説明

硬化性組成物並びにこれを用いたコーティング用組成物、及びこれらの硬化物

【課題】 新規な重合性オリゴマーを用いた新規な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物と、硬化剤とを含有する硬化性組成物とする。


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜15のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していても良い。nは、ポリカ-ボネート基の平均繰り返し単位数であり、1〜30の実数を示す。なお、nが1を超える場合、それぞれのRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子末端にオキセタン構造を有するポリカーボネートと硬化剤とを含有する硬化性組成物、及びその硬化物に関する。本発明の硬化性組成物は、例えば、カチオンインク等のインク剤として利用でき、光カチオン重合開始剤を添加することにより紫外線等のエネルギー線硬化型コーティング用組成物として利用可能である。
【背景技術】
【0002】
オキセタンを有する化合物は、例えば、光硬化や熱硬化等が可能なモノマーとして使用することができ、更にこの化合物を硬化させて得られる樹脂は、耐熱性、機械特性、密着性等に優れていることが知られている。そこで、近年、このオキセタンを有する化合物を、例えば、電気部品等の成型品、耐熱レジスト材、コート材、接着剤等の原料、又は粉体塗料の架橋剤、改質剤等として利用することが期待されている。
【0003】
これまでに分子末端にオキセタンを有するジオキセタン化合物としては、例えば、特許文献1において、分子末端にオキセタンを有するジオキセタン化合物が既に報告されている。また、ポリカーボネートは、例えば、特許文献2に報告されているように、耐熱性、耐加水分解性等のカーボネート結合に由来した特性を示すことが知られており、この特性を活かしてポリカーボネート樹脂やポリウレタン樹脂等の種々の合成樹脂に利用されている。
【0004】
更に、特許文献3及び4には、ポリカーボネートポリオールとオキセタン樹脂とエポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有する光硬化性組成物が報告されている。
この光硬化性組成物は、例えば、紫外線等の光を照射することによって、光カチオン重合開始剤から発生したカチオンが、オキセタンやグリシジル基等を活性化することにより重合が起こり硬化性樹脂を与えるという組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124546号公報
【特許文献2】特開2004−292729号公報
【特許文献3】特開2007−284613号公報
【特許文献4】特表2008−533273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、前記特許文献1にて報告されている分子末端にオキセタンを有するジオキセタン化合物において、本発明のポリアルキレンカーボネートを有するジオキセタン化合物については、一切記載されていない。また、例えば、前記特許文献2及び特許文献3にて報告されている光硬化性組成物についても、安定なポリカーボネートポリオールの水酸基と、歪んだ環構造を有するオキセタンやグリシジル基との反応性には大きな差があり、硬化反応が不安定になりやすいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、新規な重合性オリゴマーを用いた硬化性組成物、これを用いたコーティング用組成物、及びこれらの硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、具体的には以下のような構成を有する。
[1] 下記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物と、硬化剤とを含有する硬化性組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜15のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していても良い。nは、ポリカ-ボネート基の平均繰り返し単位数であり、1〜30の実数を示す。なお、nが1を超える場合、それぞれのRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
[2] 硬化剤が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、カルボン酸無水物、ベンゾオキサジン化合物からなる群より選ばれる1種以上の硬化剤である前記[1]に記載の硬化性組成物である。
[3] 重合開始剤を含有する前記[1]又は[2]に記載の硬化性組成物である。
[4] 重合開始剤が、熱カチオン重合開始剤である前記[2]〜[4]のいずれか一つに記載の硬化性組成物である。
[5] 重合開始剤が、光カチオン重合開始剤である前記[2]〜[4]のいずれか一つに記載の硬化性組成物である。
[6] 一般式(1)中の2つのRがメチル基又はエチル基である前記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の硬化性組成物である。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物である。
[8] 前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の硬化性組成物と有機溶媒を含有するコーティング用組成物である。
[9] 前記[8]のコーティング用組成物を硬化させた硬化物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、例えば、電気部品等の成型品、耐熱レジスト材、コート材、接着剤等の原料、あるいは粉体塗料の架橋剤、改質剤等として利用可能な、新規な重合性オリゴマーを用いた硬化性組成物又はコーティング用組成物を提供することができる。また、本発明の硬化性組成物又はコーティング用組成物を、例えば、光や熱を用いて硬化させることにより、例えば、耐熱性、耐加水分解性、耐クラック性等の諸特性を併有する新規な硬化物又は硬化皮膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<本発明の硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、少なくとも、下記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物と硬化剤とを含有する組成物を示す。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R、及びnは、前記と同じである。)
【0015】
<一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物>
本発明の硬化性組成物に含有されるオキセタン構造を有する化合物は、前記一般式(1)で表される化合物である。なお、本発明では、一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明の一般式(1)において、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。前記炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。なお、プロピル基及びブチル基は、位置異性体及び環状(シクロ)基を含む。また、2つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記Rとして、好ましくは2つのRがエチル基又はメチル基、より好ましくは2つのRが共にエチル基又はメチル基、特に好ましくは2つのRが共にエチル基である。
【0017】
一般式(1)において、Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜15のアルキレン基を示す。なお、これらのアルキレン基は各種異性体を含む。更に、前記アルキレン基は、アルキレン基中に不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又はヘテロ原子を有していても良い。
【0018】
前記Rにおける、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜15のアルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、より好ましくは炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、特に好ましくは炭素原子数3〜8の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基である。なお、これらのアルキレン基は、例えば、位置異性体等の各種異性体を含む。
【0019】
前記Rにおける、不飽和炭化水素基を有するアルキレン基は、例えば、アルケン結合(炭素−炭素二重結合)又はアルキン結合(炭素−炭素三重結合)を有するアルキレン基を示し、好ましくは2−ブテニレン基、2,4−ヘキサジエニレン基、メチルブテニレン基が挙げられる。なお、これらのアルキレン基は、例えば、互変異性体等の各種異性体を含む。
【0020】
前記Rにおける、芳香族炭化水素基を有するアルキレン基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環構造を有するアルキレン基を示し、好ましくはキシリレン基、ナフタレン−2,6−ジメチレン基、ビフェニル−4,4’−ジメチレン基が挙げられる。なお、これらのアルキレン基は、例えば、位置異性体等の各種異性体を含む。
【0021】
前記Rにおける、脂環式炭化水素基を有するアルキレン基としては、例えば、シクロプロパン環、シクロへキサン環等の脂環式環構造を有するアルキレン基を示し、好ましくはシクロプロピレン−1,2−ジメチレン基、シクロブチレン−1,3−ジメチレン基、シクロペンタメチレン−1,3−ジメチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジメチレン基が挙げられる。なお、これらのアルキレン基は、例えば、位置異性体等の各種異性体を含む。
【0022】
前記Rにおける、ヘテロ原子を有するアルキレン基としては、例えば、ヘテロ原子が酸素原子、又は硫黄原子の場合、エーテル結合を有するアルキレン基、又はチオエーテル結合を有するアルキレン基がそれぞれ挙げられる。
【0023】
nは、アルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の平均数を表し、1〜30の実数を示す。なお、nが1を超える場合は、それぞれRが異なるものであってもよく、例えば、Rが複数種類混在していてもよい。
【0024】
前記nとして、好ましくは1以上15以下、より好ましくは1を超えて15以下、更に好ましくは1を超えて5以下、特に好ましくは1を超えて15以下である。nが前記範囲外の場合、例えば、硬化剤との反応性に悪影響を及ぼす場合や、一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の粘度や融点が高くなることに起因して、本発明の硬化性組成物を製造する際の取り扱いが悪くなる場合がある。
【0025】
本発明の一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物は、例えば、硬化性樹脂化合物のモノマーとして良好な溶解性を有し、更にその硬化性樹脂化合物は、硬化収縮が少なく、更に、例えば、航空機・自動車等の輸送機器、電気電子・光学・医療機器等、の様々な分野における成型品等への使用に対して、十分な硬度を示すことが期待できる。
【0026】
(一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の製造方法)
本発明の分子一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、一般式(2)で示されるポリカーボネートと一般式(3)で示される(3−アルキルオキセタン−3−イル)メタノールのエステル交換反応させる方法が挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式(2)において、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。中でも、本発明のポリカーボネートの製造がより容易となることから、好ましくはメチル基である。
【0029】
一般式(2)において、mは平均繰り返し単位数を表し1〜30の数を示す。mが1を超える場合は、それぞれのRは、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、mが1を超える場合は、Rが複数種混在していてもよい。また、Rは、前記一般式(1)における定義にあるとおりである。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(3)において、また、Rは、前記一般式(1)における定義にあるとおりである。
【0032】
<硬化剤>
本発明で使用される硬化剤としては、オキセタンと重合可能な硬化剤であれば、特に制限されないが、例えば、オキセタン硬化剤、エポキシ硬化剤、フェノール硬化剤、カルボン酸無水物、ベンゾオキサジン硬化剤、シアネートエステル化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。なお、本発明では、これらの硬化剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
(オキセタン硬化剤)
前記オキセタン硬化剤としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)−プロパンジイルビス(オキシメチレン))−ビス(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチルロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチルロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキシド変性ビスフェノール−A−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド変性ビスフェノール−A−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキシド変性水素化ビスフェノール−A−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド変性水素化ビスフェノール−A−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、および/またはエチレンオキシド変性ビスフェノール−F−(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。なお、これらのオキセタン硬化剤の中には、市場でも入手することが可能なものがあり、その一例としては、宇部興産社製「ETERNACOLL(登録商標) EHO、OXBP、OXTP、OXMA」、東亞合成社製「OXT−101、121、211、221、212、610」等が挙げられる。なお、本発明では、これらのオキセタン硬化剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には本発明に記載の他の硬化剤と組み合わせて使用してもよい。
【0034】
(エポキシ硬化剤)
前記エポキシ硬化剤としては、例えば、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、グリシジルフェニルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよびエチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノールおよびアルキルフェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られる樹脂)等が挙げられる。
【0035】
前記エポキシ硬化剤は、市場でも入手することが可能であり、例えば、油化シェルエポキシ(株)製のエピコートシリーズ(「エピコート1009」、「エピコート1031」)、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンシリーズ(「エピクロンN−3050」、「エピクロンN−7050」)、ダウケミカル(株)のDERシリーズ(「DER−642U」、「DER−673MF」)、東都化成(株)製のYDFシリーズ(「YDF−2004」、「YDF−2007」)、日本化薬社製のEOCNシリーズ、EPPNシリーズ、NCシリーズ、BRENシリーズ、GANシリーズ、GOTシリーズ、AKシリーズ、REシリーズ、ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」、「エポリードGT401」、「エポリードPB3600」、「エポリードPB4700」、「EHPE3150」、「エポリードGT301」、「セロキサイド3000」や、ダウケミカル社製の「ERL−4221」、「UVR−6128」「UVR−6105」等が挙げられる。なお、本発明では、これらのエポキシ硬化剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には本発明に記載の他の硬化剤と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、前記エポキシ硬化剤は液状であることが好ましい。なお、本願にいう「液状」とは、25℃で測定した粘度が100000mPa・s以下(好ましくは、50000mPa・s以下)であることをいう。また、粘度(70℃)は3000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1500mPa・s以下、特に好ましくは500mPa・s以下である。例えば、2種以上のエポキシ硬化剤を混合して使用する場合には、これらを混合した後に上記の粘度を満たせばよい。また、例えば、2種以上のエポキシ硬化剤を混合した後に固体状やペースト状の場合や高粘度な場合には、そのままコーティングしたとしても塗りムラが生じたり、オキセタン構造を有する化合物との混和性が低下して、コーティング部分の透明性が低下したりする場合がある。そこで、粘度が高い場合は、例えば、有機溶媒等で適正な粘度まで調整したコーティング用組成物を製造して、使用することもできる。
【0037】
(ベンゾオキサジン硬化剤)
前記ベンゾオキサジン硬化剤としては、例えば、下記構造式(A)で表される化合物、下記構造式(B)で表される化合物、3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−1,3−ベンゾオキサジン、3,4−ジヒドロ−3−フェニル−2H−1,3−ベンゾオキサジン、6,6’−(1−メチルエチリデン)ビス(3,4−ジヒドロ−3−フェニル−2H−1,3−ベンゾオキサジン)等が挙げられる。また、これらのベンゾオキサジン硬化剤としては、市販の四国化成工業社製ベンゾオキサジン、小西化学社製「BXZ−1(BS−BXZ9)、BXZ−2(BF−BXZ)、BXZ−3(BA−BXZ)」等が挙げられる。なお、本発明では、前記ベンゾオキサジン硬化剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には本発明に記載の他の硬化剤と組み合わせて使用してもよい。
【0038】
【化5】

【0039】
<重合開始剤>
本発明の硬化性組成物の硬化反応には、重合開始剤を必ずしも必要としないが、光カチオン重合開始剤や熱カチオン重合開始剤等の重合開始剤を添加することもできる。なお、本発明では、カチオン重合開始剤や熱カチオン重合開始剤をそれぞれ単独で使用しても、又は組み合わせ使用してもよい。
【0040】
また、本発明では、前記光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤とを併用することもできる。なお、前記光カチオン重合開始剤や熱カチオン重合開始剤の添加量は、特に制限されないが、本発明の硬化組成物の製造コスト等の経済性を考慮すれば、硬化組成物1gに対し、好ましくは、0.0001gから1.0g、より好ましくは0.0001gから0.5g使用する。
【0041】
(光カチオン重合開始剤)
前記光カチオン重合開始剤としては、紫外線や可視光線等により、プロトン等のカチオンを発生させるものであれば特に制限されず、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0042】
前記光カチオン重合開始剤は、例えば、The DOW Chemical Company製「CYRACURE UVI−6992、UVI−6976」、旭電化工業社製「アデカオプトマー SP−150、SP−152、SP−170、SP−172」、三新化学工業社製「サンエイド SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−150L、SI−180L」、GE東芝シリコーン社製「UV9380c」、ローディアジャパン社製「Rhodorsil2074」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGACURE250」、ダイセル・サイテック社製「Uvacure1590」、和光純薬製「WPI−113」等の市販品を使用することが可能である。
なお、本発明では、光カチオン重合開始剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
(熱カチオン重合開始剤)
本発明で使用される熱カチオン重合開始剤としては、熱(加熱)によりオキセタンの開環及びカチオン重合を開始させることができる化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0044】
前記熱カチオン重合開始剤としては、以下に示すような各種オニウム塩、例えば、式(5)で示される第四級アンモニウム塩(式中、R6〜R9は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜15のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、叉は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい。また、R6〜R9のうちの2個が互いに結合して、N、P、O、又はS原子を含む複素環を形成していてもよい。Xは対イオンを表し、BF4、AsF6、SbF6、SbCl6、(C654B、SbF5(OH)、HSO4、p−CH364SO3、HCO3、H2PO、CH3CO2、ハロゲンイオン(Cl、Br、I等)等から選ばれる。)、式(6)で示されるホスホニウム塩(式中、R6〜R9、X-は前記と同様である。)、式(7)で示されるスルホニウム塩(式中、R6〜R8、Xは、それぞれ、前記のR6〜R9、Xと同様である。また、Arは置換基を有していてもよいアリール基を表す。)、式(8)で示されるスルホニウム塩(式中、R6〜R7、X、Arは、それぞれ、前記のR6〜R9、X、Arと同様である。)、式(9)で示されるスルホニウム塩(式中、R6〜R9、X、Arはそれぞれ前記と同様である。)等を挙げることができる。なお、本発明では、熱カチオン重合開始剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
(熱カチオン重合開始剤:第四級アンモニウム塩)
前記第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−ベンジルトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウムヘキサフルオロアンチモネート等が具体的に使用することが可能である。なお、本発明では、これらの第四級アンモニウム塩を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には他の重合開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0049】
(熱カチオン重合開始剤:ホスホニウム塩)
また、前記ホスホニウム塩としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が具体的に使用することが可能である。なお、本発明では、これらのホスホニウム塩を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には他の重合開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0050】
(熱カチオン重合開始剤:スルホニウム塩)
そして、前記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネートや、アデカオプトンSP−150(以下、旭電化社製)、アデカオプトンSP−170、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77や、サンエイドSI−60L(以下、三新化学社製)、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−150Lや、CYRACURE UVI−6974(以下、ユニオン・カーバイド社製)、CYRACURE UVI−6990や、UVI−508(以下、ゼネラル・エレクトリック社製)、UVI−509や、FC−508(以下、ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社製)、FC−509や、CD−1010(以下、サーストマー社製)、CD−1011や、CIシリーズ(CI−2639等)の製品(日本曹達社製)等が具体的に使用することが可能である。なお、本発明では、これらのスルホニウム塩を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には他の重合開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0051】
(熱カチオン重合開始剤:ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩)
更に、本発明では、例えば、式(10)で示されるジアゾニウム塩(式中、Ar、Xはそれぞれ前記と同様である。)や、式(11)で示されるヨードニウム塩(式中、R6及びR7、Xはそれぞれ前記と同様である。)も熱カチオン重合開始剤として使用することが可能である。
【0052】
【化9】

【0053】
前記ジアゾニウム塩としては、AMERICURE(アメリカン・キャン社製)、ULTRASET(旭電化社製)等が挙げられる。また、前記ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、UV−9310C(東芝シリコーン社製)、Photoinitiator2074(ローヌ・プーラン製)、UVEシリーズの製品(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズの製品(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社製)等が挙げられる。なお、本発明では、これらのジアゾニウム塩或いはヨードニウム塩を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせても、更には他の重合開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0054】
(その他の添加剤)
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、例えば、他の樹脂や消泡剤、酸拡散制御剤、反応性希釈剤、光増感剤、脱水剤、界面活性剤、帯電防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤、濡れ改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を添加することもできる。なお、本発明では、これらの添加剤を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
<本発明で使用される有機溶媒>
本発明の硬化性組成物及び後述のコーティング用組成物には、必要に応じて、有機溶媒を添加することもできる。
【0056】
使用される有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン系有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど);芳香族系有機溶媒(ベンゼン、トルエン、アニソール、クレゾールなど);エステル系有機溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど);アルコール系有機溶媒(メトキシプロパノール、3-メトキシブタノールなど);エーテル系有機溶媒(テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなど);アミド系有機溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなど);尿素系有機溶媒(N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなど);ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なお、本発明では、これらの有機溶媒を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、前記有機溶媒には水分が含まれていてもよい。
【0057】
<<本発明のコーティング用組成物>>
本発明の硬化性組成物は、前記の有機溶媒と混合する方法により、コーティング用組成物を製造することができる。
【0058】
(コーティング用組成物の製造方法)
本発明の硬化性組成物と有機溶媒を含有するコーティング用組成物において、一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の含有量は、使用環境及び/又は使用条件によっても異なるため特に限定されないが、前記有機溶媒1gに対して、好ましくは0.01〜100g、より好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.1〜10g、特に好ましくは0.1〜5g使用される。
【0059】
(コーティング用組成物の使用環境)
前記コーティング用組成物が使用される基材(被コーティング材)としては、特に限定されないが、例えば、自動車用部材等の金属製品、フィルムや成型品等のプラスチック製品、光学材料等のガラス製品、家具、ドア等の木材製品、壁紙等の紙などに好適に使用することができる。なお、これらの被コーティング材の形状は特に限定されず、どのような複雑な形状でもあってもよい。
【0060】
(コーティング用組成物の塗布方法)
本発明のコーティング用組成物の塗布方法としては、コーティングされた基材の使用環境によっても異なるため特に限定されないが、例えば、スピンコート法、はけ塗り、スプレー法(吹き付け)、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、バーコート法、ダイコート法等の公知の方法で行うことができる。例えば、本発明のコーティング用組成物を自動車用部材へ使用する場合には、エアスプレー、エアレススプレー等のスプレー法、回転霧化塗装機又は静電塗装機等を用いた塗布方法が使用でき、また、例えば、プラスチックフィルムに塗布する場合には、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、バーコート法などの塗布方法が使用できる。なお、これらのコーティング用組成物の塗布の際には、例えば、基盤や下地への密着性等の観点から、被コート物に下塗り層を設けてもよい。また、本発明のコーティング用組成物に前記有機溶媒を含む場合には、例えば、前記塗布後に乾燥等により使用した有機溶媒の除去等の操作を行うことが好ましい。
【0061】
<<本発明の硬化物>>
本発明の硬化物は、前記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物と硬化剤とを含有する硬化性組成物、又は本発明の硬化性組成物を含有するコーティング用組成物を、例えば、下記<硬化物の製造方法>に記載の方法によって硬化させた、硬化物、硬化皮膜等を示す。
【0062】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化性組成物又はコーティング用組成物の製造方法、即ち、硬化方法としては、特に制限されず、紫外線等の光を照射する硬化方法やオーブン等により熱を加える硬化方法が挙げられる。なお、本発明では、前記光を照射する硬化方法或いは熱を加える硬化方法をそれぞれ単独で使用しても、又はこれらを組み合わせて使用して本発明の硬化物を製造してもよい。
【0063】
(光を照射する硬化方法)
本発明の硬化性組成物又はコーティング用組成物の光を照射する硬化方法において、照射する光は、可視光、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などを用いることができる。中でも、安全性、反応効率などの工業性の観点などから紫外線が最も好ましく用いられる。用いられる紫外線の波長は200〜400nmが好ましく、好ましい照射条件としては、例えば、照度1〜1000mW/cm2、照射量0.1〜10000mJ/cm2である。活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源等を用いることが可能である。
【0064】
(光を照射する硬化方法)
本発明の硬化性組成物又はコーティング用組成物の熱を加える硬化方法において、加熱温度及び加熱時間としては、基材の種類や硬化性組成物の量、要求される硬度等によって、それぞれ異なるが、例えば、室温(25℃)〜300℃の温度下で、1分〜1週間の時間をかけて行われる。
【0065】
本発明の硬化性組成物又はコーティング用組成物は、前記の硬化方法を行うことで、例えば、耐熱性、耐加水分解性、耐クラック性等の諸特性を併有する硬化物、硬化皮膜等の硬化物を得ることができる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0067】
<本発明の一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の構造同定>
H−NMRの測定)
本発明の参考例で製造される一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物のH−NMRスペクトル測定は、重クロロホルムに溶解してNMR測定用サンプルを調整し、ブルカー・バイオスピン社製「AVANCE500型」を使用して、ノンデカップリングで行った。
【0068】
(ポリカーボネート基の平均繰り返し単位数:nの算出方法)
上記で得られたH−NMRスペクトルデータより、分子末端のオキセタンに隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値;δ(ppm):4.20〜4.40)の積分値を1とした場合における、ポリカーボネート主鎖中のカーボネート基に隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値;δ(ppm):4.00〜4.20)の積分値との比を、前記一般式(1)中に示される繰り返し単位の分子構造の平均数(以降、平均繰り返し単位数と称することがある。)nとして示した。
【0069】
(数平均分子量の算出)
本発明で得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:ポリスチレン換算)から得られる数平均分子量であっても、又はH−NMRスペクトルデータから得られる数平均分子量であってもよい。例えば、本発明の参考例、実施例では、前記で示されたH−NMRスペクトルデータより算出された平均繰り返し単位数nと繰り返し単位の構造の分子量の積に、更に分子末端部分の分子量を加味して算出した。
【0070】
(末端オキセタン導入率の算出)
得られたスペクトルデータより、分子末端のオキセタンに隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値;δ(ppm):4.20〜4.40)の積分値をX、分子末端の水酸基に隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値;δ(ppm):3.50〜3.70)の積分値をY、分子末端のメチルカーボネート基のメチル基部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値:3.65〜3.85ppm)の積分値をZとし、オキセタン導入率(%)を[(X/2)/{(X/2)+(Y/2)+(Z/3)}]*100(%)として算出した。
【0071】
<熱物性の測定>
本発明で得られる一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物、硬化物等の熱物性の測定は、DSC220C型(セイコー電子工業社製)を用いて、測定温度範囲を-100〜100℃として測定を行った。
【0072】
[参考例1]
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積300mlのガラス製フラスコにポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール;平均分子量2000;宇部興産製「ETERNACOLL(登録商標) UH−200」)96.99g(0.048mol)、ジメチルカーボネート26.21g(0.29mol)およびテトラブトキシチタン9.5mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、90℃〜180℃で5時間加熱撹拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留去させた。その後、反応液に(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール22.53g(0.19mol)を加え、内温150℃で、反応容器内を徐々に減圧し、メタノールを留去させながら、36時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物(ヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン)はH−NMR測定より、末端オキセタン導入率95.9%、数平均分子量1522、平均繰り返し単位数nは、8.77であった。また、DSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−59.0℃であった。
【0073】
[参考例2]
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに1,6−ヘキサンジオール95.51g(0.81mol)、ジメチルカーボネート291.23g(3.23mol)およびテトラブトキシチタン9.5mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、90℃〜150℃で17時間、引き続き内温150℃、10kPaで5時間加熱撹拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留去させた。その後、更に、132℃、0.30kPaで蒸留し、数平均分子量236のポリカーボネート95.2gを得た。
【0074】
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに前記で合成したポリカーボネート70.13g(0.30mol)、(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール69.55g(0.60mol)およびテトラブトキシチタン7.0mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、150℃まで昇温させた。その後、内温150℃で、反応容器内を徐々に減圧し、メタノールを留去させながら、64時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物はH−NMR測定より、末端オキセタン導入率99.5%、数平均分子量447、平均繰り返し単位数nは、1.31であった。また、DSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−63.0℃であった。
【0075】
[参考例3]
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに1,4−ブタンジオール50.0g(0.55mol)、ジメチルカーボネート99.96g(1.10mol)および酢酸亜鉛50mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、90℃〜150℃で15時間、引き続き内温150℃、5kPaで2時間加熱撹拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留去させた。その後、更に、反応液に(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール23.31g(0.20mol)を加え、内温150℃で、反応容器内を徐々に減圧し、メタノールを留去させながら、100時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物はH−NMRより、末端オキセタン導入率97.9%、数平均分子量1292、平均繰り返し単位数nは、8.94であった。また、DSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−46.0℃であった。
【0076】
[参考例4]
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに1,4−シクロヘキサンジメタノール55.6g(0.39mol)、ジメチルカーボネート138.95g(1.54mol)およびテトラブトキシチタン9.5mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、90℃〜150℃で9時間、引き続き内温180℃、10kPaで2時間加熱撹拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留去させた。その後、更に、反応液に(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール51.39g(0.44mol)を加え、内温150℃で、反応容器内を徐々に減圧し、メタノールを留去させながら、100時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物はH−NMRより、末端オキセタン導入率95.5%、数平均分子量636、平均繰り返し単位数nは、2.22であった。また、DSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−28.5℃であった。
【0077】
[参考例5]
撹拌装置・蒸留装置を備えた内容積200mlのガラス製フラスコにポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール;平均分子量2000;宇部興産製「ETERNACOLL(登録商標) UH−200」)101.95g(0.051mol)、ジメチルカーボネート26.53g(0.29mol)およびテトラブトキシチタン9.5mgを入れ、常圧下、アルゴンガス気流下、内温を徐々に昇温させながら、90℃〜180℃で22時間加熱撹拌した。この間、メタノールを含む液を蒸留で留去させた。その後、反応液に(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール16.60g(0.14mol)を加え、内温150℃で、反応容器内を徐々に減圧し、メタノールを留去させながら、100時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物は1H−NMRより、末端オキセタン導入率98.9%、数平均分子量2015、平均繰り返し単位数nは、12.44であった。また、DSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−56.3℃であった。
【0078】
(実施例1)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)2.0036gにテトラヒドロフラン1.02g添加し均一な溶液にした後、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0389gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−51.1℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1741.7cm−1、1259.5cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0079】
(実施例2)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)1.5220gにテトラヒドロフラン1.52g添加し均一な溶液にした後、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン0.3801gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0210gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で8時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−35.7℃であった。更に、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1744.8cm−1、1255.9cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0080】
(実施例3)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)1.5261gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート0.2592gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0463gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−40.8℃であった。
【0081】
(実施例4)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)0.3052gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート2.7076gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0823gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−38.1℃であった。
【0082】
(実施例5)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)2.5583gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、グリシジルフェニルエーテル0.5230gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0516gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−35.7℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1744.8cm−1、1258.0cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0083】
(実施例6)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)2.5370gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン0.3904gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0543gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−42.8℃であった。
【0084】
(実施例7)
参考例1で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1522)2.5319gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル0.6958gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0812gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−38.1℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1744.8cm−1、1256.5cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0085】
(実施例8)
参考例2で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量447)3.0127gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1042gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−7.7℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1747.8cm−1、1259.1cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0086】
(実施例9)
参考例2で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量447)2.2515gにテトラヒドロフラン1.02g添加し均一な溶液にした後、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン1.8908gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0945gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−9.7℃であった。
【0087】
(実施例10)
参考例2で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量447)2.2531gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート1.2747gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0797gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−10.8℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1745.6cm−1、1258.9cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0088】
(実施例11)
参考例2で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量447)2.2475gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン1.1704gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0898gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−17.5℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1745.6cm−1、1258.9cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0089】
(実施例12)
参考例2で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量447)2.2509gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル2.0729gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0995gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で6時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−10.1℃であった。
【0090】
(実施例13)
参考例3で得られたテトラメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1292)3.0462gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1231gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−32.2℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1739.7cm−1、1238.7cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0091】
(実施例14)
参考例3で得られたテトラメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1292)2.2018gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン0.6377gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1178gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−20.9℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1739.8cm−1、1240.6cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0092】
(実施例15)
参考例3で得られたテトラメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量1292)2.1708gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル0.6959gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.0918gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−28.6℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1741.1cm−1、1240.5cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0093】
(実施例16)
参考例4で得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物(数平均分子量636)3.1562gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1003gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−28.6℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1742.4cm−1、1242.8cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0094】
(実施例17)
参考例4で得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物(数平均分子量636)2.1284gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン1.2381gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1084gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、18.5℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1742.5cm−1、1245.1cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0095】
(実施例18)
参考例4で得られた一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物(数平均分子量636)2.0809gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル1.3917gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1139gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、11.9℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1743.5cm−1、1246.2cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0096】
(実施例19)
参考例5で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量2015)3.0900gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1002gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で5時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−47.7℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1738.6cm−1、1247.0cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0097】
(実施例20)
参考例5で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量2015)3.0126gにテトラヒドロフラン1.01g添加し均一な溶液にした後、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート0.3770gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1012gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−46.0℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1739.6cm−1、1246.3cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0098】
(実施例21)
参考例5で得られたヘキサメチレンポリカーボネートジオキセタン(数平均分子量2015)3.0167gにテトラヒドロフラン1.00g添加し均一な溶液にした後、4,4’-ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル0.6328gと熱カチオン重合開始剤(三新化学工業社製「サンエイド SI−150L」)0.1191gを添加し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物を直径4cmの円形の容器に充填し、オーブンで110〜130℃で7時間加熱することで、硬化物を得た。なお、得られた硬化物のDSC測定によるガラス転移点(Tg)は、−42.0℃であった。また、得られた硬化物については、赤外吸収スペクトル(Varian3100(VARIAN社製)の測定を行い、1741.5cm−1、1246.5cm−1(炭酸エステル部位に関する吸収)のピークを確認した。
【0099】
上記実施例から、本発明の前記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物を含有する硬化性組成物は、円形の容器に充填後、加熱することで硬化物を得ることができるが、円形の容器の代わりに、基材(被コーティング材)に塗布し、これを加熱することで基材表面を硬化皮膜でコーティングすることができる。即ち、前記硬化性組成物を、コーティング用組成物として使用することで、一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物の硬化によりコーティングされた基材を得ることができる。
【0100】
<本発明の硬化物の硬さと透明性の評価>
次に、前記で得られた硬化物について評価を硬さと透明性の評価を行った。
【0101】
硬さの評価は、本発明の硬化物を人間の手(握力:約50kg)で曲げて、変形させるために要した力の度合いを以下の基準で評価した。その結果を下記表1に示す。
【0102】
軟:容易に変形
中:適度な力を加えることで変形
硬:かなりの力を加えても変形せず
【0103】
透明性は、硬化物を目視にて以下の基準で評価した。
○:透明性が高い
△:白濁が見られる
×:透けて見えない
その結果を下記表1に示す。
【0104】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、分子末端にオキセタン構造を有するポリカーボネートと硬化剤とを含有する硬化性組成物並びにこれを用いたコーティング用組成物、及びこれらの硬化物に関する。本発明の硬化性組成物は、例えば、カチオンインク等のインク剤として利用でき、光カチオン重合開始剤を添加することにより紫外線等のエネルギー線硬化型コーティング用組成物として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるオキセタン構造を有する化合物と、硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜15のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子を有していても良い。nは、ポリカ-ボネート基の平均繰り返し単位数であり、1〜30の実数を示す。なお、nが1を超える場合、それぞれのRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
硬化剤が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、カルボン酸無水物、ベンゾオキサジン化合物から選ばれる1種以上である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
重合開始剤を含有する請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
重合開始剤が、熱カチオン重合開始剤である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
重合開始剤が、光カチオン重合開始剤である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
一般式(1)中の2つのRがメチル基又はエチル基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の硬化性組成物を含有するコーティング用組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング用組成物を硬化させた硬化物。

【公開番号】特開2012−36377(P2012−36377A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153042(P2011−153042)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】