説明

硬化性組成物及びそれを用いた光学部材

【課題】 光学基板との密着性及び膜強度に優れるフォトクロミック被膜層を有する光学部材及びそれに用いる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】
(1)ラジカル重合性単量体、
(2)片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物、
(3)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物、
(4)アミン化合物、
(5)フォトクロミック化合物、及び
(6)光重合開始剤
の成分を含み、前記(1)の片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物であり、前記(2)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物である硬化性組成物、並びに、該硬化性組成物を光学基板上に塗布硬化して形成されてなるフォトクロミック被膜層を有する光学部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物及びそれを利用した光学部材に関し、特に、光学基板との密着性及び膜強度に優れるフォトクロミック被膜層を有する光学部材及びそれに用いる硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミックとは、ある化合物に太陽光など、紫外線を含む光に反応して速やかに色が変わり、紫外線が無い状態下に移動すると元の色(無色状態)に戻る可逆作用であり、プラスチック眼鏡レンズにおいて利用されている。
このフォトクロミック性を有するプラスチック眼鏡レンズの製法としては、フォトクロミック性を有しないレンズ表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法、レンズ表面にフォトクミック性を有するプライマー層、ハードコーティング層を設ける方法、あるいはモノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、それを重合させることにより、直接フォトクロミックレンズを得る方法が提案され、特にコーティング法は様々の既存プラスチックレンズに応用可能であることから、近年注目されている。
特許文献1には、ラジカル重合性単量体中にフォトクロミック化合物を溶解させたものをレンズ表面に塗布し、紫外線硬化する手法が提案されている。このラジカル重合性単量体には基材との密着性を得るためにシラノール基または加水分解によりシラノール基を生成する基を有するラジカル重合性単量体を使用しているが、十分な密着力を得るためにはフォトクロミック層処理前のプラスチックレンズの前処理が煩雑になると同時に、基材に対して安定した密着性を得ることが困難である。
また、基材−フォトクロミック層間の密着性を確保するために、プライマー処理を行う方法も提案されているが、工程が煩雑になり、成膜時間も長時間要することが懸念される。
【特許文献1】国際公開WO03/011967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、光学基板との密着性及び膜強度に優れるフォトクロミック被膜層を有する光学部材及びそれに用いる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記(1)〜(6)の成分及び配合比の組成物を用いることにより前記の目的を達成することを見出し、本発明を完成したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)ラジカル重合性単量体、
(2)片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物、
(3)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物、
(4)アミン化合物、
(5)フォトクロミック化合物、及び
(6)光重合開始剤
の成分を含み、前記(1)の片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物であり、前記(2)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物である硬化性組成物、並びに、該硬化性組成物を光学基板上に塗布硬化して形成されてなるフォトクロミック被膜層を有する光学部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学部材は、フォトクロミック被膜層を有し、この被膜層は光学基板との密着性及び膜強度に優れている。また、本発明の硬化性組成物は、各種光学基板との密着性及び膜強度に優れたフォトクロミック被膜層の原料となる組成物として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、下記(1)〜(6)の成分を含むものである。
(1)ラジカル重合性単量体、
(2)片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物、
(3)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物、
(4)アミン化合物、
(5)フォトクロミック化合物、及び
(6)光重合開始剤
【0008】
以下、各成分について説明する。
本発明の硬化性組成物において、成分(1)であるラジカル重合性単量体は特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の化合物がなんら制限なく使用できる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。
なお、前記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
硬化後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、あるいは発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性を良好なものとするため、ラジカル重合性単量体としては、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すもの(以下、高硬度モノマーと称す場合がある)と、同じく単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示すもの(以下、低硬度モノマーと称す場合がある)を併用することがより好ましい。
Lスケールロックウェル硬度とは、JIS-B7726に従って測定される硬度を意味する。各モノマーの単独重合体についてこの測定を行うことにより、前記硬度条件を満足するかどうかを簡単に判断することができる。具体的には、モノマーを重合させて厚さ2mmの硬化体を得、これを25℃の室内で1日保持した後にロックウェル硬度計を用いて、Lスケールロックウェル硬度を測定することにより容易に確認することができる。
【0009】
また、前記Lスケールロックウェル硬度の測定に供する重合体は、仕込んだ単量体の有す重合性基の90%以上が重合する条件で注型重合して得たものである。このような条件で重合された硬化体のLスケールロックウェル硬度は、ほぼ一定の値として測定される。
前記高硬度モノマーは、硬化後の硬化体の耐溶剤性、硬度、耐熱性等を向上させる効果を有する。これらの効果をより効果的なものとするためには、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が65〜130を示すラジカル重合性単量体が好ましい。
このような高硬度モノマーは、通常2〜15個、好ましくは2〜6個のラジカル重合性基を有する化合物であり、好ましい具体例としては、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
【0010】
【化1】

(式中、R13は水素原子またはメチル基であり、R14は水素原子、メチル基またはエチル基であり、R15は3〜6価の有機基であり、fは0〜3の整数、f'はO〜3の整数、gは3〜6の整数である。)
【0011】
【化2】

(式中、R16は水素原子またはメチル基であり、Bは3価の有機基であり、Dは2価の有機基であり、hは1〜10の整数である。)
【0012】
【化3】

(式中、R17は水素原子またはメチル基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Eは環状の基を含む2価の有機基であり、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数である。)
【0013】
【化4】

(式中、R19は水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖炭素数2〜9のアルキレン基である。)
【0014】
【化5】

(式中、R20は水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは1〜6の整数である。)
【0015】
前記一般式(1)〜(4)における、R13〜R19は、いずれも水素原子またはメチル基であるため、一般式(1)〜(4)で示される化合物は2〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
前記一般式(1)におけるR14は水素原子またはメチル基、エチル基である。
一般式(1)におけるR15は3〜6価の有機基である。この有機基は特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素一炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すためには、R15は、好ましくは炭素数1〜30の有機基であり、より好ましくはエーテル結合および/またはウレタン結合を含んでいてもよい炭素数1〜15の有機基である。
また、fおよびf'は、それぞれ独立に0〜3の整数である。また、Lスケールロックウェル硬度を60以上とするためには、fおよびf'の合計が0〜3であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(1)で示される高硬度モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレト、トリメチロールブロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0017】
前記一般式(2)におけるBは3価の有機基であり、Dは2価の有機基である。このBおよびDは特に限定されるものではなく、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上であるためには、Bは炭素数3〜10の直鎖または分枝状の炭化水素から誘導される有機基であると好ましく、Dは炭素数1〜10の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素、または炭素数6〜10の芳香族炭化水素から誘導される有機基である。
また単独重合体のLスケールロックウェル硬度を60以上とするために、hは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。
前記一般式(2)で示される高硬度モノマーの具体的としては、分子量2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量10,000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)等が挙げられる。
【0018】
前記一般式(3)におけるR18は水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基である。また式(3)におけるEは環状の基を含む2価の有機基である。この有機基は環状の基を含むものであれば特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。Eに含まれる環状の基としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環あるいは以下に示す環状の基等が挙げられる。
【化6】

【0019】
Eに含まれる環状の基はベンゼン環であることが好ましく、さらにEは下記式、
【化7】

(Gは、酸素原子、硫黄原子、−S(O2)−、−C(O)−、−CH2−、−CH=CH−、−C(CH3)2−および−C(CH3)(C6H5)−から選ばれるいずれかの基であり、R21およびR22は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、lおよびl'は、それぞれ独立に0〜4の整数である。)
で示される基であるとより好ましく、最も好ましいEは下記式、
【化8】

で示される基である。
【0020】
前記一般式(3)中、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数である。なお、式(3)で示される化合物は、iおよびjの双方が0である場合を除き、通常iおよびjの異なる複数の化合物の混合物として得られる。それらの単離は困難であるため、iおよびjはi+jの平均値で示される。i+jの平均値は2〜6であることがより好ましい。
一般式(3)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0021】
前記一般式(4)におけるR19は水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖炭素数2〜9のアルキレン基である。この主鎖炭素数2〜9のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ノニリレン基等が例示される。
一般式(4)で示される高硬度モノマーの具体的としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(5)におけるR20は水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは2〜6の整数であり、好ましくはkは3または4である。
一般式(5)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
なお、前記一般式(1) 〜(5)で示される化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60未満のものがあるが、その場合には、これらの化合物は後述する低硬度モノマーまたは中硬度モノマーに分類される。
また、前記一般式(1)〜(5)で示されない高硬度モノマーもあり、その代表的化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、前記低硬度モノマーは、硬化体を強靭なものとし、またフォトクロミック化合物の退色速度を向上させる効果を有する。
このような低硬度モノマーとしては、下記一般式(6)
【化9】

(式中、R23は水素原子またはメチル基であり、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、mはR23が水素原子の場合は1〜70の整数であり、R23がメチル基の場合は7〜70の整数でありそしてm'は0〜70の整数である。)
【0024】
または下記一般式(7)、
【化10】

(式中、R26は水素原子またはメチル基であり、R27およびR28は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Iは環状の基を含む2価の有機基であり、i'およびj'は、i'+j'の平均値が8〜40となる整数である。)
で示される2官能モノマーや、下記一般式(8)、
【0025】
【化11】

(式中、R29は水素原子またはメチル基であり、R30およびR31は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R32は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、あるいは炭素数2〜25の(メタ)アクリロイル基以外のアシル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、m''はR29が水素原子の場合は1〜70の整数であり、R29がメチル基の場合は4〜70の整数であり、m'''は0〜70の整数である。)
【0026】
または下記一般式(9)、
【化12】

(式中、R33は水素原子またはメチル基であり、R34はR33が水素原子の場合には炭素数1〜20のアルキル基であり、R33がメチル基の場合には炭素数8〜40のアルキル基である。)
で示される単官能のモノマーが例示される。
【0027】
前記一般式(6)〜(9)において、R23、R26、R29およびR33は水素原子またはメチル基である。すなわち、低硬度モノマーは重合性基として、通常2個以下の(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルチオ基を有する。
前記一般式(6)におけるR24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子である。
一般式(6)においては、R23が水素原子の場合、すなわち重合性基としてアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を有する場合には、mは1〜70の整数であり、一方、R23がメチル基である場合、すなわち重合性基としてメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を有する場合には、mは7〜70の整数である。また、m'は0〜70の整数である。
一般式(6)で示される低硬度モノマーの具体的としては、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アタリレート類が挙げられる。
【0028】
前記一般式(7)におけるR26は水素原子、メチル基またはエチル基である。
また、Iは環状の基を含む2価の有機基である。このIとしては前記式(9)に含まれる環状の基であるEとして例示されたものと同様である。式(7)におけるi'およびj'は、i'+j'の平均値が8〜40となる整数、好ましくは9〜30となる整数である。このi'およびj'も前記した式(3)におけるiおよびjと同様の理由で通常は平均値で示される。
一般式(7)で示される低硬度モノマーの具体的としては、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0029】
前記一般式(8)におけるR29は水素原子またはメチル基であり、R30およびR31は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基である。R32は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、あるいは炭素数2〜25のアクリロイル基以外のアシル基である。
炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ノニル基等が挙げられる。また、これらアルキル基またはアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、さらには、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリール基、エポキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
炭素数1〜25のアルコキシアルキル基としては、メトキシブチル基、エトキシブチル基、ブトキシブチル基、メトキシノニル基等が挙げられる。
炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、アントラニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。 (メタ)アクリロイル基以外のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、オレイル基等が挙げられる。
一般式(8)におけるm''は、R29が水素原子の場合、すなわちアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を重合性基として有する場合には1〜70の整数であり、R29がメチル基の場合、すなわちメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を重合性基として有する場合にはm''は4〜70の整数であり、またm'''は0〜70の整数である。
【0030】
一般式(8)で示される低硬度モノマーの具体的としては、平均分子量526のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量360のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量475のメチルエテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量375のポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量430のポリプロピレンメタアクリレート、平均分子量622のポリプロピレンメタアクリレート、平均分子星620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量566のポリテトラメチレングリコールメタアクリレート、平均分子量2,034のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量610のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量640のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート、平均分子量498のパーフルオロヘブチルエチレングリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アタリレート等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(9)におけるR33は水素原子またはメチル基であり、R33が水素原子の場合には、R34は炭素数1〜20のアルキル基であり、R33がメチル基の場合には、R34は炭素数8〜40のアルキル基である。これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、エポキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
一般式(9)で示される低硬度モノマーの具体的としては、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアタリレート、ブチルアタリレート、ラウリルアクリレート等を挙げることができる。
これら式(6)〜(9)で表される低硬度モノマーの中でも、平均分子量475のメチルエテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが特に好ましい。
前記式(6)〜(9)で示される化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以上を示すものがあるが、その場合には、これらの化合物は前述した高硬度モノマーまたは後述する中硬度モノマーに分類される。
【0032】
前記高硬度モノマーでも低硬度モノマーでもないモノマー、すなわち、単独硬化体のLスケールロックウェル硬度が40を超え60未満を示すモノマー(中硬度モノマーと称す場合がある)として、例えば、平均分子量650のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、平均分子量1,400のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド等の2官能(メタ)アタリレート;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、アリルジグリコールカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸および多価チオメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ビフェニル等のアクリル酸およびメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸およびチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン等のビニル化合物;オレイルメタクリレート、ネロールメタクリレート、ゲラニオールメタクリレート、リナロールメタクリレート、ファルネソールメタクリレート等の分子中に不飽和結合を有する炭化水素鎖の炭素数が6〜25の(メタ)アタリレートなどのラジカル重合性単官能単量体等が挙げられる。
【0033】
これらの中硬度モノマーを使用することも可能であり、前記高硬度モノマー、低硬度モノマーおよび中硬度モノマーは適宜混合して使用できる。硬化性組成物の硬化体の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、あるいは発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性のバランスを良好なものとするため、前記ラジカル重合性単量体中、低硬度モノマーは5〜70重量%、高硬度モノマーは5〜95重量%であることが好ましい。さらに、配合される高硬度モノマーとして、ラジカル重合性基を3つ以上有する単量体が、その他のラジカル重合性単量体中少なくとも5重量%以上配合されていることが特に好ましい。
【0034】
本発明におけるラジカル重合性単量体中には、上記の様に硬度により分類されたモノマーとは別に、分子中にすくなくとも一つのエポキシ基と少なくとも一つのラジカル重合性基を有するラジカル重合性単量体(以下、単にエポキシ系モノマーと称す場合がある)が、さらに配合されていることが好ましい。このエポキシモノマーはその構造により、単独硬化体のLスケールロック硬度が60以上を示すものもあれば、40以下を示すものもある。単独重合体の硬度で分類すると、硬度に応じ高硬度モノマー、低硬度モノマー、中硬度モノマーのいずれかに分類されることになる。
このエポキシ系モノマーを、本発明におけるラジカル重合性単量体の成分として使用することにより、フォトクロミック化合物の耐久性をより向上させることができ、さらにフォトクロミック被膜層の密着性が向上する。
このようなエポキシ系モノマーとしては公知の化合物を使用できるが、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有す化合物が好ましい。
このようなエポキシ系モノマーは、通常以下の式(10)で表される。
【0035】
【化13】

{式中、R35およびR38は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R36およびR37は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基、または、下記式
【化14】

(G'は、酸素原子、硫黄原子、−S(O2)−、−C(O)−、−CH2−、−CH=CH−、−C(CH3)2−および−C(CH3)(C6H5)−から選ばれるいずれかの基であり、R39およびR40は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、l''およびl'''は、それぞれ独立に0〜4の整数である。)で示される基である。}
【0036】
前記R36およびR37で示される炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン差等が挙げられる。またこれらアルキレン基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
また、R36および/またはR37が下記式
【化15】

で表される基の場合、G'は、酸素原子、硫黄原子、−S(O2)−、−C(O)−、−CH2−、−CH=CH−、−C(CH3) 2−および−C(CH3)(C6H5)−から選ばれるいずれかの基であり、R39およびR40は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基または塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子であり、l''およびl'''は、それぞれ独立に0〜4の整数である。上記式で表される基としては、下記式
【化16】

で示される基であることが最も好ましい。
【0037】
一般式(10)で示されるエポキシ系モノマーの具体的としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、平均分子量540のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でもグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび平均分子量40のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレートが特に好ましい。
これらエポキシ系モノマーの配合割合は、ラジカル重合性単量体中、通常0.01〜30重量%であり、0.1〜20重量%であるのが好適である。
【0038】
本発明の硬化性組成物には、成分(2)の片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物を配合することにより、硬化性組成物を塗布硬化したフォトクロミック被膜層の基板に対する安定した密着性を付与することができる。
成分(2)の有機ケイ素化合物は、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物であって、例えば、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物が挙げられる。
(R81)a(R83)bSi(OR82)4-(a+b) ・・・(I)
(式中、R81はエポキシ基を有する有機基、R82は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基、R83は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基、aは1の整数、bは0または1の整数を示す。)
【0039】
前記R81のエポキシ基を有する有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシドキシ基(α−グリシドキシ基、β−グリシドキシ基、γ−グリシドキシ基、δ−グリシドキシ基等)、3、4−エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
前記R82の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
前記R82の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記R82の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
前記R83の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R83の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
【0040】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランが好ましい。
成分(2)の有機ケイ素化合物の硬化性組成物全量に対する配合量としては、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜15重量部であり、1.0〜10重量部であると好ましい。
【0041】
本発明の硬化性組成物には、成分(3)の片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物を配合することにより、硬化性組成物を塗布硬化したフォトクロミック被膜層の膜強度を向上することができる。
成分(3)の有機ケイ素化合物は、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物であって、例えば、下記一般式(II)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物が挙げられる。
(R84)c(R86)dSi(OR85)4-(c+d) ・・・(II)
(式中、R84はラジカル重合性官能基を有する有機基、R85は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基、R86は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基、cは1の整数、dは0または1の整数を示す。)
【0042】
前記R84のラジカル重合性官能基を有する有機基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられ、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
前記R85の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
前記R85の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記R85の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基
トリル基等が挙げられる。
前記R86の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R86の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基
トリル基等が挙げられる。
【0043】
前記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等が好ましい。
成分(3)の有機ケイ素化合物の硬化性組成物全量に対する配合量としては、ラジカル単量体100重量部に対して、通常0.1〜15重量部であり、1.0〜10重量部であると好ましい。
【0044】
本発明の硬化性組成物には、成分(4)としてアミン化合物が配合される。アミン化合物を配合することにより、本発明の硬化性組成物をコーティング材として用いた場合に、前記硬化性組成物の硬化体よりなるフォトクロミック被膜層と光学基板との密着性を大きく向上させることができる。
本発明に用いられる成分(4)のアミン化合物としては、前記ラジカル重合性単量体の縮合、または付加触媒として機能する塩基性の化合物であれば、公知のアミン化合物が何ら制限なく使用できる。
【0045】
本発明におけるアミン化合物として必要な機能を発揮しないアミン化合物としては、例えば下記基
【化17】

(上記基中、R01は水素原子およびアルキル基であり、R02、R03、R04およびR05は、それぞれ同一もしくは異なるアルキル基である)
で表されるアミノ基のみをアミノ基として有するヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0046】
本発明で使用できるアミン化合物の具体例としては、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、ジアザピシクロオクタン等の非重合性低分子系アミン化合物、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート等の重合性基を有するアミン化合物、n−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、N,N−ジエチルアミノメチルトリメチルシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン等のシリル基を有するアミン化合物が挙げられる。
これらのアミノ化合物の中でも、密着性向上の観点より、水酸基を有するもの、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有するもの、あるいは加水分解によりシラノール基を生成可能な基を有するアミン化合物が好ましい。
【0047】
例えば、下記一般式(11)
【化18】

{式中、R06は水素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、R07は水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基であり、R08は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基であり、A'は炭素数2〜6のアルキレン基、A''はR08が水素原子またはアルキル基の場合には炭素数1〜6のアルキレン基、R08が水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基である場合には炭素数2〜6のアルキレン基を示す。}
で示されるアミン化合物が、塩基性が強く、密着性向上効果の高いアミン化合物としてより好適である。
【0048】
一般式(11)中のR07およびR08における、加水分解によりシラノール基を生成可能な基とは、前記有機ケイ素化合物で定義した基と同義である。
これらアミン化合物は単独もしくは数種混合して使用することができ、成分(4)のアミン化合物の配合量としては、ラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜20重量部であり、0.1〜10重量部であると好ましい。
【0049】
本発明の硬化性組成物で用いられる成分(5)のフォトクロミック化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
前記フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている化合物が好適に使用できる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001-114775号公報、特開2001-031670号公報、特開2001-011067号公報、特開2001-011066号公報、特開2000-347346号公報、特開2000-34476号公報、特開2000-3044761号公報、特開2000-327676号公報、特開2000-327675号公報、特開2000-256347号公報、特開2000-229976号公報、特開2000-229975号公報、特開2000-229974号公報、特開2000-229973号公報、特開2000-229972号公報、特開2000-219687号公報、特開2000-219686号公報、特開2000-219685号公報、特開平11-322739号公報、特開平11-286484号公報、特開平11-279171号公報、特開平10-298176号公報、特開平09-218301号公報、特開平09-124645号公報、特開平08-295690号公報、特開平08-176139号公報、特開平08-157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。
【0050】
これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらにフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。さらに、これらクロメン系フォトクロミック化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のクロメン系フォトクロミック化合物に比べて特に大きいため好適に使用することができる。
【0051】
さらに、その発色濃度、退色速度、耐久性等の各種フォトクロミック特性が特に良好なクロメン化合物としては、下記一般式(12)で表されるものが好ましい。
【化19】

【0052】
{式中、下記一般式(13)
【化20】

で示される基は、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の不飽和複素環基であり、
R43、R44およびR45は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、アラルキル基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とピラン環もしくは前記式(13)で示される基の環とが結合する置換もしくは非置換の複素環基、または該複素原基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、oは0〜6の整数であり、
【0053】
R41およびR42は、それぞれ独立に、下記一般式(14)、
【化21】

(式中、R46は、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、R47は、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であり、pは1〜3の整数である。)で示される基、下記一般式(15)、
【化22】

(式中、R48は、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、p'は1〜3の整数である。)で示される基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、またはアルキル基であるか、あるいはR41とR42とが一緒になって、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成していてもよい。]
なお、前記一般式(14)、(15)、前記R41およびR42にて説明した置換アリール基および置換ヘテロアリール基における慣換基としては、前記R43〜R44と同様の基が挙げられる。
【0054】
前記一般式(12)で示されるクロメン化合物のなかでも、発色濃度、退色速度等のフォトクロミック特性および耐久性の点から、下記一般式(16)〜(21)で示される化合物が特に好適である。
【化23】

(式中、R49およびR50は、それぞれ前記一般式(12)のR41およびR42と同様であり、R51およびR52は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、qおよびq'は、それぞれ1〜2の整数である。)
【0055】
【化24】

{式中のR53およびR54は、それぞれ前記一般式(12)のR41およびR42と同様であり、R55およびR56は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、Lは下記式、
【化25】

(上記式中、Pは、酸素原子または硫黄原子であり、R57は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、s、s'およびs''は、いずれも1〜4の整数である。)で示されるいずれかの基であり、rおよびr'は、それぞれ独立に1または2である。}
【0056】
【化26】

(式中、R58およびR59は、それぞれ前記式(12)のR41およびR42と同様であり、R60、R61およびR62は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、vは1または2である。)
【0057】
【化27】

(式中、R63およびR64は、それぞれ前記式(12)のR41およびR42と同様であり、R65およびR66は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、wおよびw'は、それぞれ独立に1または2である。)
【0058】
【化28】

(式中、R67およびR68は、それぞれ前記式(12)のR41およびR42と同様であり、R69 、R70 、R71およびR72は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、xおよびx'は、それぞれ独立に1または2である。)
【0059】
【化29】

(式中、R73およびR74は、それぞれ前記式(12)のR41およびR42と同様であり、R75 、R76 およびR77は、それぞれ前記式(12)のR45と同様であり、
【化30】

は、少なくとも1つの置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環であり、y、y'およびy''は、それぞれ独立に1または2である。]
【0060】
上記一般式(16)〜(21)で示されるクロメン化合物の中でも、下記構造のクロメン化合物が特に好ましい。
【化31】

【0061】
これらフォトクロミック化合物は適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができ、成分(5)のフォトクロミック化合物の硬化性組成物全量に対する配合量としては、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜20重量部であり、0.1〜10重量部であると好ましい。
【0062】
本発明の硬化性組成物には、成分(6)として光重合開始剤が配合される。本発明で用いる光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドが好ましい。
これら光重合開始剤は、複数の種類のものを適宜混合して使用することができ、成分(6)の光重合開始剤の硬化性組成物全量に対する配合量としては、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部であり、0.1〜1重量部であると好ましい。
【0063】
また、本発明の硬化性組成物を光重合以外の方法で硬化させる場合には、例えば、熱重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2'−アゾピスイソプチロニトリル、2,2'−アゾピス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等挙げられる。
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なるが、通常、全重合性単量体100重量部に対して0,01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0064】
さらに、本発明の硬化性組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
前記界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、重合性単量体への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、重合性単量体100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲が好ましい。
【0065】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用してもよい。さらにこれらの非重合性化合物の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用してもよい。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、全重合性単量体100重量部に対し、0.001〜20重量部の範囲が好ましい。
前記安定剤の中でも、本発明の硬化性組成物を、塗布して使用する場合、特に有用な安定剤として、本発明の硬化性組成物を硬化させる際のフォトクロミック化合物の劣化防止、あるいはその硬化体の耐久性向上の観点より、ヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤としては、前述したアミン化合物から除かれる化合物として記載したヒンダードアミン化合物として定義した化合物であれば、公知の化合物が何ら制限なく用いることができる。その中でも、塗布用に用いる場合、特に、フォトクロミック化合物の劣化防止効果を発現する化合物としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA-62、LA-77、LA-82等を挙げることができる。その添加量としては、全重合性単量体100重量部に対し、0.001〜20重量部の範囲であればよいが、塗布して用いる場合には、0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好適には、1〜10重量部の範囲で用いればよい。
【0066】
また、本発明の硬化性組成物においては、成膜時の均一性を向上させるために、界面活性剤、レベリング剤等を含有させることが好ましく、特にレベリング性を有するシリコーン系・フッ素系レベリング剤を添加することが好ましい。その添加量としては、特に限定されないが、硬化性組成物全量に対し、通常0.01〜1.0重量%であり、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲が好ましい。
【0067】
本発明の硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、所定量の各成分を秤取り混合することにより行うことができる。なお、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、モノマー成分のみを予め混合し、重合させる直前にフォトクロミック化合物や他の添加剤を添加・混合してもよい。
本発明の硬化性組成物は、その25℃での粘度が20〜500cpであると好ましく、50〜300cpであるのがより好ましく、60〜200cpであるのが特に好ましい。
この粘度範囲とすることにより、後述するフォトクロミック被膜層の厚さを10〜100μmと厚めに調整することが容易となり、十分にフォトクロミック特性を発揮させることが可能となる。
【0068】
次に、本発明の光学部材について説明する。
本発明の光学部材は、硬化性組成物を光学基板上に塗布硬化して形成されてなるフォトクロミック被膜層を有する。
本発明の光学部材に用いる光学基板としては合成樹脂基板が挙げられ、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の光学部材に用いる光学基板としては、プラスチックレンズ基材であると好ましく、眼鏡用プラスチックレンズ基材であるとさらに好ましい。
【0069】
本発明の硬化性組成物を光学基板上へ塗布する方法としては、例えば、ディッピング法、スピン法、スプレー法等が通常行われる方法として適用されるが、組成物の粘性、面精度の面からスピンコート法が好ましい。
また、前記硬化性組成物を光学基板上へ塗布する前に、酸、アルカリ、各種有機溶媒による化学的処理、プラズマ、紫外線、オゾン等による物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理を行うことによって光学基板とフォトクロミック被膜層の密着性等を向上させることができる。
【0070】
本発明の硬化性組成物を硬化させてフォトクロミック被膜層を得る方法は特に限定されず、用いるラジカル重合性単量体の種類に応じた公知の重合方法を採用することができる。重合開始手段としては、熱、もしくは紫外線、α線、β線、γ線等の照射あるいは両者の併用によって行うことができ、好ましくは紫外線を照射し、硬化させた後、さらに加熱硬化させることが好ましい。
前記紫外線による硬化に用いる光源としては公知の光源を何ら制限無く用いることができ、具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、無電極ランプ等が挙げられる。
また、光照射時間は紫外線重合開始剤の種類、吸収波長、感度、さらには所望のフォトクロミック被膜層の膜厚等によって適宜決めることができる。
本発明においては、フォトクロミック被膜層の膜厚は、発色時の濃度、耐久性及び耐熱性、及び膜の均一性を考慮すると、10μm〜100μmであると好ましく、20μm〜50μmであるとさらに好ましい。
【0071】
また、本発明の光学部材は、前記フォトクロミック被膜層上に、ハードコート層が形成されてなると好ましく、このハードコート層上に、反射防止膜が形成されてなるとさらに好ましい。
このハードコート層の材料としては、特に限定されず、公知の有機ケイ素化合物及び金属酸化物コロイド粒子よりなるコーティング組成物を使用することができる。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば下記一般式(III)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物が挙げられる。
(R91)a'(R93)b'Si(OR92)4-(a'+b') ・・・(III)
(式中、R91は、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基、R92は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基、R93は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基、a'およびb'はそれぞれ0または1の整数を示す。)
【0072】
前記R92の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
前記R92の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記R92の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
【0073】
前記一般式(III)で表される化合物の具体例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケート、t−ブチルシリケーテトラアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3、4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
前記金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アンチモン(Sb2O5)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
また前記反射防止膜の材質及び形成方法は特には限定されず、公知の無機酸化物よりなる単層、多層膜を使用することができる。
この無機酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)酸化イットリウム(Y2O3)等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。諸物性は以下に示す方法により測定した。
なお、各実施例および比較例における光学部材は、以下に示す試験方法により諸物性を測定した。
(1)耐擦傷性試験
プラスチックレンズの表面にスチールウール(規格#0000、日本スチールウール社製)にて1kgf/cm2でプラスチック表面を擦って傷のつき難さを目視にて判定した。判定基準は以下の通りとした。
A.強く擦っても殆ど傷がつかない
B.強く擦るとかなり傷がつく
C.プラスチック基板と同等の傷がつく
(2)密着性試験
1mm間隔で100目クロスカットし、粘着テープ(商品名;セロテープ、ニチバン(株))を強く貼り付け急速に剥がし、硬化被膜の剥離の有無を調べた。全く剥がれないものは100/100、全て剥がれたものは0/100として表記した。
(3)外観
暗室内蛍光灯下にて目視判定を行った。曇りがないものを良好と判定した。
【0076】
実施例1
(i)フォトクロミックコーティング液の調製
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、BPEオリゴマー(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35重量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10重量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10重量部、グリシジルメタクリレート10重量部からなるラジカル重合性単量体100重量部に、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3重量部、酸化防止剤としてLS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4-ピペリジル)セバケート)を5重量部、紫外線重合開始剤としてCGI-184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を0.4重量部及びCGI403(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド)を0.1重量部添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.8重量部、ラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物としてγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1.6重量部を攪拌しながら滴下した。十分に攪拌した後、N−メチルジエタノールアミン1.4重量部を秤量滴下し、さらに十分に攪拌混合を行った。その後、シリコーン系レベリング剤Y-7006(ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマー:日本ユニカー(株)製)を0.1重量部添加混合した後、自転公転方式攪拌脱泡装置((株)シンキー製AR-250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する硬化性組成物を得た。
【0077】
【化32】

クロメン1
【0078】
(ii)フォトクロミック被膜層の形成
プラスチックレンズ基材としてポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYAS 中心肉厚2.0mm厚)を60℃、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液にて5分間浸漬処理して十分に純水洗浄、乾燥を行った後、(i)で調製された硬化性組成物を用いて、スピンコート法で基材凸面側のコーティングを行った。この処理レンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、フュージョン製UVランプ(Dバルブ)波長405nmの紫外線積算光量で1800mJ/cm2(100mW/cm2,3分)照射し、さらに、110℃、60分間硬化を行い、フォトクロミック被膜層を有するプラスチックレンズレンズを得た。
(iii) ハードコーティング液の調製
マグネティックスターラーを備えたガラス製の容器に水分散コロイダルシリカ(固形分40重量%、平均粒子径15ミリミクロン)141重量部を加え撹拌しながら、酢酸30重量部を添加し、充分に混合攪拌を行った。その後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン74重量部を滴下し、5℃で24時間攪拌を行った。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、イソプロピルアルコール150重量部、さらにシリコ−ン系界面活性剤0.2重量部、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネ−ト7.5重量部を加え、充分に撹拌した後濾過を行ってハードコ−ティング液を調製した。
(iv)ハードコート層の形成
前記(ii)で得られたフォトクロミック被膜層を有するプラスチックレンズレンズを60℃、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液にて5分間浸漬処理して十分に純水洗浄/乾燥を行った後、前記(iii) で調製されたハードコーティング組成物を用いて、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)でコーティングを行い、110℃、60分加熱硬化することでハードコート層を形成した。得られたハードコート層を有するプラスチックレンズについて前記(1)〜(3)を評価した結果を表1に示した。
(v)反射防止膜の形成
前記(iv) で得られたハードコート層を有するプラスチックレンズ上に、以下に示す反射防止膜を施した。ハードコート層を有するプラスチックレンズを蒸着機に入れ、排気しながら85℃に加熱し、2.67×10-3Paまで排気した後、電子ビーム加熱法にて原料を蒸着させてSiO2およびZrO2の積層構造(λ/4-λ/2-λ/4;λは波長)からなる反射防止膜を形成した。得られたハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズについて前記(1)および(2)を評価した結果を表1に示した。
【0079】
実施例2
実施例1の(i)フォトクロミックコーティング液の調製で用いた、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いた以外は全て実施例1と同様にして、ハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0080】
実施例3
実施例1の(i)フォトクロミックコーティング液の調製で用いた、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを用いた以外は全て実施例1と同様にして、ハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0081】
実施例4
実施例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタンの代わりに、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(HOYA(株)製 商品名HL 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て実施例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0082】
実施例5
実施例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタンの代わりに、ポリウレア(HOYA(株)製 商品名Phoenix 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て実施例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0083】
実施例6
実施例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYNOA 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て実施例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0084】
比較例1
実施例1の(i)フォトクロミックコーティング液の調製で用いた、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.8重量部、およびラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物としてγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1.6重量部の代わりに、ラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物として、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン6.4重量部のみを用いた以外は全て実施例1と同様にして、ハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0085】
比較例2
実施例1の(i)フォトクロミックコーティング液の調製で用いた、有機ケイ素化合物としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを使用しない以外は全て実施例1と同様にして、ハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0086】
比較例3
比較例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタンの代わりに、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(HOYA(株)製 商品名HL 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て比較例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0087】
比較例4
比較例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタンの代わりに、ポリウレア(HOYA(株)製 商品名Phoenix 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て比較例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0088】
比較例5
比較例1の(ii)フォトクロミック被膜層の形成で用いたプラスチックレンズ基材としてポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYNOA 中心肉厚2.0mm厚)を用いた以外は全て比較例1と同様にしてハードコート層を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)〜(3)を評価し、ハードコート層および反射防止膜を有するプラスチックレンズを製造して前記(1)および(2)を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示したように、(1)〜(6)成分を含む実施例1〜6のプラスチックレンズのフォトクロミック被膜層は、プラスチックレンズ基材に対し優れた密着性を有しているのに対し、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物を用いていない比較例1〜5は密着性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光学部材は、フォトクロミック被膜層を有し、この被膜層は光学基板との密着性及び膜強度に優れている。また、本発明の硬化性組成物は、各種光学基板との密着性及び膜強度に優れたフォトクロミック被膜層の原料となる組成物として適している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ラジカル重合性単量体、
(2)片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物、
(3)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物、
(4)アミン化合物、
(5)フォトクロミック化合物、及び
(6)光重合開始剤
の成分を含み、前記(1)の片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物であり、前記(2)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物が、シラノール基を有する化合物、または加水分解によりシラノール基を生成する基を有する化合物である硬化性組成物。
【請求項2】
(1)ラジカル重合性単量体 100重量部に対して、
(2)片末端にエポキシ基を有する有機ケイ素化合物 1.0〜15重量部、
(3)片末端にラジカル重合性官能基を有する有機ケイ素化合物 1.0〜15重量部、
(4)アミン化合物 0.01〜20重量部、
(5)フォトクロミック化合物 0.01〜20重量部、及び
(6)光重合開始剤 0.01〜5重量部
の成分を含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を光学基板上に塗布硬化して形成されてなるフォトクロミック被膜層を有する光学部材。
【請求項4】
前記フォトクロミック被膜層上にハードコート層が形成されてなる請求項3に記載の光学部材。
【請求項5】
前記ハードコート層上に反射防止膜が形成されてなる請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記光学基板が、プラスチックレンズ基材である請求項3〜5のいずれかに記載の光学部材。


【公開番号】特開2007−77327(P2007−77327A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268810(P2005−268810)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】