量が、5,000未満であると、硬化膜の高温時の十分な低弾性率が得られないことがあり、60,000を超えると、塗布適性及び現像性が悪化することがある。
なお、前記質量平均分子量は、例えば、高速GPC装置(東洋曹達社製HLC−802A)を使用して、0.5質量%のTHF溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgel HZM−M 1本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器あるいはUV検出器(検出波長254nm)により測定することができる。次に、標準ポリスチレンで較正した分子量分布曲線より質量平均分子量を求めた。
【0095】
前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mgKOH/g〜120mgKOH/gが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。
前記酸価が、20mgKOH/g未満であると現像性が不十分となることがあり、120mgKOH/gを超えると現像速度が高すぎるため現像のコントロールが難しくなることがある。
なお、前記酸価は、例えば、JIS K0070に準拠して測定することができる。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒としてジオキサン又はテトラヒドロフランなどを使用する。
【0096】
前記酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂のビニル基当量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mmol/g〜1.8mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜1.8mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜1.6mmol/gが特に好ましい。
前記ビニル基当量が、0.05mmol/g未満であると、硬化膜の耐熱性が劣ることがあり、1.8mmol/gを超えると、耐クラック性が悪化することがある。
前記ビニル基当量は、例えば、臭素価を測定することにより求めることができる。なお、前記臭素価は、例えば、JIS K2605に準拠して測定することができる。
【0097】
なお、本発明の硬化性組成物には、前記ポリウレタン樹脂以外にも、更に必要に応じてその他の樹脂を前記ポリウレタン樹脂に対し50質量%以下の量添加することが好ましい。前記その他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0098】
前記バインダーの前記硬化性組成物固形分中の固形分含有量は、5質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
前記固形分含有量が、5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、80質量%以下であれば、硬化層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0099】
前記バインダーの前記硬化性組成物固形分中の固形分含有量としては、5質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
前記固形分含有量が、5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、80質量%以下であれば、硬化層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0100】
<熱架橋剤>
前記熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記硬化性フィルムを用いて形成される硬化層の硬化後の膜強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、例えば、エポキシ化合物を含む化合物、(例えば、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物)、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を用いることができ、特開2007−47729号公報に記載されているようなオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物などが挙げられる。
【0101】
また、前記熱架橋剤として、メラミン誘導体を用いることができる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチル等でエーテル化した化合物)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、硬化層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0102】
前記熱架橋剤の前記硬化性組成物固形分中の固形分含有量は、1質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。該固形分含有量が1質量%以上であれば、硬化膜の膜強度が向上され、50質量%以下であれば、現像性(解像性)、露光感度が良好となる。
【0103】
前記エポキシ化合物としては、例えば、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物などが挙げられる。
【0104】
前記1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂(「YX4000ジャパンエポキシレジン社製」等)又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ樹脂(「TEPIC;日産化学工業株式会社製」、「アラルダイトPT810;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂(例えば低臭素化エポキシ樹脂、高ハロゲン化エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、アリル基含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルジメタノール型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(「HP−7200,HP−7200H;大日本インキ化学工業株式会社製」等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール等)、グリジジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキシド、「GT−300、GT−400、ZEHPE3150;ダイセル化学工業株式会社製」等、)、イミド型脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、グリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、市販品としては「ESN−190,ESN−360;新日鉄化学株式会社製」、「HP−4032,EXA−4750,EXA−4700;大日本インキ化学工業株式会社製」等)、フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの、線状含リン構造を有するエポキシ樹脂、環状含リン構造を有するエポキシ樹脂、α−メチルスチルベン型液晶エポキシ樹脂、ジベンゾイルオキシベンゼン型液晶エポキシ樹脂、アゾフェニル型液晶エポキシ樹脂、アゾメチンフェニル型液晶エポキシ樹脂、ビナフチル型液晶エポキシ樹脂、アジン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂(「CP−50S,CP−50M;日本油脂株式会社製」等)、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
また、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有する前記エポキシ化合物以外に、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物を用いることができ、β位がアルキル基で置換されたエポキシ基(より具体的には、β−アルキル置換グリシジル基など)を含む化合物が特に好ましい。
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも含むエポキシ化合物は、1分子中に含まれる2個以上のエポキシ基のすべてがβ−アルキル置換グリシジル基であってもよく、少なくとも1個のエポキシ基がβ−アルキル置換グリシジル基であってもよい。
【0106】
前記オキセタン化合物としては、例えば、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート又はこれらのオリゴマーあるいは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタン基を有する化合物と、ノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂など、とのエーテル化合物が挙げられ、この他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0107】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、特開平5−9407号公報記載のポリイソシアネート化合物を用いることができ、該ポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む脂肪族、環式脂肪族又は芳香族基置換脂肪族化合物から誘導されていてもよい。具体的には、2官能イソシアネート(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネートと1,4−フェニレンジイソシアネートとの混合物、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−及び1,4−キシリレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネート−フェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、該2官能イソシアネートと、トリメチロールプロパン、ペンタリスルトール、グリセリン等との多官能アルコール;該多官能アルコールのアルキレンオキサイド付加体と、前記2官能イソシアネートとの付加体;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及びその誘導体等の環式三量体;などが挙げられる。
【0108】
前記ポリイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物、すなわちポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物における、イソシアネート基ブロック剤としては、アルコール類(例えば、イソプロパノール、tert−ブタノール等)、ラクタム類(例えば、ε−カプロラクタム等)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等)、複素環式ヒドロキシル化合物(例えば、3−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン等)、活性メチレン化合物(例えば、ジアルキルマロネート、メチルエチルケトキシム、アセチルアセトン、アルキルアセトアセテートオキシム、アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等)などが挙げられる。これらの他、特開平6−295060号公報記載の分子内に少なくとも1つの重合可能な二重結合及び少なくとも1つのブロックイソシアネート基のいずれかを有する化合物などを用いることができる。
【0109】
前記メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチルなどでエーテル化した化合物)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、硬化層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0110】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする硬化性フィルムの安定性、写真性、膜物性などの性質を調整することができる。
前記熱重合禁止剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0101〕〜〔0102〕に詳細に記載されている。
前記熱硬化促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0093〕に詳細に記載されている。
前記可塑剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0103〕〜〔0104〕に詳細に記載されている。
前記着色剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0105〕〜〔0106〕に詳細に記載されている。
前記密着促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0107〕〜〔0109〕に詳細に記載されている。
【0111】
前記熱硬化促進剤の含有量としては、使用するエポキシ化合物の質量に対し、0.1%〜100%が好ましく、0.5%〜50%がより好ましく、1%〜40%が特に好ましい。
前記含有量が0.1%未満であると、充分に熱硬化せず、耐熱性が劣ることがある。
【0112】
(硬化性フィルム)
本発明の硬化性フィルムは、少なくとも、支持体と、該支持体上に本発明の硬化性組成物からなる硬化層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0113】
−支持体−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化層を剥離可能であり、かつ光の透過性が良好であるものが好ましく、更に表面の平滑性が良好であることがより好ましい。
【0114】
前記支持体は、合成樹脂製で、かつ透明であるものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリトリフロロエチレン、セルロース系フィルム、ナイロンフィルム等の各種のプラスチックフィルムが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2μm〜150μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましく、8μm〜50μmが特に好ましい。
【0116】
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長尺状が好ましい。前記長尺状の支持体の長さは、特に制限はなく、例えば、10m〜20,000mの長さのものが挙げられる。
【0117】
−硬化層−
前記硬化層は、硬化性組成物からなる層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記硬化層の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0118】
前記硬化層の形成方法としては、前記支持体の上に、本発明の前記硬化性組成物を、水又は溶剤に溶解、乳化又は分散させて硬化性組成物溶液を調製し、該溶液を直接塗布し、乾燥させることにより積層する方法が挙げられる。
【0119】
前記硬化性組成物溶液の溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、ノルマル−プロパノール、イソプロパノール、ノルマル−ブタノール、セカンダリーブタノール、ノルマル−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−ノルマル−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、及びメトキシプロピルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、公知の界面活性剤を添加してもよい。
【0120】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を用いて、前記支持体に直接塗布する方法が挙げられる。
前記乾燥の条件としては、各成分、溶媒の種類、使用割合等によっても異なるが、通常60℃〜110℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0121】
前記硬化層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1μm〜100μmが好ましく、2μm〜50μmがより好ましく、4μm〜30μmが特に好ましい。
【0122】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護フィルム、熱可塑性樹脂層、バリア層、剥離層、接着層、光吸収層、表面保護層等の層が挙げられる。前記硬化性フィルムは、これらの層を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0123】
<<保護フィルム>>
前記硬化性フィルムは、前記硬化層上に保護フィルムを形成してもよい。
前記保護フィルムとしては、例えば、前記支持体に使用されるもの、紙、ポリエチレン、ポリプロピレンがラミネートされた紙、などが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
前記保護フィルムの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5μm〜100μmが好ましく、8μm〜50μmがより好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。
前記支持体と保護フィルムとの組合せ(支持体/保護フィルム)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリ塩化ビニル/セロフアン、ポリイミド/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、支持体及び保護フィルムの少なくともいずれかを表面処理することにより、層間接着力を調整することができる。前記支持体の表面処理は、前記硬化層との接着力を高めるために施されてもよく、例えば、下塗層の塗設、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波照射処理、グロー放電照射処理、活性プラズマ照射処理、レーザ光線照射処理などを挙げることができる。
【0124】
また、前記支持体と前記保護フィルムとの静摩擦係数は、0.3〜1.4が好ましく、0.5〜1.2がより好ましい。
前記静摩擦係数が、0.3以上であれば、滑り過ぎによって、ロール状にした場合に巻ズレが発生することを防止でき、1.4以下であれば、良好なロール状に巻くことができる。
【0125】
前記硬化性フィルムは、例えば、円筒状の巻芯に巻き取って、長尺状でロール状に巻かれて保管されることが好ましい。前記長尺状の硬化性フィルムの長さは、特に制限はなく、例えば、10m〜20,000mの範囲から適宜選択することができる。また、ユーザーが使いやすいようにスリット加工し、100m〜1,000mの範囲の長尺体をロール状にしてもよい。なお、この場合には、前記支持体が一番外側になるように巻き取られることが好ましい。また、前記ロール状の硬化性フィルムをシート状にスリットしてもよい。保管の際、端面の保護、エッジフュージョンを防止する観点から、端面にはセパレーター(特に防湿性のもの、乾燥剤入りのもの)を設置することが好ましく、また梱包も透湿性の低い素材を用いることが好ましい。
【0126】
前記保護フィルムは、前記保護フィルムと前記硬化層との接着性を調整するために表面処理してもよい。前記表面処理は、例えば、前記保護フィルムの表面に、ポリオルガノシロキサン、弗素化ポリオレフィン、ポリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等のポリマーからなる下塗層を形成させる。該下塗層の形成は、前記ポリマーの塗布液を前記保護フィルムの表面に塗布した後、30℃〜150℃で1〜30分間乾燥させることにより形成させることができる。前記乾燥の際の温度は50℃〜120℃が特に好ましい。
【0127】
(硬化性積層体)
前記硬化性積層体は、少なくとも基体と、前記基体上に設けられた硬化層と、有してなり、目的に応じて適宜選択されるその他の層を積層してなる。
前記硬化層は、上述の製造方法で作製された前記硬化性フィルムから転写されたものであり、上述と同様の構成を有する。
【0128】
<基体>
前記基体は、硬化層が形成される被処理基体、又は本発明の硬化性フィルムの少なくとも硬化層が転写される被転写体となるもので、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を持つものまで任意に選択できる。板状の基体が好ましく、いわゆる基板が使用される。具体的には、公知のプリント配線板製造用の基板(プリント基板)、ガラス板(ソーダガラス板など)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられる。
【0129】
<硬化性積層体の製造方法>
前記硬化性積層体の製造方法として、本発明の硬化性フィルムにおける少なくとも硬化層を加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら転写して積層する方法が挙げられる。
【0130】
前記硬化性積層体の製造方法は、前記基体の表面に本発明の硬化性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層する。なお、前記硬化性フィルムが前記保護フィルムを有する場合には、該保護フィルムを剥離し、前記基体に前記硬化層が重なるようにして積層するのが好ましい。
前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、15℃〜180℃が好ましく、60℃〜140℃がより好ましい。
前記加圧の圧力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1MPa〜1.0MPaが好ましく、0.2MPa〜0.8MPaがより好ましい。
【0131】
前記加熱の少なくともいずれかを行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネーター(例えば、大成ラミネータ株式会社製、VP−II、ニチゴーモートン株式会社製、VP130)などが好適に挙げられる。
【0132】
本発明の硬化性フィルム及び前記硬化性積層体は、膜厚が均一でピンホールやハジキ等の面状欠陥の発生割合が極端に低いため、絶縁信頼性に優れ、高精細な永久パターン(保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンなど)を効率よく形成可能である。したがって、電子材料分野における高精細な永久パターンの形成用として広く用いることができ、特に、プリント基板の永久パターン形成用に好適に用いることができる。
【0133】
(永久パターン形成方法)
本発明の永久パターン形成方法は、露光工程を少なくとも含み、更に、必要に応じて適宜選択した現像工程等のその他の工程を含む。
【0134】
<露光工程>
前記露光工程は、本発明の硬化性積層体における硬化層に対し、露光を行う工程である。本発明の硬化性積層体については上述の通りである。
【0135】
前記露光の対象としては、前記硬化性積層体における硬化層である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述のように、基材上に硬化性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層して形成した積層体に対して行われることが好ましい。
【0136】
前記露光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、デジタル露光、アナログ露光等が挙げられるが、これらの中でもデジタル露光が好ましい。
【0137】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材の表面処理工程、現像工程、硬化処理工程、ポスト露光工程などが挙げられる。
【0138】
<<現像工程>>
前記現像としては、前記硬化層の未露光部分を除去することにより行われる。
前記未硬化領域の除去方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、現像液を用いて除去する方法などが挙げられる。
【0139】
前記現像液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤などが挙げられ、これらの中でも、弱アルカリ性の水溶液が好ましい。該弱アルカリ水溶液の塩基成分としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、硼砂などが挙げられる。
【0140】
前記弱アルカリ性の水溶液のpHは、例えば、8〜12が好ましく、9〜11がより好ましい。前記弱アルカリ性の水溶液としては、例えば、0.1質量%〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液又は炭酸カリウム水溶液などが挙げられる。
前記現像液の温度は、前記硬化層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、例えば、約25℃〜40℃が好ましい。
【0141】
前記現像液は、界面活性剤、消泡剤、有機塩基(例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、モルホリン、トリエタノールアミン等)や、現像を促進させるため有機溶剤(例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ラクトン類等)などと併用してもよい。また、前記現像液は、水又はアルカリ水溶液と有機溶剤を混合した水系現像液であってもよく、有機溶剤単独であってもよい。
【0142】
<<硬化処理工程>>
前記硬化処理工程は、前記現像工程が行われた後、形成されたパターンにおける硬化層に対して硬化処理を行う工程である。
前記硬化処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。
【0143】
前記全面露光処理の方法としては、例えば、前記現像後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を露光する方法が挙げられる。該全面露光により、前記硬化層を形成する硬化性組成物中の樹脂の硬化が促進され、前記永久パターンの表面が硬化される。
前記全面露光を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などのUV露光機が好適に挙げられる。
【0144】
前記全面加熱処理の方法としては、前記現像の後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を加熱する方法が挙げられる。該全面加熱により、前記永久パターンの表面の膜強度が高められる。
前記全面加熱における加熱温度は、120℃〜250℃が好ましく、120℃〜200℃がより好ましい。該加熱温度が120℃以上であれば、加熱処理によって膜強度が向上し、250℃以下であれば、前記硬化性組成物中の樹脂の分解が生じ、膜質が弱く脆くなることを防止できる。
前記全面加熱における加熱時間は、10分〜120分が好ましく、15分〜60分がより好ましい。
前記全面加熱を行う装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、IRヒーターなどが挙げられる。
【0145】
前記永久パターンの形成方法が、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンの少なくともいずれかを形成する永久パターン形成方法である場合には、プリント配線板上に前記永久パターン形成方法により、永久パターンを形成し、更に、以下のように半田付けを行うことができる。
即ち、前記現像により、前記永久パターンである硬化層が形成され、前記プリント配線板の表面に金属層が露出される。該プリント配線板の表面に露出した金属層の部位に対して金メッキを行った後、半田付けを行う。そして、半田付けを行った部位に、半導体や部品などを実装する。このとき、前記硬化層による永久パターンが、保護膜あるいは絶縁膜(層間絶縁膜)、ソルダーレジストとしての機能を発揮し、外部からの衝撃や隣同士の電極の導通が防止される。
【0146】
(プリント基板)
本発明のプリント基板は、少なくとも基体と、前記永久パターン形成方法により形成された永久パターンと、を有してなり、更に、必要に応じて適宜選択した、その他の構成を有する。
その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材と前記永久パターン間に、更に絶縁層が設けられたビルドアップ基板などが挙げられる。
【実施例】
【0147】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0148】
(実施例1)
−樹脂被覆無機微粒子J−1の調製−
還流管、温度計を付した2,000mLの3口フラスコに、エポキシ樹脂(YDF2004、東都化成(株)製)を25gとMMPGAc(ダイセル(株)製)を1L加え、溶解した。攪拌下、シランカップリング剤であるN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシラン(KBM−603、信越化学工業(株)製)で表面処理したシリカ(粒径0.5μm)150gを加え、400rpmの強撹拌下、100℃にて処理した。2時間後、加熱を停止し室温まで放置した後、MEK(メチルエチルケトン)600mLを加え1時間攪拌した。静置後デカンテーションにより溶媒を除去し、MEKで2回洗浄した後、濾取し、80℃真空オーブンにて6時間乾燥して、樹脂被覆シリカJ−1を145g得た。
【0149】
−硬化性組成物溶液の組成−
バインダー:ZFR−1776H(日本化薬(株)製:45質量%MMPGAc溶液)
64質量部
重合成化合物:A−DPH(新中村化学工業(株)製) 5質量部
開始剤:IRG907(チバスペシャリティケミカル(株)製) 1.9質量部
:DETX(日本化薬(株)製) 0.02質量部
:EAB−F(保土ヶ谷化学(株)製) 0.06質量部
熱硬化促進剤:DICY−7(油化シェルエポキシ(株)製) 2.6質量部
熱架橋剤:エポトートYDF−170(東都化成(株)製) 7.5質量部
顔料分散液: 50質量部
その他:メガファックF−780F(大日本インキ(株)製:30質量%メチルエチルケトン溶液) 0.13質量部
メチルエチルケトン(溶媒): 12.0質量部
なお、前記顔料分散液は、前記樹脂被覆微粒子30質量部と、バインダーの溶液48.2質量部と、フタロシアニンブルー0.34質量部と、アントラキノン系黄色顔料(PY24)0.11質量部と、酢酸ノルマルプロピル59.0質量部とを予め混合した後、モーターミルM−250(アイガー社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sにて3時間分散して調製したものである。
【0150】
−硬化性フィルムの製造−
支持体としての厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、16FB50)上に、下記の組成からなる硬化性組成物溶液を塗布し、乾燥させて、前記支持体上に厚さ30μmの硬化層を形成した。前記硬化層上に、保護層として、厚さ20μmのポリプロピレンフィルム(王子特殊紙株式会社製、アルファンE−200)を積層し、硬化性フィルムを製造した。
【0151】
−基体への積層−
銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み12μm)の表面に化学研磨処理を施して基体を調製した。該銅張積層板上に、前記硬化性フィルムの硬化層が前記銅張積層板に接するようにして前記硬化性フィルムにおける保護フィルムを剥がしながら、真空ラミネーター(ニチゴーモートン株式会社製、VP130)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記硬化層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された硬化性積層体を調製した。
なお、圧着条件は、真空引きの時間40秒、圧着温度70℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間10秒とした。
【0152】
(実施例2)
実施例1の樹脂被覆無機微粒子の調製において、エポキシ樹脂をポリエステル樹脂(プラクセル312、ダイセル社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0153】
(実施例3)
実施例1の樹脂被覆無機微粒子の調製において、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシラン(KBM−603、信越化学工業(株)製)をKBM−503(信越化学工業(株)製)に代え、また、バインダー樹脂をMMA(メチルメタアクリレート:三菱レーヨン(株)製)をinsitu重合することで得られるPMMAとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0154】
(実施例4)
実施例1の樹脂被覆無機微粒子の調製において、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシラン(KBM−603、信越化学工業(株)製)をKBM−803(信越化学工業(株)製)に代え、また、エポキシ樹脂をポリブタジエン樹脂(Polybd R45HT、出光興産社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0155】
(実施例5)
実施例1において、ビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂を下記のように合成したポリエステル樹脂に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0156】
−ポリエステル樹脂の合成−
攪拌機、還流管、温度計及び窒素ガス導入管を付した2,000mLフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF−2001、東都化成(株)製)183質量部、シクロヘキサノン64質量部、テトラヒドロフタル酸(東京化成工業(株)製)35質量部とテトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業(株)製)3.6質量部を添加し、140℃で4時間加熱攪拌した。反応後テトラヒドロフタル酸無水物(東京化成工業(株)製)108質量部を添加し、120℃で6時間加熱攪拌することにより、ポリエステル樹脂を得た。その後、該ポリエステル樹脂をメチルエチルケトン127質量部で希釈した。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は29,000であり、酸価は133mgKOH/gであった。
【0157】
(実施例6)
実施例1において、ビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂をビフェニル型エポキシアクリレート樹脂(ZCR1461H、日本化薬(株)製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0158】
(実施例7)
実施例1において、樹脂被覆無機微粒子J−1を以下に示すように調製した樹脂被覆無機微粒子J−Xに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
−樹脂被覆無機微粒子J−Xの調製−
還流管、温度計を付した2,000mLの3口フラスコに、メチレンビス(4,1‐フェニレン)ジイソシアネート(MDI、日本ポリウレタン(株)製)を16.3gとジメチロールプロピオン酸(DMPA、東京化成工業(株)製)3.9gとグリセロールモノメタクリレート(GLM、日本油脂(株)製)4.3gとMMPGAc(ダイセル(株)製)を25g加え、80℃で4時間反応した。400rpmで攪拌下、MMPGAc 500mLを加えた後N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシランで表面処理したシリカ(粒径0.5μm)150gを加え、80℃にて処理した。2時間後、加熱を停止し室温まで放置した後、MEK(メチルエチルケトン)1,000mLを加え1時間攪拌した。静置後デカンテーションにより溶媒を除去し、MEKで2回洗浄した後、濾取し、80℃真空オーブンにて6時間乾燥して、樹脂被覆シリカJ−Xを142g得た。
【0159】
(実施例8)
実施例7において、ビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂を下記のように合成したポリウレタン樹脂U1に代えたこと以外は、実施例7と同様にして、実施例8の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
−酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂U1の合成−
コンデンサー、撹拌機を備えた500mLの3つ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)10.86g(0.081モル)とグリセロールモノメタクリレート(GLM)16.82g(0.105モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79mLに溶解した。これに、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)37.54g(0.15モル)、2,6-ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.1g、触媒として、商品名:ネオスタンU−600(日東化成(株)製)0.2gを添加し、75℃にて、5時間加熱撹拌した。その後、メチルアルコール9.61mLにて希釈し30分撹拌し、145gのポリマー溶液を得た。合成された酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂は下記表中(U1)で表される。
得られた酸変性ビニル基含有ポリウレタン樹脂U1は、固形分酸価が70mgKOH/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した質量平均分子量(ポリスチレン標準)が8,000であり、ビニル基当量が1.5mmol/gであった。
前記酸価は、JIS K0070に準拠して測定した。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒としてジオキサン又はテトラヒドロフランなどを使用した。
前記質量平均分子量は、高速GPC装置(東洋曹達社製HLC−802A)を使用して測定した。即ち、0.5質量%のTHF溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgelGMH62本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器により測定した。次に、標準ポリスチレンで較正した分子量分布曲線より質量平均分子量を求めた。
前記ビニル基当量は、臭素価をJIS K2605に準拠して測定することにより求めた。
【0160】
(実施例9)
実施例1において、エポキシ樹脂を下記のように合成したポリエステル樹脂に代え、MMPGAcをシクロヘキサノンに代え、及びビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂を下記のように合成したポリエステル樹脂に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
−ポリエステル樹脂の合成−
テレフタル酸ジメチル70質量部、イソフタル酸ジメチル52質量部、アジピン酸ジメチル23質量部、セバシン酸ジメチル55質量部、2,2−ジメチルプロパンジオール42質量部、ブタンジオール32質量部、エチレングリコール77質量部、酸化防止剤(イルガノックス1330;チバジャパン(株)製)0.2質量部、及びテトラブチルチタネート0.1質量部を反応機に入れ、攪拌下室温から260℃まで2時間かけて昇温し、その後260℃で1時間加熱しエステル交換反応を行った。次いで反応機内を徐々に減圧にすると共に昇温し、30分かけて245℃、0.5〜2torrにして初期重縮合反応を行った。さらに245℃、0.5〜2torrの状態で4時間重合反応を行った後、乾燥窒素を導入しながら30分かけて常圧へ戻し、ポリエステルをペレット状に取り出しポリエステルを得た。得られたポリエステルをシクロヘキサノンにて30質量%の固形分濃度となるように希釈溶解し、ポリエステル溶液を得た。なお、得られたポリエステルの分子量は4.5万であった。
【0161】
(比較例1)
実施例1において、樹脂被覆無機微粒子をシリカ(SO−C2、アドマテック(株)製、平均粒子径0.5μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1における硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0162】
(比較例2)
実施例1において、樹脂被覆無機微粒子をPMMA樹脂微粒子(エポスターMA1001、日本触媒(株)製、平均粒子径1.0μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2における硬化性フィルム及び硬化性積層体を製造した。
【0163】
(測定方法及び評価方法)
<平滑性>
厚みが12μmの銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント基板上にソルダーレジスト層を定法にて形成し、最適露光量(300mJ/cm〜1J/cm)で露光を行った。
次いで、常温で1時間静置した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像を行い、更に80℃で10分間加熱(乾燥)した。続いて、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で硬化層に対する紫外線照射を行った。更に硬化層を150℃で60分間加熱処理を行うことにより、ソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。
形成したソルダーレジストを東京精密(株)製サーフコムS70Aを用い、膜の表面粗さを観察した。結果を下記表1に示す。
〔評価基準〕
○:10点平均粗さが0.3μm以下で、表面平滑性が良好である。
△:10点平均粗さが0.3μmを超え0.5μm以下で、表面平滑性にやや劣る。
×:表面平滑性が劣る。
【0164】
<強靭性>
前記硬化性積層体に、厚みが12μmの銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント基板上にソルダーレジスト層を定法にて形成し、2mm角フォトマスクを介し、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、2mm角パターンが形成できる最適露光量(300mJ/cm〜1J/cm)で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像を行い、更に80℃で10分間加熱(乾燥)した。続いて、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で硬化層に対する紫外線照射を行った。更に硬化層を150℃で60分間加熱処理を行うことにより、2mm角の矩形開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。
得られた基板を−65℃の大気中に15分間晒した後、次いで150℃の大気中に15分間晒した後、再度−65℃の大気中に晒す熱サイクルを1,000回繰り返した。熱サイクルを通した評価用基板のソルダーレジスト上の皹及び剥離程度を光学顕微鏡により観察した。結果を下記表1に示す。
〔評価基準〕
○:ソルダーレジストに皹、剥れが無く、強靭性に優れる。
○△:ソルダーレジストに僅かに皹があり、強靭性が良好である。
△:ソルダーレジストに僅かに皹、剥れがあり、強靭性にやや劣る。
×:ソルダーレジストに明らかな皹、剥れがあり、強靭性が劣る。
【0165】
<耐熱性>
基板上に各硬化性組成物からなるソルダーレジスト層を形成しロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に30秒間浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ、剥れ、及び変色について、下記基準により評価した。結果を下記表1に示す。
〔評価基準〕
○:全く変化が認められず、耐熱性に優れる。
○△:膨れ、剥がれが僅かに見られるものの、耐熱性は良好である。
△:一部膨れ、剥がれが見られ、耐熱性に劣る。
×:塗膜に膨れ、剥れがある。
【0166】
<解像性の評価>
前記硬化性積層体を室温(23℃)で55%RHにて10分間静置した。得られた硬化性積層体のポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上から、前記パターン形成装置を用いて、丸穴パターンを用い、丸穴の直径の幅50〜200μmの丸穴が形成できるよう露光を行った。
この際の露光量は、前記感度の評価における前記硬化性フィルムの硬化層を硬化させるために必要な光エネルギー量である。室温にて10分間静置した後、前記硬化性積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取った。
銅張積層板上の硬化層の全面に、前記現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて前記最短現像時間の2倍の時間スプレーし、未硬化領域を溶解除去した。
このようにして得られた硬化樹脂パターン付き銅張積層板の表面を光学顕微鏡で観察し、パターンの丸穴底部に残渣が無いこと、パターン部の捲くれ・剥がれなどの異常が無く、かつスペース形成可能な最小の丸穴パターン幅を測定し、これを解像度とし、下記基準で評価した。該解像度は数値が小さいほど良好である。結果を下記表1に示す。
〔評価基準〕
○:直径90μm以下の丸穴が解像可能で、解像性に優れている。
○△:直径90μmを超え120μm以下の丸穴が解像可能で、解像性良好である。
△:直径120μmを超え200μm以下の丸穴が解像可能で、解像性がやや劣る。
×:丸穴が解像不可で、解像性が劣る。
【0167】
<絶縁性>
厚みが12μmの銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント基板の銅箔にエッチングを施して、ライン幅/スペース幅が50μm/50μmであり、互いのラインが接触しておらず、互いに対向した同一面上の櫛形電極を得た。この基板の櫛形電極上に、前記硬化性積層体を形成し、ソルダーレジスト層を定法にて形成し、最適露光量(300mJ/cm〜1J/cm)で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像を行い、更に80℃で10分間加熱(乾燥)した。続いて、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で硬化層に対する紫外線照射を行った。更に硬化層を150℃で60分間加熱処理を行うことにより、ソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。
加熱後の評価用積層体の櫛形電極間に電圧が印加されるように、ポリテトラフルオロエ
チレン製のシールド線をSn/Pbはんだにより、それらの櫛形電極に接続した後、評価用積層体に5Vの電圧を印可した状態で、該評価用積層体を130℃、85%RHの超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に200時間静置した。その後の評価用積層体のソルダーレジストのマイグレーションの発生程度を100倍の金属顕微鏡により観察した。結果を下記表1に示す。
〔評価基準〕
○:マイグレーションの発生が確認できず、絶縁性に優れる。
○△:マイグレーションの発生が銅上僅かに確認されるが、絶縁性良好である。
△:マイグレーションの発生が確認され、絶縁性にやや劣る。
×:電極間が短絡し、絶縁性に劣る。
【0168】
(樹脂被覆無機微粒子の構造分析方法)
被覆シリカ微粒子を、走査型電子顕微鏡で観察により、個々の粒子間に合着なきこと、樹脂が被覆していることを確認した。
【0169】
(SP値の測定方法)
SP値(MPa1/2)は、下記参照文献1からポリマー構造からパラメータ(沖津法)を用いて算出した。結果を下記表1に示す。
参照文献1:日本接着学会誌vol.29 No.5(1993)
【0170】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の硬化性組成物は、高感度化が図れ、基板密着性、表面硬度、耐熱性、及び保存性を改良することができるので、フィルム型ソルダーレジストに好適に用いることができる。
本発明の硬化性フィルムは、耐熱性及び保存性が向上し、高精細な永久パターンを効率よく形成可能であるため、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターン等の永久パターン等の各種パターン形成、カラーフィルタ、柱材、リブ材、スペーサー、隔壁などの液晶構造部材の製造、ホログラム、マイクロマシン、プルーフの製造等に好適に用いることができ、特にプリント基板の永久パターン形成用に好適に用いることができる。
本発明のパターン形成方法は、前記硬化性組成物を用いるため、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターン等の永久パターン等の各種パターン形成用、カラーフィルタ、柱材、リブ材、スペーサー、隔壁等の液晶構造部材の製造、ホログラム、マイクロマシン、プルーフの製造等に好適に用いることができ、特にプリント基板の永久パターン形成に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆無機微粒子を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
熱架橋剤及び熱硬化促進剤を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
光重合開始剤及び重合性化合物を含有する請求項1から2のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項4】
バインダーを含有する前記請求項1から3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
無機微粒子が、シリカである請求項1から4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
樹脂被覆無機微粒子が、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアナト基、及びグリシジル基のいずれかを有し、熱可塑性樹脂により被覆されて形成される請求項1から5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、重縮合及び付加重合のいずれかにより得られる樹脂である請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂におけるSP値と、バインダーにおけるSP値との差が、5MPa1/2以下である請求項6から7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
プリント基板用硬化性組成物として用いられる請求項1から8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化性組成物を含む硬化層を支持体上に有してなることを特徴とする硬化性フィルム。
【請求項11】
基体上に、請求項1から8のいずれかに記載の硬化性組成物を含む硬化層を有することを特徴とする硬化性積層体。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化性組成物により形成された硬化層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の永久パターン形成方法により永久パターンが形成されることを特徴とするプリント基板。

【公開番号】特開2011−95709(P2011−95709A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83939(P2010−83939)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】