説明

硬化性組成物およびその使用

【課題】硬化性組成物を提供する。
【解決手段】ポリマー、例えば、アクリル酸ホモポリマーおよびコポリマー、多塩基性酸並びに強酸を含み、ガラス繊維を含むがこれに限定されるものではない基体の結合剤として有用な組成物。当該組成物は、(A)以下からなる群より選択されるポリマー組成物(1)約1000ないし約5,000の数平均分子量を有するポリカルボキシポリマー、およびポリオール、(2)約1000ないし約5,000の数平均分子量を有するヒドロキシ官能性、カルボキシ官能性ポリマー、または(3)約1000ないし約5,000の数平均分子量を有するアミン官能性、カルボキシ官能性ポリマー;(B)約500未満の分子量を有する、多塩基性カルボン酸、またはそれらの無水物もしくは塩;(C)強酸;並びに(D)水;を含み、該組成物のpHは3.5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物、および基体処理のためのその使用、並びに、耐熱性不織布、木材含有物品および粉末塗装物品を含む、その組成物で調製された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボン酸ポリマーおよびコポリマー並びにそれらを含有する配合物は、様々な不織「布」(例えば、ガラス繊維マットおよび絶縁体)並びに木材小片および繊維のための結合剤として有用である。そのような組成物は、実際の、または認知された健康の問題のためにホルムアルデヒドベースの結合剤を避ける傾向をふまえて、フェノールホルムアルデヒド結合剤の代替物としてその用途において特に有用である。
【0003】
ポリカルボン酸ベースの結合剤系は、様々な理由のため、ホルムアルデヒドベースの結合剤系よりも経費がかかる。ポリカルボン酸ベースの結合剤系はより高価な原料を用い、ホルムアルデヒドベース系などよりもファイバーグラス製造機器を腐食する傾向にある。したがって、ホルムアルデヒドベースの結合剤とよりコスト上の競争力があるポリカルボン酸ベースの結合剤系を製造するため、費用節減の原因に関わりなく、ポリカルボン酸ベースの結合剤系の使用に導入することができる任意のコストベネフィットが歓迎される。
【0004】
ポリカルボン酸ベースの系によって生じる腐食の理由の1つは、Taylorの米国特許第6,331,350号に記載される理由で、そのような結合剤で製造されるガラス繊維製品の物理的特性が鉱酸の添加で改善されることである。鉱酸は、もちろん、さらに腐食に寄与する。
【0005】
経費の削減を試みるため、Chenの米国特許第6,699,945号および米国特許出願公開第2003/0153690号において教示されるような、ポリカルボン酸ベースの結合剤系への特定の多酸モノマー(1種類以上)の添加を含めて、他の様々な手段が示唆されている。
【特許文献1】米国特許第6,331,350号明細書
【特許文献2】米国特許第6,699,945号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0153690号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホルムアルデヒド系と比較してポリカルボキシポリマー系の使用における、総体的なより高い経費を相殺するのに、ポリカルボン酸ベースの系の経費削減に寄与し得る他のものが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硬化性組成物は:
(A)(1)約1000ないし約5000の数平均分子量を有するポリカルボキシポリマー、およびポリオール、
(2)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非ヒドロキシ官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するヒドロキシ官能性、カルボキシ官能性ポリマー、または
(3)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和アミン官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非アミン官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するアミン官能性、カルボキシ官能性ポリマー;
からなる群より選択されるポリマー組成物;
(B)約500未満の分子量を有する、多塩基性カルボン酸、またはそれらの無水物もしくは塩であって、該多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩の重量%がポリマー組成物(A)の重量の3ないし40%である、多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩;
(C)強酸;および
(D)全組成物の少なくとも20重量%の量の水;
を含み、該組成物のpHは3.5以下、好ましくは、2.5以下である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一態様において、この組成物は、ポリマーの熱硬化を助けることができる、リン含有酸のアルカリ金属塩を含む触媒をさらに含有する。
【0009】
代わりの態様においては、組成物中に用いられる強酸は無機酸、好ましくは、硫酸を含む。
【0010】
強酸および多塩基性酸を伴うそのような組成物の予期せぬ利点は、強酸または多塩基性酸のいずれかを欠く組成物とは対照的に、それらがより低い硬化エネルギーを有することである。より低い硬化エネルギーはより少ないエネルギー使用に換言され、これは経費を削減する。
【0011】
強酸および多塩基性酸を伴うそのような組成物の別の予期せぬ利点は、強酸または多塩基性酸のいずれかを欠く組成物と対照的に、それらがより低い粘性を有することである。より低い粘性は、不織材料上またはその内部に結合剤をより均一に広げることを可能にする粘性を達成するのに、結合剤組成物に多量の水を添加しないという選択を利用者が有することを意味する。水が少ないことは、その結合剤の熱硬化に先立って水を除去するのに必要なエネルギーがより低いことを意味する。粘性の低下は、(例えば、米国特許出願第09/871,467号に教示されるように)界面活性剤の使用を低減または排除する選択も提供し、これも経費をさらに削減する。
【0012】
本発明の組成物は、不織基体、例えば、ガラス繊維絶縁体のための結合剤として有用である。ガラス繊維絶縁体の場合、米国特許第5,318,990号(Strauss)に教示されるガラス繊維に適用することができる。
【0013】
本発明においては、硬化性組成物は、約500以下、最も好ましくは200以下の分子量を有する、少なくとも1種類の低分子量多塩基性カルボン酸、それらの無水物もしくは塩を含有する。「多塩基性酸」は、Hawley′s Condensed Chemical Dictionary, 14 Ed., 2002, John Wiley and Sons, Inc.において定義されるように、少なくとも2つの反応性酸官能基を有する酸を意味する。適切な低分子量多塩基性カルボン酸およびそれらの無水物の例には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、クエン酸、グルタル酸、酒石酸、イタコン酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリチン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、カルボン酸のオリゴマー等、およびそれらの塩が含まれる。任意に、多酸コポリマーと混合する前に、低分子量多塩基性カルボン酸、それらの無水物もしくは塩をヒドロキシル含有化合物と反応性条件下で混合することができる。
【0014】
本発明においては、硬化性組成物は少なくとも1種類の強酸を含有する。強酸で我々が指すものは、水に添加したときに完全に、またはほぼ完全に解離してH+イオンおよび共役塩基を生成する酸である。強酸の例には、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸および硫酸;並びに特定の有機酸、例えば、式:R−SOH(式中、Rは1ないし22個の炭素原子の、置換もしくは非置換ヒドロカルビル、6ないし22個の炭素原子の、置換もしくは非置換アリールである)によって表されるスルホン酸が含まれる。これらの酸の混合物も望ましい硬化速度および特性を得るのに用いることができる。強有機酸の例はp−トルエンスルホン酸である。同様に、ポリマー系スルホン酸、例えば、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリp−スチレンスルホン酸、ポリ(スルホプロピルメタクリレート)、ポリ(メタアリルスルホン酸)、ポリ(スルホン化スチレン)、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、およびポリ(アリルオキシベンゼンスルホン酸)、並びにそれらから誘導される上記コモノマーとのコポリマーが適切である。定義により、強酸はKa>1を有する。
【0015】
特定の態様において、硬化性組成物はリン含有種を含むことができ、このリン含有種はリン含有化合物、例えば、アルカリ金属次亜リン酸塩、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ金属ポリリン酸塩、アルカリ金属リン酸二水素塩、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸であり得、またはリン含有基を坦持するオリゴマーもしくはポリマー、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されるアクリル酸および/またはマレイン酸の付加ポリマー、付加ポリマー、例えば、エチレン性不飽和モノマーから亜リン酸塩連鎖移動剤もしくは停止剤の存在下において調製される本発明のポリマー、並びに酸官能性モノマー残基を含む付加ポリマー、例えば、共重合されたホスホエチルメタクリレート、および類似のホスホン酸エステル、並びに共重合されたビニルスルホン酸モノマー、およびそれらの塩であり得る。これらのリン含有種は、本発明のポリマーの重量を基準にして、0%ないし40%、好ましくは0%ないし5%、さらに好ましくは0%ないし2.5%、より好ましくは0%ないし1%、さらにより好ましくは0%ないし0.5重量%のレベルで用いることができる。
【0016】
我々の発明は上記組成物で被覆されている基体にも関する。「基体」に言及するとき、この組成物はガラス繊維絶縁体の結合剤として特に有用ではあるが、不織基体、特にはガラス繊維、に限定されるものではない。「基体」という単語は基層、本特許出願において請求される組成物とは異なる任意の物質の、下層をなす支持体の意味で用いられる。
【0017】
我々は、数平均分子量を、900ないし100万(具体的には、144、216、900、1510、1770、2925、4100、7500、16000、28000、47500、62900、115000、585400、782200、1100000)のピーク分子量の範囲のポリアクリル酸較正標準の16点シリーズで較正されたAgilent AQGPC HPLCを用いる水性GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定する。(「ピーク」という用語は、各々の標準が、数平均および重量平均分子量がほぼ同じである単分散であるために用いられる。)溶離液は20mMリン酸バッファpH7.0である。検出は屈折率である。カラムは直列のTosoh Bioscience TSKgel G21500PW×1およびGMPW×1であり、較正曲線はLogMW対溶出容積である。我々は、この技術が他所で報告される同様の技術に匹敵する結果をもたらすものと信じる。
【0018】
「ポリカルボキシポリマー」が指すものは、以下で説明されるタイプのポリカルボン酸ホモポリマーおよびコポリマーである。
【0019】
ポリカルボン酸ホモポリマー
本発明の実施において有用なポリカルボン酸ホモポリマーは様々な方法で製造することができる。それらを製造することができる方法のうちには、米国特許第6,136,916号において教示されるものがある。代わりの方法が米国特許第6,071,994号、第6,099,773号および第6,348,530号において教示される。そのような一般的な技術は公知であるため、我々は当該技術分野における当業者が本発明を実施できるようにするために一般スキームを提供する必要がない。しかしながら、以下で報告される我々の実験において我々が用いたポリアクリル酸ポリマーは下記実施例1における手順に従って製造する。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
ポリアクリル酸(「pAA」)ホモポリマーの調製
機械式攪拌機、凝縮器、熱電対並びにモノマー、鎖調節剤、および開始剤溶液を徐々に添加するための導入口を備える5リットル4首フラスコに46.2グラムの次亜リン酸ナトリウム一水和物および1079.7グラムの脱イオン水を添加する。フラスコの内容物を92℃に加熱する。精製アクリル酸の1710.0グラムのモノマー投入物を調製する。131.7グラムの脱イオン水に溶解した107.7グラムの次亜リン酸ナトリウム一水和物の鎖調節剤溶液を調製する。43.2グラムの脱イオン水に溶解した17.1グラムの過硫酸ナトリウムの開始剤溶液を調製する。加熱攪拌フラスコへのモノマー投入物、鎖調節剤溶液および開始剤溶液の別々の供給物の添加を同時に開始し、フラスコの内容物を92℃に維持しながら、それぞれ120分、105分、および120分間、別々に継続する。供給が完了した後、フラスコの内容物を92℃で30分間維持し、その後、585.0グラムの脱イオン水を添加してそのバッチを室温に冷却する。Mn=2700。
【0021】
本発明の組成物がポリカルボン酸ホモポリマーを用いるとき、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むポリオールも含有する。ポリオールは十分に非揮発性で、加熱および硬化操作の間、組成物中の多酸との反応に実質的に利用可能のままでなければならない。ポリオールは、約1000未満の分子量を有し、少なくとも2つのヒドロキシル基を坦持する化合物、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および特定の反応性ポリオール、例えば、ベータ−ヒドロキシアルキルアミド、例えば、米国特許第4,076,917号(これは参照により本明細書に組み込まれる)の教示に従って調製することができる、ビス−[N,N−ジ(ベータ−ヒドロキシエチル)]アジパミドであり得、または少なくとも2つのヒドロキシル基を含む付加ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解された酢酸ポリビニル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のホモポリマーもしくはコポリマーであり得る。
【0022】
ポリカルボン酸コポリマー
本発明の実施において有用なポリカルボン酸コポリマーは様々な方法で製造することができる。それらを製造することができる方法のうちには、米国仮特許出願第60636155号および第60553652号において教示されるものがある。ポリカルボン酸コポリマーを製造する他のより一般的な方法、例えば、米国特許第6,136,916号において教示されるものが存在する。そのような一般的な技術は公知であるため、我々は当該技術分野における当業者が本発明を実施できるようにするために一般スキームを提供する必要はない。しかしながら、本発明において特に有用なコポリマーは以下の実施例2−4に従って調製される。
【0023】
(実施例2)
溶液重合によるポリ(92アクリル酸/8スチレン)の調製
ポリ(アクリル酸/スチレン)コポリマーを、半連続的溶液重合法により、4首を有し、機械式攪拌機、凝縮器、温度制御装置、開始剤供給ラインおよび窒素導入口を備える1リットル丸底フラスコ内で調製する。表1はケトル成分の指定量である。脱イオン水およびイソプロパノールを含有する第1ケトル供給混合物をケトルに供給し、窒素パージの下で攪拌しつつ83℃に加熱する。83℃に到達後直ちに、フェニルホスホン酸およびスチレンを含有する第2ケトル供給混合物を攪拌しながら反応フラスコに導入する。アクリル酸およびスチレンモノマー混合物、過硫酸ナトリウムおよび脱イオン水を含有する開始剤混合物を120分間にわたって別々に同時供給する。連鎖移動剤溶液を30分にわたって流す。反応は82℃で行わせる。供給の完了後直ちに、反応混合物を反応温度で30分間維持する。その後、すべてのイソプロパノールが留去されるまで、反応物を100℃に加熱する。この間に脱イオン水を添加する。生じるコポリマーを、固形分および水性サイズ排除クロマトグラフィーにより分子量について特徴付ける。生じるポリマーのMnは2100である。
【0024】
(実施例3および4)
漸次的添加溶液重合によるポリ(90アクリル酸/10ブチルアクリレート)の調製
ポリ(アクリル酸/ブチルアクリレート)コポリマーを、半連続溶液重合法により、4首を有し、機械式攪拌機、凝縮器、温度制御装置、開始剤供給ラインおよび窒素導入口を備える5リットル丸底フラスコ内で調製する。表1はケトル成分の指定量である。脱イオン水の第1ケトル供給物を、窒素パージの下で攪拌しながら、73℃に加熱する。73℃に到達後直ちに、FeSO、メタ重亜硫酸ナトリウム、および脱イオン水を含有する第2ケトル供給混合物を、攪拌しながら、反応フラスコに導入する。アクリル酸、ブチルアクリレートおよび脱イオン水モノマー混合物を120分にわたって同時供給し;過硫酸ナトリウムおよび脱イオン水を含有する開始剤混合物を122分にわたって同時供給し;並びに、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび脱イオン水を含有するメタ重亜硫酸ナトリウム混合物を115分にわたって同時供給する。反応は73℃で行わせる。供給の完了後直ちに、反応混合物を反応温度で20分間維持する。20分の保持の後、反応物を65℃に冷却し、次いで脱イオン水を添加する。生じるコポリマーを、固形分および水性サイズ排除クロマトグラフィーにより分子量について特徴付ける。
【0025】
【表1】

【0026】
本発明の組成物がポリカルボン酸コポリマーを用いるとき、ホモポリマーに関連して上述されるタイプの、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むポリオールも含有する。
【0027】
ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマー
本発明の配合物において有用な水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーのタイプの1つには、例えば米国特許出願公開第2004/0033747号に教示されるように、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和ヒドロキシモノマー、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、連鎖移動剤、および、任意に、フリーラジカル開始剤の反応生成物が含まれる。水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーは溶液、分散液、エマルジョンまたは懸濁液の形態であり得る。水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーは水系であり、好ましくは、フリーラジカル溶液重合によって調製される。他の適切な重合技術には、例えば、エマルジョン重合および懸濁重合技術が含まれる。エマルジョン重合には、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびそれらの組み合わせを用いることができる。好ましくは、水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーはランダムコポリマーである。
【0028】
水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーは、好ましくは、少なくとも300mgKOH/g乾燥物質(すなわち、水性溶液ポリマー組成物中に存在する乾燥ポリマーおよび残留固体)の酸価、幾つかの態様においては少なくとも380mgKOH/g乾燥物質、他の態様においては少なくとも450mgKOH/g乾燥物質、他の態様においては少なくとも500mgKOH/g乾燥物質、他の態様においては780mgKOH/g乾燥物質以下、他の態様においては710mgKOH/g乾燥物質以下、他の態様においては650mgKOH/g乾燥物質以下、他の態様においては600mgKOH/g乾燥物質以下の酸価を有する。
【0029】
有用なアルファ,ベータ−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマーには、例えば、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノヒドロキシ官能性モノマー、例えば、ヒドロキシアルキルアクリレートモノマー(例えば、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートが含まれる)およびヒドロキシアルキルメタクリレート、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和ポリヒドロキシモノマー(例えば、ポリエチレングリコールモノメタクリレートが含まれる)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0030】
水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーは、好ましくは、少なくとも5重量%、他の態様においては10重量%、他の態様においては少なくとも20重量%、幾つかの態様においては少なくとも25重量%、他の態様においては75重量%以下、他の態様においては50重量%以下、他の態様においては45重量%以下の量の、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマーから調製される。
【0031】
適切なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーには、例えば、アクリル酸、精製アクリル酸、メタクリル酸、イソオクチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、アルファ,ベータ−メチレングルタル酸、無水メタクリル酸、無水イソオクチルアクリル酸、無水クロトン酸、無水フマル酸、および無水マレイン酸が含まれる。
【0032】
ポリマーは、好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーを100重量%未満、幾つかの態様においては98重量%以下、他の態様においては90重量%以下、他の態様においては80重量%以下、他の態様においては75重量%以下、他の態様においては少なくとも30重量%、他の態様においては少なくとも40重量%、他の態様においては少なくとも50重量%、他の態様においては少なくとも60重量%、他の態様においては少なくとも65重量%の量含む。
【0033】
適切な連鎖移動剤には、例えば、次亜リン酸ナトリウム、チオグリコール酸、メルカプタン(これには、例えば、一級オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、イソ−オクチルチオグリコレート、2ないし8個の炭素原子を有するメルカプトカルボン酸、およびそれらのエステル(その例には3−メルカプトプロピオン酸および2−メルカプトプロピオン酸が含まれる)が含まれる)ハロゲン化炭化水素(これには、例えば、炭素ブロモ化合物(例えば、四臭化炭素およびブロモトリクロロメタン)が含まれる)およびそれらの組み合わせが含まれる。連鎖移動剤はヒドロキシ官能性ポリカルボン酸ポリマーの形成に用いられる混合物中に、モノマー重量を基準にして、5重量%以下、好ましくは1重量%ないし約4重量%、より好ましくは1重量%ないし約3重量%の量で存在することができる。
【0034】
適切なフリーラジカル開始剤には、酸化剤(これには、水溶性ペルオキシ化合物、例えば、過酸化水素、t−ブチル−ヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、t−ブチルペルネオデカノエート、t−ブチルペルネオヘキサノエート、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、過安息香酸t−ブチル、過ピバル酸t−ブチル、ピバル酸t−ブチル、過ピバル酸t−アミル、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキソジカーボネート、ジベンゾイルペルオキソジカーボネート、ジラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドが含まれる);水溶性無機過硫酸塩(これには、例えば、過硫酸アンモニア、過硫酸リチウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが含まれる);水溶性アゾ化合物(これには、例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノ酪酸)もしくはその塩、アゾジイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、および2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルが含まれる)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
フリーラジカル開始剤は、反応混合物中に、反応容器に投入されるモノマー(1種類以上)の重量を基準にして、10重量%以下の量で存在することができる。
【0036】
フリーラジカル開始剤は、酸化剤および還元剤を含む開始剤系の一部であり得る。適切な還元剤には、例えば、ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウム、第一鉄塩、ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸並びにアスコルビン酸およびエリソルビン酸のナトリウム塩、並びにそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
開始剤系は、例えば鉄、コバルト、ニッケル、銅、バナジウムおよびマンガンの塩を含む、遷移金属触媒を含むこともできる。適切な触媒の例には、硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)、塩化銅(I)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0038】
開始剤系(すなわち、酸化剤および、存在する場合には、還元剤および触媒を含む)の量は、反応容器に投入されるモノマー(1種類以上)の重量を基準にして、0.01重量%ないし20重量%である。
【0039】
ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーが調製される反応混合物は、好ましくは、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和非ヒドロキシ官能性非カルボキシ官能性モノマー、すなわち、少なくとも1つのヒドロキシ官能基およびカルボキシ官能基を含まないアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーを含有しない。存在する場合、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和非ヒドロキシ官能性非カルボキシ官能性モノマーは、好ましくは、ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーの重量を基準にして、50重量%未満の量で存在する。
【0040】
水性組成物の縮合促進剤はポリマー硬化として生じる縮合反応を加速させる。適切な縮合促進剤には、例えば、リン系触媒、例えば、次亜リン酸ナトリウムおよびリン酸が含まれる;パラトルエンスルホン酸、任意の強酸、例えば、塩酸、硫酸、トリクロロ酢酸、および、例えば、酸性金属塩(例えば、塩化アルミニウム、塩化鉄、ジルコニウム酸塩化物、硝酸クロム、過塩素酸クロム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸亜鉛が含まれる)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0041】
縮合促進剤は、水性組成物中に、水性ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性溶液ポリマーの重量を基準にして15重量%以下、好ましくは3重量%ないし約6重量%の量で存在することができる。
【0042】
水性組成物は、例えば乳化剤、界面活性剤、顔料、充填剤、殺生剤、抗糸状菌剤(これには、例えば、殺真菌剤およびカビ阻害剤が含まれる)、可塑剤、消泡剤、着色料、ワックス、酸化防止剤、接着促進剤(これには、例えば、シランおよびボランが含まれる)、臭気マスキング剤、およびそれらの組み合わせを含む他の成分を含有することもできる。
【0043】
水性組成物は、ホルムアルデヒドおよびフェノール−ホルムアルデヒドを本質的に含有しない(すなわち、10,000百万分率(ppm)未満を有する)、および好ましくは、ホルムアルデヒドおよびフェノール−ホルムアルデヒドを含有しない。
【0044】
水性組成物は、好ましくは、100mgKOH/g乾燥物質未満の酸価を有するポリオールを本質的に含有せず(すなわち、10,000ppm未満を有する)、その例には、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、デカノールアミン、トリエタノールアミン、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0045】
(実施例5)
70/30精製アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA/AA)の水性溶液ポリマーを、481.4gの水、5.6gの50%過酸化水素、および0.097gのDISSOLVINE 4.5% H−Fe(Akzo Nobel Chem. Inc.、Lima、Ohio)を反応容器に投入することによって調製する。その後、363.6gの精製アクリル酸、155.8gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、および2.11gの2−メルカプトエタノールのモノマー供給物を反応容器に供給する。次に、58.7gの水および5.36gの50%過酸化水素の追加混合物、並びに60gの水および4.07gのエリソルビン酸の混合物を反応容器に供給する。次いで、5.8gの水、0.70gのtertブチルヒドロゲンペルオキシド、5.8gの水、および0.48gのエリソルビン酸の第1混合物を反応容器に添加し、それを70℃で維持する。その後、5.8gの水、0.70gのtertブチルヒドロゲンペルオキシド、5.8gの水、および0.48gのエリソルビン酸の第2混合物を反応容器に添加し、それを72℃で維持する。
【0046】
(実施例6−10)
実施例6−10は、反応容器に添加するアクリル酸モノマーおよびヒドロキシエチルアクリレートモノマー(AA/HEA)の量(すなわち、重量%)が以下の通りであることを除いて、実施例5において説明される手順に従って調製する:90/10 AA/HEA(実施例6)、80/20 AA/HEA(実施例7)、70/30 AA/HEA(実施例8)、60/40 AA/HEA(実施例9)、および50/50 AA/HEA(実施例10)。
【0047】
(実施例11)
70/30精製アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート(AA/2−HEA)の水性溶液ポリマーを、600gの水、5.6gの50%過酸化水素、0.1gのDISSOLVINE 4.5% H−Fe(Akzo Nobel Chem. Inc.)、および0.055g(0.01%固形分を基準とする)のSILQUEST A−171シラン(Crompton Corp.、Greenwich、Conn.)を反応容器に投入することによって調製する。その後、59gの水および5.5gの50%過酸化水素の混合物、並びに60gの水および4gのエリソルビン酸の混合物を反応容器に供給する。次に、364gの精製アクリル酸、156gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、および9.5gの2−メルカプトエタノールのモノマー供給物を反応容器に供給する。次いで、5.8gの水、0.7gの70%tertブチルヒドロゲンペルオキシド、5.8gの水、および0.48gのエリソルビン酸の第1混合物を反応容器に添加し、それを70℃で維持する。その後、5.8gの水、0.7gの70%tertブチルヒドロゲンペルオキシド、5.8gの水、および0.48gのエリソルビン酸の第2混合物を反応容器に添加し、それを70℃で維持する。次に、5.8gの水、0.7gの70%tertブチルヒドロゲンペルオキシド、5.8gの水、および0.48gのエリソルビン酸の第3混合物を反応容器に添加し、それを70℃で維持する。
【0048】
水性溶液ポリマーを30℃未満に冷却し、50%水酸化ナトリウムをその組成物に添加して2.35のpHを達成する。その組成物は、報告によると、41%の固形分含有率、および195cpsの粘度を有する。生じるポリマーは、報告によると、3910の数平均分子量および546mgKOH/g乾燥物質の酸価を有する。
【0049】
(実施例12)
70/30(精製アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート)の水性ポリマー溶液を、713.9gの水、6gの50%過酸化水素、0.1gのDISSOLVINE 4.5%鉄溶液および10.8gの次亜リン酸ナトリウム一水和物を反応容器に投入し、70℃に加熱することによって調製する。404.4gの精製アクリル酸および173.31gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)からなるモノマー配合物を、機械的に攪拌しながら、3時間にわたって反応器に均一に添加する。同じ時点で、63.8gの水および5.8gの50%過酸化水素の追加混合物並びに66gの水および4.3gのエリソルビン酸の混合物を3.5時間にわたって反応器に均一に供給する。供給が完了した後、反応器内容物を70℃でさらに30分加熱する。その後、反応器に12.6gの水および1.5gのテトラブチルヒドロゲンペルオキシド70%の混合物並びに12.6gの水および1.04gのエリソルビン酸の混合物を投入し、70℃でさらに15分攪拌する。
【0050】
生じる水性溶液ポリマーを室温に冷却する。その後、15gの水および12.3gの次亜リン酸ナトリウム一水和物の混合物を反応器に投入する。
【0051】
このポリマーは、報告によると、7,360g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0052】
次に、水性溶液ポリマー組成物の全重量を基準にして1百分率の塩化アンモニウムを水性溶液ポリマー組成物に添加する。その水性溶液ポリマー組成物を、強制送風オーブン内、180℃で5分間乾燥させることによって硬化させる。生じる硬化組成物は、報告によると、11.8 lb/ftの乾燥引っ張り強さおよび4.1 lb/ftの湿潤引っ張り強さを示す。
【0053】
(実施例13)
70/30(2−ヒドロキシルエチルアクリレート/精製アクリル酸)の水性ポリマー溶液を、535gの水、4.5gの50%過酸化水素、0.1gのDISSOLVTNE 4.5%鉄溶液、および8.1gの次亜リン酸ナトリウム一水和物を反応容器に投入し、70℃に加熱することによって調製する。130gの精製アクリル酸および303gの2−ヒドロキシルエチルアクリレート(2−HEA)からなる配合物を、機械式攪拌を用いて、反応器に3時間にわたって均一に添加する。同時点で、48gの水および4.4gの50%過酸化水素の追加混合物並びに48gの水および3.25gのエリソルビン酸の混合物を反応器に3.5時間にわたって均一に供給する。供給が完了した後、反応器の内容物をさらに30分、70℃で加熱する。その後、反応器に4.7gの水および0.6gのテトラブチルヒドロゲンペルオキシドの混合物並びに4.7gの水および0.4gのエリソルビン酸の混合物を投入し、さらに15分、70℃で攪拌する。生じる溶液ポリマーに16gの次亜リン酸ナトリウムおよび16の水の混合物を投入する。
【0054】
生じる水性溶液ポリマーは、報告によると、2.4のpH、25℃で320cpsの粘度、および41%の固形分含有率を有する。
【0055】
(実施例14)
70/30(精製アクリル酸/2−ヒドロキシルエチルアクリレート)の水性ポリマー溶液を、600gの水、5.6gの50%過酸化水素、0.1gのDISSOLVINE 4.5%鉄溶液、および16gの次亜リン酸ナトリウム一水和物を反応容器に投入し、70℃に加熱することによって調製する。364gの精製アクリル酸および156gの2−ヒドロキシルエチルアクリレート(2−HEA)の配合物を、機械式攪拌を用いて、反応器に3時間にわたって均一に添加する。同時点で、60gの水および5.4gの50%過酸化水素の追加混合物、並びに60gの水および4gのエリソルビン酸の混合物を反応器に3.5時間にわたって均一に供給する。供給が完了した後、反応器内容物をさらに30分、70℃で加熱する。その後、反応器に12gの水および1.5gのテトラブチルヒドロゲンペルオキシドの混合物、並びに12gの水および1gのエリソルビン酸の混合物を投入し、さらに15分、70℃で攪拌する。
【0056】
生じる水性溶液ポリマーは、報告によると、2.5のpH、25℃で200cpsの粘度、42%の固形分含有率、2,300g/モルの数平均分子量、6.1±0.4 lb/fの乾燥引っ張り強さ、および7.7±0.7 lb/fの湿潤引っ張り強さを有する。
【0057】
本発明の組成物において有用な第2のタイプのヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーは、2005年2月17日公開の米国特許出願第10/901,793号(これは参照により本明細書に組み込まれる)において開示される。そのようなポリマーは、共重合単位として、カルボン酸基、無水物基、またはそれらの塩を含むモノマー、および式Iのヒドロキシル基含有モノマーを含み、
共重合単位として、カルボン酸基、無水物基、またはそれらの塩を含むモノマー、および式I
CH2=C(R1)CH(R2)OR3 (I)
(式中、R1およびR2は水素、メチル、および−CH2OHから独立に選択され;並びにR3は水素、−CH2CH(CH3)OH、−CH2CH2OHおよび(C3−C12)ポリオール残基から選択される)
または式II
【0058】
【化1】

【0059】
(式中、RはCH、Cl、Br、およびC6H5から選択され;並びにR1はH、OH、CH2OH、CH(CH3)OH、グリシジル、CH(OH)CH2OH、および(C3−C12)ポリオール残基から選択される)
のヒドロキシル基含有モノマーを含むポリマー、
ここで、該カルボン酸基、無水物基、またはそれらの塩の当量数の該ヒドロキシル基の当量数に対する比は約1/0.01ないし約1/3である。
【0060】
この第2のタイプのヒドロキシ官能性ヒドロキシ官能性ポリマーは、共重合単位として、カルボン酸基、無水物基、または塩を含むモノマーを含有する。このポリマーは、好ましくは、付加ポリマーである。カルボン酸モノマー、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、2−メチルイタコン酸、α−メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、およびフマル酸モノアルキル、並びにそれらの塩;並びにエチレン性不飽和無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、および無水メタクリル酸を、ポリマーの重量を基準にして、好ましくは、1重量%ないし99重量%のレベルで、より好ましくは、10重量%ないし90重量%のレベルで用いることができる。カルボン酸基、無水物基、または塩を含む好ましいモノマーはアクリル酸およびマレイン酸、並びにそれらの塩、並びに無水マレイン酸である。
【0061】
この第2のタイプのヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーを用いる本発明の実施においては、明らかに米国特許出願第10/901,793号において教示されるように中和しないことを選ぶ。
【0062】
この第2のタイプのヒドロキシ官能性ヒドロキシ官能性ポリマーの例には以下の実施例15−16が含まれる。
【0063】
【表2】

【0064】
(実施例16−17)
硬化性組成物の調製
ポリ(AA/アリル−OOP)コポリマーを、機械式攪拌機、凝縮器、温度制御装置、開始剤供給ラインおよび窒素導入口を備える1リットル4首丸底フラスコにおいて調製する。表3、AないしC列がケトル成分の指定量である。ケトル混合物を、窒素パージの下で攪拌しながら、90℃に加熱する。温度90℃に到達した後直ちに、成分(D)、(E)、および(F)を反応フラスコに攪拌しながら導入する。成分(G)、混合物(H)および(I)、並びに開始剤混合物(JおよびK)を別々に120分にわたってすべて同時供給する。反応は93℃で行う。供給が完了した後直ちに、反応混合物を反応温度で15分間維持する。生じるコポリマーを、変換についてHPLCにより、および分子量について水性GPCにより特徴付けた。特徴付けデータが表4にある。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
ヒドロキシ官能性カルボキシ官能性ポリマーが本発明の組成物において用いられるとき、多塩基性酸および強酸に加えてポリオールを添加することが好ましいが、それは任意である。このポリオールは、ホモポリマーに関連して上で説明されるタイプのものであり得る。
【0068】
アミン官能性カルボキシ官能性ポリマー
本発明の配合物において有用な水性アミン官能性カルボキシ官能性ポリマーには、例えば米国特許出願公開第2004/0082241号において教示されるような、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和アミンモノマー、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、連鎖移動剤、および、任意に、フリーラジカル開始剤の反応生成物が含まれる。水性アミン官能性カルボキシ官能性ポリマーは溶液、分散液、エマルジョンまたは懸濁液の形態であり得る。水性アミン官能性カルボキシ官能性ポリマーは水系であり、好ましくは、フリーラジカル溶液重合によって調製される。他の適切な重合技術には、例えば、エマルジョン重合および懸濁重合技術が含まれる。エマルジョン重合には、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびそれらの組み合わせを用いることができる。好ましくは、水性アミン官能性カルボキシ官能性ポリマーはランダムコポリマーである。
【0069】
本発明において有用なアミン官能性モノマーの例には、N、Nジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,Nジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、好ましくは、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレートおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが含まれる。加えて、重合後にビニルアミンに加水分解することができるビニルホルムアミドおよびビニルアセトアミドのようなモノマーを用いることができる。カチオン性モノマーには、上記モノマーの四級化誘導体に加えて、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムが含まれる。さらに、芳香族アミンモノマー、例えば、ビニルピリジンも用いることができる。他のアミン含有モノマーを重合してポリマーとし、アミン官能性をもたらすこともできる。これらには、以下に限定されるものではないが、スルホベタインおよびカルボキシベタインが含まれる。
【0070】
アミン官能性カルボキシ官能性ポリマーを本発明の組成物において用いるとき、多塩基性酸および強酸加えてポリオールを添加することが好ましい。このポリオールは、ホモポリマーに関連して上で説明されるタイプのものであり得る。
【0071】
(実施例18)
スルホベタイン
200グラムの水および244グラムのイソプロパノールを収容する反応器を85℃に加熱する。295グラムのアクリル酸および5グラムの4−ビニルピリジンを含むモノマー溶液をその反応器に3.0時間にわたって添加する。15グラムの過硫酸ナトリウムを100グラムの脱イオン水中に含む開始剤溶液を、同時に、反応器に3.5時間にわたって添加する。その反応生成物を85℃でさらに1時間保持する。次に、ディーン・スターク・トラップを用いてイソプロパノールを蒸留させる。その後、ナトリウムクロロヒドロキシプロパンスルホネートとの100℃で6時間の反応により、ビニルピリジン部分をスルホベタインに官能化する。
【0072】
(実施例19)
四級化アミンコモノマーを有するポリマー
200グラムの水および244グラムのイソプロパノールを収容する反応器を85℃に加熱する。290グラムのアクリル酸および10グラムの塩化ジアリルジメチルアンモニウムを有するモノマー溶液を反応器に3.0時間にわたって添加する。15グラムの過硫酸ナトリウムを100gの脱イオン水中に含む開始剤溶液を、同時に、反応器に3.5時間にわたって添加する。その反応生成物を85℃でさらに1時間保持する。その後、ディーン・スターク・トラップを用いて、イソプロパノールを蒸留させる。
【0073】
配合物
下記表5は本発明の配合物の1つ(実施例B)並びに以下に報告される実験において用いられる2つの比較配合物AおよびCを示す。各々の配合物は脱イオン水で希釈して重量基準で50%固形分とする。
【0074】
【表5】

【0075】
DMA試料の調製および試験方法
動的機械解析(「DMA」)を、配合物A、B、およびCについて、二重カンチレバークランプを備えるTAインスツルメンツModel #2980を用いて試験する。各々の配合物について、脱イオン水で30重量%固形分まで希釈した0.15グラムの配合物をWhatman(登録商標)GF/B濾紙(0.5"w×1.34"l)の2枚の細片の各々に加え、一方の細片を他方の頂部に置き、得られるサンドイッチを機器のクランプ装置に配置することによって試験細片を調製する。DMA実験は、4℃/分の速度で勾配する30℃ないし250℃の温度範囲にわたって適用される、1Hzの一定変形周波数で行う。
【0076】
図1において、DMA曲線は温度の増加に伴う各配合物の貯蔵弾性率、すなわち、剛性の増加を示す。第1ピークは水相の蒸発に伴う固体の増加とそれに続くポリマーのガラス転移温度範囲を通しての弾性率の減少を表す。第2ピークは各配合物系の最終硬化温度で生じる。最小ピーク、すなわち、硬化の開始における温度と最終硬化温度との間の、貯蔵弾性率の差はその配合物の完全硬化に必要な全エネルギーを表す。
【0077】
図1から理解できるように、全硬化エネルギー(すなわち、3つの曲線下の領域の差)は2つの対照のいずれと比較しても本発明の配合物Bが最低である。
【0078】
粘度
粘度は低剪断Brookfield LVDTレオメーターを用いて測定した。配合物試料を50重量%固形分で調製し、試験に先立って室温に平衡化させた(22℃±1℃)。各試料を、スピンドル#2を60rpmで用いて測定した。読み取り値が安定したところで粘度をセンチポアズで記録した。
【0079】
【表6】

【0080】
これらのデータから理解できるように、配合物Bの粘度は予期せぬことに2つの対照配合物のいずれよりも低く、その利点は前述されている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、実施例におけるDMA実験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)約1000ないし約5000の数平均分子量を有するポリカルボキシポリマー、およびポリオール、
(2)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非ヒドロキシ官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するヒドロキシ官能性、カルボキシ官能性ポリマー、または
(3)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和アミン官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非アミン官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するアミン官能性、カルボキシ官能性ポリマー;
からなる群より選択されるポリマー組成物;
(B)約500未満の分子量を有する、多塩基性カルボン酸、またはそれらの無水物もしくは塩であって、該多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩の重量%がポリマー組成物(A)の重量の3ないし40%である、多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩;
(C)強酸;および
(D)全組成物の少なくとも20重量%の量の水;
を含む組成物であって、該組成物のpHが3.5以下である組成物。
【請求項2】
組成物のpHが2.5以下である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、リン含有酸のアルカリ金属塩を含む触媒を、さらに含有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
強酸が無機酸を含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
無機酸が硫酸である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
多塩基性カルボン酸、またはそれらの無水物もしくは塩が約200未満の分子量を有する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー組成物(A)がヒドロキシ官能性、カルボキシ官能性ポリマーであり、かつ該組成物がポリオールをさらに含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー組成物(A)がアミン官能性、カルボキシ官能性ポリマーであり、かつ該組成物がポリオールをさらに含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
組成物で被覆された基体であって、該組成物が:
(A)(1)約1000ないし約5000の数平均分子量を有するポリカルボキシポリマー、およびポリオール、
(2)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和ヒドロキシ官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非ヒドロキシ官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するヒドロキシ官能性、カルボキシ官能性ポリマー、または
(3)(a)少なくとも5重量%のα,β−エチレン性不飽和アミン官能性モノマー、
(b)少なくとも30重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(c)0重量%ないし50重量%未満のα,β−エチレン性不飽和非アミン官能性、非カルボキシ官能性モノマー
の反応生成物を含む、約1000ないし約5000の数平均分子量を有するアミン官能性、カルボキシ官能性ポリマー;
からなる群より選択されるポリマー組成物;
(B)約500未満の分子量を有する、多塩基性カルボン酸、またはそれらの無水物もしくは塩であって、該多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩の重量%がポリマー組成物(A)の重量の3ないし40%である、多塩基性カルボン酸またはそれらの無水物もしくは塩;
(C)強酸;および
(D)全組成物の少なくとも20重量%の量の水;
を含み、該組成物のpHが3.5以下である、組成物で被覆された基体。
【請求項10】
基体がガラス繊維であって、ここで組成物が架橋し、および水が除去されるように、組成物が次いで熱硬化されている、請求項9記載の被覆された基体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−312714(P2006−312714A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−62299(P2006−62299)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】