説明

硬化性組成物

【課題】ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの発生量が少ない硬化性組成物の提供。
【解決手段】(a)(メタ)アクリレート、(b)重合開始剤及び(c)3価のバナジウム触媒を含有してなる硬化性組成物。(d)4価のバナジウム触媒を含有してなる該硬化性組成物。(e)酸性リン酸化合物を含有してなる該硬化性組成物。(a)(メタ)アクリレートが(a−1)アルキル(メタ)アクリレート及び(a−2)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有し、(c)3価のバナジウム触媒がバナジウム(III)アセチルアセトネートであり、(d)4価のバナジウム触媒がバナジル(IV)アセチルアセトネート及び/又はバナジウム(IV)ナフテナートである該硬化性組成物。該硬化性組成物を含有してなる接着剤組成物。該接着剤組成物を使用して作製したスピーカー、モーター、筐体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。本発明は、例えば、アクリル系硬化性組成物、常温硬化型アクリル系接着剤組成物によって接合又は結合した構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
常温硬化型アクリル系接着剤組成物として、二剤型のアクリル系接着剤が知られている。代表的な例として、第二世代のアクリル系接着剤(SGA)が知られている。
【0003】
SGAは、使用する二剤の形態から2種類に分けられる。一方は、一主剤一副剤型(プライマー型)といわれるもので、アクリル系モノマーを主成分とする主剤に硬化開始剤を添加し、一主剤とし、溶剤等に硬化促進剤を溶解又は分散した液をプライマー(一副剤)として使用する。他方は、二剤の一方にアクリル系モノマーと硬化開始剤を、他方に、アクリル系モノマーと硬化促進剤を添加した二主剤型である。
【0004】
これらのうち、二主剤型SGAは、二剤型であるにもかかわらず、その高い反応伝搬性から正確な計量を必要とせず、作業性に優れる。しかも、油面接着が可能であり、剪断接着強さ、剥離接着強さ、衝撃接着強さのバランスに優れる。又、ハミ出し部分の硬化も良好であるために広く用いられている。
【0005】
SGAの技術としては以下の特許文献1〜4が挙げられる。特許文献1,2はスピーカー用途のSGAである。特許文献3,4はモーター用途のSGAである。これらの特許では硬化促進剤や還元剤として、チオ尿素誘導体、β−ジケトンキレート、β−ケトエステル、遷移金属塩が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−159835号公報
【特許文献2】特開平11−71436号公報
【特許文献3】特開2002−332320号公報
【特許文献4】特開2002−332319号公報
【発明の開示】
【0007】
硬化性組成物として、硬化時に人体に有害なホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの発生を低減することが求められている。例えば、スピーカー、モーター、筐体等の分野で、アルデヒドの抑制が求められている。
【0008】
本発明は、硬化性組成物を提供することを目的としている。
【0009】
本発明は、(a)(メタ)アクリレート、(b)重合開始剤及び(c)3価のバナジウム触媒を含有してなる硬化性組成物であり、(d)4価のバナジウム触媒を含有してなる該硬化性組成物であり、(e)酸性リン酸化合物を含有してなる該硬化性組成物であり、(a)(メタ)アクリレートが(a−1)アルキル(メタ)アクリレート及び(a−2)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有してなる該硬化性組成物であり、(c)3価のバナジウム触媒がバナジウム(III)アセチルアセトネートである該硬化性組成物であり、(d)4価のバナジウム触媒がバナジル(IV)アセチルアセトネート及び/又はバナジウム(IV)ナフテナートである該硬化性組成物であり、該硬化性組成物を含有してなる接着剤組成物であり、該接着剤組成物を使用して被着体を接着してなる接合体であり、該接着剤組成物を使用して作製してなるスピーカーであり、該接着剤組成物を使用して、コーン、ボイスコイル及びダンパーからなる三点部を接着してなるスピーカーであり、該接着剤組成物を使用して作製してなるモーターであり、該接着剤組成物を使用して作製してなる筐体であり、該接着剤組成物を使用して被着体を接着してなる接着方法であり、ホルムアルデヒド類の含有量が30ppm以下である該硬化性組成物の硬化体であり、アセトアルデヒド類の含有量が50ppm以下である該硬化性組成物の硬化体である。
【0010】
本発明は、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの発生量が少ないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スピーカーの断面図である。
【図2】スピーカー3点部の構造を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(a)(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルから選ばれるアクリル系化合物をいう。
【0013】
(a)(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、1,2−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「ビスコート#540」、昭和高分子社製「ビスコートVR−77」)、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ポリエチレングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール変性ピスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、(a−1)アルキル(メタ)アクリレート及び(a−2)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0015】
(a−1)アルキル(メタ)アクリレートとしては、一般式(A)で示される(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
一般式(A)
1−O−R1(式中、Z1は(メタ)アクリロイル基を示し、R1 はアルキル基を示す。)
【0017】
一般式(A)で示される(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
1 は、アルキル基を示す。R1 は、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が最も好ましい。
【0019】
(a−2)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、一般式(B)で示される(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
一般式(B)
−O−(RO) p −H(式中、Z1は(メタ)アクリロイル基を示し、Rはアルキレン基を示し、pは1〜10の整数を表す。)
【0021】
一般式(B)で示される(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
は、アルキレン基を示す。Rは、−C24−、−C36−、−CH2CH(CH3)−、−C48−又は−C612−が好ましい。pは1〜10の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましい。
【0023】
(a−1)及び(a−2)を併用した場合、その組成比は質量比で(a−1):(a−2)=10〜90:10〜90が好ましく、25〜75:25〜70がより好ましく、40〜60:40〜60が最も好ましい。
【0024】
(b)重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。
【0025】
有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、反応性の点で、クメンハイドロパーオキサイド及び/又はベンゾイルパーオキサイドが好ましく、クメンハイドロパーオキサイドがより好ましい。
【0026】
(b)重合開始剤の使用量は、(a)(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.2〜10質量部が好ましく、0.5〜5.0質量部がより好ましく、0.8〜3.0質量部が最も好ましい。
【0027】
(c)3価のバナジウム触媒は、例えば、(b)重合開始剤と反応し、ラジカルを発生し、モノマーの重合を促進させるものであれば使用できる。
【0028】
(c)3価のバナジウム触媒としては、公知のものであっても構わない。(c)3価のバナジウム触媒としては、バナジウム(III)アセチルアセトネート、2,4−ペンタンジオン酸バナジウム(III)及びナフテン酸バナジウム(III)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、バナジウム(III)アセチルアセトネートが好ましい。
【0029】
(c)3価のバナジウム触媒の使用量は、(a)(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.05〜1.0質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部が最も好ましい。
【0030】
(c)3価のバナジウム触媒と(d)4価のバナジウム触媒を併用した場合、(c)3価のバナジウム触媒の使用量は、(a)(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜1.0質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。
【0031】
(d)4価のバナジウム触媒は、(b)重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する4価のバナジウム触媒であれば使用できる。(d)4価のバナジウム触媒としては、公知のものであっても構わない。
【0032】
(d)4価のバナジウム触媒としては、ナフテン酸バナジウム(IV)、バナジル(IV)アセチルアセトネート及びビス(2,4−ペンタンジオン酸)酸化バナジウム(IV)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、バナジウム(IV)アセチルアセトネートが好ましい。
【0033】
(d)4価のバナジウム触媒の使用量は、(a)(メタ)アクリレート、100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.05〜1.0質量部がより好ましく、0.08〜0.5質量部が最も好ましい。
【0034】
本発明の硬化性組成物は、接着性が向上する点で、(e)リン酸エステル化合物を使用することが好ましい。
【0035】
(e)リン酸エステル化合物としては、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有するリン酸エステルが挙げられる。ビニル基又は(メタ)アクリル基を有するリン酸エステルとしては、(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジブチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジオクチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリエチレングリコールアシッドフォスフェート及び(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートモノエタノールアミンハーフソールト等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
(e)リン酸エステル化合物の使用量は、(a)(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.5〜5.0質量部がより好ましく、0.8〜3.0質量部が最も好ましい。
【0037】
所望により、エラストマー、シランカップリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、パラフィン、可塑剤、充填剤、防錆顔料及び着色剤等の既に知られている物質を使用することもできる。
【0038】
本発明の硬化性組成物は、第一剤に少なくとも(b)有機過酸化物を含有し、第二剤に少なくとも(c)チオ尿素誘導体を含有する、二剤型の硬化性組成物として使用しても良い。
【0039】
本発明の硬化性組成物は、接着剤組成物として使用できる。本発明の接着剤組成物硬化性組成物は、モーター、トランス、スピーカー、筐体等の接着に使用できる。
【実施例】
【0040】
以下実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。各物質の使用量の単位は特記しない限り、質量部で示す。
【0041】
〔実施例1、2、3及び比較例1〕
表1に示す種類の原材料を表1に示す組成で混合して接着剤組成物を調製し、得られた接着剤組成物について、引張剪断接着強さ、硬化後のアルデヒド類の含有量、テドラーバッグ法によるアルデヒド放散量を測定した。各種物性は、次のように測定した。これらの結果を表1に示した。酸性リン酸化合物として、(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアシッドフォスフェート(城北化学社製、JPA514)を使用した。
【0042】
【表1】

【0043】
[引張剪断接着強さ(せん断接着強さ)]
JIS K−6850に従い、試験片(100mm×25mm×1.6mm、SPCC−Dサンドブラスト処理)の片面に接着剤組成物を塗布し、もう一方の試験片(100mm×25mm×1.6mm、SPCC−Dサンドブラスト処理)と重ね合わせ、重ねた部分をプッシュプルゲージ(KOMURA社製、「model 1S」)にて荷重68.6N(7kgf)で5〜6秒加圧して貼り合わせた。室温(23℃)で24時間養生し、これを引っ張り剪断接着強さ測定用試料とした。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/分の条件で、測定した。
【0044】
[硬化後のアルデヒド類の含有量]
DNPH−塩酸水溶液を作製した。300cc三角フラスコに2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)0.3gを計りとり、2mol/Lの塩酸300ccを入れて溶解した。この溶液をブフナーロート等で吸引ろ過した。ろ液を100ccずつ分液ロートに取り分けて、それぞれへキサン150ccを加えて10分間振とう攪拌した。水相溶液を取り出してDNPH−塩酸水溶液とした。
【0045】
1cm×1cm×10cmの、長方形の形状をしたポリエチレン容器に接着剤組成物5gからなる硬化物を23℃雰囲気下で作製し、23℃で5日養生した。養生後、硬化物を凍結粉砕し、0.25gを三角フラスコに入れ、THF(テトラヒドロフラン)40ccを加え、攪拌子を入れ、溶解攪拌した。DNPH−塩酸水溶液2cc加え、1時間攪拌した。1時間後に純水8ccを加え、メンブランフィルターでろ過し、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定した。HPLCのカラムは、WatersSymmetryC18φ3.9×150ccを使用した。溶離液として、A液とB液を使用した。A液は、アセトニトリル/純水=45/55 (容量比) を使用した。B液は、THFを使用した。グラジエントとしては、A液100%で10分保持し、次の1分でB液100%に切り替えた。サンプルを注入すると共に、10分間B液100%で保持した。その後1分間でA液100%に切り替えた。流量1.3cc/min、注入量20μLとした。検出方法として、UV(360nm)を使用した。
【0046】
[スピーカーの作製]
23℃、湿度50%の条件下で、図1に示すスピーカーを組み立てた。スピーカーは、ボトムプレート1、リング状のマグネット2、リング状のトッププレート3を積層し、接着した界磁部にフレーム4を結合し、このフレーム4の周縁部5にコーン6の周縁部(コーンエッジ)7を結合し、このコーン6の中央部にボイスコイル8を結合し、このボイスコイル8の中間部をダンパー9で保持してボイスコイル8の下部をボトムプレート1の中央部にはまりこむように構成している。スピーカーは、コーン6の中央上面にダストキャップ10を貼り付けて構成している。
【0047】
コーン6、ボイスコイル8及びダンパー9からなるスピーカー3点部の接着は図2に示すようになっている。ボイスコイル8は、ボイスコイル8の外周に紙テープ11を巻き付け、さらに紙テープ11の外周にコイル12を巻き付けて構成している(図中、丸印で明示した部分はスピーカー3点部の接着箇所を示す。スピーカー3点部は接着剤組成物13により接着している)。
【0048】
ダンパー9(外径60mm×内径20mm×厚さ0.25mm)の材料として綿を用いた。この材料にフェノール系熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、図1に示すダンパー9の形状に加熱成形した。尚、フレーム4の材料としては表面をクロメートメッキ処理した鉄を用いた。得られたダンパー9と図2に示す紙テープ11及びコイル12を巻き付けたボイスコイル8(アルミニウム製)とを、ボイスコイルの接合部が紙である箇所(図2の丸印で示した箇所)を介して接着し、又、ダンパー9とフレーム5を接着することにより、図1に示すスピーカー(紙テープ11及び接着剤組成物13は図示していない)を作製してサンプルとした。接着方法としては、接合部に0.2gの接着剤組成物を塗布し、室温で24時間養生させ、接着させる方法を用いた。
【0049】
[テドラーバッグ法によるアルデヒド放散量]
一口スリーブ付きの10Lテドラーバッグ(GLサイエンス社製AA―10(スリーブ外径φ7))にシリコンチューブ(タイガースポリマ製:φ5×9mm)を接続しストップバルブを2個取り付けた。その後、テドラーバッグに純窒素ガスを充填した。充満させた純窒素ガスをアスピレータで抜いた。純窒素ガスの充填と排気を3回繰り返し、洗浄を完了した。テドラーバッグの一端をはさみで切断した。スピーカーをテドラーバッグの中に入れ、テドラーバッグを密封した。テドラーバッグ内に純窒素ガスを充填した。アスピレータで中の窒素ガスを抜いた。一定量(4L)の純窒素ガスを、フローメータを使用してテドラーバッグに充填し、シリコンチューブに取り付けた2個のストップバルブを閉じた。熱風式乾燥機の中にテドラーバッグを入れ、シリコンチューブを槽外に出し、クリップで固定した。この状態のまま、65℃で2時間加熱した。
【0050】
DNPHカートリッジ(Water社製Sep−Pak Long)を使用して、アルデヒドを採取した。DNPHカートリッジの上流側をシリコンチューブに連結し、DNPHカートリッジの下流側をポンプ(柴田科学製MP−Σ100H)及び回転流量計(シナガワDC−1C)に連結した。2個のストップバルブを開け、採取速度0.4〜0.5L/minでテドラーバッグ内のガスを全量採取した。
【0051】
アセトニトリルを一定量(3〜6ml)注射器に取り、DNPHカートリッジの一端に連結し、アセトニトリルを注入し、ゆっくり抽出した。受器として試験管を使用した。溶媒が出た後に注射器に少量の空気を取り、DNPHカートリッジ内に残存する溶媒全てを留去した。抽出後のアセトニトリルは、高速液体クロマトグラフを用いて分析した。分析装置としては、島津製作所製HPLC VP、検出器UV360nm、カラムGLサイエンス製INTERSIL ODS−80を使用した。展開液は、アセトニトリル55%−水45%からなる液を使用した。カラム温度は、40℃とした。
【0052】
表1から以下のことが判明した。3価のバナジウム触媒を使用することにより、硬化性組成物の硬化後のホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの含有量や放散量が減少した。特にホルムアルデヒドの含有量や放散量が顕著に減少した。3価のバナジウム触媒と4価のバナジウム触媒を併用することにより、硬化性組成物の硬化後にホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの含有量や放散量が減少することが確認された。
【0053】
本発明により、硬化後のホルムアルデヒド類の含有量を30ppm以下、より好ましくは25ppm以下に低減できる。本発明では、硬化後のアセトアルデヒド類の含有量を50ppm以下、より好ましくは35ppm以下に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、硬化時に発生するホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの量を低減した硬化性樹脂組成物が得られる。本発明の接着剤組成物を使用して構造体(スピーカー、モーター、筐体等)を作製した場合、人体に有害な物質を抑制した構造体を提供できる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボトムプレート
2 マグネット
3 トッププレート
4 フレーム
5 フレームの周縁部
6 コーン
7 コーンの周縁部(コーンエッジ)
8 ボイスコイル
9 ダンパー
10 ダストキャップ
11 紙テープ
12 コイル
13 接着剤組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリレート、(b)重合開始剤及び(c)3価のバナジウム触媒を含有してなる硬化性組成物。
【請求項2】
(d)4価のバナジウム触媒を含有してなる請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(e)酸性リン酸化合物を含有してなる請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(a)(メタ)アクリレートが(a−1)アルキル(メタ)アクリレート及び(a−2)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有してなる請求項1〜3のうちの1項記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(c)3価のバナジウム触媒がバナジウム(III)アセチルアセトネートである請求項1〜4のうちの1項記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(d)4価のバナジウム触媒がバナジル(IV)アセチルアセトネート及び/又はバナジウム(IV)ナフテナートである請求項2〜5のうちの1項記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちの1項記載の硬化性組成物を含有してなる接着剤組成物。
【請求項8】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して被着体を接着してなる接合体。
【請求項9】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して作製してなるスピーカー。
【請求項10】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して、コーン、ボイスコイル及びダンパーからなる三点部を接着してなるスピーカー。
【請求項11】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して作製してなるモーター。
【請求項12】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して作製してなる筐体。
【請求項13】
請求項7記載の接着剤組成物を使用して被着体を接着してなる接着方法。
【請求項14】
ホルムアルデヒド類の含有量が30ppm以下である請求項1〜6のうちの1項記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項15】
アセトアルデヒド類の含有量が50ppm以下である請求項1〜6のうちの1項記載の硬化性組成物の硬化物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285605(P2010−285605A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108863(P2010−108863)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】