説明

硬化性組成物

【課題】硬化性組成物を提供する。
【解決手段】a)平均して、分子当たり一つよりも多いエポキシ基をを含むエポキシ樹脂、並びに
b)硬化剤としての組成物であって、
b1)
b1a)少なくとも一種のジグリシジル−及び/又は少なくとも一種のモノグリシジルエーテルと、
b1b)揮発性モノアミン及びポリアミンを含む組成物
との反応からの反応生成物であって、
前記組成物b1b)は、b1a)からのエポキシ基に対して過剰のアミノ基を供給する量使用され、そしてここで、過剰のモノアミンが反応生成物から除去されるところの反応生成物40質量%ないし100質量%、
b2)ポリアミン0質量%ないし60質量%、及び
b3)ポリフェノールノボラック0質量%ないし25質量%
を含み、
そしてここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計が100質量%である組成物、
を含む硬化性組成物であって、
低温における急速硬化時間と共に長い可使時間を提供し、従って、該硬化性組成物を、とりわけ船舶用及び冲合用コーティング、工業的メンテナンス、構築物、槽及び配管ライニング、接着剤、自動車及び電気分野における注入用途のために有用にする、硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂並びに、硬化剤として、エポキシ樹脂と、揮発性モノアミン及びポリアミンの混合物との反応生成物であって、該揮発性モノアミンが反応完結後に反応混合物から除去されるところの反応生成物、から誘導された付加物、又は、該付加物とポリアミン及び/又はノボラック樹脂とのブレンド、に基づく、急速硬化性エポキシ系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリシジル化合物とアミン硬化剤とに基づく硬化性組成物は、保護を目的として、例えば金属性及び鉱物性物質をコートするために、コーティング工業において広く使用されている。
使用されるアミンは、特に、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族又は芳香族化合物及び、一塩基酸又は多塩基酸に基づくイミダゾリン基含有ポリアミノアミド並びに、通常、付加反応後の多量の残渣アミンを含む、それらの付加物である。
これらの化合物は、リー(Lee)及びネヴィル(Neville),「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」,1967年,第6/1章ないし第10/19章(非特許文献1)に記載されている。
【0003】
上述のアミン硬化剤を使用する硬化性エポキシ樹脂組成物の一部は、長い硬化時間を有している。しかしながら、船舶用などの特定用途においては、使役への迅速な復帰又はより短い製造時間が望ましい。従って、適切な硬化速度を達成するために、とりわけ、ポリアミドアミン硬化剤及びポリアミノイミダゾリン硬化剤の場合には、促進剤のような添加剤が頻繁に添加される。しかしながら、これらの系の殆どは、それが船舶用塗料の場合には、促進剤を使用しているにも係わらず、特定用途のための硬化時間に対する新たな要求に比べて、まだ不十分である。
これらの硬化剤を促進するために使用される促進剤の例は、第四級アミン、酸、ヒドロキシルアミン、マンニッヒ塩基及びフェノールである。このような促進剤は、とりわけ、リー(Lee)及びネヴィル(Neville),「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」,1967年,第10章,表10−9(非特許文献2)に例示されている。
また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)は、促進添加剤として使用された場合、その促進効果により、更に、硬化された熱硬化性樹脂の初期の耐水性を向上させるので、特に適することが見出された。促進剤ビスフェノールAは、通常、硬化剤に基づいて25%までの量、添加される。
【非特許文献1】リー(Lee)及びネヴィル(Neville),「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」,1967年,第6/1章ないし第10/19章
【非特許文献2】リー(Lee)及びネヴィル(Neville),「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」,1967年,第10章,表10−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような製剤化された硬化剤の高い水分感受性に対する不利益が見出された。実際、製剤化された硬化剤が、高い大気湿度により微量の水を吸収する場合に(製剤化された硬化剤中に溶解したビスフェノールAの比率に依存するけれども、1%未満でさえも)、これは、ビスフェノールAの塩としての結晶化を生じさせる。これは、硬化
剤がもはや加工され得ないか又は、硬化剤が、多くの費用をかけて再び作り上げなければならないので、主な不利益と考えられる。また、エポキシ/硬化剤系に対して、該エポキシの開環反応を加速せしめるために1%ないし5%の水が添加されるが、その場合、溶解したビスフェノールAの塊が、この場合もやはり塩の形態で沈殿する(特許EP1040150A1明細書に記載されている)。
【0005】
特定の種類のアミンの使用から生じ、そしてその性質に直接関係する別の問題は、時には、相を硬化段階の間にコーティング表面に未反応のアミンがまだ存在している場合に、とりわけ水分の存在下で且つ低温において観察される、強いカルバメート化効果(カルバメート形成及び表面白化)である。これは、とりわけ、水及び二酸化炭素に対して一般的に高い感受性を示す、アミンジエチレントリアミン(DETA)及びその誘導された付加物の場合である。これらの問題は、硬化プロセスを加速し且つコーティング表面の遊離アミンDETAの形成を最小化するために、例えばビスフェノールAを前記DETA付加物に添加することにより一部が解決され得る:しかしながら、硬化剤をビスフェノールAと製剤化することはまた、上述のように、ビスフェノールAの存在に伴い生じ得る問題も与えるであろう。
【0006】
浸出の問題は、非反応性希釈剤はフィルムからゆっくりとのみ移動するはずなので、ベンジルアルコール又はフェノキシプロパノールのような非反応性希釈剤を導入することにより、時に、少なくとも部分的に解決され得る。このような希釈剤はフィルム表面に疎水性を付与し、そして時々、カルバメート形成を(ある程度)抑制し得ると信じられている。しかしながら、ベンジルアルコールの添加は、製剤化された系の硬化性にも影響を及ぼし得、そして頻繁に硬化を遅延させる。
【0007】
従って、上述の不利益を克服することが可能な硬化性の系を提供することが本発明の一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の対象は、
a)平均して、分子当たり一つよりも多いエポキシ基を含むエポキシ樹脂、並びに
b)硬化剤としての組成物であって、
b1)
b1a)少なくとも1種のジグリシジル−及び/又は少なくとも1種のモノグリシジルエーテルと、
b1b)揮発性モノアミン及びポリアミンを含む組成物
との反応からの反応生成物であって、
前記組成物b1b)は、b1a)からのエポキシ基に対して過剰のアミノ基を供給する量使用され、そしてここで、過剰のモノアミンが反応生成物から除去されるところの反応生成物40質量%ないし100質量%、
b2)ポリアミン0質量%ないし60質量%、及び
b3)ポリフェノールノボラック0質量%ないし25質量%
を含み、
そしてここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計が100質量%である組成物、
を含む硬化性組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、硬化性組成物の製造のために更に使用される、適するエポキシ化合物a)は、平均して、分子当たり一つより多いエポキシ基を含み、そして飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族、脂環式、芳香族又はヘテロ環式であり、そして硬化反応を実質的に妨げない置換基を持ち得る、商業的に入手可能な生成物である。
【0010】
使用のために適するエポキシ樹脂の例は、一価−及び/又は多価及び/又は多核フェノール、とりわけビスフェノール及びノボラックから誘導されたものを含む。それらは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、並びに、フェノール(又はアルキルフェノール)と、ホルムアルデヒドのようなアルデヒドとの反応から得られる多価フェノールのポリグリシジルエーテルである。アルコール、グリコール又はポリグリコールのポリグリシジルエーテル及びポリカルボン酸のポリグリシジルエステルも同様に使用され得る。
【0011】
これらの化合物の広範な列挙は、エイ.エム.パキン(A.M.Paquin)著,「エポキシド化合物及びエポキシ樹脂(Epoxidverbindungen und Epoxidharze)」,スプリンガー出版,ベルリン,1958年,第4章の一覧表、及び、リー(Lee)及びネヴィル(Neville),「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」,1967年,第2章,第257〜307頁、に見出される。
2種又は2種より多くの様々なエポキシ化合物の混合物を使用することも可能である。
【0012】
エポキシ化合物は、液体、特に液体ビスフェノール又は液体ノボラックであり得る。また、ビスフェノール型又はノボラック型の半固体樹脂又は固体樹脂及びそれらの混合物も、同様に使用することができる。1型の、幾つかの商業的に利用可能な固体ビスフェノールAエポキシ樹脂は、アラルダイト(Araldite)(商標名)GT7071及びGT6071の商標名の下で、ハンツマン(Huntsman)社から利用可能である。半固体樹脂又は固体樹脂を使用する場合には、船舶用途における場合にそうであるように、生成物が噴霧可能なように、エポキシ樹脂を溶解し且つ粘度を低減するために溶剤が必要である。更に、アドバンスメント反応、例えばビスフェノールAを用いるノボラックのアドバンスメント、から誘導されるエポキシ化合物もまた、同様に使用することができる。
【0013】
更に、エポキシ樹脂といわゆる反応性希釈剤、例えば一価−又は多価フェノール、一価−又は多価脂肪族アルコール、一価−又は多価脂環式アルコール、のグリシジルエーテルとのブレンドも、同様に使用することができる。
幾つかの適する例は、クレシルグリシジルエーテル、p−第三ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ドデシル−/n−テトラドデシルグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテルのようなポリグリシジルエーテル、シクロヘキサン−ジメタノールジグリシジルエーテル、ネオデカン酸のグリシジルエーテル及びシクロヘキサンジカルボン酸のグリシジルエーテルである。
必要であれば、このような反応性希釈剤を添加することによりエポキシ樹脂の粘度を更に低減することができ、そして該反応性希釈剤は、該希釈剤が熱硬化性樹脂の最終性能に悪影響を及ぼさないように、妥当な量でのみ使用されるべきである。例として述べたエポキシ樹脂及び反応性希釈剤は、硬化性組成物用及びアミン−エポキシ付加物の製造用の両方に使用され得、これらは、フェノール系ノボラック樹脂と更にブレンドされ得る。
【0014】
本発明の好ましい実施態様において、エポキシ化合物a)と反応性希釈剤とのブレンドは、エポキシ樹脂に少なくとも1種の反応性希釈剤を予備混合することにより使用され得る。
本発明において、成分b1a)を、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、一価フェノールのモノグリシジルエーテル、一価−又は二価脂環式アルコールのモノ−又はジグリシジルエーテル、一価−又は多価脂肪族アルコールのモノ−又はジグリシジルエーテルから選択することが好ましい。
【0015】
成分b)−前記硬化剤−として、
b1)
b1a)ジグリシジル−及び/又はモノグリシジルエーテルと、エポキシ基に対して過剰のアミノ基との反応からの反応生成物であって、ここで、該過剰のアミノ基が
b1b)モル比で、揮発性モノアミン:ポリアミンの20:1モルないし2:1モル、好ましくは15:1モルないし2:1モル、最も好ましくは10:1モルないし2:1モルにある組成物
により供給され、そしてここで、過剰のモノアミンが該反応生成物から除去され、一方、未反応ポリアミンは何れも組成物中に残留するところの反応生成物40質量%ないし100質量%、
を含む組成物が使用される。
【0016】
「過剰のモノ−及びポリアミンの混合物」(の用語の)使用で、少なくとも1種又は1種より多くの揮発性モノアミンと少なくとも1種又は1種より多くのポリアミンの両方から供給されるアミノ基の、ジ−又はモノグリシジルエーテル或いはその混合物により供給されるエポキシ基に対する過剰であって、そのため反応が、未反応エポキシ基を事実上含まない付加物をもたらすところのものと理解される。
【0017】
残留しているモノアミンは、付加物の形成が完結した後に、例えば蒸溜により、組成物から除去される。モノアミンは、好ましくは、常圧で200℃以下の沸点を有する。適するモノマーは、3個ないし8個、好ましくは4個ないし6個の炭素原子からなる脂肪族又は脂環式残基に結合した一つのアミノ基を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族又は脂環式アミンである。とりわけ好ましいものは、ブチルアミン、実際には、1−ブチルアミン、第二ブチルアミン又はイソブチルアミンの異性体或いはそれらの混合物である。ブチルアミンのこれらの異性体は、80℃以下であり従ってポリアミンの沸点より遥かに低い沸点を有するので、過剰のモノアミンは、蒸溜により該組成物から容易に除去され得るが、如何なる過剰のポリアミンでも組成物中に残留する。使用されるポリアミンの沸点は、モノアミンの沸点よりもかなり上であるはずであり、従って実際に、モノ−及びポリアミンの沸点は、揮発性モノアミンを事実上除去するが、ポリアミンは除去しない、或いは遥かに少なく除去するのに十分に離れているはずである。残留モノアミンの含有量が最終生成付加物b1)に基づいて3質量%を越えない場合には、モノアミンは反応混合物から完全に除去されると考えられる。
【0018】
未反応のモノアミンを除去した後、未反応の過剰のポリアミンの何れも組成物中に残留する。残留するポリアミンの適する量は、硬化剤b1)に基づいて、1質量%ないし30質量%、好ましくは1質量%ないし25質量%、最も好ましくは1質量%ないし20質量%である。
【0019】
好ましい実施態様はまた、通常、塗料製剤において使用される、例えばメトキシプロパノール、1−ブタノール、キシレン又はそれらの混合物のような標準的な溶剤の存在下における付加物b1)の製造である。溶剤の化学的、物理的及び安全性データを伴う溶剤の広範な一覧表は、シェラー溶剤ブレービヤ(Scheller Solvent−Brevier)に与えられている。反応が完結した後、溶剤は蒸溜により除去し得るか、又は、モノアミンが溜去された後、溶剤は反応混合物中に残され得る。その場で形成された付加物は更に、ポリアミン及び/又はポリフェノールノボラックと共に製剤化されて、希釈形態の硬化剤b1)を与える。
【0020】
モノアミンとの混合物の一部として使用されるポリアミンとして、少なくとも二つのアミノ基を有するアミンが考えられる。
本発明において使用されるポリアミンは、例えば:1,2−ジアミノエタン(エチレンジアミン(EDTA));1,2−プロパンジアミン;1,3−プロパンジアミン;1,4−ジアミノブタン;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(ネオペンタンジアミン);ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA);2−メチル−1,5−ジアミノペンタン;1,3−ジアミノペンタン;2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン又は2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン及びそれらの混合物(TMD);1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ヘキサメチレンジアミン(HMD);1,2−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH及び1,4−DACH);ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン;ジエチレントリアミン(DETA);4−アザヘプタン−1,7−ジアミン;1,11−ジアミノ−3,6,9−トリオキシウンデカン;1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン;1,5−ジアミノメチル−3−アザペンタン;1,10−ジアミノ−4,7−ジオキサデカン;ビス(3−アミノプロピル)アミン;1,13−ジアミノ−4,7,10−トリオキサトリデカン;4−アミノメチル−1,8−ジアミノオクタン;2−ブチル−2−エチル−1,5−ジアミノペンタン;N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン;トリエチレンテトラミン(TETA);テトラエチレンペンタミン(TEPA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン;m−キシリレンジアミン(MXDA);5−(アミノメチル)ビシクロ[[2.2.1]ヘプト−2−イル]メチルアミン(NBDAノルボルナンジアミン);ジメチルジプロピレントリアミン;ジメチルアミノプロピル−アミノプロピルアミン(DMAPAPA);3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(又はイソホロンジアミン(IPD));ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM);ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン[ラロミン(Laromin)C260];2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン;ビス(アミノメチル)ジシクロペンタジエン(トリシクロデシルジアミン(TCD));脂肪族ポリエチレンポリアミンと二量化又は三量化された脂肪酸とから誘導されたイミダドゾリン基を含有するポリアミノアミン及び、グリシジル化合物から製造されたその付加物、のような脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族アミンである。
【0021】
更に、D−230、D−400、D−2000、T−403、T−3000、T−5000、ED−600、ED−900、EDR148、XTJ590のような、ハンツマン(Huntsman)社製のジェファミン(Jeffamine)(登録商標)として知られるポリアルキレンポリアミン及びポリミン(Polymin)(登録商標)として知られるポリイミノアルキレンポリアミンを、本発明の範囲内において同様に使用することができるが、しかし、得られた付加物は、慣用のポリアミンより得られた付加物よりも幾分低い反応性を示す。
更に適するポリアミンは、1,14−ジアミノ−4,11−ジオキサテトラデカン;ジプロピレントリアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン;N,N’−ジシクロヘキシル−1,6−ヘキサンジアミン;N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン;N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン;第二ポリオキシプロピレンジ−及びトリアミン;2,5−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン;ビス(アミノメチル)トリシクロペンタジエン;1,8−ジアミノ−p−メンタン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)メタン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC);ジペンチルアミン;N−2−(アミノエチル)ピペラジン(N−AEP);N−3−(アミノプロピル)ピペラジン;ピペラジンである。
好ましいポリアミンは、DETA、MXDA、IPD、TMD、1,2−DACH及び1,3−BACから選択される。
【0022】
幾つかの上述のアミンからの混合物を使用することも、同様に可能である。更に、付加
物b1)を形成するか、又は、更なる成分b2)を供給するかの何れかの目的において、同一のアミンを使用することができるが、様々なポリアミン又はそれらの混合物を使用するのが好ましい。そうは言っても、成分b2)として好適であり且つ好ましいポリアミンは、上記付加物b1)の製造に関して述べられたものと同じものである。
本発明の別の実施態様において、硬化剤は−成分b1)以外に−成分b2)及び/又はb3)、即ち、ポリアミン又はその混合物60質量%まで及び/又はポリフェノールノボラック又はその混合物25質量%まで、を更に含み得、ここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計は100質量%である。
ポリフェノールノボラックと組み合わせてポリアミン更に使用することの利点は、許容可能な硬化性を維持しながら粘度を低下させることである。従って、非常に高い固形分含有率を有するか又は無溶媒でさえある製剤の入手が可能であり、それが、前記硬化剤を、環境保護上の規制を満たさねばならない低又は更には非VOC用途のために特に有用にする。
【0023】
ポリフェノールノボラックを更に使用することの不利益は、得られるコーティングが僅かな着色を取り戻し得ることであり、そして該ノボラックが、通常、最終硬化剤ブレンドの粘度の増加をもたらすことである。従って、ポリアミンb2)の添加は、硬化剤ブレンドの粘度を低下させるために必要である。しかしながら、それは、付加物を単独で使用する場合に比べて、フィルム又はコーティングに幾らかの脆弱性をもたらすと言う不利益を有する。
反対に、付加物へのポリアミンb2)の添加は、最終硬化剤ブレンドの粘度の低下させると言う利点を有する。しかしながら、使用されたポリアミンの種類に応じて、とりわけ、脂環式及び脂肪族ポリアミンの場合には、不十分な硬化速度に起因する幾らかの粘性が観察され、これは、0℃前後の非常な低温での用途においてかなり目立つ。
【0024】
従って、本発明の好ましい実施態様は、硬化剤b)としての、b1)、b2)及びb3)の組み合わせであって、前記b)が、
b1)
b1a)少なくとも1種のジグリシジル−及び/又は少なくとも1種のモノグリシジルエーテルと、
b1b)揮発性モノアミン及びポリアミンを含む組成物
との反応からの反応生成物であって、
前記組成物b1b)が、b1a)からのエポキシ基に対して過剰のアミノ基を供給する量使用され、そしてここで、過剰のモノアミンが反応生成物から除去されるところの反応生成物40質量%ないし80質量%、好ましくは45質量%ないし70質量%、
b2)ポリアミン15質量%ないし60質量%、好ましくは25質量%ないし50質量%、及び
b3)ポリフェノールノボラック5質量%ないし20質量%、好ましくは5質量%ないし15質量%
を含み、
そしてここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計が100質量%であるところの組成物である組み合わせである。
【0025】
成分b3)として、本発明において所望により使用されるノボラックは、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを フェノール化合物−例えば、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、他のアルキルフェノール、ビスフェノール型のもの、ビフェニル型のフェノールなどと、必要であれば、蓚酸のような触媒を使用して反応させることによる公知方法により、製造することができる。フェノール化合物(類)並びに触媒量の蓚酸は、一般的に、−溶媒又は水を含むか又は含まない−容器内に置かれ、そしてホルムアルデヒド、好ましくはパラホルムアルデヒドが何回
かにわけて添加される。その後、減圧下の蒸溜により、揮発性成分が除去される。ノボラックは、様々なフェノール化合物のうちの一つ又は該化合物の混合物から造ることができる。このような生成物は、とりわけ、ホウベン−ヴェイル(Houben−Weyl),第4版,「有機化学の方法(Methoden der Organischen Chemie)」.第E20巻,「高分子物質(Makromolekulare Stoffe)」,第3部,第1800〜1806頁、に記載されている。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、ポリフェノールノボラックは、次式(I)又は(II):
【化1】

[式(I)及び(II)中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、互いに独立して、水素原子、1個ないし15個の炭素原子を含む分岐鎖状又は非分岐鎖状アルキル基を表わし、そしてR5 及びR6 は、互いに独立して、水素原子、−CH3 、−CF3 を表わす。]で表わされるフェノール化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)との縮合から得られたホモポリマー、又は、前記式(I)及び/又は(II)で表わされる様々なフェノール化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)とのコポリマーである。
【0027】
式(I)で表わされる化合物から誘導される好ましいノボラックは、式(I)中、R1 、R2 、R3 、R4 が水素原子を表わすもの(フェノール)、或いは、式(I)中、残りの基R1 ないしR4 は水素原子を表わすけれども、基R1 ないしR4 の一つ又は二つは基−CH3 を表わすか、又は、基R1 ないしR4 の一つは第三ブチル基を表わすか、又は、基R1 ないしR4 の一つは、8個ないし15個の炭素原子を含む、長鎖の分岐鎖状又は非分岐鎖状アルキル基を表わすもの(アルキルフェノール)である。
式(II)で表わされる化合物から誘導される好ましいノボラックは、式(II)中、R5 、R6 が共に、水素原子又は基−CH3 の何れかを表わすものである。
非常に好ましいノボラックは、式(I)で表わされる化合物から誘導されるものであり、そしてとりわけ好ましいノボラックは、フェノールから誘導されるものである。
【0028】
フェノール樹脂の品質は、原則的に、硬化剤を製造するため、成分b1)及び成分b2)として使用されるアミン混合物の種類並びに成分b3)として使用されるフェノール樹脂の種類、並びに、所定の用途に対して目標とする粘度/性質に依存する。前記観点に対して、硬化剤の粘度は、周囲温度(例えば、25℃)において、好ましくは20000mPa・s未満、最も好ましくは10000mPa・s以下であるべきである。高い粘度を有するか、又は、高い動力学的剪断鮮度を有する半固体でさえある硬化剤の場合には、該硬化剤に溶剤を添加することが望ましい。実際、噴霧又は刷毛塗り用途のために、及びまた、使用される噴霧装置(伝統的な噴霧装置又はエアレス ツイン フィード)に依存して、最終製剤を噴霧可能にさせるのに都合の良い値、例えば、伝統的な噴霧装置に対しては1000mPa・s未満、に粘度を固定するために、最終製剤に溶剤を添加するのが望ましい。キシレン/ブタノール混合物又は純粋なアルコールのような標準的な溶剤が、通常、使用される。
【0029】
硬化剤及びエポキシ化合物は、好ましくは、約等量にて、即ち、アミノ窒素原子に結合
した活性水素原子及び反応性エポキシ基に基づいて、使用される。しかしながら、硬化剤又はエポキシ成分を等量より多く又は少なく使用することも可能である。使用される量は、形成されるコーティングの望ましい最終性能に依存する。
エポキシ樹脂組成物は、所望により、例えば、粘度調整剤、消泡剤、垂れ防止剤、顔料、強化剤、充填材、エラストマー、安定剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、促進剤、着色剤、繊維状物質、チキソトロープ剤及び防食顔料から選択された、他の通常使用される添加剤を更に含み得る。
【0030】
既に述べたように、エポキシ/アミン反応に対する触媒量の促進剤が、新規硬化剤に添加して使用され得る。適する例は、例えばハンツマン アドバンスド マテリアルズ(Huntsman Advanced Materials)社製のアクセレレーターズ(Accelerators)2950及び960−1のようなマンニッヒ塩基型促進剤、ベンジルジメチルアミン(BDMA)のような第三アミン、水酸化物のような金属塩及び、EP0083813A1明細書及びEP0471988A1明細書に記載されている、殆どI族及びII族金属、例えばカルシウム、リチウム等のものとして知られている硝酸塩、又は、サリチル酸のような酸も同様に添加され得る。促進剤の量は、成分b1)、b2)、b3)及び促進剤の全質量に基づいて、0.1質量%ないし10質量%、好ましくは0.3質量%ないし5質量%、より好ましくは0.5質量%ないし3質量%である。
先に述べたように、ビスフェノールAは、硬化反応を促進するために、この成分の最終的な沈澱の可能性に対して注意を払いながらではあるが、硬化剤ブレンドに対して触媒量にて同様に添加され得る。
【0031】
本明細書に記載されたエポキシ組成物は、若干用途を挙げると、コーティング、接着剤、フローリング、注型、ツーリング又はカプセル化に使用され得る。エポキシ組成物は、とりわけ、顔料と混合された場合に、コーティングに対して特に良好な適用性を有する。上記の新規複合硬化剤を使用するエポキシ組成物は、船舶用及び過酷な用途のための高い耐腐食性を有する塗料を製造するために、例えば、都合良くは、燐酸亜鉛又は亜鉛粉末のような防食顔料と組み合わせ得る。更に、前記組成物は、槽及び配管のための保護コーティングを与えるために、酸化鉄及び二酸化チタンのような顔料並びに硫酸バリウムのような充填剤も含み得る。得られる製剤は、系のゲル化時間に応じて、噴霧、ローラーコーティング、刷毛塗り等慣用の方法で、又は、ツイン−フィード噴霧装置などの特殊な設備を用いて、コートされる基材の少なくとも一面に適用され得る。
【0032】
エポキシ樹脂と特別な硬化剤との本発明の組み合わせについて、驚くべきことに、グリシジル化合物と、促進剤としてビスフェノールAを含むジエチレンジアミン(DETA)[市販の硬化剤アラルダイト(Araldite)(登録商標)943]との反応から造られた付加物を含む系に比較した場合に、約40分の長い可使時間が得られ、同時に他方で、急速な硬化速度が維持されたことが観察された。付加物b1b)の製造のために使用されるポリアミンに応じて、可使時間は更により長くなり得、例えば使用されるポリアミンがm−キシリレンジアミン(MXDA)の場合には、可使時間は殆ど70分に達する。引用した例の完全硬化時間は5℃において10時間に等しいか又は10時間未満であり、そして溶剤の不存在下で達成され、従って、実用的な可使時間を持ち、低温において急速な硬化時間を提供することが知られているフェナルカミン(アルキル化されたフェノール系ポリアミン)を使用することにより得られた硬化時間ほどに急速であるか又はそれよりも更に急速である。フェナルカミンと比較した場合の、本発明の硬化剤の更なる利点は、着色性が殆ど又は全く無いこと及び、単離された付加物を用いて単独で製剤化した場合に得られるコーティングの良好な黄変抵抗性である。
【0033】
更なる利点は、前記本発明の硬化剤が、例えばDETAを用いて造られた慣用の付加物に比べて遥かに少ない浸出問題しか示さないことである。大規模生産のためには、使用さ
れるモノアミンの殆どが、付加物を形成する生産工程の後に溜去される場合には、再循環され得ることも特記される。
低温における急速硬化時間と一緒に、長い可使時間を提供する上述の性質は、本発明の系を、船舶用及び冲合用コーティング、工業的メンテナンス、構築物、槽及び配管ライニング、接着剤、ラミネート、コンポジット及び電気分野での注入用途のためにとりわけ有用にする。
【実施例】
【0034】
実施例
実施例A[硬化剤b)=b1]:エポキシ樹脂とアミン混合物との反応生成物に基づく、単離された付加物A
単離された付加物Aは、下記の手順を使用して製造された。
ジエチレントリアミン144.2g(1.4モル)を、室温にて反応容器中で、ブチルアミン510.8g(7.0モル)と一緒に混合した。反応容器を、窒素を用いて数分パージした。その後、温度を65℃に高め、そしてアラルダイト(Araldite)(登録商標)GY260[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、エポキシ当量(EEW)187、1.4当量]262.2gを、撹拌下60℃で約120分以内で、アミン混合物に滴下して加えた。反応混合物をこの温度で半時間保持した。その後、過剰のブチルアミンを、30mbarの真空下75℃にて、ロタベーパーで溜去した。更に、反応混合物を、窒素を用い且つ1mbar未満の高真空下て、75℃の温度にて30分間曝気した。14200mPa・sの粘度(25℃にて、CAP2000、コーン6、500rpmにより測定)及び65.1の計算された水素当量を持つアミン付加物A460.7gが得られた。計算された遊離アミンDETA含有率は、単離された付加物Aに基づいて、約16,6質量%である。
【0035】
実施例B[硬化剤b)=b1)、b2)及びb3)]:単離された付加物A、1,2−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH)及びフェノールノボラック[スプラプラスト(Supraplast)3616]を含むブレンドBの製剤
実施例Aの単離された付加物Aを、フェノール系ノボラック[スプラプラスト(Supraplast)3616]及び1,2−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH)と更に混合して、ブレンド生成物B(組成及び特性は表1に与えられている。)を得た。得られたブレンドBは、計算された水素当量45.8を有している。
【0036】
表1:硬化剤ブレンドBの組成及び特性
【表1】

1)1,2−DACH=1,2−ジアミノシクロヘキサン;2)製剤の粘度は、500rpmにて、コーン3を用いて、CAP2000粘度計(ISO3219)を使用して、25℃にて決定した。
【0037】
実施例C[硬化剤b)=b1)、b2)及びb3)]:単離された付加物A、1,2−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH)及びフェノールノボラック[スプラプラスト
(Supraplast)3616]を用いて造られたブレンドCの製剤
実施例Aの単離された付加物Aを、スプラプラスト(Supraplast)3616及び1,2−ジアミノシクロヘキサン(1,2−DACH)と更に混合して、ブレンド生成物C(組成及び特性は表2に与えられている。)を得た。得られたブレンドCは、計算された水素当量50.3を有している。
【0038】
表2:硬化剤ブレンドCの組成及び特性
【表2】

1)1,2−DACH=1,2−ジアミノシクロヘキサン;2)製剤の粘度は、500rpmにて、コーン3を用いて、CAP2000粘度計(ISO3219)を使用して、25℃にて決定した。
【0039】
実施例D[硬化剤b)=b1)]:エポキシ樹脂とアミン混合物との反応生成物に基づく、単離された付加物C
単離された付加物Dは、下記の手順を使用して製造された。
メタキシリレンジアミン231.54g(1.7モル)を、室温にて反応容器中で、ブチルアミン730g(10.0モル)と一緒に混合した。反応容器を、窒素を用いて数分パージした。その後、温度を70℃に高め、そしてアラルダイト(Araldite)(登録商標)GY260[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、EEW187、1.4当量]262.2gとアラルダイト(Araldite)(登録商標)K[クレシルモノグリシジルエーテル、EEW182、0.30当量]54.55gとの混合物を、撹拌下70℃で約120分以内で、アミン混合物に滴下して加えた。反応混合物をこの温度で半時間保持した。その後、過剰のブチルアミンを、30mbarの真空下75℃にて、ロタベーパーで溜去した。更に、反応混合物を、窒素を用い且つ1mbar未満の高真空下て、75℃の温度にて30分間曝気した。3140mPa・sの粘度(25℃にて、CAP2000、コーン3、50rpmにより測定)及び62.5の計算された水素当量を持つアミン付加物D643.4gが得られた。計算された遊離アミンMXDA含有率は、単離された付加物Dに基づいて、約25.1質量%である。
【0040】
実施例E[硬化剤b)=b1)]:エポキシ樹脂とアミン混合物との反応生成物に基づく、単離された付加物E
単離された付加物Eは、下記の手順を使用して製造された。
ジエチレントリアミン206g(2モル)を、室温にて反応容器中で、ブチルアミン730g(10.0モル)と一緒に混合した。反応容器を、窒素を用いて数分パージした。その後、温度を75℃に高め、そしてアラルダイト(Araldite)(登録商標)GY260[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、EEW187、1.4当量]262.7gとアラルダイト(Araldite)(登録商標)DY−397[ブタンジオールジグリシジルエーテル、EEW114、0.4当量]46.51gとの混合物を、撹拌下75℃で約120分以内で、アミン混合物に滴下して加えた。反応混合物をこの温度で半時間保持した。その後、過剰のブチルアミンを、30mbarの真空下75℃にて、ロタベーパーで溜去した。更に、反応混合物を、窒素を用い且つ1mbar
未満の高真空下て、75℃の温度にて30分間曝気した。2800mPa・sの粘度(25℃にて、CAP2000、コーン3、50rpmにより測定)及び57.1の計算された水素当量を持つアミン付加物E599.3gが得られた。計算された遊離アミンDETA含有率は、単離された付加物Eに基づいて、約19.8質量%である。
【0041】
実施例F[硬化剤b)=b1)]:エポキシ樹脂とアミン混合物との反応生成物に基づく、単離された付加物F
単離された付加物Fは、下記の手順を使用して製造された。
ジエチレントリアミン206g(2モル)を、室温にて反応容器中で、ブチルアミン365g(5.0モル)と一緒に混合した。反応容器を、窒素を用いて数分パージした。その後、温度を75℃に高め、そしてアラルダイト(Araldite)(登録商標)GY260[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、EEW187、1.4当量]262.7gとアラルダイト(Araldite)(登録商標)DY−397[ブタンジオールジグリシジルエーテル、EEW114、0.4当量]46.51gとの混合物を、撹拌下75℃で約150分以内で、アミン混合物に滴下して加えた。反応混合物をこの温度で半時間保持した。その後、過剰のブチルアミンを、30mbarの真空下75℃にて、ロタベーパーで溜去した。更に、反応混合物を、窒素を用い且つ1mbar未満の高真空下て、75℃の温度にて30分間曝気した。8570mPa・sの粘度(25℃にて、CAP2000、コーン6、50rpmにより測定)及び58.6の計算された水素当量を持つアミン付加物F572.5gが得られた。計算された遊離アミンDETA含有率は、単離された付加物Fに基づいて、約14.1質量%である。
【0042】
使用例
使用例1):単離された付加物Aと市販の硬化剤アラドゥール(Aradur)(登録商標)943との、硬化性及び機械的性質の比較
エポキシ樹脂アラルダイト(Araldite)(登録商標)GY250[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、EEW186]と組み合わせた硬化剤Aの硬化性を、GY250と組み合わせたアラドゥール(Aradur)(登録商標)943の硬化性と比較した。0℃、5℃及び23℃の異なる温度にて決定された硬化時間の結果を、表3に示す。また、DETA(ジエチレントリアミン)と、促進剤としてビスフェノールAを含む液体エポキシ樹脂との反応生成物をベースとする付加物アラドゥール(Aradur)(登録商標)943の硬化性を同様に、表3において比較した。
硬化性の結果、例えば完全硬化時間は、両方の硬化剤が同様の硬化時間を有し、付加物DETA−GY260[アラドゥール(Aradur)(登録商標)943]についての完全硬化時間が5時間であり、そして本発明の付加物Aについての完全硬化時間が7.5時間であることを示している。しかしながら、無粉塵時間は、本発明の硬化剤A(単離された付加物A)に比べて23℃にて約6時間及び5℃にて殆ど24時間を越える急速硬化剤アラドゥール943についての方が遥かに長い。硬化剤アラドゥール943に実用上匹敵する急速硬化性を同様に示す、このような単離された付加物Aが、硬化剤アラドゥール943についての14分に比べて殆ど40分の長い可使時間をも有することを、この段階で見出したことは驚くべきことであった。この市販の硬化剤は、例えば、厳しい条件下での腐食保護が望まれる低温硬化用途において、基本的に使用される。しかしながら、その高い反応性及び、アラルダイトGY250と組み合わせた場合に15分未満の短い可使時間に起因して、その使用のためには、2成分噴霧装置が必要である。
【0043】
表3:単離された付加物Aを含む製剤化された系の硬化性
【表3】

1)質量%による、EEW186を持つアラルダイトGY250;2)質量%による;3)ハンツマン アドバンスド マテリアルズ社から入手可能なアラドゥール943;4)製剤の粘度は、500rpmにて、コーン6を用いて、CAP2000粘度計(ISO3219)を使用して、25℃にて決定した。;5)可使時間は、23℃英国標準法BS3532にて、製剤100gに対して、テカム(Tecam)/テクン(Techne)により測定した。;6)7)硬化時間は、上記製剤をコートしたガラスシートを使用して、ランドルト(Landolt)装置により測定した。完全硬化を決定するために、正確に24時間の間、コートされたガラスシート上で、針を連続的に前進させている;完全硬化は、フィルムを貫いている針が該フィルムから外に出る場合の距離/時間を測定することにより、決定される。無粉塵時間を決定するために、コーティング表面に砂を連続的にかけている;無粉塵時間は、コーティング表面から砂を除去し、そして砂がコーティング表面に張り付く場合の距離/時間を測定することにより、測定される。ガラスについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
【0044】
以下の表4は、製剤1及び比較例1に対して、異なる温度における硬化時間の経過におけるペルソー硬度(秒)を与えている。

表4:アラドゥール943と比較した、本発明の硬化剤のペルソー硬度
【表4】

1)ペルソー硬度は、Byk振り子式硬度試験機(ISO1522)を使用して、上記製剤を用いてコートされたガラスシートについて測定した。ガラスについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
【0045】
使用例2):硬化剤アラドゥール943と比較した、硬化剤B及び硬化剤Cの硬化性及び機械的性質
硬化剤B及び硬化剤Cの硬化性を、同様に、エポキシ樹脂GY250を使用して、アラドゥール943の硬化性と比較した。異なる温度0℃、5℃及び23℃にて決定された硬化時間の結果を、表5に示す。ブレンド硬化剤の完全硬化時間は、製剤1における純粋な単離された付加物に比べて及びアラドゥール943に比べて、1,2−ジアミノシクロヘキサン及びスプラプラスト3616の添加により、幾分か延長される。しかしながら無粉塵時間は、アラドゥール943に比べて、スプラプラスト3616を用いた系の変性により、ここでも同様に減少し、そしてまた前記製剤の粘度は、製剤1及び比較例1に比べて低下した。時間の経過による硬度の増加は、アラドゥール943及び単離された付加物Aについてと同様に良い。
硬化剤A、硬化剤B及び硬化剤Cの機械的性質[エリクセン(Erichsen)フィルム伸張性)、フィルム衝撃抵抗性及びフィルム曲げ抵抗性]を同様に決定した。結果は以下の表7に与えられている。単離された付加物Aは、低いエリクセン、衝撃及び曲げ値から認められ得るように、他の二つの生成物B及びCよりも良好な機械的抵抗性を示す。しかしながら、目標とする性能によっては、ブレンドB及びブレンドCは、それらが非常に低い製剤粘度を示し、従って、それらが溶剤無しでさえも適用され得るので、興味深い硬化剤である。
【0046】
表5:ブレンド付加物A/1,2−DACH/スプラプラスト3616の硬化性
【表5】

1)質量%による、EEW186を持つアラルダイトGY250;2)質量%による;3)質量%による;4)製剤の粘度は、500rpmにて、コーン6を用いて、CAP2000粘度計(ISO3219)を使用して、25℃にて決定した。;5)可使時間は、23℃英国標準法BS3532にて、製剤100gに対して、テカム/テクンにより測定した。;6)7)硬化時間は、上記製剤をコートしたガラスシートを使用して、ランドルト装置により測定した。ガラスについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
【0047】
表6:異なる温度における、硬化時間の経過によるフィルム硬度(ペルソーによる)
【表6】

1)ペルソー硬度は、Byk振り子式硬度試験機(ISO1522)を用いて測定した。ガラスについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
【0048】
表7:異なる温度にて硬化された、硬化剤B及び硬化剤Cを含む製剤の、単離された付加物Aに比較した機械的試験結果
【表7】

グリース除去した鋼製パネルについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
1)エリクセン圧痕試験は、フィルムの弾性を測定するための標準法で、エリクセン機器により測定された。この試験において、球がパネルに対して背面側から押圧される。亀裂発生前の圧痕レベルが、mm単位で測定される(ISO1520/DIN53156)。
2)衝撃変形(直接衝撃)は、2Kgの質量を有し、下側に直径20mmの球が存在するパンチを、所定高さからコートされた表面に直接、下側を下に向けて落下させることにより決定される。与えられた値はKgでのパンチ質量の結果であり、そして、コーティングに対する損傷が無いcmでの最大試験高さが、cm・Kgとして見出され得る(ISO6272)。
3)曲げ試験は、標準条件下で、15mmの直径を持つ円柱状マンドレルで曲げた。それは、標準条件下で円柱状マンドレルの周囲に沿って曲げられた場合の亀裂発生及び/又は金属からの剥離に対するコーティングの耐性を評価するための、経験的試験手順である。この値は、度合にて与えられる(ISO1519/DIN53152)。
【0049】
使用例3):硬化剤アラドゥール943と比較した、硬化剤D、E、Fの硬化性及び機械的性質
単離された付加物D、E及びFの硬化性及び機械的性質を、エポキシ樹脂GY250と組み合わせて、市販のアラドゥール943の硬化性及び機械的性質と比較した。異なる温度0℃、5℃及び23℃にて決定された硬化時間の結果を、表8に示す。三つの付加物全てが、アラドゥール943を用いた市販の系よりも良好な無粉塵時間を示しており、とりわけ、5℃及び23℃において明白である。
表8:ブレンド付加物A/1,2−DACH/スプラプラスト3616の硬化性
【表8】

1)質量%による、EEW186を持つアラルダイトGY250;2)質量%による;3)質量%による;4)質量%による;5)製剤の粘度は、500rpmにて、コーン6を用いて、CAP2000粘度計(ISO3219)を使用して、25℃にて決定した。;6)可使時間は、製剤100gに対して、テカム/テクンにより測定した。;7)8)硬化時間は、上記製剤をコートしたガラスシートを使用して、ランドルト装置により測定した。
【0050】
また、三つの付加物D、E及びFの構築されたコーティング硬度は、市販の系アラドゥール943のコーティング硬度と同等であり、この事は、様々な系がアラドゥール943と同様に速く硬化することを意味する(表9)。ここで再び、三つの付加物D、E及びF全ての可使時間が、驚くべきことに、市販のアラドゥール943の可使時間より遥かに長いことが観察された。DY0397に基づく、硬化剤付加物E又はFを用いて製造されたコーティングの最終硬度は、アラドゥール943及び単離された付加物Dに比較して、23℃にて2週間後に最も低い最終硬度を有している。
表9:異なる温度における、硬化時間の経過によるフィルム硬度(ペルソーによる)
【表9】

1)ペルソー硬度は、Byk振り子式硬度試験機(ISO1522)を用いて測定した。ガラスについて測定されたコーティング厚は250ミクロン〜300ミクロンであった。
【0051】
使用例4):単離された付加物A及びブレンドBの耐腐食性
DIN35167及び塩噴霧試験DIN50021−SSに従って、耐腐食性を測定した。付加物A及びブレンドBは両方とも、表10及び表11に記載されているように、防食性プライマーとして製剤化され、そしてスプレーガンを用いて、厚さ160μmにて、サンドブラストされた鋼製パネルSa21/2 (100mm×70mm)に塗布された。コートされたパネルは、23℃/相対湿度50%にて7日間、硬化させた。前記時間後、コートされたパネルに、スクラッチ スチルス 463を用いて、各レッグが長さ約5cmのX形状の印を付けた。その後、パネルを、異なる時間、例えば500時間、1000時間、2000時間及び4000時間、塩水噴霧に暴露した。
【0052】
表10:実施例Aの単離された付加物Aを用いた防食性プライマー製剤
【表10】

−アラルダイトGY250を変性剤DW1765(ハンツマン アドバンスド マテリアルズ社製の液体エポキシ樹脂をベースとするペースト)と質量比98:2で混合した。
−ルボチックス(Luvotix)P25Xはチキソトロープ剤である[リーマン アンド ボス社(Lehmann&Voss&Co.)];燐酸亜鉛ZP−10[ホイバッハ
ゲーエムベーハー(Heubach GmbH)]
−タルク10MC[タルク デ ルゼナック フランス(Talc de Luzenac France)];硫酸バリウムEWO−S(登録商標)[ザッハトレーベン ヘミー ゲーエムベーハー(Sachtleben ChemieGmbH)]
−酸化鉄レッド130[バイエル(BAYER)]
【0053】
表11:実施例BのブレンドBを用いた防食性プライマー製剤
【表11】

【0054】
付加物A及びブレンドBの場合の腐食試験の結果を表12に示す。下記式Iにおける値WA は、暴露時間の間に生じた下塗り腐食領域に相当する。この値が高くなるほど、コーティングの耐腐食性は悪化する。本例の場合には、ほぼ4000時間の暴露の間に、極僅かな下塗り腐食が観察された。
【数1】

1 =mm2 による、腐食下領域の全表面
0 =mm2 による、洗浄ラインの表面;L=mmによる、洗浄ラインの長さ
【0055】
表12:単離された付加物A及びブレンドBについて、異なる腐食時間にて得られたWA
【表12】

0 =mm2 による、洗浄ラインの表面=10×1mm2
L=mmによる、洗浄ラインの長さ=10mm
【0056】
付加物Aを用いて造られたコーティング及びブレンドBを用いて造られたコーティングは、腐食に対して同等で且つ良好な耐性を示し、そして両方とも、プライマー製剤、例えば船舶用途及び過酷な用途において使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)平均して、分子当たり一つよりも多いエポキシ基を含むエポキシ樹脂、並びに
b)硬化剤としての組成物であって、
b1)
b1a)少なくとも1種のジグリシジル−及び/又は少なくとも1種のモノグリシジルエーテルと、
b1b)揮発性モノアミン及びポリアミンを含む組成物
との反応からの反応生成物であって、
前記組成物b1b)は、b1a)からのエポキシ基に対して過剰のアミノ基を供給する量使用され、そしてここで、過剰のモノアミンが反応生成物から除去されるところの反応生成物40質量%ないし100質量%、
b2)ポリアミン0質量%ないし60質量%、及び
b3)ポリフェノールノボラック0質量%ないし25質量%
を含み、
そしてここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計が100質量%である組成物、
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記b)が、
b1)
b1a)少なくとも1種のジグリシジル−及び/又は少なくとも1種のモノグリシジルエーテルと、
b1b)揮発性モノアミン及びポリアミンを含む組成物
との反応からの反応生成物であって、
前記組成物b1b)が、b1a)からのエポキシ基に対して過剰のアミノ基を供給する量使用され、そしてここで、過剰のモノアミンが反応生成物から除去されるところの反応生成物40質量%ないし80質量%、好ましくは45質量%ないし70質量%、
b2)ポリアミン15質量%ないし60質量%、好ましくは25質量%ないし50質量%、及び
b3)ポリフェノールノボラック5質量%ないし20質量%、好ましくは5質量%ないし15質量%
を含み、
そしてここで、成分b1)、b2)及びb3)の合計が100質量%であるところの組成物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記成分a)がビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、一価−又は二価脂環式アルコールのモノ−又はジグリシジルエーテル、一価−又は二価脂肪族アルコールのモノ−又はジグリシジルエーテルから選択されている、請求項1及び2の何れか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分a)が反応性希釈剤と予備混合されている、請求項1ないし3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分b1a)がビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、多価フェノール又はクレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル、一価−又は多価脂環式アルコールのモノ−又はポリグリシジルエーテル、一価−又は多価脂肪族アルコールのモノ−又はポリグリシジルエーテルから選択されている、請求項1ないし4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分b1b)又はb2)のポリアミンがm−キシリレンジアミン、イソホロンジア
ミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジエチレンテトラミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンから選択されている、請求項1ないし5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリフェノールノボラックが次式(I)又は(II):
【化1】

[式(I)及び(II)中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、互いに独立して、水素原子、1個ないし15個の炭素原子を含む分岐鎖状又は非分岐鎖状アルキル基を表わし、そしてR5 、R6 は、互いに独立して、水素原子、−CH3 、−CF3 を表わす。]で表わされるフェノール化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)との縮合から得られたホモポリマー、又は、前記式(I)及び/又は(II)で表わされる様々なフェノール性化合物とホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)とのコポリマーである、請求項1ないし6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリフェノールノボラックが、未反応の遊離のフェノール化合物、好ましくは式(I)及び/又は(II)で表わされる化合物を、硬化剤ブレンドb)の全質量に基づいて、10質量%を越えない量、好ましくは7.5質量%未満の量、最も好ましくは5質量%未満の量含む、請求項1ないし7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記成分b1)が溶剤の存在下で造られている、請求項1ないし8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
流れ調整剤、消泡剤、垂れ防止剤、顔料、強化剤、充填材、エラストマー、安定剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、促進剤、着色剤、繊維状物質、チキソトロープ剤、防食顔料から選択された無機及び/又は有機添加剤を更に含む、請求項1ないし9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
添加剤として、サリチル酸が使用される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の組成物を硬化することから得られた、硬化された材料。
【請求項13】
保護コーティング及び接着剤を提供するための、請求項1ないし11の何れか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−523879(P2009−523879A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550781(P2008−550781)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050655
【国際公開番号】WO2007/085598
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(300052420)ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー (26)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
【Fターム(参考)】