説明

硬化性組成物、硬化物及び積層体

【課題】 形成後に被膜収縮を生じにくいアンダーコート層を有する積層体を提供する。
【解決手段】 硬化性組成物を硬化させてなる硬化物で構成されるアンダーコート層12を介して、フィルム基材11の上に光触媒層13を有する積層体10である。アンダーコート層12は所定厚み以上で形成してある。硬化性組成物は、ケイ素系化合物及び金属キレート化合物を含有し、前記金属キレート化合物の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して75重量部以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬化性組成物、硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ケイ素化合物を含む主剤に対し、金属キレート化合物を含有させたコーティング組成物を硬化させてなるアンダーコート被膜を介して、基材の表面に光触媒活性を有する被膜を形成する技術が知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2001−225005号公報
【特許文献2】特開平2000−53916号公報
【特許文献3】特開平2008−7610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例では、アンダーコート被膜を形成するための組成物において、主剤に対する金属キレート化合物の配合量が、主剤100重量部に対して20重量部以下と少ない。このため、基材及び光触媒活性を有する被膜双方との密着性を確保するために、ある程度の膜厚(例えば40nm以上)で被膜を形成した場合、経時的に被膜内部の応力が増加して被膜収縮を生じ、その結果、アンダーコート被膜にひび割れ(クラック)を生じることがあった。アンダーコート被膜にひび割れを生ずると、その表面に形成されている光触媒活性を有する被膜にもひび割れが発生し、光触媒活性(親水性)が低下するとともに、透明性が損なわれる。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、形成後に被膜収縮を生じにくいアンダーコート被膜を形成しうる硬化性組成物と、その硬化物と、その硬化物で構成されるアンダーコート被膜を有する積層体とを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ケイ素系化合物に対して金属キレート化合物を所定量以上で含有する硬化性組成物を用いることによって上記課題を解決する。詳細は後述する。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、所定量以上の金属キレート化合物を含有する硬化性組成物を用いる。これにより、その硬化性組成物の硬化物(被膜)を形成する際に、金属キレート化合物の一部をケイ素系化合物が硬化するシリケート縮合反応の硬化触媒として作用させるとともに、金属キレート化合物の残部を硬化物(被膜)の経時的な収縮抑制剤として作用させ、その結果、形成される被膜(アンダーコート層)へのひび割れの発生が防止される。従って、こうした被膜を介して基材上に、トップコート層としての光触媒層などの無機系機能層を形成した場合、当該機能層へのひび割れの発生も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本実施形態に係る積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、上記発明に係る硬化性組成物、硬化物、積層体の実施形態を説明する。
【0010】
《硬化性組成物》
本実施形態の硬化性組成物は、少なくともケイ素系化合物(以下「化合物A」と略記する。)と金属キレート化合物(以下「化合物B」と略記する。)を含有する。
【0011】
《化合物A》
本実施形態で用いられる化合物Aは、被膜形成のために主剤として機能するものであって、例えば加水分解性シラン誘導体と、その加水分解性シラン誘導体の加水分解物と、その加水分解物の縮合物とを含む群から選択される少なくとも一つの化合物を含む。より好ましくは側鎖または末端に水酸基を有する加水分解性シラン誘導体の部分加水分解物(化合物A1)を含む。
【0012】
化合物A1は、4官能性のケイ素系化合物、例えば(Cl SiO)などのクロルポリシロキサン、あるいは加水分解を起こし易いアルコキシシランや、例えばエチルシリケートのようなアルコキシポリシロキサンなどに水を作用させて部分加水分解させたもので、側鎖及び末端の基の例えば80%以上が水酸基で置換された、次式(1)で示される化合物である。なお、ここでは、便宜上側鎖のすべてが水酸基で置換されたものとして示すものとする。
【0013】
【化1】

【0014】
加水分解性シラン誘導体としては、例えばアルコキシシランなどが挙げられる。アルコキシシランは熱硬化によりポリシロキサン構造を形成するものであり、例えばテトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランなどが挙げられる。
【0015】
テトラアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
【0016】
トリアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0017】
ジアルコキシシランとしては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0018】
加水分解性シラン誘導体としては、特に硬化後の塗膜強度の点で、テトラアルコキシシランが好ましく、より好ましくはテトラメトキシシラン(メチルシリケート)、テトラエトキシシラン(エチルシリケート、TEOS)を含む。
【0019】
本実施形態では、以上例示した加水分解性シラン誘導体を、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0020】
加水分解性シラン誘導体の加水分解物は、上述した加水分解性シラン誘導体が、水の存在下に加水分解されて生成する化合物である。
【0021】
加水分解性ケイ素化合物の加水分解物の縮合物は、上述した加水分解性ケイ素化合物が、水の存在下に加水分解された後、縮合して生成する化合物である。このような縮合物としては、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば1000〜10000程度の縮合物が用いられる。
【0022】
加水分解の反応は、公知の方法により行うことができる。例えばアルコキシシランを大量のアルコール溶媒(例えばメタノールやエタノールなど)に入れ、水と酸触媒(塩酸、硝酸など)の存在下、所定温度で所定時間反応させる。この反応によりアルコキシシランは加水分解し、続いて縮合反応が起こり、加水分解物及び/又はその縮合物が得られる。
【0023】
加水分解の程度は、使用する水の量により調節することができる。加水分解の程度は、加水分解可能な基、例えばテトラアルコキシシランにおいてはアルコキシ基を全て加水分解縮合するために必要な理論水量、即ちアルコキシ基の数の1/2の水を添加したときを加水分解率100%とし、加水分解率(%)=(実際の添加水量/加水分解理論水量)×100、で求められる。
【0024】
本実施形態では、以上例示した化合物Aを、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。なお、化合物Aは、例えば市場から入手することもできる。市販例としては、例えばコルコート社製の「コルコート」シリーズ(例えばN103X、Pなど)などが挙げられる。
【0025】
本実施形態の組成物中における、化合物Aの配合量(固形分換算)は、形成する被膜厚みなどによって異なってくるが、好ましくは15〜50重量%であり、より好ましくは25〜40重量%である。化合物Aの配合量が少なすぎると、塗膜の硬化が不足することにより被膜全体が硬度不足となる傾向があり、逆に化合物Aの配合量が多すぎると、塗膜にひび割れが発生しやすくなるとの不都合を生じうる。
【0026】
《化合物B》
本実施形態で用いられる化合物Bは、化合物Aを硬化させる際の硬化触媒として作用するとともに、化合物Aの経時的な収縮抑制剤として作用させるものであって、キレート性基を有する金属化合物である。
【0027】
化合物Bとしては、例えばアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物の他に、クロムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、錫アセチルアセトネート、鉄(III)アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネートなどが挙げられる。中でも、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物が好ましく、より好ましくはチタンキレート化合物を含む。金属キレート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0028】
アルミニウムキレート化合物としては、例えばアルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソプロポキシド−モノメチルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0029】
チタンキレート化合物としては、例えばチタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネートなどが挙げられる。中でも、β−ジケトン及び/又はβ−ケトエステルが配位したものが好ましく、より好ましくはアセチルアセトナート基及び/又はエチルアセトアセテート基を有するチタンキレート化合物を含む。このようなチタンキレート化合物は、例えば市場から入手することができる。市販例としては、例えばマツモトファインケミカル社製の「オルガチックス」シリーズ(例えばTC−400、TC−300、TC−310、TC−315など)などが挙げられる。TC−400はチタントリエタノールアミネートを含み、TC−300はチタンラクテートアンモニウム塩を含み、TC−310及びTC−315はチタンラクテートを含む。
【0030】
本実施形態では、硬化性組成物中での化合物Bの配合比率は、100重量部の化合物Aに対して、好ましくは75重量部以上、より好ましくは80重量部以上、さらに好ましくは90重量部以上、最も好ましくは100重量部以上である。
【0031】
化合物Bを化合物Aの硬化触媒としてのみ作用させるのであれば、化合物Bの配合量を従来構成のごとく、被膜形成のための主剤(化合物A)100重量部に対して例えば20重量部以下と少ない量で配合すればよい。しかしながら本実施形態では、75重量部以上という比較的過剰の化合物Bを配合する。過剰の化合物Bを配合するのは、その一部(例えば20重量部程度以下)を、本実施形態の硬化性組成物を用いて被膜を形成する際に、化合物Aの硬化触媒として作用させるとともに、その化合物Bの残部(例えば55重量部程度以上)を形成後の被膜の経時的な収縮抑制に用いようとするためである。
【0032】
なお、過剰の化合物Bを硬化性組成物中へ配合することで、形成後の被膜の経時的な収縮抑制に寄与できる理由は必ずしも明らかではない。思うに、被膜が形成された後に当該被膜が経時的に収縮するのは、硬化後(被膜形成後)にも化合物Aの重縮合反応が進行しているからではないかと推測される。そこで本発明者らは、被膜形成後に重縮合反応の進行を抑制可能な材料について検討を重ねた。その結果、化合物Bを過剰に配合することで、余剰の化合物Bを被膜内に存在させ、この余剰分を被膜形成後の化合物Aの重縮合反応の進行抑制に利用することにより、形成後の被膜収縮を防止することができることを見出した。形成後の被膜収縮を防止できることで、形成後の被膜へのひび割れの発生が防止される。
【0033】
その一方で、化合物Bの配合比率が多すぎると、形成後の被膜が硬度不足となり、その結果、その上に設けることとなる光触媒層などの無機系機能層(後述)に衝撃が少しでも加わると、この無機系機能層が割れやすくなるとの不都合を生じうる。このため、本実施形態では、化合物Bの配合比率を、100重量部の化合物Aに対して、金属成分換算で、好ましくは150重量部以下、より好ましくは140重量部以下、さらに好ましくは130重量部以下とする。
【0034】
《化合物C》
本実施形態では、化合物A及び化合物Bとともに、硬化性組成物中へ、化合物A以外のケイ素酸化物(以下「化合物C」と略記する。)をさらに配合することができる。化合物Cをさらに配合することで、化合物Bとの相乗効果により、形成後の被膜収縮をより一層効果的に防止することができ、被膜へのひび割れ発生の防止効果の向上が期待される。
【0035】
本実施形態で用いられる化合物Cとしては、コロイダルシリカなどの二酸化珪素などが挙げられる。中でも、コロイダルシリカを含むことが好ましい。
【0036】
コロイダルシリカは、コロイドシリカ、コロイド珪酸ともいう。水中では、水和によって表面にSi−OH基を有する酸化ケイ素のコロイド懸濁液をいう。珪酸ナトリウムの水溶液に塩酸を加えると生成する。粒子の組成は不定で、シロキサン結合(−Si−O−、−Si−O−Si−)を形成し、高分子化しているものもある。粒子の表面は多孔性である。
【0037】
上述した化合物Aとして、その好ましい一例としての化合物A1を用いる場合を例示すると、コロイダルシリカの添加方法は、例えば、化合物A1に添加してもよく、あるいは化合物A1を得る(加水分解させる)際に予め混合してから加水分解縮合させてもよい。また、水分散コロイダルシリカの場合、化合物A1を得る際に必要な水の一部もしくは全部として、水分散コロイダルシリカ中の水を利用して加水分解してもよい。
【0038】
水分散コロイダルシリカとしては、例えば日産化学工業社製の「スノーテックス」シリーズ(例えばO、OS、C、20など)や、日揮触媒化成社製の「カタロイド」シリーズ(例えばSN、SA、SI−30など)などが挙げられる。
【0039】
有機溶剤に分散したコロイダルシリカの有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン/n−ブタノールの混合物などが挙げられる。
【0040】
有機溶剤分散コロイダルシリカとしては、例えばPMA−ST、MEK−ST、MIBK−ST、IPA−ST−L、IPA−ST−MS、EG−ST−ZL、DMAC−ST−ZL、XBA−ST(何れも日産化学工業社)、OSCAL1132、1332、1532、1722、ELCOM ST−1003SIV(何れも日揮触媒化成社)などが挙げられる。
【0041】
コロイダルシリカは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
本実施形態では、組成物中又は被膜中での分散性と透明性などを考慮すると、コロイダルシリカの一次粒子径は、好ましくは0.5〜100nm程度とし、より好ましくは2〜50nm程度、さらに好ましくは15〜35nm程度とする。一次粒子径が大きすぎると、コロイダルシリカの硬化性組成物中での分散安定性が低下したり、被膜が形成された際の透明性が低下するおそれがある。
【0043】
水又は有機溶剤に分散したコロイダルシリカ中のコロイダルシリカの割合は、特に限定されず、コロイダルシリカが5〜50質量%、特に10〜30質量%となるように水又は有機溶剤に分散されたものを用いることが好ましい。
【0044】
本実施形態では、硬化性組成物中での化合物Cの配合比率は特に限定されないが、100重量部の化合物Aに対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは1.5重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上である。化合物Cの配合比率が少なすぎると、化合物Bとの相乗効果が期待できない。その一方で、化合物Cの配合比率が多すぎると、形成後の被膜のヘーズ値が向上し、透過率が低下するなどの不都合を生じうる。このため、本実施形態では、化合物Cの配合比率を、100重量部の化合物Aに対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは13重量部以下、さらに好ましくは11重量部以下とすることができる。
【0045】
《化合物D》
本実施形態では、化合物A及び化合物Bとともに、硬化性組成物中へメチレン鎖(−(CH)n−)を持つ無機架橋剤(以下「化合物D」と略記する。)をさらに配合することができる。化合物Dをさらに配合することで、その化合物Dの分子構造中に存在するメチレン鎖がバネとして作用し、被膜の収縮又は膨張に対して該被膜内部に生じる応力を緩和させることができる。これにより、被膜へのひび割れ発生の防止効果の向上が期待される。
【0046】
本実施形態で用いられる化合物Dとしては、シリケートモノマーを加水分解することにより得られる化合物(オリゴマー)や、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
シリケートモノマーとしては、例えば、アルコキシシラン(例えばテトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランなど)などが挙げられる。
【0048】
加水分解の反応は、公知の方法により行うことができる。例えばアルコキシシランは反応により加水分解し、続いて縮合反応が起こり、シリケートオリゴマーが得られる。
【0049】
シリケートオリゴマーの平均重合度は、例えば10〜100程度、好ましくは20〜80程度である。
【0050】
本実施形態で用いられるシリケートオリゴマーは、部分加水分解物でもよいが好ましくは完全加水分解物を用いる。
【0051】
本実施形態で用いられるシリケートオリゴマーは、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有する有機化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独または上記シリケートオリゴマーと併用することも可能である。
【0052】
本実施形態で用いられるシリケートオリゴマーの好ましい例としては、エトキシカルボシロキサンオリゴマー(例えばバイエル・マテリアルサイエンス社製の商品名:Bayresit VPLS2331)などが挙げられる。
【0053】
本実施形態では、以上例示した化合物Dを、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0054】
本実施形態では、硬化性組成物中での化合物Dの配合比率は特に限定されないが、100重量部の化合物Aに対して、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上である。化合物Dの配合比率が少なすぎると、化合物D中のメチレン鎖が発揮しうる作用を期待できない。その一方で、化合物Dの配合比率が多すぎると、塗膜が硬化不足となる他、化合物Dが上層表面にブリードアウトし、塗膜表面を撥水性とする不都合を生じうる。このため、本実施形態では、化合物Dの配合比率を、100重量部の化合物Aに対して、好ましくは120重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは80重量部以下とすることができる。
【0055】
《その他の化合物》
本実施形態の硬化性組成物には、上記発明の効果を阻害しない範囲であれば、化合物A〜Dの他に、必要に応じて、添加成分を適宜配合することもできる。
【0056】
添加成分としては、例えば、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0057】
本実施形態の硬化性組成物は、通常は塗工液の形態で実現される。例えば、上述した化合物A及び化合物B(必要に応じてさらに化合物C及び/又は化合物D)を、有機溶剤などの希釈溶媒で溶解または分散させた後、必要に応じて添加剤を加えることで、塗工液を調製することができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、エーテル類(例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えばジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)が挙げられる。
【0058】
《硬化物》
本実施形態の硬化物は、上述した硬化性組成物を所望の被塗布対象に塗布し、硬化させることにより得ることができる。
【0059】
被塗布対象としては、フィルム基材などが挙げられる。フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ETFEなどのフッ素系などの各種プラスチックフィルムが挙げられる。フィルム基材の厚みは特に限定されず、例えば6μm〜2mm程度とし、好ましくは12〜200μm程度とする。
【0060】
本実施形態では、硬化物との接着性を向上させる目的で、フィルム基材表面に易接着処理が施してあってもよい。易接着処理としては、例えばプラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、下引き易接着層の形成等が挙げられる。
【0061】
なお、フィルム基材には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、顔料や紫外線吸収剤をはじめ、本実施形態の硬化性組成物に含有させうる添加剤と同様の添加剤を含有させてもよい。
【0062】
被塗布対象に対する硬化性組成物の塗布(コーティング)は、常法によって行えばよく、例えばバーコート、ダイコート、ブレードコート、スピンコート、ロールコート、グラビアコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーン印刷、刷毛塗りなどを挙げることができる。
【0063】
本実施形態では、塗布後の塗膜の厚みが、乾燥、硬化後に、所定厚みとなるように塗布する。硬化性組成物を被塗布対象に塗布したら、塗布後の塗膜を50〜120℃程度で乾燥させることが好ましい。
【0064】
硬化性組成物の硬化は、塗布後の塗膜に対して、熱によるキュアリングによって行うことができる。その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。常温で所定時間放置することによっても行うことができる。
【0065】
《積層体》
図1に示すように、本実施形態の積層体10は、被塗布対象としてのフィルム基材11を有する。フィルム基材11の上には、アンダーコート層12を介して、無機系機能層の一例としての光触媒層13が形成されている。アンダーコート層12をフィルム基材11と光触媒層13の間に設けることで、光触媒層13の有機物分解作用によってフィルム基材11の分解が防止される。
【0066】
本実施形態のアンダーコート層(被膜)12は、本実施形態の硬化性組成物の硬化物で構成してある。従って、当該層のひび割れの発生が防止されている(上記参照)。
【0067】
本発明者らは、アンダーコート層12の厚みとひび割れ発生との関係を検討した結果、従来構成のごとく硬化性組成物中での化合物Bの配合量を、化合物A100重量部に対して例えば20重量部以下と少ない量で配合する場合、所定厚みt0(例えば40nm)を超えると、ひび割れを発生しやすくなる。これは、従来構成の被膜ではその厚みが所定厚みt0を超えると、ひび割れに関わる被膜内部の応力が大きくなるからであると推測される。これに対し本実施形態では、上述したように、硬化性組成物中に50重量部以上という比較的過剰の化合物Bを配合する。これにより、ひび割れに関わる被膜内部の応力が大きくなる被膜厚みを厚膜側へシフトさせることができる。つまり通常よりも厚みが厚くなっても、本実施形態の硬化性組成物の硬化物で構成されるアンダーコート層12には、ひび割れが生じにくい。具体的には、本実施形態のアンダーコート層12では、その厚み(t)を40nm以上、好ましくは50nm以上としても、ひび割れを生じないようにすることができる。これにより、従来構成と比較してアンダーコート層12を厚膜で形成できるので、光触媒層13の有機物分解作用によってフィルム基材11の分解をより一層確実に防止することができるとともに、表裏面に存在するフィルム基材11及び光触媒層13との密着性を確保することが容易である。
【0068】
その一方で、厚みtが厚膜すぎると、ひび割れを生じやすくなるとの不都合を生じうる。このため、本実施形態では、アンダーコート層12の厚みtを、好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下とする。
【0069】
本実施形態で用いられる、無機系機能層の一例としての光触媒層13は、光触媒活性を発現する物質(光触媒性材料)を含有する。なお、「光触媒活性」とは、結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギーの光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)を生じ、伝導電子と正孔を生成しうる物質の性質を意味する。
【0070】
光触媒性材料としては、例えば、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型)、酸化錫、酸化亜鉛、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウム等が挙げられるが、中でも酸化チタンが好ましく、特にアナターゼ型酸化チタンやルチル型酸化チタンが好適に用いられる。
【0071】
光触媒の光励起に用いる光源としては、例えば、太陽光、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、殺菌灯、誘蛾灯などが挙げられる。
【0072】
本実施形態の光触媒層13は、上述した光触媒性材料のみで構成されてもよいが、当該材料をバインダにて結着させて構成することが好ましい。
【0073】
バインダとしては、光触媒の光励起による触媒活性効果のうち有機物の分解に耐えられるものが使用される。このようなものとしては、例えばフッ素系樹脂や無機系バインダーを主成分とするものなどが挙げられる。
【0074】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4、6フッ化)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体などが挙げられる。
【0075】
無機系バインダーとしては、ケイ素系化合物からなるバインダー、ジルコニウム系化合物からなるバインダー、アルミニウム系化合物からなるバインダー、チタン系化合物からなるバインダーなどが挙げられる。中でも、シリカ系やシリコーン系などのケイ素系化合物を含むことが好ましい。ケイ素系化合物は、比較的安価で種類が豊富であり、また、透明性が求められる用途に用いる場合には比較的無色で透明性に優れているからである。
【0076】
ケイ素系化合物としては、例えば、加水分解性シラン誘導体;上記加水分解性シラン誘導体の部分加水分解及び脱水縮重合、又は上記加水分解性シラン誘導体の部分加水分解物と、アルコキシシランの部分加水分解物との脱水縮重合により調製したもの;シリコーン樹脂;などが挙げられる。
【0077】
光触媒層13は、バインダーがフッ素系樹脂、またはシリコーン系樹脂の場合は、フッ素系樹脂、またはシリコーン系樹脂と、光触媒性材料とを混合して光触媒層13用塗布液を調整し、従来公知のコーティング方法(例えば、バーコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ディップコーター、スプレー、スクリーン印刷など)によって、塗布、乾燥した後、硬化させることにより形成することができる。
【0078】
光触媒層13のバインダーがシリコーン系樹脂以外の無機系バインダーの場合は、例えばアルコキシシラン(ケイ素アルコキシド)を加水分解して調製した酸化ケイ素ゾル、またはジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド等のケイ素以外の金属アルコキシドを加水分解して調製した金属酸化物ゾルと、光触媒性材料を混合して、光触媒層13用塗布液を調整し、従来公知のコーティング方法によって、塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0079】
光触媒層13のバインダーが無機系バインダーである場合の他の形成方法としては、例えばアルコキシシラン、またはケイ素以外の金属アルコキシドと、光触媒性材料を混合した後に加水分解させて光触媒層13用塗布液を調整し、塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0080】
光触媒層13中のバインダーと光触媒性材料との含有比は特に制限されることはないが、バインダー100重量部に対し、光触媒性材料が50〜300重量部であることが好ましい。光触媒性材料の量を50重量部以上とすることにより、光触媒活性を十分なものとすることができ、300重量部以下とすることにより、アンダーコート層12、あるいはフィルム基材11との接着性が低下するのを防止することができる。
【0081】
なお、光触媒層13には、上記発明の効果を阻害しない範囲であれば、シランカップリング剤や、Ag、Cu、Zn等の抗菌性金属、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os等の白金族金属を添加することができる。
【0082】
光触媒層13の厚みとしては、特に限定されないが、薄すぎると十分な光触媒性能を発現し難くなり、厚すぎるとクラックや白化など外観上の不具合が発生しやすくなるうえ、性能は一定の厚み以上であまり変わらなくなりコスト高となるため、0.01〜3μm程度、さらには0.05〜1μm程度とすることが好ましい。
【0083】
図1に示す本実施形態の積層体10は、各種屋外、屋内用ディスプレイ用、建築材料用、結露防止用などの表面保護用として好適に用いられる。
【0084】
以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0085】
本実施形態では、無機系機能層として光触媒層13を例示したが、これに限定されず、例えばガスバリア層やインクジェット受容層などに適用することもできる。
【0086】
本実施形態では、フィルム基材11とアンダーコート層12の間に、あるいはフィルム基材11のアンダーコート層12及び光触媒層13とは反対側の面に、他の機能層を積層してもよい。他の機能層としては、例えば熱線反射層、紫外線吸収層(紫外線吸収特性を発現する層)、粘着層などが挙げられる。
【0087】
本実施形態では、さらに前記他の機能層の上に接着層を設けることもできる。接着層としては、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤などの感圧接着剤、ホットメルト接着剤などの接着剤の他、熱圧着可能な熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることができる。感圧接着剤を用いる場合、接着層上には、積層体10の取り扱い性を損なわないようにセパレータを貼り合わせておくこともできる。セパレータとしては、各種合成樹脂フィルムに離型処理を施したものなどが使用される。
【実施例】
【0088】
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。但し、上記発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0089】
《実験例1〜16》
(1)まず、下記に示す化合物の溶液を準備した。
【0090】
・ケイ素系化合物(化合物A)の溶液として、加水分解性シラン誘導体の部分加水分解物を主成分とする「コルコートN103X(固形分2%、コルコート社)」を用いた。
【0091】
・金属キレート化合物(化合物B)の溶液として、チタンキレート化合物を主成分とする「オルガチックスTC−310(固形分44%、チタン含有量8.1%、マツモトファインケミカル社)」を用いた。
【0092】
・ケイ素化合物(化合物C)の溶液として、コロイダルシリカを主成分とする「IPA−ST−L(固形分30%、日産化学工業社)」を用いた。
【0093】
・無機架橋剤(化合物D)として、エトキシカルボシロキサンオリゴマーで構成される「Bayresit VPLS2331(固形分100%、バイエル・マテリアルサイエンス社)」を用いた。
【0094】
(2)次に、前記各化合物を表1〜4に示す固形分配合割合となるように配合し、アンダーコート層用の塗布液1(硬化性組成物)を調製した。なお、塗布液1の調製には、化合物A〜Dの共通溶媒として、イソプロパノール32部と、n−ブタノール27部を用いた。
【0095】
また、塗布液1とともに、光触媒層用の塗布液2を調製した。
【0096】
<塗布液2の処方>
・ケイ素系化合物の溶液 6部
(コルコートN103X、固形分2%、コルコート社)
・酸化チタン顔料分散液 0.7部
(フォトペークMPT−427、固形分20%、石原産業社)
・イソプロパノール 17部
・n−ブタノール 17部
【0097】
(3)次に、調製した塗布液1を、被塗布対象としてのポリエステルフィルム(ルミラー、東レ社)の一方の面にバーコーター法により塗布し、乾燥させて厚み50nmの塗膜を形成した(アンダーコート層の形成)。
【0098】
次に、形成した塗膜に対し、その上に、調製した塗布液2をバーコーター法により塗布し、乾燥させて厚み60nmの塗膜を形成し(光触媒層の形成)、各実験例毎に、積層体試料を得た。
【0099】
《特性の評価》
上記実験例1〜16により得られた積層体試料について、下記特性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
(1)耐ひび割れ(クラック)性
積層体試料の耐ひび割れ性は、光学顕微鏡(400倍)を用いて塗膜面を観察し、視野(直径0.5mmの円)中にひび割れがいくつ観察できるかを目視により判定した。その結果、ひび割れをまったく確認できなかったもの(ひび割れなし)を「○」、1〜3本のひび割れを確認できたもの(多少ありも問題なし)を「△」、4本以上のひび割れを確認できたもの(ひび割れあり)を「×」として評価した。
【0101】
(2)ヘーズ値
すべての積層体試料に対し、ヘーズメータNDH2000(日本電色工業社)を用いてヘーズ値「%」(JIS−K7105)を測定した。その結果、ヘーズ値が1%以下のもの(ヘーズ上昇なし)を「○」、1%付近で値がばらつく場合を「△」、1%を超えたもの(ヘーズ上昇あり)を「×」として評価した。
【0102】
(3)塗膜の密着特性
積層体試料中の塗膜の密着性は、碁盤目テープ法(JIS−K5600−5,6)により評価した。碁盤目テープ法による剥離試験の結果、碁盤目部分が全く剥離しなかったものを「○」、碁盤目部分の一部が僅かに剥離しかかっているが剥離はしていないものを「△」、碁盤目部分の一部が剥離してしまったものを「×」として評価した。
【0103】
(4)光触媒層表面の濡れ性
積層体試料の光触媒層の水に対する接触角を評価した。水に対する接触角は、JIS−R3257に準拠した方法(ぬれ性試験)で測定される値を用いた。具体的には、試験台に積層体試料を載置し、その光触媒層側に蒸留水を滴下し、静置した状態で水滴の接触角を自動接触角計(DM500、協和界面科学社)を用いて光学的に測定することにより、水に対する接触角を求めた。その結果、接触角が20度以下であったものを「○」、20度を超えたものを「×」として評価した。
【0104】
【表1】

【0105】
表1に示すように、化合物Bの配合量が75部未満であると(実験例1)、アンダーコート層にひび割れを生じるとともに、試料全体としてのヘーズ値の上昇が認められる。また化合物Bの配合量が150部超であると(実験例5)、アンダーコート層にひび割れを生じかけ、試料全体としてのヘーズ値の上昇が始まるとともに、塗膜の密着性が低下する。これに対し、化合物Bの配合量が75〜150部であると(実験例2〜4)、アンダーコート層にひび割れを生じず、これに伴い、ヘーズ値の上昇が認められず、十分な密着性を有することが確認できた。
【0106】
【表2】

【0107】
表2に示すように、化合物Cを適量で配合した場合(実験例6〜9)、実験例2〜4と同様の効果が得られることが認められた。
【0108】
【表3】

【0109】
表3に示すように、化合物Dを適量で配合した場合(実験例10〜13)、実験例2〜4と同様の効果が得られることが認められた。これに加え、何れの実験例3,10〜13)も化合物Bが75〜150部の範囲で配合されているので、アンダーコート層の上に形成される光触媒層に対して十分な濡れ性を発揮させることができることが認められた。
【0110】
【表4】

【0111】
表4に示すように、化合物C及び化合物Dの一方を配合せず(実験例14,15)、あるいはその双方を配合しなかった場合でも(実験例16)、化合物Bが適正量で配合されていれば(実験例3)、同様の効果が得られることが確認できた。
【0112】
《実験例17》
コルコートN103Xの代わりに、コルコートP(ケイ素系化合物溶液、固形分2%、コルコート社)を用いた以外は、実験例3と同様の条件で塗布液を調製し、積層体試料を得た。そして実験例3と同様の測定及び評価を行ったが、実験例3と同様の結果が得られた。
【0113】
《実験例18》
オルガチックスTC−310の代わりに、オルガチックスTC−300(チタンキレート化合物溶液、固形分42%、マツモトファインケミカル社)を用いた以外は、実験例3と同様の条件で塗布液を調製し、積層体試料を得た。そして実験例3と同様の測定及び評価を行ったが、実験例3と同様の結果が得られた。
【0114】
《実験例19》
IPA−ST−Lの代わりに、PL−1−IPA(ケイ素酸化物溶液、固形分12%、コロイダルシリカ、扶桑化学工業社)を用いた以外は、実験例3と同様の条件で塗布液を調製し、積層体試料を得た。そして実験例3と同様の測定及び評価を行ったが、実験例3と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0115】
10…積層体、11…フィルム基材、12…アンダーコート層、13…光触媒層(無機系機能層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素系化合物及び金属キレート化合物を含有する硬化性組成物であって、
前記金属キレート化合物の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して75重量部以上であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1記載の硬化性組成物において、
前記金属キレート化合物の比率が、150重量部以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性組成物において、
前記ケイ素系化合物は、加水分解性シラン誘導体、前記加水分解性シラン誘導体の加水分解物及び前記加水分解物の縮合物から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項記載の硬化性組成物において、
前記ケイ素系化合物は、側鎖または末端に水酸基を有する加水分解性シラン誘導体の部分加水分解物を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項記載の硬化性組成物において、
前記金属キレート化合物が、チタンキレート化合物を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項記載の硬化性組成物において、
ケイ素酸化物をさらに含有し、前記ケイ素酸化物の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して1〜15重量部であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化性組成物において、
前記ケイ素酸化物は、コロイダルシリカを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載の硬化性組成物において、
メチレン鎖を持つ無機架橋剤をさらに含有し、前記無機架橋剤の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して5重量部以上であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項9】
請求項8記載の硬化性組成物において、
前記無機架橋剤の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して120重量部以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項10】
請求項8又は9記載の硬化性組成物において、
前記無機架橋剤は、シリケートオリゴマーを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか一項記載の硬化性組成物において、
前記無機架橋剤は、カルボシロキサンオリゴマーを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項12】
硬化性組成物を硬化させてなる硬化物であって、
前記硬化性組成物は、ケイ素系化合物及び金属キレート化合物を含有し、
前記金属キレート化合物の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して75重量部以上であることを特徴とする硬化物。
【請求項13】
硬化性組成物を硬化させてなる硬化物で構成される被膜を介して、基材の上に無機系機能層を有する積層体であって、
前記被膜の厚みが40nm以上で形成してあり、
前記硬化性組成物は、ケイ素系化合物及び金属キレート化合物を含有し、
前記金属キレート化合物の比率が、100重量部の前記ケイ素系化合物に対して75重量部以上であることを特徴とする積層体。
【請求項14】
請求項13記載の積層体において、
前記無機系機能層が光触媒活性を発現する光触媒層であることを特徴とする積層体。
【請求項15】
請求項13又は14記載の積層体において、
紫外線吸収特性を発現する層を介して、前記基材の上に前記被膜を有することを特徴とする積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235639(P2010−235639A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81776(P2009−81776)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】