説明

硬化性組成物および硬化物

【課題】 フォトリソグラフィーにおいて優れたパターニング性を示し、かつ得られた膜は優れた絶縁性と耐熱耐光性を有する硬化物を与える硬化性組成物および硬化物を提供すること。
【解決手段】
必須成分として、(A)一分子中にSiH基および光重合性官能基を有するポリシロキサン系化合物、 (B)アルケニル基含有化合物、 (C)光活性型白金錯体触媒、 (D)光重合開始剤を含有する硬化性組成物。この構成により、得られる硬化物は当初の目的である優れた絶縁性と耐熱耐光性を有する硬化物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー性、絶縁性、耐熱耐光性に優れた硬化物および硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル基、エポキシ基、オキセタン基などの官能基を有する化合物からなる硬化性組成物は、光エネルギーを加えることで短時間かつ、簡便に硬化させることができ、絶縁材料、接着剤、コーティング剤、封止剤など様々な産業で利用されている。しかしながら絶縁性、耐熱耐光性などの材料信頼性と光硬化性を両立した材料は提案されていない。
【0003】
シロキサン化合物に、エポキシ基を有するアルケニル化合物を反応させて得られるエポキシシリコン化合物が特許文献1に記載されており、該エポキシシリコン化合物に光カチオン重合開始剤を配合することで光硬化性樹脂として機能する。ただしこれら化合物に関し、電気素子の絶縁膜などに適用した場合、絶縁性に欠けそのリーク電流が問題となる。また耐熱耐光性が悪いため変色や劣化が起こる。
【0004】
SiH基を有するシロキサン化合物を部分的にエポキシ基に変換した化合物とポリエン化合物とのヒドロシリル化による硬化性組成物に関する技術が特許文献2に示されている。該硬化性組成物よりなる硬化物は、材料信頼性は高いが光硬化性樹脂としては機能せず、フォトリソグラフィーによるパターニングの形成は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−152316号公報
【特許文献2】特開2006−291044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情から本発明の目的は、フォトリソグラフィーにおいて優れたパターニング性を示し、かつ得られた膜は優れた絶縁性と耐熱耐光性を有する硬化性組成物および硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記特長を有する樹脂組成物を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
1). (A)SiH基および光重合性官能基を有するポリシロキサン系化合物、 (B)アルケニル基含有化合物、 (C)光活性型白金錯体触媒、 (D)光重合開始剤を含有する硬化性組成物。
【0009】
2). 成分(A)の光重合性官能基が、エポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、ビニルオキシ基からなる群から選択される少なくとも一種である、1)に記載の硬化性組成物。
【0010】
3). 成分(A)の光重合性官能基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基、オキセタニル基またはグリシジル基である、1)または2)に記載の硬化性組成物。
【0011】
4). 成分(A)の光重合性官能基の少なくとも1個がアルコキシシリル基である、1)または2)に記載の硬化性組成物。
【0012】
5). 成分(B)が、下記一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物である、1)〜4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0015】
6). 成分(B)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である1)〜5)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0016】
7). 成分(A)が、光重合性官能基を少なくとも2個およびSiH基を少なくとも2個かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を有するポリシロキサン系化合物である1)〜6)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0017】
【化2】

【0018】
8). 成分(A)が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物であることを特徴とする、1)〜7)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(α)アルケニル基を少なくとも1個有する有機化合物
(β)少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)光重合性官能基を少なくとも1個と、アルケニル基を少なくとも1個を有する化合物
9). 化合物(α)が、アルケニル基を少なくとも1個有する一般式(II)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物であることを特徴とする8)に記載の硬化性組成物。
【0021】
10). 化合物(α)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である8)または9)に記載の硬化性組成物。
【0022】
11). 化合物(α)が、1分子中にアルケニル基を少なくとも1個、かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を有する有機化合物であることを特徴とする8)〜10)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0023】
【化4】

【0024】
12). 化合物(β)が、下記一般式(III)
【0025】
【化5】

【0026】
(式中R4、R5は炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは2〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状オルガノポリシロキサン化合物であることを特徴とする8)〜11)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0027】
13). 化合物(γ)が、下記一般式(IV)
【0028】
【化6】

【0029】
(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【0030】
14). 成分(C)が、β−ジケトン白金錯体であることを特徴とする1)〜13)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0031】
15). 1)〜14)のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、本硬化性組成物は光硬化性を有し、フォトリソグラフィー性、絶縁性、耐熱耐光性に優れた硬化物を与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の詳細を説明する。
【0034】
本発明は、(A)SiH基および光重合性官能基を有するポリシロキサン系化合物、(B)アルケニル基含有化合物、(C)光活性型白金錯体触媒、(D)光重合開始剤を含有する硬化性組成物であり、得られる組成物が光硬化可能であり、加熱硬化のみの材料と比較して材料塗布後の形状を光照射により短時間で固定でき、光パターニングが可能である。また得られる硬化物は優れた絶縁性と耐熱耐光性を有する。
【0035】
以下に、本発明の詳細な構成を述べる。
【0036】
(成分(A))
本発明の硬化性組成物に使用されるポリシロキサン系化合物は、SiH基および光重合性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0037】
ここでいうポリシロキサン系化合物とは、シロキサン単位(Si−O−Si)および、構成元素としてC、H、N、O、Sからなる有機基Xとから構成される化合物、重合体を示し、構造上特に限定されるものではない。これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる硬化物は硬度が高くより材料信頼性に優れ、またM単位(X3SiO1/2)、またはD単位(X2SiO2/2)の含有率が高いものほど硬化物はより柔軟で低応力なものが得られる。
【0038】
ここでいう光重合性官能基とは、光エネルギーが外部より加わった際に光重合開始剤より発生するラジカルもしくはカチオン種によって重合、架橋する官能基を示し、特に反応・架橋形式は限定されるものではない。
【0039】
中でも、特に反応性・化合物の安定性の観点より、光重合性官能基の少なくとも1個は、エポキシ基、架橋性ケイ素基、(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が好ましい。
【0040】
エポキシ基の中でも安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基が好ましく、特に光および熱によるカチオン重合性に優れる点では、脂環式エポキシ基が好ましい。
【0041】
架橋性ケイ素基としては、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、フェノキシシリル基、シラノール基、クロロシリル基等の加水分解性を有するケイ素基が挙げることができ、特に入手性、化合物の安定性の点から、特にアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、ケイ素に結合する官能基が、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基のものが挙げられ、硬化後の残留成分が残りにくいという観点から、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0042】
ポリシロキサン系化合物は、光重合性官能基を少なくとも2個有することが好ましく、さらには3個以上、特には5個以上が好ましい。3個以上であれば、架橋密度の高い硬化物が得られ耐熱耐光性に優れるという利点がある。光重合性官能基が複数ある場合には各光重合性官能基は同一であってもよく、2種以上の異なる官能基を有しても良い。
【0043】
本発明の硬化性組成物に含有される成分(A)において、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、
【0044】
【化7】

【0045】
フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「上記式(X1)〜(X3)で表される各構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基」を「酸性基」と称することがある。)を同一分子内に有することが好ましく、この構造を有することにより得られる硬化性組成物がアルカリ水溶液への溶解が可能となり、工業的に有用なリソグラフィー性を有する硬化性組成物となり得る。
【0046】
本発明の硬化性組成物を硬化した際、硬化物が高温時における着色が少ないと言う観点より、これら有機構造の中において、カルボキシル基および下記式で示される構造、
【0047】
【化8】

【0048】
から選ばれる構造を有することが好ましく、さらに高温時の熱分解性の低い硬化物が得られる観点より特に
下記式で示される各構造から選ばれる構造を有するものが好ましい。
【0049】
【化9】

【0050】
本発明の硬化性組成物に使用される成分(A)として好適なものとして、次の態様が挙げられる。
下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物:
(α)1分子中にアルケニル基を少なくとも1個有する有機化合物。
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物。
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、アルケニル基を少なくとも1個とを有する化合物。
【0051】
以下、成分(A)の好ましい態様につき、説明する。
(化合物(α))
化合物(α)について説明する。
【0052】
化合物(α)は、1分子中にアルケニル基を少なくとも1個有する化合物であれば限定されるものではなく、特に上記成分(B)と同様の化合物を使用することができる。
その中でも、特に得られる硬化物の絶縁性に優れるという観点より、
下記一般式(II)
【0053】
【化10】

【0054】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物であることが好ましく、
さらに入手性の観点より、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレートが挙げられる。
【0055】
また得られる硬化物の透明性および硬化性の観点より、アルケニル基を有するポリシロキサン系化合物が好ましく適用できる。またその中でも入手性の観点より、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン系化合物であることが好ましい。具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基の水素原子をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示され、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の化合物が挙げられる。
【0056】
また成分(α)おいて、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、
【0057】
【化11】

【0058】
フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種を同一分子内に有することが好ましく、この構造を有することによりアルカリ水溶液への溶解が可能となり、工業的に有用なリソグラフィー性を有する硬化性組成物となり得る。
【0059】
これら化合物の中で特に耐熱耐光性に優れる観点より、イソシアヌル酸構造を有するものが好ましく、入手性の観点より、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸などが具体的に挙げられる。
【0060】
また酸性基を有さないアルケニル化合物との併用も可能であり、特に耐熱耐光性の観点より、イソシアヌル環構造を有するアルケニル化合物である、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等との併用が好ましい。
【0061】
また得られる硬化物が透明性に優れる観点より、アルケニル基を有するポリシロキサン系化合物との併用が好ましく、特に入手性の観点より、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の環状シロキサン化合物が好ましい。
【0062】
(化合物(β))
化合物(β)について説明する。
化合物(β)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン系化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0063】
硬化物に柔軟性が付与されるという観点より、
【0064】
【化12】

【0065】
(式中、R13、R14は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、lは、0〜50、nは2〜50、mは0〜10の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。またR13、R14は入手性、耐熱耐光性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より、特にフェニル基であるものが好ましい。
【0066】
また、硬化物の耐熱耐光性が高いという観点より、分子中にT単位またはQ単位を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、具体的には次のような化合物を挙げることができる。
【0067】
【化13】

【0068】
【化14】

【0069】
(式中、R15、R16は炭素数1〜6の有機基を表し、nは0〜50の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有し、分子中にT単位またはQ単位を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、R15、R16は入手性、耐熱耐光性の観点より特にメチル基であるものが好ましい。
【0070】
入手性および化合物(α)、(γ)との反応性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(III)
【0071】
【化15】

【0072】
(式中R4、R5は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは3〜10、mは0〜10の数を表す)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0073】
一般式(III)で表される化合物中の置換基R4、R5は、C、H、Oからなる群から選択して構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0074】
一般式(III)で表される化合物としては、入手容易性および反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0075】
上記した各種化合物(β)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0076】
(化合物(γ))
化合物(γ)について説明する。
化合物(γ)は、1分子中に光重合性官能基を少なくとも1個と、アルケニル基を少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。なお、ここでいう光重合性官能基は、ポリシロキサン系化合物が有する光重合性官能基と同一であって、好ましい態様も同様に好ましい。
【0077】
特に光重合性官能基として、反応性・化合物の安定性の観点より、光重合性官能基の少なくとも1個は、エポキシ基、架橋性ケイ素基、(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が好ましい。
【0078】
光重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(γ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、光重合反応性に優れている観点より、脂環式エポキシ基を有する化合物であるビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
【0079】
またオキセタニル基を有する化合物(γ)の具体例としては、アリルオキセタニルエーテル、ビニルオキセタニルエーテルなどが挙げられる。オキセタニル基を有する化合物を用いる場合、硬化物の靭性が向上するという観点より好ましい。
【0080】
光重合性官能基として架橋性ケイ素基を有する化合物(γ)の具体例としては、入手性容易性および耐熱耐光性の観点からは、下記一般式(IV)
【0081】
【化16】

【0082】
(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される架橋性ケイ素基を有する化合物であることが好ましく、反応後の副生成物が除去されやすい等という観点より、特にトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシランが好ましい。
【0083】
光重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物(γ)としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、およびビニル基またはアリル基と下記一般式(IX)
【0084】
【化17】

【0085】
(式中のR17は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される有機基を同一分子内中に少なくとも1個ずつ有する化合物、例えば、上述の一般式(II)において、式中のR3の少なくとも1個が上記一般式(IX)で示される基であり、かつ、R3の少なくとも1個がビニル基またはアリル基などのアルケニル基を有する化合物が挙げられる。さらにヒドロシリル化の選択性が高いという観点より、メタクリロイル基が同一分子内にアリルまたはビニル基と共存する化合物であることが好ましく、特に入手性の面よりメタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニルなどが好ましい。
【0086】
またヒドロシリル化反応の際、光重合性官能基の種類を問わず、2種以上の化合物(γ)を併用することもできる。
【0087】
(ヒドロシリル化触媒)
化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0088】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0089】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0090】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な反応性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、化合物(α)および化合物(γ)のアルケニル基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は上記化合物のアルケニル基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0091】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0092】
(化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応)
本発明の硬化性組成物に使用できるポリシロキサン系化合物としては、上述したとおり、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応をヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0093】
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましく、低分子量体を含有しにくいと言う観点から、過剰の化合物(α)と化合物(β)とを、もしくは、過剰の化合物(β)と化合物(α)とをヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の化合物(α)もしくは化合物(β)を除き、得られた反応物と化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる方法がより好ましい。
【0094】
各化合物を反応させる割合は特に限定されないが、化合物(β)の総SiH基量が化合物(α)および化合物(γ)の総アルケニル基量基準で少ないと組成物中に未反応のアルケニル基が残るため着色の原因となり、多い場合は大量の化合物(β)を使用するため、製造コストが高くなる観点より好ましくない場合がある。よって、化合物(α)および化合物(γ)の総アルケニル基量をA、化合物(β)の総SiH基量をBとした場合、1≦B/A≦30であることが好ましく、更に1≦B/A≦10であることが好ましい。
【0095】
また、化合物(α)および化合物(γ)を反応させる割合については、化合物(α)のアルケニル基をA1、化合物(γ)のアルケニル基をA2とした場合、A1+A2=1として、0.01≦A1≦0.99、0.01≦A2<0.99の範囲で適宜選択して反応させることができる。
【0096】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0097】
ヒドロシリル化反応の際に酸素を使用できる。反応容器の気相部に酸素を添加することで、ヒドロシリル化反応を促進できる。酸素の添加量を爆発限界下限以下とする点から、気相部の酸素体積濃度は3%以下に管理する必要がある。酸素添加によるヒドロシリル化反応の促進効果が見られるという点からは、気相部の酸素体積濃度は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。
【0098】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0099】
化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させた後に、溶媒および/または未反応の化合物を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる反応物が揮発分を有さないため、該反応物を用いて硬化物を作製する場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい傾向がある。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは80℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0100】
(成分(B))
本発明の硬化性組成物に使用される成分(B)としては、アルケニル基を有するものであれば特に限定されるものではなく、ポリシロキサン系化合物、有機化合物にかかわらず特に限定なく使用することができる。
【0101】
本発明の硬化性組成物を硬化した硬化物の透明性および硬化性の観点より、アルケニル基を有するポリシロキサン系化合物が好ましく適用できる。またその中でも入手性の観点より、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン系化合物であることが好ましい。具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基の水素原子をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示され、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の化合物が挙げられる。
【0102】
アルケニル基含有有機化合物の例としては、シロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれる原子より構成される化合物であって、アルケニル基を少なくとも1個有する有機化合物であれば特に限定されない。またアルケニル基の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよく、SiH基と反応性を有するものであれば良い。
【0103】
上記有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類でき、有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0104】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0105】
上記有機化合物の具体的な例としては、ブタジエン、イソプレン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、ノナンジオールジアリルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0106】
特に、透明性および耐熱耐光性が高いという観点から下記一般式(I)で表されるトリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体が特に好ましい。
【0107】
【化18】

【0108】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物が好ましい。
【0109】
上記一般式(I)のR3としては、得られる硬化物の耐熱耐光性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0110】
これら化合物の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレートが挙げられ、特に入手性の観点よりトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0111】
(成分(C))
本発明の成分(C)について説明する。
【0112】
本発明で用いられる成分(C)は光活性型白金錯体触媒であり、硬化性組成物に光を照射して活性化すると、成分(A)と成分(B)との付加反応を促進する触媒作用を有するものであり、例えば、β−ジケトン化合物または環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体が挙げられる。
【0113】
熱活性によりヒドロシリル化が進行する白金錯体、例えば、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒などは該当しない。
【0114】
β−ジケトン白金錯体としては、例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナート)白金錯体、ビス(2,4−へキサンジオナート)白金錯体、ビス(2,4−へプタンジオナート)白金錯体、ビス(3,5−ヘプタンジオナート)白金錯体、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナート)白金錯体、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナート)白金錯体、トリメチル(アセチルアセトナート)白金錯体、トリメチル(2,4−ペンタンジオナート)白金錯体、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体等が挙げられる。
【0115】
環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体としては、例えば、(1,5−シクロオクタジエニル)ジメチル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ−1,5−ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフエニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体等が挙げられる。
【0116】
β−ジケトン白金錯体または環状ジエン白金錯体の中でもβ−ジケトン白金錯体が好ましく、これら化合物の中でも特に入手性の観点より、ビス(2,4−ペンタンジオナート)白金錯体が好ましい。
【0117】
これらの光活性型白金錯体触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。光活性型白金錯体触媒の使用量は、光重合開始剤の使用量や種類にもよるため一概には規定できないが、光によるヒドロシリル化反応によりリソグラフィー性、絶縁性、着色性が少ない等の効果が発現する点から、成分(A)と成分(B)の合計重量に対して、概ね0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜3重量部であることがより好ましい。
【0118】
(成分(D))
本発明の硬化性組成物において、光重合開始剤を必須成分とする。種類においては、光重合官能基の種類によって適宜選択して添加することが好ましい。例えば、エポキシ基、アルコキシシリル基等の場合にはカチオン重合開始剤を用い、アリロキシ、メタクリロキシ基などのラジカル重合性基の場合には光ラジカル開始剤を用いることが好ましい。
【0119】
(カチオン重合開始剤)
カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、または熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0120】
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロ硼素錯塩および三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されたようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されたようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されたようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されたようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されたようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されたようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されたようなMF6-陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形のVIa元素;米国特許第4231951号に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、ポリマー・ケミストリー版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されたようなビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビスヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等);陰イオンがB(C654-である芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩の一種以上が包含される。
【0121】
好ましい陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩並びにII族、V族およびVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社製)、UVR−6990およびUVR−6974(ユニオン・カーバイド社製)、UVE−1014およびUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−152およびSP−172(旭電化社製)並びにサンエイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(三新化学工業社製)、WPI113およびWPI116(和光純薬工業社製)、RHODORSIL PI2074(ローディア社製)、BBI−103(みどり化学社製)として商品として入手できる。
【0122】
これらのカチオン重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。カチオン重合開始剤の使用量は、光活性型白金錯体触媒の使用量や種類にもよるため一概には規定できないが、硬化時間、硬化物中のカチオン重合開始剤残存の点、硬化物の表面性、着色性、耐熱耐光性等の点からポリシロキサン系化合物100重量部に対して、概ね0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0123】
(ラジカル重合開始剤)
活性エネルギー線によりラジカル種を発生する、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤であれば特に限定されず使用できる。
【0124】
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、ビイミダゾール系化合物、α−ジケトン系化合物、チタノセン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物等が用いることができる。
【0125】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4'−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4'−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0126】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0127】
オキシムエステル系化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0128】
ベンゾイン系化合物の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
【0129】
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0130】
α−ジケトン系化合物の具体例としては、ジアセチル、ジベンゾイル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0131】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール等が挙げられる。
【0132】
多核キノン系化合物の具体例としては、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
【0133】
キサントン系化合物の具体例としては、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0134】
トリアジン系化合物の具体例としては、1,3,5−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2'−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−ブロモ−4'−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−チオフェニルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0135】
薄膜硬化性に優れるという観点より、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、アセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましく、具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
【0136】
特に硬化物が透明性に優れるという観点より、アセトフェノン系化合物が好ましく、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4'−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノンを挙げることができる。
【0137】
これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、光活性型白金錯体触媒の使用量や種類にもよるため一概には規定できないが、硬化時間、硬化物中のラジカル重合開始剤残存の点、硬化物の表面性、着色性、耐熱耐光性等の点からポリシロキサン系化合物100重量部に対して、概ね0.1〜15重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。
【0138】
本発明の硬化性組成物に使用されるポリシロキサン系化合物は、加水分解による縮合反応や付加反応および開環重合など様々な手法によって得られるものであるが、これら特定の有機構造をポリシロキサン系化合物構造中に導入する手法としては特に限定される方法は無いが、位置選択的に導入が可能でかつ化学的に安定な結合であるSi−C結合にて導入できるヒドロシリル化を用いるのが好ましい。
【0139】
本発明のポリシロキサン系化合物中および/または硬化性組成物中に、目的によって種々の添加剤を使用しても良い。
【0140】
(添加剤について)
(増感剤)
本発明の硬化性組成物には、光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上およびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。これら増感剤は、上記、光活性型白金錯体触媒および光重合開始剤等と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。
【0141】
添加する化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン等が好ましい。
【0142】
また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン等が好ましい。
【0143】
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0144】
またこれらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。増感剤の添加量は、硬化時間、硬化物中の増感剤残存の点、着色性等の点からポリシロキサン系化合物100重量部に対して、概ね0.1〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0145】
(反応性希釈剤)
本発明の硬化性組成物には、作業性、反応性、接着性、硬化物強度の調整のために適宜、反応性希釈剤を添加する事ができる。添加する化合物には、硬化反応形式によって選択して特に限定無く使用することが可能であり、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アルコキシシラン化合物、(メタ)アクリレート化合物など重合基を有する化合物を使用する。
【0146】
エポキシ化合物およびオキセタン化合物の具体例としては、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルエポキシ基含有オルガノポリシロキサン(環状、鎖状)、グリシジル基含有オルガノポリシロキサン(環状、鎖状)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,4−ビス{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル}ベンゼン、ビス{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン等を挙げることができる。
【0147】
アルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、メチルトリメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、ジメチルジメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物等が挙げることができる。
【0148】
(メタ)アクリレート化合物の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、 (メタ)アクリレート基含有オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0149】
反応性希釈剤の添加量としては種々設定できるが、ポリシロキサン系化合物100重量部に対して、好ましい添加量は1〜50重量部、より好ましくは3〜25重量部である。添加量が少ないと添加効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0150】
(接着性改良剤)
本発明の硬化性組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0151】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性および接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0152】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0153】
またこれらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、ポリシロキサン系化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化性や硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0154】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類および/または酸無水物類を用いることができ、接着性の向上および/または安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0155】
これらのカルボン酸類および/または酸無水物類のうち、得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、好ましいカルボン酸類および/または酸無水物類としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0156】
カルボン酸類および/または酸無水物類を用いる場合の添加量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の範囲は0.1〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、これらのカルボン酸類および/または酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0157】
(リン化合物)
本発明の硬化性組成物を光または熱により硬化させ、特に透明性を要求される用途で使用する場合は、光または熱による硬化後の色相を改善するために、リン化合物を使用するのが好ましい。リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類から選ばれる酸化防止剤、または、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類から選ばれる着色防止剤が好ましく使用される。
【0158】
リン化合物の添加量は、ポリシロキサン系化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。リン化合物の添加量が0.01重量部より少ないと、色相の改善効果が少なくなる。添加量が10重量部より多くなると、硬化性や硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0159】
(熱可塑性樹脂)
硬化性組成物には特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0160】
熱可塑性樹脂としては、分子中にアルケニル基および/またはSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にアルケニル基および/またはSiH基を平均して1分子中に少なくとも1個有していることが好ましい。
【0161】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱耐光性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に少なくとも1個有していることが好ましい。
【0162】
熱可塑性樹脂の分子量としては、特に限定はないが、ポリシロキサン系化合物との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0163】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい添加量の範囲は硬化性組成物全体の5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなり易い。添加量が多いと耐熱耐光性や高温での弾性率が低くなり易い。
【0164】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0165】
熱可塑性樹脂はポリシロキサン系化合物に溶解して均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、ポリシロキサン系化合物に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂をポリシロキサン系化合物に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態或いは/および混合状態としてもよい。
【0166】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となり易いという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0167】
(充填材)
硬化性組成物には必要に応じて充填材を添加してもよい。
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用或いは/および提案されている充填材等を挙げることができる。
【0168】
(老化防止剤)
本発明の硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0169】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0170】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0171】
(ラジカル禁止剤)
本発明の硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0172】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0173】
(紫外線吸収剤)
本発明の硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0174】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0175】
(溶剤)
本発明の硬化性組成物に使用される、ポリシロキサン系化合物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0176】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
【0177】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易い。
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0178】
(その他添加剤)
本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤、貯蔵安定剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0179】
(用途)
本発明の硬化性組成物或いは硬化物は、種々の用途に用いることができる。従来のアクリル樹脂およびエポキシ樹脂が使用される各種用途に応用することが可能である。
【0180】
例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素透過膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0181】
中でも、本発明の硬化性組成物はアルカリ現像性透明レジストとして使用できる材料であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料などが挙げられる。
【0182】
(フォトリソグラフィー性に関して)
本発明の組成物を用いた薄膜でコンタクトホール形成などの目的よりパターン形成する場合には、通常のレジスト材料の現像方法と同様の方法で行うことができ特に限定されるものではない。感光させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。
【0183】
露光量は特に制限されないが、露光量が少ないと硬化しない場合があり、また、露光量が多いとパターンが形成できない場合があるので、好ましい露光量の範囲は1〜5000mJ/cm2、より好ましくは1〜1000mJ/cm2である。
【0184】
また硬化性およびパターニング性向上の目的で、光硬化前後にプリベークおよびPEBを行っても良い。好ましい温度範囲は50〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。また、好ましい時間は0.1〜30分、より好ましくは0.1〜10分である。
【0185】
また現像液としては、一般に使用するアルカリ現像液であれば特に限定なく使用することができるが、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの等が挙げられる。
【0186】
また水溶液濃度に関しては、露光部と未露光部のコントラストがつきやすいという観点より、25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下であることが好ましい。
【0187】
またパターニング後の硬化物の特性を向上させるために、更にベークおよび露光を行っても良い。ベークの好ましい温度範囲は80〜300℃、より好ましくは100〜250℃である。好ましい時間は1〜120分、より好ましくは10〜90分であるまた露光の好ましい範囲は1〜10000mJ/cm2、より好ましくは10〜5000mJ/cm2である。
【0188】
(絶縁性について)
本発明の組成物で得られる硬化物は、高い絶縁性が要求される電子部品に適用できる。
【0189】
本発明の薄膜も上記いずれの半導体層についても絶縁膜として特に限定なく適用することができる。例えば、薄膜で高い絶縁性が求められるTFT用絶縁膜などのゲート絶縁膜、パッシベーション膜などに適用することができる。
【0190】
薄膜トランジスタ等の電気デバイスを形成させた際、絶縁層にリーク電流等があると信号の応答遅延、誤作動、デバイス不良につながるため、その絶縁膜には高い絶縁性を有することが求められる。ただし溶液塗布により形成できるような樹脂組成物から形成される絶縁膜については、その薄膜に電圧を印加した場合のリーク電流量が大きすぎるため適用することできず、その絶縁性は電極間に形成された0.5μm以下の薄膜において30V電圧印加時における電極間リーク量が20nA/cm2以下であることが必須となる。さらに電子部品への信頼性を考慮すると10nA/cm2以下であることが好ましく、5nA/cm2であることがさらに好ましい。
【0191】
また絶縁膜の膜厚は、厚膜であればあるほど絶縁信頼性が高くなり、電極間のリーク電流量も小さくなる傾向にあるが、LSI素子、TFT等の絶縁膜へ適用する際に、素子の微細化、薄膜化のためにはさらに薄い膜厚で高絶縁性を有することが好ましく、その絶縁膜の膜厚についても1.0μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下の膜厚において上記で示すような電極間リーク電流量であることが好ましい。さらにトランジスタ形成において多層構造体とするためにはより薄い膜厚でかつ絶縁性が保持されることが好ましく、さらに好ましくは0.2μm以下の薄膜において上記で示すような電極間リーク電流量であることが好ましい。
【0192】
さらにこの絶縁膜は耐環境性にも優れていることが望ましく、−60℃〜0℃の低温条件下、20℃〜100℃の高温条件下、さらには20℃〜90℃で50〜100%RHの条件下に長時間保管した場合においてもその絶縁性が保持されていることが望ましい。
【0193】
また印加電圧としては、通常のTFTの駆動電圧として印加するレベルの電圧でのリーク電流が小さければ問題はないが、長期信頼性および印加時直後の瞬間的な過電圧などを加味すると、好ましくは0〜50V間でのどの電圧値において上記レベルの低リーク電流量であることが好ましく、より好ましくは0〜100Vであり、さらに好ましくは0〜200V間においてAC電圧、DC電圧問わず上記に示すレベルでの絶縁性が保持されていることが好ましい。
【実施例】
【0194】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0195】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
実施例1〜3および比較例1〜4で得た硬化性組成物に対し、下記方法を用いて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0196】
【表1】

【0197】
本発明の硬化性組成物を硬化することによって得られる硬化物は、比較例の組成物と比較して優れたパターニング性および絶縁性と耐熱耐光性を有する硬化性材料として機能する。
【0198】
(パターニング性評価)
下記実施例、比較例で得られた樹脂組成物を用いて下記のようなパターニング評価サンプルを作製した。ガラス基板に樹脂組成物をスピンコーティングしたものを、65℃に加熱したホットプレート上で1〜5分加熱し、露光装置(高圧水銀ランプ、マスクアライメント装置 MA−10 ミカサ社製)を用い、20μm角のパターンマスクを通して、それぞれ最適な積算光量で露光し(プロキシミティ露光、ギャップ12μm)、65℃に加熱したホットプレート上で1〜5分加熱し、アルカリ性現像液(TMAH2.38%水溶液)に60秒浸漬後、60秒水洗して、圧縮空気または圧縮窒素で表面の水分を除去してパターンを形成した。
【0199】
その後150℃加熱したホットプレート上にて1時間加熱して評価サンプルを得た。得られた評価サンプルを、3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000 オリンパス社製)と触針式表面形状測定器(Dektak 150 Veeco社製)を用いてパターン形状を観測し、20μm角ホール周辺の状態を下記基準に従い評価した。
【0200】
<評価基準>
○:ホールの側面から50μm以内の膜に凹み無し
×:ホールの側面から50μm以内の膜に凹み有り
××:ホールの形成ができない
(絶縁性評価)
下記実施例、比較例で得られた樹脂組成物を用いて下記のような絶縁性評価サンプルを作製した。表面を#400研磨したSUS板に樹脂組成物をスピンコーティングしたものを、積算光量200mJ/cm2露光した。その後、150℃加熱したホットプレート上にて1時間加熱して薄膜を形成した。さらにその薄膜上にスパッタでAl電極(6mmφ)を形成した。
【0201】
絶縁性については、プレシジョン半導体パラメータ・アナライザ測定装置(4156C Agilent社製)を用いて、絶縁膜を挟んだ電極間(SUS−Al)に0〜50Vの電圧を0.5Vずつステップで印加し、30V印加時の電極単位面積当たりのリーク電流量を測定し評価を行った。このときの膜厚は触針式表面形状測定器により計測した。
【0202】
(耐熱耐光性評価)
下記実施例、比較例で得られた樹脂組成物を用いて下記のような耐熱耐光性評価サンプルを作製した。ガラス板上に樹脂組成物をスピンコーティングしたものを、積算光量150mJ/cm2露光した。その後、200℃加熱したホットプレート上にて30分加熱して薄膜を形成した。
【0203】
耐熱耐光性については、メタリングウェザーメーター(M6T スガ試験機社製)を用いて、BPT85℃、照射強度0.7kW/m2で積算光量50MJ/m2を照射し、試験前の膜厚と試験後の膜厚を触針式表面形状測定器により測定し、その際の膜厚減少率を評価した。
【0204】
(合成例1)
500mL四つ口フラスコにトルエンを57.5g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを57.5g入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレートを3.2g、ジアリルイソシアヌル酸を6.0g、1,4−ジオキサンを42.1gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を18.7mgの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後に1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物A」を得た。
【0205】
100mL四つ口フラスコにトルエンを40g、「反応物A」を10g入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシドを1.7gおよびトルエンを1.7gの混合液を加え、添加3時間後に1H−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物1」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を5.0mmol/gおよびエポキシ基1.0mmol/gを有するポリシロキサン系化合物であることを確認した。
【0206】
(合成例2)
100mL四つ口フラスコにトルエンを40g、合成例1で得られた「反応物A」を10g入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシドを3.3gおよびトルエンを3.3gの混合液を加え、添加3時間後に1H−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物2」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を4.0mmol/gおよびエポキシ基2.0mmol/gを有するポリシロキサン系化合物であることを確認した。
【0207】
(合成例3)
500mL四つ口フラスコにトルエンを57.5g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを57.5g入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。ジアリルイソシアヌル酸を10.0g、1,4−ジオキサンを70.0gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を18.7mgの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後に1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物C」を得た。
【0208】
100mL四つ口フラスコにトルエンを40g、「反応物C」を10g入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシドを1.7gおよびトルエンを1.7gの混合液を加え、添加3時間後に1H−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物3」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でSiH基を4.5mmol/gおよびエポキシ基0.9mmol/gを有するポリシロキサン系化合物であることを確認した。
【0209】
(実施例1)
成分(A)として「反応物1」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.166g、成分(C)としてビス(2,4−ペンタンジオナート)白金(II)を0.67mg、成分(D)としてBBI−103を26.6mg、触媒として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を2.0mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを13.3mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0210】
(実施例2)
成分(A)として「反応物1」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.166g、成分(C)としてビス(2,4−ペンタンジオナート)白金(II)を6.7mg、成分(D)としてBBI−103を13.3mg、触媒として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を2.0mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを13.3mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0211】
(実施例3)
成分(A)として「反応物3」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.166g、成分(C)としてビス(2,4−ペンタンジオナート)白金(II)を3.3mg、成分(D)としてBBI−103を26.6mg、触媒として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を2.0mg添加、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを13.3mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0212】
(比較例1)
成分(A)として「反応物1」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.166g、成分(D)としてBBI−103を26.6mg、触媒として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を2.0mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを13.3mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0213】
(比較例2)
成分(A)として「反応物2」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.083g、成分(D)としてBBI−103を23.3mg、触媒として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)を1.7mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを11.7mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0214】
(比較例3)
成分(A)として「反応物2」を0.5g、成分(D)としてBBI−103を23.3mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを11.7mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。
【0215】
(比較例4)
成分(A)として「反応物3」を0.5g、成分(B)としてトリアリルイソシアヌレートを0.166g、成分(C)としてビス(2,4−ペンタンジオナート)白金(II)を6.7mg、増感剤として9,10−ジフェニルアントラセンを13.3mg添加したものの20%PGMEA溶液を調整した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基および光重合性官能基を有するポリシロキサン系化合物、 (B)アルケニル基含有化合物、 (C)光活性型白金錯体触媒、 (D)光重合開始剤を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
成分(A)の光重合性官能基が、エポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、ビニルオキシ基からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
成分(A)の光重合性官能基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基、オキセタニル基またはグリシジル基である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
成分(A)の光重合性官能基の少なくとも1個がアルコキシシリル基である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
成分(B)が、下記一般式(I)
【化1】

(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
成分(B)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
成分(A)が、光重合性官能基を少なくとも2個およびSiH基を少なくとも2個かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を有するポリシロキサン系化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【化2】

【請求項8】
成分(A)が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
(α)アルケニル基を少なくとも1個有する有機化合物
(β)少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)光重合性官能基を少なくとも1個と、アルケニル基を少なくとも1個を有する化合物
【請求項9】
化合物(α)が、アルケニル基を少なくとも1個有する一般式(II)
【化3】

(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はアルケニル基を含む)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
化合物(α)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である請求項8または9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
化合物(α)が、1分子中にアルケニル基を少なくとも1個、かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を有する有機化合物であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【化4】

【請求項12】
化合物(β)が、下記一般式(III)
【化5】

(式中R4、R5は炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは2〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状オルガノポリシロキサン化合物であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
化合物(γ)が、下記一般式(IV)
【化6】

(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
成分(C)が、β−ジケトン白金錯体であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。

【公開番号】特開2011−221192(P2011−221192A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88965(P2010−88965)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】