説明

硬化性組成物

【課題】 耐熱耐光性に優れ、硬化物の内部応力に起因するクラック、剥離の発生、基材の反り等の問題を解決し、かつ接着性に優れた各種光学材料のコーティング剤、LEDの封止剤やダイボンド剤に有用な硬化性組成物および硬化物を提供する。
【解決手段】 (A)炭素−炭素二重結合を有する有機系化合物、(B)SiH基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒 を必須成分として含有する硬化性組成物であって、(B)成分中に(B1)SiH基を1分子中に少なくとも2個有し、Si−O−Si−ORで表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。ただしRは炭化水素基もしくは、芳香族置換基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた耐熱耐光性および良好な接着性が得られ、硬化物の内部応力に起因する諸問題を解決した硬化物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)封止用材料をはじめとする光学用材料としては、近年使用環境の変化に伴い、光学的透明性が高いばかりでなく、高い靭性を有する材料も求められている。封止樹脂の靭性が低い場合、例えば、高温から低温への変化等の使用環境の変化により、封止樹脂へのクラックの発生や基材の反りといった問題が生じる。こうした問題からも内部応力を低下させた硬化性組成物が望まれている。また同時にLEDパッケージへの高い接着性についても求められる。接着性が低い場合、LEDパッケージと封止樹脂界面で剥離が発生する。剥離の発生により輝度の低下や、また接着性が著しく低い場合は封止樹脂がパッケージから外れる可能性があり製品の信頼性に関わる問題となる。例えば表面実装タイプのLEDではプラスチック、セラミックス、銀等のパッケージ構成材料との接着性が良好であることも望まれている。
【0003】
一方、特許文献1では基材への接着性を改良する目的として、ビニルトリアルコキシシランなどをヒドロシリル化反応により化合物へ導入することで、基材への優れた接着性が得られることを述べている。しかし加水分解性のアルコキシシリル基を多数有していることから縮合反応により高架橋化し、内部応力が増大することが懸念され、低応力化という点ではまだ改善の余地がある。また特許文献1では低応力化に関する記述はない。こうした問題からも接着性と低応力化を両立した硬化性組成物が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−19140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた耐熱耐光性および良好な接着性が得られ、硬化物の内部応力に起因するクラック、剥離の発生、基材の反り等の問題を解決した、各種光学材料のコーティング剤、LEDの封止剤やダイボンド剤に有用な硬化性組成物および硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち 本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含有する硬化性組成物であって、(B)成分中に(B1)SiH基を1分子中に少なくとも2個有し、
なおかつ下記一般式:
Si−O−Si−OR
(式中、Rは炭素数1〜9までの直鎖および分岐型の炭化水素基もしくは、炭素数6〜12の芳香族置換基である)
で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物(請求項1)。
本発明の好ましい状態は、(B1)で表わされる構造を有する化合物が、SiH基の一部をアルコキシ化して得られた化合物であることを特徴とする硬化性組成物(請求項2)。
本発明の好ましい状態は、(B1)で表わされる構造を有する化合物が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物(α1)と、SiH基を1分子中に少なくとも3個有する環状ポリオルガノシロキサン(β1)をヒドロシリル化反応させることにより得られる化合物の少なくとも1個のSiH基をアルコキシ化して得られた化合物である、請求項1、2のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項3)。
【0008】
本発明の好ましい状態は、ROで表される基がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基およびフェノキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1〜3に記載の硬化性組成物(請求項4)。
【0009】
本発明の好ましい様態は、前記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物(α1)が、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである請求項3に記載の硬化性組成物(請求項5)。
【0010】
本発明の好ましい状態は、 (B)成分であるSiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である請求項1に記載の硬化性組成物(請求項6)。
【0011】
本発明の好ましい態様は 前記1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)が、環状のポリオルガノシロキサンである請求項6に記載の硬化性組成物(請求項7)。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)が、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンである請求項7に記載の硬化性組成物(請求項8)。
【0013】
本発明の好ましい態様は、B)成分中の(B1)で表わされる構造を有する化合物の含有量が5重量%以上である請求項1に記載の硬化性組成物(請求項9)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性組成物は、優れた耐熱性、耐クラック性、耐反り性を併せ持つため、各種光学材料のコーティング剤、LEDの封止剤やダイボンド剤としていることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であれば特に限定されない。例えばSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオリガノポリシロキサンや、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を使用することができるが、基材との接着性の観点から(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物で、上記有機化合物が、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、S、ハロゲンからなるものが好ましい。
例えば、本発明の(A)成分は、下記一般式(I)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物であることが好ましい。
(A)成分は、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなるものが好ましい。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
【0018】
まず、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合について述べる。(A)成分が有する炭素−炭素二重結合を有する基は、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されない。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とは、例えば、下記一般式(III):
【0019】
【化2】

【0020】
(式中R3は水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、反応性が高いことから好適である。
【0021】
原料の入手の容易さからは、
【0022】
【化3】

【0023】
が特に好ましい。
【0024】
硬化物の耐熱性が高いという点では、上記炭素−炭素二重結合を有する基としては、下記一般式(IV):
【0025】
【化4】

【0026】
(式中R4、R5は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、好適である。
【0027】
また、原料の入手の容易さからは、
【0028】
【化5】

【0029】
が特に好ましい。
【0030】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は2価以上の官能基を介して、有機骨格部分に共有結合していても良い。
【0031】
2価以上の官能基とは、炭素数0〜10の官能基である。特に制限はないが、このような官能基の例としては、
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
等が挙げられる。
【0035】
また、これらのうち、2つ以上の官能基が共有結合によりつながって、より大きな単位で1つの2価以上の官能基を構成していてもよい。
【0036】
上記炭素−炭素二重結合を有する基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、3−(アリルオキシ)プロピル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0037】
【化8】

【0038】
が挙げられる。
【0039】
次に、有機骨格部分について述べる。本願明細書及び特許請求の範囲において、有機骨格とは、主に炭素、水素、ニクトゲン原子、酸素を含むカルコゲン原子、ハロゲン原子から構成される骨格であり、上記元素からなるものであれば特に限定されない。例えば、飽和炭化水素系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)等の有機重合体骨格や、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、脂肪族アルコール系、環状炭化水素系等及びこれらの2種以上からなる有機単量体骨格が挙げられる。
【0040】
分子量についても特に限定はないが、取扱い性の観点から、分子量5万以下のものが好ましい。本特許において、分子量とは、GPCによるスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0041】
有機重合体骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリエーテル系重合体が挙げられる。さらに具体的な例を示すと、
【0042】
【化9】

【0043】
(式中、R6は炭素数1〜50の一価の炭化水素基、R7、R8は炭素数1〜200の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)等が挙げられる。なお、ここでいう有機基は、特に限定されないが、エーテル結合、エステル結合、アセタール結合、イミド結合、アミド結合、ハロゲン化合物を有していてもよい炭化水素系の官能基であることが好ましい。以下に挙げられる「有機基」についても同様である。
【0044】
なお、R7、R8は好ましくは炭素数1から200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。
【0045】
有機重合体骨格として用いられるその他の重合体としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体;ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体;ポリクロロプレン;ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体;ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体;ポリイソプレンを水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体、ポリブタジエンを水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、イソプレンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、ブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、11−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等のフェノール系樹脂等が挙げられる。
【0046】
さらに、上記の有機重合体骨格の側鎖又は末端にアルケニル基を導入した(A)成分の有機化合物の具体的な例としては、
【0047】
【化10】

【0048】
(式中、R9は水素原子又はメチル基、R10、R11は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、R12は水素原子又はメチル基、R13、R14は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、nは1〜300の数を表す。)
【0051】
【化12】

【0052】
(式中、R15は水素原子又はメチル基、R16、R17は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
【0053】
【化13】

【0054】
(式中、R18は水素原子又はメチル基、R19、R20、R21は、同一又は異なって、炭素数1〜6の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、r、sはそれぞれ1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0055】
なお、R10、R11、R13、R14は、好ましくは炭素数1〜200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。R16、R17、R19、R20、R21は、好ましくは炭素数1〜6の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。X、Yは、好ましくは直接結合又は炭素数1〜48の二価の炭化水素基、より好ましくは直接結合又は炭素数1〜48のアルキレン基である。
【0056】
有機単量体の例としては、エタン、プロパン、イソブタンといった脂肪族鎖状化合物や、シクロペンタン、ジシクロペンタン、ノルボルナンといった脂肪族環状化合物、あるいは、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、イソシアヌレート系といった複素環化合物がある。ここで、複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
【0057】
有機単量体からなる(A)成分の具体例として、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50−100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、
【0058】
【化14】

【0059】
【化15】

【0060】
等が挙げられる。
【0061】
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.1mmol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.5mmol以上含有するものがより好ましく、1mmol以上含有するものがさらに好ましい。
【0062】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0063】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0064】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましく、線状でも枝分かれ状でもよい。分子量の下限は50、上限は100,000の任意のものが使用できるが、好ましい下限は54、好ましい上限は70,000、さらに好ましい下限は68、さらに好ましい上限は50,000である。分子量が50より低いものは揮発性が大であり、分子量が100,000を越えるものでは一般に原料が高粘度となり作業性に劣るとともに、アルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
【0065】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において3000Pa・s未満のものが好ましく、2000Pa・s未満のものがより好ましく、1000Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0066】
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0067】
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0068】
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0069】
特に(A)成分としては耐熱性・耐光性が高いという観点から上述した一般式(I)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
【0070】
【化16】

【0071】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0072】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0073】
【化17】

【0074】
等が挙げられる。
【0075】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0076】
【化18】

【0077】
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、
【0078】
【化19】

【0079】
等が挙げられる。
【0080】
以上のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0081】
【化20】

【0082】
等が挙げられる。
【0083】
硬化物の樹脂強度向上と耐光性を両立させるためにはトリアリルイソシアヌレートとジアリルモノグリシジルイソシアヌレートの混合物であることが好ましい。該混合物はイソシアヌル環骨格を有するため耐熱性の点からも有効である。混合比は任意に設定出来るが、上記目的達成のためにはトリアリルイソシアヌレート/アリルモノグリシジルイソシアヌレート(モル比)=99/1〜1/99が好ましく、95/5〜5/95がさらに好ましく、90/10〜10/90が特に好ましい。
【0084】
[(B)成分]
次に、(B)成分について説明する。
【0085】
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基及び少なくとも1個のRO基を含有する化合物であれば特に限定されない。ただし(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である場合、(A)成分と良好な相溶性を有するという観点から、シロキサン骨格のみからなる化合物以外のものが好ましい。ここで、シロキサン骨格とは、
(R22SiO3/2)p(R222SiO2/2)q(R223SiO3/2)r(SiO4/2)t(R22はそれぞれ同一または異種の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、p、q、r及びtは各シロキサン単位のモル数を示し、p、q、r、tは0または正数であり、p+q+r+t=1である)のように、主鎖がSiO結合の連続のみからなる骨格をいう。
【0086】
(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である場合、(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応した後、少なくとも1個のSiHをアルコキシ化して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0087】
(B)成分中に構造の一部として含まれる(B1)SiH基を1分子中に少なくとも2個有し、
なおかつ下記一般式:
Si−O−Si−OR
で表される構造はさらに詳しくは
下記一般式:
23−Si(−R24)−O−Si(−R24)−OR
で表され、式中、R23は水素もしくはRO基であり、R24は炭素数1〜9までの直鎖および分岐型の炭化水素基もしくは炭素数6〜12の芳香族置換基である。耐熱性の観点からR24はメチル基、エチル基が好ましい。
またケイ素原子に記載のないその他の結合は部分構造をつなぐ結合であり、酸素原子を介したシロキサン構造である。
【0088】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは10,000、さらに好ましくは2,000である。
【0089】
[(α)成分]
ここで(α)成分は、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
【0090】
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
【0091】
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、S、およびハロゲンであることが好ましい。
【0092】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。また、(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、(A)成分のところで説明した官能基が好ましい。
【0093】
(α2)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類でき、それぞれの骨格は(A)成分のところで説明した骨格が好ましい。
【0094】
(α)成分として、耐熱性が高いという観点からは、上述した一般式(I)、
【0095】
【化21】

【0096】
の骨格を有する化合物が好ましい。
【0097】
[(β)成分]
本発明に使用できる1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサンについては、特に制限がなく、具体的な例としては、下記一般式(V)
【0098】
【化22】

【0099】
(式中、それぞれのR25、R26は、水素あるいは炭素数1−50の一価の有機基を表し、それぞれのR25、R26は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1〜1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
25、R26としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR25、R26の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0100】
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(VI)
【0101】
【化23】

【0102】
(式中、R27は水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのR27は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(VI)におけるR27は、C、H、Oから構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
【0103】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、(A)成分との相溶性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサン、又は分子量が10000以下の直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましい。また耐熱性の観点からは1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0104】
一般式(VI)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0105】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0106】
((α)成分と(β)成分の反応)
上述した一般式(I)や(II)の骨格を有する1分子中に少なくとも2個のSiH基および少なくとも1個のRO基を含有する化合物を得るための反応について説明する。
【0107】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)とをヒドロシリル化反応させる場合の、(α)成分と(β)成分の混合比率は、ヒドロシリル化反応に続き、SiH基をアルコキシ化した後に1分子中に少なくとも2個のSiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。
【0108】
得られる硬化物の強度を考えた場合、(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、(β)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。
【0109】
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
【0110】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、SiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10-10モル、より好ましくは10-8モルであり、好ましい添加量の上限はSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-3モルである。
【0111】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0112】
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分にヒドロシリル化触媒(α3)を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分との混合物にヒドロシリル化触媒(C)を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(β)成分とヒドロシリル化触媒(C)を混合したものに(α)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒(C)の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0113】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0114】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧−5MPa、さらに好ましくは大気圧−2MPaである。
【0115】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0116】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、(α)成分を完全に溶解できる量が好ましい。(α)成分100重量部に対して20重量部以上500重量部以下が好ましく、50重量部以上300重量部以下がより好ましい。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0117】
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0118】
以上のような、(B)成分の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
【0119】
本発明では、(B)成分は単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0120】
本発明では、(B)成分は「C−Si−OR」に比べて「Si−O−Si−OR」の方が立体的な因子により縮合反応に対する反応活性が小さいと考えられ、低架橋化できると推測される為、より好ましい。
【0121】
本発明では、ROで表される基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基およびフェノキシ基が挙げられているが、反応性の観点から好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基が好ましい。耐熱性の観点からさらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0122】
[(C)成分]
次に、(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0123】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0124】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0125】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
【0126】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-5モル、上限102モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10-3モル、上限10モルの範囲である。
上記触媒には助触媒を併用することができる。
【0127】
[(D)成分]
本発明の硬化性組成物には、(D)成分としてシランカップリング剤を添加することができる。(D)成分であるシランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
【0128】
有機基と反応性のある官能基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0129】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0130】
シランカップリング剤の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の範囲は10〜100重量部、より好ましくは15〜50重量部、さらに好ましくは15〜25重量部である。添加量が少ないと、硬化物の内部応力に起因するクラック、剥離の発生、基材の反り等の問題の改良効果が表れず、添加量が多いと耐熱性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0131】
[その他の添加物]
本発明の硬化性組成物の基材との接着性を向上させる目的でシラノール縮合触媒を使用することができる。使用できるシラノール縮合触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイド等を好適に用いることができる。
【0132】
本発明の硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることも可能である。使用できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等を好適に用いることができる。また、当該溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0133】
使用する溶剤量は、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して、下限0.1重量部、上限100重量部の範囲で用いるのが好ましく、下限0.5重量部、上限50重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、低粘度化の効果が得られにくくなる傾向があり、使用量が100重量部より多いと、材料に溶剤が残留して耐熱性の低下等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり易い傾向がある。
【0134】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
【0135】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1−3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
【0136】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0137】
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-1モル、上限103モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0138】
次に、本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
【0140】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
【0141】
本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0142】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0143】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0144】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0145】
本発明で得られる硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0146】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0147】
本発明で得られる硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0148】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0149】
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0150】
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
【0151】
[硬化方法]
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで硬化させることもできるし、加熱して硬化させることもできる。硬化反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して硬化させる方法が好ましい。
【0152】
硬化温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限50℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。硬化温度が25℃より低いと十分に硬化させるための時間が長くなる傾向があり、硬化温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0153】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0154】
硬化時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0155】
[硬化物の特性]
本発明の上記(C)成分の好ましい添加量は[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して10〜100重量部であるが、(C)成分が3重量部以下で、それ以外は本発明の硬化性組成物と同じとしたときの硬化性組成物を硬化させてなる硬化物のガラス転移温度は50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。(C)成分が3重量部以下で、それ以外は本発明の硬化性組成物と同じとしたときの硬化性組成物を硬化させてなる硬化物のガラス転移温度が低いと耐熱性が低く、また硬化物の材料強度が低くなる恐れがある。硬化物の材料強度が低いとクラックが発生しやすくなる。
【0156】
本発明の硬化性組成物は、各種光学材料のコーティング剤、LEDの封止剤やダイボンド剤として使用することができる。
【実施例】
【0157】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0158】
(合成例1)
5Lのセパラブルフラスコにトルエン1.38kg、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.36kgを加えて、内温が100℃になるように加熱した。そこに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート300g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.36mL、トルエン300gの混合物を滴下した。30minで滴下を終了した。滴下中、内温が109℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(下記化合物、反応物B−1と称す)、SiH価:8.7mmol/g)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。
【0159】
【化24】

【0160】
(合成例2)
2 L オートクレーブにトルエン7 2 0 g 、1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサン2 4 0 g を入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温5 0 ℃ で加熱、攪拌した。アリルグリシジルエーテル1 7 1 g 、トルエン1 7 1 g 及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液( 白金として3 w t % 含有) 0 . 0 3 9 g の混合液を6 0 分かけて滴下した。滴下終了後にジャケット温を6 0 ℃ に上げて4 0 分反応、1H− N M R でアリル基の反応率が9 5 % 以上であることを確認した。ジャケット温を1 0 5 ℃ に上げてトリアリルイソシアヌレート8 3 g 、トルエン8 3 g 及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液( 白金として3 w t % 含有) 0 . 0 3 9 g の混合液を6 0 分かけて滴下した。滴下終了から5 . 5 時間後に1H− N M R でアリル基の反応率が9 5 % 以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。反応液をガスクロマトグラフで測定すると1 , 3 , 5 , 7− テトラメチルシクロテトラシロキサンは9 9 % 以上反応していた。トルエンを減圧留去し、無色透明の液体を得た。1H− N M R によりこのものはS i H 基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(下記化合物、反応物B−2と称す)、S i H 価: 3 . 8 m m o l / g )であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の( B ) 成分である下記のものを主成分として含有している。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。
【0161】
【化25】

【0162】
(合成例3)
5 L のセパラブルフラスコにトルエン1 . 8 k g 及び1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサン1 . 4 4 k g を加えて、内温が1 0 4 ℃ になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート2 0 0 g 、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3 w t % 含有) 1 . 4 4 m L 及びトルエン2 0 0 g の混合物を滴下した。1 20 ℃ のオイルバス中で7 時間加熱還流させた。1 − エチニル− 1 − シクロヘキサノール1. 7 g を加えた。未反応の1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1 H − N M R によりこのものは1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンのS i H 基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(下記化合物、反応物B−3と称す)、S i H 価: 8 . 2 m m o l / g )であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の( B ) 成分である下記のものを主成分として含有している。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。
【0163】
【化26】

【0164】
(合成例4)
300mLの四つ口フラスコにトルエン118.3g、上記、反応物B−1を40g入れ、気相部を窒素で置換した後、内温が80℃になる様に加熱、撹拌した。内温が安定した後、エタノール8.3g、トルエン24.9g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.017gの混合液を追加した。約13時間撹拌後、1H−NMRでSiH基の減少および反応したエトキシ基のピークを確認した後、反応液を冷却した。この反応液を脱揮することにより、淡黄色透明の液体(反応物)を得た。
【0165】
本生成物は1H−NMRの測定より、反応物B−1のSiH基の一部がエタノールと反応したもの(下記化合物、反応物B−4と称す)であり、5.9mmol/gのSiH基及び1.2mmolのエトキシ基を含有していることがわかった。
【0166】
【化27】

【0167】
(合成例5)
合成例2の条件で内温60℃、エタノール23.0gに変更し、約45時間撹拌し、前記の後処理後に淡黄色透明の液体(反応物)を得た。
【0168】
本生成物は1H−NMRの測定より、反応物B−1のSiH基の一部がエタノールと反応したもの(下記化合物、反応物B−5と称す)であり、4.5mmol/gのSiH基及び2.4mmolのエトキシ基を含有していることがわかった。
【0169】
【化28】

【0170】
(合成例6)
合成例2の条件で内温90℃、エタノール36.8gに変更し、約12時間撹拌し、前記の後処理後に淡黄色透明の液体(反応物)を得た。
【0171】
本生成物は1H−NMRの測定より、反応物B−1のSiH基の一部がエタノールと反応したもの(下記化合物、反応物B−6と称す)であり、2.7mmol/gのSiH基及び3.3mmolのエトキシ基を含有していることがわかった。
【0172】
【化29】

【0173】
(比較例1)
トリアリルイソシアヌレート 1.31g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 12.6g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.09g、ほう酸トリメチル 0.15gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例1で調製した反応物B−1を16.6g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.09g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.76gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L1とした。
【0174】
(比較例2)
トリアリルイソシアヌレート 16.84g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 18.08g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.08g、ほう酸トリメチル 0.2gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例2で調製した反応物B−2 41.3g、合成例3で調製した反応物B−3を23.7g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.1g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)2.5gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L2とした。
【0175】
(実施例1)
トリアリルイソシアヌレート 0.77g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 7.33g、ほう酸トリメチル 0.10gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例4で調製した反応物B−4を12.4g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.06g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.51gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L3とした。
【0176】
(実施例2)
トリアリルイソシアヌレート 0.77g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 7.33g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.02g、ほう酸トリメチル 0.10gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例4で調製した反応物B−4を12.4g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.06g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.51gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L4とした。
【0177】
(実施例3)
トリアリルイソシアヌレート 0.77g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 7.33g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.01g、ほう酸トリメチル 0.10gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例4で調製した反応物B−4を12.4g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.06g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.51gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L5とした。
【0178】
(実施例4)
トリアリルイソシアヌレート 0.69g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート 6.66g、ほう酸トリメチル 0.11gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例5で調製した反応物B−5を14.7g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.07g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.55gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L6とした。
【0179】
(実施例5)
トリアリルイソシアヌレート 0.69g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート6.66g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.07g、ほう酸トリメチル 0.11gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例5で調製した反応物B−5を14.7g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.07g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.55gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L7とした。
【0180】
(実施例6)
トリアリルイソシアヌレート 0.55g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート5.29g、ほう酸トリメチル 0.13gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例6で調製した反応物B−6を16.9g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.07g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.55gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L8とした。
【0181】
(実施例7)
トリアリルイソシアヌレート 0.55g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート5.29g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.08g、ほう酸トリメチル 0.13gを混合し、攪拌、脱泡したものをA液とした。また、合成例6で調製した反応物B−6を16.9g、1−エチニルシクロヘキサノール 0.07g、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187)0.55gを混合し、攪拌、脱泡したものをB液とした。その後A液とB液を混合させたものを遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い一液混合物L9とした。
【0182】
(評価方法)
以下の評価を実施し表1に結果を示した。
【0183】
<接着性>
前記一液混合物L1−L9を用いて50μm厚の塗膜を作製し、そこに2×2×0.1mmのガラス板をスタンプして、ガラス板に硬化性組成物を付着させた。このガラス板をあらかじめ表面をアセトンで脱脂しておいたガラス繊維強化エポキシ樹脂(FRP)板に載せ、熱風乾燥機中で60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間180℃/30分加熱し、硬化させ、ダイシェア試験片を作製した。このダイシェア試験片について、Dage社製ダイシェア試験機4000−DS100KGを用いてダイシェア強度を測定した。
【0184】
<耐反り性>
0.5gの一液混合物を、ダム材で囲った33mm×33mm、厚さ0.3mmのガラスエポキシ樹脂のシートの上に塗布し、熱風乾燥機中で60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間、180℃/30分加熱し、硬化させた。平板上で試験片の一角を指で押さえ、浮き上がった対角の端と平板との距離を測定し反りの大きさとした。
【0185】
<耐熱性>
一液混合物を、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとしてはさみこんで作成したセルに流し、熱風乾燥機中で60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、100℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間180℃/30分加熱し、硬化させた。作製した硬化物から約6mgの試験片を切り出し、耐熱性の指標として島津製作所製TGA−50を用いて重量保持率を測定した。室温から10℃/minで昇温し、450℃での重量を初期重量で割った値を重量保持率とした。
【0186】
【表1】

【0187】
本発明による硬化物は、優れた耐熱性(重量保持率が高い方が良い)と良好な耐接着性(数値が大きい方が良い)、耐反り性(数値が小さい方が良い)を併せ持つことがわかる。比較例2の様に耐反り性が良いものに前例はあるが、一方で耐熱性は悪化することが分かっている。今回の実施例1では耐熱性、接着性を維持したまま、比較例1より耐反り性を向上することができる。また(C)成分が(A)成分と(B)成分の合計量に対し0.075部である実施例2は耐反り性が比較例1より若干改善される。そして(C)成分を(A)成分と(B)成分の合計量に対し0.003部まで減量した実施例3では耐熱性を低下することなく、比較例2と同等の接着性及び耐反り性が得られる。また(B)成分のSiH基の単位グラム当たりのモル数を小さくした実施例4及び5は(C)成分を無添加にした実施例4の場合に比較例1と同等の接着性及び耐熱性であり、耐反り性を改善することができ、(C)成分を(A)成分と(B)成分の合計量に対し0.3部にした実施例5では耐熱性はやや低下するものの、比較例2以上であり、接着性を維持したまま、耐反り性を改善することができる。さらに(B)成分のSiH基の単位グラム当たりのモル数を小さくした実施例6及び7では(C)成分を無添加にした実施例6の場合について比較例1より接着性はやや低下するものの、耐熱性は同等であり、耐反り性は大きく改善される。特に実施例7では接着性及び耐熱性を維持したまま、耐反り性を向上することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含有する硬化性組成物であって、(B)成分中に(B1)SiH基を1分子中に少なくとも2個有し、なおかつ下記一般式:
Si−O−Si−OR
(式中、Rは炭素数1〜9までの直鎖および分岐型の炭化水素基もしくは、炭素数6〜12の芳香族置換基である)
で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(B1)で表わされる構造を有する化合物が、SiH基の一部をアルコキシ化して得られた化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項3】
(B1)で表わされる構造を有する化合物が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物(α1)と、SiH基を1分子中に少なくとも3個有する環状ポリオルガノシロキサン(β1)をヒドロシリル化反応させることにより得られる化合物の少なくとも1個のSiH基をアルコキシ化して得られた化合物である、請求項1、2のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ROで表される基がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基およびフェノキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物(α1)が、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(B)成分であるSiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項7】
前記1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)が、環状のポリオルガノシロキサンである請求項6に記載の硬化性組成物
【請求項8】
前記1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)が、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンである請求項7に記載の硬化性組成物
【請求項9】
(B)成分中の(B1)で表わされる構造を有する化合物の含有量が5重量%以上である請求項1に記載の硬化性組成物

【公開番号】特開2011−184666(P2011−184666A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54675(P2010−54675)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】