説明

硬化性組成物

本発明は、(a)23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物;(b)メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;及び(c)1種類以上の重合開始剤;を含む硬化性組成物を提供する。本硬化性樹脂組成物は、それ自体硬化性被覆のために、具体的にはステレオリソグラフィー及び3D物体を形成する3次元印刷用途のような他の用途のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、耐衝撃性改良剤としてのブロックコポリマー、及び光開始剤を含む硬化性組成物に関する。更に、本発明は、硬化性組成物を製造する方法、及び、ラピッドプロトタイピング又はフリーフォーム造形における、被覆組成物、塗料、成形組成物、浸漬樹脂、注型樹脂、含浸樹脂、又は積層樹脂としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂は、溶媒も、或いは水を含む場合には多量のエネルギーを消費する水乾燥手段も必要としない「生」溶液と考えられるので、継続して興味がもたれている。この領域において、硬化後に高い靱性及び向上した熱特性を与える光硬化性樹脂組成物を提供することに関心が高まっている。かかる望ましい特性は3次元印刷用途において特に求められている。
【0003】
例えば、液体ベースのソリッドイメージングは、光で成形可能な液体を表面上に薄層で被覆して、液体が画像様に固化するように、化学線照射、例えばステレオリソグラフィー(SL)用のレーザーによって指向されるUVに像様曝露するプロセスである。その後、従前の液体層又は従前に固化させた部分の上に光で成形可能な液体の新しい薄層を被覆する。次に、複数の部分を画像様に固化させ、新しく硬化させた領域の部分と従前に硬化させた領域の部分との間の接着を誘発させるために、新しい層を像様露光する。それぞれの像様露光は、光硬化物体の適当な横断面に関係する形状のものであり、全ての層が被覆され、全ての曝露が完了した際に、一体化した光硬化物体を周りの液体組成物から取り出すことができるようになっている。
【0004】
ソリッドイメージングプロセスの最も重要な有利性の1つは、コンピューター援用デザインによってデザインされた実際の物品を迅速に製造する能力である。製造される物品の精確度を改良するように適合された組成物及びプロセスによって大きな進歩がなされている。また、組成物の開発者によって、光硬化物品の引張り弾性率又は熱撓み温度(HDTとも呼ばれ、材料の試料が特定の負荷下で変形する温度である)のような個々の特性の改良に向けた大きな進歩がなされている。通常は、より高いHDTを有する材料はより良好に機能する、即ち高熱状況においてより良好に変形に耐える。
【0005】
ラピッドプロトタイピングのユーザーは、例えば射出成形又は押出によって得られるものと同等の良好な機械特性を有する機能部品を迅速に得ることを求めている。更に、例えば(1)成形の終了時に部品のより容易な取り扱いを可能にする高い生強度;及び(2)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)及びポリカーボネート熱可塑性ポリマーのものと匹敵する非常に優れた靱性を達成する部品を製造することが望ましい。これらの要求は、ラピッドプロトタイピングに対して消費者が要求しているだけでなく、SL又は噴射用樹脂をラピッドマニュファクチャリング用途のために用いる場合には必須である。
【0006】
更に、例えばステレオリソグラフィープロセスで硬化させると、原料であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)及びポリカーボネート(PC)の特性及び触感を有する物品を生成する明澄な光硬化性組成物を製造することが望ましいであろう。エポキシ−アクリル樹脂混合物をベースとする配合物が、レーザーベースのステレオリソグラフィープロセスのために特に重要である。これらの配合物は、バランスの取れた機械特性を得るためにタフナーを更に必要とする。
【0007】
EP−1290088においては、主としてメチルメタクリレート単位から構成される少なくとも1つのブロックを有するトリブロックコポリマーをエポキシ組成物に加えると改良された耐衝撃性を有するエポキシ材料が得られることが開示されている。
【0008】
特許出願WO−03/063572においては、硬化性樹脂、通常はエポキシ樹脂、少なくとも1種類の二酸及び少なくとも1種類のジアミンの縮合から得られるポリアミド、及び場合によってはSBM、BM、及びMBMコポリマーから選択される耐衝撃性改良剤を含む組成物から得られる改良された耐衝撃性を有する熱硬化性材料が記載されている。
【0009】
ステレオリソグラフィーにおいてそのまま用いられる硬化樹脂及びそれから製造される生成物の特性、並びに未硬化の組成物及び中間の生モデル及び最終硬化生成物の初期保存特性を改良する必要性が一般に存在する。生モデルとは、層の堆積と照射を繰り返すことによって得られる輪郭が明瞭な形状の物体である。生モデルは、一般に、完全には硬化しておらず、最終部品よりも低い強度(生強度)を有し、したがって後硬化プロセスにかけなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP−1290088
【特許文献2】WO−03/063572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、それ自体光硬化性被覆として、特にステレオリソグラフィー及び3D物体を形成する他の3次元印刷用途のために用いるのに好適で、最新技術のものと比較して改良された特性を示す樹脂組成物を提供することである。特定の要求にしたがって硬化物品の耐衝撃性を改良することが更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで、驚くべきことに、樹脂がタフナーとしてメチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマーを含むと、硬化性樹脂、好ましくは例えばエポキシ材料のようなカチオン性開環性縮合材料を有する光硬化性樹脂の高い耐衝撃性、高い生曲げ弾性率、高い曲げ弾性率、及び高い引張り弾性率が大きく向上することが見出された。
【0013】
この改良された特性の組は、硬化部品を大きく強靱化する新しい添加剤を含ませることによって与えられる。通常、単純なタフナーを加えると靱性及び可撓性の向上が得られるが、熱撓み温度(HDT)、又は生強度及び全体的な生成物特性のいずれかの低下を伴う。本開示においては、用いる添加剤は、部品を強靱化するだけでなく、相分離プロセスによって最終部品の全体的な機械特性も向上させる。更に、好ましいプロセス(レーザー又はデジタルUV硬化による3D印刷)において用いられる迅速照射曝露条件中に相分離を行わせることは通常困難である。記載する特定の組成物は、特にナノメートルレベルのポリマー鎖の自己配列を伴う強靱化相分離を達成し、これが見出された改良された特性の原因であると考えられる。このタイプの添加剤を用いて得られる樹脂は、可撓性及びHDTのような他の特性を損なうことなくより良好な全体的な特性の組を示す。この樹脂は液体又はペースト状の液体であってよい。
【0014】
したがって、本発明の対象は、
(a)23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物;
(b)メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;及び
(c)1種類以上の重合開始剤;
を含む硬化性組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の成分(a)として、本組成物は、23℃において液体であり、開環反応によって重合しうる、モノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物をベースとする樹脂を含む。
【0016】
本発明の範囲内において用いる「23℃において液体」という用語は、Brookfieldからの技術データシートにしたがってスピンドルSC4−18又はSC4−21を有するBrookfieldモデルRVT又はBrookfieldモデルLVT−DV−IIを用いて測定した、30℃において1〜3000mPa・sの間の粘度を意味する。スピンドルは、RVT又はLVT粘度計のいずれにおいても用いることができる。速度は、RVT粘度計については0.5〜100rpmの間であり、LVT−DV−II粘度計については0.6〜30rpmの間である。
【0017】
成分(a)のモノマー又はオリゴマーは、好ましくは、脂環式、芳香族、及び水素化芳香族エポキシ樹脂組成物、並びにこれらの任意の混合物から選択されるエポキシ樹脂である。
【0018】
「エポキシ樹脂」という用語は、好ましくは室温(23℃)又はより高い温度において液体であるオキシランタイプの通常のエポキシ樹脂を示す。これらのエポキシ樹脂は、一方においてはモノマー、オリゴマー、又はポリマーであってよく、他方においては脂肪族、脂環式、複素環式、又は芳香族であってよい。疑義を避けるために、エポキシ含有化合物(a)が更なる官能基を有する場合には、これはそれにもかかわらずエポキシ含有成分(a)として数える。かかるエポキシ樹脂の例としては、耐衝撃性改良剤(b)と相溶性のポリマー、例えばエポキシ化ポリブタジエンなど、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、o−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル、及びテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルを言及することができる。また、組み合わせが液体樹脂になるような固体エポキシを含む液体エポキシの混合物も考えられる。したがって、固体エポキシは、23℃の雰囲気温度より僅かに高い融点を有するものとして定義され、雰囲気温度、例えば23℃において流動する液体である液体エポキシ中に可溶である。好ましくは、ステレオリソグラフィー又は噴射用途に関しては、雰囲気粘度は1000mPa・s未満、より好ましくは500mPa・s未満、更により好ましくは250mPa・s未満である。
【0019】
本発明によれば、相溶性という用語は、樹脂組成物(a)と耐衝撃性改良剤(b)とが、その未硬化状態において硬化性組成物中に混和性であり、即ち使用前の保存中に早期に相分離しないことを意味する。
【0020】
芳香族基を有するエポキシ樹脂の水素化芳香族誘導体が更に好ましい。また、少なくとも2種類のこれらの樹脂の混合物を用いることもできる。水素化又はペル水素化芳香族とは、芳香族二重結合が部分的か又は完全に水素化されていることを意味する。
【0021】
エポキシ樹脂は、例えば式A:
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R及びRはそれぞれ水素原子であり、この場合にはRは水素原子又はメチル基であり、或いはR及びRは一緒にCH−CH−又は−CH−CH−CH−であり、この場合にはRは、水素原子であるか、酸素、窒素、又は硫黄原子に直接結合している)
の基を含むものである。
【0024】
かかる樹脂の言及することのできる例は、アルカリの存在下で、分子あたり2つ以上のカルボン酸基を含む化合物と、エピクロロヒドリン、グリセロールジクロロヒドリン、又はβ−メチルエピクロロヒドリンとを反応させることによって得ることができるポリグリシジルエステル及びポリ(β−メチルグリシジル)エステルである。かかるポリグリシジルエステルは、脂肪族ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は二量体化若しくは三量体化リノール酸、脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、及び4−メチルヘキサヒドロフタル酸、並びに、芳香族ポリカルボン酸、又はフタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸のようなポリカルボン酸のそれらのペル水素化対応物から誘導することができる。
【0025】
他の例は、分子あたり少なくとも2つの遊離アルコール性及び/又はフェノール性及び/又はペルヒドロフェノール性ヒドロキシル基を含む化合物と、対応するエピクロロヒドリンとを、アルカリ性条件下又は酸触媒の存在下で反応させ、次にアルカリで処理することによって得ることができるポリグリシジルエーテル及びポリ(β−メチルグリシジル)エーテルである。これらのエーテルは、エピクロロヒドリンを用いて、非環式アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール及びより高級のポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオール及びポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びソルビトール、脂環式アルコール、例えばレゾルシノール、キニトール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、及び1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキス−3−エン、並びに芳香族基を有するアルコール、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アニリン、及びp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンと反応させて製造することができる。これらは更に、レゾルシノール及びヒドロキノンのような単核フェノール類、並びにビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとしても知られている)、及び2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのような多核フェノール類、並びにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール、及びフルフロールのようなアルデヒド類と、フェノールそれ自体、及び環上において塩素原子又はそれぞれの場合において9個以下の炭素原子を有するアルキル基によって置換されているフェノール、例えば4−クロロフェノール、2−メチルフェノール、及び4−tert−ブチルフェノールとから形成されるノボラック類から製造することができる。また、ペル水素化芳香族類も、例えば日光下で放置/使用した際の硬化部品におけるより高い安定性を与えるので、重要であり、幾つかの場合には好ましい。
【0026】
ポリ(N−グリシジル)化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、並びに、エチレン尿素及び1,3−プロピレン尿素のような環式アルキレン尿素及び5,5−ジメチルヒダントインのようなヒダントイン類のN,N’−ジグリシジル誘導体が挙げられる。
【0027】
ポリ(S−グリシジル)化合物は、例えば、ジチオール類、例えばエタン−1,2−ジチオール及びビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテルのジ−S−グリシジル誘導体である。
【0028】
式Aの基を含むエポキシ樹脂の例は、R及びRが一緒に−CH−CH−であるものである。これらは所謂「非グリシジル」エポキシ化合物であり、例は、ビス(3,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3−エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0029】
1,2−エポキシド基が異なるタイプのヘテロ原子に結合しているエポキシ樹脂、例えば4−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、サリチル酸又はp−ヒドロキシ安息香酸のグリシジルエーテル/グリシジルエステル、N−グリシジル−N’−(2−グリシジルオキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、及び2−グリシジルオキシ−1,3−ビス(5,5−ジメチル−1−グリシジル−3−ヒダントイニル)プロパンもまた好適である。
【0030】
ビスフェノール類のジグリシジルエーテル及びそれらの水素化誘導体のような芳香族エポキシ樹脂が特に好ましい。上記のこれらの樹脂と、例えば脂肪族多グリシジルエポキシ樹脂との三元混合物も考えられる。短鎖又は長鎖多アルコールから誘導されるものは、これらの多グリシジルエポキシ樹脂の中の1つである。
【0031】
上記に言及したもののようなエポキシ含有化合物と、エポキシ樹脂のために好適な硬化剤との予め反応させた液体付加体を用いることも考えられる。勿論、本新規組成物において液体又は固体のエポキシ樹脂の液体混合物を用いることもできる。
【0032】
下記は、本発明において単独か又は混合物として用いるのに好適な市販のエポキシ含有化合物の例である:Uvacure 1500(UCB Chemicals Corp.から入手できる3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);Epalloy 5000(CVC Specialties Chemicals, Inc.から入手できるエポキシ化水素化ビスフェノールA);Heloxy 48(Resolution Performance Products LLCから入手できるトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル);Heloxy 107(Resolution Performance Products LLCから入手できるシクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル);Uvacure 1501及び1502(特許品の脂環式エポキシド)、Uvacure 1530〜1534(特許品のポリオールをブレンドした脂環式エポキシド)、Uvacure 1561及びUvacure 1562((メタ)アクリル不飽和部分を有する特許品の脂環式エポキシド)(全て、UCB Chemicals Corp.から入手できる);Cyracure UVR-6100、-6105、-6107、及び-6110(全て、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、Cyracure UVR-6128(ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート)(全て、Dow Chemical Co.から入手できる);Araldite CY 179(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)及びAraldite PY 284(ジグリシジルヘキサヒドロフタレートポリマー)(Huntsman Advanced Materials Americas Inc.から入手できる);Celloxide 2021(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート)、Celloxide 2081(3,4−エポキシシクロヘキサンメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート変性カプロラクトン);Celloxide 2083、Celloxide 2085、Celloxide 2000、Celloxide 3000、Epolead GT-300、Epolead GT-302、Epolead GT-400、Epolead 401、Epolead 403(全て、Daicel Chemical Industries Co., Ltd.から入手できる);DCA(Asahi Denka Co., Ltd.から入手できる脂環式エポキシ);及びE1(Perstorp ABから入手できる、グリシジル基で官能化した2,2−ジメチロールプロピオン酸の重縮合によって得られるエポキシ超分岐ポリマー);Tactix、Araldite ECN、Araldite EPN、及びAraldite PY-307-1(Huntsmanから入手できる)のようなエポキシノボラック樹脂。用いるエポキシは、また、1,3−ビス(3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル)テトラメチルジシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタキス(3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル)−2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサンのようなエポキシ化環式シランなどのシロキサン又はフルオロベースのエポキシであってもよい。
【0033】
好ましい態様においては、成分(a)はオキセタンのモノマー又はオリゴマー化合物を含む。オキセタン化合物は、以下に記載するような単官能又は多官能のオキセタン化合物であってよい。これらの化合物は、成分(a)として、或いはエポキシ化合物のような他の化合物と混合して用いることができる。
【0034】
例は、次式:
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、Rは、水素原子;フッ素原子;1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基;1〜6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、及びペルフルオロプロピル基;6〜18個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル基及びナフチル基、フリル基、又はチエニル基を表し;
は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜18個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル基又はナフチル基を表し;
nは、0〜200の整数であり;
は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、6〜18個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル基又はナフチル基、或いは次式(2):
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、6〜18個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル基又はナフチル基を表し;mは、0〜100の整数である)
によって示される基を表す)
によって表すことができる。
【0039】
上記で言及した分子(1)の具体例として、以下のものが示される:
【0040】
【化4】

【0041】
多官能オキセタン:
【0042】
【化5】

【0043】
(式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、又はトリアルキルシリル基(ここで、それぞれのアルキル基は個々に1〜12個の炭素原子を有するアルキル基である)、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、又はトリブチルシリル基を表し;Rは、上記の式(1)において定義したものと同じであり、pは1〜10の整数である)
上記で言及した分子(4)の具体例として、以下のものが示される:
【0044】
【化6】

【0045】
本発明において用いることのできる、化合物中に1つのオキセタン環を有するオキセタン化合物の例としては、以下の化合物が与えられる:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボミルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボミル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなど。用いるのに好適なオキセタン化合物の他の例としては、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3,3−[1,4−フェニレンビス(メチレンオキシメチレン)]ビス(3−エチルオキセタン)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、及びビス[(1−エチル(3−オキセタニル)メチル)]エーテルが挙げられる。
【0046】
本発明において用いることのできる、化合物中に2つ以上のオキセタン環を有する化合物の例としては、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリトリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリトリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリトリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリトリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO−変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO−変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO−変性水素化ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO−変性水素化ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO−変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられる。
【0047】
上記の化合物について、オキセタン化合物は、化合物中に1〜10個、好ましくは1〜4個、更により好ましくは1個のオキセタン環を有することが好ましい。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エタン、及びトリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが好ましく用いられる。商業的に入手できるオキセタン化合物としては、Cyracure UVR6000(Dow Chemical Co.から入手できる)及びAron Oxetane OXT-101、OXT-121、OXT-211、OXT-212、OXT-221、OXT-610、及びOX-SQ(Toagosei Co., Ltd.から入手できる)が挙げられる。
【0048】
また、硬化性化合物(a)は、環式エーテル化合物、環式ラクトン化合物、環式アセタール化合物、環式チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、又はビニルエーテル化合物であってもよい。
【0049】
更に、上記したように、本発明の成分(a)は上記記載の複数の化合物の混合物を含むことも可能である。
一態様においては、成分(a)としては、少なくとも2の平均エポキシ官能基数及び100〜700の間のエポキシ当量(EEW)を有する少なくとも1種類の水素化ビスフェノールエポキシ含有化合物が挙げられる。水素化ビスフェノールエポキシ含有化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%、更により好ましくは少なくとも約30重量%の割合で硬化性組成物中に存在させることができる。更に他の態様においては、水素化ビスフェノールエポキシ含有化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として最大で97重量%の量、好ましくは最大で85重量%の量、更により好ましくは最大で70重量%の量で存在させることができる。更なる態様においては、水素化ビスフェノールエポキシ含有化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として約5〜97重量%、好ましくは約15〜85重量%、更により好ましくは約30〜70重量%の範囲で存在させることができる。
【0050】
他の態様においては、成分(a)としては更に1種類以上のオキセタン化合物を挙げることができ、かかるオキセタンは、好ましくは硬化性組成物の全重量を基準として少なくとも約1重量%の量、より好ましくは少なくとも10重量%の量、更により好ましくは少なくとも15重量%の量で硬化性組成物中に存在する。更に他の態様においては、オキセタン化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として最大で97重量%の量、より好ましくは少なくとも最大で50重量%の量、更により好ましくは最大で25重量%の量で存在させることができる。更なる態様においては、オキセタン化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の量、更により好ましくは0.5〜22重量%の量で存在させることができる。
【0051】
更に他の態様においては、成分(a)としては、更に、1種類以上の二官能性非グリシジルエポキシ化合物を挙げることができる。二官能性非グリシジルエポキシ化合物は、硬化性組成物の全重量を基準として0.1〜97重量%、より好ましくは0.5〜85重量%の量、更により好ましくは1〜70重量%の量で硬化性組成物中に存在させることができる。
【0052】
硬化性組成物中に存在する成分(a)の全量は、一般に、硬化性組成物の全重量を基準として少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、更により好ましくは少なくとも30重量%であってよく、成分(a)の量は、硬化性組成物の全重量を基準として、合計で約97重量%、より好ましくは85重量%を超えてはならず、更により好ましくは70重量%を超えてはならない。一態様においては、存在する樹脂組成物(a)の全量は、硬化性組成物の全重量を基準として約5〜97重量%、好ましくは約15〜85重量%、更により好ましくは約30〜70重量%の範囲である。
【0053】
耐衝撃性改良剤(成分(b)):
本発明の樹脂組成物の第2の成分は、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤(b)である。互いに共有結合している線状鎖の3つのブロックから構成され、微細相分離を示すブロックコポリマーが好ましい。かかる群は、S−B−M−及びM−B−M−トリブロックコポリマーを含んでいてよい。
【0054】
好ましくは、耐衝撃性改良剤は樹脂(a)と相溶性である。
相溶性という用語は、既に上記で定義しており、ブロックコポリマー又は複数のブロックコポリマーの混合物が、硬化性組成物中に可溶で、使用前の保存中に早期に相分離しないことを意味する。
【0055】
好ましい態様においては、本硬化性組成物は、メチルメタクリレートを含む少なくとも1つのブロックを含む1種類以上のブロックコポリマーを含み、ここでブロックコポリマーは組成物の硬化によって微細相を形成する。これは、コポリマーが成分(a)中に溶解して、溶液内にミセルドメインを形成することを意味する。硬化生成物はこれらのコポリマーの自己配列構造を示し、更にこれらは、X線又は中性子散乱又はSEM(走査電子顕微鏡)又ははTEM(透過電子顕微鏡)或いは任意の他の分析手段によって調べると微細相分離を示す。好ましくは、構造はミセルドメインを有する。これらのミセルドメインは、10〜800nmの直径を有し、硬化物品中で耐衝撃相として機能する。ブロックコポリマーの自己配列によって得られる相は、超微細構造とみなすことができる。ブロックコポリマーはまず硬化性組成物中に溶解し、硬化によってミセルを形成するので、これらのミセルの寸法を特定の要求にしたがって調節することができる。したがって、広範囲の強靱化を得ることができる。
【0056】
更なる好ましい態様においては、本発明の硬化性組成物は、耐衝撃性改良剤としてブロックコポリマーとコア/シェルポリマーの組み合わせを含む。
好ましくは、耐衝撃性改良剤(b)はS−B−M−トリブロックコポリマー又はM−B−M−トリブロックコポリマーであり、ここでS−ブロック及びM−ブロックは、互いに独立して、ビニル芳香族化合物、及び/又はアルキル鎖中に1〜18個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルを含み、B−ブロックはジエン又はアルキル(メタ)アクリレートを含み、但し、S−ブロック、B−ブロック、及びM−ブロックの少なくとも1つはメチルメタクリレートから構成され、M−ブロックとB−ブロック、及びS−ブロックとB−ブロックは非相溶性である。
【0057】
更なる態様においては、M−ブロックは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートモノマーを含み、他のモノマーM2は、モノマーM1とは異なる非アクリルビニル及び/又は(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0058】
非相溶性とは、ブロックコポリマーの構築ブロックであるM−ブロック又はB−ブロックのホモポリマーを一緒に混合すると、樹脂中に可溶でなく、早期に相分離することを意味する。
【0059】
耐衝撃性改良剤(b)は、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む。S−B−M−トリブロックは、特にポリスチレン(PS)、1,4−ポリブタジエン(PB)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)から構成され、好ましくはシンジオタクチックであり、一方、M−B−M−トリブロックは、ポリ(ブチルアクリレート)又はジエンの中心ブロック、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の2つの側ブロックから構成される対称ブロックコポリマーである。
【0060】
S−B−M−トリブロックに関して、Mは、好ましくは、メチルメタクリレートモノマーから構成されるか、或いは、少なくとも50重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも75重量%のメチルメタクリレートを含む。M−ブロックを構成する他のモノマーは、アクリル又は非アクリルモノマーであってよく、反応性であってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語は、化合物の官能基、又はアクリレート含有化合物の化学基、或いは硬化剤の化学基と反応しうる化学基を意味すると理解される。反応性官能基の非限定的な例として、オキシラン官能基、オキセタン官能基、(メタ)アクリレート官能基、ヒドロキシル官能基、アミン官能基、又はカルボキシル官能基を言及することができる。反応性モノマーは、(メタ)アクリル酸、又はこれらの酸を生成する任意の他の加水分解可能なモノマーであってよい。例えば、グリシジルメタクリレート又はtert−ブチルメタクリレートが、M−ブロックを構成することのできる他のモノマーの中の1つである。Mは、有利には少なくとも60%までシンジオタクチックPMMAから構成される。S−B−M−トリブロックのM−ブロック及びS−ブロックは、同一であっても異なっていてもよい。SとMが同一である場合には、これはMBMである。
【0061】
BのTgは、有利には0℃未満、好ましくは−40℃未満である。
エラストマーB−ブロックを合成するのに用いるモノマーは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、又は2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンであってよい。Bは、有利には、ポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及びこれらのランダムコポリマーから、或いは部分的か又は完全に水素化されているポリ(ジエン)から選択される。ポリブタジエンの中で、最も低いTgを有するもの、例えば1,2−ポリブタジエンのTg(約0℃)よりも低いTg(約−90℃)を有する1,4−ポリブタジエンが有利に用いられる。B−ブロックはまた水素化されていてもよい。この水素化は通常の技術にしたがって行われる。
【0062】
エラストマーB−ブロックを合成するのに用いるモノマーはまた、アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。以下のTg値(アクリレートの名称の次のカッコ内)が得られる:エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)、及び2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)。ブチルアクリレートが有利に用いられる。アクリレートは、BとMが非相溶性(ここで、非相溶性という用語の意味は上記に定義した通りである)で配合樹脂において微細相分離を生成する条件を保持する(observe)ために、M−ブロックにおけるものと異なる。
【0063】
B−ブロックは好ましくは主として1,4−ポリブタジエンから構成される。
S−B−M−トリブロックのB−ブロックは、同一であっても異なっていてもよく、これは異なるB要素のブロックも存在してよいことを意味する。
【0064】
SのTgは、有利には23℃より高く、好ましくは50℃より高い。S−ブロックの例として、スチレン、α−メチルスチレン、又はビニルトルエンのようなビニル芳香族化合物から誘導されるもの、及びアルキル鎖中に1〜18個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルから誘導されるものを言及することができる。後者の場合においては、アクリレートは、S及びMがBと非相溶性(ここで、非相溶性という用語の意味は上記に定義した通りである)である条件を保持するために、M−ブロックにおけるものと異なる。
【0065】
S−B−M−トリブロックは、10,000g/モル〜500,000g/モルの間、好ましくは20,000〜200,000g/モルの間であってよい数平均分子量Mnを有する。S−B−M−トリブロックは、有利には、合計が100%の質量フラクションとして表して下記の組成を有する:
M:10〜80%の間、好ましくは10〜70%の間;
B:2〜80%の間、好ましくは5〜70%の間;
S:10〜88%の間、好ましくは15〜85%の間。
【0066】
Nanostrength E20、Nanostrength E21及びNanostrength E40、Nanostrength A123、Nanostrength A250、及びNanostrength A012製品は、Arkema, Franceという企業から得ることができるS−B−M−タイプのトリブロックコポリマーの代表例である。
【0067】
M−B−M−トリブロックにおいて、Mは、メチルメタクリレートモノマーから構成されるか、或いは少なくとも50重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも75重量%のメチルメタクリレートを含む。M−ブロックを構成する他のモノマーは、アクリル又は非アクリルモノマーであってよく、反応性であってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語は、カチオン性化合物の官能基、又はアクリレート含有化合物の化学基、或いはマトリクスの化学基と反応しうる化学基を意味すると理解される。反応性官能基の非限定的な例として、オキシラン官能基、オキセタン官能基、(メタ)アクリレート官能基、ヒドロキシル官能基、アミン官能基、又はカルボキシル官能基を言及することができる。反応性モノマーは、(メタ)アクリル酸、又はこれらの酸を生成する任意の他の加水分解可能なモノマーであってよい。M−ブロックを構成することのできる他のモノマーの中で、非限定的な例としてグリシジルメタクリレート又はtert−ブチルメタクリレートを言及することができる。Mは、有利には少なくとも60%までシンジオタクチックPMMAから構成される。M−B−M−トリブロックの2つのM−ブロックは、同一であっても異なっていてもよい。これらはまた、モル質量が異なっていてもよいが、同じモノマーから構成される。
【0068】
BのTgは、有利には0℃未満、好ましくは−40℃未満である。
エラストマーB−ブロックを合成するのに用いるモノマーは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、又は2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンであってよい。Bは、有利には、ポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及びこれらのランダムコポリマーから、或いは部分的か又は完全に水素化されているポリ(ジエン)から選択される。ポリブタジエンの中で、最も低いTgを有するもの、例えば1,2−ポリブタジエンのTg(約0℃)よりも低いTg(約−90℃)を有する1,4−ポリブタジエンが有利に用いられる。B−ブロックはまた水素化されていてもよい。この水素化は通常の技術にしたがって行われる。
【0069】
エラストマーB−ブロックを合成するのに用いるモノマーはまた、アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。以下のTg値(アクリレートの名称の次のカッコ内)が得られる:エチルアクリレート(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)、及び2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)。アクリレートは、BとMが非相溶性で微細相分離を形成する条件を保持するために、M−ブロックにおけるものと異なる。
【0070】
M−B−M−トリブロックは、10000g/モル〜500000g/モルの間、好ましくは20000〜200000g/モルの間であってよい数平均分子量Mnを有する。M−B−M−トリブロックは、M及びBに関して、有利には合計が100%の質量フラクションとして表して下記の組成を有する:M:10〜80%の間、好ましくは15%〜70%の間;B:90%〜20%の間、好ましくは85%〜30%の間。
【0071】
アルキル(メタ)アクリレート類から特にブチルアクリレートを選択する場合、ブロックコポリマーはMAMと呼ぶ。
Nanostrength M22の名称は、Arkema, Franceという企業から得ることができるM−A−Mタイプのトリブロックコポリマーを表す。
【0072】
本発明の材料において用いるブロックコポリマーは、当業者に公知のアニオン重合によって製造することができる。
本発明の好ましい形態によれば、耐衝撃性改良剤は、少なくとも1種類のS−B−M−はM−B−M−ブロックコポリマー、及び場合によっては、官能化エラストマー、S−B−ブロックコポリマー、B−、S−、及び/又はA−ブロックから製造されるホモポリマー、ATBN(アミン末端ブタジエンアクリロニトリルコポリマー)及びCTBN(カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル)反応性ラバー、或いはS−B−M又はM−A−Mコポリマーを構成する単位と相溶性の任意のポリマー、コポリマー、又は界面活性剤から選択される少なくとも1種類のポリマー又はコポリマーを含む。
【0073】
好ましくは、S−B−ジブロックにおいて、S−及びB−ブロックは、S−B−M−トリブロックのS−ブロック及び−B−ブロックに関して上記で言及したものと同じモノマー及び場合によってはコモノマーから構成される。S−B−ジブロックのS−及びB−ブロックは、S−B−Mブロックコポリマー中に存在するS−及びB−ブロックと同一であっても異なっていてもよい。S−B−ジブロックは、S−B−M−耐衝撃性改良剤と混和性であり、S−B−M耐衝撃性改良剤と一緒にマトリクスから分離する。
【0074】
S−B−ジブロックは、500g/モル〜25,000g/モルの間、好ましくは1,000〜5,000g/モルの間であってよい数平均分子量Mnを有する。
B−、S−、及び/又はA−ホモポリマーに関して、これは、S−B−M−又はM−A−M−トリブロックのS−、B−、及び/又はA−ブロックと相溶性である。相溶性とは、ホモポリマーがブロックコポリマー組成物中に可溶であり、ブロックコポリマーと一緒に相分離することを意味する。ホモポリマーは反応性であっても非反応性であってもよい。ホモポリマーは、耐衝撃性改良剤のブロックコポリマーS−B−M又はM−A−M中に存在するブロックと同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
ホモポリマーは、250g/モル〜10,000g/モルの間、好ましくは1,000〜5,000g/モルの間の範囲であってよい数平均分子量Mnを有する。
ホモポリマーは、相溶性ホモポリマーの混合物であってよく、全組成物中の重量基準でに0.5〜40%で組成物中に存在する。
【0076】
ブロックコポリマーと組みあわせてコア/シェルポリマーが存在する場合には、好適なコア/シェルポリマーは、(i)モル基準で、少なくとも93%のブタジエン、5%のスチレン、及び0.5〜1%のジビニルベンゼンを含む、75〜80部のコア;及び(ii)25〜20部の、実質的に同重量の、ポリスチレンなどから製造されている内部シェル及びPMMAから製造されている他の外部シェルの2つのシェル;から構成されていてよい。
【0077】
本発明の第2の好ましい形態によれば、耐衝撃性改良剤は、少なくとも1種類のS−B−M−又はM−B−M−ブロックコポリマー、及び少なくとも1種類のB−ホモポリマーを含む。耐衝撃性改良剤は、有利には、5〜20%のS−B−M−トリブロックに対して0.5〜40%のB−ホモポリマーを含む。
【0078】
本発明の他の好ましい形態によれば、耐衝撃性改良剤は、少なくとも1種類のS−B−M−ブロックコポリマー、及び少なくとも1種類のS−B−ブロックコポリマーを含む。耐衝撃性改良剤は、有利には、5〜20%のS−B−M−トリブロックのそれぞれに関して0.5〜40%のS−B−ジブロックを含む。
【0079】
他の形態によれば、S−B−Mの一部をS−B−ジブロックで置き換えることができる。この部分は、S−B−Mの70重量%以下であってよい。
他の有利な形態によれば、S−B−M−又はM−B−M−トリブロックの一部をB−ホモポリマーで置き換えることができる。この部分は、S−B−M−、M−B−M−トリブロックの70重量%以下であってよい。
【0080】
S−B−M−トリブロックの全部又は一部をM−S−B−S−M−又はM−B−S−B−M−ペンタブロックで置き換えることは本発明から逸脱しない。これらは、上記で言及したジ又はトリブロックと同様にアニオン重合によるが、二官能性開始剤を用いることによって製造することができる。これらのペンタブロックの数平均分子量Mnは、S−B−M−トリブロックのものと同様の範囲内である。2つのM−ブロックの合計の割合又は2つのB−又はS−ブロックの合計の割合は、S−B−M−トリブロック中のS、B、及びMの割合と同様の範囲内である。
【0081】
主としてメチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有するブロックコポリマー、特にS−B−M−トリブロック又はM−B−M−トリブロック耐衝撃性改良剤から実質的に構成される耐衝撃性改良剤(b)が、本発明組成物において有利に用いられる。
【0082】
更に、ブロックコポリマーは、線状、星形、H形であってよく、或いは任意の他の形状を示していてよい。
成分(b)は、好ましくは、組成物の全重量を基準として0.5〜20重量%の量、より好ましくは1〜15重量%の量、特に1.5〜10重量%の量で用いる。
【0083】
重合開始剤(成分(c)):
本発明の硬化性樹脂組成物は1種類以上の重合開始剤(成分(c))を含む。重合開始剤は、好ましくはカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤から選択される。
【0084】
カチオン重合開始剤は、好ましくは、カチオン光重合を開始するのに通常用いられるものから選択される。例としては、弱求核性のアニオンを有するオニウム塩、例えばハロニウム塩、インドシル塩、スルホニウム塩、スルホキソニウム塩、又はジアゾニウム塩が挙げられる。また、メタロセン塩も光開始剤として好適である。
【0085】
市販のカチオン開始剤の例としては、Cyracure UVI-6974及びUVI-6976(S,S,S,S’−テトラフェニルチオビス(4,1−フェニレン)ジスルホニウムジヘキサフルオロアンチモネートとジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物である)、Cyracure UVI-6970、UVI-6960、UVI-6990、UVI-6992(Dow Corp.);CD1010、CD-1011、CD-1012(Sartomer Corp.);Adeka Optomer SP-150、SP-151、SP-170、SP-171(Asahi Denka Kogyo Co., Ltd.);Irgacure 261、CI-2481、CI-2624、CI-2639、CI2064(Nippon Soda Co., Ltd.);及びDTS-102、DTS-103、NAT-103、NDS-103、TPS-103、MDS-103、MPI-103、BBI-103)(Midori Chemical Co., Ltd.);が挙げられる。また、Rhodorsil 2074(RHODIA companyによって供給)のようなヨードニウムイオンの塩も好ましい。UVI-6974、CD-1010、UVI-6976、UVI-6992、Adeka Optomer SP-170、SP-171、CD-1012、及びMPI-103、並びにK178(Adekaからのヘキサフルオロアンチモンスルホニウム塩)が最も好ましい。S,S,S,S’−テトラフェニルチオビス(4,1−フェニレン)ジスルホニウムジヘキサフルオロアンチモネートとジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物が好ましい。S,S,S,S’−テトラフェニルチオビス(4,1−フェニレン)ジスルホニウムジヘキサフルオロホスフェートとジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートの混合物も好ましい。カチオン光開始剤は、個々か又は2以上を組みあわせて用いることができる。カチオン光開始剤はPF塩を含んでいてよい。アンチモンを少量しか含まない(即ち0.1%未満)か又は全く含まない光開始剤が特に最も好ましい。
【0086】
カチオン重合開始剤は、本発明の組成物の全重量を基準として約0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に0.5〜10重量%の量で存在させることができる。
【0087】
遊離基光開始剤は、ラジカル光重合を開始するのに通常用いられるものから選択することができる。遊離基光開始剤の例としては、ベンゾイン類、例えばベンゾイン;ベンゾインエーテル類、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル;及びベンゾインアセタート;アセトフェノン類、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、及び1,1−ジクロロアセトフェノン;ベンジルケタール類、例えばベンジルジメチルケタール、及びベンジルジエチルケタール;アントラキノン類、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、及び2−アミルアントラキノン;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド類、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Luzirin TPO);ビスアシルホスフィンオキシド類;ベンゾフェノン類、例えばベンゾフェノン、及び4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントン類及びキサントン類;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−プロピル)ケトン(Irgacure 2959);1−アミノフェニルケトン類又は1−ヒドロキシフェニルケトン類、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル−1−ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4−イソプロピルフェニル−1−ヒドロキシイソプロピルケトン;が挙げられる。
【0088】
好ましくは、遊離基光開始剤はシクロヘキシルフェニルケトンである。より好ましくは、シクロヘキシルフェニルケトンは1−ヒドロキシフェニルケトンである。最も好ましくは、1−ヒドロキシフェニルケトンは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、例えばIrgacure 184である。
【0089】
遊離基光開始剤は、好ましくは、本発明の組成物の全重量を基準として0.01〜10重量%の量で存在する。
カチオン光開始剤とラジカル光開始剤の混合物を用いる場合には、必要な強靱化相分離を起こさせることができるのに必要な硬化速度を与えるように、それぞれの重合開始剤の量を重量比で注意深く調節しなければならない。好ましくは、カチオン光開始剤とラジカル光開始剤との比は、5:0〜1:1、より好ましくは3:1〜1.5:1である。
【0090】
更なる成分:
アクリレート含有化合物(d):
本発明の組成物には、成分(d)としてラジカル硬化性化合物、好ましくは、2〜20個、好ましくは2〜17個、最も好ましくは2〜6個のアクリル基を有する、モノマー又はオリゴマーの、脂肪族、脂環式、又は芳香族(メタ)アクリレート化合物から特に選択される(メタ)アクリレートを更に含ませることができる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの混合物を指す。更に、成分(d)の(メタ)アクリレート化合物は1以上のヒドロキシル基を含んでいてよく、かかる成分はアクリレート成分(d)として数える。
【0091】
アクリレート含有化合物としては、少なくとも1種類の多官能性(メタ)アクリレート、好ましくは二、三、四、五、又は六官能性で、モノマー又はオリゴマーの、脂肪族、脂環式、又は芳香族(メタ)アクリレートを挙げることができる。また、モノアクリレートを単独か又は多官能性アクリレートと一緒に用いることもできる。
【0092】
一態様においては、ラジカル硬化性化合物は、二官能性(メタ)アクリレート、例えば脂肪族又は芳香族二官能性(メタ)アクリレートである。ジ(メタ)アクリレートの例としては、脂環式又は芳香族ジオール、例えばトリシクロデカンジメタノール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールF、並びにエトキシル化又はプロポキシル化ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。この種のジ(メタ)アクリレートは公知であり、幾つかは商業的に入手できる。例えば、Ebecryl 3700(ビスフェノールAエポキシジアクリレート)(UCB Surface Specialtiesによって供給)。特に好ましいジ(メタ)アクリレートはビスフェノールAをベースとするエポキシジアクリレートである。非常に好ましい態様においては、成分(d)は環式脂肪族化合物のポリ(メタ)アクリレートである。
【0093】
或いは、好ましいジ(メタ)アクリレートは、非環式脂肪族、水素化芳香族、又はペル水素化芳香族の(メタ)アクリレートである。水素化又はペル水素化芳香族の意味は上記に定義した。この種のジ(メタ)アクリレートは一般に知られており、次式:
【0094】
【化7】

【0095】
【化8】

【0096】
【化9】

【0097】
(式中、
1Fは、水素原子又はメチルであり;
は、直接結合、C〜Cアルキレン、−S−、−O−、−SO−、−SO−、又は−CO−であり;
2Fは、C〜Cアルキル基、非置換か又は1以上のC〜Cアルキル基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子によって置換されているフェニル基であるか、或いは式:−CH−OR3F(ここでR3Fは、C〜Cアルキル基又はフェニル基である)の基であり;
は、次式:
【0098】
【化10】

【0099】
【化11】

【0100】
【化12】

【0101】
の基から選択される基である)
の化合物が挙げられる。
好ましい態様においては、本発明の組成物は、少なくとも1種類の多官能性(メタ)アクリレート(成分(d))、より好ましくは、2〜20個、好ましくは2〜17個、最も好ましくは2〜6個のアクリル基を有する、モノマー又はオリゴマーの、脂肪族、脂環式、又は芳香族(メタ)アクリレート化合物から選択されるものを含む。多官能性(メタ)アクリレートとしては、好ましくはトリ(メチル)アクリレート、又はより高い官能基数の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0102】
例は、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、エトキシル化又はプロポキシル化グリセロール、及びエトキシル化又はプロポキシル化1,1,1−トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレートである。他の例は、トリエポキシド化合物(例えば上記に列記したトリオールのトリグリシジルエーテル)と(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得られるヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。他の例は、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、又は特にジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートである。好適な芳香族トリ(メタ)アクリレートの例は、三価フェノール類のトリグリシジルエーテル、及び3つのヒドロキシル基を含むフェノール又はクレゾールノボラック類と、(メタ)アクリル酸との反応生成物である。これらの芳香族多(メタ)アクリレートの水素化形態も考えられる。
【0103】
ある状況においては、モノ(メタ)アクリル化合物を組成物に加えて可撓性を与えることができる。
好ましくは、アクリレート含有化合物としては、少なくとも1つの末端及び/又は少なくとも1つの懸垂(即ち内部)不飽和基、並びに少なくとも1つの末端及び/又は少なくとも1つの懸垂ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。本発明の組成物には、1種類以上のかかる化合物を含ませることができる。かかる化合物の例としては、ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシモノビニルエーテル、及びヒドロキシモノビニルエーテルが挙げられる。非常に好ましい態様においては、成分(d)は、2以上のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートから選択される。商業的に入手できる例としては、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(SARTOMER Companyによって供給されているSR 399);ペンタエリトリトールトリアクリレート(SARTOMER Companyによって供給されているSR 444)、SR 508(ジプロピレングリコールジアクリレート)、SR 833類(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、SR 9003(ジプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SARTOMER companyによって供給されているSR 499)及びビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(UCB Surface Specialtiesによって供給されているEbecryl 3700)、SR 295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート);SR 349(トリエトキシル化ビスフェノールAジアクリレート)、SR 350(トリメチロールプロパントリメタクリレート);SR 351(トリメチロールプロパントリアクリレート);SR 367(テトラメチロールメタンテトラメタクリレート);SR 368(トリス(2−アクリルオキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート);SR 454(エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート);SR 9041(ジペンタエリトリトールペンタアクリレートエステル);並びにCN 120(ビスフェノールAエピクロロヒドリンジアクリレート)(SARTOMER Companyによって供給)、及びCN 2301;CN 2302;CN 2303;CN 2304(超分岐ポリエステルアクリレート)が挙げられる。
【0104】
商業的に入手できるアクリレートの更なる例としては、Kayarad R-526(ヘキサン二酸,ビス[2,2−ジメチル−3−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]プロピル]エステル);Sartomer 238(ヘキサメチレンジオールジアクリレート);SR 247(ネオペンチルグリコールジアクリレート);SR 306(トリプロピレングリコールジアクリレート);Kayarad R-551(ビスフェノールAポリエチレングリコールジエーテルジアクリレート);Kayarad R-712(2,2’−メチレンビス[p−フェニレンポリ(オキシエチレン)オキシ]ジエチルジアクリレート);Kayarad R-604(2−プロペン酸,[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルエステル):Kayarad R-684(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート);Kayarad PET-30(ペンタエリトリトールトリアクリレート);GPO-303(ポリエチレングリコールジメタクリレート);Kayarad THE-330(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート);DPHA-2H、DPHA-2C、及びDPHA-21(ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート);Kayarad D-310(DPHA);Kayarad D-330(DPHA);DPCA-20;DPCA-30;DPCA-60;DPCA-120;DN-0075;DN-2475;Kayarad T-1420(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート);Kayarad T-2020(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート);T-2040;TPA-320;TPA-330;Kayarad RP-1040(ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート);R-011;R-300;R-205(メタクリル酸,亜鉛塩、SR 634と同様)(Nippon Kayaku Co., Ltd.);Aronix M-210;M-220;M-233;M-240;M-215;M-305;M-309;M-310;M-315;M-325;M-400;M-6200;M-6400(Toagosei Chemical Industry Co., ltd.);Light acrylate BP-4EA、BP-4PA、BP-2EA、BP-2PA、DCP-A(Kyoeisha Chemical Industry Co., Ltd.);New Frontier BPE-4、TEICA、BR-42M、GX-8345(Daichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.);ASF-400(Nippon Steel Chemical Co.);Ripoxy SP-1506、SP-1507、SP-1509、VR-77、SP-4010、SP-4060(Showa Highpolymer Co., Ltd.);NK Ester A-BPE-4(Shin-Nakamura Chemical Industry Co., Ltd.);SA-1002(Mitsubishi Chemical Co., Ltd.);Viscoat-195、Viscoat-230、Viscoat-260、Viscoat-310、Viscoat-214HP、Viscoat-295、Viscoat-300、Viscoat-360、Viscoat-GPT、VIscoar-400、Viscoat-700、Viscoat-540、Viscoat-3000、Viscoat-3700(Osaka Organic Chemical Industry Co., Ltd.);が挙げられる。
【0105】
ウレタンアクリレートは、上記記載のアクリル化合物と共に用いることのできる好ましい他の種類のアクリレートである。また、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラニルメチロール(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセチルメチロール)(メタ)アクリレート、及びグリシジルポリテトラヒドロフラニロール、並びにこれらの多官能性形態のような混合多官能性化合物も考えられる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記記載のアクリレート含有化合物の混合物を含ませることができる。
好ましくは、アクリレート含有化合物(d)は、組成物の全重量を基準として約1〜90重量%、より好ましくは約1〜70重量%、最も好ましくは約5〜40重量%で含ませる。
【0107】
本発明の硬化性樹脂組成物には、1種類以上の安定剤及び他の添加剤を更に含ませることができる。
ポリオール化合物(e):
生成物の靱性及び生強度は、成分(e)としてポリオール又は複数のポリオールの混合物を加えることによって更に向上させることができる。更に、HDTを保持することができることが見出された。
【0108】
ポリオールは、硬化性組成物の全重量を基準として0.5〜40重量%、好ましくは1〜25重量%の量で存在させることができ、好ましくは主たる樹脂混合物と反応しないか、或いは主たる樹脂混合物(本発明においてはエポキシ樹脂組成物又はマトリクスとして例示される)と非常にゆっくりとしか反応しない官能基を有するように形成されていることが好ましい。好ましいポリオールは少なくとも2の官能基数を有する。特に好ましいポリオールは、2〜6、より好ましくは3〜6の官能基数を有する。
【0109】
ポリオールは、線状、環式、又は分岐のジオール及びポリオール、グリコール、グリセロールから選択することができる。低い分子量を有するジオール及びポリオールに関する好適な例は、ジエチレングリコール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化ジオール及びグリセロール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル及びポリエステルポリオールである。ポリオールの分子量は、好ましくは、150〜6000Da、好ましくは200〜2000Daである。
【0110】
ポリオールの更なる例は、約70〜7000g/当量、好ましくは80〜1500g/当量のヒドロキシル当量を有し、線状又は分岐のポリ(オキシテトラメチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシエチレン)、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端ポリシロキサン、又はこれらの混合物であってよいポリオール;並びに約70〜7000g/当量、好ましくは75〜5000g/当量、より好ましくは80〜1500g/当量のヒドロキシル当量を有し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はこれらの混合物であってよいポリオール;である。
【0111】
一態様においては、ポリオールは線状又は分岐のポリ(オキシテトラメチレン)ジオールである。線状又は分岐のポリ(オキシテトラメチレン)ジオールは、一般的に知られており、三フッ化ホウ素、塩化スズ(IV)、及び塩化スルホニルのようなルイス酸触媒の存在下でのテトラヒドロフランの重合によって製造される。線状及び分岐のポリ(オキシテトラメチレン)ジオールのヒドロキシル当量は、少なくとも70乃至1500g/当量、好ましくは75〜1000g/当量、より好ましくは80〜800g/当量の範囲であり、最も好ましくは500より小さい。商業的に入手できるポリ(オキシテトラメチレン)ジオールとしては、Polymegシリーズ(Penn Specialty Chemicals)、及びBASFからのpolyTHFシリーズが挙げられる。商業的に入手できるヒドロキシ末端ポリブタジエンは、SartomerからのPolyBD/R20LM及びKrasol LDT2040である。
【0112】
他の態様においては、ポリオールは、約70〜7000g/当量、好ましくは約80〜1500g/当量、最も好ましくは約85〜500g/当量のヒドロキシル当量を有するポリエーテルポリオールである。
【0113】
ポリエーテルポリオールの例としては、種々のポリオキシアルキレンポリオール及びこれらの混合物が挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールは、周知の方法にしたがって、アルキレンオキシド又は複数のアルキレンオキシドの混合物を、酸又は塩基接触付加を用い、多水酸基開始剤又は複数の多水酸基開始剤の混合物を用いて縮合することによって製造することができる。代表的なアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、例えば1,2−ブチレンオキシド、アミレンオキシド、アラルキレンオキシド、例えばスチレンオキシド、及びハロゲン化アルキレンオキシド、例えばトリクロロブチレンオキシドなどが挙げられる。より好ましいアルキレンオキシドとしては、ブチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシド、又はランダム若しくは段階的オキシアルキル化を用いるこれらの混合物が挙げられる。かかるポリオキシアルキレンポリオールの例としては、ポリオキシエチレン、即ちポリエチレントリオール、ポリオキシプロピレン、即ちポリプロピレントリオール、及びポリオキシブチレン、即ちポリブチレントリオールが挙げられる。商業的に入手できるポリオキシアルキレンポリオールとしては、Arcol LG-650、Acrol LHT-28、Acrol LHT-42、Acclaim 4200、Acclaim 6300、Acclaim 8200、及びAcclaim 12200(全てBayer Materials Scienceから)、並びにLupranol VP9272、Lupranol VP9289、及びLupranol VP9350(全てElastogranから)が挙げられる。
【0114】
他の態様においては、少なくとも1種類の他のポリオールはポリエステルポリオールである。用いることのできるポリエステルポリオールとしては、多価アルコールとポリカルボン酸とのヒドロキシル末端反応生成物が挙げられる。用いるのに好適なポリエステルポリオールの例としては、DowからのTone Polyol 0310、及びBayerからのDesmophen 5035BTが挙げられる。好ましいポリオールのタイプはアルコキシル化ポリオールエステルであり、例はブトキシル化トリメチロールプロパン(SeppicからのSimulsol TOMB)である。これらのタイプは湿分の影響を受けにくく、したがって特に耐水性の硬化生成物を与えることができる。
【0115】
更に他の態様においては、ポリオールはポリウレタンポリオールである。ポリウレタンポリオールは、イソシアネートと1種類以上のジオール及び/又はトリオールとの反応のような一般的に知られている手段によって製造することができる。
【0116】
他の成分:
本発明の樹脂組成物にはまた、他の成分、例えば安定剤、変性剤、タフナー、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、染料、有機及び無機充填剤並びにナノフィラー、液晶、接着促進剤、流動制御剤、光安定剤、繊維、増感剤、電子ドナー、及びこれらの組みあわせを含ませることができる。
【0117】
エポキシ樹脂組成物に加えて保存中の粘度上昇を防ぐことができる安定剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ヒンダードアミン、例えばベンジルジメチルアミン(BDMA)、N,N−ジメチルベンジルアミン、及びホウ素コンプレックスが挙げられる。
【0118】
好ましい態様:
一態様においては、本発明の硬化性組成物は、
(a)5〜97重量%の、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー又はモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)0.5〜20重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;及び
(c)0.01〜15重量%の、1種類以上の重合開始剤;
を含む。
【0119】
他の態様においては、本発明の硬化性組成物は、
(a)5〜97重量%の、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー又はモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)0.5〜20重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)0.01〜15重量%の、1種類以上の重合開始剤;及び
(d)1〜90重量%の、重合性(メタ)アクリレート成分、好ましくは重合性多官能性(メタ)アクリレート成分;
を含む。
【0120】
更なる態様においては、本発明の硬化性組成物は、
(a)15〜85重量%の、23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー又はモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)1〜15重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)0.01〜15重量%の、1種類以上の重合開始剤;及び
(d)1〜70重量%の、重合性多官能性(メタ)アクリレート成分;
を含む。
【0121】
更なる態様においては、本硬化性組成物は、
(a)30〜70重量%の、23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー又はモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)1.5〜10重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)0.5〜10重量%の、1種類以上の重合開始剤;及び
(d)5〜40重量%の、重合性(メタ)アクリレート成分;
を含む。
【0122】
他の態様においては、本発明の硬化性組成物は、
(a)5〜97重量%の、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー又はモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)0.5〜20重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)0.01〜15重量%の、1種類以上の重合開始剤;及び
(d)1〜25重量%の、ポリオール又はポリオール含有混合物、好ましくは特に200〜4000Daの分子量を有するポリ(オキシテトラメチレン)ジオールの骨格を含むポリオール又はポリオール混合物;
を含む。
【0123】
他の態様においては、本発明の硬化性組成物は、
(a)5〜97重量%の、開環反応によって重合しうるモノマー及び/又はオリゴマー及びモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂;
(b)0.5〜20重量%の、メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)0.01〜15重量%の、1種類以上のカチオン重合開始剤;
(d)5〜40重量%の、重合性(メタ)アクリレート成分;及び
(e)1〜25重量%の、ポリオール又はポリオール含有混合物、好ましくは特に200〜4000Daの分子量を有するポリ(オキシテトラメチレン)ジオールの骨格を含むポリオール又はポリオール混合物;
を含む。
【0124】
上記の例は全て合計で100%になる。当業者に明らかなように、これらの例は、組成物が合計で100%になるように、上記の全ての態様において、種々の分布の成分をどのように用いるかを示したものである。
【0125】
更なる態様:
本発明の組成物は、以下の:
(A)成分(a)の樹脂組成物を23℃より高い温度に加熱し;
(B)耐衝撃性改良剤(b)を加え;そして
(C)得られた混合物を冷却し、1種類又は複数の重合開始剤及び多官能性(メタ)アクリレートのような添加剤を加える;
工程を行うことによって製造することができる。
【0126】
工程Aにおける温度は、耐衝撃性改良剤(b)が硬化性樹脂中に溶解し、(a)と(b)の混合物が明澄な溶液を与えるのに十分に高くなければならず、好ましくは、温度は50℃より高く、好ましくは80℃より高い。(a)中への(b)の溶解を促進させるために、混合物を撹拌することができる。工程(C)においては、場合によって用いる成分を同様に好ましくは撹拌下で加えるが、成分の添加順序には制限はない。
【0127】
或いは、本発明の組成物は、樹脂(a)と多官能性(メタ)アクリレートをブレンドし、次に耐衝撃性改良剤(b)を加えるか、或いは耐衝撃性改良剤(b)をまず多官能性(メタ)アクリレートとブレンドし、次にエポキシ樹脂(a)とブレンドすることによって製造することができる。
【0128】
本発明の組成物は、硬化生成物を製造するために非常に一般的に用いることができ、特定の具体的な使用分野のために、例えばラピッドプロトタイピング又はラピッドマニュファクチャリング、3Dインクジェット印刷のための硬化性樹脂、例えば光ファイバーにおける被覆組成物、塗料、プレス組成物、成形組成物、浸漬樹脂、注型樹脂、含浸樹脂、積層樹脂、ホットメルト、一又は二成分接着剤、又はマトリクス樹脂として好適な配合物において用いることができる。本組成物はまた、宇宙産業、自動車、風車、及びスポーツ器具の分野において、光硬化性積層樹脂、ホットメルト、樹脂トランスファー成形プロセス用の組成物、一又は二成分接着剤、又はマトリクス樹脂として用いることもできる。
【0129】
本発明の更なる態様は、
a.請求項1に記載の硬化性組成物の層を表面上に施し;
b.層を化学線照射に像様曝露して画像様硬化横断面を形成し;
c.請求項1に記載の組成物の第2の層を従前に像様曝露した横断面上に施し;
d.工程(c)からの層を化学線照射に像様曝露して更なる画像様硬化横断面を形成し、曝露領域内の第2の層の硬化及び従前に曝露した横断面への接着を引き起こし;そして
e.3次元物品を形成するために工程(c)及び(d)を複数回繰り返す;
工程を含む方法である。
【0130】
更なる態様は、上記記載の方法によって製造される3次元物品である。
【実施例】
【0131】
他に示さない限り、「%」は「重量%」であり、「部」は「重量部」である。
試験手順:
SL技術:
組成物の感光性を所謂窓ガラス上で測定した。この測定においては、異なるレーザーエネルギーを用いて単層の試験片を製造し、層厚を測定した。用いた照射エネルギーの対数に対して得られた層厚をグラフ上にプロットすることにより「検量線」が得られた。この曲線の傾斜をDp(浸透深さ、ミル(1ミル=25.4mm))と呼ぶ。曲線がx軸を通過する点でのエネルギー値をEc(臨界エネルギー、mJ/cm)と呼ぶ。P. Jacobs, Rapid Prototyping and Manufacturing, Soc. of Manufacturing Engineers, 1992, pp.270以下)を参照。記載したそれぞれの実施例に関して、本発明者らは0.10mmの層を完全に重合させるのに必要なエネルギー:E4(mJ/cm)を報告することを選択した。
【0132】
SLA7000(固体レーザーを取り付けた3D Systemsによって供給されているステレオリソグラフィー装置)上で製造した部品について機械特性及び熱特性を測定した。
この機械を用いて部品を製造した10分後及び1時間後において、更なる硬化を行わずに曲げ弾性率を測定することによって生強度を求めた。
【0133】
3D印刷技術:
3D印刷の適用に関しては、試料をシリコン成形型内で調製し、UVランプを用いて硬化させた。かかる適用のためには30mPa・sより低い流体粘度が必要であり、70℃において8〜20mPa・sの粘度範囲が好ましい(例えば、Spectra Nova PH256/80AA プリントヘッド)。しかしながら、将来の技術により、更に高い温度においてより粘稠な流体を噴射することが可能になるであろう。
【0134】
機械的試験:
完全に硬化させた部品の機械的試験を、ISO標準規格にしたがって行った。部品は、試験前に23℃及び50%の室内湿度において3〜5日間コンディショニングした。
【0135】
【表1】

【0136】
粘度:
粘度は、Brookfield粘度計モデルLVTDVII、LVTDVIII、又はRVT上で30℃において測定した。用いたスピンドルは18及び21番であった。3D印刷の適用に関しては、粘度は、LVTDVIII上でスピンドル18のみを用いて65℃において測定した。
【0137】
実施例において用いた化合物を下表1に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
工程(1):例えばエポキシ中のブロックコポリマーのマスターバッチの製造:
プロセスA:
温度計、凝縮器、メカニカルスターラー、Nガス導入口、及びストッパーを備えた五つ口反応器の内部において、エポキシ樹脂を撹拌下で50℃に加熱した。この温度に到達したら、Nの連続流下で選択量のブロックコポリマーを段階的に加え、その後、温度を100〜110℃に上昇させた。100〜110℃において撹拌を1〜1.50時間保持した。その後、油浴を取り外し、Nの連続流下及び撹拌条件下で混合物を40℃に冷却した。最後に、混合物をより取り扱い易い容器中に注ぎ入れた。
【0142】
プロセスB:
予備混合を室温において行う場合には、ブロックコポリマーの溶解には長時間の撹拌が必要である。選択量のブロックコポリマーの顆粒を予め秤量したエポキシ樹脂に加えた。予備混合物に強い撹拌を加え、2時間保持した。撹拌を中断すると、未溶解の顆粒が混合物の表面において分離した。撹拌を更に6時間再開した。このRTにおける更なる撹拌では、顆粒を完全に溶解させることはできなかった。最終混合物は粘度が均一でなかった。
【0143】
表2に、マスターバッチ配合物の例及びそれらの粘度を記載する。
【0144】
【表5】

【0145】
工程(2):配合物の製造:
成分を工程(1)で記載のようにして調製したブロックコポリマーのマスターバッチと、撹拌しながら20℃において、均一な組成物が得られるまで混合することによって、下表3に示す配合物を調製した。
【0146】
工程(3):ステレオリソグラフィーでの適用の実施例:
実施例5〜7
【0147】
【表6】

【0148】
実施例8及び9:
【0149】
【表7】

【0150】
実施例9において0.95%という低濃度のSBMを存在させることにより、耐温度性を大きく損なうことなく、比較実施例8と比較して機械特性のバランスが全体的に改良された。
【0151】
実施例10〜26:
【0152】
【表8】

【0153】
【表9】

【0154】
【表10】

【0155】
【表11】

【0156】
特性の全体的に向上したバランスを与える強靱化における予期しなかった向上は、また、驚くべきことに、鋭利な端部及びより滑らかな側壁を有するより良好な部品を与えた。この最後の特徴は、層状の3次元物体を形成する際は、非常に重要であり、商業的に非常に有用である。
【0157】
【表12】

【0158】
【表13】

【0159】
実施例31〜33:二官能性ポリテトラヒドロフランを用いた配合物:
【0160】
【表14】

【0161】
【表15】

【0162】
【表16】

【0163】
実施例34〜47:二官能性ポリプロピレンオキシドポリオールを用いた配合物:
【0164】
【表17】

【0165】
【表18】

【0166】
実施例38〜41:三官能性ポリエーテルポリオールを用いた配合物:
【0167】
【表19】

【0168】
【表20】

【0169】
【表21】

【0170】
実施例42〜44:ポリオールとブロックコポリマーとの間の相乗効果に関する強調:
【0171】
【表22】

【0172】
実施例45及び46:
【0173】
【表23】

【0174】
実施例31、38、39、42、43、44、45、及び46は、生強度に対するブロックコポリマーの影響を示す。配合物がより多いブロックコポリマーを含むと、生強度は最適レベルまでより高くなる。最適量のブロックコポリマーによって最も高いHDTを達成することができる。
【0175】
実施例47〜50:
耐衝撃性改良剤としてブロックコポリマーを含む本発明の硬化性組成物を、コアシェルポリマーを含む硬化性組成物と比較した。
【0176】
【表24】

【0177】
樹脂組成物を評価するための手順:
SLA7000(固体レーザーを取り付けた3D Systemsによって供給されているステレオリソグラフィー装置)上で製造した部品について機械特性及び熱特性を測定した。
【0178】
a.精確度:
部品を形成し、写真によって部品の精確度を示した。
試験した配合物:
配合物を2工程で調製した。
【0179】
1.エポキシ中のSBM又はMBSのマスターバッチの調製:
温度計、凝縮器、メカニカルスターラー、Nガス導入口、及びストッパーを備えた五つ口反応器の内部において、エポキシ樹脂を撹拌下で50℃に加熱した。この温度に到達したら、Nの連続流下で選択量のブロックコポリマー又はコアシェルを段階的に加え、その後、温度を100〜110℃に上昇させた。100〜110℃において撹拌を1〜1.30時間保持した。その後、油浴を取り外し、Nの連続流下及び撹拌条件下で混合物を40℃に冷却した。最後に、混合物をより取り扱い易い容器中に注ぎ入れた。
【0180】
2.全ての他の成分の混合:
成分を、工程(1)で記載のようにして調製したブロックコポリマー又はコアシェルのマスターバッチと、撹拌しながら20℃において、均一な組成物が得られるまで混合することによって、下表に示す配合物を調製した。
【0181】
【表25】

【0182】
1.安定性の結果:
得られたエポキシ中Clearstrength 859のマスターバッチは白色の不透明な樹脂を与え、これに対して得られたエポキシ中Nanostrength AFX E21のマスターバッチは明澄な黄色であった。配合物47及び50は1日後に相分離した。部品を形成するために、製造の開始前に撹拌を行った。これに対して、48及び49は安定な配合物であった。
【0183】
2.部品の精確度:
実施例47(比較例)から得られた部品は、不透明な白色で、輪郭がはっきりしていなかった。支持体側は凹凸であり、レーザー側は波打っていた。
【0184】
実施例48(本発明)から得られた部品は、明澄な琥珀色であり、輪郭がはっきりしていた。角部は正確であった。
実施例50(比較例)から得られた部品は、乳白色〜白色であり、輪郭がはっきりしていなかった。支持体側は僅かに凹凸であり、レーザー側は波打っていた。
【0185】
比較実施例47及び50の組成物を用いて得られた部品の形状は、精確度を測定することができず、その精確度は非常に劣っていた。これに対して、実施例49の組成物を用いて得られた部品は、輪郭がはっきりしており、精確であった。
【0186】
結論:
データは、SBM−ブロックコポリマー及びMBSコア−シェルは異なる挙動を有することを示す。ブロックコポリマーを用いることにより、向上した精確度を有する物品が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物;
(b)メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;及び
(c)1種類以上の重合開始剤;
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
成分(a)が、脂環式、芳香族、及び水素化芳香族エポキシ樹脂組成物、並びにこれらの任意の混合物から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(a)が、組成物の全重量を基準として5〜97重量%、より好ましくは15〜85重量%、更により好ましくは30〜70重量%の量で用いられる、請求項1及び2のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項4】
メチルメタクリレートを含む少なくとも1つのブロックを含む1種類以上のブロックコポリマーを含み、ブロックコポリマーが組成物を硬化させることにより微細相を形成する、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(b)がS−B−M−トリブロックコポリマー又はM−B−M−トリブロックコポリマーであり、ここでS−ブロック及びM−ブロックは、互いに独立して、ビニル芳香族化合物、及び/又はアルキル鎖中に1〜18個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルを含み、B−ブロックはジエン又はアルキル(メタ)アクリレートを含み、但し、S−ブロック、B−ブロック、及びM−ブロックの少なくとも1つはメチルメタクリレートから構成され、B−ブロックはS−ブロック又はM−ブロックのいずれかと非相溶性である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
M−ブロックが少なくとも50重量%のメチルメタクリレートモノマー(M1)を含み、他のモノマー(M2)がモノマーM1と異なる非アクリルビニル及び/又は(メタ)アクリルモノマーを含む、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
(b)が、組成物の全重量を基準として0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、特に1.5〜10重量%の量で用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
重合開始剤(c)が、カチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
成分(d)として、2〜20個、好ましくは2〜17個、最も好ましくは2〜6個のアクリル基を有する、モノマー又はオリゴマーの、脂肪族、脂環式、又は芳香族(メタ)アクリレート化合物から選択される(メタ)アクリレート類を更に含む、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
(メタ)アクリレート化合物(d)が、2個以上のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物から誘導されるポリ(メタ)アクリレートから選択される、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
(d)が、組成物の全重量を基準として1〜90重量%、より好ましくは約1〜70重量%、最も好ましくは約5〜40重量%の量で用いられる、請求項9及び10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
成分(e)としてポリオール又はポリオール含有混合物を更に含む、請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項13】
組成物の全重量を基準として0.5〜40重量%の量のポリオール(e)を含む、請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
(a)23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物;
(b)メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;及び
(c)1種類以上の重合開始剤;並びに
(d)場合によっては(メタ)アクリレート;
を含む硬化性組成物の製造方法であって、
(A)成分(a)のモノマー及び/又はオリゴマーを23℃より高い温度に加熱し;
(B)耐衝撃性改良剤(b)を加え;そして
(C)得られた混合物を冷却して、場合によって(メタ)アクリレート(d)、及び重合開始剤(c)を加える;
ことを含む上記方法。
【請求項15】
工程(A)において、混合物を50℃より高く、好ましくは80℃より高い温度に加熱する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)23℃において液体であり、開環反応によって重合しうるモノマー又はオリゴマー或いはモノマーとオリゴマーの混合物を含む樹脂組成物;
(b)メチルメタクリレートから構成される少なくとも1つのブロックを有する1種類以上のブロックコポリマーを含む耐衝撃性改良剤;
(c)1種類以上の重合開始剤;及び
(d)場合によっては多官能性(メタ)アクリレート;
を含む硬化性組成物の製造方法であって、
樹脂(a)と場合によって多官能性(メタ)アクリレート(d)をブレンドし、次に耐衝撃性改良剤(c)を加えるか、或いは耐衝撃性改良剤(c)をまず多官能性(メタ)アクリレート(d)とブレンドし、次に樹脂組成物(a)とブレンドすることによる上記方法。
【請求項17】
a.請求項1〜13のいずれかに記載の硬化性組成物の層を表面上に施し;
b.層を化学線照射に像様曝露して画像様硬化横断面を形成し;
c.請求項1に記載の組成物の第2の層を従前に像様曝露した横断面上に施し;
d.工程(c)からの層を化学線照射に像様曝露して更なる画像様横断面を形成し、ここで照射によって曝露領域内の第2の層の硬化及び従前に曝露した横断面への接着を引き起こし;そして
e.3次元物品を形成するために工程(c)及び(d)を繰り返す;
ことを含む、3次元生成物の製造方法。
【請求項18】
被覆組成物、3Dインクジェット印刷用の組成物、塗料、成形組成物、浸漬樹脂、注型樹脂、含浸樹脂、積層樹脂、ホットメルト、ラピッドマニュファクチャリング用の組成物、樹脂トランスファー成形プロセス用の組成物、或いは一又は二成分接着剤、又はマトリクスとしての、請求項1〜12のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
【請求項19】
請求項17に記載の方法によって製造される3次元物品。

【公表番号】特表2010−520949(P2010−520949A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553129(P2009−553129)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052901
【国際公開番号】WO2008/110564
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】