説明

硬化性組成物、硬化物及び光情報媒体

【課題】揮発性が低く品質管理が容易で、低温下に放置しても反りが小さい光情報媒体の光透過層として有用な硬化性組成物、その硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物及びその硬化物を光透過層として使用した光情報媒体を提供する。
【解決手段】特定のウレタン(メタ)アクリレート(A)、25℃での粘度が1,000mPa・s以下で、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート(B)及び環状骨格を有し、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する重量平均分子量が200以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する硬化性組成物、その硬化物及び支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層としてその硬化物を使用した光情報媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物、硬化物及び光情報媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら、今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、更なる大容量の光ディスクが必要とされている。そこで、光ディスクにおける光透過層の厚みを0.1mmとし、レンズ開口数(NA)が0.85程度で、記録及び再生のレーザー波長を400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されている。
【0004】
0.1mm厚の光透過層を有する高密度光ディスクシステムとして、例えば、特許文献1には液状の特定組成の放射線硬化性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した後に放射線を照射して硬化させて、耐擦傷性及び光透過性に優れた光透過層を有し、低コスト、高生産性で反りの発生が抑制された光記録媒体及びその製造方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には光ディスクの支持基体の情報記録層及び光透過層が積層されている面の反対側の面に反り抑制層を配置することにより、温度の急峻な変化による光記録媒体の反りを抑制する方法が提案されている。
【0006】
更に、特許文献3には光透過層に特定の弾性率を有する硬化膜を使用することにより高温高湿環境下に長時間放置しても反りが抑制される光ディスクが提案されている。
【0007】
しかしながら、上記方法で得られた光記録媒体や光ディスクはいずれも−20℃程度の低温環境下に放置した場合における反りの抑制に対しては十分とは言えない。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2では、液状の樹脂組成物をスピンコート法に最適な粘度に調整するために、反応性希釈剤として低分子量で希釈効果の高いテトラヒドロフルフリルアクリレート等のラジカル硬化性モノマーを使用している。しかしながら、このような希釈効果の高い低分子量のラジカル硬化性モノマーは揮発性が高いものが多く、製造工程において樹脂組成物中から揮発してしまうことから、樹脂組成物の品質管理が難しく、製造ラインを汚染しやすいという問題がある。
【0009】
一方、特許文献4には、リサイクル性に優れ、外部の温度変化に対する寸法安定性に優れた光ディスク用保護層が形成可能な硬化性組成物が提案されているが、低分子量ラジカル硬化性モノマーの揮発に対する対策は十分とは言えない。
【特許文献1】特開2005−319459号公報
【特許文献2】特開2003−132596号公報
【特許文献3】特開2007−102980号公報
【特許文献4】特開2008−69309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、揮発性が低く、品質管理が容易で、低温下に放置しても反りが小さい光情報媒体の光透過層として有用な硬化性組成物、その硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物及びその硬化物を光透過層として使用した光情報媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨とするところは、下記(a1)成分〜(a3)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)(以下、「成分(A)」という)、25℃での粘度が1,000mPa・s以下で、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート(B)(以下、「成分(B)」という)及び環状骨格を有し、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する重量平均分子量が200以上の(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレート(C)(以下、「成分(C)」という)を含有する硬化性組成物(以下、「本硬化性組成物」という)を第1の発明とする。
(a1)成分:2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種
(a2)成分:ポリテトラメチレングリコール
(a3)成分:分子内に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、上記硬化性組成物を硬化して得られる硬化物(以下、「本硬化物」という)を第2の発明とする。
更に、本発明の要旨とするところは、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層として上記の硬化物を使用した光情報媒体(以下、「本光情報媒体」という)を第3の発明とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、揮発性の低いラジカル硬化性モノマーを反応性希釈剤として用いていることから、硬化性組成物の品質管理が容易で、製造ラインの汚染も抑制することができる。
【0014】
また同時に、極低温下でも反りの小さい光情報媒体を提供できることから、高密度の再生専用光ディスクや記録型光ディスク等の光情報媒体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
成分(A)
本発明において、成分(A)は本硬化性組成物の1成分である。
成分(A)は本硬化性組成物に低収縮性を付与するための成分であり、また本硬化物に可とう性を付与するための成分である。
成分(A)は(a1)成分〜(a3)成分を反応させて得られるものである。
【0016】
(a1)成分
本発明で使用される(a1)成分としては、例えば、エボニックデグサジャパン社より市販されているVESTANAT TMDIが挙げられる。これは、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物であり、成分(A)に可とう性を付与できるとともに、他のイソシアネート化合物を用いた場合に比べて成分(A)の粘度を低く抑えることができる。
(a1)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0017】
また、本発明の目的を損なわない範囲において(a1)成分以外に他のイソシアネート化合物を併用することができる。
【0018】
他のイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0019】
(a2)成分
本発明で使用される(a2)成分としては、例えば、市販のポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0020】
ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量としては、500〜1,500が好ましく、600〜1,200がより好ましく、800〜1,100が更に好ましい。数平均分子量が500以上で、得られる成分(A)の可とう性が十分で、低温環境下での反りの発生を抑えることができる。また、数平均分子量が1,500以下で、成分(A)の粘度を低く抑えることができ、本硬化性組成物中に、揮発性が低く希釈効果の低いラジカル硬化性モノマーを配合した場合でも、本硬化性組成物の粘度をスピンコート法に適した粘度に調整することが容易である。
(a2)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0021】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、(a2)成分以外に他の多価アルコールを併用することができる。
【0022】
他の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール類;1−メチルブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;上記多価アルコール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール類;上記多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類又はこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;上記多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリラクトンポリオール類;上記多価アルコール類及び多塩基酸類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;上記多価アルコール類とテトラヒドロフランとの共重合体;環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア又は1個の第一級若しくは第二級アミノ窒素を含む化合物との反応によって得られるアミドポリオール類;1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のジオール類と、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステル類とのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオール類;及びポリブタジエングリコール類が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0023】
(a3)成分
本発明で使用される(a3)成分としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類及びこれらのカプロラクトンの付加物が挙げられる。
【0025】
これらの中で、得られる成分(A)が低粘度となる点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
(a3)成分は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0026】
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリロイル」はそれぞれ「アクリレート」及び「メタクリレート」のうちの少なくとも1種並びに「アクリロイル」及び「メタクリロイル」のうちの少なくとも1種を示す。
【0027】
成分(A)の合成方法としては、公知のウレタン(メタ)アクリレートの合成方法が挙げられる。成分(A)の合成方法の具体例として以下の方法が挙げられる。
【0028】
まず、フラスコ内に(a1)成分2モルを仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の触媒を(a1)成分〜(a3)成分の総仕込量に対して50〜300ppmとなるように混合する。次いで、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、フラスコ内に(a2)成分1モルを2〜4時間かけて滴下してウレタンプレポリマーを得る。その後、フラスコ内温を60〜75℃として、フラスコ内に、得られたウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基と当量の(a3)成分を滴下して成分(A)を得る。
【0029】
成分(B)
本発明において、成分(B)は本硬化性組成物の1成分である。成分(B)は25℃での粘度が1,000mPa・s以下で、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートである。
【0030】
成分(B)は本硬化性組成物を低粘度とし、本硬化性組成物に速硬化性を付与すると共に、本硬化物を使用した光透過層の表面硬度、強靭性、可とう性、隣り合う層との密着性等を良好とするための成分である。
【0031】
成分(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数3〜15)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数3〜15)、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数1〜3)、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0032】
これらの中で、本硬化性組成物の硬化性と本硬化物の機械物性のバランスを良好とし、本硬化性組成物の液粘度を低くする点で、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びプロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
成分(C)
本発明において、成分(C)は本硬化性組成物の1成分である。成分(C)は環状骨格を有し、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する重量平均分子量が200以上の(メタ)アクリレート化合物である。
【0034】
成分(C)は硬化性組成物の液粘度を低粘度化すると共に、得られる硬化物に表面硬度、隣り合う層との密着性等を付与するための成分である。
【0035】
成分(C)としては、例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシメチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0036】
これらの中で、揮発性が低く、本硬化組成物の低粘度化が可能で、臭気が少なく、反応性が比較的良好な点で、トリシクロデカニルオキシメチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
本硬化性組成物
本硬化性組成物は成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する。
【0038】
本発明において、本硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、成分(A)〜成分(C)以外のラジカル硬化性モノマー又はラジカル硬化性オリゴマー(以下、「成分(D)」という)を含有することができる。
【0039】
成分(D)としては、例えば、成分(B)以外の分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するポリ(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート、成分(C)以外のモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート並びに成分(A)以外のウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
成分(D)の中で、ポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
成分(D)の中で、ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
成分(D)の中で、モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
成分(D)の中で、ポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
成分(D)の中で、ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類にポリカーボネートジオールやポリオール化合物類を反応させて得られるウレタンプレポリマーの末端に水酸基含有(メタ)アクリレートを付加させた成分(A)以外のウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
成分(D)は一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0045】
本硬化性組成物においては、成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて成分(D)の合計量100質量部に対して30〜80質量部が好ましく、40〜70質量部がより好ましい。成分(A)の含有量が30質量部以上で本硬化性組成物の硬化収縮率の低減効果に優れ、本硬化物の−20℃での破断点伸度が10%以上になり、本硬化物の可撓性に優れる傾向にある。また、成分(A)の含有量が80質量部以下で本硬化性組成物の液粘度が低くなり、情報記録層上への塗工作業性に優れ、本硬化物の機械的物性及び保護性能に優れる傾向にある。
【0046】
本硬化性組成物においては、成分(B)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて成分(D)の合計量100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。成分(B)の含有量が5質量部以上で本硬化物の機械的物性及び保護性能に優れる傾向がある。また、成分(B)の含有量が50質量部以下で本硬化組成物の硬化収縮率の低減効果に優れ、本硬化物の可撓性が優れ、本硬化物の−20℃での破断点伸度を10%以上にできる傾向にある。
【0047】
本硬化性組成物においては、成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて成分(D)の合計量100質量部に対して5〜40質量部が好ましく、15〜25質量部がより好ましい。成分(C)の含有量が10質量部以上で本硬化性組成物の液粘度が低くなり、硬化収縮率が低下する傾向がある。また、成分(C)の含有量が30質量部以下で本硬化性組成物の硬化性が良好となる傾向にある。
【0048】
本硬化性組成物においては、成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計量100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。成分(D)の含有量が20質量部以下で本硬化性組成物の液粘度が低くなり、硬化収縮率が低下する傾向がある。
【0049】
本硬化性組成物には、本硬化性組成物を活性エネルギー線照射により効率よく硬化させるために、光重合開始剤(E)(以下、「成分(E)」という)を含有することが好ましい。
【0050】
成分(E)としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及びメチルベンゾイルホルメートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0051】
これらの中で、本硬化性組成物の硬化性及び本硬化物の難黄変性の点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン及び2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンが好ましい。
【0052】
本発明において、成分(E)の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて成分(D)の合計量100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、1.5〜5質量部がより好ましい。
【0053】
成分(E)の含有量が1質量部以上で空気雰囲気中で安定して硬化できる傾向にあり、10質量部以下で本硬化性組成物の塗膜の深部硬化性が良好で、本硬化物の黄変が抑えられる傾向にある。
【0054】
本硬化性組成物には、本発明を損なわない範囲で、熱重合開始剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、熱可塑性高分子、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の添加剤を適宜配合することができる。
【0055】
上記の酸化防止剤及び光安定剤の添加量としては、それぞれ、成分(A)、成分(B)成分(C)及び必要に応じて成分(D)の合計量100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0056】
本発明においては、本硬化性組成物は、ダストやゲル物等の異物の存在による読み取りエラー又は書き込みエラーを防止するために、5μm以上、好ましくは1μm以上の異物を排除するろ過フィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0057】
ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンが挙げられる。
【0058】
また、本発明において、光透過層に気泡が存在すると読み取りエラー又は書き込みエラーの原因となることから、本硬化性組成物は予め真空、超音波、遠心条件下又はその組み合わせの条件下において脱気を行うことが好ましい。
【0059】
本硬化物
本硬化物は本硬化性組成物を硬化して得られるものであり、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される本光情報媒体の光透過層として使用することができる。
【0060】
本硬化物を光透過層として使用する場合には、本硬化物の−20℃での破断点伸度(以下、「破断点伸度(a)」という)が10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。また、−20℃と25℃の場合における光ディスクの反り量の差の点で、破断点伸度(a)を本硬化物の25℃における破断点伸度(以下、「破断点伸度(b)」という)で除した値(以下、「破断点伸度(a)/(b)」という)が0.30〜1.0であることが好ましく、0.50〜1.0がより好ましい。
【0061】
本硬化物の破断点伸度(a)が10%以上で、−20℃と25℃の場合における光ディスクの反り量の差を0.2度以下とすることができ、低温における光情報媒体への記録や再生を問題なく行うことができる傾向にある。
【0062】
一方、破断点伸度(a)の上限は50%以下であることが好ましい。破断点伸度(a)が50%以下で、本硬化物が光透過層として十分な硬度を有する傾向にある。
【0063】
尚、破断点伸度(a)は破断点伸度(b)を超えることは無いので、破断点伸度(a)/(b)の値は1.0以下である。
【0064】
破断点伸度は光情報媒体から剥離した光透過層を用いて測定することができ、最大点応力(単位:MPa)及び引張弾性率(単位:MPa)と共に求めることができる。
【0065】
本発明においては、本硬化物の25℃における引張弾性率は100〜1,500MPaが好ましく、200〜1,000MPaがより好ましい。引張弾性率が100MPa以上で情報記録層の保護膜として十分な硬度を有する傾向にあり、1,500MPa以下で光情報媒体の反りの低減効果に優れている傾向にある。
【0066】
本硬化物を得るために本硬化性組成物を硬化する方法としては、例えば、熱、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0067】
本発明において、本硬化物を本光情報媒体の光透過層として使用する場合の本硬化性組成物を硬化する方法としては、本光情報媒体の周方向の膜厚精度と製造コストの点で、紫外線の活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。
【0068】
本発明においては、本硬化物を本光情報媒体の光透過層として使用する場合の本硬化性組成物は、支持基体上に設けられた後述する情報記録層の上に、スピンコート、スプレーコート、ブラシコート等の公知の塗工方法で塗工し、情報記録層上に本硬化性組成物の塗膜を形成することができる。次いで、活性エネルギー線等で本硬化性組成物の塗膜を硬化することにより、情報記録層上に光透過層を形成した本光情報媒体を得ることができる。尚、活性エネルギー線を照射する雰囲気としては、空気中でも窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよいが、製造コストの点で、空気中で照射することが好ましい。
【0069】
本硬化物を本光情報媒体の光透過層として使用する場合、高温高湿条件下においても光透過層の膜厚変化を小さくできる点で、本硬化性組成物の反応率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。反応率が90%以上で、本硬化物中に残存する未反応のジ(メタ)アクリレート類や光重合開始剤が経時的に揮発して膜厚が減少することを抑制できる傾向にある。
【0070】
本硬化性組成物の反応率を90%以上とする方法としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用した場合、積算光量を500mJ/cm以上、より好ましくは1,000mJ/cm以上、更に好ましくは2,000mJ/cm以上とする条件で紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0071】
尚、本硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する手法、本硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する手法及びゲル分率により架橋度合いを測定する手法が挙げられる。
【0072】
これらの中で、本硬化物中に残存する残渣を定量しやすいことから、ゲル分率を測定する手法を利用することが好ましい。ゲル分率の測定方法としては、例えば、本硬化物を粉砕し、溶剤中で未硬化成分を抽出した後、乾燥させて、その質量変化によりゲル分率を測定する方法が挙げられる。
【0073】
支持基体
本光情報媒体に使用される支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック等の材料及びこれらの複合材料が挙げられる。
【0074】
これらの中で、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点でプラスチックが好ましい。プラスチックの具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0075】
情報記録層
本光情報媒体においては支持基体の片面に情報記録層が積層されている。
【0076】
情報記録層の材料は特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を目的に応じて選択することができる。
【0077】
情報記録層の材料の具体例としては、Au、Al、Al・Ti合金、Ag、Ag・Pd・Cu合金、Ag・In・Te・Sb合金、Ag・In・Te・Sb・Ge合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金及び色素が挙げられる。
【0078】
本発明においては、必要に応じて情報記録層の少なくとも一方の側に記録層の保護や光学的効果を目的として、SiN、ZnS、SiO等の誘電体層を設けることができる。
【0079】
支持基体上に情報記録層を形成する方法としてはスパッタリング法等の公知の方法が挙げられる。
【0080】
光透過層
本発明においては情報記録体層の上に光透過層が積層される。
【0081】
光透過層の厚みとしては、本発明の効果の発現性の点で0.1mm程度が好ましい。
【0082】
また、光透過層の透明性としては、情報記録層への記録や再生のために400nm程度のレーザーに対する透明性が良好であることが好ましい。
【0083】
本硬化物を光透過層として使用する場合には、光透過層の厚みが5μm以上で光情報媒体の表面を十分に保護できる傾向にあり、500μm以下で光情報媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。本硬化物を光透過層として使用する場合の光透過層の厚みは10〜300μmがより好ましく、15〜150μmが更に好ましい。
【0084】
光情報媒体
本光情報媒体は少なくとも支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有する構造を有している。
【0085】
また、本光情報媒体は、光透過層を通して記録光又は再生光が入射して、情報記録層への情報の記録又は情報記録層の情報の読み取りができるものである。
【0086】
本光情報媒体には、光透過層の上に擦り傷防止や汚れ防止等を目的として、ハードコート層を設けることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。また、以下において、「部」は「質量部」を示す。また、硬化性組成物、硬化物及び評価用光ディスクについての各種評価は以下の方法により評価した。
【0088】
[試験方法]
(1)硬化性組成物の揮発性
アルミ皿に硬化性組成物3gを量りとり、90℃の乾燥機に2時間入れて加熱した後、乾燥機から取り出し、室温にて十分冷却した。硬化性組成物の残渣の質量を測定し、加熱後の硬化性組成物の残存率(%)を計算し、揮発性の評価を以下の基準により判定した。
○:硬化性組成物の残渣が90%以上。
×:硬化性組成物の残渣が90%未満。
【0089】
(2)硬化物の破断点伸度、引張弾性率及び破断点伸度(a)/(b)
作製した評価用光ディスクから平均膜厚が100μmの硬化物の層を剥離し、剥離した硬化物の層から10mm×100mm×100μmの試験片を切り出した。次いで、標線間距離50mm及び引張速度20mm/分で、JIS K7127−1989に準拠して、−20℃及び25℃での破断点伸度(%)並びに25℃での引張弾性率(MPa)を測定した。また、破断点伸度(a)/(b)を算出した。
尚、破断点伸度の判定は以下の基準で実施した。
○:−20℃における破断点伸度(a)が10%以上。
×:−20℃における破断点伸度(a)が10%未満。
【0090】
(3)光ディスクの反り角及び寸法安定性
作製した評価用光ディスクの初期の反り角(度)として、ジャパンイーエム(株)製光ディスク光学機械特性測定装置「DLD−3000」(商品名)を用いて、25℃及び相対湿度50%の環境下にて、光ディスクの半径55mmの位置での値を測定した。
【0091】
次いで、光ディスクを−20℃の環境下に24時間放置して取り出した直後に、光ディスクの半径55mm位置での反り角を測定し、−20℃での光ディスクの反り角と25℃での光ディスクの反り角との差を求めて光ディスクの寸法安定性を以下の基準で判定した。
【0092】
尚、光ディスクの反り角とは、光ディスク最外周における光透過層側への半径方向の最大反り角のことである。また、反り角の値が負(−)である場合は、光ディスクが支持基体の光透過層が積層されていない面側に反っていることを意味する。
○:−20℃と25℃とにおける反り角の差が0.2度以下。
×:−20℃と25℃とにおける反り角の差が0.2度を越える。
【0093】
(4)光ディスクの耐腐食性
作成した評価用光ディスクについて、80℃及び相対湿度85%の環境下にて96時間の耐久試験を行い、銀合金膜の外観を下記の基準に従って目視にて評価した。
○:銀合金膜に異常なし。
×:銀合金膜に変色、腐食等の異常あり。
【0094】
[合成例1]ウレタンアクリレート(UA1)の製造
5リットルの4つ口フラスコに2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT TMDI)1,050g及びジブチル錫ジラウレート(昭和化学(株)製)0.8gを入れ、ウォーターバスでフラスコ内温が70℃になるように加熱、撹拌した。次いで、フラスコ内温を70℃に保ちながら、滴下ロートから、フラスコ内に、40℃に保温したポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名:PTG850)2,170gを4時間等速滴下で加え、更に、同温度で2時間攪拌して反応を継続した。その後、フラスコ内温を75℃に上げ、フラスコ内温を75℃に保ちながら、滴下ロートから、2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:HEA)581gとハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gを均一に混合溶解させた液を2時間等速滴下し、更にフラスコ内容物の温度を75℃に保ちながら4時間反応を継続させて、ウレタンアクリレート(UA1)を得た。
【0095】
[合成例2〜4]ウレタンアクリレート(UA2)〜(UA6)の製造
ウレタンアクリレートの原料として表1に示すものを使用する以外は合成例1と同様にしてウレタンアクリレート(UA2)〜(UA6)を得た。
【0096】
【表1】

【0097】
TMDI:2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT TMDI)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT IPDI)
トリレンジイソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:コスモネートT−80
PolyTHF250:ポリテトラメチレングリコール(BASFジャパン(株)製、商品名、数平均分子量255)
PTG−850:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名、数平均分子量872)
PTG−1000:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名、数平均分子量1014)
T−5650J:ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:PCDL T−5650J)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
【0098】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分(A)としてウレタンアクリレート(UA1)61部、成分(B)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:TMP3A−3)11部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:カヤラッドNPGDA)3部、成分(C)としてジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:FA−512A)25部、成分(D)として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184)4部を混合溶解し、1μmのフィルターでろ過した後に、減圧脱気して、硬化性組成物(イ)を得た。硬化性組成物(イ)の揮発性の評価結果を表2に示す。
【0099】
(2)評価用光ディスクの作製
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して光ディスク形状を有する、透明で円盤状の、表面が鏡面の支持基体(直径12cm、板厚1.1mm及び反り角0度)を作製した。
【0100】
得られた支持基体の片表面に、スパッタリング法にて膜厚20nmのAg98PdCu(原子比)合金膜(以下、「銀合金膜」という)を積層した。
【0101】
この銀合金膜上に、上記で調製した硬化性組成物(イ)を、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下で、スピンコーターを用いて塗工した。その後、塗工面の上方より、Hバルブランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)を用いて、紫外線を積算光量1,000mJ/cm(紫外線光量計「UV−351」((株)オーク製作所製、商品名)で測定)で照射し、塗膜を硬化して平均膜厚が100μmの硬化物で構成される光透過層を形成し、支持基体の上に情報記録層及び光透過層が順次積層された評価用光ディスクを作成した。
【0102】
得られた評価用光ディスクを使用して硬化物の破断点伸度、破断点伸度(a)/(b)及び引張弾性率並びに光ディスクの反り角、寸法安定性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
TMP3A−3:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)、粘度160mPa・s
ニューフロンティアTMP−3:エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬(株)、商品名)、粘度130mPa・s
カヤラッドNPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)製、商品名)、粘度8mPa・s
ライトアクリレートDCP−A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名)、粘度160mPa・s
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名)
FA−511A:ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名)
ブレンマーTBCHA:4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート(日本油脂(株)製、商品名)
MEDOL10:(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
アロニックスM−315:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成(株)製、商品名)
ビスコート#150:テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
ユニディックV−5530:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(DIC(株)製商品名)
SR−256:2−エトキシエトキシエチルアクリレート(サートマー・ジャパン(株)製、商品名)
ニューフロンティアHDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬(株)、商品名)
ニューフロンティアBPE−4:4モルEO変性ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬(株)、商品名)
イルガキュア184:1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
イルガキュア127:2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
【0105】
[実施例2〜4及び比較例1〜3]
硬化性組成物として表2に示すものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして硬化性組成物(ロ)〜(ト)を調整した。硬化性組成物(ロ)〜(ト)の揮発性の評価結果を表2に示す。また、硬化性組成物(ロ)〜(ト)を使用して実施例1と同様にして評価用光ディスクを作成し、得られた評価用光ディスクを使用して硬化物の破断点伸度、破断点伸度(a)/(b)及び引張弾性率並びに光ディスクの反り角、寸法安定性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0106】
[比較例4及び5]
表2に示す原料を60℃で1時間加熱混合して溶解し、1μmのフィルターでろ過した後に、減圧脱気して、硬化性組成物(チ)及び(リ)を得た。硬化性組成物(チ)及び(リ)の揮発性の評価結果を表2に示す。また、硬化性組成物(チ)及び(リ)を使用して実施例1と同様にして、評価用光ディスクを作成し、得られた評価用光ディスクを使用して硬化物の破断点伸度、破断点伸度(a)/(b)及び引張弾性率並びに光ディスクの反り角、寸法安定性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a1)成分〜(a3)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)、25℃での粘度が1,000mPa・s以下で、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート(B)及び環状骨格を有し、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する重量平均分子量が200以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する硬化性組成物。
(a1)成分:2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種
(a2)成分:ポリテトラメチレングリコール
(a3)成分:分子内に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項3】
支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層として請求項2に記載の硬化物を使用した光情報媒体。
【請求項4】
光透過層を形成する硬化物の−20℃での破断点伸度が10%以上である請求項3に記載の光情報媒体。

【公開番号】特開2010−65193(P2010−65193A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235003(P2008−235003)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】