説明

硬化性組成物の保存方法

【課題】本発明が解決すべき課題は、長期保存が可能な多官能(メタ)アクリレートの保存方法を提供する。
【解決手段】下記式(1):
【化4】


[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含む硬化性組成物を
保存温度が0℃以上50℃以下、
組成物層に接触する気相部の分子状酸素分圧を、1〜30kPa、
溶存酸素濃度を10〜70ppmで
保存すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物の保存方法に関する。更に詳しくは、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、光学用途に好適な重合体を含有する硬化性組成物の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多官能(メタ)アクリレートは、1分子内に複数のラジカル重合性基を有し、従来よりUV硬化成分や熱硬化性分として透明コート剤、絶縁体、封止材、印刷版、塗料、粉体塗料、注型材料、化粧板、WPC、被覆材、ライニング材、土木建築材料、パテ、補修材、床材、SMC・BMC等成形材料、シート等の用途に広範囲の工業用途に用いられる有用な化合物である。
【0003】
特許文献1にはビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルについて、遮光条件下、特定の水分濃度、酸素濃度にて保存することによって長期間安定的に保存することが可能であることを提案している。
【0004】
しかしながら、多官能の(メタ)アクリレートは、その容易なラジカル重合性ゆえに安定性が悪く、保存時に分解物の生成による着色や重合による粘度の増大や、場合によってはゲル化を引き起こす場合があった。着色は特に光学用途などでの高度に透明性が要求される用途には重要な物性であり、重合性の制御は硬化性組成物の取り扱い性のみならず、硬化性や硬化物の物性にも影響がある場合がある。このため多くの場合、多官能(メタ)アクリレートは重合禁止剤の添加により重合を防止する方法が用いられてきた。重合禁止剤は保存時の重合を抑制することが出来るが、硬化時には硬化阻害の要因となる場合があるという問題があった。
特許文献2には特定のウレタンアクリレートに着目し、0〜10℃では結晶化のため作業性が著しく低下することを開示し、このましい保存温度および重合禁止剤の併用を提案している。しかしながら結晶化温度は化合物に特有の性質であり、より一般的な長期保存が可能な多官能(メタ)アクリレートの保存方法の開発が切望されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−326976
【特許文献2】特開2006−298790
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、特定構造を有する多官能(メタ)アクリレートを、その重合性を損なうことなく着色安定性、粘度安定性を向上させ、安定的に保存する方法を提供することを目的とする。また、本発明では、上記特定構造を有する多官能(メタ)アクリレートを含む組成物が長期間保存後も取り扱い性に優れ、良好な硬化性を有する多官能(メタ)アクリレートの保存方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、多官能(メタ)アクリレートの保存方法について鋭意検討した結果、
(1)多官能(メタ)アクリレートの保存温度
(2)多官能(メタ)アクリレートに接する気相部の分子状酸素分圧、
(3)多官能(メタ)アクリレートを含有する液層の溶存酸素濃度
によって安定性に著しい変化があることを見いだし、これらの保存環境を制御することによって、多官能(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物を安定的に取り扱うことができることに想到した。
【0008】
すなわち本発明は下記一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】

[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物を
保存温度が0〜50℃、
組成物層に接触する気相部の分子状酸素分圧を、1〜30kPa、
溶存酸素濃度を10〜70ppmで
保存することを特徴とする硬化性組成物の保存方法である。
【0011】
本発明は上記ビニル系重合体がゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定される数平均分子量が500〜100,000であることを特徴とする硬化性組成物の保存方法である。
【0012】
さらに本発明は上記に記載の硬化性組成物が下記一般式(2):
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、水素原子、OH基又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Zは、水素原子、OH基又は有機残基を表す。nは、1以上の整数である]
を含有することを特徴とする硬化性組成物の保存方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定構造を有する多官能(メタ)アクリレートをゲル化や粘度増大、着色することなく、長期間安定的に保存することができる。特に高度に透明性が要求され、使用前に高精度の濾過を行なう光学用途などに特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
≪多官能(メタ)アクリレート≫
本発明では下記一般式(1):
【0017】
【化3】

【0018】

[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体(以下多官能アクリレートポリマーと称する場合がある)を必須成分とする。多官能アクリレートポリマーは、低分子量成分が増加すると硬化物の機械強度が低下することがある。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは2,000〜50,000の範囲内である。多官能アクリレートポリマーの数平均分子量(Mn)が500未満であると、硬化速度の低下や硬化物の強度低下を生じることがある。また100,000を超えると粘度が高くなり取り扱い性やその他の成分との混同が困難となる場合がある。ここで、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、THFを移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/minの条件下で、東ソー株式会社製のカラム TSK−gel SuperHM−H 2本、TSK−gel SuperH2000 1本を用い、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0019】
多官能アクリレートポリマーは、固体状の単量体から得た重合体含有量が多い場合を除き、液状粘性体として得ることができる。液状粘性体であれば、コート用途に用いる場合であってもモノマー成分で希釈して樹脂粘度を下げなくてもスピンコートが可能である。又、必要であればモノマー成分と混合しても良いが、モノマー成分との溶解性が良いので、樹脂組成物を調整する際に作業効率の向上化が図れる。粘度が低いと作業性が良く、また、基体との濡れ性は向上する。本発明のビニル系重合体の粘度は、好ましくは10mPa・s〜100Pa・s、より好ましくは100mPa・s〜50Pa・s、さらに好ましくは500mPa・s〜50Pa・sである。ここで、粘度は、有り姿の状態で、温度25℃の条件下、RB80型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて算出した値である。
【0020】
上記式(1)において、Rで表される炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基などが挙げられる。Rで表される置換基は、上記式(1)中にm個存在するが、同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
上記式(1)において、mは正の整数、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。
【0022】
<多官能アクリレートポリマーの調製>
上記式(1)で示される多官能アクリレートポリマーは、下記式(3):
【0023】
【化4】

【0024】
[式中、R、Rおよびmは上記式(1)と同意義である]
で示される異種モノマー成分を、従来から知られているカチオン重合法またはリビングカチオン重合法で合成が可能である。この時、上記式(3)で示される異種モノマー成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。後者の場合、得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0025】
カチオン重合の方法としては重合触媒、共触媒、重合溶媒、重合温度、重合濃度など各種反応条件を適宜選択することができ、重合触媒、共触媒はカチオン重合に採用可能な従来公知の開始剤が使用できる。
【0026】
具体的には水、メタノール、エタノール、フェノール等の共触媒下で
フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のブレンステッド酸類;
三フッ化ホウ素及びその錯体類、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄等のルイス酸類;
ジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛等の有機金属化合物類;
リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、リンモリブドニオブ酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングストバナジン酸、ゲルマニウムタングステン酸、ホウタングステン酸、ホウモリブデン酸、ホウモリブドタングステン酸、ホウモリブドバナジン酸、ホウモリブドタングストバナジン酸、及び上記リンタングステン酸の部分中和金属塩等のヘテロポリ酸類;
およびこれらの塩、錯体などを重合触媒に用いる方法が挙げられる。
【0027】
これらのうち、ルイス酸類、ヘテロポリ酸類が好ましく、ヘテロポリ酸類がより好ましい。さらにヘテロポリ酸類としては、Mo、W、Vのうち少なくとも一種の酸化物と、他の元素(例えばP、Si、As、Ge、B、Ti、Ce等)のオキシ酸とが縮合して生ずるオキシ酸又はその塩が好ましく、後者に対する前者の原子比は2.5〜12が好ましく、特に12のものが好適である。
【0028】
本発明で用いる重合触媒の添加量は適宜調整すれば良いが、例えばヘテロポリ酸では、高活性であるため、ビニルエーテルに対する使用量は100ppm以下であっても十分に重合反応が進行するが、必要に応じて開始剤量を増やしてもよい。通常、開始剤使用量はカチオン重合可能な単量体総量に対して、1ppm〜3重量%であり、好ましくは10ppm〜5000ppmである。また、高分子量体を得るためには10ppm〜100ppmが好ましい。
【0029】
また、リビングカチオン重合を用いる場合には、特開2006ー241189号の方法などを用いることができる。
【0030】
重合溶媒としては非プロトン性の溶媒が好ましい。具体的にはトルエンやキシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサンやオクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の飽和環状炭化水素、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等が使用できる。また、高分子量体を得るためには、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、飽和環状炭化水素類、エステル類等の非極性溶媒を使用することが好ましい。また、特に所定の分子量の重合体を得るには反応系中の水分、アルコール等の管理が非常に重要になる。反応系中の水分、アルコールなどのプロトン性化合物の量は3000ppm以下が好ましく、2000ppm以下がより好ましい。さらに好ましく1000ppm以下である。反応系中のプロトン性化合物の量が3000ppmを超えるとカチオン重合停止剤として働き、重合反応が停止してしまい分子量の制御が困難となったり、所定の分子量の重合体が得られなくなる恐れがある。
【0031】
本発明において、カチオン重合可能な単量体を重合する温度は特に制限はないが、−10〜100℃が好ましい。特に高分子量体を得るためには、重合温度を10〜60℃に、加熱又は冷却により調整することが好ましい。重合中、反応容器内の重合液温度がほぼ一定になるように重合することで得られる重合体の分子量分布が狭くなるので、できるだけ重合温度を調整することが好ましい。重合温度が−10℃未満では、重合速度が小さくなったり、得られる重合体の分子量が低くなったり、あるいは固化したり粘度が高くなったりして取扱いが困難になる場合がある。重合温度が100℃を超える場合には得られる重合体の分子量が低くなる場合がある。
また反応圧力は、常圧または加圧の何れでも良いが、通常は常圧で実施する。
【0032】
本発明ではカチオン重合可能な単量体の一部、または全部を滴下し重合反応を行なうことが好ましい。また開始剤についても滴下することが好ましい。カチオン重合可能な単量体や開始剤を滴下し重合反応を行なうことで、反応初期の発熱が抑制され反応温度を一定に保つことが可能となり、さらに低分子量重合体の生成が抑制され、分子量分布の狭い重合体が得られるという新たな効果も得られる。
【0033】
重合反応後は必要に応じ、アルコールや、アンモニアおよびアミン等の有機塩基あるいはNaOHやKOH等の無機塩基を加え反応を停止しても良い。
【0034】
また、本発明では(メタ)アクリレート基が未反応でカチオン重合を行なう必要があるため、好ましくは窒素/空気ミックスガス、特に好ましくは酸素濃度3〜10容量%に制御された窒素/酸素ミックスガスで気相部を維持することが好ましい。またラジカル重合禁止剤の使用や遮光性の反応器中での重合も効果的である。
【0035】
上記式(3)で示される異種モノマー成分の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。これらの異種モノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適である。
【0036】
上記式(3)で示される異種モノマー成分は、従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記式(3)において、Rがエチレン基、mが1である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−ハロゲノエチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。また、上記式(3)において、Rがエチレン基、mが2である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−(2−ハロゲノエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。
【0037】
上記式(1)で示されるビニル系重合体がカチオン重合可能な単量体に由来する構造単位を有する共重合体である場合、かかる共重合体は、上記式(3)で示される異種モノマー成分と、カチオン重合可能な単量体とを、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合することにより、容易に調製することができる。このとき、上記式(3)で示される異種モノマー成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0038】
カチオン重合可能な単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;イソプロペニルスチレン、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチルなどのジビニル化合物やトリビニル化合物;などが挙げられる。これらのカチオン重合可能な単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合可能な単量体のうち、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物が好適である。
【0039】
上記式(3)で示される異種モノマー成分は、ラジカル重合性またはアニオン重合性の(メタ)アクリロイル基と、カチオン重合性のビニルエーテル基とを同時に有するので、重合方法を選択することにより、(メタ)アクリロイル基またはビニルエーテル基をペンダント基として有する重合体が得られる。本発明では、上記式(3)で示される異種モノマー成分のビニルエーテル基を、単独で、あるいは、カチオン重合可能な単量体と共に、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合させることにより、(メタ)アクリルロイル基をペンダント基として有する上記式(1)で示されるビニル系重合体が得られる。

【0040】
上記式(3)で示される異種モノマー成分と、カチオン重合可能な単量体とをカチオン重合あるいはリビングカチオン重合する場合、単量体のモル比(カチオン重合可能な単量体/上記式(3)で示される異種モノマー成分)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは0.8〜2の範囲内である。
【0041】
≪保存条件≫
本発明では上記多官能アクリレートポリマーの保存条件として、
保存温度が0〜50℃、
組成物層に接触する気相部の分子状酸素分圧を、1〜30kPa、
溶存酸素濃度を10〜70ppmで
保存することを必須とする。
【0042】
本発明における「保存」との用語は、多官能アクリレートポリマーを含有する硬化性組成物をタンクローリー等での輸送;タンク、容器等での貯蔵;パイプ、バルブ、ノズル等を含めた配管での移送;反応釜、反応装置、タンク、容器等での混合・攪拌等を意味する。これらの操作は単独でも、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて実施することもできる。
【0043】
本発明では多官能アクリレートポリマーを保存するに際し、保存温度が0〜50℃である。好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。保存温度が0℃より低い場合には保存容器に特別な冷却装置が必要となり、経済性が悪くなるばかりでなく、多官能アクリレートポリマーまたは硬化性組成物の粘度が大きくなり、作業性が悪くなる。本発明では多官能アクリレートポリマーを必須成分として含有しているため、粘度が高く、取り扱い性の向上は重要な技術課題である。また保存温度が50℃より高い場合にはゲル化や分子量の増大、または粘度の上昇が起こり得る。
【0044】
本発明では、多官能アクリレートポリマーを保存するに際し、その気相部、すなわち多官能アクリレートポリマーに接触する気相部の分子状酸素分圧を特定範囲に調整して取り扱う。気相部の分子状酸素分圧としては、1〜30kPaであり、2kPa以上が好ましく、5kPa以上がより好ましく、27kPa以下が好ましく、25kPa以下がより好ましい。上記分子状酸素分圧の範囲が、安定的な取り扱いの点及び経済性の点で好ましい。
【0045】
なお、この「気相部(多官能アクリレートポリマーに接触する気相部)」とは、多官能アクリレートポリマーを取り扱う際に、タンクローリー、タンク等の容器や構造物等に充填したときの気相部を意味する。
【0046】
上記気相部の分子状酸素濃度を1〜30kPaに調製する方法としては、例えば、空気もしくは窒素、アルゴン等の不活性ガスを気相部及び/又は液相部に吹き込む方法;不活性ガスと酸素との混合ガスを気相部及び/又は液相部に吹き込む方法等の方法が挙げられる。空気または酸素と、不活性ガスとの混合ガスを液相部にバブリングによって吹き込み、液相部の酸素濃度を平衡状態にし、その後気相部の酸素分圧を一定に保つ方法が好ましい。
【0047】
本発明では保存中の液相部の酸素濃度を10〜70ppmである。15ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましく、66ppm以下が好ましく62ppm以下がより好ましい。液相部の酸素濃度が10ppmより少ない場合にはゲル化や分子量の増大、または粘度の上昇が起こり得る。液相部の酸素濃度が10ppmより低下すると気相部の酸素濃度の調整をおこなった場合にも、平衡状態になるまでに時間がかかりゲル化等が起こる場合があり、保存中は10ppm以上を保つことが好ましい。また液相部の酸素濃度が70ppmより大きい場合には着色や微小ゲルが発生することがあり、たとえば光学用途などでは透明性に影響があるだけではなく、使用前に濾過工程時に濾過時間が長時間になるなどの不都合を起こす場合がある。本発明では多官能アクリレートポリマーを必須成分として含んでいるため、特に粘度が高く気相部と液相部の酸素濃度の平衡到達時間が長いため、上記範囲の酸素濃度を維持するためには脱泡や脱気等の液相部の溶存気体を減少させる工程を含まないことが好ましい。
【0048】
上記液相部の酸素濃度を10〜70ppmに調製する方法としては、例えば、酸素濃度を調整した空気もしくは窒素、アルゴン等の不活性ガスを液相部に吹き込む方法;気相部の酸素濃度を調整した容器中で気−液界面を攪拌し、液相部の溶存酸素濃度を調整する方法;あらかじめ酸素濃度を調整した溶剤などを添加する方法等の方法が挙げられる。空気または酸素と、不活性ガスとの混合ガスを液相部にバブリングする方法が好ましい。
【0049】
本発明では保存容器は特に限定されないが、好ましくは遮光性構造物中で取り扱うことで安定的な取り扱いを可能にする。本発明における取り扱いに用いられる「遮光性構造物」とは、遮光性材質により構成されたタンクローリー等の輸送用構造物;タンク、ドラム、ビン、缶等の貯蔵用構造物;パイプ、ノズル、バルブ等の移送用構造物;反応釜、タンク、容器等の混合・攪拌用構造物;等の構造物であり、構造物内部に光が達することができる構造物内表面積は、全構造物内表面積の20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、8%以下が特に好ましい。また、ここでいう「遮光性材質」とは、実質的に光(可視光線、紫外線及び赤外線)を透過しない材質である。更に、構造物内部に光が達することができる構造物内表面部分もしくは構造物内部に光が達することができない構造物内表面部分は連続的あるいは非連続的でもよい。
【0050】
上記、遮光性材質とは、特に限定されるものではないが、例えば、工業用純鉄、炭素鋼、合金、鋳鉄、磁器、化学用陶器、不透明なプラスチック樹脂、内側及び/又は外側が不透明な樹脂により覆われたガラス、内側及び/又は外側が金属によりメッキされたガラス等のガラス等が挙げられる。
【0051】
これらの実質的に光を透過しない材質は、単独でも、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。なお、括弧内に代表的な規格記号、商品名等を記載した。また、「不透明な」とは、実質的に光(可視光線、紫外線及び赤外線)を透過しないことを意味する。
【0052】
これらの中でも、鉄及び鋼、高ケイ素鋳鉄、高ニッケル鋳鉄、高クロム鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、特殊オーステナイト系ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金、高マンガン鋳鋼、銅及び銅合金、Cu−Ni合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金、ニッケル、Ni−Cr−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Mo−Fe−Cr合金、Ni−Cr−Cu−Mo合金、Ni−Si合金、コバルト合金、鉛及び鉛合金、錫、亜鉛及び亜鉛合金、タングステン、チタン及びチタン合金、ジルコニウム及びジルコニウム合金、モリブデン、クロム等が好適である。これらの遮光性材質は、単独でも、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明において多官能アクリレートポリマーの保存圧力も特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、加圧、減圧の何れの圧力でもよい。
【0054】
≪添加剤≫
本発明の多官能アクリレートポリマーは酸化防止剤や着色防止剤またはラジカル重合防止剤(以下酸化防止剤等と称する場合がある)を添加することができる。
【0055】
本発明で用いる酸化防止剤等としては特に限定されず、一般に酸化防止剤等として用いられるものであるならばいずれも使用することができる。具体的には、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系参加防止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系酸化防止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系酸化防止剤;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系酸化防止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等のN−オキシル系酸化防止剤;等が挙げられる。これらの中でも、好ましい酸化防止剤等として、アルキルフェノール系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸銅系酸化防止剤、N−オキシル系酸化防止剤を挙げることができる。より好ましくはアルキルフェノール系酸化防止剤であり、特に好ましくは下記一般式(2):
【0056】
【化5】

【0057】
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、水素原子、OH基又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Zは、水素原子、OH基又は有機残基を表す。nは、1以上の整数である]
で示される酸化防止剤である。酸化防止剤の配合量としては、多官能アクリレートポリマーに対して、下限値としては5質量ppmであることが好ましい。5質量ppm未満であると、保存安定性を充分には向上できないおそれがある。より好ましくは、10質量ppmであり、更に好ましくは、20質量ppmであり、更に好ましくは、50質量ppmであり、特に好ましくは、100質量ppmであり、最も好ましくは、200質量ppmである。上限値としては、10000質量ppmであることが好ましい。10000質量ppmを超えると、硬化性が充分には向上しないおそれがある。より好ましくは、5000質量ppmであり、更に好ましくは、2000質量ppmであり、特に好ましくは、1000質量ppmである。
【0058】
上記式(2)で示される酸化防止剤は、置換基として少なくともフェノール性水酸基が結合するフェニル基を有する化合物であり、フェノール性水酸基が結合している炭素原子の両隣の炭素原子において、一方の炭素原子に水素原子が結合し、他方の炭素原子にアルキル基が結合する構造を有する化合物である。上記Rにおいて、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、t−アミル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が好適である。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基が好ましい。より好ましくは、t−ブチル基、t−アミル基である。
上記Rにおける炭素数1〜10のアルキル基としては、Rにおける炭素数1〜10のアルキル基と同様である。
上記Zにおいて、有機残基としては、炭素数1〜40の有機残基が好適であり、例えば、直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基;エーテル結合、エステル結合、アセタール結合、アミド結合、リン酸エステル結合、亜リン酸エステル結合の少なくとも1つを有する有機残基;置換されていてもよい芳香族基等が好適である。これらの中でも、直鎖状又は分枝状の炭素数2〜6のアルキル基、エステル結合を有する炭素数10〜30の有機残基、エーテル結合及びエステル結合を有する炭素数10〜30の有機残基、アミド結合を有する炭素数6〜15の有機残基、エステル結合及びアミド結合を有する炭素数10〜30の有機残基、エステル結合及びアセタール結合を有する炭素数20〜40の有機残基、炭素数6〜10の芳香族基等が好ましい。より好ましくは、ブタン骨格残基、ペンタン骨格残基である。
上記nは、1以上の整数であり、1〜5が好適である。好ましくは、1〜3である。
上記酸化防止剤としては、例えば、下記のような化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
2−t−ブチルフェノール、2−t−アミルフェノール、2−t−ブチルハイドロキノン、2−t−アミルハイドロキノン、2−t−ブチル−4−メトキシハイドロキノン、2−t−アミル−4−メトキシハイドロキノン、2,3−ジ−t−ブチルフェノール、2,3−ジ−t−アミルフェノール、2,3−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,3−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,3−ジ−t−ブチル−4−メトキシハイドロキノン、2,3−ジ−t−アミル−4−メトキシハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミル−4−メトキシハイドロキノン、トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−プロピル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,5,6−トリ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−プロピル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,5−ジ−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2,5,6−トリ−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
4,4−ブチリデン−ビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3,5−ジメチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3,5,6−トリ−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(6−t−アミルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−アミルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3,5−ジメチル−6−t−アミルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3,5,6−トリ−t−アミルフェノール)、3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸へキサデシル、3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3−(3−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシル、3−(3−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、テトラキス[メチレン−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、テトラキス[メチレン−3−(3−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピノニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)プロピノニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N′−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]へキサメチレンジアミン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフェートジエチルエステル、3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジルホスフェートジエチルエステル、ジ(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−アミル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、2,2′−オキサミドビス[エチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2′−オキサミドビス[エチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]。
これらの中でも、2−t−ブチルハイドロキノン、2−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、4.4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−アミルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピノニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N′−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフェートジエチルエステル、ジ(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、2,2′−オキサミドビス[エチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が好ましい。
より好ましくは、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネ−ト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−アミルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等である。
【0059】
≪その他成分≫
本発明の多官能アクリレートポリマーは組成物として保存しても良く、単独で保存しても良い。組成物として保存する場合には、他のポリマー、共硬化可能なモノマーやオリゴマー、重合開始剤、表面調整剤、溶剤や有機または無機微粒子などが配合成分として添加可能である。これらは単独で配合してもよく、または2種以上を配合することもできる。
【0060】
他のポリマーとしては反応性、非反応性のポリマーが挙げられる。反応性または非反応性のポリマーは従来公知のもののうち多官能アクリレートポリマーと相溶するポリマーが好ましい。特に反応性ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸付加系反応性ポリマーがもっとも好ましい。
【0061】
共硬化可能なモノマーとしては特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系単量体;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、等の1官能(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸(2−ビニロキシエトキシ)エチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−メンタンー1,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−2,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−3,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.2]−オクタン−1−メチル−4−イソプロピル−5,6−ジメチロールジ(メタ)アクリレート、各種分子量のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレートトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、などの(メタ)アクリル酸系誘導体;トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチロールメラミンのアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルのアジピン酸エステル、アリルアセタール、メチロールグリオキザールウレインのアリルエーテルなどのアリルエーテル系単量体;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル系単量体;フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸エステル系単量体;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、などの1,3−ジオキソラン系単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルピロリドン;などが挙げられる。これらのモノマー成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのモノマー成分のうち、(メタ)アクリル系エステル化合物が好適で、さらに脂環構造置換基を有する(メタ)アクリル系エステル化合物が好適である。
【0062】
共硬化可能なオリゴマーとしては例えば、分子中に重合性官能基を1つ以上有するアクリル系オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリウレタンオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリスチレンオリゴマー、シリコンオリゴマー、ゴム系オリゴマーなどが挙げられ、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマーが好適である。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を配合しない場合には、電子線を照射することにより、熱重合開始剤を配合した場合には、加熱により、また、光重合開始剤を配合した場合には、紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
【0064】
例えば、加熱による硬化の場合、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などを用いればよい。加熱温度は、基材の種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃の範囲内である。加熱時間は、塗布面積などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜24時間、より好ましくは10分間〜12時間、さらに好ましくは30分間〜6時間の範囲内である。
【0065】
例えば、紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いればよい。このような光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜5J/cm2、より好ましくは0.15〜3J/cm2、さらに好ましくは0.2〜1J/cm2の範囲内である。
【0066】
例えば、電子線による硬化の場合、加速電圧が好ましくは10〜500kV、より好ましくは20〜300kV、さらに好ましくは30〜200kVの範囲内である電子線を用いればよい。また、照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、さらに好ましくは4〜200kGyの範囲内である。電子線と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。

【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
まず、ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)の測定について説明する。
【0069】
<数平均分子量および分子量分布>
ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算で求めた。測定条件は、以下の通りであった。
移動相:THF、温度:40℃、流速:0.3mL/min;
カラム:TSK−gel SuperHM−H 2本
TSK−gel SuperH2000 1本(いずれも東ソー株式会社製);計測機器:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)。
【0070】
次に、ビニル系重合体の粘度の測定について説明する。
<粘度>
粘度は、RB80型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて測定した。なお、測定温度は25℃である。

≪製造例1≫ ビニル系重合体P(VEEA/CHVE)の合成
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル80gを加え、40℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)99gとシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)101gの混合物、酢酸エチル13gとリンタングステン酸13mgの混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA/CHVE)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2,100、分子量分布(Mw/Mn)は2.12であった。

≪製造例2≫ ビニル系重合体P(VEEA)の合成
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル80gを加え、20℃へ昇温した。昇温後、VEEA200g、酢酸エチル13gとリンタングステン酸13mgの混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2,610、分子量分布(Mw/Mn)は1.86であった。

≪製造例3≫ ビニル系重合体P(VEEA/DHF)の合成
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル80gを加え、40℃へ昇温した。昇温後、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA)128gと2,3−ジヒドロフラン(DHF)72gの混合物、酢酸エチル13gとリンタングステン酸13mgの混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA/DHF)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は9,840、分子量分布(Mw/Mn)は1.97であった。



≪実施例1〜9、比較例1〜10≫
上記製造例1〜3で得られたビニル系重合体、重合性単量体、酸化防止剤、及び表面調整剤を表1に示す割合で混合・攪拌した。この樹脂液をPTFEタイプメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製T100A142C(フィルター直径142mm、孔径1.0μm))を用いて、樹脂温度40℃、2kg/cmの加圧下にてろ過することにより、硬化性樹脂を調製した。また、硬化性樹脂の粘度及びハーゼン色数を以下に示す方法により測定した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】

<ハーゼン色数>
JISK0071−1に準じ、ハーゼン標準比色液との比色によりハーゼン色数を求めた。ハーゼン色数100以下を合格とした。

〔貯蔵安定性試験〕
1Lのステンレス製角缶に上記硬化性樹脂500gを投入し、表2及び3に示す酸素分圧の酸素/窒素混合気体を硬化性樹脂中にバブリングして容器内を表2及び3に示す酸素分圧の酸素/窒素混合気体で充分に満たし、溶存酸素濃度を測定してから容器を密閉した。同一の樹脂組成・酸素分圧・貯蔵温度による試験条件で各3缶用意し、樹脂を入れた容器を表2及び3に示す貯蔵温度にて3ヶ月静置貯蔵した。容器のフタを開け、3缶すべてゲル化せず流動性を保っていれば、ハーゼン色数、フィルターろ過性、コート性の評価を行った。結果を表2及び3に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
*注:貯蔵安定性試験において、3缶中1缶以上ゲル化し、評価を中断した(不合格)。

<溶存酸素濃度>
溶存酸素計(セントラル科学株式会社製UC−12−SOL型)を用いて測定した。

<フィルターろ過性>
貯蔵安定性試験を実施した硬化性樹脂をPTFEタイプメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製T100A142C(フィルター直径142mm、孔径1.0μm))にて樹脂温度40℃、2kg/cmの加圧下にてろ過し、1000gろ液が通過するまでの時間にてフィルター通過性を評価した。

○(合格):30分以内にすべてフィルターを通過した
×(不合格):30分以上経っても樹脂がフィルター上を通過しなかった

<コート性>
貯蔵安定性試験を実施した硬化性樹脂に、あらかじめ上記メンブレンフィルターにてろ過した光重合開始剤(商品名「ダロキュア1173」、チバ・ジャパン株式会社製)を硬化性樹脂100質量部に対して5質量部添加・混合し、充分脱泡することにより硬化性樹脂組成物を調製した。
【0076】
次に、直径120mm、厚さ1mmのポリカーボネート板基材上に、スピンコーターを用いて、上記硬化性樹脂組成物を厚さ100μmで塗布した。このPCシートに塗布した樹脂層を塗布後15秒以内にパルスUV照射装置(キセノン・フラッシュランプ型式RC−801;キセノン株式会社製)を用いて紫外線硬化させた(積算光量360mJ/cm)。得られたPCシート上の硬化物の表面状態を評価した。

○(合格):PCシート状に均一に硬化物が積層された
×(不合格):硬化物にピンホールやうねりが発生した

≪比較例11≫
表1における組成1の配合比により調製された硬化性樹脂を1Lのステンレス製角缶に500gを投入し、溶存酸素濃度が1ppmになるまで窒素を硬化性樹脂中にバブリングした。その後、容器の気相部に酸素分圧5kPaの酸素/窒素混合気体で充分に満たし、容器を密閉した。以上の条件にて硬化性樹脂を入れた容器を3缶用意し、樹脂を入れた容器を25℃にて3ヶ月静置貯蔵した。容器のフタを開け内容物を確認したところ、3缶すべて缶の底にある部分の樹脂がゲル化していた。

≪比較例12≫
比較例11に対して硬化性樹脂の代わりにアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA:粘度4mPa・s)を用いた他は比較例11と同様の試験を行った。容器のフタを開け内容物を確認したところ、3缶すべてゲル化せず、粘度は4mPa・sのままであり、フィルターろ過性は良好であったが、コート性は未硬化部分が発生した。


なお、表中の略称は下記の通りである。
・BP−4EA:ビスフェノールAのエチレンオキシド4EO付加物のジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、共栄社化学株式会社製)
・9EG−A:PEG#400ジアクリレート
(商品名「ライトアクリレート9EG−A」:共栄社化学株式会社製)
・THF−A:テトラヒドロフルフリルアクリレート
(商品名「ライトアクリレートTHF−A」、共栄社化学株式会社製)
・AO−30:
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)
ブタン
(商品名「アデカスタブAO30」、株式会社ADEKA製)
・AO−40:
4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)
(商品名「アデカスタブAO40」、株式会社ADEKA製)
・FZ−7002:ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名「FZ−7002」、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の多官能アクリレートポリマーの保存方法は、多官能アクリレートポリマーの重合性を損なうことなく保存時の重合を防止して多官能アクリレートポリマーの安定性を向上させることができることから、多官能アクリレートポリマーを安定的に保存することができ、架橋剤、粉体塗料用樹脂原料、更に重合性材料として接着剤、粘着剤、生体材料、歯科材料、光学部材、情報記録材料、光ファイバー用材料、レジスト材料、絶縁体、封止材、印刷インキ、塗料、粉体塗料、注型材料、化粧板、WPC、被覆材、ライニング材、土木建築材料、パテ、補修材、床材、舗装材ゲルコート、オーバーコート、ハンドレイアップ・スプレーアップ・引抜成形・フィラメントワインディング・SMC・BMC等成形材料、シート等の用途に広範囲の工業用途に好適に用いられる有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1):
【化1】


[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物を
保存温度が0〜50℃、
組成物層に接触する気相部の分子状酸素分圧を、1〜30kPa、
溶存酸素濃度を10〜70ppmで
保存することを特徴とする硬化性組成物の保存方法。
【請求項2】
上記ビニル系重合体がゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定される数平均分子量が500〜100,000であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物の保存方法。
【請求項3】
請求項1または2何れかに記載の硬化性組成物が下記一般式(2)

【化2】

[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、水素原子、OH基又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Zは、水素原子、OH基又は有機残基を表す。nは、1以上の整数である]
を含有する硬化性組成物であることを特徴とする硬化性組成物の保存方法。

【公開番号】特開2009−242470(P2009−242470A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88058(P2008−88058)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】