説明

硬化性組成物

【課題】各種の可塑剤との相溶性が良好であり、硬化物の耐表面汚染性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖、ポリオキシアルキレン鎖、および反応性ケイ素基を有する重合体(A)と、硬化促進剤(X)を含むことを特徴とし、特に油脂がヒマシ油であり、重合体(A)の数平均分子量が2000〜50000であり、更に可塑剤としてヒマシ油またはヒマシ油誘導体を含む事を特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を主成分とする硬化性組成物は、湿分存在下でシロキサン結合を形成することにより架橋し、ゴム弾性を有する硬化物を形成し得る。該硬化物は建築用などのシーリング材、接着剤、コーティング材などの用途として使用されている。
かかる硬化性組成物には、伸びなどの性能を発現するために可塑剤が添加されることが一般的である。可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のアジペート類、およびリン酸エステル類などのエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル系可塑剤が主流であったが、近年では、例えばヒマシ油誘導体など動植物由来の炭化水素系可塑剤が使用されるようになってきた。
【0003】
下記特許文献1には、反応性ケイ素基を有する有機重合体の100重量部に対して、可塑剤として、ヒマシ油重合体および/またはヒマシ油誘導体の重合体を、0.01〜30質量部添加することによって耐候性を改善した硬化性組成物が記載されている。
【特許文献1】特開2005−120138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬化性組成物に添加する可塑剤の種類によっては重合体との相溶性が不充分で硬化物表面にブリードアウトしてしまい、その結果、硬化物表面に汚れが付着しやすくなるという問題がある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、各種の可塑剤との相溶性が良好であり、硬化物の耐表面汚染性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の硬化性組成物は、油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖、ポリオキシアルキレン鎖、および反応性ケイ素基を有する重合体(A)と、硬化促進剤(X)を含むことを特徴とする。
前記油脂がヒマシ油であることが好ましい。
前記反応性ケイ素基が下式(1)で表される基であることが好ましい。
−Q−SiX3−a・・・(1)
[式中、Qは、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示す。ただし、Rが複数存在するとき複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、Xが複数存在するとき複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
重合体(A)の数平均分子量が2000〜50000であることが好ましい。
重合体(A)における、前記炭素鎖と前記ポリオキシアルキレン鎖の質量比(炭素鎖/ポリアルキレン鎖)が5/95〜60/40であることが好ましい。
【0007】
さらに可塑剤(Y)を含むことが好ましい。
可塑剤(Y)としてヒマシ油またはヒマシ油誘導体を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各種の可塑剤との相溶性が良好であり、硬化物の耐表面汚染性に優れた硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<重合体(A)>
重合体(A)は、油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖、ポリオキシアルキレン鎖、および反応性ケイ素基を有する。重合体(A)は、上記炭素鎖、ポリオキシアルキレン鎖、および反応性ケイ素基以外に、分子鎖をつなげるためのオキシアルキレン以外の構造、たとえばウレタン結合、エステル結合、チオエーテル結合、シロキサン結合などを含んでいてもよい。
重合体(A)は、油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖とポリオキシアルキレン鎖を有するポリオール(p)に反応性ケイ素基を導入して得られる。
ポリオール(p)は、油脂または油脂誘導体を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる。
【0010】
本明細書における水酸基価(mgKOH/g)は、JIS―K−1557に準拠して測定した値であり、酸価(mgKOH/g)で補正を行なっている。
分子量分布は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表され、MwおよびMnはゲル浸透クロマトグラフィ−によって測定したポリスチレン換算分子量である。
【0011】
[油脂または油脂誘導体]
ポリオール(p)の合成に用いられる油脂または油脂誘導体は、油脂を構成する飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸に由来する炭素鎖を有するとともに、水酸基を有するものであればよい。動植物油由来の油脂またはそれらに水酸基を導入したものが好ましい。
油脂としてはヒマシ油が好ましい。動植物油由来で水酸基を有する油脂は実質的にヒマシ油だけである。ヒマシ油は、市販の各種精製度のヒマシ油を用いることができる。
水酸基を有する油脂誘導体は、動植物油を原料として公知の方法により製造可能であり、市販品からも入手可能である。油脂または油脂誘導体は1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
油脂誘導体としては、例えば以下の化合物を用いることができる。
(1)天然油脂の二重結合に、酸素および/または空気の吹込みにより水酸基を付与変成した水酸基含有化合物およびその誘導体。製造方法は、例えば特表2002−524627号公報に記載の方法を用いることができる。
(2)エポキシ化大豆油を過剰のアルコールの存在下で開環することで水酸基が付与された水酸基付加エポキシ大豆油。
(3)植物油脂(Vegetable Oil)に金属触媒存在下で一酸化炭素および水素を反応させることによって水酸基を付与した変性植物油脂。製造方法は、例えば国際公開第2005/033167号パンフレットに記載の方法を用いることができる。
(4)ヒマシ油から得られる脂肪酸のアルキルエステル、ヒマシ油から得られる脂肪酸のジオールエステル、ヒマシ油のアシル化物、ヒマシ油と天然油脂とのエステル交換反応物等のヒマシ油変性物。
(5)ヒマシ油の水酸基の一部を脱水処理した部分脱水ヒマシ油。例えばヒマシ油を硫酸、燐酸、またはp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒の存在下に加熱する方法で製造できる。
(6)ヒマシ油、ヒマシ油変性体、および/または部分脱水ヒマシ油の重合体。
【0013】
上記(4)のヒマシ油変性体の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ヒマシ油由来の脂肪酸のアルキルエステル;ヒマシ油の加水分解により得られる脂肪酸のメチルエステル、該脂肪酸のエチルエステル等。
ヒマシ油由来の脂肪酸のジオールエステル;ヒマシ油とエチレングリコールまたはプロピレングリコール等のジオールとのエステル交換反応物。
ヒマシ油のアシル化物;ヒマシ油のアセチル化物が好ましい。特に無水酢酸によるアセチル化物が好ましい。
ヒマシ油と天然油脂とのエステル交換反応物;ここでの天然油脂は、水酸基を含まない天然油脂が好ましく、アマニ油、キリ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、えの油、くるみ油、米ぬか油、綿実油、つばき油、オリーブ油、落花生油などの植物油、牛脂、豚脂、魚油、肝油などの動物油が好ましい。エステル交換反応は公知の方法で行うことができる。
上記(4)のヒマシ油変性体は市販品から入手可能であり、例えばユーリックH−1824(伊藤製油社製、ヒマシ油変性ポリエステルポリオール)等が使用できる。
【0014】
上記(6)の重合体は、ヒマシ油、ヒマシ油変性体、および/または部分脱水ヒマシ油を、有機過酸化物とともに、不活性ガス雰囲気下に温度110〜180℃で加熱反応させる方法等により得ることができる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好ましい。重合体の重合度は、耐膨れ性の効果の点から高い程好ましい。
該重合体は、ヒマシ油を重合させた重合体でもよい。または、部分脱水ヒマシ油および/または部分アシル化ヒマシ油等のヒマシ油変性体と、ヒマシ油との混合物を重合反応させて得られる重合体でもよい。該混合物におけるヒマシ油の含有割合は、30〜97質量%が好ましい。
また、上記(6)の重合体として、ヒマシ油の重合体を得た後、該重合体をさらに一部脱水処理して得られる脱水反応物を用いることもできる。またはヒマシ油の重合体を得た後、該重合体中の水酸基の一部をアシル化した化合物も使用できる。貯蔵安定性の面からは、アシル化や脱水反応により、水酸基の一部が変性されたものが好ましい。
【0015】
上記(6)の重合体として、特公平7−49564号公報、特許第2592622号公報、特許第2608764号公報、特開2005−120138号公報に記載の公知の重合体が使用できる。
また、市販の製品を用いてもよく、例えば伊藤製油社製の商品名:POLYCASTOR#10、POLYCASTOR#30などが使用できる。POLYCASTOR#10とPOLYCASTOR#30とでは、後者の方が重合度が高いため、本発明においてより効果的である。
本発明における油脂または油脂誘導体は、反応性ケイ素基を導入しやすく、硬化物の耐候性が向上する点で、ヒマシ油またはヒマシ油誘導体が好ましい。該ヒマシ油誘導体には重合反応を経たものも含まれる。
【0016】
前記ポリオール(p)を得る際に、開始剤として用いる油脂または油脂誘導体の水酸基価は、油脂または油脂誘導体の含有比率を高め、更に硬化物の伸び物性を高める点から120mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましい。該水酸基価の下限値はポリオキシアルキレン鎖の含有比率を高め、更に硬化物の凝集力を高める点から10KOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。
【0017】
[アルキレンオキシド]
前記ポリオール(p)を得る際に、開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドは、開環付加重合可能なものであればよく、特に限定されない。具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、グリシジルエ−テルおよびグリシジルアクリレ−トなどのグリシジル化合物、オキセタン等が挙げられる。
【0018】
開環付加重合に用いるアルキレンオキシドは1種でもよく、2種以上を併用することもできる。2種以上のアルキレンオキシドを併用する場合は、ブロック重合およびランダム重合のいずれの重合法を用いてもよく、さらにブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせて1種のポリオール(p)を製造することもできる。
本発明においては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを用いることが好ましく、プロピレンオキシド/エチレンオキシドのモル比が100/0から20/80の範囲でエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを用いることがさらに好ましい。エチレンオキシドを併用することで、ポリオール(p)の末端1級水酸基の割合を大きくすることが可能である。末端1級水酸基はイソシアネート基との反応性が高い。通常、末端1級水酸基の割合は3〜60%にすることが可能である。
【0019】
[ポリオール(p)]
ポリオール(p)は、油脂または油脂誘導体を開始剤とし、公知の方法でアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造できる。該重合反応は、複合金属シアン化物錯体触媒存在下またはカチオン重合触媒の存在下で行うことが好ましい。
ポリオール(p)の製造方法については後述する。
ポリオール(p)全体における開始剤の割合は、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0020】
ポリオール(p)を得る際に、上記アルキレンオキシド以外のモノマ−を共重合させることもできる。該アルキレンオキシド以外のモノマ−単位は、ポリオール(p)の開始剤を除く部分を構成する全単位の50モル%以下であることが好ましい。かかるモノマーの具体例としては、例えばオキセタン化合物、ε−カプロラクトンおよびラクチドなどの環状エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチルカーボネートなどの環状カーボネート等が挙げられる。これらは、ランダム重合することも、ブロック重合することもできる。
ポリオール(p)は、オキシアルキレン以外の分子鎖をつなげるための構造、たとえばウレタン結合、エステル結合、チオエーテル結合、シロキサン結合などを含んでいてもよい。
【0021】
[反応性ケイ素基]
反応性ケイ素基は、−SiX3−a(R、X、aは式(1)と同じである。)で表わされる1価基を有する基であり、上式(1)で表される反応性ケイ素基が好ましい。上式(1)においてaは1〜3の整数を示す。
上式(1)において、Qは炭素数1〜10の2価の有機基である。エーテル結合、ウレタン結合、エステル結合又はカーボネート結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は1〜5がより好ましい。
【0022】
は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基である。Rには後述の加水分解性基は含まれないものとする。Rは、炭素数8以下のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。同一分子中にRが複数存在するとき、それら複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
は水酸基又は加水分解性基である。ここで、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。該加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。Xとしては、特に、炭素数4以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。より具体的には、Xはメトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。なお、同一分子中にXが複数存在するときは、それら複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。
aは1〜3の整数であり、2または3が好ましい。
【0023】
[ポリオール(p)の製造方法]
ポリオール(p)の製造方法は、(I)重合触媒として複合金属シアン化物錯体を用いる方法、または(II)カチオン重合触媒を用いる方法が好ましい。
複合金属シアン化物錯体触媒を用いると、分子量分布が狭いポリオール(p)が得られやすい点で好ましく、カチオン重合触媒を用いると、末端の全水酸基のうち一級水酸基が占める割合(水酸基の一級化率)が高いポリオール(p)が得られやすい点で好ましい。
【0024】
(I)複合金属シアン化物錯体を用いてポリオール(p)を製造する方法
(複合金属シアン化物錯体触媒)
複合金属シアン化物錯体触媒は公知の製造方法で製造でき、例えば、特開平2003−165836号、特開平2005−15786号、特開平7−196778号、特表2000−513647号に記載の方法が挙げられる。例えば、(1)水溶液中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレ−トとを反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させ、ついで、固体成分を分離し、分離した固体成分を有機配位子水溶液でさらに洗浄する方法、または(2)有機配位子水溶液中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレ−トとを反応させ、得られる反応生成物(固体成分)を分離し、分離した固体成分を有機配位子水溶液でさらに洗浄する方法などにより製造できる。反応生成物を洗浄、ろ過分離して得られるケーキ(固体成分)を、ケーキに対して3質量%以下のポリエ−テルを含んだ有機配位子水溶液に再分散し、その後、揮発成分を留去することにより、スラリー状の複合金属シアン化物錯体触媒を調製することもできる。分子量分布の狭いポリオキシアルキレンポリオールを製造するためには、このスラリー状の触媒を用いることが特に好ましい。
【0025】
有機配位子としては、アルコ−ル、エ−テル、ケトン、エステル、アミン、アミドなどが使用できるが、好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコ−ル、tert−ペンチルアルコ−ル、およびエチレングリコールモノ−tert−ブチルエ−テル、ならびにtert−ブチルアルコ−ルとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエ−テルの組合せであり、特に好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコ−ルである。したがって、有機配位子の少なくとも一部としてtert−ブチルアルコ−ルを有する複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが好ましい。このような有機配位子を用いた場合には、高活性の複合金属シアン化物錯体触媒が得られ、アルキレンオキシドを重合付加する時、不飽和結合を有するモノオールの生成を抑制することができる。
【0026】
(複合金属シアン化物錯体触媒によるアルキレンオキシドの重合付加)
複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、油脂または油脂誘導体にアルキレンオキシドを重合付加させることによりポリオール(p)が得られる。アルキレンオキシドの付加量が増加するにつれて製造されるポリオール(p)全体における開始剤の割合は低下する。
アルキレンオキシド重合反応における撹拌条件、アルキレンオキシドの供給速度、重合温度、用いる触媒の量などの条件を適切に選択することで、分子量分布が狭いポリオール(p)を製造することができる。
【0027】
重合温度は通常、60〜180℃である。反応系内の粘度を下げるうえで100〜160℃が好ましく、120〜145℃がより好ましい。また、反応器内のモノマー供給ノズル数を多くする方法、および/または重合反応系内へのモノマー(アルキレンオキシド)供給速度を低くする方法などにより、反応器内におけるモノマー濃度が均一になるようにすることが好ましい。さらに、反応混合物の撹拌速度を高めること、および/または反応混合物に対して大きなせん断エネルギ−を与える大型の撹拌翼を用いること、が好ましい。重合時間は通常、0.5〜20時間、好ましくは1〜8時間である。
触媒、アルキレンオキシドおよび開始剤は、間欠的または連続的に反応器に供給することができる。複合金属シアン化物錯体触媒の使用量は、製造するポリオール(p)中における触媒由来の金属含有量が150ppm以下になることが好ましく、100ppm以下になることがさらに好ましい。
【0028】
(II)カチオン触媒を用いてポリオール(p)を製造する方法
(カチオン重合触媒)
カチオン重合触媒として、フッ素元素を含有する芳香族炭化水素基またはフッ素元素を含有する芳香族炭化水素オキシ基を少なくとも1個有するアルミニウムまたはホウ素化合物からなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
フッ素元素を含有する芳香族炭化水素基としては、ペンタフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)トリフルオロフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、β−ペルフルオロナフチル、2,2’,2’’−ペルフルオロビフェニルからなる群から選択される、一種以上が好ましい。
フッ素元素を含有する芳香族炭化水素オキシ基としては、前記フッ素元素を含有する芳香族炭化水素基に酸素元素が結合した炭化水素オキシ基が好ましい。
【0029】
フッ素元素を含有する芳香族炭化水素基またはフッ素元素を含有する芳香族炭化水素オキシ基を少なくとも1個有するアルミニウムまたはホウ素化合物としては、例えば、特開2000−344881号公報、特開2005−82732号公報、または国際公開03/000750号パンフレットに記載されているルイス酸としてのホウ素化合物、アルミニウム化合物が好ましい。あるいは、特開2003−501524号公報または特開2003−510374号公報に記載されているオニウム塩であるホウ素化合物、アルミニウム化合物が好ましい。
【0030】
前記ルイス酸の具体例としては、トリス(ペンタフロロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフロロフェニル)アルミニウム、トリス(ペンタフロロフェニルオキシ)ボラン、トリス(ペンタフロロフェニルオキシ)アルミニウム、などが挙げられる。これらのうち、トリス(ペンタフロロフェニル)ボランはエチレンオキシドの開環重合に対する触媒活性が大きく、特に好ましい触媒である。
【0031】
オニウム塩の対カチオンとしては、トリチルカチオンまたはアニリニウムカチオンが好ましく、オニウム塩としては、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0032】
(カチオン重合触媒によるアルキレンオキシドの重合付加)
上記カチオン重合触媒の存在下、油脂または油脂誘導体にアルキレンオキシドを重合付加させることによりポリオール(p)が得られる。
アルキレンオキシドは、その水分量が3〜100ppmであることが好ましく、3〜60ppmであることがより好ましく、3〜40ppmであることが特に好ましい。水分量が100ppmを越えると、高分子多量体などの副生物が増加し、また、カチオン重合触媒が水分存在下で加熱されたときに失活しやすく、そのためカチオン触媒の使用量を多くしなければならない問題がある。触媒を多く使うことは、経済的ではなく、ポリオールの後処理工程が煩雑になる。
【0033】
重合付加反応は、具体的には以下のように行う。撹拌機および冷却ジャケットを備えた耐圧反応器に、開始剤を投入し、さらに上記カチオン重合触媒を添加する。ここで、開始剤を投入した後、カチオン重合触媒を添加する前に、加熱、減圧脱水することが好ましい。これにより、開始剤中の水分量を、5〜200ppm、好ましくは5〜100ppm、さらに好ましくは5〜50ppmにすることで、最終的に前記のように副生物の量を低く抑え、少ない触媒の使用量で重合を完結できる。
【0034】
上記カチオン重合触媒は、開始剤に対して10〜200ppmの量で用いることが好ましく、さらに20〜150ppmが好ましく、特に30〜100ppmが好ましい。開始剤およびアルキレンオキシド中の水分含量が多い場合は使用する触媒量を多くする必要がある。得られるポリオール(p)の精製およびコストの点から、失活しない限りにおいては触媒使用量は少ないほど好ましいが、あまり少ないと(10ppm未満)開環重合速度が遅くなり、経済的でなくなる。
【0035】
本方法において、反応容器を冷却することと合わせて、反応容器内へのアルキレンオキシドの供給速度を調節することによって、反応容器内の温度を所望の温度に保ちながら重合反応を行うことが好ましい。反応容器内の温度は、通常−15〜140℃、好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20から90℃である。重合時間は通常、0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間である。
【0036】
重合付加反応により得られたポリオール(p)は、必要に応じて精製することができる。該ポリオール(p)は油脂または油脂誘導体に由来するエステル結合を含有するので、塩基性化合物での触媒分解よりは、無機吸着剤による吸着、ろ別が好ましい。塩基性化合物で中和精製する場合は、限定された使用量の塩基性化合物で中和することが望ましい。無機吸着剤としては、たとえば、合成珪酸塩(マグネシウムシリケート、アルミニウムシリケートなど)、イオン交換樹脂、および活性白土などから選ばれる吸着剤を用いて触媒を吸着し、さらに吸着剤を濾過によってポリオール(p)から分離除去できる。
【0037】
[重合体(A)の製造方法]
ポリオール(p)に反応性ケイ素基を導入することにより重合体(A)が得られる。
ポリオール(p)に反応性ケイ基を導入する方法は、例えば下記(a)〜(f)等の公知の方法を適宜用いることができる。
(a)ポリオール(p)中の水酸基に対して、イソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物を反応させる方法。
(b)ポリオール(p)中の水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物を、水酸基の総数に対するイソシアネート基の総数のモル比(イソシアネート基/水酸基)が1.0以上となるように反応させて、イソシアネート基含有化合物を得、予め反応性ケイ素基及びアミノ基を有する化合物とアクリレートとを反応させた反応生成物を、前記イソシアネート基含有化合物と反応させる方法。例えば特開平11−100427号公報、特許3030020号公報に記載されている方法を用いることができる。
(c)ポリオール(p)中の水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物を、前記イソシアネート基/水酸基のモル比が1.0未満となるように反応させ、その後、残った水酸基に対して、イソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物を反応させる方法。
(d)ポリオール(p)中の水酸基に対して、モノイソシアネート化合物を反応させて該水酸基の一部をキャップした後、残った水酸基に対して、イソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物を反応させる方法。
(e)ポリオール(p)中の水酸基に対して、モノイソシアネート化合物を反応させて該水酸基の一部をキャップした後、残った水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物を一定量反応させ、最後にイソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物を反応させる方法。
(f)ポリオール(p)中の水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物を前記イソシアネート基/水酸基のモル比が1.0以上となるように反応させて、イソシアネート基含有化合物を得た後、メルカプトアルコキシシランを反応させて、反応性ケイ素基を導入する方法。例えば、特開平2001−240844号公報に記載の方法を用いることができる。
【0038】
ポリオール(p)に、反応性ケイ基を導入してなる重合体(A)の数平均分子量(Mn)は2000〜50000が好ましく、2500〜30000がより好ましい。重合体(A)の数平均分子量(Mn)が2000以下であると重合体の硬化反応時の硬化性が悪くなり、50000以上であると重合体の粘度が高くなり作業性が悪くなる。
重合体(A)における、油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖とポリオキシアルキレン鎖の質量比(炭素鎖/ポリアルキレン鎖)は、5/95〜60/40であることが好ましく、5/95〜50/50がより好ましい。上記の炭素鎖/ポリアルキレン鎖の範囲より、炭素鎖が多すぎると重合体の硬化反応時の反応性が悪くなり、ポリアルキレン鎖が多すぎるとヒマシ油誘導体などの動植物由来の炭化水素系可塑剤との相溶性が悪くなる。
【0039】
本発明の硬化性組成物において、重合体(A)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。互いに異なる反応性ケイ素基を有する2種以上の重合体(A)を併用してもよい。
【0040】
<重合体(B)>
本発明の硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン鎖と反応性ケイ基を有する重合体(B)をさらに含むことが好ましい。重合体(B)は油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖を含まない。また重合体(B)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する重合単位を含まない。重合体(B)を含有させることにより、機械物性や耐候性を向上させることができる。
重合体(B)の反応性ケイ素基は、好ましい態様も含めて重合体(A)の反応性ケイ素基と同様である。硬化性組成物中に共存する重合体(A)の反応性ケイ素基と、重合体(B)の反応性ケイ素基とは同じであってもよく、異なっていてもよい。また互いに異なる反応性ケイ素基を有する2種以上の重合体(B)を併用してもよい。
【0041】
重合体(B)において、反応性ケイ素基は分子内の末端の位置にあることが好ましい。1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は、硬化性の点から1個以上あることが好ましい。また高弾性、高耐候性などが要求される場合には、2〜8個あることが好ましい。
重合体(B)としては、従来公知のものが広く使用できる。ポリオキシアルキレン鎖の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、これらのブロック共重合体、またはランダム共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖には、オキシアルキレン以外の分子鎖をつなげるための構造、たとえばウレタン結合、エステル結合、チオエーテル結合、シロキサン結合などを含んでいてもよい。
【0042】
重合体(B)は、分子量が大きい方が硬化性および破断時の伸びなどの特性において優れている点で好ましい。しかし、高分子量の重合体(B)を直接製造することは困難であるため、例えば比較的入手しやすい分子量3000〜4000程度のオキシアルキレンポリオールを原料とし、これに多価ハロゲン化合物を反応させることで分子量を増大し、その後、分子末端に不飽和基を導入してから、白金などの触媒の存在下で該不飽和基に、加水分解性基を有する水素化ケイ素化合物を反応させて、反応性ケイ素基を導入する方法が採用できる。
【0043】
また、高分子量の重合体(B)を得る方法として、開始剤と、複合金属シアン化物錯体などの触媒の存在下に、アルキレンオキシドを重合して得られる高分子量でかつ分子量分布の狭いオキシアルキレンポリオールを使用することによって、分子間の架橋反応を抑えつつ反応性ケイ素基を有する高分子量のオキシアルキレン重合体を製造する方法があり、本発明ではかかる方法で得られる重合体(B)も使用できる。
【0044】
重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、5000以上30000以下が好ましく、10000以上25000以下がより好ましい。数平均分子量が5000を下回ると重合体の硬化反応時の硬化性が悪くなり、数平均分子量が30000を上回ると重合体の粘度が高くなり作業性が悪くなる。
また重合体(B)の、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.7以下であると、分子量分布が狭く、比較的低分子量の重合体が少ない重合体(B)となり、分子量分布が広いものと比較して同粘度のときには、低分子量の重合体成分が少なくて、硬化性の低下を招きにくいという優れた点がある。
【0045】
かかる分子量分布が狭い重合体(B)を得るには、原料として分子量分布の狭いオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましい。分子量分布の狭いオキシアルキレンポリオールは、複合金属シアン化物錯体、水酸化セシウムなどの触媒を使用し、開始剤にアルキレンオキシドを重合させることによって容易に得ることができる。
【0046】
本発明の硬化性組成物において、重合体(A)と重合体(B)の合計量を100質量部とするとき、そのうちの重合体(B)の含有量は0〜98質量部が好ましく、1〜95がより好ましい。98質量部を超えるとヒマシ油誘導体などの動植物由来の炭化水素系可塑剤との相溶性が悪くなる。
【0047】
<その他の重合体>
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の、反応性ケイ素基を有する重合体を含んでもよい。
[アクリル重合体(C)]
例えば、本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有し、かつ(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むアクリル重合体(C)を含んでもよい。重合体(C)は油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖を含まない。
アクリル重合体(C)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を必須成分として含んでいる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位のみを単量体単位として含む重合体であってもよいし、これ以外の不飽和基含有単量体単位を更に含む重合体であってもよい。該(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される繰り返し単位を有する重合体を意味する。
なお本発明において、不飽和基含有単量体とは、不飽和結合(好ましくは、炭素−炭素二重結合)を有する化合物であって重合体を形成し得る化合物のことを意味し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルまたは両者の混合物を意味する。
アクリル重合体(C)に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の種類や数は制限されない。
【0048】
アクリル重合体(C)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を必須成分とする不飽和基含有単量体を、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等により重合することにより得られる。特にラジカル重合が好ましく、その形態は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合のいずれであってもよい。
ラジカル重合によってアクリル重合体(C)を製造する場合、通常、不飽和基含有単量体にラジカル発生源として重合開始剤を添加する。なお、放射線や熱により活性化を行う場合は、重合開始剤は必ずしも必要ではない。反応は20〜200℃(好ましくは、50〜150℃)で数時間〜数十時間行うことが好ましい。
【0049】
上記のラジカル重合等の方法で予めアクリル重合体(C)を調製し、これを他の成分とともに添加混合して硬化性組成物としてもよい。あるいは、これに代えて、硬化性組成物中の他の成分の存在下で不飽和基含有単量体を重合してアクリル重合体(C)を生成させてもよい。この場合には、重合体(B)の存在下で重合反応を行うことが好ましい。これにより、混合の工程を省略することができ、また、重合体(B)に対してアクリル重合体(C)を均一に分散させることが容易になる。更に、重合過程において、不飽和基含有単量体の一部が重合体(B)にグラフト重合する場合もある。この場合、グラフト重合物が相溶化剤として機能して、アクリル重合体(C)の分散性がより向上する。
【0050】
またアクリル重合体(C)は、反応性ケイ素基を少なくとも1個、その末端及び側鎖のうち少なくとも一方において有している。
アクリル重合体(C)における反応性ケイ素基は、上記重合体(A)における反応性ケイ素基と、好ましい態様も含めて同様である。硬化性組成物中に共存するアクリル重合体(C)における反応性ケイ素基と、重合体(A)または(B)における反応性ケイ素基とは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
アクリル重合体(C)に反応性ケイ素基を導入する方法としては、例えば、以下の(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の方法が挙げられる。なお、これらの方法から選ばれる複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
(i):不飽和基含有重合体の重合によりアクリル重合体(C)を合成する際に、反応性ケイ素基を有する不飽和基含有単量体を共重合する方法。
(ii):不飽和基含有重合体の重合によりアクリル重合体(C)を合成する際に、反応性ケイ素基を有する連鎖移動剤を用いる方法。
(iii):不飽和基含有重合体の重合によりアクリル重合体(C)を合成する際に、反応性ケイ素基を有する開始剤を用いる方法。
(iv):水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基等の官能基を有するアクリル重合体を合成し、これに、当該官能基と反応する官能基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0052】
上記(i)の方法において用いられる、反応性ケイ素基を有する不飽和基含有単量体としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
−SiX3−b・・・(2)
式(2)中、Rは不飽和基を有する1価の有機基を示す。式(2)におけるR、X及びbは、式(1)におけるR、X及びaとそれぞれ同義である。
【0053】
式(2)で表される化合物の好適な具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン等のビニルシラン;3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシシランが挙げられる。
【0054】
上記(i)の方法において、式(2)で表される反応性ケイ素基を有する不飽和基含有単量体の使用量は、アクリル重合体(C)の合成に用いられる全単量体のうちの0.01〜20質量%が好ましい。
【0055】
上記(ii)の方法において用いられる、反応性ケイ素基を有する連鎖移動剤としては、下記一般式(3)で表される化合物、又は下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0056】
HS−R−SiX3−b・・・(3)
式(3)中、Rは、単結合又は2価の有機基を示す。R、X及びbは、式(1)におけるR、X及びaとそれぞれ同義である。
【0057】
【化1】

【0058】
式(4)中、RおよびXは、式(1)におけるRおよびXとそれぞれ同義である。R41及びR42は単結合又は2価の有機基を示し、c及びdはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。
【0059】
上式(3)で表される化合物の好適な具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリイソプロペニルオキシシラン等の反応性ケイ素基を有するメルカプト化合物が挙げられる。
上式(4)で表される化合物の好適な具体例としては、(CHO)Si−S−S−Si(OCH、(CHO)Si−(CH−S−S−(CH−Si(OCHが挙げられる。
【0060】
アクリル重合体(C)の数平均分子量Mnは、500〜100000であることが好ましく、1000〜100000であることがより好ましい。アクリル重合体(C)のMnが100000を超えると、作業性が低下する傾向にあり、Mnが500未満であると、硬化後の物性が低下する傾向にある。
【0061】
本発明の硬化性組成物にアクリル重合体(C)を含有させることにより、硬化後の硬化物の機械強度が向上し、硬化性組成物及びこれの硬化物の耐候性もより良好なものとなる。
アクリル重合体(C)が有する反応性ケイ素基は、硬化性組成物が硬化する際に、重合体(A)または(B)が有する反応性ケイ素基と反応して結合を生じ、このことが機械強度、耐候性の向上に寄与すると考えられる。
特に、アクリル重合体(C)は、反応性ケイ素基を末端に有することが好ましい。これにより、硬化性組成物の硬化後の伸び特性をより一層向上させることが可能になる。このような、末端に反応性ケイ素基を有するアクリル重合体(C)は、例えば、上記(ii)の方法や、上記(iii)の方法によって、得ることができる。
【0062】
本発明の硬化性組成物にアクリル重合体(C)を含有させる場合、重合体(A)、重合体(B)、およびその他の重合体の合計量を100質量%とするとき、アクリル重合体(C)の割合が5〜70質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。該アクリル重合体(C)の含有量の比率が5質量%以上であると、(C)成分の添加効果が充分に得られ、70質量%以下であると、硬化性組成物の適度な粘度が得られ作業性が良い。またアクリル重合体(C)の含有量が多すぎると耐表面汚染性に悪影響が生じるおそれがある。
【0063】
[反応性ケイ素基を有する化合物(D)]
さらに、油脂または油脂誘導体に、反応性ケイ基を導入してなる化合物(D)を1種または2種以上含有してもよい。化合物(D)はポリオキシアルキレン鎖を有しない。
油脂または油脂誘導体および反応性ケイ素基は、重合体(A)における油脂、油脂誘導体および反応性ケイ素基とそれぞれ同様である。油脂または油脂誘導体に反応性ケイ基を導入する方法は、公知の方法を適宜用いることができる。例えば上記重合体(A)の製造における、ポリオール(p)に反応性ケイ素基を導入する方法(a)〜(f)と同様にして、油脂または油脂誘導体の水酸基に反応させる方法を用いることができる。
化合物(D)において、1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は、1分子当たり1〜3個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
該1分子中の反応性ケイ素基の平均数は、例えば上記油脂または油脂誘導体の水酸基に対して反応させる、イソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物の量によって調整することができる。化合物(D)において油脂または油脂誘導体由来の水酸基が残存していてもよい。
また貯蔵安定性の点からは、化合物(D)中に残存する水酸基が少ない方が好ましく、前記(c)〜(e)の方法のように、イソシアネート基と反応性珪素基を有する化合物を反応させる前に、油脂または油脂誘導体中の水酸基の一部を不活性化させてもよい。
【0064】
化合物(D)の使用量は、重合体(A)、重合体(B)、およびその他の重合体の合計量を100質量%とするとき、0〜60質量%が好ましい。0〜50質量%がより好ましく、0〜40質量%がさらに好ましい。
【0065】
<硬化促進剤(X)>
本発明の硬化性組成物は硬化促進剤(X)を含有する。硬化促進剤(X)は反応性ケイ素基の硬化反応を促進するもので、シラノール触媒として公知の化合物を使用できる。具体的には下記の化合物が挙げられる。
【0066】
2−エチルヘキサン酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズなどの2価スズ化合物。
ジアルキルスズジカルボキシレート(ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズモノアセテート、ジブチルスズマレエート等)、ジアルコキシスズモノカルボキシレート等の有機スズカルボン酸塩;ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスエチルアセトアセテート、ジブチルスズモノアセチルアセトナートモノアルコキシドなどのスズキレート化合物;ジアルキルスズオキシドとエステル化合物の反応物、および該反応物にさらにアルコキシシラン化合物を反応させて得られる反応物;ジアルキルスズオキシドとアルコキシシラン化合物の反応物;ジアルキルスズジアルキルスルフィド;等の4価スズ化合物。
上記エステル化合物としては、フタル酸ビス−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル;その他脂肪族、芳香族カルボン酸のエステル;テトラエチルシリケートおよびその部分加水分解縮合物;等が挙げられる。
【0067】
有機カルボン酸ビスマス塩等の2価ビスマス化合物。
ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン等の脂肪族モノアミン化合物;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン化合物;芳香族アミン化合物;アルカノールアミン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;等のアミン化合物、またはこれらアミン化合物とカルボン酸などとの塩。
【0068】
酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、アジピン酸、シュウ酸、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸等の炭素数1〜20の有機カルボン酸;リン酸;等の酸。
【0069】
硬化促進剤(X)は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進剤(X)の使用量は、重合体(A)、重合体(B)、およびその他の重合体の合計量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0070】
<可塑剤(Y)>
本発明の硬化性組成物に可塑剤(Y)を含有させることができる。好ましい可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸イソノニル等のフタル酸エステル系可塑剤;
アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤;
ペンタエリスリトールエステルなどのアルコールエステル類;
リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤;
エポキシ化大豆油、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤;
塩素化パラフィン;
2塩基酸と2価アルコールとを反応させてなるポリエステル類などのポリエステル系可塑剤;
ヒマシ油またはヒマシ油誘導体、テルペン等の炭化水素系可塑剤;
ポリオキシプロピレングリコールやその誘導体、例えばポリオキシプロピレングリコールの水酸基をアルキルエーテルで封止したようなポリエーテル系可塑剤;
ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等のオリゴマー類等の高分子可塑剤が挙げられる。
これらのうちでも、硬化物の耐候性が向上する点でヒマシ油またはヒマシ油誘導体が好ましい。建築用などのシーリング材、接着剤、コーティング材などの用途において、耐候性は重要である。ヒマシ油またはヒマシ油誘導体としては、上記重合体(A)に用いる油脂または油脂誘導体として挙げたものを用いることができる。また上記ポリオール(p)を可塑剤として添加することもできる。
可塑剤(Y)は1種でもよく、2種以上を併用することも可能である。
可塑剤(Y)を添加する場合の添加量は、重合体(A)、重合体(B)、およびその他の重合体の合計量100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
【0071】
<空気硬化性化合物/光硬化性化合物>
本発明の硬化性組成物には、耐候性や砂埃の付着を長期にわたり改善するための、硬化物の表面改質剤として、公知の空気硬化性化合物や光硬化性化合物を含有させてもよい。
【0072】
空気硬化性化合物としては、桐油、アマニ油などに代表される乾性油;該乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体;シリコーン樹脂;ポリブタジエン、炭素数5〜8のジエンの重合体または共重合体などのジエン系重合体;さらには該重合体または共重合体の各種変性物(マレイン化変性、ボイル油変性など);空気硬化性ポリエステル化合物;などが挙げられる。
【0073】
光硬化性化合物としては、(メタ)アクリロイル基含有化合物、ポリケイ皮酸ビニルなどが挙げられ、アクリロイル基含有化合物が特に好ましい。具体的にはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルポリオールポリアクリレートなどが挙げられる。
【0074】
空気硬化性化合物および/または光硬化性化合物を使用する場合は、重合体(A)、重合体(B)、およびその他の重合体の合計量100 質量部に対して、それぞれ0.1〜50質量部が好ましい。
空気硬化性化合物と光硬化性化合物を併用すると、特に、硬化物の厚みのある部分における耐候性が向上する効果がある。
【0075】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物は、さらに、公知の各種添加剤を任意に添加、配合することができる。例えば下記の公知の添加剤が例示できる。
重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウムなどの各種炭酸カルシウム;樹脂バルーン、ガラスバルーンなどの中空体;などの充填材。溶剤。ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの脱水剤。水添ヒマシ油、脂肪酸アミドなどのチキソ性付与剤。ヒンダードフェノール系化合物などの酸化防止剤。ベンゾトリアゾール系化合物などの紫外線吸収剤。ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤。フェノキシトリメチルシランなど加水分解によりトリメチルシラノールを発生する化合物などのモジュラス調整剤。(メタ)アクリロイル基含有シラン類、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、カルボキシル基含有シラン類などのシランカップリング剤;エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤の組合せ;などの接着性付与剤。酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどの無機顔料。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機顔料。
【0076】
さらに、硬化物の、特にシーリング材としての意匠性を持たせる目的で、組成物に対して、その組成物の色と異なる色の微小体を添加することで、花崗岩や御影石のような表面外観をもった硬化物を得ることもできる。また、公知の難燃剤や防かび剤などの添加を行うことも任意である。また、塗料用途に使用されている艶消し剤を添加することもできる。
【0077】
本発明の硬化組成物にあっては、重合体(A)を用いることにより、各種の可塑剤との良好な相溶性が得られる。その理由は、重合体(A)中の炭素鎖が非極性の可塑剤との相溶性に寄与し、ポリオキシアルキレン鎖が極性を有する可塑剤との相溶性に寄与するため、重合体(A)は非極性の可塑剤や極性を有する可塑剤と良好な相溶性を示すと考えられる。
硬化性組成物における可塑剤の相溶性が向上することにより、可塑剤の硬化物表面へのブリードアウトが防止され、耐表面汚染性が良好となる。
また、重合体(A)がヒマシ油を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖を有すると、硬化物の耐候性が良好となり、可塑剤としてヒマシ油またはヒマシ油誘導体を用いるとさらに耐候性が向上する。
本発明の硬化性組成物を硬化せしめて得られる硬化物は、建築用、自動車用をはじめとして、各種分野のシーリング材、防水材、接着剤、コーティング剤などの用途において、高性能かつ外観に優れる材料として使用することができる。
【実施例】
【0078】
<合成例1:重合体(A−1)の合成>
ヒマシ油重合体であるPOLYCASTOR#30(製品名、伊藤製油社製、水酸基価155mgKOH/g)の1000gをフラスコに入れ、105℃で2時間脱水した。カールフィッシャー水分測定装置で水分を測定したところ10ppmであった。次に、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert-ブチルアルコール触媒を7.32g(固体触媒成分の濃度は4.1質量%)投入した。
反応容器内を窒素置換した後、プロピレンオキシド4000gを120℃の条件下で4時間かけて反応容器内に供給し、付加重合を行った。反応終了後、減圧にして揮発性物質を除去し、1分子中にヒマシ油重合体骨格とポリエーテル骨格を含むポリオール(p1)を得た。
【0079】
得られたポリオール(p1)の1000gをフラスコに入れ、105℃で2時間脱水した。カールフィッシャー水分測定装置で水分を測定したところ20ppmであった。次いでフラスコの内温を50℃に下げて、ジ−n−オクチル錫ビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)(製品名:ネオスタンU−860、日東化成社製)を0.05g滴下し1時間攪拌した後、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(製品名:Y−5187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)を84.2g滴下した。ポリオールの水酸基の総数に対する、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのイソシアネート基の総数のモル比(イソシアネート基/水酸基)の値は、0.70である。
その後、温度を80℃に上げて4時間反応を行い、イソシアネート基の有無をIRで測定してイソシアネート基が消滅していることを確認した。その後、80℃のまま、酸化防止剤としてイルガノックス1076(製品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を5g入れて1時間攪拌し、更にメルカプトプロピルトリメトキシシラン(製品名:KBM−803、信越シリコーン社製)を0.6g入れて1時間攪拌し重合体(A−1)を得た。
重合体(A−1)の数平均分子量(Mn)を測定したところ11500であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
また重合体(A−1)における、ヒマシ油由来の炭素鎖とプロピレンオキシド鎖の質量比(炭素鎖/プロピレンオキシド鎖)を使用原料の質量比により求めたところ、20/80であった。
【0080】
<合成例2:重合体(A−2)の合成>
合成例1において、ヒマシ油重合体に代えて、ヒマシ油変性体であるユーリックH−1824(製品名、伊藤製油社製、水酸基価68mgKOH/g)を用い、同様に脱水して水分10ppmとした。次に、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert-ブチルアルコール触媒の使用量を5.85g(固体触媒成分の濃度は4.1質量%)に変更し、プロピレンオキシドの使用量を3000gに変更したほかは合成例1と同様にして、1分子中にヒマシ油重合体骨格とポリエーテル骨格を含むポリオール(p2)を得た。
【0081】
得られたポリオール(p2)1000gをフラスコに入れ、合成例1と同様に脱水して水分10ppmとした。γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランの使用量を64.0gに変更して、イソシアネート基/水酸基の値を0.97としたほかは合成例1と同様にして重合体(A−2)を得た。
重合体(A−2)の数平均分子量(Mn)は8000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
また重合体(A−2)における、炭素鎖/プロピレンオキシド鎖の質量比を合成例1と同様にして求めたところ、25/75であった。
【0082】
<合成例3:重合体(A−3)の合成>
合成例1において、ヒマシ油重合体に代えて、ヒマシ油変性体であるユーリックH−1824(合成例2と同じ)を用い、同様に脱水して水分10ppmとした。次に、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert-ブチルアルコール触媒の使用量を9.50g(固体触媒成分の濃度は4.1質量%)に変更し、プロピレンオキシドの使用量を5500gに変更したほかは合成例1と同様にして、1分子中にヒマシ油重合体骨格とポリエーテル骨格を含むポリオール(p3)を得た。
【0083】
得られたポリオール(p3)1000gをフラスコに入れ、合成例1と同様に脱水して水分10ppmとした。γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランの使用量を38.6gに変更して、イソシアネート基/水酸基の値を0.97としたほかは合成例1と同様にして重合体(A−3)を得た。
重合体(A−3)の数平均分子量(Mn)は13000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
また重合体(A−3)における、炭素鎖/プロピレンオキシド鎖の質量比を合成例1と同様にして求めたところ、15/85であった。
【0084】
<合成例4:重合体(B−1)の合成>
ジプロピレングリコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが16000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレンジオールを得た。このポリオキシプロピレンジオールの水酸基のモル数に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドをメタノール溶液として添加し、加熱減圧下でメタノールを留去して、水酸基をナトリウムアルコキシドとした。続いて、過剰量の塩化アリルを添加して反応させた。未反応の塩化アリルを除去後、副生した無機塩を除去精製して、アリル基末端のオキシアルキレン重合体を得た。
得られたアリル基末端のオキシアルキレン重合体500gを窒素置換された反応容器に仕込み、1,1,3,3−テトラメチルジビニルシロキサン白金錯体(以下VTS錯体と表す)を白金が2ppmになるように添加して、さらに30分攪拌した。次に、ジメトキシメチルシランをアリル基の68モル%反応分となるように加え、70℃で5時間反応させた。反応終了後、減圧にして揮発性物質を除去すると、23℃における粘度が15000mPa・s、数平均分子量(Mn)が16500分子量分布(Mw/Mn)=1.5の淡黄色透明である、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(B−1)500gを得た。重合体(B−1)の1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は、1.35個であった。
【0085】
<合成例5:重合体(B−2)の合成>
グリセリンを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが20000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレントリオールを得た。以下、合成例4と同様にしてアリル基末端のオキシアルキレン重合体を得た。
得られたアリル基末端のオキシアルキレン重合体500gに対して、反応させるジメトキシメチルシランの量をアリル基の76モル%反応分とした他は合成例4と同様にして、23℃における粘度が19000mPa・s、数平均分子量(Mn)が20500、分子量分布(Mw/Mn)=1.5の淡黄色透明である、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(B−2)500gを得た。重合体(B−2)の1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は、2.3個であった。
【0086】
<合成例6:重合体(B−3)の合成>
ジプロピレングリコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが16000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレンジオールを得た。得られたポリオキシプロピレンジオール1000gをフラスコに入れ105℃で2時間脱水した。カールフィッシャー水分測定装置で水分を測定したところ10ppmであった。次いでフラスコの内温を50℃に下げて、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(製品名:Y−5187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)を28.9g滴下した。ポリオキシプロピレンジオールの水酸基の総数に対する、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのイソシアネート基の総数のモル比(イソシアネート基/水酸基)の値は、0.97である。
その後、温度を80℃に上げて6時間反応を行い、イソシアネート基の有無をIR測定で確認したところ、イソシアネート基が消滅していることを確認した。その後、80℃のまま、酸化防止剤としてイルガノックス1076(製品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を5g入れて、2時間攪拌し、23℃における粘度が18000mPa・s、数平均分子量(Mn)が17000、分子量分布(Mw/Mn)=1.5である、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(B−3)を得た。重合体(B−3)の1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は、1.95個であった。
【0087】
<合成例7:化合物(D−1)の合成>
ヒマシ油変性体であるユーリックH−1824(合成例2と同じ)の1000gをフラスコに入れ、105℃で2時間脱水した。カールフィッシャー水分測定装置で水分を測定したところ10ppmであった。次いでフラスコの内温を50℃に下げて、ジ−n−オクチル錫ビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)(合成例1と同じ)を0.05g滴下し1時間攪拌した後、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(合成例1と同じ)を185gを滴下した。ヒマシ油変性体の水酸基の総数に対する、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのイソシアネート基の総数のモル比(イソシアネート基/水酸基)の値は、0.70である。
その後、温度を80℃に上げて6時間反応を行い、イソシアネート基の有無をIR測定したところ、イソシアネート基が消滅していることを確認した。その後、80℃のまま、酸化防止剤としてイルガノックス1076(合成例1と同じ)を5g入れて、2時間攪拌し、化合物(D−1)を得た。化合物(D−1)の1分子中に存在する反応性ケイ素基の平均数は1.6個であった。
【0088】
<合成例8:アクリル重合体(C)を含む混合物(C−1)の合成>
本例では、合成例4で得た重合体(B−1)の存在下で、アクリル重合体を構成する不飽和基含有単量体を重合させる方法で、重合体(B−1)とアクリル重合体(C)を含む重合体混合物(C−1)を製造した。
攪拌機付きの耐圧反応器に重合体(B−1)を140g入れて、約67℃に昇温した。反応容器内温を約67℃に保ち、窒素雰囲気下、攪拌しながら、メタクリル酸メチル12.5g、アクリル酸−n−ブチル18g、メタクリル酸−n−ブチル15g、アクリル酸イソオクチル14.5g、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン0.3g、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン0.2g、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(製品名:V65、和光純薬株式会社製)0.75gの混合溶液を前記重合体(B−1)中に8時間かけて滴下して重合を行った。こうして重合体(B−1)の存在下で、反応性ケイ素機基としてメチルジメトキシシリル基を有する(メタ)アクリレート共重合体を合成した。
得られた「重合体(B−1)とアクリル重合体(C)を含む重合体混合物(C−1)」を、ヘキサン中で溶解させた後、遠心分離を行い、抽出し、アクリル重合体(C)の数平均分子量(Mn)を測定したところ、19000であった。
【0089】
<実施例1〜9および比較例1〜7>
上記合成例で得た各成分および下記の市販の成分を用い、表1に示す配合で硬化性組成物を調製し、特性を評価した。表に示す配合割合の単位は「質量部」である。
すなわち、表に示す配合成分のうち、硬化促進剤を除く全成分を3本ペイントロールで混練した後、硬化促進剤を添加して混練して硬化性組成物を得た。
トナー(HAMATITE スーパーII(製品名)、横浜ゴム社製、ダークグレー)は、耐候性試験の時のみ配合した。
【0090】
<耐表面汚染性確認試験>
アルミ板に幅2.5cm、長さ10cm、厚み5mmの枠を作成し、その枠の中に得られた硬化性組成物を充填した。その試験片を温度23℃、湿度65%の条件で1週間養生し、引き続いて、温度50℃、湿度65%の条件で1週間養生した。
こうして硬化した試験片(白色)を旭硝子株式会社京浜工場内に設置し、設置直後および4週間後の硬化物表面の色を、それぞれ測定器を用いて数値化(L、a、b)した。測定器は分光測色計(MINOLTA社製、製品名:SPECTROPHOTOMETER CM-508d)使用した。こうして得られた設置直後の硬化物表面の色の数値と、4週間後の硬化物表面の色の数値との差から ΔE=(Δa+Δb+ΔL1/2 の式を用いて計算し、色差(△E)を求めた。色差(△E)の値が1以上、20未満である場合は○、20以上である場合は×として評価した。その結果を表1に示す。
【0091】
<耐候性試験>
アルミ板上に、得られた硬化性組成物を幅2.5cm、長さ10cm、厚み0.2mmの大きさに塗布した。その試験片を温度23℃、湿度65%の条件で1週間養生し、引き続いて、温度50℃、湿度65%の条件で1週間養生した。
こうして硬化した試験片(黒色)に対して、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いて耐候性試験を行った。試験開始から200時間経過した時点から50時間毎に表面を観察し、表面が黒色から白化した時間を測定した。白化したかどうかは耐候性試験を実施している試験体を、耐候性試験を実施していない基準品と並べて屋内の蛍光灯光源の下に設置し、耐候性試験を実施している試験体の表面が、基準品と比べて白くなったかを目視により判定した。
試験開始から白化までの時間が500時間未満の場合を×、500時間以上、1000時間未満の場合を○、1000時間以上の場合を◎として評価した。その結果を表1に示す。
【0092】
表1中の(1)〜(13)は、下記のものを使用した。
(1)充填剤、商品名:白艶華CCR(白石工業社製)。
(2)充填剤、商品名:ホワイトンSB(白石カルシウム工業社製)。
(3)充填剤、商品名:R820(石原産業社製)。
(4)チキソ性付与剤、商品名:ディスパロン#6500(楠本化成社製)。
(5)可塑剤、商品名:EL3020:分子量3000のポリオキシプロピレングリコール(旭硝子社製)。
(6)可塑剤、商品名:URIC H−30(伊藤製油社製)
(7)脱水剤、商品名:KBM−1003(信越化学工業社製)、ビニルトリメトキシシラン。
(8)接着付与剤、商品名:KBM−603(信越化学工業社製)、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン。
(9)接着付与剤、商品名:KBM−403(信越化学工業社製)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
(10)安定剤、化合物名:2−[2H−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、商品名:チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
(11)安定剤、化合物名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、商品名:イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
(12)安定剤、化合物名:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、商品名:チヌビン765(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
(13)硬化促進剤、有機錫触媒、ジブチルスズオキシド/フタル酸ジオクチルの反応物、三共有機合成社製。
【0093】
【表1】

【0094】
表1の結果に示されるように、重合体(A)を含有する実施例1〜9の硬化性組成物は、可塑剤がPPGのような極性骨格を持つものであってもヒマシ油のような非極性骨格を持つものであっても耐表面汚染性も良好である。
また重合体(A)を含む実施例1〜9の硬化性組成物はいずれも耐候性が良好であり、特に可塑剤としてヒマシ油を用いた実施例2,4,6,8,9は、耐候性がさらに優れていた。このことからヒマシ油に由来する構造が耐候性の向上に寄与することがわかる。
これに対して、重合体(A)を用いず重合体(B)を用いた比較例1〜5のうち、可塑剤としてポリオキシプロピレングリコールを使用した比較例3,5は、耐表面汚染性には優れるがヒマシ油由来の構造を有しないため耐候性は劣る。また可塑剤としてヒマシ油を使用した比較例1,2,4は耐候性には優れるが、耐表面汚染性が良くない。
比較例6は重合体(A)を用いず化合物(D−1)を用いた例である。化合物(D−1)はヒマシ油に由来する構造を有するため耐候性は良好であるが、可塑剤としてポリオキシプロピレングリコールを使用したため耐表面汚染性が良くない。
比較例7は、重合体(A)を用いず重合体混合物(C−1)を用い、可塑剤としてポリオキシプロピレングリコールを使用した例である。重合体混合物(C−1)は重合体(B)とアクリル系重合体(C)を含有する。この例では耐候性は優れるが、耐表面汚染性に劣る。アクリル骨格が耐候性の向上に寄与するものの、汚れを付着させやすいため耐表面汚染性が劣ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を構成している脂肪酸に由来する炭素鎖、ポリオキシアルキレン鎖、および反応性ケイ素基を有する重合体(A)と、硬化促進剤(X)を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記油脂がヒマシ油である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記反応性ケイ素基が下式(1)で表される基である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
−Q−SiX3−a・・・(1)
[式中、Qは、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1〜3の整数を示す。ただし、Rが複数存在するとき複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、Xが複数存在するとき複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
重合体(A)の数平均分子量が2000〜50000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
重合体(A)における、前記炭素鎖と前記ポリオキシアルキレン鎖の質量比(炭素鎖/ポリアルキレン鎖)が5/95〜60/40である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらに可塑剤(Y)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記可塑剤(Y)としてヒマシ油またはヒマシ油誘導体を含む、請求項6記載の硬化性組成物。