説明

硬化性組成物

【課題】硬化時の温度に影響されずに、特に低温においても硬化後に良好な表面艶消し状態を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とし、凝固点が34℃以下の天然由来のアミン化合物と、融点が35℃以上のアミン化合物を含んでなる硬化性組成物。このアミン化合物が微粉体でコーテイングされていることを特徴とする。この組成物は、良好な艶消しと共に非自己汚染性(表面タツクがない)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物、詳しくは、硬化性組成物を例えば建築用シーリング材に適用する場合に、硬化時の温度に影響されずに、硬化後の表面が艶消しされ得る硬化性組成物に関する。
本発明はまた、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)とを得ることのできる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ポリマー材料を用いたシーリング材は従来知られており、これらは土木、建築または電機等、多岐の用途にわたり使用されている。これらのシーリング材は、使用目的や使用場所によっては、硬化後の表面を艶消し状態とすることが求められる。
例えば建築用にシーリング材が適用される場合、最近、シーリング施工後の硬化した表面に過度の艶が出る、いわゆる「てかり」感を回避するため、シーリング材の物性を低下させずに艶消しを付与する対策が望まれている。
【0003】
艶消しを付与する方法の一つとして、粒径の比較的大きい充填材や多孔物質を添加することが知られている。このような充填物や多孔物質には、例えば、平均粒径10〜80μmのガラスビーズ、シリカビース、アルミナビーズ、カーボンビーズ、スチレンビーズ、フェノールビーズ、アクリルビーズ、多孔質シリカ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、サランバルーン、アクリルバルーン等が含まれる (特許文献1〜3参照)。しかし、このような充填剤や多孔物質を添加した場合には、引っ張り物性が低下して、シーリング材としての充分な物性を有するものが得られにくくなる等の欠点があった。
【0004】
上記問題へ対応するため、例えば、特許文献1には、硬化後の表面が艶消しされた室温硬化性組成物として、架橋可能な加水分解性シリル基を末端に有するプロピレンオキシド重合体、融点が10〜200℃であるアミン化合物、融点が10〜200℃であるアミド化合物、融点が10〜200℃である脂肪酸、融点が10〜200℃であるアルコール、及び、融点が10〜200℃である脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物からなる室温硬化性組成物が開示されている。しかし、このような室温硬化性組成物は、艶消し効果は問題ないものの、耐候性が不充分であることが指摘されている(特許文献4)。
【0005】
また、特許文献4には、耐候性が向上され、貯蔵安定性に優れ、貯蔵後も充分な艶消し性及び防汚性を与える目的として、架橋性シリル基含有有機重合体、アクリル系重合体、水と反応してアミン化合物を生成する化合物、及び硬化触媒を含有する硬化性組成物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−100408号公報
【特許文献2】特開2001−164237号公報
【特許文献3】特開平7−113073号公報
【特許文献4】特開2004−124093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの艶消し剤を配合した組成物を用いると、シーリング材の施工を、夏場を含む通常の温度下で行う場合には良好な艶消し表面が得られるものの、冬場の低温下(例えば5℃)では、充分な艶消し表面が得られにくい場合があった。
従って、シーリング材の施工を、硬化時の温度に影響されずに、特に冬場の低温下(例えば5℃)で行った場合であっても、硬化後に充分な艶消し表面を得ることのできる硬化性組成物を開発すべき課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記課題は、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物を含有する硬化性組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、例えばこれを建築用シーリング材に適用する際、硬化時の温度に影響されずに、好ましくは5〜50℃の範囲で硬化させた場合に、硬化後に良好な艶消し表面を得ることができる。
アミン化合物を更に含む本発明の硬化性細成物をシーリング材に適用すると、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬化性組成物において、シーリング材に適当な従来公知の任意のポリマーをその主成分として使用できる。このようなポリマーの具体例には、シリコーン系ポリマー、変成シリコーンポリマー、アクリル酸エステル等をべ一スとするアクリル系ポリマー、ポリサルファイド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、SBRやブチルゴム等のゴム系ポリマー、アルキッド系ポリマー等が含まれる。なかでも、加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする硬化性組成物が好ましい。加水分解性シリル基含有ポリマーとしては、変成シリコーンポリマーおよび/またはアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーが好ましい。
【0011】
本発明における変成シリコ一ンポリマーとは、ポリオキシアルキレンエーテルを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に加水分解性基(例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など)を有するシリル基をもつ液状ポリマーを指称する。なかでもポリオキシプロピレンエーテルを主鎖とし、数平均分子量が9000〜25000のものが好ましい。変成シリコーンポリマーの代表的市販品としては、例えば(株)カネカ製のMSポリマーシリーズ(「MSポリマー S−203」など)や旭硝子(株)製「エクセスター」(登録商標)シリーズがある。
【0012】
また、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単位で構成され[要すれば、(メタ)アクリル酸エステル単位以外に、(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子中にアルコキシシリル基を含有するポリマーであり、例えば、
(i)特公平3−80829号公報に開示された、(a)アクリル酸アルキルエステル(アルキル炭素数は好ましくは2〜4)(例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等)と、(b)ビニルアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等)および(メタ)アクリロキシアルコキシシラン(例えばγ一メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ一メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物とを、連鎖移動剤としてメルカプトアルコキシラン(c)(例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)の存在下で、ラジカル共重合[通常、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、α,α’−アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシドなど重合開始剤を用いて公知の塊状重合、溶液重合などの手法;あるいはレドックス触媒、例えば、遷移金属塩、アミン等と過酸化物系開始剤を組合せたレドックス重合法により]させることによって製造されるもの(通常、数平均分子量が3000〜100000、1分子中の平均アルコキシシリル基数1.5〜3個);および
【0013】
(ii)特公平4−69667号公報に開示された、ビニル系モノマー[たとえばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート;スチレンもしくはその誘導体(α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなど);ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジプロピルフマレートなどのフマル酸ジエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニレンなどのハロゲン化ビニル類等]100部(重量部、以下同様)に、アルコキシシリル基含有ジスルフィド化合物[たとえばビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等]0.05〜50部を加え、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中で光重合(常温乃至50〜60℃で、4〜30時間の光照射)に付すことによって付すことによって製造されるものが挙げられる。
【0014】
かかるアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーを硬化性組成物の主成分として用いると、例えばシーリング材に適用した場合の薄膜耐候性(薄層部の白化現象抑制)を向上させることができる。
【0015】
前記のアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーに代えまたはこれに加えて、高温・高圧で連続塊状重合によって得られる、常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーを使用してもよい。
このような無溶剤型アクリル系ポリマーは、官能基を有しないアクリル系モノマー[例えば前記アルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーの重合法(ii)で用いるようなアクリレートやメタクリレート]を用い、例えば400℃付近の高温・高圧で連続塊状重合(好ましくは、開始剤は極少量もしくは不要、連鎖移動剤は不要)により、極めて短い反応時間(5分程度)で製造することができる。このようなポリマーは、無溶剤100%の低分子量ポリマーおよび低Tgの常温液状を呈し、かつ変成シリコーン系ポリマーとの相溶性が良好で(∵組成分布・分子量分布が狭い)あって、優れた耐候性を付与し得る。
【0016】
本発明における加水分解性シリル基含有ポリマーには、加水分解性シリル基含有イソブチレン系ポリマー(以下、単にイソブチレン系ポリマーと称す)も含まれる。イソブチレン系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくともイソブチレン単位で構成され[要すれば、イソブチレン単位以外に、イソブチレンと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子両末端に加水分解性シリル基、例えば式:
【化1】

[式中、RとR’は同一もしくは異なって、炭素数1〜5の低級アルキル;およびcは1〜3の整数である]
のアルコキシシリル基を含有し、好ましくは数平均分子量1000〜40000で常温ワックス状ないし高粘度液状のものを指称し、一般に、イニファー法と呼ばれるカチオン重合法で得られる全末端官能型イソブチレン系ポリマーを用いることにより製造することができる(特開平8−231758号公報参照)。代表的な市販品としては、式:
【化2】

の化学構造を有する、(株)カネカ製の「エピオン」(登録商標)シリーズが例示される。
【0017】
本発明のシーリング材組成物に用いる加水分解性シリル基含有ポリマーとして、変成シリコーンポリマーおよび/またはアクリル系ポリマーを使用すると耐候性、物性に優れ、硬化物表面が均質に艶消し状態となり好ましい。特に変成シリコーンポリマー中で重合して得られるアルコキシシリル基を含有するアクリル系ポリマーとして市販されているアクリル変性系変成シリコーンポリマー(市販品としては、例えば(株)カネカの「MSポリマー S−943」等)を使用すると、シーリング組成物中の成分相互の相溶性が良好で、変成シリコーンポリマーとの相互作用ないし、アルコキシシリル基の加水分解による架橋反応により耐候性、物性に優れ、低温においても硬化物表面が均質に艶消し状態となり特に好ましい。
【0018】
本発明の硬化性組成物は、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物を含有する。本発明の硬化性組成物において使用する飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物は、硬化後のシーリング材に良好な艶消し表面を付与するためのものである。
本発明において、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物とは、オクチル鎖、デシル鎖、ラウリル鎖、テトラデシル鎖、ペンタデシル鎖、セチル鎖、ステアリル鎖、オレイル鎖などの飽和または不飽和のアルキル鎖を複数有するアミン化合物のことを指称する。アルキル鎖分布を有するアミン化合物は、アルキル鎖長の異なるアミンを混合などの方法で組合せることや、アルキル鎖分布を有する油脂などのアミン原料を基にアミンを合成することで得られる。
特に、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するモノアルキル1級アミン化合物を用いることが、艶消し効果に優れ好ましい。
【0019】
本発明においては、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物として、天然由来のアミン化合物を用いることが、低温における艶消し性の点で好ましい。
本発明において、天然由来のアミン化合物とは、動物や植物などの天然素材から得られる原料から抽出、あるいは合成して得られるアミン化合物を指称するものであり、天然に産出される石油や石炭などの化石原料から合成されるアミン化合物を指すものではない。
飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有する天然由来のアミン化合物としては、例えば、ココナッツ油(やし油)、パーム核油、パーム油などの天然油脂を原料として得られるアミン化合物が挙げられる。
なかでも、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有する凝固点が34℃以下の天然由来のアミン化合物を用いることが、冬場時、特に5℃の低温雰囲気下においてもシーリング材組成物の硬化表面に安定して均質な優れた艶消し性を付与できる点で好ましい。
このような飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有する凝固点が34℃以下の天然由来のアミン化合物としては、炭素数が8〜18のアルキル鎖分布を有するアミン化合物が好ましく、冬場の5℃以下の低温下においても硬化後のシーリング材組成物表面を均質な艶消し状態とすることが可能となる。特に、炭素数8のオクチル鎖7%程度、炭素数10のデシル鎖7%程度、炭素数12のラウリル鎖51%程度、炭素数14のテトラデシル鎖19%程度、炭素数16のセチル鎖8%程度、炭素数18のステアリル鎖2%程度、炭素数18のオレイル鎖6%程度のアルキル鎖分布を有し、凝固点が約16℃のココアルキルアミン(ココナットアミンなどとも称されるココナッツ油を原料としたアミン)を使用すると、冬場時、特に5℃以下の低温雰囲気下においてもシーリング材組成物の硬化表面に安定して均質な優れた艶消し性を付与でき非自己汚染性にも優れる。
本発明の硬化性組成物中におけるこのようなアミン化合物の使用量は通常、シーリング材組成物に対して0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で含有させればよい。0.05重量%未満では、シーリング材組成物の硬化表面の艶消し効果が発揮されない場合があり、また5重量%を越えても艶消し効果が発揮されない傾向にある。
【0020】
本発明の一つ実施態様において、硬化後の表面に良好な艶消し性および/または非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)を付与するために、硬化性組成物中に他のアミン化合物、好ましくは融点が35℃以上であるアミン化合物を更に配合することが好ましい。
本発明の硬化性組成物中におけるこのようなアミン化合物の含有量は、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な艶消し性および/または非自己汚染性を付与する観点から、0.02〜10重量%であることが好ましく、0.1〜8重量%であることがより好ましい。また、本発明の硬化性組成物中に含有されるアミン化合物の総量は、0.15〜9重量%であることが硬化表面の艶消し性および非自己汚染性の点から好ましい。
また、凝固点が34℃以下である天然由来のアミン化合物と融点が35℃以上であるアミン化合物の含有比率(重量基準)が1:9〜9:1とすることが、5〜50℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面の艶消し状態および非自己汚染性の観点から好ましい。さらに好ましい含有比率は2:8〜8:2、とりわけ3:7〜7:3が好ましい。
【0021】
このようなアミン化合物としては、硬化性組成物に適した従来公知の任意の化合物を使用することができる。その具体例には、ステアリルアミン、トリベンジルアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの融点35℃〜200℃のアミン化合物(例えば特開平9−100408号公報を参照)が含まれる。
アミン化合物として、融点が35℃以上、好ましくは50℃以上の、アミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンを用いることが、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な艶消し性と良好な非自己汚染性を付与する観点から特に好ましい(例えば特開2002−30227号公報を参照)。
【0022】
本発明で好ましく用い得る上記微粉体コーティングアミンは、融点50℃以上および中心粒径20μm以下の固形アミンの表面に、中心粒径2μm以下の微粉体を、該固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5となるように固着させて、表面の活性アミノ基を被覆したものである。このような微粉体コーティングアミンは、例えば固形アミンを中心粒径20μm以下に粉砕しつつ、同時にこれに微粉体を加えてその中心粒径2μm以下となるように混合粉砕するか;または予め中心粒径20μm以下に微粉砕した固形アミンを、中心粒径2μm以下の微粉体と共に、高速衝撃式混合撹拌機、圧縮せん断式混合撹拌機または噴霧乾燥装置を用いて固形アミンの表面に微粉体を固着させることにより製造することができる(特開2000−117090号参照)。
【0023】
上記固形アミンとしては、融点50℃以上の芳香族または脂肪族に属する任意のものが使用されてよく、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,3−トルエンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,4−トルエンジアミン等の芳香族アミン化合物、1,12−ドデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ステアリルアミン等の脂肪族アミン化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供してよい。かかる固形アミンは、中心粒径20μm以下、好ましくは3〜15μmに調整する。
【0024】
上記微粉体としては、無機系または有機系の中から任意に使用することができ、たとえば無機系物質として酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ジルコニア、カーボン、アルミナ、タルク等、また有機系物質としてポリ塩化ビニル、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供する。使用量は、固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5、好ましくは1/0.002〜0.4となるように選定する。
かかる微粉体コーティングアミンの使用量は、通常、本発明の硬化性組成物に用いるポリマー100部に対して0.5〜5部、好ましくは1〜3.5部の範囲で選定することが好ましい。0.5部未満では、硬化物表面の艶消し効果が十分に発揮されないことがあり、また5部を越えると、硬化物表面に白化現象が著しく発生し、表面外観上の難点となる傾向にある。
【0025】
本発明に係る硬化性組成物は、上記所定割合のポリマーと、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物、並びに必要に応じ、微粉体コーティングアミン等のアミン化合物を配合したものであって、通常、これに硬化触媒および着色剤を加え、有機溶剤に溶解した系で構成される。
上記硬化触媒としては、たとえばジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビスエトキシシリケート、ジオクチルスズオキサイドなどのスズ系触媒やテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルエチルアセトアセテートなどのチタン系触媒等が挙げられる。
上記着色剤としては、たとえばベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、たとえばトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン系高沸点溶剤等が挙げられる。
【0026】
本発明の硬化性組成物は、これを特に建築用シーリング材等として用いる場合には、硬化物に意匠性を付与するため、平均粒径が30〜500μm(より好ましくは70〜400μm)の粒子を更に含有することが好ましい。このような粒子は無機系および/または有機系の物質から構成されてよく、また、球状(真球、楕円球、扁平球、中空球)、粒状、鎖状または繊維状など任意の形状のものを使用し得る。その具体例としては、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、窒化珪素、セラミック、合成ルビー、サファイヤ、ガラス、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、シリカ、ウレタン樹脂、炭酸カルシウム、珪砂、寒水石などの粒子を挙げることができる。
なかでも、アクリル系樹脂から構成される有機粒子を用いると、硬化剤組成物に耐熱性、耐溶剤性または耐候性を付与し得るとともに、硬化表面に良好な艶消し性、若しくはマット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用に適した意匠性を付与することができる。このようなアクリル系樹脂粒子は、その耐熱温度が150〜300℃であることが好ましく、そのような粒子は架橋ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリルなどのポリマーから構成されることが好ましい。このような架橋アクリル系樹脂粒子の市販品としては、東洋紡(株)製のタフチック(登録商標)AR650LLを例示しうる。
上記無機粒子および有機粒子は、単独で若しくは2種以上を併用して使用でき、硬化性組成物中の含有量は好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%であることが好ましい。
【0027】
さらに必要に応じて、本発明の硬化性組成物に、通常の充填剤(重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、酸化チタンなど)、可塑剤(フタル酸ジエステル類、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類など)、密着剤(エポキシ化合物、シランカップリング剤など)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類など)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、ポリアマイドワックス、水添ひまし油など)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物など)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類など)等を適量範囲で配合してよい。
【0028】
上記成分から構成される本発明の硬化性組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型で、あるいは上記ポリマー、飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物、粒子等を含有する基材と、硬化触媒、着色剤および微粉体コーティングアミン等を含有するトナー液とする等して構成された二液型で、あるいはさらに着色剤等を別の1成分として分離して構成された三液型として使用してもよい。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、特に冬場の低温下(例えば5℃)で硬化を行う場合であっても、硬化後に充分な艶消し表面を得ることができる。即ち、本発明の硬化性組成物は、5℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は、硬化時の温度に影響されずに、好ましくは5〜50℃の範囲で硬化させた場合に、硬化後に充分な艶消し表面を得ることができる。即ち、本発明の硬化性組成物は、50℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする。
【0030】
上記成分から構成される本発明の硬化性組成物は、とりわけ建築用シーリング材に適用する場合に有効であり、特に、マット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用のシーリング材として好適に使用することができる。本発明の硬化性組成物は、上記建築用シーリング材として以外にも、自動車、電器、土木用のシーリング材や、その他接着剤、塗料、コーティング材、ポッティング材、成形物などに適用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。

[実施例1]
(1)微粉体コーティングアミンの製造
中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミン(融点71℃)76.9部と中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタン23.1部を混合し、高速衝撃式混合撹拌機(日清エンジニアリング(株)製、Hi−Xミキサー)にて複合化処理することにより、中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミンの表面に、中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタンが固着してなる微粉体コーティングアミン100部を得た。
【0032】
(2)基材
各成分を下記量(全硬化性組成物量に対する重量%)にて配合し基材とした。

【0033】
(3)トナー液
各成分を下記量(全硬化性組成物量に対する重量%)にて配合し、トナー液とした。

【0034】
※1 カルシーズPLS−505[神島化学工業(株)製](平均粒径0.1μm)
※2 S−943[(株)カネカ製](アクリル変性系変成シリコーンポリマー)
※3 アルケン200P[新日本石油化学(株)製]
※4 ARUFON(登録商標)UP−1000[東亞合成(株)製](高温・高圧の連続塊状重合により得られた常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマー)
※5 アデカスタブ(登録商標)AO−60[旭電化工業(株)製]
※6 アデカスタブ(登録商標)LA−62[旭電化工業(株)製]
※7 アデカスタブ(登録商標)LA−32[旭電化工業(株)製]
※8 サイラエース(登録商標)S−220[チッソ(株)製]
※9 ディスパロン(登録商標)#6500[楠本化成(株)製]
※10 タフチック(登録商標)AR650LL[東洋紡(株)製](平均粒径150μm)
※11 酸化チタン/鉄黄/弁柄/カーボンブラック/ジイソノニルフタレート=40/5/1/0.3/50(重量比率)の混合物
【0035】
(4)シーリング材の調整
上記(2)の基材、上記(3)のトナー液、その他配合成分を、下記表1に示す重量%で配合し、遊星式撹拌機を用いて混合し、硬化性組成物を得た。
【0036】
[実施例2、3]
実施例1において、配合する飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物の種類、量を変更した以外は同様にして、硬化性組成物を調製した。
【0037】
[比較例1]
実施例1において、ココアルキルアミンを配合しないこと以外は同様にして、硬化性組成物を調整した。
[比較例2〜5]
実施例1において、配合する飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物の種類を変更した以外は同様にして、硬化性組成物を調製した。
【0038】
【表1】

【0039】
※12 ファーミン(登録商標)CS[花王(株)製]、凝固点16℃のモノアルキル1級アミン
※13 ファーミン(登録商標)08D[花王(株)製]、凝固点−1℃のモノアルキル1級アミン
※14 ファーミン(登録商標)20D[花王(株)製]、凝固点27℃のモノアルキル1級アミン
※15 ファーミン(登録商標)80[花王(株)製]、融点50℃のモノアルキル1級アミン
※16 アーミン(登録商標)OD[ライオン・アクゾ(株)製]、凝固点13℃のモノアルキル1級アミン
※17 実施例1(1)にて製造した微粉体コーティングアミン
【0040】
【表2】

【0041】
各実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、下記評価方法を用いて性能試験を行った。評価結果を表2に示す。
[性能試験の評価方法]
各硬化性組成物をシーリング材として、約3mm(深さ)×30mm(幅)の溝を設けたフレキシブルボード上に打設し、直ちに下記の試験に付した。結果を表2に記載する。
A)艶消し性試験
5℃雰囲気下で3日間、または50℃雰囲気下で24時間放置した後、硬化表面の光沢(艶)の有無を目視にて判定した。
〇:艶なし、
△:やや艶あり、
×:艶あり
B)非自己汚染性試験
5℃雰囲気下で3日間、または50℃雰囲気下で24時間放置した後、即座に火山灰を振りかけ、試験体小口面を床に3回落とし、余分な火山灰を振りおとした後、火山灰が付着しているか否かを判定した。
〇:付着せず、
△:やや付着、
×:多量に付着
C)硬化物性試験
硬化性組成物を、20℃,相対湿度65%で14日間放置し硬化養生した2mm厚みのシートを用い、JIS K6251:2004に基づき、表2に示す硬化物性を測定した。ただし、試験片形状はダンベル状3号形、引張速度は200mm/minとした。
【0042】
表1、2の結果から判るように、本発明の硬化性組成物に相当する各実施例において得られた硬化性組成物については、特に低温において硬化後に良好な表面艶消し状態が得られたが、各比較例において得られた硬化性組成物は、表面艶消し状態が不充分であった。
また、所定のアミン化合物を配合した本発明の硬化性組成物によれば、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)が得られることが判る。
さらに、表2には記載していないが、架橋アクリル粒子を配合しているため、全ての実施例、比較例において硬化組成物表面に微細な凹凸が形成され、マット調仕上げ塗装外壁、ゆず肌仕上げ塗装外壁または砂岩調塗装外壁と調和した意匠性が付与されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
飽和および/または不飽和のアルキル鎖分布を有するアミン化合物が天然由来のアミン化合物である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
天然由来のアミン化合物の凝固点が34℃以下である請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
凝固点が34℃以下である天然由来のアミン化合物がココアルキルアミンである請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
融点が35℃以上であるアミン化合物をさらに含んでなる請求項3または4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
凝固点が34℃以下である天然由来のアミン化合物と融点が35℃以上であるアミン化合物の含有比率(重量基準)が1:9〜9:1である請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
融点が35℃以上であるアミン化合物が、アミン表面に微粉体が固着された微粉体コ
ーティングアミンである請求項5または6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
5℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
50℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
加水分解性シリル基含有ポリマーが、変成シリコーンポリマーおよび/またはアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーである請求項10に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−137804(P2006−137804A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326619(P2004−326619)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】