説明

硬化性組成物及び硬化性組成物の製造方法

作業性、接着性、ゴム物性、貯蔵安定性、及び速硬化性に優れた硬化性組成物を提供する。(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び(B)メタロセン化合物及び架橋性シリル基含有チオール化合物の存在下に、重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1の末端に架橋性シリル基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは架橋性シリル基を有する基である)が結合している(メタ)アクリル系重合体を含有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、さらに詳しくは接着性、ゴム物性、速硬化性、及び製造安定性に優れた硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊な重合触媒を用いた重合によって得られるアクリル系重合体が特許文献1に開示されている。特許文献1は、また、その特殊なアクリル系重合体とシランカップリング剤とからなる硬化性組成物を開示しているが、これら硬化性組成物は、接着性やゴム物性等が未だ十分ではなかった。
【0003】
一方、架橋性シリル基含有有機重合体を含有する常温硬化性組成物は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料などの用途に広く使用されている。通常、これらの硬化性組成物は、各種の金属触媒を用いて硬化させており、その種類及び添加量の加減により様々な用途向けに使用されている。
【0004】
その触媒として、有機錫とエステル化合物との反応物が従来、知られている(例えば、特許文献2〜5参照。)。前記エステル化合物の中でも、特にフタル酸エステルを用いた触媒が一般的に用いられているが、このフタル酸エスエルは厚生労働省VOC指針値策定物質に定められており、存在が指摘されている。非フタル酸エステルでの触媒設計が近年求められている。
【0005】
さらに、市場として速硬化性タイプ製品の要求は高いが、一方製造者としては、速硬化タイプは製品の製造中の硬化といった不具合を持ち合わせている。例えば、特許文献5等には、−SiXで示される架橋性シリル基を含有する架橋性シリル基含有有機重合体及びジアルキルスズオキサイドとエステル系化合物との反応物を含有する硬化性組成物が開示されているが、反応性が高いため製造中に製品が硬化してしまうという不具合が発生し、問題となっている。また、製造安定性を考慮し、比較的活性の低い有機錫系硬化触媒を使用した場合は速硬化性が得られず、速硬化性を考慮し比較的活性の高い有機錫系硬化触媒を使用した場合は、ジアルキルスズオキサイドとエステル系化合物との反応物と同様に製造安定性が得られない。
【0006】
最近、触媒を完全密閉系にて生産可能な設備が開発され、常温硬化系製品の製造者から好評を得ているが、添加剤の数に制限があること、設備が非常に高価であることなどのため、導入するには問題がある。本発明らは経時後に高活性が得られる有機錫系硬化触媒について鋭意検討し本発明を完成させた。
【特許文献1】特開2001−40037号公報
【特許文献2】特公平1−58219号公報
【特許文献3】特許第3062625号公報
【特許文献4】特開平8−337713号公報
【特許文献5】特開2003−138151号公報
【特許文献6】特開平11−12480号公報
【特許文献7】特開昭52−73998号公報
【特許文献8】特開昭55−9669号公報
【特許文献9】特開昭59−122541号公報
【特許文献10】特開昭60−6747号公報
【特許文献11】特開昭61−233043号公報
【特許文献12】特開昭63−112642号公報
【特許文献13】特開平3−79627号公報
【特許文献14】特開平4−283259号公報
【特許文献15】特開平5−70531号公報
【特許文献16】特開平5−287186号公報
【特許文献17】特開平11−80571号公報
【特許文献18】特開平11−116763号公報
【特許文献19】特開平11−130931号公報
【特許文献20】特許第3313360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記した従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、本発明は、第1に、作業性、接着性、ゴム物性、貯蔵安定性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とする。本発明は、第2に、フタル酸エステルを用いることなく、速硬化性、製造安定性、製品安定性及び接着性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の硬化性組成物の第1の態様は、(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び(B)下記式(1)で表わされるメタロセン化合物及び架橋性シリル基含有チオール化合物の存在下に、重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1の末端に架橋性シリル基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは架橋性シリル基を有する基である)が結合している(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする。なお、本願明細書において、アクリルとメタクリルを併せて(メタ)アクリルと称する。
【0009】

【0010】
(但し、式(1)において、Mは、周期表4族、5族、14族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選択される金属であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基及び置換基を有することもある珪素含有基よりなる群から選択される少なくとも一種の基、若しくは、水素原子又は単結合のいずれかであり、さらに、R及びRが共同して式(1)で表わされる化合物中の2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR又はRは、共同して環状構造を形成していてもよく、a及びbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Yは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0又は金属Mの価数−2の整数である。)
【0011】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖が、下記式(2)で表わされる繰り返し単位を99重量%以下の量で有すると共に、該式(2)で表わされる繰り返し単位以外の繰り返し単位として分子中に一つ以上の架橋性シリル基を有する重合性不飽和化合物単量体から誘導される繰り返し単位を1〜50重量%の範囲内の量で有することが好ましい。
【0012】

【0013】
(ただし、式(2)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは該炭化水素基の側鎖を形成する基中の水素原子の少なくとも一部が、塩素原子、フッ素原子、1級のアミノ基、2級のアミノ基、3級のアミノ基、4級のアミン塩類基、アミド基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド基、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基およびグリシジル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基、または、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である)
【0014】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)における架橋性シリル基が、下記一般式(3)で示されることが好ましい。
【0015】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0016】
(式(3)中、Xは水酸基又は加水分解性基で、3個のXは同じであっても異なっていてもよい。)
【0017】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)における架橋性シリル基が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を併有することが好適である。
【0018】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0019】

【0020】
(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【0021】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体の混合物であることが好ましい。
【0022】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0023】

【0024】
(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【0025】
本発明の硬化性組成物の第1の態様において、(C)硬化触媒を更に含有することが好ましい。前記硬化触媒(C)が、(C1)下記一般式(5)で示される有機錫を含有することが好適である。
【0026】
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
【0027】
(式中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。)
【0028】
本発明の硬化性組成物の第1の態様において、硬化触媒として前記有機錫(C1)を用いる場合、前記成分(A)、前記成分(B)及び前記成分(C1)を含有する硬化性組成物に、さらに反応処理を加えることが好ましい。
【0029】
本発明の硬化性組成物の第2の態様は、(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び(C1)下記一般式(5)で示される有機錫を含有することを特徴とする。
【0030】
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
【0031】
(式中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。)
【0032】
本発明の硬化性組成物の第2の態様において、前記成分(A)及び前記成分(C1)を含有する硬化性組成物に、さらに反応処理を加えることが好ましい。
【0033】
本発明の硬化性組成物の第1及び第2の態様において、前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体であることが好ましい。
【0034】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0035】
(式(3)中、Xは水酸基又は加水分解性基で、3個のXは同じであっても異なっていてもよい。)
【0036】
本発明の硬化性組成物の第1及び第2の態様において、前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を併有する有機重合体であることが好適である。
【0037】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0038】

【0039】
(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【0040】
本発明の硬化性組成物の第1及び第2の態様において、前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体の混合物であることが好ましい。
【0041】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0042】

【0043】
(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【0044】
本発明の硬化性組成物の第1及び第2の態様において、前記重合体(A)が、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基含有ポリイソブチレン系重合体、及び架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0045】
本発明の硬化性組成物の第1及び第2の態様において、(D)シランカップリング剤をさらに添加することが好ましい。
【0046】
本発明の硬化性組成物の製造方法は、少なくとも前記重合体(A)及び前記有機錫(C1)を含有する硬化性組成物の製造方法であって、前記重合体(A)及び前記有機錫(C1)を含有し、密閉された容器に梱包された硬化性組成物に対し、さらに反応処理を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、第1に、作業性、接着性、ゴム物性、貯蔵安定性、深部硬化性及び速硬化性に優れた硬化性組成物を提供することができる。本発明によれば、第2に、フタル酸エステルを使用しないため安全性が高く、速硬化性、製造安定性、製品安定性及び接着性に優れている硬化性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例10及び比較例5における指触乾燥時間の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0050】
本発明の硬化性組成物の第1の態様は、下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする。
(A)架橋性シリル基含有有機重合体、
(B)下記式(1)で表わされるメタロセン化合物及び架橋性シリル基含有チオール化合物の存在下に、重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1の末端に架橋性シリル基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは架橋性シリル基を有する基である)が結合している(メタ)アクリル系重合体。
【0051】

【0052】
(但し、式(1)において、Mは、周期表4族、5族、14族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選択される金属であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基及び置換基を有することもある珪素含有基よりなる群から選択される少なくとも一種の基、若しくは、水素原子又は単結合のいずれかであり、さらに、R及びRが共同して式(1)で表わされる化合物中の2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR又はRは、共同して環状構造を形成していてもよく、a及びbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Yは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0又は金属Mの価数−2の整数である。)
【0053】
前記成分(A)としては、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基、すなわち架橋性シリル基を含有する有機重合体が使用される。このような架橋性シリル基含有有機重合体(A)としては、例えば、特許文献2〜20中に開示されているものを挙げることができる。前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)としては具体的には、分子内に1個以上の架橋性シリル基を含有する、主鎖がそれぞれオルガノシロキサンを含有していてもよい、ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体、及びこれらの共重合体や混合物等を挙げることができる。
【0054】
架橋性シリル基の数は、特に限定はないが、硬化性組成物の硬化性や硬化後の物性等の点から、分子内に1〜6個含まれるのが一般的である。更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい下記一般式(6)で示されるものが好ましい。
【0055】

【0056】
(式(6)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。Xは水酸基又は加水分解性基であり、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基から選択される基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が最も好ましい。Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。dは1、2又は3であり、速硬化性の点から3が最も好ましい。)
【0057】
前記架橋性シリル基含有有機化合物(A)において、架橋性シリル基が複数存在する場合、これらは同じであっても異なっていても良く、さらに、前記式(6)中のdの数も同じであっても異なっていても良い。例えば、下記式(3)で示される架橋性シリル基及び下記式(4)で示される架橋性シリル基を併有する有機重合体も用いることができる。また、下記式(3)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体と下記式(4)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体との混合物も好適に用いられる。
【0058】
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
【0059】

【0060】
(式(3)及び(4)中、X及びRはそれぞれ式(6)と同様であり、cは1又は2である。)
【0061】
前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の主鎖は、硬化後の引張接着性、モジュラス等の物性の点から、オルガノシロキサンを含有していてもよい、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン重合体、ポリイソブチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、及びこれらの共重合体が好ましい。
【0062】
前記架橋性シリル基含有有機重合体としては、特に、架橋性シリル基を含有するポリオキシアルキレン系重合体、及び架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体から選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の数平均分子量は1,000以上100,000以下、好ましくは3,000〜50,000で分子量分布の狭いものが、硬化前の粘度が低いので取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が好適である。前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)は1種のみで用いても良く、2種以上併用してもよい。
【0063】
前記成分(B)としては、特許文献1に示されている(メタ)アクリル系重合体が用いられる。即ち、成分(B)(メタ)アクリル系重合体は、触媒として、下記式(1)で表されるメタロセン化合物及び架橋性シリル基含有チオール化合物を使用し、この触媒の存在下に、重合性不飽和化合物を重合して得られる重合体である。そして、この重合体には、少なくとも1の末端に触媒として使用した架橋性シリル基含有チオール化合物から水素原子が脱離した残基(−S−R)が結合している。ここでは、Rは架橋性シリル基を有する基である。
【0064】
前記重合触媒として使用されるメタロセン化合物は、下記式(1)で表すことができる。
【0065】

【0066】
但し、前記式(1)において、Mは、周期表4族、5族、14族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選択される金属である。具体的にはMは、チタン、ジルコニウム、クロム、ルテニウム、バナジウム、パラジウム、錫などである。また、前記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基及び置換基を有することもある珪素含有基よりなる群から選択される少なくとも一種の基、若しくは、水素原子又は単結合のいずれかである。
【0067】
さらに、R及びRが共同して前記式(1)で表わされる化合物中の2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR又はRは、共同して環状構造を形成していてもよい。また、前記式(1)において、a及びbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Yは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0又は金属Mの価数−2の整数である。
【0068】
前記メタロセン化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエン−Ti−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Ti−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,5,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イルのようなチタノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−Zr−ジクロライド、ジシクロペンタジエン−Zr−ビスフェニル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,5,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエン−Zr−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジメチルシクロペンタジエニル−Zr−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル)のようなジルコノセン化合物;ジシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ビスペンタメチルシクロペンタジエニル−V−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Ru−クロライド、ジシクロペンタジエニル−Cr−クロライドなどを挙げることができる。これらのメタロセン化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0069】
前記メタロセン化合物は、通常の触媒量で使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は1〜0.001重量部、好ましくは0.01〜0.005重量部の量で使用される。
【0070】
また、本発明で前記メタロセン化合物と共に使用されるチオール化合物は、架橋性シリル基を有するチオール化合物であり、通常この架橋性シリル基含有チオール化合物は次の式HS−Rで表される化合物である。
【0071】
ここでRは架橋性シリル基を有する基であり、架橋性シリル基としては、成分(A)の説明において例示した架橋性シリル基を同様に用いることができ、特に、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基及びブロモシリル基よりなる群から選択された少なくとも1種の架橋性シリル基が好ましい。Rは、具体的には、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノフェニルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−ジメチルモノメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−モノメチルジエトキシシラン、4−メルカプトブチル−トリメトキシシランおよび3−メルカプトブチル−トリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0072】
このような架橋性シリル基含有チオール化合物は、反応に際して主として有機金属化合物によって水素原子が引き抜かれて、・S−Rラジカルが生じ、このラジカルが形成されるポリマーの少なくとも1の末端に導入されるものと考えられる。そして、このようにしてポリマーの末端に導入された架橋性シリル基は、この反応によって活性を失うことなく、導入されたシリル基の有する活性がそのまま保持される。
【0073】
このような架橋性シリル基含有チオール化合物HS−Rから水素原子が脱離することにより、・S−Rが生じ、このラジカルが重合性不飽和化合物に結合して活性化することにより重合が開始する。そして、前記メタロセン化合物は、この架橋性シリル基含有チオール化合物HS−Rから水素原子を引き抜き、架橋性シリル基含有チオール化合物を活性化するために使用される。従って、架橋性シリル基含有チオール化合物を単独で使用したのでは、重合率が著しく低く、即ち、重合性不飽和化合物は、架橋性シリル基含有チオール化合物単独では実質的に反応しない。そして、前記メタロセン化合物は、上述のように主として架橋性シリル基含有チオール化合物を活性化するために使用され、通常は、用いたのと同一の構造のメタロセン化合物、即ち、前記式(1)で表される化合物として存在するが、その一部は、架橋性シリル基含有チオール化合物、重合性不飽和化合物およびこれらの誘導体と結合していることもあり、また、反応の進行と共に、この有機金属化合物が分解して金属が反応系に含有されることもある。
【0074】
前記架橋性シリル基含有チオール化合物の使用量は得ようとする重合体の特性を考慮して適宜設定することができる。即ち、反応系における架橋性シリル基含有チオール化合物の濃度が増大すると単位時間あたりの重合率が高くなり、また、到達重合率も高くなる。この際、メタロセン化合物の量が多くなると単位時間あたりの重合率が高くなるが、到達重合率には大きな影響を及ぼさない。また、メタロセン化合物の使用量は、得られる重合体の分子量に対してほとんど影響を与えないが、このメタロセン化合物を使用しないと、反応は有効には進行しない。さらに、チオール化合物の使用量を多くすると重合速度が高くなる。こうした傾向から、本発明の成分(B)で用いられる触媒において、メタロセン化合物が反応全体において活性化触媒的に作用し、チオール化合物は、重合開始作用がある(重合開始種的に作用する)と考えられる。このように本発明の成分(B)で用いられる触媒において、架橋性シリル基含有チオール化合物の使用量は、分子量、重合率の律則となっていると考えられる。
【0075】
従って、架橋性シリル基含有チオール化合物の使用量は、得ようとする重合体の分子量、重合速度等を考慮して適宜設定することができるが、反応を円滑に進め、かつ反応を暴走させないためには、メタロセン化合物と架橋性シリル基含有チオール化合物とは通常は100:1〜1:50000の範囲内のモル比、好ましくは10:1〜1:10000のモル比で使用される。
【0076】
なお、この架橋性シリル基含有チオール化合物は、反応開始時に全量添加することもできるし、架橋性シリル基含有チオール化合物を最初に加えて、所望の時間反応させた後、さらに架橋性シリル基含有チオール化合物を追加添加することもできるし、架橋性シリル基含有チオール化合物と重合性不飽和化合物の両者を追加添加することもできる。このように架橋性シリル基含有チオール化合物の追加添加、あるいは、架橋性シリル基含有チオール化合物と重合性不飽和化合物との追加添加により、重合率が向上する。
【0077】
本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体は、前記特定の式(1)で表されるメタロセン化合物と架橋性シリル基含有チオール化合物とを用いて重合性不飽和化合物を反応させることにより得られるものであるが、この架橋性シリル基含有チオール化合物に加えて、本発明では、さらに、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のチオール基以外の官能基を有しないアルキルチオール類、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン等のチオール基以外の官能基を有しない芳香族系チオール類等のチオール化合物や、β−メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール,チオフェノールなどのような、チオール基以外にも官能基含有チオール化合物、更には、トリチオグリセリンやペンタエリスリトールをβ−メルカプトプロピオン酸にてエステル化した多官能チオール化合物、また、ポリサルファイド系ポリマーのような活性のチオール基を有すポリマー型チオールを併用することも可能である。
【0078】
さらに、本発明では、重合開始触媒としての前記メタロセン化合物および架橋性シリル基含有チオール化合物以外に、重合速度や重合度を調整することを目的として、ジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物を使用することができる。ここで使用することができる重合調整剤として使用されるジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物の例としては、ジエチルトリスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ビス(4−ヒドロキシブチル)テトラスルフィド、ビス(3−ヒドロキシプロピル)トリスルフィド、ビス(3−カルボキシプロピル)トリスルフィド、ビス(3−カルボキシプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−プロピルトリメトキシシラン)ジスルフィド、ビス(3−プロピルトリエトキシシラン)テトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのスルフィド化合物は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。このようなスルフィド化合物は、本発明の重合において、重合を失活させない程度に使用することができ、具体的には、重合させようとする重合性不飽和化合物100重量部に対して、通常は50〜0重量部、好ましくは20〜0.005重量部の量で使用される。
【0079】
本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体を形成する主鎖は、以下に記載するような重合性不飽和化合物を重合させることにより形成される。このような重合性不飽和化合物の例としては、次式(7)〜(9)で表され重合性不飽和化合物を挙げることができる。
【0080】

【0081】
ただし、前記式(7)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは該炭化水素基の側鎖を形成する基中の水素原子の少なくとも一部が、塩素原子、フッ素原子、1級のアミノ基、2級のアミノ基、3級のアミノ基、4級のアミン塩類基、アミド基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド基、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基およびグリシジル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基、または、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である。即ち、このRの例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基を挙げることができる。この基Rを構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子、スルホン酸基、グリシジル基等で置換されていてもよい。
【0082】

【0083】
ただし、前記式(8)において、R11〜R13は、前記R〜Rと同じ意味であり、R14は、水酸基、−CO−NH基、−CN基、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基のいずれかの基である。この基R14を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R14は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。
【0084】

【0085】
ただし、前記式(9)において、R15およびR17は、前記R〜Rと同じ意味であり、R16およびR18は、それぞれ独立に、カルボキシル基、水酸基、−CO−NH基、−CN基、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかの基である。この基R16およびR18を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R16およびR18はR15およびR17の結合した2個の炭素原子と共同して環状構造を形成していてもよく、この環状構造が2重結合を有していてもよい。
【0086】
このような重合性不飽和化合物の具体例としては、以下に示す化合物を挙げることができる。アクリル酸およびアクリル酸アルカリ金属塩などの塩;メタクリル酸およびメタクリル酸アルカリ金属塩などの塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルのようなアクリル酸アリールエステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピルのようなアクリル酸アルコキシアルキル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルのようなメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピルのようなメタクリル酸アルコキシアルキル;エチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジアクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジアクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジアクリル酸エスエル、トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジメタクリル酸エスエル、ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジメタアクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリル酸エステルのような多価アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリメタクリル酸エステルのような多価メタクリル酸エステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのメタクリル酸エステル;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;アクリロイルアジリジン、メタクリロイルアジリジン、アクリル酸−2−アジリジニルエチル、メタクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸またはメタクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;(メタ)アクリル酸を除く、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;ならびに、エチルデンノルボルネン、イソプレン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、クロロプレン、ブタジエン、メチルブタジエン、シクロブタジエン、メチルブタジエンのようなジエン化合物。
【0087】
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等)を例示することができる。これらの重合性不飽和化合物は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの重合性不飽和化合物は、反応条件において、液体であっても固体であってもよく、また気体であってもよいが、操作の簡便さから反応の際に液体であるモノマーを用いることが好ましい。
【0088】
本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体は、前記メタロセン化合物と前記架橋性シリル基含有チオール化合物とからなる重合用触媒の存在下に、重合性不飽和化合物の各種重合法によって得られる重合体であり、少なくとも1の分子末端に、架橋性シリル基含有チオール化合物から硫黄原子に結合した水素が脱離した・S−Rが結合している。前記のような重合性不飽和化合物を重合させることにより、使用する重合性不飽和化合物に対応して、その主鎖中には、例えば下記式(2)、(10)及び(11)で表される繰り返し単位が形成される。
【0089】

【0090】
ただし、前記式(2)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは該炭化水素基の側鎖を形成する基中の水素原子の少なくとも一部が、塩素原子、フッ素原子、1級のアミノ基、2級のアミノ基、3級のアミノ基、4級のアミン塩類基、アミド基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド基、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基およびグリシジル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基、または、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である。即ち、このRの例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基を挙げることができる。この基Rを構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子、スルホン酸基、グリシジル基等で置換されていてもよい。
【0091】

【0092】
ただし、前記式(10)において、R11〜R13は、前記R〜Rと同じ意味であり、R14は、水酸基、−CO−NH基、−CN基、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基のいずれかの基である。この基R14を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R14は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。
【0093】

【0094】
ただし、前記式(11)において、R15およびR17は、前記R〜Rと同じ意味であり、R16およびR18は、それぞれ独立に、カルボキシル基、水酸基、−CO−NH基、−CN基、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基のいずれかの基である。この基R16およびR18を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R16およびR18はR15およびR17の結合した2個の炭素原子と共同して環状構造を形成していてもよく、この環状構造が2重結合を有していてもよい。
【0095】
本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体の主鎖としては、特に限定されないが、前記式(2)で表される繰り返し単位を50〜100重量%の量で有することが好ましい。
【0096】
また、本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体を製造するに際して、架橋性シリル基を有する重合性不飽和単量体[E]を共重合させることができる。該架橋性シリル基としては、成分(A)の説明において例示した架橋性シリル基を同様に用いることができ、特に、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基及びブロモシリル基よりなる群から選択された少なくとも1種の架橋性シリル基が好ましい。ここで使用される架橋性シリル基を有する重合性不飽和単量体[E]は、例えば次式(12)で表わすことができる。
【0097】

【0098】
ただし、前記式において、R21、R23は前記R〜Rと同じ意味であり、R22は、水素原子、ハロゲン原子、−CN基、グリシジル基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基のいずれかの基または原子である。この基R22が水素原子、ハロゲン原子以外の基である場合において、この基を構成する水素原子の少なくとも一部は、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、この基R22は、アルキレングリコールから誘導される構成単位、アルコキシシリル基、アルキルアルコキシシリル基、メチロール基、アルコキシアミド基を有する基であってもよい。また、R24は、−CO−O−、−CH−、−C−、−CO−O−C−、−CO−O−C−O−等の2価の基または単結合である。さらに、R25、R26、R27はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、ハロゲン原子のいずれかである。
【0099】
前記式(12)で表される化合物を共重合させることにより、次式(13)で表される繰り返し単位が主鎖に導入される。
【0100】

【0101】
(ただし、前記式(13)において、R21〜R27は、前記式(12)におけるのと同じ意味である。)
【0102】
本発明の成分(B)(メタ)アクリル系重合体の主鎖には、前記式(13)で表される繰り返し単位は、全繰り返し単位中に1〜50重量%の量で導入されていることが好ましく、さらに5〜30重量%の量で導入されていることが特に好ましい(この導入率は、モノマー換算値である)。このような量で繰り返し単位(13)を導入することにより、この(メタ)アクリル系重合体(B)は、自己反応硬化性を有するようになると共に、例えば架橋性アルコキシシリル基を有すシランカップリング剤、シラノール化合物、テトラエトキシチタン等のアルコキシ金属や、金属アルコレート等の金属キレート化物、シリコーン樹脂のようなアルコキシシリル基を有す樹脂組成物と反応して硬化体を良好に形成することができるようになる。なお、前記式(13)で表される繰り返し単位は、架橋性シリル基を有する重合性不飽和単量体[E]を用いることにより導入できるほか、(メタ)アクリル系重合体を調製した後、架橋性シリル基を有する化合物と得られた(メタ)アクリル系重合体とを反応させることによっても導入することが可能である。
【0103】
前記のような式(13)で表される繰り返し単位を形成可能な単量体[E]の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−ビニル−モノクロロジメトキシシラン、γ−ビニル−トリクロロシラン、γ−ビニル−ジクロロ−モノメチルシラン等のビニル基に架橋性シリル基が直接導入されたビニル化合物単量体;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルモノメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性の高い(メタ)アクリロイル基に架橋性シリル基が導入されている(メタ)アクリル系単量体;更には、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン等のように重合性不飽和基を有す化合物に架橋性シリル基が導入されている重合性単量体を挙げることができる。
【0104】
前記成分(B)(メタ)アクリル系重合体、特に前記式(13)で表される繰り返し単位を有する(メタ)アクリル系重合体は、式(1)で表される化合物および架橋性シリル基含有チオール化合物の存在下に、前記重合性不飽和化合物を(共)重合させることにより製造することができる。この反応は溶媒、分散媒の有無に拘わらず行うことが出来るが、架橋性シリル基の安定性の面から、非水系の重合が好適である。
【0105】
この重合反応は、通常は、不活性ガス雰囲気中で行われ、通常のラジカル重合法で行われる条件を使用することができる。従って、この重合反応系には、酸素のような活性ガスは存在しない。ここで使用される不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスおよび炭酸ガスを挙げることができる。なお、本発明の成分(B)は、前記のように特定の有機金属化合物と架橋性シリル基含有チオール化合物との存在下に、重合性不飽和化合物を重合させることにより得られる、少なくとも1の末端(多くの場合重合体のほとんどの末端)に架橋性シリル基含有チオール化合物から硫黄原子に結合している水素原子が脱離した残基(−S−R)が結合している重合体である。
【0106】
この重合において、触媒として使用される上述の式(1)で表されるメタロセン化合物と架橋性シリル基含有チオール化合物とからなる重合用触媒は、通常の触媒量で使用することができるが、前記重合性不飽和化合物の不飽和基モル数1モルに対し、式(1)で表されるメタロセン化合物は通常は0.0000001〜0.0001モル、好ましくは、使用する架橋性シリル基含有チオール化合物のモル数に合わせ、メタロセン化合物と架橋性シリル基含有チオール化合物とのモル比が10:1〜1:10000になるように使用する。架橋性シリル基含有チオール化合物は、通常は0.00001〜0.7モル、好ましくは0.0001〜0.5モルの範囲内で使用される。
【0107】
こうした重合反応は、重合性不飽和化合物の種類によって、加熱あるいは加温下に行うこともできるし、冷却しながら行うこともできるが、この重合反応温度は0〜150℃の範囲内に設定することが好ましく、さらに25〜120℃の範囲内に設定することが特に好ましい。重合反応温度を前記範囲内に設定することにより、反応を暴走させることなく安定に進行させることができる。使用する重合性不飽和化合物の不飽和基の活性にもよるが、比較的重合性の高い(メタ)アクリル酸エステル系の重合性不飽和化合物を用いた場合でも、反応温度を0℃以下とした場合、式(1)で表すメタロセン化合物および架橋性シリル基含有チオール化合物の触媒としての活性が低くなり、充分な重合率を達成するために必要な時間が長くなり、効率が悪い。さらに、スチレン型不飽和化合物のように重合活性が低い化合物を用いた場合でも、25℃以上の条件であれば、充分な重合率を達成することができる。
【0108】
また、反応温度を150℃以上とした場合は重合反応中に著しい発熱による暴走反応の危険性が生ずる。重合温度を120℃以下と設定することにより反応を暴走させることなく、反応の円滑な進行を維持することができる。本発明の重合において、反応時間は、重合率、分子量等を考慮して適宜設定することができるが、例えば前記のような条件では反応時間は、通常は2〜12時間、好ましくは2〜8時間の範囲内に設定することが好ましい。
【0109】
この重合反応は、反応物の温度を下げ、さらに好ましくはベンゾキノンなどの重合反応停止剤を添加することにより停止することができる。前記のように重合を行うことにより、通常は40%以上、好ましくは60%以上の重合率の重合体が得られる。また、得られた重合体について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜300000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜100000の範囲内にある。また、分散指数(=数平均分子量/重量平均分子量)は、通常は1.02〜9.0、好ましくは1.2〜3.0の範囲内にある。
【0110】
本発明の成分(B)において、重合触媒を用いて重合させることにより得られる重合体中には、特に脱灰工程を設けない場合には、有機金属化合物が混在している。また、得られる重合体の分子の末端の少なくとも一部には、用いたチオール類から誘導される硫黄含有基が結合している。即ち、前記のような触媒を用いた重合では、重合開始種として、架橋性シリル基含有チオール化合物を用いているが、通常これら架橋性シリル基含有チオール化合物は単独では重合開始種としての活性を有していない。しかし、式(1)で表される有機金属化合物を用いた場合、架橋性シリル基含有チオール化合物から誘導され得る架橋性シリル基を有するチオール基が、有機金属触媒により重合開始可能な活性種となり、モノマーに対し開始種となり得る。この為、この反応においてモノマー量に対する架橋性シリル基含有チオール化合物の量が増大することにより、単位時間当たりの重合率は向上する。そして、得られる重合体の重合開始末端には、用いた架橋性シリル基含有チオール化合物から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。但し、ここで用いた架橋性シリル基含有チオール化合物は、重合開始種として作用する以外に、連鎖移動剤としても作用しており、架橋性シリル基含有チオール化合物の量により、分子量(重合度)および重合率が大きく左右される。これらの現象から推察するに、本反応での重合の進行および、停止は、ラジカル重合であると推察できる。また、連鎖移動により水素引き抜きをされた架橋性シリル基含有チオール化合物の有するチオラジカル(・S)は、再び、重合開始種として、モノマーを攻撃する。この為、本重合法にて得られるポリマーは、架橋性シリル基含有チオール化合物の使用量に拘わらず、生成した重合体の末端に、用いた架橋性シリル基含有チオール化合物から誘導される硫黄含有基が結合することとなる。
【0111】
本発明の成分(B)における反応系は、アルコールなどの極性有機溶媒や、水などの分散媒中においても、溶液重合や塊状重合で行った場合と同様に重合ができることから、重合における反応はラジカル反応が支配的と考えられる。その為、得られる重合体の反応停止末端は、シリル基含有チオール化合物による連鎖移動による水素、または、ラジカル化したチオラジカルを有すチオール類および成長ポリマーラジカルとのラジカルカップリングによるシリル基含有チオール化合物から誘導される硫黄含有基であると考えられる。
【0112】
得られる重合体中には、前記メタロセン化合物が、そのままの形で、あるいは他の有機基と結合して、さらには金属として残留する。また、架橋性シリル基含有チオール化合物は、直接重合体の生成反応に寄与し、自らが分解しながら反応が進行することから、架橋性シリル基含有チオール化合物から誘導される末端基が、重合体末端に導入される。
【0113】
このように末端に結合している架橋性シリル基含有チオール化合物から誘導される基中の架橋性シリル基の活性は前記重合によって損なわれることはなく、調製された重合体においてもその活性は保持される。前記の推定および反応進行は、本発明の反応における種々の現象から本発明者が最も合理的に推定できると考えているものであり、本発明がこれによって限定されるものではないことは勿論である。
【0114】
本発明の成分(B)として、特に、前記式(1)で表されるメタロセン化合物および分子中に少なくとも1つの架橋性シリル基を有するチオール化合物の存在下に、重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル系単量体の重合させた重合体であって、少なくとも1の末端にチオール化合物から水素原子が脱離した残基−S−R(ただし、Rは架橋性シリル基を有する基である)が結合している(メタ)アクリル系重合体を含み、該(メタ)アクリル系重合体の主鎖が、前記式(2)で表される繰り返し単位を99重量%以下、好ましくは95〜70重量%の量で有すると共に、この式(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として分子中に1つ以上の架橋性シリル基を有する重合性不飽和化合物単量体[E]から誘導される繰り返し単位を1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲内の量で有する(メタ)アクリル系重合体(B1)が好ましい。
【0115】
この(メタ)アクリル系重合体(B1)は、前記式(2)で表される繰り返し単位を有し、さらに、前記式(12)等で表される重合性不飽和化合物単量体から誘導される繰り返し単位を有するが、さらに、例えば前記式(10)および前記式(11)で表される繰り返し単位、その他(エチレンやプロピレンなどの2、3量体)などの反応性不飽和結合を有する単量体から誘導される繰り返し単位を有していても良い。これらの他の単量体から誘導される繰り返し単位の共重合量は、通常は0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%である。なお、本発明における重合量は、(共)重合体中における各繰り返し単位の共重合量は、全体を100重量%としたときの値である。
【0116】
このような(メタ)アクリル系重合体(B1)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜300000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)は、通常は500〜1000000、好ましくは1000〜100000の範囲内にある。また、分散指数(=数平均分子量/重量平均分子量)は、通常は1.02〜9.0、好ましくは1.2〜3.0の範囲内にある。
【0117】
このような(メタ)アクリル系重合体(B1)は、溶剤を含んだ状態もしくは、樹脂分として100%の状態で、通常は粘稠な液体であるが、硬化剤等を配合して反応させることにより硬化する。そして、この硬化体は、弾性および可撓性を有している。前記のような繰り返し単位を有し、重合体の末端にシリル基を有するチオール化合物から誘導される成分単位を有する(メタ)アクリル系重合体は、主鎖中に導入された前記式(12)に由来する架橋性シリル基および分子末端に導入された架橋性シリル基は、高い反応性を有しており、この(メタ)アクリル系重合体(B1)は、自己縮合反応、縮合架橋反応、あるいは、自己縮合反応と縮合架橋反応とを併合させることにより、硬化するとの特性を有している。
【0118】
成分(B)の配合割合は、特に限定はないが、成分(A)1重量部に対して、0.01〜100重量部、特に0.1〜90重量部用いることが好ましい。これらの(メタ)アクリル系重合体は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0119】
本発明の硬化性組成物に、さらに成分(C)硬化触媒を添加することが好ましい。成分(C)硬化触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられ、特にシラノール縮合触媒を用いることが好ましい。前記シラノール縮合触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、オクチル酸錫及びナフテン酸錫等の有機錫化合物;下記一般式(5)で示される有機錫化合物(C1);ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛及びナフテン酸鉛等の有機酸鉛;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス及びロジン酸ビスマス等の有機酸ビスマス;シラノール縮合触媒として公知のその他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられる。
【0120】
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
【0121】
但し、式(5)中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。前記R及びR10の1価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ドデシル基、ラウリル基、プロペニル基、フェニル基、トリル基等の炭素数1〜20程度の炭化水素基が好適な例として挙げられる。R及びR10は同じであっても異なっていても良い。前記一般式(5)で示される有機錫(C1)としては、特に、ジメチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のジアルキルスズオキサイドが好ましい。
【0122】
成分(C)として、前記一般式(5)で示される有機錫(C1)を用いる場合、少なくとも前記成分(A)、(B)及び(C1)を含有する硬化性組成物を、密閉された容器に梱包した後、速硬化性を発現させる為に反応処理を加えることが好ましい。反応処理については、後述する本発明の硬化性組成物の製造方法と同様に行えばよい。
【0123】
成分(C)の配合割合は、架橋速度、硬化物の物性などの点から、成分(A)100重量部に対して、0.1〜30重量部、特に0.5〜20重量部用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0124】
本発明の硬化性組成物に、成分(D)シランカップリング剤をさらに添加することが、接着性を向上させ、硬化を促進するため好ましい。前記シランカップリング剤としては、従来公知のものを広く使用でき特に限定されないが、例えば、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルメトキシシランなどのアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリルシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネートシラン類などが挙げられる。
【0125】
前記成分(D)の配合割合は、特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して、成分(D)0.1〜30重量部程度が好ましく、0.3〜15重量部がさらに好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0126】
本発明の硬化性組成物は、前記した成分に加えて、必要に応じて、物性調整剤、充填剤、可塑剤、揺変剤、脱水剤(保存安定性改良剤)、粘着付与剤、垂れ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、ラジカル重合開始剤などの物質やトルエンやアルコール等の各種溶剤を配合してもよく、また相溶する他の重合体をブレンドしてもよい。
【0127】
前記物性調整剤は引っ張り物性を改善する目的で添加される。前記物性調整剤の例としては、1分子中にシラノール基を1個有するシリコン化合物があり、例えば、トリフェニルシラノール、トリアルキルシラノール、ジアルキルフェニルシラノール、ジフェニルアルキルシラノール等が挙げられ、その他にも加水分解して1分子中にシラノール基を1個有する化合物を生成するシリコン化合物等の各種シランカップリング剤が挙げられ、例えば、トリフェニルメトキシシラン、トリアルキルメトキシシラン、ジアルキルフェニルメトキシシラン、ジフェニルアルキルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリアルキルエトキシシラン等が挙げられる。前記物性調整剤は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0128】
前記充填剤は硬化物の補強の目的で添加される。前記充填剤として、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土含水ケイ酸、含水けい酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、スレート粉、マイカ、カオリン、ゼオライト等が挙げられ、このうち炭酸カルシウムが好ましく、脂肪酸処理炭酸カルシウムがより好ましい。また、ガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズ、カーボンビーズ、スチレンビーズ、フェノールビーズ、アクリルビーズ、多孔質シリカ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、サランバルーン、アクリルバルーン等を用いることもでき、これらの中で、組成物の硬化後の伸びの低下が少ない点からアクリルバルーンがより好ましい。前記充填剤は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0129】
前記可塑剤は硬化後の伸び物性を高めたり、低モジュラス化を可能とする目的で添加される。可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸一塩基酸エステル類;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコール等のグリコールエステル類;脂肪族エステル類;エポキシ可塑剤類;ポリエステル系可塑剤;ポリエーテル類;ポリスチレン類、アクリル系可塑剤などが挙げられる。前記可塑剤は単独で用いても良く、または、2種類以上を併用しても良い。
【0130】
前記揺変剤としては、例えば、コロイダルシリカ、石綿粉等の無機揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機揺変剤、水添ヒマシ油誘導体、脂肪酸アマイドワックス、ステアリル酸アルミニウム、ステアリル酸バリウム等が挙げられる。前記揺変剤は単独で使用しても良く、または、2種類以上を併用しても良い。
【0131】
前記脱水剤は保存中における水分を除去する目的で添加される。前記脱水剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメトルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。
【0132】
前記酸化防止剤は、硬化シーリング材の酸化を防止して、耐候性を改善するために使用されるものであり、例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70%)]−ポリプロピレン(30%)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、3,3′,3″,5,5′,5″−ヘキサン−tert−ブチル−4−a,a′,a″−(メシチレン−2,4,6−トリル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記酸化防止剤は単独で使用しても良く、または、2種類以上を併用しても良い。
【0133】
前記紫外線吸収剤は、硬化シーリング材の光劣化を防止して、耐候性を改善するために使用されるものであり、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用しても良い。
【0134】
本発明の硬化性組成物の第2の態様は、(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び(C1)下記一般式(5)で示される有機錫、を含有してなるものである。
【0135】
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
【0136】
(式中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。)
【0137】
上記成分(A)及び(C1)は、本発明の硬化性組成物の第1の態様において前述した通りである。なお、成分(A)として、特許文献1に開示されているような前述した架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を用いることもできる。上記成分(C1)は、本発明の硬化性組成物の第1の態様において上述した通りであり、成分(C1)の配合割合も上記した本発明の硬化性組成物の第1の態様と同様に行えばよい。上記成分以外の配合物についても第1の態様と同様である。
【0138】
本発明の硬化性組成物は、特に限定されないが、本発明の硬化性組成物の製造方法により製造することが、硬化性を促進させることができるため好適である。本発明の硬化性組成物の製造方法は、少なくとも前記重合体(A)及び硬化触媒として前記有機錫(C1)を含有する硬化性組成物を、密閉された容器に梱包した後、速硬化性を発現させる為に反応処理を加えるものである。
【0139】
前記速硬化性を発現させる為の反応処理としては、特に限定されず、例えば、低温〜常温で速硬化性が発現されるまで保持しても良く、加熱処理を行っても良い。前記加熱処理は30℃〜150℃で、30分〜3日間行うことが好適である。硬化触媒(C)として前記有機錫(C1)を用いた本発明の硬化性組成物は、製造安定性が高く、硬化性が緩やかであり、通常、常温で1ヶ月程度の保存で本来の速硬化性を発現するが、前記加熱処理を加えることにより、硬化性を著しく促進することができる。前記加熱処理は、状況に応じて適宜に行えばよい。
【実施例】
【0140】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0141】
(合成例1)
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、キシレン43重量部、メチルメタクリレート80重量部、ステアリルメタクリレート20重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20重量部、及び金属触媒としてルテノセンジクロライド0.1重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0142】
ついで、充分に窒素ガス置換した3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を撹拌下にフラスコ内に一気に添加した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を添加後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、加熱及び冷却を4時間行った。さらに、充分に窒素ガス置換した3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を撹拌下に5分かけてフラスコ内に追加添加した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部全量を追加添加後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が90℃に維持できるように、さらに冷却及び加温を行いながら、反応を4時間行った。
【0143】
前記のようにして合計で8時間5分間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止した。さらに架橋性シリル基含有有機重合体(A)としてサイリルSAT−200(架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基、鐘淵化学工業(株)製)を150重量部添加した。
【0144】
続いて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらキシレン、THF及び残存モノマー、残存チオール化合物の除去を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物1を得た。
【0145】
(合成例2)
フラスコの内容物として、メチルメタクリレート80重量部の代わりに、ノルマルブチルアクリレート10重量部、メチルメタクリレート70重量部を配合した以外は、合成例1と同様にして合成を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物2を得た。
【0146】
(合成例3)
フラスコの内容物として、キシレン43重量部、メチルメタクリレート80重量部及びステアリルメタクリレート20重量部の代わりに、ノルマルブチルアクリレート10重量部、メチルアクリレート70重量部及びステアリルアクリレート20重量部を配合した以外は、合成例1と同様にして合成を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物3を得た。
【0147】
(合成例4)
フラスコ内の内容物として、架橋性シリル基含有有機重合体(A)としてサイリルSAT−200(架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基)150重量部の代わりに、ES−GX3440ST(架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基:トリメトキシシリル基、旭硝子(株)製)を150重量部配合した以外は、合成例3と同様に合成を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物4を得た。
【0148】
(合成例5)
フラスコ内の内容物として、架橋性シリル基含有有機重合体(A)としてサイリルSAT−200(架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基)150重量部の代わりに、サイリルSAT−200(架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基)を75重量部、ES−GX3440ST(架橋性シリル基:トリメトキシシリル基)を75重量部配合した以外は、合成例3と同様に合成を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物5を得た。
【0149】
(合成例6)
フラスコ内の内容物として、架橋性シリル基含有有機重合体(A)としてサイリルSAT−200(架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基)150重量部の代わりに、サイリルMA−440(架橋性シリル基含有(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基、鐘淵化学工業(株)製)を150重量部配合した以外は、合成例3と同様に合成を行い、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物6を得た。
【0150】
(比較合成例1)
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、キシレン43重量部、メチルメタクリレート80重量部、ステアリルメタクリレート20重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20重量部、及び金属触媒としてルテノセンジクロライド0.1重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
【0151】
ついで、充分に窒素ガス置換した3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を撹拌下にフラスコ内に一気に添加した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を添加後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、加熱及び冷却を4時間行った。さらに、充分に窒素ガス置換した3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部を撹拌下に5分かけてフラスコ内に追加添加した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン20重量部全量を追加添加後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が90℃に維持できるように、さらに冷却及び加温を行いながら、反応を4時間行った。
【0152】
前記のようにして合計で8時間5分間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止した。
【0153】
続いて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらTHF及び残存モノマー、残存チオール化合物の除去を行い、(メタ)アクリル系重合体1(B)を得た。
【0154】
(比較合成例2)
フラスコの内容物として、メチルメタクリレート80重量部の代わりに、ノルマルブチルアクリレート10重量部、メチルメタクリレート70重量部を配合した以外は、比較合成例1と同様にして合成を行い、(メタ)アクリル系重合体2(B)を得た。
【0155】
(比較合成例3)
フラスコの内容物として、キシレン43重量部、メチルメタクリレート80重量部及びステアリルメタクリレート20重量部の代わりに、ノルマルブチルアクリレート10重量部、メチルアクリレート70重量部及びステアリルアクリレート20重量部を配合した以外は、比較合成例1と同様にして合成を行い、(メタ)アクリル系重合体3(B)を得た。
【0156】
(比較合成例4)
フラスコ内の内容物として、110℃に加熱したキシレン45重量部、メチルメタクリレート80重量部、ステアリルメタクリレート20重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.5重量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.1重量部を添加し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル7.4重量部を溶かした溶液を6時間かけて滴下した後、2時間後重合を行い、さらに、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)としてサイリルSAT−200(架橋性シリル基:メチルジメトキシシリル基)を150重量部添加した。
【0157】
続いて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらキシレン及び残存モノマーの除去を行い、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体の混合物7を得た。
【0158】
(実施例1)
表1に示した如く、合成例1で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物1、ビニルトリメトキシシラン、アミノシラン化合物、及び硬化触媒(C)としてNo.918(ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルの反応物)を、それぞれ所定量ずつ仕込み硬化性組成物を調製した。
【0159】
【表1】

【0160】
表1における配合物質の配合量は重量部で示され、*1〜*12は次の通りである。
*1:合成例1で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B:100重量部)の混合物1
*2:合成例2で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物2
*3:合成例3で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B:100重量部)の混合物3
*4:合成例4で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B:100重量部)の混合物4
*5:合成例5で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B:100重量部)の混合物5
*6:合成例6で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B:100重量部)の混合物6
*7:比較合成例1で得た架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)
*8:比較合成例2で得た架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)
*9:比較合成例3で得た架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)
*10:三共有機合成(株)製、商品名:No.918(ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルの反応物)
*11:日東化成(株)製、商品名:ネオスタンU−300(ジブチル錫オキサイド)
*12:N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
【0161】
(実施例2〜6)
表1に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
【0162】
(実施例7)
表1に示した如く、成分(C)として、No.918(ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルの反応物)の代わりに、ネオスタンU−300(ジブチル錫オキサイド)を所定量配合し、アルミニウムで被覆されたカートリッジに密閉充填し、50℃3日間加熱養生を行った。その後実施例1と同様にして実験を行った。
【0163】
(比較例1〜3)
表1に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
【0164】
前記得られた硬化性組成物に対し、下記の測定を行った。結果を表2に示す。
【0165】
1.接着性
JIS K 6850 剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法に準拠。被着体としてはアルマイトアルミと栂板を使用した。破壊状態については、凝集破壊の場合を○とし、界面破壊の場合を×とした。
【0166】
2.ゴム物性
JIS K 6521 加硫ゴムの引張り試験方法に準拠する。ダンベル状3号を使用する。なお、測定不可の場合を×で示した。
【0167】
3.深部硬化性
23℃に調整された硬化性組成物を直径4cm以上、高さ2cm以上の一方向からのみ水分が透過可能な容器に試料を満たし、表面を平滑にレベリングする。23℃50%RH環境下で24時間後の硬化厚みをダイヤルゲージで測定する。
【0168】
4.貯蔵安定性
硬化性組成物を、それぞれ23℃50%RH環境下で24時間放置した後、B型粘度計(東機産業製、BSローター7番 10rpm)を使用し測定した結果を初期とし、その後50℃乾燥機中に2週間放置した後、23℃50%RH環境下で24時間放置し、液温が23℃になるように調整し、同様に粘度測定を行った結果を貯蔵後とした。貯蔵後/初期の値が1.3未満を○、1.3以上を×とした。
【0169】
5.指触乾燥時間
JIS A 1439 4.19により指触乾燥時間を測定する。指触乾燥時間が10分未満を○、10分以上を×で示した。
【0170】
【表2】

【0171】
表2に示した如く、実施例1〜7では良好な接着性、ゴム物性、深部硬化性、貯蔵安定性を示したのに対し、成分(A)を含有していない比較例1〜3では接着性及びゴム物性に問題があり、深部硬化性も悪かった。
【0172】
(実施例8)
表3に示した如く、合成例1で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の混合物1、充填剤、ビニルトリメトキシシランをそれぞれ所定量づつ仕込み、加熱減圧混合攪拌を110℃にて2時間行い、配合物の脱水を行った。さらに、アミノシラン化合物及びNo.918(ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルの反応物)を、それぞれ所定量ずつ仕込み硬化性組成物を調製した。
【0173】
【表3】

【0174】
表3における配合物質の配合量は重量部で示され、*1、*4、*10及び*12は表1と同様であり、*13及び*14は次の通りである。
*13:比較合成例4で得た架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(A:150重量部)と架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体(100重量部)の混合物
*14:脂肪酸処理炭酸カルシウム(商品名:カルファイン200M、丸尾カルシウム(株)製)
【0175】
(実施例9及び比較例4)
表3に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例8と同様にして実験を行った。
【0176】
前記得られた硬化性組成物に対し、接着性、貯蔵安定性、及び指触乾燥時間の測定を行った。接着性については、JIS K 6850 剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法に準拠し、表4に示した各種被着体について測定を行った。貯蔵安定性及び指触乾燥時間の測定は実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0177】
【表4】

【0178】
表4に示した如く、実施例8及び9では良好な接着性及び接着強度を示したのに対し、比較例4では接着強度が低かった。
【0179】
(合成例7)
グリセリンを開始剤として、亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒を用いてプロピレンオキサイドの重合を行い、ポリオキシプロピレントリオールを得た。これにイソシアネートプロプルトリメトキシシランを加えウレタン化反応を行い、末端をトリメトキシシリル基に変換して、分子量18000の重合体P1を得た。
【0180】
(合成例8)
東亞合成社製UH2000(分子量11000、粘度14000mPa・s/25℃、Tg−55℃/DSC、OHV 20mg−KOH/g−resin)にイソシアネートプロピルトリメトキシシランを加えウレタン化反応を行い、末端をトリメトキシシリル基に変換して、重合体P2を得た。
【0181】
(実施例10)
表5に示した如く、架橋性シリル基含有有機重合体(A)、老化防止剤、炭酸カルシウム及びビニルトリメトキシシランをそれぞれ所定量ずつ仕込み、加熱減圧混合攪拌を110℃にて2時間行い、配合物質の脱水を行った。さらに、アミノシラン化合物(D)、ジブチルスズオキサイド(C1)を添加し、減圧混合攪拌を10分間行い、アルミニウムで被覆されたカートリッジに密閉充填し、硬化性組成物を調製した。なお、本実施例で使用した攪拌機は品川工業(株)製万能混合攪拌機である。
【0182】
【表5】

【0183】
表5における配合物質の配合量は(g)で示され、*10,*12及び*14は表1及び表3と同じであり、*15〜*21は次の通りである。
*15:前記合成例7で製造した重合体P1
*16:前記合成例8で製造した重合体P2
*17:架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン重合体(鐘淵化学(株)製、商品名SAT−200、架橋性シリル基が2官能)
*18:三共有機合成(株)製、商品名STANN BO(ジブチルスズオキサイド)
*19:日東化成(株)製、商品名ネオスタンU−800(ジオクチルスズオキサイド)
*20:日東化成(株)製、商品名ネオスタンU−220(ジブチルスズジアセチルアセトナート)
*21:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名チヌビンB75
【0184】
(実施例11〜14及び比較例5,6)
表5に示した如く、配合物質及び配合割合を変更した以外は、実施例10と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0185】
前記得られた硬化性組成物について、下記の性能試験を行った。
【0186】
1)指触乾燥時間
実施例10及び比較例5で得られた硬化性組成物に対して、20℃、50℃及び80℃における経時による指触乾燥時間の変化について実験を行った。指触乾燥時間は、JIS A 1439 4.19に基づき測定した。結果を図1に示す。
【0187】
図1に示した如く、実施例10の硬化性組成物は、温度及び経過時間等の製造後の処理条件に応じて、指触乾燥時間が変化していたのに対し、比較例5では、温度及び経過時間にかかわらず、指触乾燥時間は一定であった。
【0188】
実施例10〜14及び比較例5,6で得られた硬化性組成物に対して、製造直後及び表6に示した条件で反応処理を行った後の硬化性組成物について指触乾燥時間を測定した。結果を表6及び表7(反応処理後の硬化性組成物における測定結果)に示した。
【0189】
【表6】

【0190】
2)製造安定性
前記得られた硬化性組成物の製造直後の指触乾燥時間により、製造安定性を評価した。指触乾燥時間30分以上を○、30分未満を×として評価を行った。結果を表7に示した。
【0191】
3)製品安定性
実施例10〜14では、50℃3日間の反応処理後の硬化性組成物を、比較例5及び6では製造直後の硬化性組成物を、それぞれ23℃50%RH環境下で24時間放置した後、B型粘度計(東機産業製、BSローター7番 10rpm)を使用し測定した結果を初期とし、その後50℃乾燥機中に2週間放置した後、23℃50%RH環境下で24時間放置し、液温が23℃になるように調整し、同様に粘度測定を行った結果を貯蔵後とした。貯蔵後/初期の値が1.3未満を○、1.3以上を×とした。結果を表7に示した。
【0192】
4)接着性
実施例10〜14では、50℃3日間の反応処理後の硬化性組成物を、比較例5及び6では製造直後の硬化性組成物を、それぞれ被着体として、アルマイトアルミに幅30mm、長さ50mm、高さ5mmになるように塗布し、23℃50%RHで14日間養生して試験片を作成した。養生後、カッターにより端部に切れ込みを入れ、手にて硬化性組成物を被着体から引き剥がした。硬化性組成物の凝集破壊の場合を○とし、界面破壊の場合を×とした。結果を表7に示した。
【0193】
【表7】

【0194】
表6及び表7に示した如く、実施例10〜14では良好な製造安定性、速硬化性、製品安定性、接着性を有していたのに対し、比較例5及び6では、製造安定性及び製品安定性に問題が生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明の硬化性組成物は、シーリング材、接着剤、粘着材、コーティング材、ポッティング材等として好適に用いられる。本発明の硬化性組成物は、特に、接着剤に用いることが好ましいが、その他各種建築物用、自動車用、土木用、電気・電子分野用等に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び
(B)下記式(1)で表わされるメタロセン化合物及び架橋性シリル基含有チオール化合物の存在下に、重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル系単量体を重合してなり、少なくとも1の末端に架橋性シリル基含有チオール化合物から水素原子が離脱した残基−S−R(但し、Rは架橋性シリル基を有する基である)が結合している(メタ)アクリル系重合体、
を含有することを特徴とする硬化性組成物。

(但し、式(1)において、Mは、周期表4族、5族、14族の金属、クロム、ルテニウム及びパラジウムよりなる群から選択される金属であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有することもある脂肪族炭化水素基、置換基を有することもある脂環族炭化水素基、置換基を有することもある芳香族炭化水素基及び置換基を有することもある珪素含有基よりなる群から選択される少なくとも一種の基、若しくは、水素原子又は単結合のいずれかであり、さらに、R及びRが共同して式(1)で表わされる化合物中の2個の5員環を結合していてもよく、また、複数の隣接するR又はRは、共同して環状構造を形成していてもよく、a及びbは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、Yは水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されていることもある炭化水素基またはハロゲン原子であり、nは0又は金属Mの価数−2の整数である。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖が、下記式(2)で表わされる繰り返し単位を99重量%以下の量で有すると共に、該式(2)で表わされる繰り返し単位以外の繰り返し単位として分子中に一つ以上の架橋性シリル基を有する重合性不飽和化合物単量体から誘導される繰り返し単位を1〜50重量%の範囲内の量で有することを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。

(ただし、式(2)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、炭素数1〜22の炭化水素基(該炭化水素基は直鎖状であっても側鎖を有していてもよく、また、該炭化水素基あるいは該炭化水素基の側鎖を形成する基中の水素原子の少なくとも一部が、塩素原子、フッ素原子、1級のアミノ基、2級のアミノ基、3級のアミノ基、4級のアミン塩類基、アミド基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド基、ヒドロキシシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基およびグリシジル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の極性基、または、反応性官能基で置換されていてもよく、また該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、さらに該炭化水素基は、環状構造を有していてもよい)である)
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)における架橋性シリル基が、下記一般式(3)で示されることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
(式(3)中、Xは水酸基又は加水分解性基で、3個のXは同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)における架橋性シリル基が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を併有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)

(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体の混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)

(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【請求項6】
(C)硬化触媒を更に含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記硬化触媒(C)が、(C1)下記一般式(5)で示される有機錫を含有することを特徴とする請求項6記載の硬化性組成物。
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
(式中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。)
【請求項8】
(A)架橋性シリル基含有有機重合体、及び
(C1)下記一般式(5)で示される有機錫、
を含有することを特徴とする硬化性組成物。
10SnO −−−−−−−−−−−−−−−−−−−(5)
(式中、R及びR10はそれぞれ1価の炭化水素基である。)
【請求項9】
前記硬化性組成物に、さらに反応処理を加えることを特徴とする請求項7又は8記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)
(式(3)中、Xは水酸基又は加水分解性基で、3個のXは同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を併有する有機重合体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)

(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【請求項12】
前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体及び下記一般式(4)で示される架橋性シリル基を含有する有機重合体の混合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の硬化性組成物。
−SiX −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(3)

(式(3)及び(4)中、Xは水酸基又は加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、式(4)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、cは1又は2である。)
【請求項13】
前記重合体(A)が、架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基含有ポリイソブチレン系重合体、及び架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項14】
(D)シランカップリング剤をさらに添加することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項15】
請求項7〜14のいずれか1項記載の硬化性組成物の製造方法であって、硬化触媒として前記有機錫(C1)を含有し、密閉された容器に梱包された硬化性組成物に対し、さらに反応処理を加えることを特徴とする硬化性組成物の製造方法。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/012426
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512520(P2005−512520)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010909
【国際出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】