説明

硬化性組成物およびその硬化物

【課題】本発明は低粘度化、タック、耐熱性、ゴム物性の改善された硬化性組成物、および硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物
(A)一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を示す)で表わされる(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたビニル系重合体、
(B)フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体
(C)重合開始剤、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有するビニル系重合体(A)、フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体(B)、重合開始剤(C)を含有する硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル系重合体は高い耐候性、耐熱性、耐油性および透明性などの、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレンあるいはそれらの水素添加物等の炭化水素系重合体、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン系重合体などの各種重合体では得られない特性を有しており、その硬化性組成物およびその硬化物は様々な分野で利用されている。
【0003】
特許文献1には、水酸基含有スルフィドを連鎖移動剤として末端に水酸基を有するアクリル系重合体を製造し、さらに水酸基を反応させることにより末端に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体の製造法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されるような一般のラジカル重合によって製造される方法では、重合体の末端にアクリロイル基を確実に導入することは難しい。また、これらの方法では通常のラジカル重合が用いられるため、得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が広く、架橋点間分子量を制御することができず、良好なゴム物性が得られないとう課題がある。
【0004】
このような課題に対して、リビングラジカル重合法により得られる重合体の分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体が開発され、これらアクリル系重合体を用いた活性エネルギー線硬化型のアクリルゴムが開発されている(特許文献2〜5)。
リビングラジカル重合法では分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができるため、耐候性、耐熱性、耐油性などに加えて、良好なゴム物性が得られる。
【0005】
上記のようなアクリル系重合体は比較的高粘度であり、作業性を確保するために可塑剤を使用する場合があるが、硬化物の耐熱性が低下したり、タックが強くなったりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−262808号公報
【特許文献2】特開2000−72816号公報
【特許文献3】特開2001−55551号公報
【特許文献4】WO2006/075712号公報
【特許文献5】WO2007/069600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低粘度化、タック、耐熱性、ゴム物性の改善された硬化性組成物およびその硬化物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有するビニル系重合体と、フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下又は連鎖移動剤を含まない、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体と、重合開始剤を含有する硬化性組成物およびその硬化物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)一般式(1):−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を示す)で表わされる(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたビニル系重合体、
(B)フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下、又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体、
(C)重合開始剤、
を含有する硬化性組成物に関する。
【0010】
ビニル系重合体(A)の主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。
【0011】
ビニル系重合体(A)の主鎖が、原子移動ラジカル重合法により製造されたものであることが好ましい。
【0012】
ビニル系重合体(A)の(メタ)アクリロイル基が分子鎖末端にあることが好ましい。
【0013】
ビニル系重合体(B)が、チオール基を有するメルカプタン系化合物を連鎖移動剤として用いて製造されたものであることが好ましい。 ビニル系重合体(B)が、一般式(2):
−Si(OR3−n (2)
(式中、RとRは炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数)で表わされるアルコキシシリル基を有することが好ましい。
【0014】
ビニル系重合体(B)の使用量が、(A)成分と(B)成分の合計100wt%に対して、5〜60wt%であることが好ましい。
【0015】
(C)成分の重合開始剤が、光ラジカル開始剤であることが好ましい。
【0016】
(C)成分の重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドから少なくとも1種を選択したものであることが好ましい。
【0017】
(C)成分の重合開始剤が、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましい。
【0018】
前記のいずれかに記載の硬化性組成物より得られた硬化物に関する。
【0019】
前記のいずれかに記載の硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより得られた硬化物に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性組成物およびその硬化物によれば、低粘度化、タック、耐熱性、ゴム物性の改善された硬化性組成物を与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の硬化性組成物は、(A)成分として、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたビニル系重合体、(B)成分として、フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体、(C)成分として、重合開始剤を含有する。以下に、本発明の硬化性組成物に含まれる成分について説明する。
【0022】
<<(A)成分>>
<主鎖>
本発明のビニル系重合体(A)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー; 無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フエニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー; アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ビニル系重合体(A)は、生成物の物性等から、主鎖が(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体である。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち30モル%以上、好ましくは50モル%以上が、上記モノマーであることを意味する。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40重量%(以下、単に%ということもある)以下にするのが好ましく、更には30重量%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。
【0024】
本発明のビニル系重合体(A)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、なお好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0025】
本発明におけるビニル系重合体(A)の数平均分子量は特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。
【0026】
<主鎖の合成法>
本発明における、ビニル系重合体(A)の合成法は、リビングラジカル重合である。以下にこれらについて説明する。
【0027】
「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0028】
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0029】
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
【0030】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
【0031】
本発明において、これらのリビングラジカル重合のうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0032】
リビングラジカル重合
そのうち、まず、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0033】
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル開始剤0.1〜10モルが適当である。
【0034】
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキシドが好ましい。このパーオキシドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキシドが好ましい。さらに、パーオキシドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
【0035】
Macromolecules 1995,28,P.2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下図のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
【0036】
【化1】

【0037】
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上図で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると、末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
【0038】
上記のニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
【0039】
原子移動ラジカル重合
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
【0040】
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH、C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C(H)(X)−CO、R−C(CH)(X)−CO、R−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C−SO
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0041】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に原子移動ラジカル重合の生長末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0042】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(3)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R10−C(R)=CH (3)
(式中、Rは水素、またはメチル基、R、Rは水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、または他端において相互に連結したもの、Rは、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R10は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
置換基R、Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。RとRは他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0043】
一般式(3)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
【0044】
【化2】

【0045】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
【0046】
【化3】

【0047】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0048】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R10−C(R)(X)−R11−R (4)
(式中、R、R、R、R10、Xは上記に同じ、R11は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
【0049】
10は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R11としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R10が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R11としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0050】
一般式(4)の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH、CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH、CH=CHCHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CHCHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0051】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
【0052】
生長末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0053】
【化4】

【0054】
【化5】

【0055】
等が挙げられる。
【0056】
この重合において用いられる(メタ)アクリル系モノマーとしては特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
【0057】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。好ましい配位子は、含窒素化合物であり、より好ましい配位子は、キレート型含窒素化合物であり、さらに好ましい配位子は、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンである。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0058】
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行なうことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
また、限定はされないが、重合は0℃〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
【0060】
本発明の原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態、例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II’)に対し、過酸化物等の一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules 1999,32,2872参照)。
【0061】
<(メタ)アクリロイル基>
(A)成分の官能基としては、重合性が良い点からメタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましく、さらに好ましくはアクリロイル基である。
また市販の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤の種類が豊富であり硬化性を調整しやすい点でメタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましい。さらに市販の共重合可能なアクリルモノマーおよびアクリルオリゴマーの種類が豊富であり硬化性および硬化物性を調整しやすい点で、メタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましい。
【0062】
(メタ)アクリロイル基の数
硬化性組成物の硬化性、および硬化物性の点から0.6個以上3.5個未満有することが好ましく、0.8個以上2.5個未満有することがより好ましい。0.6個未満の場合、未硬化成分のために耐熱性が低下する傾向がある。一方、3.5個以上の場合、硬化物が脆くなったり、ゴム物性が得られない場合がある。
【0063】
(メタ)アクリロイル基の位置
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、(メタ)アクリロイル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての(メタ)アクリロイル基を分子鎖末端に有するものである。
【0064】
(メタ)アクリロイル基の導入法
以下に、ビニル系重合体(A)への(メタ)アクリロイル基の導入法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0065】
末端官能基変換によりラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、限定はされないが、以下のような方法が挙げられる。
【0066】
1)(メタ)アクリル系重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する化合物で置換することにより製造する方法。具体例としては、一般式(5)で表される構造を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(6)で示される化合物との反応による方法。
−CR2930X (5)
(式中、R29、R30は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
+−OC(O)C(R13)=CH (6)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。Mはアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
2)水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(7)で示される化合物との反応による方法。
XC(O)C(R13)=CH (7)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
3)水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(8)で示される化合物との反応による方法。
HO−R31−OC(O)C(R13)=CH (8)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。R31は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
以下にこれらの各方法について詳細に説明する。
【0067】
上記1)の方法について説明する。
一般式(5)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(6)で示される化合物との反応による方法。
−CR2930X (5)
(式中、R29、R30は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
+−OC(O)C(R13)=CH (6)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。Mはアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
一般式(5)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0068】
一般式(6)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CHが挙げられる。Mはオキシアニオンの対カチオンであり、Mの種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式(6)のオキシアニオンの使用量は、一般式(5)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行う。
【0069】
上記2)の方法について説明する。
水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(7)で示される化合物との反応による方法。
XC(O)C(R13)=CH (7)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
一般式(7)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CHが挙げられる。
【0070】
水酸基を、好ましくは末端に、有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、水酸基を持つ化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。これらの方法により水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は限定されないが、以下のような方法が例示される。
【0071】
(a)リビングラジカル重合により(メタ)アクリル系重合体を合成する際に、下記一般式(9)等で表される一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
C=C(R32)−R33−R34−OH (9)
(式中、R32は炭素数1〜20の有機基で水素またはメチル基が好ましく、互いに同一であっても異なっていてもよい。R33は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−もしくはp−フェニレン基を表す。R34は直接結合、または1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。R33がエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、R33がフェニレン基のものはスチレン系の化合物である。)
なお、一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0072】
(b)リビングラジカル重合により(メタ)アクリル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
【0073】
このような化合物としては特に限定されないが、一般式(10)に示される化合物等が挙げられる。
C=C(R32)−R35−OH (10)
(式中、R32は上述したものと同様である。R35は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
上記一般式(10)に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
【0074】
(c)特開平4−132706号公報などに開示されるような方法で、原子移動ラジカル重合により得られる一般式(5)で表されるような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
【0075】
(d)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(5)で表されるような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、一般式(11)に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R36)(R37)−R35−OH (11)
(式中、R35は上述したものと同様である。R36およびR37はともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基、または一方が上記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を表す。R36およびR37の電子吸引基としては、−COR(エステル基)、−C(O)R(ケト基)、−CON(R)(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO(ニトロ基)等が挙げられる。置換基Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基である。R36およびR37としては、−COR、−C(O)Rおよび−CNが特に好ましい。)
(e)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(5)で表される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
【0076】
(f)重合体末端のハロゲン、好ましくは一般式(5)で表されるハロゲンを少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、下記一般式(12)等で表される水酸基含有オキシアニオン又は下記一般式(13)等で表される水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R35−O (12)
(式中、R35およびMは上述したものと同様である。)
HO−R35−C(O)O (13)
(式中、R35およびMは上述したものと同様である。)
本発明では(a)〜(b)のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合、制御がより容易である点から(b)の方法がさらに好ましい。
【0077】
また(c)〜(f)のような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、制御がより容易である点から(f)の方法がさらに好ましい。
【0078】
上記3)の方法について説明する。
水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(14)で示される化合物との反応による方法。
HO−R31−OC(O)C(R13)=CH (14)
(式中、R13は水素、またはメチル基を表す。R31は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
一般式(14)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CHが挙げられる。具体的な化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0079】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の通りである。
【0080】
ジイソシアネート化合物は、特に限定されないが、従来公知のものをいずれも使用することができ、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;等を挙げることができる。これらは、単独で使用しうるほか、2種以上を併用することもできる。またブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0081】
よりすぐれた耐候性を生かすためには、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香環を有しないジイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
【0082】
(A)成分は、2種類以上を併用しても構わない。例えば、(メタ)アクリロイル基を分子鎖両末端に有する(A)成分と、(メタ)アクリロイル基を分子鎖片末端に有する(A)成分を併用すれば、その使用量比により硬化物性の調整が可能である。
【0083】
<<(B)成分>>
本発明の(B)成分は、フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合である。
【0084】
ビニル系重合体(B)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、前記、ビニル系重合体(A)の主鎖を構成するビニル系モノマーを使用できる。ビニル系モノマーは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
ビニル系重合体(B)は、生成物の物性等から、主鎖が(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体である。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち30モル%以上、好ましくは50モル%以上が、上記モノマーであることを意味する。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40重量%(以下、単に%ということもある)以下にするのが好ましく、更には30重量%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。
【0086】
(B)成分の主鎖は連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法により製造されることもある。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
【0087】
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
【0088】
(B)成分の重合反応に使用可能な開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物系、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物系、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などが挙げられる。
【0089】
(B)成分の重合反応に使用可能な連鎖移動剤としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン化物、スルフィドベンゼン、イソプロピルベンゼン、塩化第二鉄等が挙げられる。これらの中でも、連鎖移動反応が起こりやすく、ポリマーの重合度を調節しやすい点で、チオール基を有するメルカプタン系化合物が好ましい。
【0090】
連鎖移動剤の使用量としては、(B)成分を重合反応するときに使用した連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下が好ましく、0.0002モル/g以下がより好ましく、0.0001モル/g以下がさらにより好ましく、連鎖移動剤を使用しないのが最も好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.0003モル/gを超える場合、硬化物の耐熱性が低下する。
【0091】
ビニル系重合体(B)の重合温度としては、50〜170℃が好ましく、60〜150℃がより好ましく、70〜130℃がさらにより好ましい。重合温度が50℃未満の場合、重合時間が長くなり生産効率が低下する。一方、重合温度が170℃を超える場合、ポリマー末端ラジカルによるBack Biting反応などの副反応が起こりやすくなり、得られる重合体末端にラジカル重合性の極めて乏しい不飽和結合が多く生成するために、ラジカル硬化阻害要因になったり、硬化物の耐熱性を低下する。
【0092】
ビニル系重合体(B)の重合反応に使用可能な溶媒としては、特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系、水等の溶媒を用いることができる。トルエン、キシレン、イソブタノール、酢酸ブチル、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いるのがビニル系重合体(B)の溶解性の点から好ましい。
【0093】
ビニル系重合体(B)としては、湿分の存在下、室温硬化性を有する加水分解性シリル基を有するビニル系重合体が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体(A)のラジカル硬化では、空気中の酸素によりタックが出やすく、加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(B)を使用することによりタックを改善できる。
加水分解性シリル基は、下記一般式(2)で示される。
【0094】
−Si(OR3−n (2)
(式中、RとRは炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数)
上記一般式(2)のRは室温硬化性が良い点で、メチル基、エチル基が好ましい。
【0095】
上記一般式(2)のnは室温硬化性が良い点で、3が好ましい。
上記加水分解性シリル基は、硬化物のタック低減が良い点で、ビニル系重合体(B)の1分子中に平均して1個以上存在することが好ましく、1.5個以上存在することがより好ましく、2個以上存在することがさらにより好ましい。
【0096】
ビニル系重合体(B)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されないが、例えば、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤を使用する方法と、加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーを使用する方法が挙げられる。
加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物が挙げられる。
【0097】
加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが安定性の点で好ましい。上記(メタ)アクリロキシとは、本明細書中ではメタアクリロキシおよび/またはアクリロキシを表す。
【0098】
これらの加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤と、加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーは単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
ビニル系重合体(B)の数平均分子量は、500〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。500未満の場合は耐熱性が低下し、タックが強くなる傾向がある。10000を超える場合は(B)成分が高粘度になり低粘度効果が得られない。
【0099】
ビニル系重合体(B)の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100wt%に対して、5〜60wt%が好ましく、10〜50wt%がより好ましく、15〜45wt%がさらにより好ましい。5wt%以下ではビニル系重合体(B)の添加効果が得られない。60wt%以上では耐熱性が低下し、タックが強くなる傾向がある。
【0100】
<<(C)成分>>
本発明の(C)成分の例としては、光重合開始剤、熱重合開始剤、レッドクス開始剤等が挙げられる。
【0101】
光重合開始剤、熱重合開始剤、レッドクス開始剤は各々単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として使用してもよいが、混合物として使用する場合には、各開始剤の使用量は、後述のそれぞれの範囲内にあることが好ましい。
活性エネルギー線により硬化させる光重合開始剤としては、特に制限はないが、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。
【0102】
光ラジカル開始剤としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ジベンゾイル等が挙げられる。これらのうち、紫外線硬化性が良い光ラジカル開始剤としては、α−ヒドロキシケトン化合物(例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等)、フェニルケトン誘導体(例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン等) が好ましい。
【0103】
また、硬化物表面の酸素阻害を抑制できる光ラジカル開始剤としては、例えば、分子内に光分解性の基を2個以上有する2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル-プロパン−1−オン(商品名IRGACURE127、チバ・ジャパン製)、1−〔4−(4−ベンゾイキシルフェニルサルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン(商品名ESURE1001M)、メチルベンゾイルフォ−メート(商品名SPEEDCURE MBF LAMBSON製)O−エトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名SPEEDCURE PDO LAMBSON製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(商品名ESCURE KIP150 LAMBERTI製)、および、分子内に芳香環を3つ以上有する水素引き抜き型光ラジカル開始剤である1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(0−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−4‘メチルジフェニルサルファイド、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’,4“−(ヘキサメチルトリアミノ)トリフェニルメタン等が挙げられる。
【0104】
また、深部硬化性の改善を特徴とする2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、等のアシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤が挙げられる。
【0105】
また、本発明の硬化性組成物の活性エネルギー線硬化性と貯蔵安定性のバランスの点で、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル-プロパン−1−オン(商品名IRGACURE127、チバ・ジャパン製)、1−〔4−(4−ベンゾイキシルフェニルサルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン(商品名ESURE1001M)、メチルベンゾイルフォ−メート(商品名SPEEDCURE MBF LAMBSON製)O−エトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名SPEEDCURE PDO LAMBSON製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(商品名ESCURE KIP150 LAMBERTI製)、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(0−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−4‘メチルジフェニルサルファイド、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’,4“−(ヘキサメチルトリアミノ)トリフェニルメタン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、がより好ましい。
【0106】
近赤外光重合開始剤としては、近赤外光吸収性陽イオン染料等を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、例えば特開平3−111402号公報、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体等を用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
【0107】
これらの光重合開始剤は、単独、又は2種以上混合して用いても、他の化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0108】
硬化性を向上させるための他の化合物との組み合わせとしては、具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの組み合わせ、さらにこれにジフェニルヨードニウムクロリド等のヨードニウム塩を組み合わせたもの、メチレンブルー等の色素及びアミンと組み合わせたもの等が挙げられる。
【0109】
なお、前記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。 (C)成分の光重合開始剤の添加量は特に制限はないが、硬化性と貯蔵安定性の点から、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましく、0.05〜2.5重量部がさらにより好ましい。光重合開始剤の添加量が0.001重量部以下の場合、十分な硬化性が得られない。一方、10重量部以上の場合、活性エネルギー線が深部まで透過できなくなり厚膜硬化性が悪くなったり、硬化物の耐熱性が低下する。
本発明の硬化性組成物を活性エネルギー線により硬化させる方法は特に限定されないが、その光重合開始剤の性質に応じて、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー等による光及び電子線の照射が挙げられる。
【0110】
熱重合開始剤としては、特に制限はないが、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、限定されるわけではないが、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO33)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO50)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO52)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO64)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(VAZO67)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO88)(全てDuPont Chemicalから入手可能)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)(V−601)(和光純薬より入手可能)等が挙げられる。
【0111】
過酸化物開始剤としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox16S)(Akzo Nobelから入手可能)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート(Lupersol11)(Elf Atochemから入手可能) 、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox 21−C50)(Akzo Nobelから入手可能)、及び過酸化ジクミル等が挙げられる。
【0112】
過硫酸塩開始剤としては、限定されるわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0113】
好ましい熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物開始剤からなる群から選ばれる。更に好ましいものは、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、並びにこれらの混合物である。
熱重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0114】
(C)成分として熱重合開始剤を使用する場合、熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.025〜2重量部である。
【0115】
レドックス(酸化還元)系開始剤は、幅広い温度領域で使用できる。特に、下記開始剤種は常温で使用できることが有利である。
【0116】
適切なレドックス系開始剤としては、限定されるわけではないが、上記過硫酸塩開始剤と還元剤(メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)の組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンの組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類の組み合わせ;有機過酸化物と遷移金属の組み合わせ、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートの組み合わせ等が挙げられる。
【0117】
好ましいレドックス系開始剤としては、有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ、有機過酸化物と遷移金属の組み合わせであり、より好ましくは、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類の組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとコバルトナフテートの組み合わせである。
レドックス系開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0118】
(C)成分としてレドックス系開始剤を使用する場合、レドックス系開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.025〜2重量部である。
【0119】
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、上記(A)〜(C)成分を含有してなるが、物性を調整するために、さらに各種の添加剤、例えば、重合性のモノマー及び/またはオリゴマー、酸化防止剤、光硬化性樹脂、空気酸化硬化性物質、接着性付与剤、カップリング剤、硬化調整剤、金属石鹸、充填材、微小中空粒子、可塑剤、溶剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、物性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、界面活性剤、保存安定改良剤、無機フィラー、増粘剤、チクソ性付与剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、等を必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0120】
このような添加物の具体例は、例えば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各明細書などに記載されている。
【0121】
<重合性のモノマー及び/またはオリゴマー>
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分、(B)成分以外のモノマー及び/またはオリゴマーを添加することができる。ラジカル重合性の基を有するモノマー及び/又はオリゴマーが硬化性の点から好ましい。
【0122】
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル基を有するものが共重合性が良く、未反応成分が少ない点で好ましい。
【0123】
上記、重合性のモノマー及び/またはオリゴマーは単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0124】
前記モノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイル−ε−カプロラクタム、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、O−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、N―(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸のプロピレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また下式で示される化合物なども挙げられる。
CH=CHC(O)O−(CH−CH
(nは5〜19の整数)
CH=C(CH)C(O)O−(CH−CH
(nは5〜19の整数)
CH=CHC(O)O−(CHCHO)−CH
(nは3〜9の整数)
CH=C(CH)C(O)O−(CHCHO)−CH
(nは3〜9の整数)
CH=CHC(O)O−(CHCHO)−CHCH
(nは2〜9の整数)
CH=C(CH)C(O)O−(CHCHO)−CHCH
(nは2〜9の整数)
【化6】

【0125】
【化7】

【0126】
【化8】

【0127】
【化9】

【0128】
上記(メタ)アクリレート系モノマーの中でも低粘度化効果、相溶性、低揮発性、耐熱性、耐透湿性のバランスが優れるものとしてはイソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートが挙げられる。
【0129】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0130】
ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0131】
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0132】
共役ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0133】
ビニルケトン系モノマーとしては、メチルビニルケトン等が挙げられる。
【0134】
ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等が挙げられる。 多官能モノマーとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3―メチル―1,5―ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7―へプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8―オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2―メチル―1,8―オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9―ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10―デカンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレ−ト、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシ(メタ)トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また下式で示される化合物なども挙げられる。
CH=CHC(O)O−(CH−OC(O)CH=CH
(nは6〜20の整数)
CH=C(CH)C(O)O−(CH−OC(O)C(CH)=CH
(nは6〜20の整数)
CH=CHC(O)O−(CHCHO)−OC(O)CH=CH
(nは3〜10の整数)
CH=C(CH)C(O)O−(CHCHO)−OC(O)C(CH)=CH
(nは3〜10の整数)
【0135】
前記オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂;ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を、水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}と反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂;前記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂;ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアクリレート系樹脂(重合性の反応基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂)等が挙げられる。
【0136】
また絶縁性の向上のために疎水性の主鎖を有するラジカル反応性のオリゴマー類を添加することができる。例えば、ブタジエン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(商品名;BAC−45、大阪有機化学工業製)、ビスA骨格を有するウレタンアクリレート、ビスA骨格を有するエポキシアクリレート、ビスA骨格を有するポリエステルアクリレート、それぞれの水素添化品等が挙げられる。
【0137】
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
重合性のモノマー及び/又はオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、1〜200部が好ましく、5〜100部がより好ましい。
【0138】
またラジカル硬化では酸素による表面硬化阻害が起こりやすい。表面硬化阻害を低減するためにエーテル基、ヒドロキシル基、アミノ基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを使用することが好ましい。好ましい使用量は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して1〜20部である。1部未満では効果が得られない。一方、20部を越えると物性への悪影響が出ることがある。
【0139】
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明(A)成分のビニル系重合体の分子末端官能基がエポキシ基、アルケニル基、加水分解性シリル基であるビニル系重合体を使用できる。これらの官能基の導入方法について以下に示す。
【0140】
[エポキシ基]
ビニル系重合体へのエポキシ基導入は、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2000−154212公報段落[0039]〜[0056]記載の方法が挙げられる。好ましい例も同段落中に記載されている。
【0141】
[アルケニル基]
得られたビニル系重合体へのヒドロシリル化反応可能なアルケニル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2004−059783公報段落[0042]〜[0086]記載の方法が挙げられる。さらに、好ましい例も同段落中に記載されている。
【0142】
[加水分解性シリル基]
得られたビニル系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2000−191912公報段落[0076]〜[0138]記載の方法が挙げられる。さらに、好ましい例も同段落中に記載されている。
【0143】
末端官能基がエポキシ基、アルケニル基、加水分解性シリル基であるビニル系重合体を使用する場合の、重合開始剤または重合触媒として、以下のものを使用できる。
【0144】
末端官能基がエポキシ基であるビニル系重合体の場合、重合開始剤または重合触媒として、例えば、特開2000−154212公報段落[0059]記載のものが使用できる。
【0145】
末端官能基がアルケニル基であるビニル系重合体の場合、さらにヒドロシリル基含有化合物を併用することが好適で、例えば、特開2004−059783公報[0087]〜[0091]に記載のものが挙げられる。ヒドロシリル化反応を促進するために、ヒドロシリル化触媒を併用することが好ましく、同公報[0092]記載のものが挙げられる。
【0146】
末端官能基が加水分解性シリル基であるビニル系重合体の場合、硬化触媒が好適で、例えば特開2000−191912公報段落[0147]〜[0150]記載のものが挙げられる。 また上記以外の硬化反応を併用しても良く、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらのうち、透明性が高いためにUV硬化性が良く、接着性等の実用特性に優れる点から、透明エポキシ樹脂が好ましい。
【0147】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂をヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂あるいは硬化剤はそれぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0148】
<光硬化性物質>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、光硬化性物質を添加しても良い。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間に、分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この光硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。この光硬化性物質は、光をあてることにより硬化し得る物質であるが、代表的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近)に1日間、室温で静置することにより硬化させることができる物質である。この種の化合物には、有機単量体、オリゴマー、樹脂あるいはそれらを含む組成物など多くのものが知られており、その種類は特に限定されないが、例えば、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が挙げられる。
【0149】
ポリケイ皮酸ビニル類とは、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂であり、ポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル系誘導体が挙げられる。
【0150】
アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液のほか「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、93頁〜、106頁から、117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。
【0151】
上記の光硬化性物質の中では、取り扱い易いという理由で不飽和アクリル系化合物が好ましい。
【0152】
光硬化性物質の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類等の促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0153】
<空気酸化硬化性物質>
本発明の硬化型組成物および硬化物には、必要に応じて空気酸化硬化性物質を添加しても良い。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化できる不飽和基を有する化合物である。この空気酸化硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。本発明における空気酸化硬化性物質は、空気と接触させることにより硬化し得る物質であり、より具体的には、空気中の酸素と反応して硬化する性質を有するものである。代表的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中で室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
【0154】
空気酸化硬化性物質としては、例えば、桐油、アマニ油等の乾性油;これら乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体や共重合体、更には該重合体や共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが具体例として挙げられる。これらのうちでは桐油、ジエン系重合体のうちの液状物(液状ジエン系重合体)やその変性物が特に好ましい。
【0155】
上記液状ジエン系重合体の具体例としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させて得られるNBR,SBR等の重合体や更にはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら液状ジエン系化合物のうちでは液状ポリブタジエンが好ましい。
【0156】
空気酸化硬化性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また空気酸化硬化性物質と同時に酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果を高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩やアミン化合物等が例示される。
空気酸化硬化性物質の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。
【0157】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物および硬化物には、硬化物の耐熱性付与のために必要に応じて酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0158】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用できる。具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(またはジあるいはトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0159】
商品名で言えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業製)、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(以上いずれもADEKA社製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1076、IRGANOX−1098、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上いずれもチバ・ジャパン社製)、SumilizerGM、SumilizerGA−80(以上いずれも住友化学社製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0160】
熱や光に対する着色抑制効果が良い点から、両側ヒンダードフェノール構造よりも、片側ヒンダードフェノール構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0161】
また熱に対する揮発減量が少なくて良い点で、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量が600以上である、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス−[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンがより好ましい。なお当該分子量は、GC−MS又はLC−MSを用いて測定することができる。
【0162】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.05〜5重量部であることがより好ましく、0.1〜3重量部であることがさらにより好ましい。0.01重量部未満では効果が得られない。一方、10重量部を超えて使用してもそれ以上の効果が得られないために経済的でない。
【0163】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用することができる。
【0164】
ヒンダードアミン系酸化防止剤とは、一分子中に少なくとも一個の下記一般式(15)
【0165】
【化10】

【0166】
(式中Xは−H、−R、−OR’、−R’’−で表わされ、R、R’、R’’は炭素、水素、酸素を含有する1価あるいは2価の置換基を表している。代表的なものとしてはメチル基、エチル基、炭素数3から20の脂環式構造を含むアルキル基、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキレン基、コハク酸/エチレングリコールからのポリエステルユニット等を例示できるが、これらに限定されない。なお、炭素数1〜20のアルキレン基、コハク酸/エチレングリコールからのポリエステルユニット等の2価の置換基の場合、他方の末端については他のヒンダードピペリジン基に結合している。)で表されるヒンダードピペリジン基を有する化合物である。
【0167】
具体例としては、CHIMASSORB119、CHIMASSORB2020、CHIMASSORB944、TINUVIN622、TINUVIN B75、TINUVIN783、TINUVIN111、TINUVIN791、TINUVIN C353、TINUVIN494、TINUVIN492、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN292、TINUVIN5100、TINUVIN765、TINUVIN770、TINUVIN XT850、TINUVIN XT855、TINUVIN440、TINUVIN NOR371(以上、チバ・ジャパン社製)、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、アデカスタブLA−501、アデカスタブLA−502XP、アデカスタブLA−503、アデカスタブLA−77、アデカスタブLX−335、アデカノールUC−605(以上、ADEKA社製)、サノール(SANOL)LS770、サノールLS765、サノールLS292、サノールLS440、サノールLS744、サノールLS2626、サノールLS944(以上、三共ライフテック社製)、ホスタビン(HOSTAVIN)N20、ホスタビンN24、ホスタビンN30、ホスタビンN321、ホスタビンPR31、ホスタビン3050、ホスタビン3051、ホスタビン3052、ホスタビン3053、ホスタビン3055、ホスタビン3058、ホスタビン3063、ホスタビン3212、ホスタビンTB01、ホスタビンTB02、ナイロスタッブ(Nylostab)S−EED(以上、クラリアントジャパン社製)、トミソーブ77(吉富ファインケミカル社製)、サイアソーブ(CYASORB)UV3346、サイアソーブUV3529、サイアソーブUV3853(サンケミカル社製)スミソーブ(SUMISORB)TM61(住友化学社製)、グッドライト(GOODRITE)UV3159、グッドライトUV3034、グッドライトUV3150、グッドライト3110×128(以上BF Goodrich社製)、ユビヌル(UVINUL)4049、ユビヌル4050、ユビヌル5050(以上BASF社製)の等が例示できるが、これらに限定されない。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0168】
これらのヒンダードアミン系酸化防止剤の中でも、硬化性組成物の貯蔵安定性や得られる硬化物の耐候性に優れる点から、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−63P、TINUVIN152、TINUVIN123、サノールLS765、ホスタビンN24、ホスタビンN30が好ましい。
【0169】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.05〜5重量部であることがより好ましく、0.1〜3重量部であることがさらにより好ましい。0.01重量部未満では効果が得られない。一方、10重量部を超えて使用してもそれ以上の効果が得られないために経済的でない。
【0170】
イオウ系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、チオール構造が硬化性に影響を与えることから、チオール構造を有さず、チオエーテル構造を分子内に有する化合物が好ましい。
【0171】
例えば、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジラウリル−チオジプロピオネート、ビス{2−メチル−4−[3−n−アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル}スルフィド、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−チオジプロピオネート、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジブチルメチレン−ビス−チオグルコレート、ジステアリル−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0172】
商品名で言えば、ノクラック300、ノクラック400(以上いずれも大内新興化学工業製)アデカスタブAO−23、AO−412S、AO−503A、(以上いずれもアデカ製)、IRGANOX−PS800FL、IRGANOX−PS802FL、IRGANOX−1035、IRGANOX−1520L(以上いずれもチバスペシャルティケミカルズ製)、スミライザーTPL−R、スミライザーTPS、スミライザーTPM、スミライザーWX−R、スミライザーTP−D(以上いずれも住友化学工業製)、ブルカノール88(バイエル製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0173】
これらのイオウ系酸化防止剤は、ビニル系重合体(A)および(B)との相溶性の点から、イオウ原子に結合した置換基中の炭化水素基がC12以下であること好ましく、具体的には、ノクラック300、ノクラック400、アデカスタブAO−23、デカスタブAO−412S、IRGANOX−PS800FL、IRGANOX−1035、IRGANOX−1520L、スミライザーTPL−R、スミライザーWX−R、スミライザーTP−Dが好ましい。
イオウ系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0174】
イオウ系酸化防止剤の配合量としては特に制限はないが、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合は、耐熱性の改善効果が十分でないことがあり、5重量部を越えると硬化性に影響を与える場合がある。
【0175】
リン系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、活性水素を含むリン酸およびリン酸エステルは組成物の貯蔵安定性、硬化物の耐熱性に影響を与えることから、リン酸およびリン酸エステルを分子内に含まない、アルキルホスファイト、アリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト化合物などが好ましい。
【0176】
例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(イソデシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(イソオクチル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールージホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールーテトラホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチルー4−ジートリデシルホスファイトー5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4'−ブチリデンビス(3−メチルー6−t−ブチルージートリデシルホスファイト)、2,2’―メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェノール)オクチルホスファイト、4,4'−イソプロピリデンージフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジーt−ブチルフェニルホスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェニルホスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル,ペンタエリスリトール,ジホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1’−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステルホスファイト等が挙げられる。
【0177】
商品名で言えば、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ3010、アデカスタブ2112、アデカスタブ522A、アデカスタブ260、アデカスタブHP−10、アデカスタブ1500、アデカスタブPEP−24−G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−4C、アデカスタPEP−8(以上いずれもアデカ製)、JPM−308、JPM−313、JPM−333E、JPP−100、JPP−613M、JPP−31(以上いずれも城北化学)、CHELEX−M、(堺化学)、IRGAFOS38(チバ・ジャパン)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0178】
これらのリン系酸化防止剤は、加水分解性に対して安定であり耐熱性が良い点で、リン原子の置換基の少なくても2つ以上がアリールオキシ基であることが好ましい。具体的には、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ2112、アデカスタブHP−10、JPM−313、JPP−100、CHELEX−M、IRGAFOS38が好ましい。
リン系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0179】
リン系酸化防止剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合には、耐熱性の改善効果が十分でないことがあり、5重量部を越えると硬化性に影響を与える場合がある。
【0180】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とイオウ系またはリン系酸化防止剤を併用しても構わない。この場合の使用量比は特に制限はないが、より効果的に耐熱性を向上させるという点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤/イオウ系またはリン系酸化防止剤の比が0.1〜10の範囲にあることが好ましく、0.3〜3であることが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とイオウ系またはリン系酸化防止剤との好ましい組合せとしては、特に制限はないが、例えば、IRGANOX1010とスミライザーTPL−Rの組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ2112の組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ329Kの組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ1178の組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ135Aの組合せが挙げられる。
【0181】
この組合せであれば、150℃での耐熱試験においても長時間の柔軟性やゴム弾性を保持し、耐熱着色が少ない点においても優れる。
【0182】
<硬化性組成物の調整>
本発明の硬化性組成物の調整法としては、特に限定されないが、すべての配合成分を1成分型として調製しても良いし、硬化性組成物の貯蔵安定性等を考慮して配合成分を分けて配合しておき、使用前に混合する2成分型として調整しても良い。
【0183】
1成分型の場合は、施工の際に混合・混練する手間が不要となり、同時にその際に生じる計量ミス(混合比の間違い)もなくなるため、硬化不良等のミスを防ぐことができる。
【0184】

2成分型の場合は、各配合成分を任意に二液に分割して、該配合成分を使用前に混合する2成分型として調整することもできる。A液とB液への分割方法は、硬化性組成物の混合比、貯蔵安定性、混合方法、ポットライフ等を考慮し、種々の組合せが可能である。
【0185】
また、必要に応じて、A液、B液以外に第三成分を用意して三液型硬化性組成物とすることも可能である。
【0186】
本発明の硬化性組成物の混合法としては、特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、必要であれば遮光して、ハンドミキサーやスタティックミキサーで混合したり、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダーなどを用いて、常温又は加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が挙げられる。
【0187】
<用途>
本発明の硬化性組成物およびその硬化物の用途としては、特に限定されないが、プリント回線基板のポッティング材、太陽電池裏面封止材、コンフォーマルコーティング材、シール材、接着剤などの電気・電子部品材料に好適に用いられる他に、工業用のシーリング剤、永久レジスト用途やソルダーレジスト用途、ドライフィルムレジスト用途、電着レジスト用途等のレジスト用途、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、粘着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、反応性ホットメルト接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、缶蓋等のシール材、放熱シート、フィルム、ガスケット、マリンデッキコーキング、注型材料、各種成形材料、人工大理石、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車や船舶、家電等に使用される防振・制振・防音・免震材料、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤、防水剤等の様々な用途に利用可能である。
【0188】
更に、自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンカバーやオイルパン用のガスケット、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。
【0189】
家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。
【0190】
建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポ―ツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。
【0191】
また防振・制振・防音・免震材料が特に求められる用途として、ステッピングモーター、磁気ディスク、ハードディスク、食器洗浄機、乾燥機、洗濯機、ファンヒーター、ミシン、自動販売機、スピーカフレーム、BSアンテナ、VTRカバー用制振材等の電気・電子機器用途;ルーフ、フロア、シャッタ、カーテンレール、床、配管ダクト、デッキプレート、カーテンウォール、階段、ドア、免振アイソレーター、構造材用制振材等の建築用途;エンジンルーム、計測ルーム用制振材等の船舶用途;エンジン(オイルパン、フロントカバー、ロッカーカバー)、車体(ダッシュ、フロア、ドア、ルーフ、パネル、ホイルハウス)、タランスミッション、パーキングブレーキカバー、シートバック用制振材等の自動車用途;TVカメラ、複写機、電算機、プリンタ、レジスタ、キャビネット用制振材等のカメラ・事務機器用途;シュータ、エレベータ、エスカレータ、コンベア、トラクタ、ブルドーザ、発電機、コンプレッサ、コンテナ、ホッパ、防音ボックス、草刈り機のモータカバー用制振材等の産業機械関係用途;鉄道車両ルーフ、側板、ドア、アンダーフロア、各種補機カバー、橋梁用制振材等の鉄道用途;半導体用途の精密除振装置用制振材がある。
【実施例】
【0192】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0193】
また、下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804およびK-802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0194】
下記実施例中、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」は、1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。
(ただし、1H−NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。)。
【0195】
両末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P1]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(ジエチル−2,5−ジブロモアジペート)比を160にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0196】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P1]を得た。
【0197】
重合体[P1]の数平均分子量は23,000、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は1.8であった。
【0198】
両末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P2]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(ジエチル−2,5−ジブロモアジペート)比を80にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0199】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P2]を得た。
【0200】
重合体[P2]の数平均分子量は12,000、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は1.8であった。
【0201】
アクリル系重合体[P3〜10]の合成例
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に表1の(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表1の(ア)成分の混合物を滴下ロ−トから5時間かけて等速滴下した。次に(ウ)成分の混合溶液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き110℃で2時間攪拌した。次にエバポレーターを用いて重合溶媒を溜去し、アクリル系重合体[P3〜10]を得た。
【0202】
表1に、合成したアクリル系重合体[P3〜10]の固形分濃度(%)、使用した連鎖移動剤の濃度(mol/g)、粘度、数平均分子量、1分子あたりのSi数を示した。なお、固形分濃度は重合液中の重合体の重量濃度であり、エバポレーターで重合溶媒を溜去した前後の重量から算出できる。次に、使用した連鎖移動剤の濃度(mol/g)は、表1に示す各成分の合計量と固形分濃度とドデシルメルカプタンの使用モル数から算出できる。次に、1分子あたりのSi数は、(数平均分子量)/(Si当量)より算出できる。ここでSi当量は、表1に示す各成分量から算出できる。例えばアクリル系重合体[P3]であれば、(ブチルアクリレートの成分量+2−エチルヘキシルアクリレートの成分量+γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの成分量+ドデシルメルカプタンの成分量)/(γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの成分量/γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの分子量)より算出できる。なお、表1の各成分の使用量の単位は「重量部」を示す。
【0203】
【表1】

【0204】
<物性評価方法>
実施例及び比較例で作製された硬化物の各物性測定は、以下の方法、条件に従って実施した。
【0205】
(硬化性組成物の外観)
20mlガラス瓶に硬化性組成物を約15ml流し込み、23℃24時間後、目視観察した。透明のものを(○)、濁色のものを(△)、相分離のものを(×)とした。
【0206】
(粘度)
得られた硬化性組成物の粘度は、JIS K 7117−2円すい−平板システムに準拠し、東機産業製E型粘度計を使用し、測定温度23℃で測定した。
【0207】
(タック)
UV照射して23℃55%RH条件下で7日間保管した後、硬化物表面に指を押し当ててゆっくり剥し、指に樹脂付着が見られずタックがないものを(○)、指に樹脂付着が見られず少しタックがあるものを(△)、指に樹脂付着がありタックがあるものを(×)とした。
【0208】
(硬度)
20×20×2(mm)に切り出した硬化物を3枚重ねて厚さ6mmとし、23℃55%RH条件下で3時間以上保管した後、JIS K 6253に準拠し、高分子計器製タイプEデュロメーターで測定した。
【0209】
(硬度変化)
20×20×2(mm)に切り出した硬化物を3枚重ねて厚さ6mmとし、150℃のオーブンに1000時間保管し、23℃55%RH条件下で3時間以上保管した後、JIS K 6253に準拠し、高分子計器製タイプEデュロメーターで測定した。
【0210】
(重量変化)
20×20×2(mm)に切り出した硬化物を3枚重ねて厚さ6mmとし、150℃のオーブンに1000時間保管した前後の重量を、23℃55%RH条件下で3時間保管した後に測定した。重量変化(wt%)は、−(150℃1000時間前後の重量差)/(150℃1000時間前の重量)×100より計算した。
【0211】
(機械物性)JIS K 6251に準じて、硬化物を2mm厚さ、3号ダンベルのサイズに切り出し、引張り速度200mm/分、23℃×55%RH条件下で測定した。引張り試験には、島津製オートグラフ、AG−2000Aを使用した。
【0212】
<実施例1〜10、比較例1〜6>
表2〜4に示した配合成分を十分に溶解混合、脱泡した。配合液をポリプロピレン製容器に流し込んで厚さ2mmとし、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、型式LH6、Hバルブ、照射条件:照度500mW/cm、光量2000mJ/cm)に2回通して硬化物を得た。なお、配合量の単位は「重量部」を示す。
【0213】
DAROCUR1173はチバ・ジャパン製の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを示す。IRGACURE819はチバ・ジャパン製のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを示す。ナウガード445は白石カルシウム製の4,4’−ビス(α,α’―ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを示す。IRGANOX1010はテトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを示す。IRGANOX PS800FDはチバ・ジャパン製のジラウリル−チオジプロピオネートを示す。UP1000は東亞合成製の無官能アクリルポリマーを示す。
【0214】
【表2】

【0215】
表2に示すように、本発明の(B)成分を使用することにより低粘度化できた。また東亞合成製UP1000を使用した場合は、硬化阻害のために硬化物が得られなかった。UP1000はUFO技術により重合される。UFO技術については、接着の技術(ADHENSION TECNOLOGY,JAPAN),2010,VOl.29,No.4などに記載されている。(メタ)アクリル系モノマーをメルカプタン系連鎖移動剤を使用せず、極少量のラジカル重合開始剤を使用して170〜300℃の高温で連続重合する(メタ)アクリルポリマーの重合技術である。高温重合により分子量制御が可能であるが、分子末端ラジカルのBack Biting反応などが起こり易いために、得られる重合体末端にラジカル重合性の極めて乏しい不飽和結合が多く生成し、ラジカル硬化阻害要因になったと考えられる。また、このような不飽和結合を含む重合体は硬化物の耐熱性を低下させる原因になると考えられる。また重合体[P3]を使用した場合は、150℃耐熱試験での硬度変化、重量減少が重合体[P4〜6]に比べて大きかった。また(B)成分を合成する際の連鎖移動剤濃度が低い方が150℃耐熱試験での硬度変化、重量減少が少なく、しかも硬化物のタックが改善された。
【0216】
【表3】

【0217】
表3に示すように、比較例4の連鎖移動剤を多く使用して合成したP7の硬化物に比べて、実施例4〜7の連鎖移動剤を使用せずに合成した(B)成分であるP6,8,9の硬化物は150℃耐熱試験での硬度変化、重量減少が少なかった。また硬化物のタックは、アルコキシシリル基を有さない(B)成分であるP9の硬化物は改善しなかったのに比べて、アルコキシシリル基を有する(B)成分の硬化物は改善しており、特に、トリメトキシシリル基を有する(B)成分であるP6の硬化物は改善した。また実施例4のアミン系酸化防止剤のナウガード445を、実施例7のIRGANOX1010とIRGANOX PS800FDの酸化防止剤の併用に変更した場合、150℃耐熱試験での重量減少が改善した。
【0218】
【表4】

【0219】
表4に示すように、本発明の(B)成分を使用することにより低粘度化できた。比較例6の連鎖移動剤を多く使用して合成したP10の硬化物に比べて、実施例8〜10の連鎖移動剤を使用せずに合成した(B)成分であるP6の硬化物は、P6の使用量を多くしても150℃耐熱試験での硬度変化と重量減少が少なく、硬化物のタックが改善し、機械物性が低弾性、高伸びに優れた。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の硬化性組成物は低粘度であり、熱または光により硬化可能であり、特に光硬化では厚さ2mm以上の深部硬化性の速硬化性に優れる。得られる硬化物は、耐熱性、柔軟性、ゴム物性、耐油性に優れる。また硬化後の表面タックを改善できる。本発明の硬化性組成物およびその硬化物は、高い耐熱性が要求される自動車分野の電気・電子部品のポッティング用途等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の有機基を示す)で表わされる(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個以上有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたビニル系重合体、
(B)フリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体であって、連鎖移動剤濃度が重合反応後の固形分に対して0.0003モル/g以下、又は連鎖移動剤を含まないものであり、重合温度が50〜170℃であるビニル系重合体、
(C)重合開始剤、
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
ビニル系重合体(A)の主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ビニル系重合体(A)の主鎖が、原子移動ラジカル重合法により製造されたものである請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ビニル系重合体(A)の(メタ)アクリロイル基が分子鎖末端にある請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ビニル系重合体(B)が、チオール基を有するメルカプタン系化合物を連鎖移動剤として用いて製造されたものである請求項1〜4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ビニル系重合体(B)が、一般式(2):
−Si(OR3−n (2)
(式中、RとRは炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数)で表わされるアルコキシシリル基を有する請求項1〜5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
ビニル系重合体(B)の使用量が、(A)成分と(B)成分の合計100wt%に対して、5〜60wt%である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
(C)成分の重合開始剤が、光ラジカル開始剤である請求項1〜7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
(C)成分の重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドから少なくとも1種を選択したものである請求項1〜8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
(C)成分の重合開始剤が、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部である請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物より得られた硬化物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより得られた硬化物。

【公開番号】特開2012−188550(P2012−188550A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53349(P2011−53349)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】